(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、パターン、カラーフィルタ、ブラックマトリクス、表示装置、撮像素子、および、表示装置または撮像素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/033 20060101AFI20230404BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230404BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230404BHJP
C08F 290/12 20060101ALI20230404BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20230404BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230404BHJP
G02F 1/1333 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
G03F7/033
G03F7/004 505
G03F7/004 501
G02B5/20 101
C08F290/12
G02F1/1335 500
G02F1/1335 505
G03F7/20 501
G02F1/1333 505
(21)【出願番号】P 2018237393
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2018141019
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】田邊 潤壱
(72)【発明者】
【氏名】久保山 俊治
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/129182(WO,A1)
【文献】特開2007-133032(JP,A)
【文献】特開2007-079294(JP,A)
【文献】特開2007-171320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下一般式(1)で表される構造単位
および以下一般式(2)で表される構造単位を含むポリマーと、光重合開始剤とを含む感光性樹脂組成物
であって、
【化1】
一般式(1)中、R
pは、2以上の
(メタ)アクリロイル基を含む基であ
り、
【化2】
一般式(2)中、R'は、(メタ)アクリロイル基を1つのみ含む基であり、
(一般式(1)で表される構造単位のモル量)/(一般式(2)で表される構造単位のモル量)の値は、1以下である、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項
1に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリマーが、さらに、以下式(MA)で表される構造単位を含む感光性樹脂組成物。
【化3】
【請求項3】
請求項1
または2に記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに、溶剤を含む感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに着色剤を含む感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに遮光剤を含む感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリマーを、窒素雰囲気下で、35℃から350℃まで10℃/分の速度で昇温したときの重量減少率が10~26%である感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物であって、
空気下で250℃、1時間加熱して硬化させたときに、23℃のテトラヒドロフランに実質的に不溶となる感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いて得られるパターン。
【請求項9】
請求項
4に記載の感光性樹脂組成物を用いて得られるカラーフィルタ。
【請求項10】
請求項
9に記載のカラーフィルタを備える表示装置。
【請求項11】
請求項
9に記載のカラーフィルタを備える撮像素子。
【請求項12】
請求項
5に記載の感光性樹脂組成物を用いて得られるブラックマトリクス。
【請求項13】
請求項
12に記載のブラックマトリクスを備える表示装置。
【請求項14】
請求項
12に記載のブラックマトリクスを備える撮像素子。
【請求項15】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物により樹脂膜を形成する製膜工程と、
前記樹脂膜を露光する露光工程と、
露光された前記樹脂膜を現像する現像工程と
を含む表示装置または撮像素子の製造方法。
【請求項16】
請求項
15に記載の表示装置または撮像素子の製造方法であって、
さらに、現像された前記樹脂膜を硬化させる硬化工程を含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、パターン、カラーフィルタ、ブラックマトリクス、表示装置、撮像素子、および、表示装置または撮像素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置(典型的には液晶表示装置)や撮像素子(典型的には固体撮像素子)は、通常、カラーフィルタやブラックマトリクスを備えている。カラーフィルタやブラックマトリクスの形成には、感光性樹脂組成物が用いられることが多い。
【0003】
一例として、特許文献1の請求項1には、少なくとも側鎖に、酸性基を有する基および2種以上の互いに異なる重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂、重合性化合物、ならびに、光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物が記載されている。また、特許文献1の実施例には、アルカリ可溶性樹脂として、メタクリル酸/メタクリル酸アリル/グリシジル付加体を合成し、これを用いて感光性樹脂組成物を調製したことが記載されている。
【0004】
別の例として、特許文献2には、エポキシ基及び酸基を含有する樹脂と、水酸基含有多官能(メタ)アクリレートの多塩基酸モノエステルと、溶剤とを含有する樹脂組成物であって、エポキシ基及び酸基を含有する樹脂中の酸基1モルに対して、エポキシ基が0.5~3.0モルであることを特徴とする樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2012/147706号
【文献】国際公開第2016/103844号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カラーフィルタやブラックマトリクスを形成するための感光性樹脂組成物としては、光により重合反応および/または架橋反応が起こって硬化する性質のものがよく用いられる。
感光性樹脂組成物において、「高感度化」は一般的な課題にも思われるが、表示装置や撮像装置の複雑化や普及などに伴い、一層高いレベルの高感度化が求められている。感光性樹脂組成物の感度が高い(感度が良好である)ほど、露光に必要な時間は短くなり、生産性を向上させることができる。また、感光性樹脂組成物が高感度であると、その高感度を原資として、他の性能の改良(例えば現像性や耐熱性の改良)が容易になる場合もある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。本発明は、例えばカラーフィルタやブラックマトリクスの形成に好ましく用いることができる、感度が良好な感光性樹脂組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、検討の結果、以下に提供される発明を完成させた。
本発明は、以下のとおりである。
【0009】
1.
以下一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーと、光重合開始剤とを含む感光性樹脂組成物。
【0010】
【0011】
一般式(1)中、Rpは、2以上の重合性二重結合を含む基である。
【0012】
2.
1.に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリマーが、さらに、以下一般式(2)で表される構造単位を含む感光性樹脂組成物。
【0013】
【0014】
一般式(2)中、R´は、重合性二重結合を1つのみ含む基である。
【0015】
3.
1.に記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリマーが、以下一般式(2)で表される構造単位を含まない感光性樹脂組成物。
【0016】
【0017】
一般式(2)中、R´は、重合性二重結合を1つのみ含む基である。
【0018】
4.
1.~3.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリマーが、さらに、以下式(MA)で表される構造単位を含む感光性樹脂組成物。
【0019】
【0020】
5.
1.~4.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに、溶剤を含む感光性樹脂組成物。
【0021】
6.
1.~5.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに着色剤を含む感光性樹脂組成物。
【0022】
7.
1.~5.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
さらに遮光剤を含む感光性樹脂組成物。
【0023】
8.
1.~7.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
前記ポリマーを、窒素雰囲気下で、35℃から350℃まで10℃/分の速度で昇温したときの重量減少率が10~26%である感光性樹脂組成物。
【0024】
9.
1.~8.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物であって、
空気下で250℃、1時間加熱して硬化させたときに、23℃のテトラヒドロフランに実質的に不溶となる感光性樹脂組成物。
【0025】
10.
1.~9.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物を用いて得られるパターン。
【0026】
11.
6.に記載の感光性樹脂組成物を用いて得られるカラーフィルタ。
【0027】
12.
11.に記載のカラーフィルタを備える表示装置。
【0028】
13.
11.に記載のカラーフィルタを備える撮像素子。
【0029】
14.
7.に記載の感光性樹脂組成物を用いて得られるブラックマトリクス。
【0030】
15.
14.に記載のブラックマトリクスを備える表示装置。
【0031】
16.
14.に記載のブラックマトリクスを備える撮像素子。
【0032】
17.
1.~9.のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物により樹脂膜を形成する製膜工程と、
前記樹脂膜を露光する露光工程と、
露光された前記樹脂膜を現像する現像工程と
を含む表示装置または撮像素子の製造方法。
【0033】
18.
