(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】切り替え方法、IP再送信システム、IP再送信装置および制御装置
(51)【国際特許分類】
H04N 21/242 20110101AFI20230404BHJP
H04N 21/236 20110101ALI20230404BHJP
H04H 20/20 20080101ALI20230404BHJP
H04H 60/82 20080101ALI20230404BHJP
H04H 20/18 20080101ALI20230404BHJP
【FI】
H04N21/242
H04N21/236
H04H20/20
H04H60/82
H04H20/18
(21)【出願番号】P 2019070537
(22)【出願日】2019-04-02
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】菊田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】海野 光晴
(72)【発明者】
【氏名】岩本 昌也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 富博
【審査官】鈴木 順三
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-009756(JP,A)
【文献】特開2008-227599(JP,A)
【文献】特開2015-139157(JP,A)
【文献】特開2007-274623(JP,A)
【文献】特開2008-124924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00 - 21/858
H04H 20/00 - 20/46
H04H 60/00 - 60/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送波を受信し、前記放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信する複数のIP再送信装置を備えるIP再送信システムにおいて、前記コンテンツの再送信を運用系の前記IP再送信装置から待機系の前記IP再送信装置へ切り替える切り替え方法であって、
前記運用系のIP再送信装置が受信している放送波の周波数に前記待機系のIP再送信装置が受信する放送波の周波数を合わせるステップと、
前記運用系のIP再送信装置において生成される情報である、各前記IP再送信装置において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく第1のカウント値と、前記コンテンツの再生装置における処理タイミングを示す第2のカウント値との差分を含むタイミング情報を前記待機系のIP再送信装置に与えるステップと、
所定のタイミングにおいて、前記運用系のIP再送信装置から前記待機系のIP再送信装置へ前記コンテンツの再送信を切り替えるステップと、
前記待機系のIP再送信装置が、与えられた前記タイミング情報に基づく前記処理タイミングを前記IPパケットに含めて送信するステップとを含む、切り替え方法。
【請求項2】
前記第1のカウント値のカウント周波数および前記第2のカウント値のカウント周波数が異なり、
前記タイミング情報は、さらに、前記差分の算出元である前記第1のカウント値を含み、
前記切り替え方法は、さらに、
前記待機系のIP再送信装置が、前記タイミング情報に含まれる前記差分および前記第1のカウント値と、自己が取得した前記同期情報に基づくカウント値とに基づいて、前記処理タイミングを算出するステップを含む、請求項1に記載の切り替え方法。
【請求項3】
前記同期情報は、前記放送波に含まれるNTP(Network Time Protocol)データであり、
前記処理タイミングは、TTS(Time-stamped TS)パケットに含まれるタイムスタンプである、請求項1または請求項2に記載の切り替え方法。
【請求項4】
分配器から同じ放送波を受信し、前記放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信する複数のIP再送信装置と、
制御装置とを備え、
各前記IP再送信装置から出力される前記IPパケットは、中継装置によって中継されてネットワークへ送信され、
待機系の前記IP再送信装置は、受信する放送波の周波数を、運用系の前記IP再送信装置が受信している放送波の周波数に合わせ、
前記待機系のIP再送信装置は、前記運用系のIP再送信装置において生成される情報である、各前記IP再送信装置において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく第1のカウント値と、前記コンテンツの再生装置における処理タイミングを示す第2のカウント値との差分を含むタイミング情報を前記制御装置を介して取得し、
前記制御装置は、前記コンテンツの再送信の切り替えとして、前記運用系のIP再送信装置に所定のタイミングにおいて前記コンテンツの再送信を停止させ、前記待機系のIP再送信装置に所定のタイミングにおいて前記コンテンツの再送信を開始させ、
前記待機系のIP再送信装置は、与えられた前記タイミング情報に基づく前記処理タイミングを前記IPパケットに含めて送信する、IP再送信システム。
【請求項5】
放送波を受信し、前記放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信するIP再送信システムにおけるIP再送信装置であって、
各前記IP再送信装置において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく第1のカウント値と、前記コンテンツの再生装置における処理タイミングを示す第2のカウント値との差分を含むタイミング情報を生成するタイミング情報生成部と、
前記タイミング情報生成部によって生成された前記タイミング情報を他の前記IP再送信装置に通知する通知部と、
他の前記IP再送信装置から通知された前記タイミング情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記タイミング情報に基づく前記処理タイミングを含む前記IPパケットを生成して送信するパケット処理部とを備える、IP再送信装置。
【請求項6】
放送波を受信し、前記放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信する複数のIP再送信装置を備えるIP再送信システムにおける制御装置であって、
待機系の前記IP再送信装置に対して、受信する放送波の周波数を、運用系の前記IP再送信装置が受信している放送波の周波数に合わせる命令を通知する放送波命令部と、
前記運用系のIP再送信装置において生成される情報である、各前記IP再送信装置において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく第1のカウント値と、前記コンテンツの再生装置における処理タイミングを示す第2のカウント値との差分を含むタイミング情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記タイミング情報を前記待機系のIP再送信装置に与える情報付与部と、
所定のタイミングにおいて前記運用系のIP再送信装置が前記コンテンツの再送信を停止し、かつ所定のタイミングにおいて前記待機系のIP再送信装置が前記コンテンツの再送信を開始する命令を通知する切り替え命令部とを備える、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、切り替え方法、IP再送信システム、IP再送信装置および制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデジタル技術の向上に伴い、テレビ放送等にデジタル技術を応用し、より多くの番組を提供するサービスが提供されている。限られた伝送帯域を使ってより多くの番組を高画質かつ高音質で提供するために、高能率圧縮および多重化技術が用いられている。
【0003】
