(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】先味増強剤
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20230404BHJP
A23G 9/38 20060101ALI20230404BHJP
A23G 9/00 20060101ALN20230404BHJP
A23L 19/00 20160101ALN20230404BHJP
A23C 13/14 20060101ALN20230404BHJP
A23L 9/20 20160101ALN20230404BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23G9/38
A23G9/00 101
A23L19/00 Z
A23C13/14
A23L9/20
(21)【出願番号】P 2018209252
(22)【出願日】2018-11-06
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】小田中 真実
(72)【発明者】
【氏名】平川 笑
【審査官】山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/141986(WO,A1)
【文献】特開2015-097474(JP,A)
【文献】国際公開第2010/114022(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/081185(WO,A1)
【文献】特開2005-261395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00-35/00
A23G 1/00-9/52
A23C 1/00-23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)および(B)を含有する先味増強用組成物:
(A)
γ-Glu-Val-Gly又はその塩
;
(B)フマル酸又はその塩、及びクエン酸又はその塩。
【請求項2】
成分(A):成分(B)の重量比が、フリー体に換算して、1:1~40である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(B)において、フマル酸又はその塩:クエン酸又はその塩の重量比が、フリー体に換算して、1:1~50である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
下記成分(A)および(B)を含む、飲食品:
(A)
γ-Glu-Val-Gly又はその塩
;
(B)フマル酸又はその塩、及びクエン酸又はその塩。
【請求項5】
成分(A)の含有量:成分(B)の含有量の比が、フリー体に換算して、1:1~40である、請求項
4に記載の飲食品。
【請求項6】
成分(B)において、フマル酸又はその塩とクエン酸又はその塩の含有量の比率が、フリー体に換算して、1:1~50である、請求項
4又は
5に記載の飲食品。
【請求項7】
成分(A)の喫食濃度が0.1~100重量ppmとなるように添加されている、請求項
4~
6のいずれか1項に記載の飲食品。
【請求項8】
成分(B)の喫食濃度が0.1~1000重量ppmとなるように添加されている、請求項
4~
7のいずれか1項に記載の飲食品。
【請求項9】
飲食品が、先味が増強された飲食品である、請求項
4~
8のいずれか1項に記載の飲食品。
【請求項10】
飲食品が、先味が付与された飲食品である、請求項
4~
8のいずれか1項に記載の飲食品。
【請求項11】
下記成分(A)および(B)を飲食品またはその原料に添加することを含む、飲食品の先味を増強する方法:
(A)
γ-Glu-Val-Gly又はその塩
;
(B)フマル酸又はその塩、及びクエン酸又はその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先味増強機能を有する組成物及び先味増強方法、ならびに先味が増強された飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品領域では呈味物質が古くから利用されてきた。特に、甘味、塩味、酸味、苦味、旨味で表される5基本味に加えコク味などの呈味を有する呈味物質やこれらを増強する物質が調味料として広く利用されている。例えば「コク味」を付与することのできる物質としては、グルタチオン(γ-Glu-Cys-Gly)やγ-Glu-Val-Gly等のγ-グルタミルトリペプチド、およびγ-Glu-Metやγ-Glu-Thr等のγ-グルタミルジペプチドなどが知られている(特許文献1)。
【0003】
これらの基本味やコク味などの呈味はさらに、口に入れた瞬間の味覚である「先味」、呈味物質そのものの味である「中味」、及び飲み込んだ後に広がる味覚である「後味」に分類することができるが、種々の呈味の先味を増強しうるペプチドは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、飲食品の呈味の先味を増強しうる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、γ-グルタミルペプチドと一緒にフマル酸及びクエン酸を、飲食品に対し添加するだけで、飲食品が有する呈味の先味が増強されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は以下の態様を含む。