17.に記載の表示装置または撮像素子の製造方法であって、
さらに、現像された前記樹脂膜を硬化させる硬化工程を含む製造方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、例えばカラーフィルタやブラックマトリクスの形成に好ましく用いることができる、感度が良好な感光性樹脂組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】液晶表示装置および/または固体撮像素子の構造の一例を模式的に示す図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
煩雑さを避けるため、同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合などがある。
図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0037】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0038】
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
特に、本明細書における「(メタ)アクリロイル基」とは、-C(=O)-CH=CH2で表されるアクリロイル基と、-C(=O)-C(CH3)=CH2で表されるメタクリロイル基とを包含する概念を表す。
本明細書における「有機基」の語は、特に断りが無い限り、有機化合物から1つ以上の水素原子を除いた原子団のことを意味する。例えば、「1価の有機基」とは、任意の有機化合物から1つの水素原子を除いた原子団のことを表す。
【0039】
<感光性樹脂組成物>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、以下一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーと、光重合開始剤とを含む。
一般式(1)中、Rpは、2以上の重合性二重結合を含む基である。
【0040】
【0041】
一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーにおいて、Rpは、1つのみではなく2以上の重合性二重結合を含む。このことにより、光重合開始剤から発生した活性化学種がより多くの重合性二重結合を重合させ、結果として高感度化する(光硬化しやすくなる)と考えられる。
なお、一般式(1)で表される構造単位は、2以上の重合性二重結合だけでなく、カルボキシル基も含む。カルボキシル基は、感光性樹脂組成物をアルカリ現像液で現像する際の現像性向上に寄与する。つまり、ポリマーが一般式(1)で表される構造単位を含むことにより、本実施形態の感光性樹脂組成物は光硬化しやすくなり、一方では良好な現像性を得やすい傾向にある。
【0042】
本実施形態の感光性樹脂組成物が含むことができる成分や、感光性樹脂組成物の性状などについて以下説明する。
【0043】
(ポリマー)
上述のとおり、本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記の一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーを含む。この構造単位は、典型的には、ポリマーの主鎖に含まれる。
【0044】
一般式(1)のRpは、2以上の重合性二重結合を含む限り、特に限定されない。重合性二重結合は、典型的には、炭素-炭素二重結合である。
Rpが含む重合性二重結合の数は、典型的には2~6、好ましくは2~5、より好ましくは3~5である。Rpが含む重合性二重結合の数を調整することで、感度を高めつつ、適度な現像性を得ることができる。
Rpにおいて、2以上の重合性二重結合のうち少なくとも1つ(好ましくは全て)は、好ましくは、基の末端に存在する。重合性二重結合がRpの末端に存在することで、重合性二重結合は光重合開始剤から発生した活性化学種と反応しやすくなる。よって、感度を一層向上させることができる。
【0045】
一態様として、Rpは、2以上の(メタ)アクリロイル基を含む。より具体的には、Rpは、2~6、好ましくは2~5、より好ましくは3~5の(メタ)アクリロイル基を含む。なお、感度の一層の向上のためには、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基であることが好ましい。メチル基で置換されていないアクリロイル基のほうが、メタクリロイル基に比べて、光重合開始剤から発生した活性化学種とより反応しやすくなるためである。
【0046】
Rpが2以上の(メタ)アクリロイル基を含む場合、Rpは、例えば、下記一般式(1b)または(1c)で表される基であることができる。
【0047】
【0048】
一般式(1b)中、
kは2または3であり、
Rは水素原子またはメチル基であり、複数のRは同じでも異なっていてもよく、
X1は単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-Z-X-で表される基(Zは-O-または-OCO-であり、Xは炭素数1~6のアルキレン基である)であり、複数存在するX1は同一であっても異なっていてもよく、
X1'は単結合、炭素数1~6のアルキレン基または-X'-Z'-で表される基(X'は炭素数1~6のアルキレン基であり、Z'は-O-または-COO-である)であり、
X2は炭素数1~12のk+1価の有機基である。
【0049】
Rは、感度の一層の向上(重合のしやすさ)などから、水素原子が好ましい。
kは、2でも3でもよいが、原料の入手容易性や感度の一層の向上の点からは、好ましくは3である。
【0050】
X1が炭素数1~6のアルキレン基である場合、アルキレン基は直鎖状であっても分枝状であってもよい。
X1が炭素数1~6のアルキレン基である場合、X1は好ましくは直鎖状アルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~3の直鎖状アルキレン基であり、さらに好ましくは-CH2-(メチレン基)である。
【0051】
X1が-Z-X-で表される基(Zは-O-または-OCO-であり、Xは炭素数1~6のアルキレン基である)場合の、Xの炭素数1~6のアルキレン基は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。
Xの炭素数1~6のアルキレン基は、好ましくは直鎖状アルキレン基であり、より好ましくは炭素数1~3の直鎖状アルキレン基であり、さらに好ましくは-CH2-CH2-(エチレン基)または-CH2-CH(CH3)-である。
【0052】
X1'が炭素数1~6のアルキレン基である場合、その具体的態様についてはX1と同様である。
X1'が-X'-Z'-で表される基である場合、X'の具体的態様については上記Xと同様である。
【0053】
X2の炭素数1~12のk+1価の有機基としては、任意の有機化合物からk+1個の水素原子を除いた任意の基を挙げることができる。ここでの「任意の有機化合物」としては、例えば分子量300以下、好ましくは200以下、より好ましくは100以下の有機化合物である。
X2は、例えば、炭素数1~12(好ましくは炭素数1~6)の直鎖状または分枝状炭化水素からk+1個の水素原子を除いた基である。より好ましくは、炭素数1~3の直鎖状炭化水素からk+1個の水素原子を除いた基である。なお、ここでの炭化水素は、酸素原子(例えばエーテル結合やヒドロキシ基など)を含んでもよい。また、炭化水素は飽和炭化水素であることが好ましい。
別の態様として、X2は、環状構造を含む基であってもよい。環状構造を含む基としては、脂環構造を含む基、複素環構造(例えば、イソシアヌル酸構造)を含む基などを挙げることができる。
【0054】
【0055】
一般式(1c)中、
k、R、X1およびX2は、それぞれ、上記の一般式(1b)におけるR、k、X1およびX2と同義であり、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のX1は互いに同一であっても異なっていてもよく、
X3は、炭素数1~6の2価の有機基であり、
X4およびX5は、それぞれ独立に、単結合または炭素数1~6の2価の有機基であり、
X6は、炭素数1~6の2価の有機基である。
【0056】
R、k、X1およびX2の具体的態様、好ましい態様などについては、一般式(1b)で説明したものと同様である。
X3およびX6の炭素数1~6の2価の有機基としては、例えば、炭素数1~6の直鎖状または分枝状炭化水素から2個の水素原子を除いた基を挙げることができる。なお、ここでの炭化水素は、酸素原子(例えばエーテル結合やヒドロキシ基など)を含んでもよい。また、炭化水素は飽和炭化水素であることが好ましい。
X4およびX5の炭素数1~6の2価の有機基としては、直鎖状または分枝状アルキレン基を挙げることができる。直鎖状または分枝状アルキレン基の炭素数は好ましくは1~3である。
【0057】
ポリマーの全構造単位中の、一般式(1)で表される構造単位の割合は、好ましくは3~40モル%、より好ましくは3~30モル%である。
【0058】
ポリマーは、一例として、さらに、以下一般式(2)で表される構造単位を含むことが好ましい。これにより、感度を高めつつも一層良好な現像性を得やすくなる。このような特性は、特に、本実施形態の感光性樹脂組成物を用いてカラーフィルタを形成する場合に好ましい性能である。
一般式(2)中、R´は、重合性二重結合を1つのみ含む基である。
【0059】
【0060】
R´が含む「重合性二重結合」については、一般式(1)のRpが含むことができる重合性二重結合と同様である。
重合性二重結合は、好ましくは、基の末端に存在する。
【0061】
R´は、一態様として、(メタ)アクリロイル基を1つ含む。感度の一層の向上の観点では、(メタ)アクリロイル基はアクリロイル基であることが好ましい。
【0062】
R´は、以下一般式(2a)で表される基であることができる。
一般式(2a)において、X10は2価の有機基であり、Rは水素原子またはメチル基である。
X10の総炭素数は、好ましくは1~30、より好ましくは1~20、さらに好ましくは1~10である。
【0063】
【0064】
X10の2価の有機基としては、例えばアルキレン基が好ましい。このアルキレン基中の一部の-CH2-はエーテル基(-O-)となっていてもよい。アルキレン基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、直鎖状であることがより好ましい。
【0065】
X10の2価の有機基としてより好ましくは、総炭素数3~6の直鎖状アルキレン基である。X10の炭素数(X10の「長さ」に相当)を適切に選択することで、一般式(2)で表される構造単位が重合反応に一層関与しやすくなる。そのため、感度を一層高めることができる。
【0066】
X10の2価の有機基(例えばアルキレン基)は、任意の置換基で置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基などを挙げることができる。
また、X10の2価の有機基は、アルキレン基以外の任意の基であってよい。例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシ基等から選ばれる1種又は2種以上の基を連結して構成される2価の基であってもよい。
【0067】
ポリマーが一般式(2)で表される構造単位を含む場合、その含有量は、ポリマー中の全構造単位を基準として、好ましくは5~40モル%、より好ましくは10~30モル%である。
また、ポリマー中の、一般式(1)で表される構造単位と、一般式(2)で表される構造単位との合計の含有量は、ポリマー中の全構造単位を基準として、好ましくは5~60モル%、より好ましくは10~50モル%、さらに好ましくは10~40モル%である。
【0068】
別観点として、ポリマーが一般式(2)で表される構造単位を含む場合、一般式(1)で表される構造単位と、一般式(2)で表される構造単位の「比率」を適切にすることが好ましい。これにより、高感度化を達成しつつ、現像性をより高めることができる。
【0069】
具体的には、ポリマーが、一般式(1)で表される構造単位と、一般式(2)で表される構造単位の両方を含む場合、ポリマーにおける、(一般式(1)で表される構造単位のモル量)/(一般式(2)で表される構造単位のモル量)の値は、好ましくは1以下、より好ましくは0.2~0.9、さらに好ましくは0.3~0.8である。つまり、一般式(1)で表される構造単位の比率が相対的にやや少なく、一般式(2)で表される構造単位の比率が相対的にやや多くなるようにポリマーを設計することが好ましい。こうすることで、組成物を高感度化しつつ、現像性をより高めることができる。
【0070】
(一般式(1)で表される構造単位のモル量)/(一般式(2)で表される構造単位のモル量)の値は、任意の方法で求めることができる。例えば、以下のように求めることができる。
