(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/98 20060101AFI20230404BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230404BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20230404BHJP
A61K 8/9706 20170101ALI20230404BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
A61K8/98
A61K8/73
A61K8/9789
A61K8/9706
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2018233994
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】緒方 真由美
(72)【発明者】
【氏名】竹内 伸之
(72)【発明者】
【氏名】谷村 淳一
(72)【発明者】
【氏名】大杉 有紀子
(72)【発明者】
【氏名】古林 典之
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-204014(JP,A)
【文献】国際公開第2008/149601(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)プラセンタエキス、(b)ヘパリン類似物質、(c)オウレンエキス、オウバクエキス、及び海藻エキスからなる群から選ばれる少なくとも1種、及び(d)水を含有することを特徴とする外用組成物。
【請求項2】
剤形が、ローション、クリーム、乳液、ゲル、又はパックである、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
外用組成物が、化粧品、医薬部外品、又は医薬品である、請求項1又は2に記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラセンタエキスを含有し、製造適性及び製剤安定性に優れた外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラセンタエキスは動物の胎盤等から抽出されたエキスであり、肌のターンオーバーや皮膚バリア機能の強化、抗酸化作用などが知られていることから、経口製剤や外用製剤に広く配合され、医療分野や美容分野で用いられている。このように肌への有用性が示される一方で、他の成分との相溶性が悪く、経時的な変色や変臭が起こるため製剤中への安定配合が困難であることが知られ、特定量のリン脂質と共に配合することにより解決できることが報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、プラセンタエキスを含有する外用組成物を製造したところ、調製時に製剤の泡立ちが生じることを見出した。さらに、製造したプラセンタエキス配合製剤を保管したところ、経時的に澱が生じ、製剤安定性に課題があることを見出した。今までに、プラセンタエキスを製剤に配合する場合に、製造時の泡立ちや、製造した製剤について経時的に澱が発生するといった製剤安定性の課題について報告された例はない。製造時の泡立ちは、製剤の均一性を妨げる要因となるほか、充てん量のばらつき等の観点から好ましくない。また、澱の発生は、外観の変化を伴うため、商品価値を著しく損なうことになる。従って、プラセンタ配合製剤の提供にあたり、製剤の安定性の向上と製造時の泡立ち抑制技術が求められる。
【0005】
本発明はプラセンタエキスを含有し、製造適性及び製剤安定性に優れた外用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、プラセンタエキスと水を含有する外用組成物にヘパリン類似物質、並びにオウレンエキス、オウバクエキス、及び海藻エキスから選ばれる少なくとも1種を配合することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、
(1)(a)プラセンタエキス、(b)ヘパリン類似物質、及び(c)オウレンエキス、オウバクエキス、及び海藻エキスからなる群から選ばれる少なくとも1種、及び(d)水を含有することを特徴とする外用組成物、
(2)剤形が、ローション、クリーム、乳液、ゲル、又はパックである、(1)に記載の外用組成物、
(3)外用組成物が、化粧品、医薬部外品、又は医薬品である、(1)又は(2)に記載の外用組成物、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、プラセンタエキスを含有し、製造適性及び製剤安定性に優れた外用組成物を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の外用組成物において用いる各成分は、通常医薬品、医薬部外品、又は化粧品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。
【0010】
本発明の外用組成物中におけるプラセンタエキスの由来としては、例えばヒト、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジなどが挙げられるが、好ましくはブタである。また、プラセンタエキスとして市販されている商品(例えばビオカタライザープラセンタAPF(SW)(M-PE-APF))を使用してもよい。