このようなデジタル放送のシステムの一例として、たとえば、特開2010-171799号公報(特許文献1)には、以下のような構成が開示されている。すなわち、再多重システムは、デジタル放送波を受信し復調してMPEG-2TS(Transport Stream)を出力する復調装置と、前記復調装置からMPEG-2 TSが入力され、複数チャネルのMPEG-2映像を対象にトランスコードを各々実行し、トランスコード後の映像とデジタル放送信号中の音声、字幕と、PCR(Program Clock Reference)とをMPEG-2 TS形式に多重して出力する複数の映像トランスコーダと、前記複数の映像トランスコーダのトランスコーダ出力信号と、前記復調装置のMPEG-2 TS出力とを再多重する再多重装置とを備える。前記再多重装置は、前記複数の映像トランスコーダからのトランスコーダ出力信号を各々受信し、該受信信号中のMPEG-2 TSのTSパケットを抽出して、信号記憶手段の信号バッファ領域に書き込む複数のトランスコーダ出力信号受信手段と、前記復調装置からのMPEG-2 TS出力を受信し、該受信信号中のMPEG-2 TSのTSパケットを抽出して、信号記憶手段の信号バッファ領域に書き込む放送信号受信手段と、前記複数のトランスコーダ出力信号受信手段により信号記憶手段に書き込まれたMPEG-2 TSのTSパケット中のPCR、前記放送信号受信手段により信号記憶手段に書き込まれたMPEG-2 TSのTSパケット中のPCRに基づいて、前記映像トランスコーダから受信したMPEG-2 TSのTSパケットと前記復調装置から受信したMPEG-2 TSのTSパケットとの多重タイミングを決定するためのタイムスタンプ値を各TSパケット毎に求め、該タイムスタンプ値を各TSパケットと合わせて前記信号記憶手段に書き込む多重タイミング制御手段と、前記信号記憶手段に格納されているタイムスタンプ値の大きさに従って定められる多重タイミングで、該信号記憶手段内のTSパケットを読み出して、前記トランスコーダ出力信号とデジタル放送信号を再多重して出力する多重手段とを備える。
【0004】
また、MMTP(MPEG Media Transport Protocol)パケットを用いてコンテンツを伝送する技術が開発されている。
【0005】
たとえば、非特許文献1(一般社団法人 電波産業会、”デジタル放送におけるMMTによるメディアトランスポート方式 ARIB STD-B60 1.9版”、平成29年3月24日)には、MMT方式を用いる放送システムが開示されている。
【0006】
この放送システムでは、音声情報および映像情報等の番組の情報を含むMMTパケットは、IPパケットのペイロードに格納される。IPパケットは、TLV(Type Length Value)パケットのペイロードに格納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】一般社団法人 電波産業会、”デジタル放送におけるMMTによるメディアトランスポート方式 ARIB STD-B60 1.9版”、平成29年3月24日
【文献】一般社団法人 電波産業会、”高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式 ARIB STD-B44 2.1版”、平成28年3月25日
【文献】International Telecommunication Union Radiocommunications Sector、”Recommendation ITU-R BT.1869”、2010年3月、[online]、[平成31年3月8日検索]、インターネット〈URL:http://www.itu.int/dms_pubrec/itu-r/rec/bt/R-REC-BT.1869-0-201003-I!!PDF-E.pdf〉
【文献】”JCTEA STD-002-6.0 デジタル有線テレビジョン放送 多重化装置”、一般社団法人 日本CATV技術協会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ケーブルテレビ等のデジタル放送の配信事業者の局舎では、運用系および予備系の複数の配信装置が設けられる場合が多い。
【0010】
このような配信装置では、ネットワークにおけるパケットの伝送時間の揺らぎ等を再生装置において吸収するために、当該パケットを処理すべきタイミングの情報を当該パケットに含めて送信する場合がある。
【0011】
ここで、運用系の配信装置の保守交換等のために当該配信装置の出力を停止し、予備系の配信装置へ配信を切り替える場合、再生装置が受信するパケットに含まれる上記情報が乱れると、コンテンツを良好に再生することが困難となる。
【0012】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、コンテンツの送信装置を切り替え可能な構成において、再生装置における安定したコンテンツ再生を実現することが可能な切り替え方法、IP再送信システム、IP再送信装置および制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の切り替え方法は、放送波を受信し、前記放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信する複数のIP再送信装置を備えるIP再送信システムにおいて、前記コンテンツの再送信を運用系の前記IP再送信装置から待機系の前記IP再送信装置へ切り替える切り替え方法であって、前記運用系のIP再送信装置が受信している放送波の周波数に前記待機系のIP再送信装置が受信する放送波の周波数を合わせるステップと、前記運用系のIP再送信装置において生成される情報である、各前記IP再送信装置において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく第1のカウント値と、前記コンテンツの再生装置における処理タイミングを示す第2のカウント値との差分を含むタイミング情報を前記待機系のIP再送信装置に与えるステップと、所定のタイミングにおいて、前記運用系のIP再送信装置から前記待機系のIP再送信装置へ前記コンテンツの再送信を切り替えるステップと、切り替え先の前記IP再送信装置が、与えられた前記タイミング情報に基づく前記処理タイミングを前記IPパケットに含めて送信するステップとを含む。
【0014】
本開示のIP再送信システムは、分配器から同じ放送波を受信し、前記放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信する複数のIP再送信装置と、制御装置とを備え、各前記IP再送信装置から出力される前記IPパケットは、中継装置によって中継されてネットワークへ送信され、待機系の前記IP再送信装置は、受信する放送波の周波数を、運用系の前記IP再送信装置が受信している放送波の周波数に合わせ、前記待機系のIP再送信装置は、前記運用系のIP再送信装置において生成される情報である、各前記IP再送信装置において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく第1のカウント値と、前記コンテンツの再生装置における処理タイミングを示す第2のカウント値との差分を含むタイミング情報を前記制御装置を介して取得し、前記制御装置は、前記コンテンツの再送信の切り替えとして、前記運用系のIP再送信装置に所定のタイミングにおいて前記コンテンツの再送信を停止させ、前記待機系のIP再送信装置に所定のタイミングにおいて前記コンテンツの再送信を開始させ、切り替え先の前記IP再送信装置は、与えられた前記タイミング情報に基づく前記処理タイミングを前記IPパケットに含めて送信する。
【0015】
本開示のIP再送信装置は、放送波を受信し、前記放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信するIP再送信システムにおけるIP再送信装置であって、各前記IP再送信装置において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく第1のカウント値と、前記コンテンツの再生装置における処理タイミングを示す第2のカウント値との差分を含むタイミング情報を生成するタイミング情報生成部と、前記タイミング情報生成部によって生成された前記タイミング情報を他の前記IP再送信装置に通知する通知部と、他の前記IP再送信装置から通知された前記タイミング情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記タイミング情報に基づく前記処理タイミングを含む前記IPパケットを生成して送信するパケット処理部とを備える。
【0016】