ポリマー中の、一般式(1)で表される構造単位の量をX1(モル/g)一般式(2)で表される構造単位の量をX2(モル/g)、カルボキシル基の量をC(モル/g)、重合性二重結合の量をD(モル/g)とする。また、一般式(1)で表される構造単位は、n個の重合性二重結合を含むとする。
一般式(1)で表される構造単位と、一般式(2)で表される構造単位は、ともに、カルボキシル基を1つ有する。よって、X1+X2=Cと書ける(ポリマーが、一般式(1)および(2)以外にはカルボキシル基を含む構造単位を含まないと仮定)。
また、重合性二重結合の量について、n・X1+X2=Dと書ける(ポリマーが、一般式(1)および(2)以外には重合性二重結合を含む構造単位を含まないと仮定)。
カルボキシル基のモル数Cは酸価測定やNMR測定のピーク面積などにより、重合性二重結合のモル数Dは二重結合当量測定やNMR測定のピーク面積などにより知ることができる。また、nは、一般式(1)で表される構造単位の構造により定まる定数である。よって、上記2つの数式を連立方程式として、未知数X1およびX2について解けば、(一般式(1)で表される構造単位のモル量)/(一般式(2)で表される構造単位のモル量)の値を求めることができる。
【0071】
一方、別の例として、ポリマーは、別の例として、一般式(2)で表される構造単位を含まない。このようなポリマーを含む感光性樹脂組成物を用いてパターンを形成することで、特に、パターンの耐熱性を高めることができる。耐熱性の高さは、特に、本実施形態の感光性樹脂組成物をブラックマトリクス形成に適用する場合に好ましい性能である。
【0072】
ポリマーは、さらに、以下式(MA)で表される構造単位を含んでもよい。
式(MA)で表される構造単位は、塩基の作用などにより開環し、カルボキシル基を2つ発生しうる。この性質は、感光性樹脂組成物をアルカリ現像液により現像する際の、現像性の一層の向上などの点で好ましい。
【0073】
【0074】
ポリマーが式(MA)で表される構造単位を含む場合、ポリマーの全構造単位中の式(MA)で表される構造単位の割合は、好ましくは1~25モル%、より好ましくは3~20モル%である。
ポリマー中の式(MA)で表される構造単位の割合は、例えば、後述のポリマー製造方法の「反応工程」において、原料ポリマーと反応させる化合物(ヒドロキシ基および2以上の重合性二重結合を有する化合物)の量、触媒の量、反応時間などを調整して変えることができる。
【0075】
参考のため、ポリマー中の、一般式(1)で表される構造単位の割合、一般式(2)で表される構造単位の割合、および、式(MA)で表される構造単位の割合の求め方の例を記載しておく。
なお、ポリマーは、後述の合成方法(準備工程と反応工程の2工程を含む)により得るものとする。また、その準備工程で得られる原料ポリマーは、式(MA)で表される構造単位と、2-ノルボルネンに由来する構造単位とを、モル比1:1で含むものであるとする。
【0076】
ポリマー中の、2-ノルボルネンに由来する構造単位のモル数をXNB(モル/g)、一般式(1)で表される構造単位のモル数をX1(モル/g)、一般式(2)で表される構造単位のモル数をX2(モル/g)とする。
原料ポリマーにおいては、式(MA)で表される構造単位のモル数:2-ノルボルネンに由来する構造単位のモル数=1:1と仮定している。よって、ポリマー中の式(MA)で表される構造単位のモル数はXNB-X1-X2(モル/g)と書くことができる。
【0077】
また、一般式(1)で表される構造単位の分子量をM1、一般式(2)で表される構造単位の分子量をM2とすると、以下数式が成立する。
XNB・94.15+(XNB-X1-X2)・98.66+X1・M1+X2・M2=1
ここで、94.15は2-ノルボルネンの分子量、98.66は無水マレイン酸の分子量である。
【0078】
上記数式において、M1およびM2は、原料の化学構造などから知ることができる。また、X1およびX2は、例えば、前述の「(一般式(1)で表される構造単位のモル量)/(一般式(2)で表される構造単位のモル量)の値」の求め方より知ることができる。よって、上記数式は未知数XNBについて解くことができる。
そして、原料ポリマーにおいては式(MA)で表される構造単位のモル数:2-ノルボルネンに由来する構造単位のモル数=1:1と仮定していることを考慮すると、
・ポリマー中の全構造単位を基準とした、一般式(1)で表される構造単位の割合(モル比)は、X1/(2XNB)と、
・ポリマー中の全構造単位を基準とした、一般式(2)で表される構造単位の割合(モル比)は、X2/(2XNB)と、
書くことができる。
また、原料ポリマー中の(MA)で表される構造単位の反応率(開環率)は、(X1+X2)/XNBと書くことができる。
【0079】
ポリマーは、上記一般式(1)、一般式(2)または式(MA)で表されるような、無水マレイン酸モノマーから誘導される構造単位に加え、無水マレイン酸ではないモノマーに由来する構造単位を含んでもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、以下を挙げることができる。
【0080】
ノルボルネン、ノルボルナジエン、ビシクロ[2.2.1]-ヘプト-2-エン(慣用名:2-ノルボルネン)、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネン、5-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-デシル-2-ノルボルネン、5-アリル-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-エチニル-2-ノルボルネン、5-ベンジル-2-ノルボルネン、5-フェネチル-2-ノルボルネン等のノルボルネン系モノマー。
【0081】
インデン、2-メチルインデン、3-メチルインデン等のインデン系モノマー;1,5,9-シクロドデカトリエン、シス-トランス-トランス-1,5,9-シクロドデカトリエン、トランス-トランス-トランス-1,5,9-シクロドデカトリエン、トランス-シス-シス-1,5,9-シクロドデカトリエン、シス-シス-シス-1,5,9-シクロドデカトリエン等の脂環系モノマー。
【0082】
スチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、アセトキシスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー。
塩化ビニル、塩化ビニリデン等のビニル系モノマー。
パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル系モノマー。
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー。
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー。
アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー。
【0083】
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類。
エチレン、プロピレン等のアルケン類。
ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類。
塩化アリル、アリルアルコール等のアリル系モノマー。
【0084】
マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-イソブチルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド等のN-アルキルマレイミド。
N-シクロヘキシルマレイミド、N-シクロペンチルマレイミド、N-ノルボルニルマレイミド、N-シクロヘキシルメチルマレイミド、N-シクロペンチルメチルマレイミド等のN-シクロアルキルマレイミド。
N-フェニルマレイミド、N-クロロフェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-カルボキシフェニルマレイミド、N-ニトロフェニルマレイミド等のN-アリールマレイミド。
【0085】
ポリマーが、無水マレイン酸ではないモノマーに由来する構造単位を含むことで、例えば、感光性樹脂組成物を硬化させたときの硬化膜の耐熱性、機械物性などを高めることができる。
【0086】
ポリマーは、無水マレイン酸ではないモノマーに由来する構造単位として、特に、ノルボルネン系モノマーに由来する構造単位を含むことが好ましい。
ノルボルネン系モノマーに由来する構造単位としてより具体的には、以下一般式(NB)で表される構造単位が挙げられる。
【0087】
【0088】
一般式(NB)中、
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~30の有機基であり、
a1は0、1または2である。
【0089】
一般式(NB)における、R1、R2、R3およびR4の炭素数1~30の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヘテロ環基、カルボキシル基などを挙げることができる。
【0090】
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、ビニル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル基などが挙げられる。
アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、エチリデン基などが挙げられる。
アリール基としては、例えばトリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
アルカリル基としては、例えばトリル基、キシリル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。
【0091】
一般式(NB)における、R1、R2、R3およびR4としては水素またはアルキル基が好ましく、水素がより好ましい。
なお、R1、R2、R3およびR4の炭素数1~30の有機基中の水素原子は、任意の原子団により置換されていてもよい。例えば、フッ素原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基などで置換されていてもよい。より具体的には、R1、R2、R3およびR4の炭素数1~30の有機基として、フッ化アルキル基などを選択してもよい。
一般式(NB)において、a1は好ましくは0または1、より好ましくは0である。
【0092】
ポリマーの全構造単位中の、無水マレイン酸ではないモノマーに由来する構造単位(例えば、一般式(NB)で表される構造単位)の割合は、好ましくは10~90モル%、より好ましくは30~70モル%、さらに好ましくは40~60モル%である。この割合を適切に調整することで、前述の、ポリマーが一般式(1)の構造単位を含むことによる高感度化の効果を十分に得つつ、無水マレイン酸ではないモノマーに由来する構造単位による効果(例えば硬化膜としたときの耐熱性向上や機械物性の向上)も十分に得ることができる。
【0093】
本発明者らの知見として、一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーは、ポリマー単独で加熱したときの重量減少(原子団の脱離など)が比較的少ない傾向を有している。この傾向の原因は必ずしも明らかではないが、一般式(1)で表される構造単位中のRpが2以上の重合性二重結合を含むことにより、Rp全体として嵩高く/分子量が大きくなっていることが一因にあると推測される。(つまり、Rpが嵩高いまたは分子量が大きいことにより、熱などでRpが脱離しにくくなっていると推定される。)
ポリマーへの重合性二重結合の絶対的な導入量などにもよるが、一例として、ポリマーを、窒素雰囲気下で、35℃から350℃まで10℃/分の速度で昇温したときの重量減少率は、好ましくは10~26%%、より好ましくは19~26%である。なお、重量減少率は、市販の熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて測定することができる。
なお、重量減少率の値が小さいことは、硬化膜としたときの耐熱性が良好であることにつながる。これは、本実施形態の感光性樹脂組成物を表示装置や撮像素子に適用する際に好ましい性質である。
【0094】
ポリマーの重量平均分子量Mwは、好ましくは2000~80000、より好ましくは5000~40000、さらに好ましくは10000~30000である。重量平均分子量を適切に調整することで、アルカリ現像液に対する溶解性や、有機溶剤に対する溶解性などを調整することができる。
ポリマーの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.0~4.0、さらに好ましくは1.0~3.0である。分散度を適切に調整することで、ポリマーの物性を均質にすることができ、好ましい。