本発明の外用組成物中におけるプラセンタエキスの含有量は、0.01~5w/w%が好ましく、0.1~0.5w/w%がより好ましい。
【0011】
本発明の外用組成物中におけるヘパリン類似物質の含有量は、0.01~5w/w%が好ましく、0.1~0.5w/w%がより好ましい。また、プラセンタエキス1質量部に対して0.001~500質量部が好ましく、0.01~50質量部がより好ましい。
【0012】
本発明におけるオウレンエキスは、キンポウゲ科(Ranunculaceae)、オウレン属(Coptis)の植物オウレン(学名Coptis japonica Makino)であるが、抽出部位は、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、種子部、花部等の地上部、根茎部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは根茎部である。上記抽出物の抽出方法は特に限定されず、常法に従って行うことができる。抽出に用いられる抽出溶媒としては、極性溶媒、非極性溶媒のいずれも使用することができ、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及びこれらの混液を用いることができる。上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理したものを用いても良い。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物としたものとして用いても良い。また市販品を用いることもできる。
【0013】
本発明におけるオウバクエキスは、ミカン科キハダ属に属する落葉高木であるキハダ(学名Phellodendron amurense Ruprecht)であるが、抽出部位は、葉部、茎部、花部、樹皮部、果実部、果皮部、果核部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは樹皮部である。上記抽出物の抽出方法は特に限定されず、常法に従って行うことができる。抽出に用いられる抽出溶媒としては、極性溶媒、非極性溶媒のいずれも使用することができ、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及びこれらの混液を用いることができる。上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理したものを用いても良い。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物としたものとして用いても良い。また市販品を用いることもできる。
【0014】
本発明における海藻エキスは褐藻類(Phaeophyta)、紅藻類(Rhodophyta)及び緑藻類(Chlorophyta)などから抽出して得られるエキスである。褐藻類としては、例えば、ヒバマタ、コンブなどが挙げられる。紅藻類としては、イギスなどが挙げられる。緑藻類としてはアオノリなどが挙げられる。これらの中でも前記海藻は褐藻類が好ましく、ヒバマタが特に好ましい。海藻エキスの市販品としては、例えば、カイソウ抽出液BG-J(ヒバマタエキス、丸善製薬株式会社製)、ファルコレックス ヒバマタ(ヒバマタエキス、一丸ファルコス株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、カイソウ抽出液BG-Jが好ましい。海藻エキスの抽出方法は特に限定されず、常法に従って行うことができる。抽出に用いられる抽出溶媒としては、極性溶媒、非極性溶媒のいずれも使用することができ、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及びこれらの混液を用いることができる。上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理したものを用いても良い。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物としたものとして用いても良い。また市販品を用いることもできる。
【0015】
本発明の外用組成物中におけるオウレンエキス、オウバクエキス、海藻エキスの含有量は0.0001~10w/w%が好ましく、0.01~1w/w%がより好ましい。また、ヘパリン類似物質1質量部に対して0.001~1000質量部が好ましく、0.01~500質量部がより好ましい。
【0016】
本発明の外用組成物は、水を含有する。本発明の外用組成物中における水の含有量は、1~99.9w/w%が好ましく、50~99.9w/w%がより好ましい。
【0017】
本発明の外用組成物は、上記の各成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧品、医薬部外品、医薬品などに用いられる各種成分を適宜配合することができる。