[1]下記成分(A)および(B)を含有する先味増強用組成物:
(A)一般式(I)で表される化合物及びその塩:
γ-Glu-X-Gly (I)
(式中、Xは、アミノ酸残基又はアミノ酸誘導体残基を示す)ならびに
下記一般式(II)で表される化合物及びその塩:
γ-Glu-Y (II)
(式中、Yは、アミノ酸残基又はアミノ酸誘導体残基を示す)
からなる群より選択される少なくとも一つのγ-グルタミルペプチド;
(B)フマル酸又はその塩、及びクエン酸又はその塩。
[2]成分(A):成分(B)の重量比が、フリー体に換算して、1:1~40である、[1]に記載の組成物。
[3]成分(B)において、フマル酸又はその塩:クエン酸又はその塩の重量比が、フリー体に換算して、1:1~50である、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]成分(A)が、γ-Glu-Val-Gly、γ-Glu-Abu-Gly、およびγ-Glu-Abuから選択される少なくとも1種のγ-グルタミルペプチド又はその塩である、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]成分(A)が、γ-Glu-Val-Gly又はその塩である、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]下記成分(A)および(B)を含む、飲食品:
(A)一般式(I)で表される化合物及びその塩:
γ-Glu-X-Gly (I)
(式中、Xは、アミノ酸残基又はアミノ酸誘導体残基を示す)ならびに
下記一般式(II)で表される化合物及びその塩:
γ-Glu-Y (II)
(式中、Yは、アミノ酸残基又はアミノ酸誘導体残基を示す)
からなる群より選択される少なくとも一つのγ-グルタミルペプチド;
(B)フマル酸又はその塩、及びクエン酸又はその塩。
[7]成分(A)の含有量:成分(B)の含有量の比が、フリー体に換算して、1:1~40である、[6]に記載の飲食品。
[8]成分(B)において、フマル酸又はその塩とクエン酸又はその塩の含有量の比率が、フリー体に換算して、1:1~50である、[6]または[7]に記載の飲食品。
[9]成分(A)が、γ-Glu-Val-Gly、γ-Glu-Abu-Gly、およびγ-Glu-Abuから選択される少なくとも1種のγ-グルタミルペプチド又はその塩である、[6]~[8]のいずれかに記載の飲食品。
[10]成分(A)が、γ-Glu-Val-Gly又はその塩である、[6]~[9]のいずれかに記載の飲食品。
[11]成分(A)の喫食濃度が0.1~100重量ppmとなるように添加されている、[6]~[10]のいずれかに記載の飲食品。
[12]成分(B)の喫食濃度が0.1~1000重量ppmとなるように添加されている、[6]~[11]のいずれかに記載の飲食品。
[13]飲食品が、先味が増強された飲食品である、[6]~[12]のいずれかに記載の飲食品。
[14]飲食品が、先味が付与された飲食品である、[6]~[12]のいずれかに記載の飲食品。
[15]下記成分(A)および(B)を飲食品またはその原料に添加することを含む、飲食品の先味を増強する方法:
(A)一般式(I)で表される化合物及びその塩:
γ-Glu-X-Gly (I)
(式中、Xは、アミノ酸残基又はアミノ酸誘導体残基を示す)ならびに
下記一般式(II)で表される化合物及びその塩:
γ-Glu-Y (II)
(式中、Yは、アミノ酸残基又はアミノ酸誘導体残基を示す)
からなる群より選択される少なくとも一つのγ-グルタミルペプチド;
(B)フマル酸又はその塩、及びクエン酸又はその塩。
[16]下記成分(A)および(B)を飲食品またはその原料に添加することを含む、飲食品に先味を付与する方法:
(A)一般式(I)で表される化合物及びその塩:
γ-Glu-X-Gly (I)
(式中、Xは、アミノ酸残基又はアミノ酸誘導体残基を示す)ならびに
下記一般式(II)で表される化合物及びその塩:
γ-Glu-Y (II)
(式中、Yは、アミノ酸残基又はアミノ酸誘導体残基を示す)
からなる群より選択される少なくとも一つのγ-グルタミルペプチド;
(B)フマル酸又はその塩、及びクエン酸又はその塩。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、先味が際立つためにきれのよい飲食品を提供することができる。
本発明により、乳風味の先味に優れ、後味の油脂感を断ち切るホイップクリーム等を提供することができる。
また、果汁味の先味に優れた飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、成分(A)一般式(I)で表される化合物及びその塩:
γ-Glu-X-Gly (I)
(式中、Xは、アミノ酸残基又はアミノ酸誘導体残基を示す)ならびに
下記一般式(II)で表される化合物及びその塩:
γ-Glu-Y (II)
(式中、Yは、アミノ酸残基又はアミノ酸誘導体残基を示す)
