(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】半導体封止用樹脂組成物および半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230404BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230404BHJP
C08K 3/24 20060101ALI20230404BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230404BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20230404BHJP
C08L 61/28 20060101ALI20230404BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20230404BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20230404BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/22
C08K3/24
C08K3/36
C08K3/38
C08L61/28
H01L21/60 311Q
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2019025890
(22)【出願日】2019-02-15
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大谷 祥一朗
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-136635(JP,A)
【文献】特開平09-017911(JP,A)
【文献】特開2000-109647(JP,A)
【文献】特開2008-101062(JP,A)
【文献】特開2008-045025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
H01L 21/60
H01L 23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と、
無機充填材と、
難燃剤と、
を含み、
前記無機充填材の平均粒径d
50が0.3μm以上10μm以下であり、
前記難燃剤の平均粒径d
50が2.2μm以下であり、
前記無機充填材の平均粒径d
50
に対する前記難燃剤の平均粒径d
50
の比(難燃剤のd
50
/無機充填材のd
50
)が0.5以上3.0以下であり、
20μm以下のギャップが設けられた部材の前記ギャップの充填に用いられる、半導体封止用樹脂組成物。
【請求項2】
前記難燃剤の粒径d
90が2.0μm以上7.5μm以下である、請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記難燃剤が、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛およびメラミン樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項1または2に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機充填材がシリカを含む、請求項1乃至3いずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機充填材の平均粒径d
50に対する前記難燃剤の平均粒径d
50の比(難燃剤のd
50/無機充填材のd
50)が1.1以上3.0以下である、請求項1乃至4いずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物で半導体素子を封止してなる、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用樹脂組成物および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に半導体素子が実装された半導体装置においては、基板と半導体素子との間の隙間の充填と、半導体素子の封止と、を一括しておこなうモールドアンダーフィル材料が用いられる場合がある。モールドアンダーフィル材料に関する技術としては、たとえば特許文献1に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1は、モールドアンダーフィル材用のエポキシ樹脂組成物に関する技術である。具体的には、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填剤と、硬化促進剤と、を含む非液状のエポキシ樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、モールドアンダーフィル材等の狭ギャップへの充填に用いる充填材について検討した。すると、上記特許文献1に記載のモールドアンダーフィル材は、難燃性を向上しつつ狭ギャップへの充填性を向上するという点で改善の余地があることが明らかになった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
硬化性樹脂と、
無機充填材と、
難燃剤と、
を含み、
前記無機充填材の平均粒径d50が0.3μm以上10μm以下であり、
前記難燃剤の平均粒径d50が2.2μm以下であり、