これらの値は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により求めることができる。
【0095】
ポリマーは、任意の方法により製造(合成)してよい。例えば、
・少なくとも上記式(MA)で表される構造単位を含む原料ポリマーを準備する準備工程と、
・塩基性触媒の存在下、上記の原料ポリマーと、ヒドロキシ基および2以上の重合性二重結合を有する化合物とを反応させる反応工程と
により、上述の一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーを製造することができる。
【0096】
以下、これらの工程によりポリマーを製造(合成)する方法についてより詳しく説明する。なお、説明は、一般式(1)で表される構造単位と、一般式(NB)で表される構造単位とを含むポリマーの合成を例として行うが、これによりポリマー製造方法の一般性が失われるものではない。例えば、一般式(1)で表される構造単位と、一般式(NB)ではない構造単位(共重合単位)とを含むポリマーも、以下説明と類似の手順で合成することができる。
【0097】
・準備工程
原料ポリマーは、例えば、下記一般式(NB-m)で表されるモノマーと、無水マレイン酸とを重合(付加重合)することで得ることができる。
一般式(NB-m)のR1、R2、R3およびR4ならびにa1の定義は、一般式(NB)のものと同様である。好ましい態様についても同様である。
【0098】
【0099】
一般式(NB-m)で表されるモノマーとしては、例えば、ビシクロ[2.2.1]-ヘプト-2-エン(慣用名:2-ノルボルネン)、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネン、5-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-デシル-2-ノルボルネン、5-アリル-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-エチニル-2-ノルボルネン、5-ベンジル-2-ノルボルネン、5-フェネチル-2-ノルボルネン、2-アセチル-5-ノルボルネン、5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、ノルボルナジエンなどが挙げられる。
重合の際、一般式(NB-m)で表されるモノマーは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
重合の方法については限定されないが、ラジカル重合開始剤を用いたラジカル重合が好ましい。
重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物などを使用できる。
アゾ化合物として具体的には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)などを挙げることができる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化水素、ジ-tert-ブチルパーオキサイド(DTBP)、過酸化ベンゾイル(ベンゾイルパーオキサイド,BPO)および、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKP)などを挙げることができる。
重合開始剤については、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
重合溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤を用いることができる。重合溶媒は単独溶剤でも混合溶剤でもよい。
【0102】
一般式(NB-m)で表されるモノマー、無水マレイン酸および重合開始剤を溶媒に溶解させて反応容器に仕込み、その後、加熱することで、付加重合を進行させる。加熱温度は例えば50~80℃であり、加熱時間は例えば5~20時間である。
反応容器に仕込む際の、一般式(NB-m)で表されるモノマーと、無水マレイン酸とのモル比は、0.5:1~1:0.5であることが好ましい。分子構造制御の観点から、モル比は1:1であることが好ましい。
このような工程により、「原料ポリマー」を得ることができる。
なお、原料ポリマーは、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、周期共重合体などのいずれであってもよい。典型的にはランダム共重合体または交互共重合体である。なお、一般に、無水マレイン酸は交互共重合性が強いモノマーとして知られている。
【0103】
原料ポリマーの合成後に、未反応モノマー、オリゴマー、残存する重合開始剤などの低分子量成分を除去する工程を行ってもよい。
具体的には、合成された原料ポリマーと低分子量成分とが含まれた有機層を濃縮し、その後、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒と混合して溶液を得る。そして、この溶液を、メタノールなどの貧溶媒と混合し、モノマーを沈殿させる。この沈殿物を濾取して乾燥させることで、原料ポリマーの純度を上げることができる。
【0104】
・反応工程
塩基性触媒の存在下、上記の原料ポリマーと、ヒドロキシ基および2以上の重合性二重結合を有する化合物とを反応させることで、原料ポリマー中に含まれる式(MA)の構造単位が開環する。これにより、一般式(1)の構造単位が形成される。
【0105】
より具体的に説明すると、まず、原料ポリマーを適当な有機溶剤に溶解させた溶液を準備する。
有機溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)などの単独溶剤または混合溶剤を用いることができるが、これらのみには限定されず、有機化合物や高分子の合成で用いられる種々の有機溶剤を用いることができる。
【0106】
次に、上記の溶液に、2以上の重合性二重結合と、ヒドロキシ基(典型的には1つ)とを含む化合物を加える。さらに、塩基性触媒を加える。そして溶液を適切に混合して均一な溶液とする。
【0107】
2以上の重合性二重結合とヒドロキシ基とを含む化合物としては、例えば、2以上の(メタ)アクリロイル基とヒドロキシ基とを含む化合物を挙げることができる。
より具体的には、以下一般式(1b-m)で表される化合物または以下一般式(1c-m)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(1b-m)におけるk、R、X1、X1'およびX2の定義および具体的態様は、一般式(1b)におけるものと同様である。
一般式(1c-m)におけるk、R、X1、X2、X3、X4、X5およびX6の定義および具体的態様は、一般式(1c)におけるものと同様である。
【0108】
【0109】
【0110】
ヒドロキシ基および2以上の重合性二重結合を有する化合物として、好ましく使用可能なものを以下に示す。なお、以下に示される化合物のアクリロイル基の一部または全部を(メタ)アクリロイル基としたもの(またはその逆のもの)なども使用可能である。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
塩基性触媒としては、有機合成の分野で公知のアミン化合物や含窒素複素環化合物等を適宜用いることができる。例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどのアミン化合物または含窒素複素環化合物を触媒として用いることができる。塩基性触媒の使用量は、例えば、原料ポリマー100質量部に対し、10~60質量部程度とすることができる。なお、塩基性触媒を過剰に用いると、中和に必要な酸の量が多くなり、精製が煩雑になる等の可能性があることに留意する。
【0117】
上記溶液を、好ましくは60~80℃で、3~9時間程度加熱することで、原料ポリマー中に含まれる式(MA)の構造単位の開環/一般式(1)の構造単位の形成がなされる。
【0118】
なお、例えば、上記の加熱の途中に、1つのみの重合性二重結合とヒドロキシ基とを含む化合物を反応系中に追添することで、ポリマー中に前述の一般式(2)で表される構造単位を生成することができる。
反応の立体障害などの点から、1つのみの重合性二重結合とヒドロキシ基とを含む化合物のほうが、2以上の重合性二重結合とヒドロキシ基とを含む化合物よりも、原料ポリマーと反応しやすい傾向にある。よって、ポリマー中に前述の一般式(2)で表される構造単位を生成させる場合には、1つのみの重合性二重結合とヒドロキシ基とを含む化合物を最初から反応系中には仕込まず、反応系中に追添することが好ましい。
【0119】
1つのみの重合性二重結合とヒドロキシ基とを含む化合物としては、例えば以下一般式(2a-m)で表される化合物が挙げられる。
一般式(2a-m)において、X10およびRの定義については一般式(2a)におけるものと同様である。
【0120】
【0121】
一般式(2a-m)で表される化合物の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸などを挙げることができる。
【0122】
反応工程の後、有機溶剤で反応溶液を希釈し、また、塩基性触媒の中和のために酸を加えることで、反応を停止させる。
【0123】
以上の工程によりポリマーを得ることができる。
なお、所望のポリマー以外の不要な成分の除去などのため、更に以下の工程を適宜行うことが好ましい。
【0124】
まず、上記で、有機溶剤で希釈し、また、酸(例えばギ酸など)を加えた反応溶液を、分液漏斗で少なくとも3分間激しく攪拌する。これを30分以上静止して、有機相と水相に分け、水相を除去する。このようにしてポリマーの有機溶液を得る。
【0125】
得られたポリマーの有機溶液に、過剰量のトルエンを加えてポリマーを再沈殿させる。また、再沈殿により得られたポリマー粉末をさらに数回トルエンで洗浄する。
さらに、ギ酸や塩基性触媒の除去のため、得られたポリマー粉末を、イオン交換水で洗浄する操作を数回(3回程度)繰り返す。
イオン交換水で洗浄後のポリマー粉末を、例えば30~60℃で16時間以上乾燥させることで、高純度のポリマーを得ることができる。
【0126】
(光重合開始剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、光重合開始剤を含む。
光照射により発生する成分が、ポリマーの一般式(1)の構造単位に含まれる重合性二重結合を反応させるものである限り、光重合開始剤としては任意のものを用いることができる。光重合開始剤は、例えば、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤などでありうる。
なお、光重合開始剤は、典型的には紫外光、より具体的はg線、i線などの照射により活性な化学種を発生する。
【0127】
一層の高感度化等の観点から、光重合開始剤は、好ましくは、光ラジカル重合開始剤である。
光ラジカル重合開始剤としては特に限定されず、公知のものを適宜用いることができる。例えば、以下のものを挙げることができる。
【0128】
2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシー2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-〔(4-メチルフェニル)メチル〕-1-〔4-(4-モルホリニル)フェニル〕-1-ブタノン等のアルキルフェノン系化合物。
【0129】
ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物。
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテ等のベンゾイン系化合物。
チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物。
【0130】
2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシカルボキニルナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロメチル化トリアジン系化合物。
2-トリクロロメチル-5-(2′-ベンゾフリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-〔β-(2′-ベンゾフリル)ビニル〕-1,3,4-オキサジアゾール、4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-フリル-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール系化合物。
【0131】