からなる群より選択される少なくとも一つのγ-グルタミルペプチド;ならびに(B)フマル酸又はその塩、及びクエン酸又はその塩を含有する先味増強用組成物に関する(以下本発明の組成物と略することもある)。
【0010】
成分(A)
本発明におけるγ-グルタミルペプチドとしては、上記一般式(I)で表されるγ-グルタミルトリペプチドおよび一般式(II)で表されるγ-グルタミルジペプチドが挙げられる。上記一般式において、「γ-」とは、グルタミン酸のγ位のカルボキシル基を介してXまたはYが結合していることを意味する。γ-グルタミルペプチドとしては、上記1種のγ-グルタミルペプチドを用いてもよく、2種またはそれ以上のγ-グルタミルペプチドを組み合わせて用いてもよい。
【0011】
一般式(I)及び(II)におけるX又はYは、アミノ酸残基又はアミノ酸誘導体残基を示し、アミノ酸としては、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、プロリン(Pro)、ヒドロキシプロリン(Hyp)等の中性アミノ酸、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)等の酸性アミノ酸、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)等の塩基性アミノ酸、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)等の芳香族アミノ酸、オルニチン(Orn)、サルコシン(Sar)、シトルリン(Cit)、ノルバリン(Nva)、ノルロイシン(Nle)、α-アミノ酪酸(Abu)、タウリン(Tau)、tert-ロイシン(t-Leu)、シクロロイシン(Cle)、α-アミノイソ酪酸(2-メチルアラニン)(Aib)、ペニシラミン(Pen)、ホモセリン(Hse)等の他のアミノ酸が挙げられる。
【0012】
アミノ酸誘導体としては、上記アミノ酸の各種誘導体をいう。アミノ酸誘導体としては、例えば、非天然アミノ酸、アミノアルコール、ならびに末端カルボニル基、末端アミノ基、およびシステインのチオール基等の官能基の1またはそれ以上が各種置換基により置換されたアミノ酸が挙げられる。置換基として、具体的には、例えば、アルキル基、アシル基、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルフォニル基、および各種保護基が挙げられる。
アミノ酸誘導体として、例えば、Arg(NO2):N-γ-ニトロアルギニン、Cys(SNO):S-ニトロシステイン、Cys(S-Me):S-メチルシステイン、Cys(S-allyl):S-アリルシステイン、Val-NH2:バリンアミド、Val-ol:バリノール(2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール)、Met(O):メチオニンスルホキシド、およびCys(S-Me)(O):S-メチルシステインスルホキシド等が挙げられる。
【0013】
γ-グルタミルペプチドとして、例えば、γ-Glu-Val-Gly、γ-Glu-Nva-Gly、γ-Glu-Abu、γ-Glu-Nvaが挙げられ、なかでもγ-Glu-Val-Glyが好ましい。
【0014】
本発明において、γ-グルタミルペプチドを構成するアミノ酸およびアミノ酸誘導体は、特記しない限り、いずれもL-体である。
【0015】
本発明において、γ-グルタミルペプチドの塩としては、経口摂取可能なものであれば特に制限されない。例えば、カルボキシル基等の酸性基に対する塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ジシクロへキシルアミン等の有機アミンとの塩、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩が挙げられる。また、アミノ基等の塩基性基に対する塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸との塩、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸、メチルマロン酸等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩が挙げられる。なお、塩としては、1種の塩を用いてもよく、2種またはそれ以上の塩を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
γ-グルタミルペプチド及びその塩としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。
【0017】
ペプチドの製造方法は特に制限されず、例えば公知の方法を利用できる。公知の方法としては、例えば、(1)化学的にペプチドを合成する方法や(2)酵素的な反応によりペプチドを合成する方法が挙げられる。アミノ酸残基数が2~3残基の比較的短いペプチドの合成には、特に、化学的に合成する方法を用いるのが簡便である。
【0018】