20μm以下のギャップが設けられた部材の前記ギャップの充填に用いられる、半導体封止用樹脂組成物が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、前記本発明における半導体封止用樹脂組成物で半導体素子を封止してなる、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、難燃性を向上しつつ狭ギャップへの充填性を向上する封止技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図2】本実施形態における構造体の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致していない。また、本実施形態において、組成物は、各成分をいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。
【0011】
(半導体封止用樹脂組成物)
本実施形態において、半導体封止用樹脂組成物(以下、単に「封止用樹脂組成物」とも呼ぶ。)は、20μm以下のギャップが設けられた部材の上記ギャップの充填に用いられるものであり、硬化性樹脂と、無機充填材と、難燃剤と、を含む。無機充填材の平均粒径d50は、0.3μm以上10μm以下である。そして、難燃剤の平均粒径d50は2.2μm以下である。
【0012】
(硬化性樹脂)
硬化性樹脂として、具体的には熱硬化性樹脂が挙げられる。ここで、硬化性樹脂は、後述する難燃剤を除くものである。
熱硬化性樹脂は、封止用樹脂組成物の硬化物の耐熱性を向上させる観点から、たとえば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ユリア(尿素)樹脂、ポリウレタン樹脂、シアネートエステル樹脂、シリコーン樹脂、オキセタン樹脂(オキセタン化合物)、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂およびベンゾオキサジン樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む。
【0013】
封止材の耐熱性を向上する観点から、硬化性樹脂はたとえばエポキシ樹脂を含むことができる。
エポキシ樹脂は、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物であり、モノマー、オリゴマーおよびポリマーのいずれであってもよく、具体的には、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上である。
【0014】
また、封止用樹脂組成物は、フェノール樹脂硬化剤等の熱硬化性樹脂の硬化剤を含んでもよい。フェノール樹脂硬化剤の具体例については後述する。
【0015】
封止用樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の含有量は、成形時における流動性を向上させて、充填性や成形安定性の向上を図る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは2.5質量%以上である。
一方、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させる観点、および、成形体の反りを抑制する観点から、熱硬化性樹脂の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、たとえば18質量%以下であってよく、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは14質量%以下、さらに好ましくは13質量%以下である。
【0016】
(硬化剤)
封止用樹脂組成物は、前述したように、硬化剤を含んでもよい。硬化剤としては、たとえば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、および縮合型の硬化剤の3タイプに大別することができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
重付加型の硬化剤は、たとえば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドラジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、ポリビニルフェノール、アラルキル型フェノール樹脂などのフェノール樹脂系硬化剤;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類からなる群から選択される1種または2種以上を含む。
【0018】
触媒型の硬化剤は、たとえば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP-30)などの3級アミン化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸からなる群から選択される1種または2種以上を含む。
【0019】
縮合型の硬化剤は、たとえば、レゾール型フェノール樹脂;メチロール基含有尿素樹脂などの尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂などのメラミン樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む。
【0020】
これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、および保存安定性等についてのバランスを向上させる観点から、フェノール樹脂系硬化剤を含むことがより好ましい。フェノール樹脂系硬化剤としては、たとえば、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量、分子構造は限定されない。