2,2′-ビス(2-クロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール、2,2′-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール、2,2′-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,2′-ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物。
1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン,1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物。
ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物。
p-ジメチルアミノ安息香酸、p-ジエチルアミノ安息香酸等の安息香酸エステル系化合物。
9-フェニルアクリジン等のアクリジン系化合物。
【0132】
感光性樹脂組成物は、光重合開始剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
光重合開始剤の使用量は、ポリマー100質量部に対し、例えば1~20質量部であり、好ましくは3~10質量部である。
【0133】
(溶剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、典型的には、溶剤を含む。これにより、各種の基板表面に均一な感光性樹脂膜を形成することができる。
溶剤としては有機溶剤が好ましく用いられる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ラクトン系溶剤、カーボネート系溶剤などのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0134】
溶剤の例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、ガンマブチロラクトン(GBL)、N-メチルピロリドン(NMP)、メチル-n-アミルケトン(MAK)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、又は、これらの混合物を挙げることができる。
【0135】
溶剤の使用量は特に限定されないが、不揮発成分の濃度が例えば10~70質量%、好ましくは15~60質量%となるような量で使用される。
【0136】
(架橋剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、架橋剤を含むことができる。
架橋剤は、光重合開始剤から発生する活性化学種の作用によりポリマーを架橋可能なもの(ポリマーと化学結合することができるもの)であれば、特に限定されない。
架橋剤は、ポリマーとのみ化学結合するのではなく、架橋剤同士で反応して結合形成してもよい。
【0137】
架橋剤は、例えば、一分子中に2以上の重合性二重結合を有する多官能化合物が好ましく、一分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリル化合物であることがより好ましい(ただし、架橋剤は、前述のポリマーには該当しない)。ポリマーが有する架橋性基(重合性二重結合)と同種の架橋性基を有する架橋剤を用いることが、均一な硬化性、感度の更なる向上などの点で好ましい。
架橋剤一分子あたりの官能数(重合性二重結合の数)の上限は特にないが、例えば8以下、好ましくは6以下である。
【0138】
架橋剤として具体的には、以下を挙げることができる。
【0139】
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の、多官能(メタ)アクリレート類。
【0140】
エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の、多官能ビニルエーテル類。
【0141】
(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5-ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等の、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類。
【0142】
エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル等の、多官能アリルエーテル類。
【0143】
(メタ)アクリル酸アリル等の、アリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類。
トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等の、多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート類。
トリアリルイソシアヌレート等の、多官能アリル基含有イソシアヌレート類。
トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類との反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート類。
ジビニルベンゼン等の、多官能芳香族ビニル類。
【0144】
なかでも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の三官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の六官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0145】
感光性樹脂組成物が架橋剤を含む場合、感光性樹脂組成物は架橋剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
感光性樹脂組成物が架橋剤を含む場合、その量は目的や用途に応じて適宜設定すればよい。一例として、架橋剤の量は、ポリマー100質量部に対して通常30~70質量部、好ましくは40~60質量部程度とすることができる。
【0146】
(着色剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、着色剤を含むことができる。組成物が着色剤を含むことで、表示装置や撮像素子のカラーフィルタの形成材料として好ましく用いることができる。
着色剤としては、種々の顔料または染料を用いることができる。
【0147】
顔料としては有機顔料や無機顔料を用いることができる。
有機顔料としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アントラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キサンテン系顔料、ピロメテン系顔料、染料レーキ系顔料等を使用することができる。
無機顔料としては、白色・体質顔料(酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)、有彩顔料(黄鉛、カドミニウム系、クロムバーミリオン、ニッケルチタン、クロムチタン、黄色酸化鉄、ベンガラ、ジンククロメート、鉛丹、群青、紺青、コバルトブルー、クロムグリーン、酸化クロム、バナジン酸ビスマス等)、光輝材顔料(パール顔料、アルミ顔料、ブロンズ顔料等)、蛍光顔料(硫化亜鉛、硫化ストロンチウム、アルミン酸ストロンチウム等)を使用することができる。
【0148】
染料としては、例えば、特開2003-270428号公報や特開平9-171108号公報、特開2008-50599号公報等に記載されている公知の染料を使用することができる。
【0149】
着色剤(特に顔料)は、目的や用途に応じて、適切な平均粒子径を有するものを使用できるが、特にカラーフィルタのような透明性が要求される場合は、0.1μm以下の小さい平均粒子径が好ましく、その他、塗料などの隠蔽性が必要とされる場合は、0.5μm以上の大きい平均粒子径が好ましい。
着色剤は、目的や用途に応じて、ロジン処理、界面活性剤処理、樹脂系分散剤処理、顔料誘導体処理、酸化皮膜処理、シリカコーティング、ワックスコーティングなどの表面処理がなされていてもよい。
【0150】
感光性樹脂組成物が着色剤を含む場合、感光性樹脂組成物は着色剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
感光性樹脂組成物が着色剤を含む場合、その量は目的や用途に応じて適宜設定すればよいが、着色濃度と着色剤の分散安定性との両立などから、感光性樹脂組成物の不揮発成分(溶剤を除く成分)全体に対して、好ましくは3~70質量%であり、より好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは10~50質量%である。
【0151】
(遮光剤)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、遮光剤を含むことができる。組成物が遮光剤を含むことで、表示装置や撮像素子のブラックマトリクスの形成材料として好ましく用いることができる。
遮光剤としては、公知の遮光剤を特に制限なく用いることができる。例えば、カーボンブラック、ボーンブラック、グラファイト、鉄黒、チタンブラック等の黒色顔料を遮光剤として用いることができる。
【0152】
感光性樹脂組成物が遮光剤を含む場合、その量は目的や用途に応じて適宜設定すればよいが、遮光性能と遮光剤の分散安定性との両立などから、感光性樹脂組成物の不揮発成分(溶剤を除く成分)全体に対して、好ましくは3~70質量%であり、より好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは10~50質量%である。
【0153】
(その他成分)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、各種目的や要求特性に応じて、上記以外の成分を含んでもよい。
含んでもよい成分としては、例えば、フィラー、上述のポリマー以外のバインダー樹脂、多官能(メタ)アクリレート化合物、酸発生剤、耐熱向上剤、現像助剤、可塑剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、揺変剤、シランカップリング剤、多価フェノール化合物等が挙げられる。
【0154】
(感度/硬化性に関する指標)
上述のように、本実施形態の感光性樹脂組成物は、一般式(1)で表される構造単位を備えるポリマー(2以上の重合性二重結合を含む)を含むことにより、重合性二重結合の数(密度)が大きくなっている。そして、このことにより高感度化し、硬化しやすくなっている。
【0155】
感度の観点で、組成物中の重合性二重結合の密度を直接的に数値化することは難しい面がある。ポリマー単独については二重結合当量などが一つの指標となるかもしれないが、組成物としての、重合性二重結合の密度と硬化のしやすさ(つまり感度)の関係をわかりやすく数値化することは難しい。
しかし、本発明者らの知見によれば、組成物を一定時間・一定温度で加熱したときの、組成物の性状変化をもって、組成物中の重合性二重結合の密度と、それによる硬化のしやすさを推し量ることができる。
例えば、組成物を空気下で、250℃、1時間加熱して硬化物としたとき、その硬化物が23℃のテトラヒドロフランに実質的に不溶となるように感光性樹脂組成物を設計すること(例えばポリマーの量を増やす、ポリマー中の一般式(1)の割合を高める等)が好ましい。このように感光性樹脂組成物を設計することで、一層の高感度化が達成されうる。
なお、このテトラヒドロフランへの不溶性について、大きな傾向はポリマーにより決定される。ただし、例えばポリマーと併用する光重合開始剤の構造や量などにより、同じポリマーであってもテトラヒドロフランへの不溶性が異なる場合がある。
【0156】
ここで、硬化物が「23℃のテトラヒドロフランに実質的に不溶」であることは、硬化させた感光性樹脂組成物を23℃のテトラヒドロフランに10分間浸漬して、その後、そのテトラヒドロフランをGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定したときに、未反応(未硬化)のポリマーに由来するピークが実質上確認されないことにより判断する。より具体的には、後掲の実施例に記載の条件のGPC測定で、保持時間10~20分の範囲で定義されるピークの面積が10mV・秒未満であるときに「不溶(実質的に不溶)」と判断する。
【0157】
<パターン、カラーフィルタ、ブラックマトリクス、表示装置、撮像素子、および、表示装置または撮像素子の製造方法>
上述の感光性樹脂組成物を用いて膜形成し、その膜を露光・現像してパターンを形成することができる。このパターンは、例えばカラーフィルタやブラックマトリクスなどに適用される。具体的には、着色剤を含む感光性樹脂組成物を用いてパターンを形成することで、カラーフィルタを得ることができる。また、遮光剤を含む感光性樹脂組成物を用いてパターンを形成することで、ブラックマトリックスを得ることができる。そして、カラーフィルタおよび/またはブラックマトリクスを備える表示装置(典型的には液晶表示装置)または撮像素子(典型的には固体撮像素子)を製造することができる。