本開示の制御装置は、放送波を受信し、前記放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信する複数のIP再送信装置を備えるIP再送信システムにおける制御装置であって、待機系の前記IP再送信装置に対して、受信する放送波の周波数を、運用系の前記IP再送信装置が受信している放送波の周波数に合わせる命令を通知する放送波命令部と、前記運用系のIP再送信装置において生成される情報である、各前記IP再送信装置において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく第1のカウント値と、前記コンテンツの再生装置における処理タイミングを示す第2のカウント値との差分を含むタイミング情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記タイミング情報を前記待機系のIP再送信装置に与える情報付与部と、所定のタイミングにおいて前記運用系のIP再送信装置が前記コンテンツの再送信を停止し、かつ所定のタイミングにおいて前記待機系のIP再送信装置が前記コンテンツの再送信を開始する命令を通知する切り替え命令部とを備える。
【0017】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備えるIP再送信システムとして実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、IP再送信システムの一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【0018】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備えるIP再送信装置として実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする切り替え方法として実現され得たり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、IP再送信装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【0019】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える制御装置として実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする制御方法として実現され得たり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、制御装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、コンテンツの送信装置を切り替え可能な構成において、再生装置における安定したコンテンツ再生を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムにおいて、放送信号によって伝送されるデータのプロトコルスタックの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムにおいて、放送信号によって伝送されるTLVパケットの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムにおけるIP再送信装置の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムにおけるNTP長形式のNTPデータの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係るIP再送信装置において行われるTLVパケットの分割方法の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6に示すTSパケットのフォーマットの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムによるIP再送信装置の切り替え時の処理を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムによるIP再送信装置の切り替え処理のシーケンスの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムにおける制御装置の構成を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムにおけるIP再送信装置の変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0023】
(1)本開示の実施の形態に係る切り替え方法は、放送波を受信し、前記放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信する複数のIP再送信装置を備えるIP再送信システムにおいて、前記コンテンツの再送信を運用系の前記IP再送信装置から待機系の前記IP再送信装置へ切り替える切り替え方法であって、前記運用系のIP再送信装置が受信している放送波の周波数に前記待機系のIP再送信装置が受信する放送波の周波数を合わせるステップと、前記運用系のIP再送信装置において生成される情報である、各前記IP再送信装置において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく第1のカウント値と、前記コンテンツの再生装置における処理タイミングを示す第2のカウント値との差分を含むタイミング情報を前記待機系のIP再送信装置に与えるステップと、所定のタイミングにおいて、前記運用系のIP再送信装置から前記待機系のIP再送信装置へ前記コンテンツの再送信を切り替えるステップと、切り替え先の前記IP再送信装置が、与えられた前記タイミング情報に基づく前記処理タイミングを前記IPパケットに含めて送信するステップとを含む。
【0024】
このような方法により、運用系のIP再送信装置の出力停止のタイミングおよび待機系のIP再送信装置の出力開始のタイミングを単に合わせて切り替える場合と比べて、再生装置において、切り替え先のIP再送信装置から伝送されるIPパケットを安定して処理し、コンテンツを良好に再生することが可能となる。また、各IP再送信装置において取得され得る同期情報を用いる方法により、運用系のIP再送信装置から待機系のIP再送信装置へのタイミング情報の伝送遅延による影響を回避することができる。したがって、コンテンツの送信装置を切り替え可能な構成において、再生装置における安定したコンテンツ再生を実現することができる。
【0025】
(2)好ましくは、前記第1のカウント値のカウント周波数および前記第2のカウント値のカウント周波数が異なり、前記タイミング情報は、さらに、前記差分の算出元である前記第1のカウント値を含み、前記切り替え方法は、さらに、切り替え先の前記IP再送信装置が、前記タイミング情報に含まれる前記差分および前記第1のカウント値と、自己が取得した前記同期情報に基づくカウント値とに基づいて、前記処理タイミングを算出するステップを含む。
【0026】
このような方法により、各カウント値の周波数が異なるシステムにおいて、運用系のIP再送信装置における第2のカウント値および待機系のIP再送信装置における第2のカウント値のタイミングを容易に合わせることができる。
【0027】
(3)好ましくは、前記同期情報は、前記放送波に含まれるNTP(Network Time Protocol)データであり、前記処理タイミングは、TTS(Time-stamped TS)パケットに含まれるタイムスタンプである。
【0028】
このような方法により、高度広帯域衛星デジタル放送を、IPTV伝送網を介して加入者宅へ送信するIP再送信サービスを行うシステムにおいて、NTPデータを有効に活用し、切り替え先のIP再送信装置から伝送されるIPパケットを安定して処理し、コンテンツを良好に再生することが可能となる。
【0029】
(4)本開示の実施の形態に係るIP再送信システムは、分配器から同じ放送波を受信し、前記放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信する複数のIP再送信装置と、制御装置とを備え、各前記IP再送信装置から出力される前記IPパケットは、中継装置によって中継されてネットワークへ送信され、待機系の前記IP再送信装置は、受信する放送波の周波数を、運用系の前記IP再送信装置が受信している放送波の周波数に合わせ、前記待機系のIP再送信装置は、前記運用系のIP再送信装置において生成される情報である、各前記IP再送信装置において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく第1のカウント値と、前記コンテンツの再生装置における処理タイミングを示す第2のカウント値との差分を含むタイミング情報を前記制御装置を介して取得し、前記制御装置は、前記コンテンツの再送信の切り替えとして、前記運用系のIP再送信装置に所定のタイミングにおいて前記コンテンツの再送信を停止させ、前記待機系のIP再送信装置に所定のタイミングにおいて前記コンテンツの再送信を開始させ、切り替え先の前記IP再送信装置は、与えられた前記タイミング情報に基づく前記処理タイミングを前記IPパケットに含めて送信する。