フェノール樹脂系硬化剤は、たとえば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂;ポリビニルフェノール、トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格およびビフェニレン骨格から選ばれる1以上を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレンおよびビフェニレン骨格から選ばれる1以上を有するナフトールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル型フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物からなる群から選択される1種または2種以上を含む。これらの中でも、成形体の反りを抑制する観点からは、ノボラック型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂およびフェノールアラルキル型フェノール樹脂を含むことがより好ましい。また、フェノールノボラック樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、ホルムアルデヒドで変性したトリフェニルメタン型フェノール樹脂を好ましく使用することもできる。
【0021】
封止用樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、成形時において、優れた流動性を実現し、充填性や成形性の向上を図る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上である。
一方、電子部品の耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させる観点、および、得られる成形体の反りを抑制する観点から、硬化剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは9質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。
【0022】
(無機充填材)
本実施形態において、無機充填材は、後述する難燃剤を除くものである。無機充填材の構成材料としては、溶融シリカ、結晶シリカ、非晶質シリカ等のシリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、汎用性に優れている観点から、無機充填材は好ましくはシリカを含み、溶融シリカを用いることがより好ましい。また、無機充填材は、成形時の流動性および充填性を高める観点から、球状のものであることが好ましく、さらには球状シリカであることが好ましい。
【0023】
無機充填材の平均粒径d50は、成形性を向上する観点から、0.3μm以上であり、好ましくは0.4μm以上、より好ましくは0.8μm以上、さらに好ましくは1.2μm以上である。
一方、無機充填材の平均粒径d50は、狭ギャップ充填性を向上する観点から、10μm以下であり、好ましくは8μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。
【0024】
ここで、無機充填材および後述する難燃剤の粒径分布は、市販のレーザー回折式粒度分布測定装置(たとえば、島津製作所社製、SALD-7000)を用いて粒子の粒度分布を体積基準で測定することにより取得することができる。
【0025】
封止用樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、硬化物の耐熱性や耐湿性を向上する観点から、封止用脂組成物全体に対して好ましくは65質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上である。
一方、封止用樹脂組成物の成形時における流動性や充填性をより効果的に向上する観点から、無機充填材の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0026】
(難燃剤)
難燃剤は、具体的には、固形成分であり、その構成材料の具体例として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛およびメラミン樹脂からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。狭ギャップ充填性および耐熱性を向上する観点から、難燃剤は、好ましくは水酸化アルミニウムおよびモリブデン酸亜鉛からなる群から選択される1種以上を含み、より好ましくは水酸化アルミニウムを含む。
【0027】
難燃剤の平均粒径d50は、狭ギャップ充填性を向上する観点から、2.2μm以下であり、好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.8μm以下である。
また、難燃剤の平均粒径d50の下限に制限はないが、たとえば0.1μm以上であってもよい。
【0028】
難燃剤の粒径d90は、低粘度維持の観点から、好ましくは2.0μm以上であり、より好ましくは3.5μm以上である。
また、狭部充填性を向上する観点から、難燃剤の粒径d90は、好ましくは7.5μm以下であり、より好ましくは6.0μm以下である。
【0029】
難燃剤の粒径d10は、好ましくは0.05μm以上であり、より好ましくは0.1μm以上である。また、難燃剤の粒径d10は、好ましくは2.0μm以下であり、より好ましくは1.8μm以下である。
【0030】
無機充填材の平均粒径d50に対する難燃剤の平均粒径d50の比(難燃剤のd50/無機充填材のd50)は、充填性を向上する観点から、たとえば0.5以上であってよく、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上であり、また、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.5以下である。
また、封止用樹脂組成物の粘度を低減して狭ギャップ充填性を向上する観点からは、難燃剤のd50>無機充填材のd50とすることが好ましい。
一方、封止用樹脂組成物の粘度を適度に高めつつ狭ギャップ充填性も維持する観点からは、難燃剤のd50<無機充填材のd50とすることが好ましい。
【0031】
また、難燃剤の電気伝導度は、信頼性を向上する観点から、好ましくは100μS/cm以下であり、より好ましくは50μS/cm以下である。
【0032】