化学的にペプチドを合成する場合、ペプチド合成機を用いてペプチドを合成あるいは半合成することができる。化学的にペプチドを合成する方法としては、例えば、ペプチド固相合成法が挙げられる。合成されたペプチドは通常の手段、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。このようなペプチド固相合成法、およびそれに続くペプチド精製はこの技術分野においてよく知られたものである。
【0019】
酵素的な反応によりペプチドを合成する場合、例えば、WO2004/011653に記載の方法を用いることができる。具体的には、例えば、カルボキシル基がエステル化またはアミド化されたアミノ酸またはジペプチドと、アミノ基がフリーの状態であるアミノ酸(例えばカルボキシル基が保護されたアミノ酸)とを、ペプチド生成酵素の存在下で反応させることにより、ジペプチドまたはトリペプチドを合成することができる。合成されたジペプチドまたはトリペプチドは、適宜精製することができる。ペプチド生成酵素としては、例えば、ペプチドを生成する能力を有する微生物の培養物、該培養物から分離した培養上清、該培養物から分離した菌体、該微生物の菌体処理物、それらから分離したペプチド生成酵素が挙げられる。ペプチド生成酵素としては、必要に応じて適宜精製されたものを用いることができる。
【0020】
また、γ-グルタミルペプチドは、例えば、当該γ-グルタミルペプチドの生産能を有する微生物を培養し、培養液または菌体から当該γ-グルタミルペプチドを回収することで製造することができる。具体的には、例えば、特開2012-213376に記載の方法により、γ-Glu-Abu等のγ-グルタミルペプチドを高濃度に含有する酵母が得られる。また、γ-グルタミルペプチドは、例えば、当該γ-グルタミルペプチドを含有する農水畜産物から回収することで製造することができる。
【0021】
γ-グルタミルペプチドは、精製品であってもよく、そうでなくてもよい。すなわち、γ-グルタミルペプチドとしては、当該ペプチドを高含有する素材を用いてもよい。「γ-グルタミルペプチドを高含有する」とは、γ-グルタミルペプチドの含有量が100ppm(w/w)以上であることをいう。すなわち、「γ-グルタミルペプチドを配合(添加)すること」には、当該ペプチドそのものを配合することに限られず、当該ペプチドを高含有する素材を配合することも包含される。γ-グルタミルペプチドを高含有する素材として、具体的には、例えば、当該ペプチドの生産能を有する微生物を培養して得られた培養液、菌体、培養上清等の発酵生産物、およびそれらの加工品が挙げられる。加工品としては、上記のような発酵生産物を、濃縮、希釈、乾燥、分画、抽出、精製等の処理に供したものが挙げられる。そのような加工品としては、例えば、γ-Glu-Abu等のγ-グルタミルペプチドを含有する酵母エキス(特開2012-213376)が挙げられる。なお、酵母エキス以外にも、飲食品(食材や調味料を含む)には天然にγ-グルタミルペプチドを含有するものが存在し得るが、そのような酵母エキス以外の飲食品(食材や調味料を含む)そのものは、本発明の方法における「γ-グルタミルペプチドを高含有する素材」からは除かれてもよい。γ-グルタミルペプチドは、所望の程度に精製されていてよい。例えば、γ-グルタミルペプチドとしては、純度が50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、90%(w/w)以上、または95%(w/w)以上のものを用いてもよい。
【0022】
成分(B)
成分(B)におけるフマル酸は、フリー体および下記塩の形態の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
同様に成分(B)におけるクエン酸も、フリー体および下記塩の形態の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フマル酸及びクエン酸の塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ジシクロへキシルアミン等の有機アミンとの塩、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩が挙げられる。なかでもアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましい。
上記塩は、それぞれ水和物(含水塩)であってもよく、かかる水和物としては、たとえば1水和物~6水和物等が挙げられる。
【0023】
クエン酸のアルカリ金属塩としては、クエン酸の正塩(三アルカリ金属塩)、一水素二アルカリ金属塩及び二水素アルカリ金属塩が挙げられ、アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。具体的には、クエン酸三ナトリウム塩等が先味増強効果の観点から好ましい。
フマル酸のアルカリ金属塩としては、フマル酸のアルカリ金属塩が挙げられ、アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。具体的には、フマル酸一ナトリウム塩等が先味増強効果の観点から好ましい。
【0024】
フマル酸及びクエン酸ならびにそれらの塩としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。
【0025】
フマル酸及びクエン酸ならびにそれらの塩の製造方法は特に制限されず、例えば公知の方法を利用できる。