【0030】
このような構成により、運用系のIP再送信装置の出力停止のタイミングおよび待機系のIP再送信装置の出力開始のタイミングを単に合わせて切り替える場合と比べて、再生装置において、切り替え先のIP再送信装置から伝送されるIPパケットを安定して処理し、コンテンツを良好に再生することが可能となる。また、各IP再送信装置において取得され得る同期情報を用いる構成により、運用系のIP再送信装置から待機系のIP再送信装置へのタイミング情報の伝送遅延による影響を回避することができる。したがって、コンテンツの送信装置を切り替え可能な構成において、再生装置における安定したコンテンツ再生を実現することができる。
【0031】
(5)本開示の実施の形態に係るIP再送信装置は、放送波を受信し、前記放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信するIP再送信システムにおけるIP再送信装置であって、各前記IP再送信装置において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく第1のカウント値と、前記コンテンツの再生装置における処理タイミングを示す第2のカウント値との差分を含むタイミング情報を生成するタイミング情報生成部と、前記タイミング情報生成部によって生成された前記タイミング情報を他の前記IP再送信装置に通知する通知部と、他の前記IP再送信装置から通知された前記タイミング情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記タイミング情報に基づく前記処理タイミングを含む前記IPパケットを生成して送信するパケット処理部とを備える。
【0032】
このような構成により、運用系のIP再送信装置の出力停止のタイミングおよび待機系のIP再送信装置の出力開始のタイミングを単に合わせて切り替える場合と比べて、再生装置において、切り替え先のIP再送信装置から伝送されるIPパケットを安定して処理し、コンテンツを良好に再生することが可能となる。また、各IP再送信装置において取得され得る同期情報を用いる構成により、運用系のIP再送信装置から待機系のIP再送信装置へのタイミング情報の伝送遅延による影響を回避することができる。したがって、コンテンツの送信装置を切り替え可能な構成において、再生装置における安定したコンテンツ再生を実現することができる。
【0033】
(6)本開示の実施の形態に係る制御装置は、放送波を受信し、前記放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信する複数のIP再送信装置を備えるIP再送信システムにおける制御装置であって、待機系の前記IP再送信装置に対して、受信する放送波の周波数を、運用系の前記IP再送信装置が受信している放送波の周波数に合わせる命令を通知する放送波命令部と、前記運用系のIP再送信装置において生成される情報である、各前記IP再送信装置において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく第1のカウント値と、前記コンテンツの再生装置における処理タイミングを示す第2のカウント値との差分を含むタイミング情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記タイミング情報を前記待機系のIP再送信装置に与える情報付与部と、所定のタイミングにおいて前記運用系のIP再送信装置が前記コンテンツの再送信を停止し、かつ所定のタイミングにおいて前記待機系のIP再送信装置が前記コンテンツの再送信を開始する命令を通知する切り替え命令部とを備える。
【0034】
このような構成により、運用系のIP再送信装置の出力停止のタイミングおよび待機系のIP再送信装置の出力開始のタイミングを単に合わせて切り替える場合と比べて、再生装置において、切り替え先のIP再送信装置から伝送されるIPパケットを安定して処理し、コンテンツを良好に再生することが可能となる。また、各IP再送信装置において取得され得る同期情報を用いる構成により、運用系のIP再送信装置から待機系のIP再送信装置へのタイミング情報の伝送遅延による影響を回避することができる。したがって、コンテンツの送信装置を切り替え可能な構成において、再生装置における安定したコンテンツ再生を実現することができる。
【0035】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0036】
[構成]
図1は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムの構成を示す図である。
【0037】
図1を参照して、IP再送信システム301は、たとえば一般社団法人 電波産業会、”高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式 ARIB STD-B44 2.1版”、平成28年3月25日(非特許文献2)に開示されている方式に従う高度広帯域衛星デジタル放送等の放送波の規格に従うIP再送信システムであり、複数のIP再送信装置101と、1または複数の制御装置151と、分配器152と、L2スイッチ153と、L3スイッチ155とを備える。なお、IP再送信システム301は、他の規格に従うIP再送信システムであってもよい。
【0038】
図1では、一例として、運用系として15台のIP再送信装置101と、予備系として2台のIP再送信装置101と、運用系および予備系として2台の制御装置151とが設けられている。なお、L2スイッチ153およびL3スイッチ155は、それぞれ、1つの装置または複数の装置で実現される。
【0039】
IP再送信装置101は、コンテンツを格納したストリームを含む放送波を受信し、受信した放送波に含まれるコンテンツ等をIPパケットに含めて再送信する。より詳細には、分配器152は、アンテナ81において受信された放送信号を各IP再送信装置101へ分配する。
【0040】
ストリームは、コンテンツすなわち番組の情報等を含む。番組の情報は、たとえば、音声情報、映像情報、EPG(Electronic Program Guide)情報、SI情報(Service Information)および字幕情報等を含む。
【0041】
図2は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムにおいて、放送信号によって伝送されるデータのプロトコルスタックの一例を示す図である。
図2では、TLVパケットを用いるプロトコルスタックが示されている。
【0042】
図2を参照して、TLVパケットは、たとえば、2160pまたは4320p等の規格に従う、4K UHDTV(Ultra High Definition Television)または8K UHDTV等の送信に用いられることが多い。
【0043】
図2に示す例では、放送波は、たとえば、TMCC(Transmission&Multiplexing Configuration Control)情報、AC情報およびTLVパケットを含む。
【0044】
図3は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムにおいて、放送信号によって伝送されるTLVパケットの一例を示す図である。
図3には、データ種別を示す情報が格納されたヘッダを有するパケットの一例である、International Telecommunication Union Radiocommunications Sector、”Recommendation ITU-R BT.1869”、2010年3月、[online]、[平成31年3月8日検索]、インターネット〈URL:http://www.itu.int/dms_pubrec/itu-r/rec/bt/R-REC-BT.1869-0-201003-I!!PDF-E.pdf〉(非特許文献3)の規格に従うTLVパケットのフォーマットが示されている。