【0158】
パターンを形成する典型的な手順を以下で説明する。
【0159】
・感光性樹脂膜の形成
例えば、本実施形態の感光性樹脂組成物を、任意の基板上に塗布し、必要に応じて乾燥させる。これにより、まず、感光性樹脂膜を得る。
【0160】
基板は特に限定されない。例えばガラス基板、シリコンウエハ、セラミック基板、アルミ基板、SiCウエハー、GaNウエハー、銅張積層板などを挙げることができる。
基板は、未加工の基板であっても、電極や素子が表面に形成された基板であってもよい。基板は、接着性の向上のために表面処理さていてもよい。
感光性樹脂組成物の塗布方法は特に限定されない。塗布は、スピナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング、インクジェット法などにより行うことができる。
【0161】
基板上に塗布した感光性樹脂組成物の乾燥は、典型的にはホットプレート、熱風、オーブン等で加熱処理することで行われる。加熱温度は、通常80~140℃、好ましくは90~120℃である。加熱時間は、通常30~600秒、好ましくは30~300秒程度である。
【0162】
感光性樹脂膜の膜厚は、特に限定されず、最終的に得ようとするパターンに応じて適宜調整すればよい。膜厚は、通常は0.5~10μm、好ましくは1~5μmである。なお、膜厚は、感光性樹脂組成物中の溶剤の含有量や塗布方法などにより調整可能である。
【0163】
・露光
露光は、典型的には、適当なフォトマスクを介して活性光線を感光性樹脂膜に当てることで行う。
活性光線としては、例えばX線、電子線、紫外線、可視光線などが挙げられる。波長でいうと200~500nmの光が好ましい。パターンの解像度や取り扱い性の点で、光源は水銀ランプのg線、h線又はi線であることが好ましく、特にi線が好ましい。また、2つ以上の光線を混合して用いてもよい。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクションまたはステッパ-が好ましい。
露光の光量は、感光性樹脂膜中の光重合開始剤の量や、感光性樹脂膜の膜厚などにより適宜調整すればよい。露光の光量は例えば100~500mJ/cm2程度である。
【0164】
露光後、必要に応じて、感光性樹脂膜を再度加熱してもよい(露光後加熱:Post Exposure Bake)。ここでの加熱温度は、例えば70~150℃、好ましくは90~120℃である。加熱時間は、例えば30~600秒、好ましくは30~300秒である。露光後加熱をすることで、光重合開始剤から発生した活性種による重合反応が促進され、硬化反応が一層促される。つまり、プロセス面から一層の高感度化を図ることができる。
【0165】
・現像
露光された感光性樹脂膜を、適当な現像液により現像することで、パターンを得ること、また、パターンを備えた基板を製造することができる。
現像工程においては、適当な現像液を用いて、例えば浸漬法、パドル法、回転スプレー法などの方法を用いて現像を行うことができる。現像により、感光性樹脂膜の露光部(ポジ型の場合)又は未露光部(ネガ型の場合)が溶出除去され、パターンが得られる。本実施形態の感光性樹脂組成物を用いた場合には、通常、ネガ型パターンが得られる。
【0166】
使用可能な現像液は特に限定されない。例えば、アルカリ水溶液や有機溶剤が使用可能である。
アルカリ水溶液として具体的には、(i)水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリ水溶液、(ii)エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン水溶液、(iii)テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩の水溶液などが挙げられる。
有機溶剤として具体的には、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)や酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、等が挙げられる。
現像液には、例えばメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒や、界面活性剤などが添加されていてもよい。
【0167】
本実施形態においては、現像液としてアルカリ水溶液を用いることが好ましく、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドまたは炭酸ナトリウムの水溶液を用いることがより好ましい。
アルカリ水溶液の濃度は、好ましくは0.1~10質量%であり、更に好ましくは0.5~5質量%である。
【0168】
現像の後、さらに様々な処理を行ってもよい。
例えば、現像の後、リンス液によりパターンおよび/または基板を洗浄してもよい。リンス液としては、例えば蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0169】
また、得られたパターンを加熱して十分に硬化させるようにしてもよい。加熱温度は、典型的には150~400℃、好ましくは160~300℃、より好ましくは200~250℃である。加熱時間は特に限定されないが、例えば15~300分の範囲内である。この加熱処理は、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンなどにより行うことができる。加熱処理を行う際の雰囲気気体としては、空気であっても、窒素やアルゴンなどの不活性ガスであってもよい。また、減圧下で加熱してもよい。
【0170】
以上の工程により、パターンを得ること/パターンを備えた基板を製造することができる。
より具体的には、着色剤を含む感光性樹脂組成物を用いて、カラーフィルタを得ることができる。また、遮光剤を含む感光性樹脂組成物を用いて、ブラックマトリックスを得ることができる。さらには、カラーフィルタおよび/またはブラックマトリクスを備える表示装置(典型的には液晶表示装置)または撮像素子(典型的には固体撮像素子)を製造することができる。
【0171】
カラーフィルタおよび/またはブラックマトリクスを備える、表示装置および/または撮像素子の構造の一例について、
図1に模式的に示す。
基板10上には、ブラックマトリクス11とカラーフィルタ12が形成されている。また、このブラックマトリクス11とカラーフィルタ12の上部に保護膜13および透明電極層14が設けられている。
基板10は、通常、光を通過する材料により構成されるものである。例えば、ガラス、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスルホン、環状オレフィンの重合体などのいずれかにより構成される。
基板10は、コロナ放電処理、オゾン処理、薬液処理等が施されたものであってもよい。
基板10は、好ましくはガラスより構成される。
【0172】
ブラックマトリクス11は、例えば、遮光剤を含む感光性樹脂組成物の硬化物によって構成される。
カラーフィルタ12としては、通常、赤、緑、青の三色が存在する。カラーフィルタ12は、各色に応じた着色剤を含む感光性樹脂組成物の硬化物により構成される。
【0173】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例】
【0174】
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0175】
実施例中の使用化合物については、以下の略号または商品名で示す場合がある。
・MA:無水マレイン酸
・NB:2-ノルボルネン
・MEK:メチルエチルケトン
・BHEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
・4-HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
【0176】
・A-TMM-3L:以下2種の化合物の混合物、ガスクロマトグラフ測定に基づく混合物中の左の化合物の量は約55%(新中村化学工業株式会社製)
【0177】
【0178】
・A-TMM-3LM-N:以下2種の化合物の混合物、ガスクロマトグラフ測定に基づく混合物中の左の化合物の量は約57%(新中村化学工業株式会社製)
【0179】
【0180】
・A-9550:以下2種の化合物の混合物、水酸基価から見積もった混合物中の左の化合物の量は約50%(新中村化学工業株式会社製)
【0181】
【0182】
<原料ポリマーの合成>
まず、無水マレイン酸構造単位と、2-ノルボルネン構造単位とを含む(重合性二重結合を含まない)原料ポリマーを合成した。詳細を以下に示す。
【0183】
(原料ポリマー1)
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、無水マレイン酸353.02g(3.6モル)と、2-ノルボルネン338.94g(3.6モル)と、ジメチル2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート)33.16g(0.144モル)とを計量して入れた。これらを、メチルエチルケトン1030.1gおよびトルエン113.0gからなる混合溶媒に溶解させ、溶解液を作製した。
この溶解液に対して、30分間窒素を通気して酸素を除去し、次いで、撹拌しつつ温度65℃で1.5時間加熱し、さらにその後80℃で6時間加熱することで、無水マレイン酸と、2-ノルボルネンとを重合させ、重合溶液を作製した。
上記で得られた重合溶液を、メタノール8519.9gに滴下することで白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を、温度120℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー1)607.5gを得た。
得られたポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、重量平均分子量Mwは7000であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.82であった。
【0184】
(原料ポリマー2)
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、無水マレイン酸353.02g(3.6モル)と、2-ノルボルネン338.94g(3.6モル)と、ジメチル2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート)33.16g(0.144モル)とを計量して入れた。これらを、MEK2654.9gおよびトルエン113.0gからなる混合溶媒に溶解させ、溶解液を作製した。
この溶解液に対して、30分間窒素を通気して酸素を除去し、次いで、撹拌しつつ温度65℃で1.5時間加熱し、さらにその後80℃で6時間加熱することで、無水マレイン酸と、2-ノルボルネンとを重合させ、重合溶液を作製した。
上記で得られた重合溶液を、メタノール13972.1gに滴下することで白色固体を再沈殿させた。得られた白色固体を、温度120℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー2)569.1g得た。
得られたポリマーをGPC測定した結果、重量平均分子量Mwは4300であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.59であった。
【0185】
(原料ポリマー3)
撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、無水マレイン酸353.02g(3.6mol)と、2-ノルボルネン338.94g(3.6mol)と、ジメチル2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート)41.45g(0.180mol)とを計量して入れた。これらを、メチルエチルケトン578.98gおよびトルエン113.0gからなる混合溶媒に溶解させ、溶解液を作製した。
この溶解液に対して、30分間窒素を通気して酸素を除去し、次いで、撹拌しつつ温度63℃で9.5時間加熱することで、無水マレイン酸と、2-ノルボルネンとを重合させ、重合溶液を作製した。
上記で得られた重合溶液をメチルエチルケトン712.92gで希釈した後、メタノール8519.9gに滴下することで白色固体を沈殿させた。得られた白色固体を、温度120℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー(原料ポリマー3)550.4gを得た。
得られたポリマーをGPC測定した結果、重量平均分子量Mwは11,600であり、多分散度(重量平均分子量Mw)/(数平均分子量Mn)は1.79であった。