封止用樹脂組成物中の難燃剤の含有量は、硬化物の耐熱性を向上する観点から、封止用脂組成物全体に対して好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物の成形時における流動性や充填性をより効果的に向上する観点から、難燃剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは18質量%以下である。
【0033】
また、本実施形態において、上述した成分以外の成分を含んでもよい。たとえば、封止用樹脂組成物が硬化促進剤、離型剤、カップリング剤、イオン捕捉剤、着色剤、低応力剤、酸化防止剤または他の添加剤を含んでもよい。
封止用樹脂組成物中のこれら各成分の量は、封止用樹脂組成物全体に対して、それぞれ、0.01~2質量%程度の量とすることができる。
【0034】
硬化促進剤は、たとえば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、上記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。これらの中でも、硬化性を向上させる観点からはリン原子含有化合物を含むことがより好ましい。また、成形性と硬化性のバランスを向上させる観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましい。
封止用樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、封止用樹脂組成物の硬化特性を高める観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0035】
離型剤は、たとえばカルナバワックス等の天然ワックス;酸化ポリエチレンワックス、モンタン酸エステルワックス等の合成ワックス;ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類;ならびにパラフィンから選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
封止用樹脂組成物中の離型剤の含有量は、硬化物の好ましい離型特性を得る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0036】
着色剤は、たとえば、カーボンブラック、ベンガラから選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
封止用樹脂組成物中の離型剤の含有量は、硬化物の着色と硬化物の封止材としての特性とのバランスを好ましいものとする観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0037】
カップリング剤は、たとえば、エポキシシラン、メルカプトシラン、フェニルアミノシラン等のアミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。これらの中でも、本発明の効果をより効果的に発現するものとして、エポキシシランまたはアミノシランを含むことがより好ましく、2級アミノシランを含むことが流動性等の観点からさらに好ましい。好ましいカップリング剤として、たとえばフェニルアミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
封止用樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、封止用樹脂組成物の成形時に好ましい流動性を得る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0038】
低応力剤の具体例として、シリコーンオイル、シリコーンゴム、カルボキシル基末端ブタジエンアクリロニトリルゴムが挙げられる。樹脂流動性向上の観点から、低応力剤は、好ましくはシリコーンオイルおよびカルボキシル基末端ブタジエンアクリロニトリルゴムからなる群から選択される1種以上を含む。
封止用樹脂組成物中の低応力剤の含有量は、半導体装置の接続信頼性を向上させる観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上であり、また、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0039】
次に、封止用樹脂組成物の製造方法を説明する。
封止用樹脂組成物の製造方法としては、たとえば、まず、平均粒径d50が上述した範囲にある難燃剤および平均粒径d50が上述した範囲にある無機充填材を準備する。このとき、難燃剤の粒度分布は、たとえば、固体材料を破砕し、得られた破砕物を適宜篩い分けすることにより得ることができる。
封止用樹脂組成物の各成分を準備したら、これらを公知の手段で混合することにより混合物を得る。さらに、混合物を溶融混練することにより、混練物を得る。混練方法としては、たとえば、1軸型混練押出機、2軸型混練押出機等の押出混練機や、ミキシングロール等のロール式混練機を用いることができるが、無機充填材および難燃剤を破砕しない方法が好ましく、2軸型混練押出機を用いることが好ましい。混練物を冷却した後、粉砕することで固形の封止用樹脂組成物を得ることができる。さらには、これらをタブレット状に打錠成形したものを封止用樹脂組成物として用いることもできる。これにより、顆粒状またはタブレット状の封止用樹脂組成物を得ることができる。
このような打錠成形した組成物とすることにより、トランスファー成形、射出成形、および圧縮成形等の公知の成形方法を用いて封止成形することが容易となる。
【0040】
本実施形態において得られる封止用樹脂組成物においては、難燃剤の均粒径d50および無機充填材の平均粒径d50が特定の範囲に制御されるため、20μm以下のギャップへの優れた充填性とともに、優れた耐熱性を実現することができる。
【0041】
(半導体装置)