【0045】
TLVパケットは、TLVヘッダと、TLVペイロードとを含む。TLVヘッダは、「01」の値が格納された「スタートコード」のフィールド、「将来予約」のフィールド、「パケットタイプ」のフィールド、および「長さ」のフィールドを含み、これらのフィールドの長さは、それぞれ2ビット、6ビット、8ビットおよび16ビットである。
【0046】
「パケットタイプ」のフィールドには、「0x01」、「0x02」、「0x03」または「0xFF」等の値が格納される。ここで、「0x」で始まる数字は、「0x」以降の数字が16進数で表されていることを意味する。
【0047】
「パケットタイプ」のフィールドにおいて「0x01」が格納される場合、TLVパケット61は、TLVペイロードにおいて、「長さ」のフィールドに格納された値の総データ長となるIPv4パケットを含む。
【0048】
また、「パケットタイプ」のフィールドにおいて「0x02」が格納される場合、TLVパケット62は、TLVペイロードにおいて、「長さ」のフィールドに格納された値の総データ長となるIPv6パケットを含む。
【0049】
また、「パケットタイプ」のフィールドにおいて「0x03」が格納される場合、TLVパケット63は、TLVペイロードにおいて、「長さ」のフィールドに格納された値の総データ長となるIPパケットを含む。圧縮IPパケットは、たとえばIPヘッダが圧縮されたIPパケットである。
【0050】
また、「パケットタイプ」のフィールドにおいて「0xFF」が格納される場合、TLVパケット64は、TLVペイロードにおいて、「長さ」のフィールドに格納された値の総データ長となるヌルデータを含む。以下、TLVペイロードにおいてヌルデータを含むTLVパケットを、TLVヌルパケットとも称する。
【0051】
再び
図2を参照して、たとえば、時刻同期用のNTP(Network Time Protocol)データ、IP-SIデータ、時刻情報、MMTパケット、またはデータ伝送方式は、UDP(User Datagram Protocol)/IPパケットに格納される。MMTパケットには、映像情報、音声情報、MMT-SIデータ、および他の情報が格納される。
【0052】
TLVパケット61~63(以下、TLV情報パケットとも称する。)は、このようなUDP/IPパケットを格納する。
【0053】
また、放送波において、フレームを構成する1または複数のストリームが含まれることが規定されている。放送波を用いて、フレームの構造を維持したままストリームの伝送が行われることにより、複数のストリームを効率良く伝送することができる。
【0054】
フレームには、最大で16の放送局の番組にそれぞれ対応する複数のストリームを含めることが可能である。各ストリームは、たとえばTLVパケットにおけるMMTパケットに含まれる伝送ストリームIDを用いることにより区別される。
【0055】
再び
図1を参照して、IP再送信装置101は、分配器152から受けた放送信号からコンテンツ情報すなわち番組の情報を抽出し、抽出したコンテンツ情報をたとえば分割して含む複数のIPパケットを、L3スイッチ155およびIP網401経由で各IP-STB171へマルチキャストする。すなわち、各IP再送信装置101から出力されるIPパケットは、中継装置の一例であるL3スイッチ155によって中継されてIP網401へ送信される。たとえば、IP再送信装置101は、コンテンツが複数に分割された情報を1または複数のIPパケットに含めて再送信する。
【0056】
IP-STB171は、コンテンツの再生装置の一例であり、IP網401から受信した各IPパケットからコンテンツ情報を抽出し、テレビジョン装置(TV)172において再生する。
【0057】
IP再送信装置101は、対応の局のSI情報をL2スイッチ153経由で全局SI(Service Information)サーバ161へ送信する。
【0058】
また、IP再送信装置101は、分配器152から受けた放送信号から緊急警報等の緊急情報を抽出し、L2スイッチ153経由で緊急警報サーバ162へ送信する。
【0059】
制御装置151は、L2スイッチ153経由でIP再送信装置101と情報を送受信することにより、IP再送信装置101の設定および監視等を行う。
【0060】
図4は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムにおけるIP再送信装置の構成を示す図である。
【0061】
図4を参照して、IP再送信装置101は、チューナ11と、制御部(タイミング情報生成部、通知部および取得部)18と、カウンタ19A,19Bと、スイッチ回路20と、高確度発振器21と、パケット処理部22と、逓倍回路23と、NTPパケット取得部24と、換算部25と、削除部26と、TS化部27とを備える。パケット処理部22は、IP変換部17と、TTS化部28とを含む。
【0062】
高確度発振器21は、たとえば、基準クロックを生成する。より詳細には、高確度発振器21は、たとえば、GPS(Global Positioning System)衛星から送信される電波に含まれる時刻情報に同期した、27MHzの高精度なクロックパルスを生成する発振器である。高確度発振器21は、生成したクロックパルスをカウンタ19Bおよび逓倍回路23へ出力する。
【0063】
逓倍回路23は、高確度発振器21から受けた基準クロックを所定数倍した逓倍クロックをカウンタ19Aへ出力する。具体的には、逓倍回路23は、基準クロックを逓倍することにより2^32Hzのクロックパルスを生成し、生成したクロックパルスをカウンタ19Aへ出力する。ここで、「a^b」は、aのb乗を意味する。
【0064】
なお、高確度発振器21は、OCXO(Oven Controlled Oscillator)およびルビジウム発振器等を用いて高精度なクロックパルスを生成する構成であってもよい。
【0065】
カウンタ19Aは、たとえば、逓倍回路23から受けた逓倍クロックのタイミングに従って、カウント値を更新する。カウンタ19Bは、たとえば、高確度発振器21から受けた基準クロックのタイミングに従って、カウント値を更新する。
【0066】
より詳細には、カウンタ19Aは、逓倍回路23から受けた逓倍クロックのパルスをカウントし、カウント値を保持する。
【0067】
カウンタ19Bは、高確度発振器21から受けた基準クロックのパルスをカウントし、カウント値を保持する。
【0068】
IP再送信システム301における放送波は、上述のTLVヌルパケット、番組の情報を含む、サイズ可変なすなわちデータサイズが可変な可変パケット、および協定世界時(Coordinated Universal Time:UTC)を用いて装置間における時刻同期用の同期情報を含み、かつMMT方式に従う。
【0069】
ここで、TLVパケットは、可変パケットの一例である。NTPデータは、IP再送信装置101において取得され得る時刻同期用の同期情報の一例である。
【0070】
制御部18は、IP再送信装置101における各ユニットの設定および監視等を行い、また、制御装置151と各種情報の送受信を行う。
【0071】
チューナ11は、分配器152から受けた放送信号のうち、制御部18から指定された周波数の放送信号に対して復調処理を行うことによりTLVヌルパケット、TLV番組パケット、および時刻合わせ情報等を含むストリームを生成する。
【0072】
より詳細には、チューナ11は、分配器152から受けた放送信号を復調することにより、複数のTLVパケットによって構成されるストリームを生成する(
図2参照)。ストリームでは、たとえば、33ミリ秒ごとにNTPデータが伝送される。
【0073】
チューナ11は、生成したストリームをNTPパケット取得部24および削除部26へ出力する。
【0074】
NTPパケット取得部24は、チューナ11からストリームを受けて、受けたストリームからNTPデータを含むIPパケット(以下、NTPパケットとも称する。)を取得し、取得したNTPパケットを換算部25へ出力する。
【0075】
換算部25は、たとえば、放送波に含まれるNTPデータを用いて、カウンタ19Aに対して時刻合わせを行う。
【0076】
より詳細には、換算部25は、NTPパケット取得部24からNTPパケットを受けて、受けたNTPパケットに含まれるNTPデータからNTP長形式の協定世界時を取得する。
【0077】
図5は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムにおけるNTP長形式のNTPデータの一例を示す図である。