例えば、pH調整剤(クエン酸、クエン酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)、香料、清涼化剤(メントール、ハッカ油、カンフル等)、抗炎症剤(サリチル酸、グリチルリチン酸又はその塩、グリチルレチン酸、アラントイン等)、殺菌剤(グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール等)、防腐剤(パラベン類(メチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン等)、安息香酸又はその塩、フェノキシエタノール等)、保湿剤(ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸、多価アルコール(グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール等)、アミノ酸(L-セリン、L-プロリン、L-ヒドロキシプロリン等)等)、各種動植物(ボタンピ、カンゾウ、ローズマリー、セージ等)の抽出物、ビタミン類(パルミチン酸レチノール、アスコルビン酸、硝酸チアミン、シアノコバラミン、ビオチン、リボフラビン、ニコチン酸アミド等)、抗酸化剤(ジブチルヒドロキシトルエン、ピロ亜硫酸ナトリウム、トコフェロール、エデト酸ナトリウム、アスコルビン酸、イソプロピルガレート等)、溶解補助剤(各種植物油、各種動物油、アルキルグリセリルエーテル、炭化水素類等)、代謝賦活剤、ゲル化剤(水溶性高分子(カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、油性ゲル化剤(ステアリン酸イヌリン、パルミチン酸デキストリン等)等)、粘着剤等が挙げられる。これらの成分の添加量は、特に制約はなく、使用感等を考慮しながら適宜定めることができる。
【0018】
本発明の外用組成物は化粧品、医薬部外品、医薬品などの用途に使用できる。
【0019】
本発明における外用組成物とは、成分(d)の水を含む外用組成物である。
【0020】
本発明の外用組成物は皮膚に適用できる剤形である限り、その形態は特に制限されない。具体的な剤形としては、ローション、クリーム、乳液、ゲル、パック、入浴剤等が挙げられる。これらの剤形のうち、ローション、クリームが特に好ましい。本発明の外用組成物は、剤形に応じて常法により製造することができる。
【実施例】
【0021】
以下に、実施例、比較例及び試験例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明は、下記の例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において、数値は全て質量%を意味するものとする。
【0022】
(外用組成物の調製法)
以下表1~4に示す処方に従い、プラセンタエキス(BIODELL BIOCHEMICAL S.A.製のビオカタライザープラセンタAPF(SW)(M-PE-APF))、ヘパリン類似物質、各種エキス(オウバクエキス:丸善製薬株式会社製のオウバク抽出液BG-J、オウレンエキス:一丸ファルコス株式会社製のファルコレックス オウレンB、海藻エキス:丸善製薬株式会社製のカイソウ抽出液BG-J)を精製水に均一に溶解し、実施例1~5及び比較例1~7の外用組成物を得た。
【0023】
(試験例1:泡立ちの評価1)
実施例1~2及び比較例1の外用組成物5mLを20mLの遠沈管に充てんし、振とう機にて315rpmで5分間振とうした。直後の泡の状態を目視で確認し、評価した。
【0024】
【0025】
プラセンタエキス及びヘパリン類似物質を配合した比較例1の外用組成物は、大きな泡が生じたが、オウバクエキス又は海藻エキスを配合することで細かい泡がわずかに確認されるのみで、泡立ちを抑制することができた。
【0026】
(試験例2:泡立ちの評価2)
200mLガラスビーカーに実施例3~5及び比較例2、3の外用組成物100mLを入れ、ホモミキサーを用いて1500rpmで10分間攪拌した。攪拌後に生じた泡の高さを測定した。
【0027】
【0028】
プラセンタエキス単独またはプラセンタエキス及びヘパリン類似物質を配合した外用組成物では泡立ちが生じたが、オウレンエキスもしくはオウバクエキスを配合することで、泡立ちは抑制された。
【0029】
(試験例3:澱の評価)
ガラス容器に実施例3、4及び比較例4~7の各外用組成物100mLを充てんし、室温にて1週間保管した。保管後の澱の発生状況について目視にて評価した。
(澱の評価基準)
○:澱なし
×:澱あり
【0030】
【0031】
(試験例4:澱の評価)
ガラス容器に実施例5及び比較例3の各外用組成物100mLを充てんし、室温にて2週間保管した。保管後の澱の発生状況について目視にて評価した。
(澱の評価基準)
○:澱なし
×:澱あり
【0032】
【0033】
プラセンタエキス単独またはプラセンタエキス及びオウレンエキス、オウバクエキス、又は海藻エキスを配合した外用組成物では澱が生じたが、ヘパリン類似物質を配合することで、澱の発生が抑制された。
【0034】
以上より、ヘパリン類似物質とオウレンエキス、オウバクエキス、海藻エキスから選ばれる1種以上のエキスを配合することでプラセンタエキスを配合した外用組成物の泡立ち、澱の発生を同時に抑制できた。
【0035】
(処方例)
以下表5に示す処方に従い、各成分を水に均一に溶解し、外用組成物を得た。なお、以下処方例1、2の数値は全て質量%を意味するものとする。
【0036】
【0037】
*1:2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体含有組成物は、商品名「Lipidure-NR」(日油株式会社製)を用いた。
*2:テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル含有組成物は、商品名「SBG-24」(山川貿易株式会社製)を用いた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明により、プラセンタエキスを含有し、製造適性及び製剤安定性に優れた外用組成物を提供することが可能になった。