【0026】
フマル酸及びクエン酸は、精製品であってもよく、そうでなくてもよい。すなわち、フマル酸及びクエン酸としては、当該酸を高含有する素材を用いてもよい。「フマル酸又はクエン酸を高含有する」とは、「先味」の増強効果が得られる限り特に制限されないが、例えば、フマル酸又はクエン酸の含有量が1%(w/w)以上、1.5%(w/w)以上、5%(w/w)以上、または10%(w/w)以上であることであってもよい。すなわち、「フマル酸及びクエン酸を配合(添加)すること」には、フマル酸及びクエン酸そのものを配合することに限られず、フマル酸及びクエン酸を高含有する素材を配合することも包含される。フマル酸又はクエン酸を高含有する素材として、具体的には、例えば、フマル酸又はクエン酸の生産能を有する微生物を培養して得られた培養液、菌体、培養上清等の発酵生産物、およびそれらの加工品が挙げられる。加工品としては、上記のような発酵生産物を、濃縮、希釈、乾燥、分画、抽出、精製等の処理に供したものが挙げられる。なお、飲食品(食材や調味料を含む)には天然にフマル酸及び/又はクエン酸を含有するものが存在し得るが、そのような飲食品(食材や調味料を含む)そのものは、本発明における「フマル酸及びクエン酸を高含有する素材」からは除かれてもよい。フマル酸及びクエン酸は、所望の程度に精製されていてよい。例えば、フマル酸及びクエン酸としては、純度が50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、90%(w/w)以上、または95%(w/w)以上のものを用いてもよい。
【0027】
なお、本発明の組成物においては、成分(A)と成分(B)の両方を含んでいればどのような形態も本発明に含まれる。例えばγ-グルタミルペプチドのフマル酸塩やクエン酸塩を含む場合は、成分(A)と成分(B)の両方を含む組成物に該当し本発明の組成物に含まれる。
【0028】
本発明の組成物において、成分(A)と成分(B)の重量比(フリー体で換算する)は、飲食品の有する呈味の先味が向上し呈味のバランスに優れるという観点から、通常1:1~40であり、好ましくは1:3~30、より好ましくは1:4~25、さらに好ましくは1:5~25である。
【0029】
成分(B)において、フマル酸又はその塩の含有量とクエン酸又はその塩の重量比(フリー体で換算する)は、飲食品の有する呈味の先味が向上し呈味のバランスに優れるという観点から、通常1:1~50、好ましくは1:2~30、より好ましくは1:3~25である。
【0030】
本発明の組成物は、「先味」増強機能を有する。「先味」増強機能とは、飲食品等の対象物が有する呈味の先味を増強する機能をいう。よって、本発明の組成物は、飲食品の呈味の先味を増強するために利用できる。すなわち、本発明の組成物の一態様は、先味増強剤である。本発明において、「先味」とは、甘味、塩味、酸味、苦味、旨味で表される基本味だけではなく、コク味や果汁感、乳風味、乳感、油脂感、スパイス感、ナッツ風味などの基本味の周辺の味や風味を口に入れた瞬間の味覚を意味し、舌や口腔内に存在する味蕾に呈味物質が触れた時の感覚を意味する。「先味」の測定および比較は、例えば、専門パネルによる官能評価により実施できる。
【0031】
通常呈味パターンは、先味、中味、および後味に分けることができる。本発明において、例えば、各種呈味についての先味、中味、および後味とは、液体の場合(液体の飲食品の場合)は、それぞれ、喫食後(飲食品を口に含んだ後)0秒~1秒まで、1秒~3秒まで、および3秒~5秒までに感じる呈味を意味する。また、本発明において、呈味についての先味、中味、および後味とは、固体の場合(固体の飲食品の場合)は、それぞれ、喫食後(飲食品を口に含んだ後)0秒~4秒まで、4秒~10秒まで、および10秒~15秒までに感じる呈味を意味する。本発明において、「固体」とは、液体以外の形態をいい、ペーストやゲル等も包含する。本発明においては、成分(A)と成分(B)を併用することにより、成分(A)を単独で使用する場合と比較して、飲食品の呈味の先味(飲食品の喫食後0秒~1秒まで(液体の場合)または0秒~4秒まで(固体の場合)の呈味)をさらに増強することができる。すなわち、本発明においては、成分(A)と成分(B)を併用することにより、成分(A)を単独で使用する場合と比較して、飲食品の呈味の先味の(飲食品の喫食後0秒~1秒まで(液体の場合)または0秒~4秒まで(固体の場合)の先味)をさらに増強する効果が得られる。よって、本発明の組成物は、例えば、飲食品の呈味の先味を増強するために利用できる。すなわち、本発明の組成物の一態様は、例えば、呈味先味付与剤(飲食品に呈味の先味を付与することができる「先味」付与剤)であってよい。
【0032】
本発明において先味増強の対象となる、飲食品の呈味は、特に限定されない。
【0033】
本発明において飲食品は、経口摂取される組成物又は口腔内に使用される組成物であって、上記呈味を含んでいれば特に制限されないが、食品、調味料、医薬品、医薬部外品、香粧品が包含される。
【0034】