【0078】
図5を参照して、NTPデータは、秒単位の時間を示す32ビットの整数部フィールドと、1秒以下の時間を示す32ビットの小数部フィールドとを含む。
【0079】
換算部25は、NTP長形式の協定世界時をカウンタ19Aのカウント値に換算するための式(以下、換算式とも称する。)を保持している。
【0080】
カウンタ19Aのカウント値に基づく時刻と協定世界時とのずれは、たとえば、500ナノ秒程度まで許容可能である。当該カウント値の1カウントは、約37ナノ秒に相当するので、当該カウント値が10カウント程度ふらついても、許容範囲に収まる。
【0081】
たとえば、高確度発振器21の周波数確度が1ppmである場合、約37ミリ秒ごとにカウンタ19Aのカウント値が1カウントずれると考えられるので、NTPデータ10個分、すなわち330ミリ秒ごとに当該カウント値を校正すれば、当該カウント値に基づく時刻を十分な精度で協定世界時に同期させることができる。
【0082】
この例では、換算部25は、NTPパケット取得部24からNTPパケットを受けるごとに、すなわち33ミリ秒ごとに、換算式を用いて協定世界時をカウンタ19Aのカウント値へ変換し、変換後のカウント値をカウンタ19Aにセットする。
【0083】
以降、カウンタ19Aは、セットされたカウント値からIP再送信装置101における2^32Hzのクロックのパルスをカウントしたカウント値(以下、同期カウント値とも称する。)を保持する。
【0084】
これにより、カウンタ19Aの示すカウント値は、たとえば、NTPデータに基づいて、協定世界時を2^32Hzの精度で表すことが可能である。
【0085】
削除部26は、チューナ11によって生成されたストリームからTLVヌルパケットを削除する。
【0086】
より詳細には、削除部26は、チューナ11から受けるストリームを監視し、TLVヘッダにおけるスタートコードの検出を試みる(
図3参照)。
【0087】
削除部26は、スタートコードを検出すると、当該スタートコードの後方のパケットタイプのフィールドに格納された値を確認する。
【0088】
削除部26は、上記フィールドに格納された値が0xFFである場合、当該スタートコードを含むTLVパケットがTLVヌルパケットであると判断し、ストリームから当該TLVパケットを削除する。
【0089】
一方、削除部26は、上記フィールドに格納された値が0xFF以外の値である場合、当該スタートコードを含むTLVパケットがTLVヌルパケットでないと判断し、当該TLVパケットをTS化部27へ出力する。
【0090】
図6は、本開示の実施の形態に係るIP再送信装置において行われるTLVパケットの分割方法の一例を示す図である。
【0091】
図6には、”JCTEA STD-002-6.0 デジタル有線テレビジョン放送 多重化装置”、一般社団法人 日本CATV技術協会(非特許文献4)に記載された、TLVパケットを複数のTSパケットに格納する方法が示される。
【0092】
図7は、
図6に示すTSパケットのフォーマットの一例を示す図である。
【0093】
図6および
図7を参照して、TS化部27は、ストリームに含まれるTLVパケットが分割されたデータをそれぞれ含む、所定サイズを有する複数の固定パケットを作成する。ここで、TSパケットは、188バイトのサイズを有し、固定パケットの一例である。
【0094】
より詳細には、TS化部27は、たとえば、未格納データを保持するためのバッファを有する。
【0095】
TS化部27は、たとえば、バッファに未格納データが保存されていない場合において、削除部26からTLVパケット1(
図6参照)を受けると、たとえば、受けたTLVパケット1の先頭から184バイトまでのデータを分割TLVパケットとして取得する。
【0096】
TS化部27は、取得した分割TLVパケットに、3バイトのTSヘッダ、および、TLVヘッダが存在する場合には1バイトの先頭TLV指示を付加することで、分割TLVパケットがペイロードに格納されたTSパケット(以下、TLV格納TSパケット)を作成し、作成したTLV格納TSパケットをTTS化部28へ出力する。
【0097】
同様に、TS化部27は、TLVパケット1の残りのデータの先頭から185バイトのデータを分割TLVパケットとして取得するごとに、TLV格納TSパケットを作成してTTS化部28へ出力する。
【0098】
また、TS化部27は、取得したデータのサイズが185バイトに満たない場合、取得したデータを未格納データとしてバッファに保存する。
【0099】
そして、TS化部27は、後続のTLVパケット2(
図6参照)を削除部26から受けると、バッファに未格納データが保存されているので、184バイトから未格納データのサイズを差し引いたサイズのデータを、TLVパケット2の先頭から取得する。
【0100】
TS化部27は、取得したデータの先頭に未格納データを付加し、先頭TLV指示およびTLVパケット2のデータを配置して分割TLVパケットを作成した後、バッファにおける上記未格納データを破棄する。
【0101】
TS化部27は、作成した分割TLVパケットにTSヘッダを付加してTLV格納TSパケットを作成し、作成したTLV格納TSパケットをTTS化部28へ出力する。
【0102】
なお、TS化部27は、
図6および
図7に示すTLV格納TSパケットを作成する構成であるとしたが、これに限定するものではない。TS化部27は、先頭に同期バイトを含むTSヘッダを有し、かつサイズが188バイトのTSパケットであれば、たとえば、
図6に示すフォーマットを有するTSパケットに、分割TLVパケットを格納する構成であってもよい。
【0103】
このように、TSパケットを用いる構成により、MPEG2-TSの技術体系で活用した、TSoverIPの記録装置、測定装置および監視装置等を利用することができる。
【0104】
再び
図4を参照して、TTS化部28は、たとえば、TLV格納TSパケットの送信タイミングを示すタイムスタンプを当該TLV格納TSパケットに付加する。
【0105】
より詳細には、TTS化部28は、TS化部27からTLV格納TSパケットを受けると、当該TLV格納TSパケットのTSヘッダの前にタイムスタンプを付加する。
【0106】
ここで、タイムスタンプは、コンテンツの再生装置たとえばIP-STB171における処理タイミングの一例である。たとえば、IP再送信装置101は、自走クロックのタイミングに従って動作するカウンタのカウント値を処理タイミングとする。この処理タイミングは、IP-STB171におけるTLV格納TSパケットの処理タイミングである。
【0107】
具体的には、タイムスタンプは、IP-STB171においてTLV格納TSパケットをデコーダへ投入すべきタイミングであり、たとえばIP再送信装置101における27MHzの基準クロックのタイミングに従って動作するカウンタ19Bのカウント値である。すなわち、IP再送信装置101において、同期カウント値のカウント周波数およびタイムスタンプのカウント周波数が異なる。また、当該基準クロックは、各IP再送信装置101間で非同期である。
【0108】
タイムスタンプを用いることにより、IP-STB171は、ネットワークにおける各IPパケットの伝送時間の揺らぎを吸収して、適切なタイミングでTLV格納TSパケットを処理し、コンテンツ情報を良好に再生することができる。
【0109】
以下、タイムスタンプが付加されたTLV格納TSパケットを、TLV格納TTS(Time-stamped TS)パケットとも称する。
【0110】
タイムスタンプのサイズは、所定の大きさ、たとえば4バイトである。したがって、TLV格納TTSパケットのサイズは、固定長の192バイトである。
【0111】
IP変換部17は、TTS化部28から受けた1または複数のTLV格納TTSパケットをIPパケットに含め、スイッチ回路20経由でL3スイッチ155へ出力する。
【0112】
[課題]
特許文献1には、TTSパケットおよびPCRを用いて、複数の配信装置のタイミングを同期させる方法が開示されている。
【0113】
しかしながら、高度広帯域衛星デジタル放送の放送波にはPCRが含まれていないため、別の方法で複数の配信装置のタイミングを同期させる必要がある。
【0114】
これに対して、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムでは、以下のような構成および動作により、上記課題を解決する。
【0115】