【0186】
<ポリマーの合成(原料ポリマーのMA由来の構造単位の開環)>
(合成例1)
原料ポリマー1のMA由来の構造単位(以下、単に「MA単位」とも記載する)を、水酸基含有の3官能アクリレートで開環したポリマーを作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 30g(MA換算0.156モル)に対して、MEK 64.15gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3L 96.85g(上記の2種混合物としての添加量、以下同様)を加え、その後、トリエチルアミン9.00g(0.089モル)を加え、温度70℃で6時間反応させ、反応溶液を作製した。
【0187】
作製された反応溶液をギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、以下手順でポリマーを精製した。
・過剰量のトルエンでポリマーを再沈殿させた。
・再沈殿で得られたポリマー粉末を、過剰量のトルエンで洗浄する操作を2回繰り返した。
・上記の2回洗浄後のポリマー粉末を、過剰量の水で洗浄する操作を3回行った。
【0188】
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3Lで開環した、ポリマー23.39gを得た。
【0189】
(合成例2)
原料ポリマー1のMA単位を、水酸基含有の3官能アクリレートおよび水酸基含有の単官能アクリレートで開環したポリマーを作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 30g(MA換算0.156モル)に対して、MEK 67.72gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3L 58.12gを加え、その後、トリエチルアミン9.00g(0.089モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、BHEA 22.65g(0.195モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液を、合成例1と同様に、ギ酸水溶液、過剰量のトルエン、過剰量の水などを用いて精製した。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LおよびBHEAで開環した、ポリマー22.21gを得た。
【0190】
(合成例3)
原料ポリマー1のMA単位を、水酸基含有の3官能アクリレートおよび水酸基含有の単官能アクリレートで開環したポリマーを作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 30g(MA換算0.156モル)に対して、MEK 49.41gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3L 19.37gを加え、その後、トリエチルアミン9.00g(0.089モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、BHEA 22.65g(0.195モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液を、合成例1と同様に、ギ酸水溶液、過剰量のトルエン、過剰量の水などを用いて精製した。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位をA-TMM-3LおよびBHEAで開環した、ポリマー22.53gを得た。
【0191】
(合成例4)
原料ポリマー1のMA単位を、水酸基含有の3官能アクリレートおよび水酸基含有の単官能アクリレートで開環したポリマーを作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 30g(MA換算0.156モル)に対して、MEK 49.51gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3L 19.37gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、BHEA 22.65g(0.195モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液を、合成例1と同様に、ギ酸水溶液、過剰量のトルエン、過剰量の水などを用いて精製した。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LおよびBHEAで開環した、ポリマー22.10gを得た。
【0192】
(合成例5)
原料ポリマー1のMA単位を、水酸基含有の3官能アクリレートおよび水酸基含有の単官能アクリレートで開環したポリマーを作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 30g(MA換算0.156モル)に対して、MEK 49.86gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3L 19.37gを加え、その後、トリエチルアミン9.00g(0.089モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、4-HBA 28.13g(0.195モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液を、合成例1と同様に、ギ酸水溶液、過剰量のトルエン、過剰量の水などを用いて精製した。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3Lおよび4-HBAで開環した、ポリマー24.64gを得た。
【0193】
(合成例6)
原料ポリマー1のMA単位を、水酸基含有の3官能アクリレートおよび水酸基含有の単官能アクリレートで開環したポリマーを作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 30g(MA換算0.156モル)に対して、MEK 47.35gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3L 19.37gを加え、その後、トリエチルアミン18.00g(0.178モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、4-HBA 28.13g(0.195モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液を、合成例1と同様に、ギ酸水溶液、過剰量のトルエン、過剰量の水などを用いて精製した。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3Lおよび4-HBAで開環した、ポリマー25.77gを得た。
【0194】
(合成例7)
原料ポリマー1のMA単位を、水酸基含有の5官能アクリレートおよび水酸基含有の単官能アクリレートで開環したポリマーを作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 30g(MA換算0.156モル)に対して、MEK 71.03gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-9550 43.78gを加え、その後、トリエチルアミン9.00g(0.089モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、反応溶液にBHEA 22.65g(0.195モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液を、合成例1と同様に、ギ酸水溶液、過剰量のトルエン、過剰量の水などを用いて精製した。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-9550およびBHEAで開環した、ポリマー25.51gを得た。
【0195】
(合成例8)
原料ポリマー2のMA単位を、水酸基含有の3官能アクリレートおよび水酸基含有の単官能アクリレートで開環したポリマーを作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー2 30g(MA換算0.156モル)に対して、MEK 49.41gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-TMM-3LM-N 19.37gを加え、その後、トリエチルアミン9.00g(0.089モル)を加え、温度70℃で2時間反応させた。さらにその後、BHEA 22.65g(0.195モル)を加え、温度70℃で4時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液を、合成例1と同様に、ギ酸水溶液、過剰量のトルエン、過剰量の水などを用いて精製した。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-TMM-3LおよびBHEAで開環した、ポリマー21.11gを得た。
【0196】
(合成例9)
原料ポリマー3のMA単位を、水酸基含有の5官能アクリレートで開環したポリマーを作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー3 30g(MA換算0.156モル)に対して、MEK 79.60gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、A-9550 131.35g(上記の2種混合物としての添加量)を加え、その後、トリエチルアミン9.00g(0.089mol)を加え、温度70℃で6時間反応させ、反応溶液を作製した。
作製された反応溶液を、合成例1と同様に、ギ酸水溶液、過剰量のトルエン、過剰量の水などを用いて精製した。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、A-9550で開環した、ポリマー26.22gを得た。
【0197】
(比較合成例1)
原料ポリマー1のMA単位を、水酸基含有の単官能アクリレートのみで開環したポリマーを作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 30g(MA換算0.156モル)に対して、MEK 55.50gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、BHEA 22.65g(0.195モル)を加え、その後、トリエチルアミン9.00g(0.089モル)を加え、そして温度70℃で6時間反応させ、反応溶液を作製した。
得られた反応溶液をギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、溶液を大量の純水に注ぎ、ポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾取し、さらに純水で洗浄した。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、BHEAのみで開環した、ポリマー27.21gを得た。
【0198】
(比較合成例2)
原料ポリマー1のMA単位を、水酸基含有の単官能アクリレートのみで開環したポリマーを作製した。以下、詳細を説明する。
まず、原料ポリマー1 30g(MA換算0.156モル)に対して、MEK 55.5gを加えて、溶解液を作製した。次いで、この溶解液に対して、4-HBA 28.11g(0.195モル)を加え、その後、トリエチルアミン9.00g(0.089モル)を加え、そして温度70℃で6時間反応させ、反応溶液を作製した。
得られた反応溶液をギ酸水溶液で処理することで、反応溶液から水相を除去した。その後、溶液を大量の純水に注ぎ、ポリマーを析出させた。得られたポリマーを濾取し、さらに純水で洗浄した。
以上により、原料ポリマー中の無水マレイン酸に由来する構造単位を、4-HBAで開環した、ポリマー26.54gを得た。
【0199】
<GPC測定>
合成例1~9および比較合成例1、2のポリマーの固形分について、ポリスチレンを標準物質としたGPC測定により、重量平均分子量および多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)を求めた。
なお、GPC測定により、アクリレート化合物(BHEA、4-HBA、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-9550)のピークの消失を確認した。つまり、合成例1~9および比較合成例1、2のポリマーにおいては、原料ポリマーのMA単位と未反応のアクリレートや、そもそもMA単位と反応しないアクリレート化合物(水酸基を含まないアクリレート)が十分に除去されていることを確認した。
【0200】