本実施形態における半導体装置は、たとえば上述した本実施形態における封止用樹脂組成物で半導体素子を封止してなるものである。また、封止用樹脂組成物は、半導体装置の封止材、モールドアンダーフィル材等として用いることができる。
【0042】
半導体素子の具体例としては、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。半導体素子は、好ましくは、受光素子および発光素子(発光ダイオード等)等の光半導体素子を除く、いわゆる、光の入出を伴わない素子である。
【0043】
半導体装置の基材は、たとえば、インターポーザ等の配線基板、またはリードフレームである。また、半導体素子は、ワイヤボンディングまたはフリップチップ接続等により、基材に電気的に接続される。
【0044】
封止用樹脂組成物を用いた封止成形により半導体素子を封止して得られる半導体装置としては、たとえば、SiP(System in Package)、MAP(Mold Array Package)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)、LF-BGA(Lead Flame BGA)、FCBGA(Flip Chip BGA)、MAPBGA(Molded Array Process BGA)、eWLB(Embedded Wafer-Level BGA)、Fan-In型eWLB、Fan-Out型eWLBなどの種類が挙げられる。
以下、図面を参照してさらに具体的に説明する。
【0045】
図1は、本実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図1に示した半導体装置100は、たとえば半導体パッケージであり、基板10と、半導体素子20と、封止材30と、を備えている。半導体素子20は、基板10上に配置されている。
図1においては、半導体素子20が、バンプ22を介して基板10上にフリップチップ実装される場合が例示されている。
【0046】
封止材30は、半導体素子20を封止し、かつ基板10と半導体素子20との間の隙間24に充填されている。封止材30は、上述した封止用樹脂組成物を、圧縮成形法を用いて成形することにより得られる。この場合、充填性に優れた封止用樹脂組成物を用いて、半導体素子20を封止しつつ隙間24内を充填することができ、信頼性に優れた半導体装置100を実現することが可能となる。
【0047】
このとき、基板10と半導体素子20との間の隙間24は、隙間24への封止用樹脂組成物の充填性を向上させる観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上である。また、隙間24は半導体装置全体を薄型化する観点から、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは10μm以下である。
【0048】
半導体装置100は、たとえば次のように製造される。まず、基板10上にバンプ22を介して半導体素子20を配置する。次いで、本実施形態における封止用樹脂組成物をモールドアンダーフィル材および封止材として用いて、たとえば圧縮成形法またはトランスファー成形法により、半導体素子20を封止するとともに基板10と半導体素子20との間の隙間24に封止用樹脂組成物を充填する。これにより、封止材30が形成される。圧縮成形法を用いる場合、たとえば圧縮成形機を用いて、金型温度120~185℃、成形圧力1~12MPa、硬化時間60秒~15分の条件下でおこなうことができる。
【0049】
また、
図2は、本実施形態における構造体の構成を示す断面図である。
図2に示した構造体102は、たとえばMAP成形により形成された成形品である。このため、構造体102を半導体素子毎に個片化することにより、複数の半導体パッケージが得られることとなる。
構造体102は、基板10と、複数の半導体素子20と、封止材30と、を備えている。複数の半導体素子20は、基板10上に配置されている。
図2においては、各半導体素子20が、バンプ22を介して基板10上にフリップチップ実装される場合が例示されている。封止材30は、複数の半導体素子20を封止し、かつ基板10と各半導体素子20との間の隙間24に充填されている。封止材30は、上述した封止用樹脂組成物を、たとえば圧縮成形法を用いて成形することにより得られる。この場合、充填性に優れた封止用樹脂組成物を用いて、各半導体素子20を封止しつつ各隙間24内を充填することができる。
【0050】
構造体102は、たとえば次のように製造される。まず、基板10上に、複数の半導体素子20を配置する。各半導体素子20は、たとえばバンプ22を介して基板10上に実装される。次いで、たとえば圧縮成形法またはトランスファー成形法を用いて、前述した封止用樹脂組成物により、複数の半導体素子20を封止するとともに、基板10と各半導体素子20との間の隙間24を充填する。これにより、封止材30が形成される。圧縮成形法を用いる場合、たとえば圧縮成形機を用いて、金型温度120~185℃、成形圧力1~12MPa、硬化時間60秒~15分の条件下でおこなうことができる。
【0051】
本実施形態において得られる半導体装置100および構造体102は、いずれも、封止材30が前述した封止用樹脂組成物の硬化物により構成されているため、狭ギャップ部分における充填性に優れているとともに、優れた難燃性を有する。
また、半導体装置100および構造体102においては、たとえば、20μm以下、好ましくは10μm以下の狭ギャップ部分への充填性に優れたものとすることも可能となる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 硬化性樹脂と、
無機充填材と、
難燃剤と、
を含み、
前記無機充填材の平均粒径d
50
が0.3μm以上10μm以下であり、
前記難燃剤の平均粒径d
50
が2.2μm以下であり、
20μm以下のギャップが設けられた部材の前記ギャップの充填に用いられる、半導体封止用樹脂組成物。
2. 前記難燃剤の粒径d
90
が2.0μm以上7.5μm以下である、1.に記載の半導体封止用樹脂組成物。