図8は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムによるIP再送信装置の切り替え時の処理を示す図である。
【0116】
図4および
図8を参照して、IP再送信装置101における制御部18は、IP-STB171における処理タイミングに関するタイミング情報を生成し、他のIP再送信装置101に通知することができる。
【0117】
たとえば、タイミング情報は、NTPデータに基づく上述の同期カウント値と、IP-STB171における処理タイミングを示すタイムスタンプStp_Aとの差分Δtを含む。
【0118】
運用系のIP再送信装置101は、生成したタイミング情報を待機系のIP再送信装置101に与える。
【0119】
より詳細には、運用系のIP再送信装置101における制御部18は、たとえば、後述する制御装置151からのタイミング情報要求を受信すると、現在の同期カウント値および現在のタイムスタンプStp_Aをカウンタ19AおよびTTS化部28からそれぞれ取得し、取得した当該同期カウント値と当該タイムスタンプStp_Aとの差分Δtを算出する。
【0120】
具体的には、制御部18は、たとえば、カウンタ19Aから現在の同期カウント値cnt_A1を取得し、TTS化部28から現在のタイムスタンプStp_A1を取得したとする。そして、制御部18は、同期カウント値cnt_A1およびタイムスタンプStp_A1の差分Δt1を算出し、算出した差分Δt1および当該差分Δt1の算出元である同期カウント値cnt_A1を含むタイミング情報を生成する。
【0121】
そして、制御部18は、生成したタイミング情報を制御装置151へ送信する。
【0122】
また、たとえば、制御部18は、制御装置151からのタイミング情報要求に従い取得した同期カウント値が同期カウント値cnt_A2、同期カウント値cnt_A3、同期カウント値cnt_A4またはcnt_A5である場合、TTS化部28から現在のタイムスタンプStp_Aを取得して上記と同様の処理を行う。
【0123】
制御装置151は、運用系のIP再送信装置101から受信したタイミング情報を待機系のIP再送信装置101へ送信する。
【0124】
待機系のIP再送信装置101は、運用系のIP再送信装置101において生成されるタイミング情報を制御装置151を介して取得する。
【0125】
より詳細には、待機系のIP再送信装置101における制御部18は、運用系のIP再送信装置101から通知されたタイミング情報を取得する。
【0126】
具体的には、制御部18は、制御装置151から送信されたタイミング情報を受信し、受信したタイミング情報に含まれる差分Δt1および同期カウント値cnt_A1を取得する。
【0127】
そして、待機系のIP再送信装置101は、当該タイミング情報に含まれる差分Δt1および同期カウント値cnt_A1と、自己が取得した同期情報に基づく同期カウント値とに基づいて、自己が付加すべきタイムスタンプStp_ABを処理タイミングとして算出する。
【0128】
より詳細には、待機系のIP再送信装置101における制御部18は、取得した同期カウント値cnt_A1を用いて、運用系のIP再送信装置101および待機系のIP再送信装置101間のタイミング情報の伝送による遅延時間を補正した処理タイミングを算出する。
【0129】
ここで、運用系のIP再送信装置101および待機系のIP再送信装置101は、共通の同期情報に基づいて自己のカウンタ19Aに対して時刻合わせを行い、かつ各カウンタ19Aが同じカウント周波数であることから、たとえば、運用系のIP再送信装置101におけるカウンタ19Aの同期カウント値cnt_A1は、同じ時刻における待機系のIP再送信装置101におけるカウンタ19Aの同期カウント値cnt_B1と同じである。
【0130】
待機系のIP再送信装置101における制御部18は、たとえば、制御装置151から送信されたタイミング情報を受信し、自己のIP再送信装置101が取得したNTPデータに基づく現在の同期カウント値をカウンタ19Aから取得する。
【0131】
具体的には、制御部18は、たとえば、制御装置151から送信されたタイミング情報を受信したタイミングにおいて、自己のカウンタ19Aのカウント値である同期カウント値cnt_B3をカウンタ19Aから取得する。
【0132】
そして、制御部18は、同期カウント値cnt_B3から当該タイミング情報に含まれる同期カウント値cnt_A1を減算した値を、同期カウント値のカウント周波数である2^32で除することにより遅延時間Δsecを算出する。
【0133】
さらに、制御部18は、遅延時間Δsecの間に進んだカウンタ19Aのカウント増分値、すなわち(1/2^32)×Δsecを算出する。また、制御部18は、遅延時間Δsecの間に進んだカウンタ19Bのカウント増分値、すなわち(1/27000000)×Δsecを算出する。
【0134】
そして、制御部18は、算出したカウンタ19Bのカウント増分値からカウンタ19Aのカウント増分値を減算することにより、遅延時間Δsecを補正するための補正値を算出する。
【0135】
待機系のIP再送信装置101は、運用系のIP再送信装置101から与えられたタイミング情報に基づく処理タイミングをIPパケットに含めて送信する。
【0136】
より詳細には、制御部18は、たとえば、算出した補正値および取得した運用系のIP再送信装置101における差分Δt1を用いて、カウンタ19Bのカウント値を補正する。具体的には、制御部18は、上記同期カウント値cnt_B3に差分Δt1および算出した補正値を加算した値(以下、タイムスタンプStp_AB1とも称する。)を、カウンタ19Bにセットする。
【0137】
以降、カウンタ19Bは、セットされたタイムスタンプStp_AB1から自己のIP再送信装置101における27MHzの基準クロックのパルスをカウントしたカウント値を保持する。すなわち、待機系のIP再送信装置101において、カウンタ19Bのカウント値が、元のカウント値(以下、タイムスタンプStp_Bとも称する。)からタイムスタンプStp_ABへ補正される。
【0138】
TTS化部28は、たとえば、タイムスタンプStp_AB1に基づくカウンタ19Bのカウント値を用いることにより、運用系のIP再送信装置101におけるタイムスタンプと待機系のIP再送信装置101におけるタイムスタンプとを合わせることができる。
【0139】
そして、TTS化部28は、制御部18によって取得されたタイミング情報に基づく処理タイミングを含むIPパケットを生成して送信する。
【0140】
より詳細には、TTS化部28は、補正後のタイムスタンプすなわちカウンタ19Bのカウント値が付加されたTLV格納TTSを作成し、作成したTLV格納TTSをIP変換部17へ出力する。
【0141】
IP変換部17は、TTS化部28から受けた1または複数のTLV格納TTSパケットをIPパケットに含め、スイッチ回路20経由でL3スイッチ155へ出力する。
【0142】
[動作の流れ]
次に、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムにおけるIP再送信装置の切り替え動作の流れについて説明する。
【0143】
IP再送信システム301における各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリからそれぞれ読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0144】
図9は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムによるIP再送信装置の切り替え処理のシーケンスの一例を示す図である。
【0145】
図9を参照して、IP再送信装置101であるIP再送信装置101AおよびIP再送信装置101Bがそれぞれ運用系および待機系である状況において、まず、制御装置151は、IP再送信装置101Aのエラーを検知し(ステップS1)、待機指示をIP再送信装置101Aへ送信する(ステップS2)。
【0146】
IP再送信装置101Aは、制御装置151から待機指示を受信して、たとえばスイッチ回路20をオフすることによりIPパケット、SI情報および緊急警報の送信を停止し、待機系となる(ステップS3)。
【0147】
次に、制御装置151は、運用指示をIP再送信装置101Bへ送信する(ステップS4)。
【0148】