食品としては、例えば、乳飲料、乳酸菌飲料、清涼飲料(果汁入りを含む)、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、スポーツ飲料、ゼリー飲料、粉末飲料等の飲料類;アルコール飲料;コーヒー飲料、紅茶飲料等の茶飲料類;コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類及びその即席粉末食品;ホイップクリーム、ジャム、果実のシロップ煮、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;カレー、シチュー、牛丼、スープ等のレトルト食品;ハンバーグ、ハム、ソーセージ等の食肉加工食品;かまぼこ、ちくわ等の水産加工食品;チーズ等の酪農製品類;バター、発酵乳、粉乳等の乳製品;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等の冷菓類;パン類;うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ及びワンタン等の麺類(フライ麺やノンフライ麺などの即席麺も含む);グミ、キャンディー、ガム、錠菓、スナック等の菓子類;栄養バー等が挙げられる。飲食品は、そのまま喫食できる態様で提供されてもよく、そうでなくてもよい。飲食品は、例えば、喫食前または喫食時に喫食に適した態様に調製されて喫食されてもよい。例えば、コーヒー飲料等の飲料の場合、そのまま喫食できる容器入り飲料(缶コーヒー等)として提供されてもよく、希釈して喫食する粉末等の濃縮物(スティックコーヒー等)として提供されてもよい。
【0035】
また、食品には、一般食品に限られず、栄養補助食品(サプリメント)、栄養機能食品、特定保健用食品等の、いわゆる健康食品や医療用食品も包含される。例えば、上記例示したような食品は、一般食品として提供されてもよいし、健康食品や医療用食品として提供されてもよい。
【0036】
調味料としては、砂糖や塩等の固体調味料;ドレッシング、ケチャップ、マヨネーズ、たれ、ソース等の液体調味料;味噌等の半固体調味料等が挙げられる。
【0037】
医薬品としては、上記呈味成分を含んでいれば特に制限されず、あらゆる経口医薬品が包含される。例えばビタミン剤、滋養強壮剤、栄養剤、サプリメント、及び各種の医薬製剤を挙げることができる。これらはいずれも形態を問うものではなく散剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、液剤、シロップ剤等のいずれであってもよい。なかでも口中で溶解して服用する、口腔内崩壊錠、トローチ、チュアブル錠等に本発明の組成物は好ましく使用される。
【0038】
医薬部外品としては、歯磨き剤、口中清涼剤、口臭予防剤、口臭除去剤、洗口剤、うがい剤等が挙げられる
【0039】
香粧品としては、口紅等が挙げられる。
【0040】
本発明の組成物は、成分(A)及び(B)のみ、又は「その他の成分」を加えて、食品製造等の分野において慣用の方法により製造することができる。
「その他の成分」として、本発明の効果を損なわない範囲であれば特には限定されないが、例えば、アラニン、グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸類およびその塩;酢酸、酒石酸等の有機酸類およびその塩;食塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類;難消化性デキストリン等の食物繊維;砂糖、蜂蜜、メープルシロップ、スクロース、グルコース、フルクトース、異性化糖、オリゴ糖等の糖類;キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール類;高甘味度甘味料;イノシン酸、グアニル酸、キサンチル酸等の核酸類およびその塩;pH緩衝剤、賦形剤、増量剤、香料、食用油、エタノール、水が挙げられる。
「その他の成分」としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
本発明の組成物の形態は、特に制限されないが、飲食品に添加しやすい形態であり、粉状、顆粒状、液状、シロップ状、ゼリー状、ペースト状、キューブ状等が挙げられる。製剤化は常法により行うことができる。
【0042】
本発明の組成物における成分(A)及び(B)の濃度や含有比率は、成分(A)及び(B)の種類、成分(A)及び(B)の喫食濃度、本発明の組成物の使用量等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0043】
本発明の組成物における成分(A)及び(B)の総濃度は、特に制限されないが、通常1~20重量%であり、2~15重量%が好ましく、3~10重量%がより好ましい。
【0044】
なお、成分(A)及び(B)の含有量(濃度)は、成分(A)及び(B)を含有する素材を用いる場合にあっては、当該素材中の成分(A)及び(B)そのものの量に基づいて算出されるものとする。また、成分(A)及び(B)の含有量(濃度)は、成分(A)及び(B)が塩を形成している場合にあっては、塩の質量を等モルのフリー体の質量に換算した値に基づいて算出されるものとする。
【0045】
本発明の組成物における成分(A)及び(B)の濃度は、例えば、上記例示した成分(A)及び(B)の総濃度や含有比率を満たすように設定することができる。
【0046】