<ポリマーのNMR測定/酸価、二重結合当量>
合成例1~9および比較合成例1、2のポリマーの固形分について、1H-NMR測定を行った。
1H-NMR測定内標準のテレフタル酸ジメチルのフェニル基の4Hのピーク(8.1ppm付近)の積分値を基準にして、ポリマーのカルボキシル基(-COOH)のHのピーク(12.4ppm付近)の積分値からカルボキシル基の量を求めた。そして、その量から酸価(mgKOH/g)を算出した。
酸価の値が大きいほど、ポリマー単位質量あたりのカルボキシル基の量が多いことを表す。
【0201】
また、同様に、テレフタル酸ジメチルのフェニル基の4Hのピーク(8.1ppm付近)の積分値を基準にして、ポリマー中のアクリロイル部分(CH2=CH-COO-)の3Hのピーク(6.2ppm付近)の積分値よりC=C二重結合の量を求めた。そして、その量から二重結合当量 (C=C二重結合1モルあたりのポリマー質量、g/モル)を算出した。
二重結合当量の値が小さいほど、ポリマー単位質量あたりのC=C二重結合の量が多いことを表す。
【0202】
<ポリマーの重量減少率の測定>
TG-DTA装置(日立ハイテクサイエンス社製、STA7200RV)に、得られたポリマー1mgをセットした。これを、窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で35℃から500℃まで昇温した。この際の、350℃での重量減少率を読み取った。
【0203】
各合成例および比較合成例のポリマーに関する各種数値を、まとめて表1に示す。
表1において、ポリマー中の一般式(1)で表される構造単位の量X1および一般式(2)で表される構造単位の量X2は、前述のように、カルボキシル基のモル数や重合性二重結合のモル数などを基に、連立方程式を立てて求めた値である。
表1において、ポリマー中の一般式(NB)で表される構造単位の量XNB(モル/g)は、原料ポリマーの重合における仕込みモノマー量に基づく値である(原料モノマー1および2は、MA単位と、2-ノルボルネンに由来する構造単位とを、原料仕込み比どおり、モル比1:1で含んでいるとした)。
【0204】
【0205】
表1より、特に、原料として単官能アクリレートを用いず、一般式(2)で表される構造単位を含まないポリマー(合成例1、9)の重量減少率が小さい傾向が読み取れる。
【0206】
<硬化後のテトラヒドロフラン(THF)溶解性>
まず、以下組成の感光性樹脂組成物を調製した。
・ポリマー(表2に記載のもの):100質量部
・光重合開始剤(BASF社製、Ingacure OXE01、OXE02、OXE03、OXE04のいずれか1種、表2に記載のもの):5質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA):245質量部
【0207】
上記の感光性樹脂組成物を、以下手順で硬化させ、そしてTHF溶解性を評価した。
(1)上記で調製された感光性樹脂組成物を、シリコンウエハにスピン塗布した。その後、100℃、2分間の条件でプリベークし、膜厚3μm±0.3μmの感光性樹脂膜を得た。
スピン塗布の条件は、50rpmで10秒の後、500~3000rpmで20秒とした(プリベーク後の膜厚が上記範囲となるように回転速度を適宜調整した)。
膜厚については、干渉膜厚計を用い、屈折率は1.55として測定した。
(2)上記(1)で得られた感光性樹脂膜を、ウエハーごと、2cm×2cmの正方形状にカットした。
(3)カットされたウエハ(感光性樹脂膜付き)を、250℃、1時間、空気下で加熱処理した。これにより感光性樹脂膜を硬化させた。
(4)硬化した感光性樹脂膜を、ウエハーごと、5mLのテトラヒドロフラン(23℃)に入れ、10分間浸漬処理した。
(5)上記の浸漬処理後のテトラヒドロフランを、メンブレンフィルターDISMIC-13JP(アドバンテック東洋株式会社製)でろ過し、不溶分を取り除いた。このろ過後のテトラヒドロフラン10μLをGPC測定装置にかけ、示差屈折率検出器(RI検出器)で分析した。
GPC測定装置としては、東ソー株式会社のHLC-8320GPC EcoSECを用いた。カラム温度は40.0℃、ポンプ流量は0.350mL/分に設定した。
(6)得られたGPCチャートを見て、未硬化のポリマーに由来するピークの有無を調べた。具体的には、流量、流速、ポリマーの分子量等を踏まえ、保持時間10~20分の範囲で定義されるピークの面積について、以下基準で評価し、不溶性を判断した。評価結果は以下の表2にまとめた。
10mV・秒未満:不溶(表2には◎と記載)
10mV・秒以上、20mV・秒未満:極微溶(表2には○と記載)
20mV・秒以上:可溶(表2には×と記載)
【0208】
【0209】
<性能評価>
[感度](露光-現像後の残膜率による評価)
まず、全固形分濃度が30質量%になるように、以下成分をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解した感光性樹脂組成物を得た。
・ポリマー(合成例1~9または比較例1、2のもの):100質量部
・多官能アクリレート(ジペンタエリスリトールキサアクリレート):50質量部
・光重合開始剤(BASF社製、Ingacure OXE01):5質量部
・密着助剤(信越化学工業株式会社製、KBM-403):1質量部
・界面活性剤(DIC株式会社製、F-556):0.5質量部
【0210】
得られた樹脂組成物をHMDS(Hexamethyldisilazane)処理した3インチシリコンウェハー上に回転塗布し、100℃、120秒間ホットプレートにてベークして、約3.0μm厚(±0.3μm)の薄膜Aを得た。
この薄膜Aに、遮光率1~100%の階調を有するフォトマスクを介して、キヤノン社製g+h+i線マスクアライナー(PLA-501F)にて100mJ/cm2の露光量でg+h+i線を露光した。
露光後、薄膜を2.0質量%炭酸ナトリウム水溶液で23℃、60秒間現像(ウェハーごと浸漬)することで、1~100mJ/cm2の各露光量で露光、現像された薄膜Bを得た。
【0211】
上記の方法にて得られた薄膜A、薄膜Bの膜厚から、以下の式より残膜率を算出した。
残膜率(%)=(各露光量での薄膜Bの膜厚/薄膜Aの膜厚)×100
そして、残膜率が95%以上となる露光量を、各感光性樹脂組成物の感度として、以下基準により評価した。評価結果をまとめて表3に示す。
◎(感度がとても良い):20mJ/cm2以下
○(感度が良い):21~50mJ/cm2
×(感度が悪い):≧51mJ/cm2以上
【0212】
【0213】
表3に示されるとおり、本実施形態の感光性樹脂組成物(一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーと、光重合開始剤とを含む)の感度は良好であった。
【0214】
[現像性評価](現像液に対する組成物の溶解速度)
上記[感度]の評価で調製した組成物と同様の組成物の一部を、HMDS処理した3インチシリコンウェハー上に回転塗布し、100℃、120秒間ホットプレートにてベークして、約3.0μm厚(±0.3μm)の薄膜Aを得た。
この樹脂膜を、ウエハーごと、温度23℃の2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液に浸漬し、樹脂膜の溶解速度を測定した。
溶解速度は、浸漬したウエハーを目視で観察して樹脂膜が溶解して干渉模様が見えなくなるまでの時間を測定し、その時間で膜厚を割り算することで算出した。そして、以下基準で評価した。
○(良い):溶解速度2000nm/秒以上
×(悪い):溶解速度2000nm/秒未満
【0215】
また、様々な現像プロセスに対する適応性などを探るため、現像液として炭酸ナトリウムを用いた場合の現像性も評価した。
具体的には、現像液として2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液の代わりに2.0質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いた以外は、上記と同様にして溶解速度を求めた。そして、以下基準で評価した。
○(良い):溶解速度150nm/秒以上
×(悪い):溶解速度150nm/秒未満
【0216】
TMAH水溶液での評価結果と、炭酸ナトリウム水溶液での評価結果を、まとめて表4に示す。
【0217】
【0218】
表4に示されているとおり、本実施形態の感光性樹脂組成物(一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーと、光重合開始剤とを含む)の、TMAH現像液に対する現像性は非常に良好であった。つまり、表3の結果と合わせ、本実施形態の感光性樹脂組成物は、感度と現像性の両性能が良好であった。
また、実施例2~8の感光性樹脂組成物については、現像液として炭酸ナトリウム水溶液を用いた場合の現像性も良好であった。この結果には、実施例2~8の感光性樹脂組成物で用いられているポリマーは、一般式(1)で表される構造単位と、一般式(2)で表される構造単位の両方が含まれていることが関係していると考えられる。
【0219】
[耐熱性評価(ブラックマトリクスへの適用を想定)]
まず、全固形分濃度が30質量%になるように、以下成分をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解した感光性樹脂組成物を得た。
・ポリマー(合成例1、3、5、9または比較合成例1、2のもの):100質量部
・多官能アクリレート(ジペンタエリスリトールキサアクリレート):50質量部
・光重合開始剤(BASF社製、Ingacure OXE01):5質量部
・密着助剤(信越化学工業株式会社製、KBM-403):1質量部
・界面活性剤(DIC株式会社製、F-556):0.5質量部
得られた感光性樹脂組成物は必要に応じてPTFEメンブレンフィルターMillex-LS(メルクミリポア社製)でろ過し、不溶分を取り除いた。
【0220】
得られた感光性樹脂組成物を、HMDS処理した3インチシリコンウェハー上に回転塗布し、100℃、120秒間ホットプレートにてベークして、約3.0μm厚(±0.3μm)の薄膜Aを得た。
この薄膜Aに、キヤノン社製g+h+i線マスクアライナー(PLA-600F)にて、100mJ/cm2の露光量でg+h+i線を露光した。
露光後、薄膜を2.0質量%炭酸ナトリウム水溶液で23℃、60秒間現像(ウェハーごと浸漬)することで、100mJ/cm2の露光量で露光、現像された薄膜Bを得た。
現像後、薄膜Bを230℃、1時間、空気下で加熱処理することで薄膜Cを得た。
【0221】
熱重量・示差熱分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、STA7200RV)に、得られた薄膜C 1mgをセットした。これを、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で35℃から400℃まで昇温した。この際の、セットした薄膜Cの重量に対し、5%の熱重量減少が生じる温度(Td5)を読み取った。Td5が大きいほど、薄膜Cの耐熱性が高く、特にブラックマトリクスへの適用に好ましいことを表す。
【0222】
【0223】
上表に示されるとおり、実施例と比較例とでは、Td5に10℃以上の差が生じた。すなわち、一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーを含む感光性樹脂組成物により硬化膜を形成することで、硬化膜の耐熱性を高められることが示された。
なお、上表より、特に、ポリマーが一般式(2)で表される構造単位(重合性二重結合を1つのみ含む)を含まないほうが、より一層耐熱性を高められることが読み取れる。
【0224】
<カラーフィルタの作製>
表3の実施例2で調製した感光性樹脂組成物(合成例2のポリマーを含む)に対し、さらに、顔料分散液NX-061(大日精化工業株式会社製、緑色)を適量加えた着色感光性樹脂組成物を調製した。
これを基板上に製膜し、露光、アルカリ現像処理などを行うことで、緑色のカラーフィルタを形成することができた。
また、顔料分散液として、NX-061の代わりに、同社製のNX-053(青色)、NX-032(赤色)などを用いて、青色または赤色のカラーフィルタを形成することができた。
【0225】
<ブラックマトリクスの作製>
表3の実施例2で調製した感光性樹脂組成物(合成例2のポリマーを含む)に対し、さらに、カーボンブラック分散液NX-595(大日精化工業株式会社製)を適量加えた黒色感光性樹脂組成物を調製した。
これを基板上に製膜し、露光、アルカリ現像処理などを行うことで、ブラックマトリクスを形成することができた。
また、表5の実施例2-1で調製した感光性樹脂組成物(合成例9のポリマーを含む)に対し、さらに、カーボンブラック分散液NX-595(大日精化工業株式会社製)を適量加えた黒色感光性樹脂組成物においても、同様にブラックマトリクスを形成することができた。
【符号の説明】
【0226】
10 基板
11 ブラックマトリクス
12 カラーフィルタ
13 保護膜
14 透明電極層