3. 前記難燃剤が、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛およびメラミン樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む、1.または2.に記載の半導体封止用樹脂組成物。
4. 前記無機充填材がシリカを含む、1.乃至3.いずれか1つに記載の半導体封止用樹脂組成物。
5. 前記無機充填材の平均粒径d
50
に対する前記難燃剤の平均粒径d
50
の比(難燃剤のd
50
/無機充填材のd
50
)が1.1以上3.0以下である、1.乃至4.いずれか1つに記載の半導体封止用樹脂組成物。
6. 1.乃至5.いずれか1つに記載の半導体封止用樹脂組成物で半導体素子を封止してなる、半導体装置。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0053】
(実施例1~3、比較例1および2)
各例について、表1に記載の配合にて封止用樹脂組成物を調製し、評価した。各例で用いた成分は以下のとおりである。
以下において、無機充填材および難燃剤の粒度分布は、いずれも、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD-7000)により測定した。
【0054】
(無機充填材)
無機充填材1:シリカ、アドマテックス社製、d50=1.5μm、電気伝導度=6.8μS/cm
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1:ビフェニルアラルキル型エポキシとビフェノールグリシジルエーテルの混合物(CER-3000-L、日本化薬社製)
(エポキシ樹脂以外の硬化性樹脂)
硬化性樹脂1:ビフェニルアラルキル型フェノール(MEH-7851SS、明和化成社製)
【0055】
(難燃剤)
難燃剤1:水酸化アルミニウム粉砕物、d50=2.8μm、d90=9.3μm、電気伝導度=23μS/cm
難燃剤2:水酸化アルミニウム粉砕物、d50=2.1μm、d90=7.1μm、電気伝導度=24μS/cm
難燃剤3:水酸化アルミニウム粉砕物、d50=1.5μm、d90=4.6μm、電気伝導度=38μS/cm
難燃剤4:水酸化アルミニウム粉砕物、d50=1.0μm、d90=3.5μm、電気伝導度=34μS/cm
【0056】
(着色剤)
着色剤1:カーボンブラック(ERS-2001、東海カーボン社製)
(硬化促進剤)
硬化促進剤1:下記式で表される硬化促進剤(テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート)
【0057】
【0058】
硬化促進剤2:下記式で表される硬化促進剤(テトラフェニルホスホニウム 2,3-ジヒドロキシナフタレート)
【0059】
【0060】
(離型剤)
離型剤1:カルナバワックス(TOWAX-132、東亞合成社製)
(カップリング剤)
カップリング剤1:フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(CF-4083、東レダウコーニング社製)
(低応力剤)
低応力剤1:カルボキシル基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合体(HYCAR CTBN1008SP、ピィ・ティ・アイ社製)
【0061】
(封止用樹脂組成物の調製)
まず、表1に示す各成分をミキサーにより混合した。次いで、得られた混合物を、ロール混練した後、冷却、粉砕して粉粒体である封止用樹脂組成物を得た。
【0062】
(評価)
(ギャップ充填性)
各例で得られた封止用樹脂組成物を用い、狭部充填評価用Cu-TEG(18.8mm四方×0.64mm厚、Cuピラーバンプ径100μm、Cuピラーバンプピッチ200μm、GAP高さ10μm)を、トランスファー成形機を用いて、金型温度165℃、注入圧力4.5MPa、硬化時間180秒で成形した。成形後に成形物を基材から剥離したのち、充填部を日立ハイテクノロジーズ製、卓上顕微鏡TM3030で観察し、ボイドの有無やレジンリッチ、フィラーリッチ層(分離層)の確認をおこなった。評価基準を以下に示す。
○:完全充填かつフィラーと樹脂が分離した不均一部分が無い(合格)。
△:完全充填しているが外周部にレジンリッチの分離層が観察される。
×:未充填部がある、もしくは狭部充填部にレジンリッチの分離層が観察される。
【0063】
(NGFP)
各例で得られた封止用樹脂組成物の矩形流路圧(矩形圧)を次のように測定した。まず、低圧トランスファー成形機(NEC社製、40tマニュアルプレス)を用いて、金型温度175℃、注入速度24.7mm/secの条件にて、幅13mm、厚さ0.5mm、長さ175mmの矩形状の流路に封止用樹脂組成物を注入した。このとき、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定し、封止用樹脂組成物の流動時における最低圧力(kgf/cm2)を測定し、これを矩形圧とした。矩形圧は、溶融粘度のパラメータであり、数値が小さい方が、溶融粘度が低いことを示す。
【0064】
(難燃性)
各実施例および各比較例について、得られた封止用樹脂組成物の硬化物の難燃性を、次のように測定した。まず、トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間3分で封止用樹脂組成物を注入成形し、3.2mm×13mm×125mmの試験片を得た。得られた試験片について、ポストキュアとして175℃で8時間処理した後、UL-94垂直試験(試験片厚さ3.2mm)をおこない、難燃性を判定した。ここでは、サンプルの最大燃焼時間Fmax(秒)の比較で優劣を判定した。
【0065】
【0066】
表1より、各実施例で得られた封止用樹脂組成物は、狭ギャップ充填性に優れるとともに、硬化物の難燃性にも優れていた。
【符号の説明】
【0067】
100 半導体装置
102 構造体
10 基板
20 半導体素子
22 バンプ
24 隙間
30 封止材