本発明の組成物における成分(A)の含有量(濃度)は、例えば、本発明の組成物を利用して飲食品を製造した際に、成分(A)の喫食濃度が所望の範囲となるような濃度であってよい。成分(A)の喫食濃度は、通常0.1~100ppm、好ましくは0.5~50ppm、より好ましくは1~10ppm(w/w)である。
【0047】
本発明の組成物における成分(B)の含有量(濃度)は、例えば、本発明の組成物を利用して飲食品を製造した際に、成分(B)の喫食濃度が所望の範囲となるような濃度であってよい。成分(B)の喫食濃度は、通常0.1~1000ppm、好ましくは0.5~500ppm、より好ましくは1~100ppm(w/w)である。成分(B)の喫食濃度は、成分(B)を単独で飲食品に添加した際に味や風味に影響しない濃度の範囲内であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0048】
本発明の組成物に含まれる各成分(すなわち、成分(A)及び(B)および任意でその他の成分)は、互いに混合されて本発明の組成物に含まれていてもよく、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、本発明の組成物に含まれていてもよい。本発明の組成物を添加して製造された飲食品中で成分(A)及び(B)が共存していれば先味の増強効果が得られる。
【0049】
本発明には、成分(A)及び(B)を含む、飲食品も含まれる。また、本発明には、成分(A)及び(B)を飲食品またはその原料に添加することを含む、飲食品の先味を増強する方法及び飲食品に先味を付与する方法も含まれる。
【0050】
なお、本発明の飲食品及び方法において成分(A)と成分(B)の両方に該当する成分、例えばγ-グルタミルペプチドのクエン酸塩やフマル酸塩を使用又は添加する場合、成分(A)と成分(B)を使用または添加する場合に該当する。すなわち、本発明の飲食品や方法においては、最終的に飲食品中に成分(A)と成分(B)を含めばよい。
【0051】
本発明の飲食品は、具体的には、呈味の先味が増強された飲食品である。本発明の飲食品は、より具体的には、呈味の先味の付与された飲食品であってよい。また、本発明の飲食品は、言い換えると、成分(A)および成分(B)が添加された飲食品である。なお、「添加」を「配合」ともいう。飲食品としては、上述のものが挙げられる。
【0052】
本発明の飲食品は、本発明の組成物または成分(A)及び(B)を添加すること以外は、通常の飲食品と同様の原料を用い、同様の方法によって製造することができる。本発明の組成物または成分(A)及び(B)の添加は、飲食品の製造工程のいずれの段階で行われてもよい。すなわち、本発明の組成物または成分(A)及び(B)は、飲食品の原料に添加されてもよく、製造途中の飲食品に添加されてもよく、完成した飲食品に添加されてもよい。本発明の組成物または成分(A)及び(B)は、1回のみ添加されてもよく、2またはそれ以上の回数に分けて添加されてもよい。また、本発明の組成物を添加する場合、本発明の組成物が成分(A)及び(B)をそれぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に含む場合には、成分(A)及び(B)は同時に飲食品またはその原料に添加されてもよいし、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、飲食品またはその原料に添加されてもよい。また、成分(A)及び(B)を添加する場合、成分(A)及び(B)は同時に飲食品またはその原料に添加されてもよいし、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、飲食品またはその原料に添加されてもよい。
【0053】
本発明においては、例えば、本発明の組成物を利用して飲食品の呈味の先味を付与することができる。すなわち、本発明の組成物を添加することにより成分(A)及び(B)を添加することができ、以て、飲食品に呈味の先味を付与することができる。すなわち、本発明の方法は、例えば、本発明の組成物を飲食品またはその原料に添加することを含む、飲食品に呈味の先味を付与する方法であってよい。
【0054】
本発明の方法は、さらに、その他の成分(成分(A)及び(B)以外の成分)を添加することを含んでいてもよい。ここでいう「その他の成分」については、上述した本発明の組成物における「その他の成分」についての記載を準用できる。また、本発明の組成物を「その他の成分」とさらに併用してもよい。「その他の成分」を添加する場合、「その他の成分」の添加も、本発明の組成物または成分(A)及び(B)の添加と同様に行うことができる。例えば、「その他の成分」と本発明の組成物または成分(A)及び(B)とは、同時に飲食品またはその原料に添加されてもよいし、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、飲食品またはその原料に添加されてもよい。
【0055】
成分(A)は、飲食品またはその原料に、例えば、成分(A)の喫食濃度が所望の範囲となるように添加されてよい。成分(A)の喫食濃度は、通常0.1~100ppm、好ましくは0.5~50ppm、より好ましくは1~10ppm(w/w)である。
【0056】
成分(B)は、飲食品またはその原料に、例えば、成分(B)の喫食濃度が所望の範囲となるように添加されてよい。成分(B)の喫食濃度は、通常0.1~1000ppm、好ましくは0.5~500ppm、より好ましくは1~100ppm(w/w)である。成分(B)の喫食濃度は、成分(B)を単独で飲食品に添加した際に味や風味に影響しない濃度の範囲内であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0057】
上記例示した成分(A)及び(B)の喫食濃度は、飲食品の喫食態様に応じて、そのまま、あるいは適宜修正して、当該成分(A)及び(B)の添加量とすることができる。すなわち、濃縮または希釈されず喫食される(例えば、そのまま喫食される)飲食品を製造する場合、上記例示した成分(A)及び(B)の喫食濃度は、そのまま、当該成分(A)及び(B)の添加量と読み替えてよい。また、濃縮または希釈されて喫食される飲食品を製造する場合、上記例示した成分(A)及び(B)の喫食濃度と、濃縮または希釈の倍率とから、当該成分(A)及び(B)の添加量を設定することができる。例えば、10倍希釈して喫食される飲食品を製造する場合、上記例示した成分(A)及び(B)の喫食濃度の10倍を、当該成分(A)及び(B)の添加量として設定してよい。
【0058】
本発明の飲食品における成分(A)の含有量に対する成分(B)の含有量の比率(重量比)(成分(A)の含有量:成分(B)の含有量)は、フリー体に換算して、通常1:1~40であり、好ましくは1:3~30であり、より好ましくは1:4~25、さらに好ましくは1:5~25である。
【0059】
本発明の飲食品における成分(B)において、フマル酸又はその塩の含有量とクエン酸又はその塩の含有量の重量比(フマル酸又はその塩の含有量:クエン酸又はその塩の含有量)は、飲食品の有する呈味の先味が向上し呈味のバランスに優れるという観点から、フリー体に換算して、通常1:1~50、好ましくは1:2~30、より好ましくは1:3~25である。
【0060】
なお、成分(A)及び(B)の含有量(濃度)は、成分(A)及び(B)を含有する素材を用いる場合にあっては、当該素材中の成分(A)及び(B)そのものの量に基づいて算出されるものとする。また、成分(A)及び(B)の含有量(濃度)は、成分(A)及び(B)が塩を形成している場合にあっては、塩の質量を等モルのフリー体の質量に換算した値に基づいて算出されるものとする。本発明の方法においても、添加量の重量比等は既述に準じる。
【0061】
本発明の組成物を添加する場合、その添加量は、成分(A)及び(B)の種類、本発明の組成物における成分(A)及び(B)の濃度、飲食品の摂取態様等の諸条件に応じて既述に準じて適宜設定することができる。
【0062】
本発明の組成物及び飲食品の製造方法には、必要に応じて食品添加物を混合し、溶解する工程、容器に充填する工程、ならびに殺菌処理する工程等、飲食品の製造工程に通常含まれる処理や工程が含まれ得る。
【実施例】
【0063】
以下に本発明について、実施例によりさらに詳細に説明する。なお、以下において、特に断らない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0064】
(実施例1)みかんアイス及びみかん果肉に対する効果
1.サンプルの調製
表1に示す材料と量に従い、耐熱性容器に計量して入れ、よく撹拌しサンプルを得た。
【0065】
2.飲食品の調製
(1)みかんアイス;みかんジュースを主とした溶液(ミカン果汁35%)に各サンプルを0.1%添加し、溶解後冷凍した。
(2)みかん果肉;みかん果肉にシロップおよび各サンプルを0.1%添加し、煮込み、冷却後冷凍した。
【0066】
3.評価
得られた各種みかんアイス及びみかん果肉について、専門パネラー3名によって、下記評価基準に従い官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
評価基準
◎:先味の果汁感が向上し、バランスが良い
〇:先味の果汁感がやや向上する
×:効果はない
【0068】
【0069】
みかん果肉についてもみかんアイスと同様の結果が得られた。
【0070】
(実施例2)ホイップクリームに対する効果
1.ホイップクリームの調製
(1)ボウルに表2に記載の割合で、クリーム2種(植物性クリームと動物性クリーム)、グラニュー糖、実施例1で得られたサンプル9を0.05%を加え、ホイッパーで撹拌した。
(2)キッチンエイドでホイップする。8速4分程度でクリームがもったりしてきたら、6速に落として角立ちが確認できる状態になったら撹拌をやめてクリームのサンプルを得た。
(3)比重を比重測定用プラスチックカップで測定した(各クリームの比重は0.47±0.02)。
植物性クリーム:ホイップクリーム(不二製油(株)「ムワーレ」)
動物性クリーム:生クリーム(よつ葉乳業(株)「ノーザンハーツ35」)
【0071】
2.評価
得られたホイップクリームについて、専門パネラー3名によって、官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0072】
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明により、先味が向上した飲食品を提供することができる。