次に、IP再送信装置101Bは、制御装置151から運用指示を受信して、受信する放送波の周波数を、IP再送信装置101Aが受信している放送波の周波数に合わせる。そして、IP再送信装置101Bは、たとえばスイッチ回路20をオンすることによりIPパケット、SI情報および緊急警報の送信を開始し、運用系となる(ステップS5)。
【0149】
次に、IP再送信装置101Aの交換または修理等が完了すると、制御装置151は、たとえば作業者の操作による切り替え指示を受け付ける(ステップS6)。
【0150】
次に、制御装置151は、タイミング情報要求をIP再送信装置101Bへ送信する(ステップS7)。
【0151】
次に、IP再送信装置101Bは、制御装置151からタイミング情報要求を受信して、最新の自己の同期カウント値、および当該同期カウント値に対応する差分Δtを含むタイミング情報を生成し、制御装置151へ送信する(ステップS8)。
【0152】
次に、制御装置151は、IP再送信装置101Bから受信したタイミング情報をIP再送信装置101Aへ送信する(ステップS9)。
【0153】
次に、待機系のIP再送信装置101Aは、運用系のIP再送信装置101Bにおいて生成される、IP-STB171における処理タイミングに関する情報を制御装置151を介して取得する。より詳細には、IP再送信装置101Aは、制御装置151からタイミング情報を受信し、受信したタイミング情報に含まれるIP再送信装置101Bの同期カウント値、および当該同期カウント値に対応する差分Δtを取得する(ステップS10)。
【0154】
次に、待機系のIP再送信装置101Aは、取得したIP再送信装置101Bの同期カウント値および差分Δtと、取得した自己の同期カウント値とに基づいて、自己が付加すべき処理タイミングを算出する(ステップS11)。
【0155】
次に、待機系のIP再送信装置101Aは、算出した処理タイミングに基づいて調整処理、たとえば上述のようなカウンタ19Bのカウント値の補正を行い(ステップS12)、ACKを制御装置151へ送信する(ステップS13)。
【0156】
次に、制御装置151は、運用系のIP再送信装置101Bから待機系のIP再送信装置101Aへコンテンツの再送信を切り替える。より詳細には、制御装置151は、コンテンツの再送信の切り替えとして、運用系のIP再送信装置101Bに所定の切り替えタイミングにおいてコンテンツの再送信を停止させ、待機系のIP再送信装置101Aに所定の切り替えタイミングにおいてコンテンツの再送信を開始させる。すなわち、制御装置151は、IP再送信装置101AからACKを受信して、所定の切り替えタイミングをIP再送信装置101AおよびIP再送信装置101Bに通知する。
【0157】
具体的には、制御装置151は、切り替えタイミングを示すタイムスタンプをIP再送信装置101AおよびIP再送信装置101Bに通知する。ここで、制御装置151は、IP再送信装置101Aの送信停止タイミングとIP再送信装置101Bの送信開始タイミングとの間で時間調整が必要な場合、各IP再送信装置101へ送信するタイムスタンプを調整して異なるタイムスタンプを通知してもよい。すなわち、上記切り替えタイミングは、運用系のIP再送信装置101および待機系のIP再送信装置101で異なってもよい(ステップS14およびS16)。
【0158】
次に、IP再送信装置101AおよびIP再送信装置101Bは、制御装置151からタイムスタンプの通知を受けると、ACKを制御装置151へ送信する(ステップS15およびS17)。
【0159】
次に、所定のタイミングすなわち制御装置151から通知されたタイムスタンプのタイミングにおいて、IP再送信装置101Bは、IPパケット、SI情報および緊急警報の送信を停止し、待機系となる(ステップS18)。
【0160】
また、所定のタイミングすなわち制御装置151から通知されたタイムスタンプのタイミングにおいて、IP再送信装置101Aは、IPパケット、SI情報および緊急警報の送信を開始し、運用系となる。すなわち、IP再送信装置101Aは、制御装置151から与えられたタイミング情報に基づく処理タイミングをIPパケットに含めて送信する。より詳細には、IP再送信装置101Aは、制御装置151から与えられたタイミング情報に基づいて算出した処理タイミングをTTSパケットに含めて送信する(ステップS19)。
【0161】
図10は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムにおける制御装置の構成を示す図である。
【0162】
図10を参照して、制御装置151は、放送波命令部31と、取得部32と、情報付与部33と、切り替え命令部34とを備える。
【0163】
放送波命令部31は、待機系のIP再送信装置101に対して、受信する放送波の周波数を、運用系のIP再送信装置101が受信している放送波の周波数に合わせる命令たとえば上述の運用指示を通知する。
【0164】
取得部32は、たとえば上述のタイミング情報要求を送信することにより、運用系のIP再送信装置101において生成される、各IP再送信装置101において取得され得る同期カウント値と、コンテンツの再生装置たとえばIP-STB171における処理タイミングを示すタイムスタンプすなわちカウンタ19Bのカウント値との差分Δtを含むタイミング情報を取得する。
【0165】
情報付与部33は、取得部32によって取得されたタイミング情報を待機系のIP再送信装置101に与える。より詳細には、情報付与部33は、運用系のIP再送信装置101において生成されたタイミング情報を待機系のIP再送信装置101へ与える。
【0166】
切り替え命令部34は、所定のタイミングにおいて運用系のIP再送信装置101がコンテンツの再送信を停止し、かつ所定のタイミングにおいて待機系のIP再送信装置101がコンテンツの再送信を開始する命令たとえば上述の切り替えタイミングを通知する。当該所定のタイミングは、たとえば上述のように処理タイミングを用いて指定されるタイミングである。
【0167】
[変形例]
図11は、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムにおけるIP再送信装置の変形例の構成を示す図である。
【0168】
図11を参照して、IP再送信装置102は、
図4に示すIP再送信装置101と比べて、NTPパケット取得部24が、時刻同期用の同期情報として、たとえば、IP再送信装置102の外部のNTPサーバ156が定期的または不定期に送信するNTPデータを含むパケットを取得する。
【0169】
より詳細には、NTPパケット取得部24は、NTPサーバ156から定期的または不定期に送信された当該パケットをたとえばネットワークを介して受信し、受信したパケットを換算部25へ出力する。
【0170】
換算部25は、NTPパケット取得部24から受けたパケットに含まれるNTPデータからNTP長形式の協定世界時を取得する。そして、換算部25は、取得した協定世界時を用いて、カウンタ19Aに対して時刻合わせを行う。
【0171】
なお、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムでは、同期カウント値のカウント周波数およびタイムスタンプのカウント周波数が異なる構成であるとしたが、これに限定するものではない。IP再送信システム301において、同期カウント値のカウント周波数およびタイムスタンプのカウント周波数が同じ周波数であってもよい。
【0172】
また、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムでは、高度広帯域衛星デジタル放送等の放送波が用いられる構成であるとしたが、これに限定するものではない。IP再送信システム301において、同期情報としてNTPデータを含む高度広帯域衛星デジタル放送以外の放送波が用いられる構成であってもよい。
【0173】
また、本発明の実施の形態に係るIP再送信システムでは、IP再送信装置101は、TLV格納TTSパケットをIPパケットに含めて送信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。IP再送信システム301において、IP再送信装置101は、TLV格納TTSパケットとは異なる種類のパケットであってタイムスタンプが付加されたパケットを、IPパケットに含めて送信する構成であってもよい。
【0174】
ところで、運用系および予備系の複数の配信装置が設けられる放送システムにおいて、配信装置は、パケットを処理すべきタイミングの情報を当該パケットに含めて送信する場合がある。運用系の配信装置の保守交換を行う状況において、たとえば、24時間放送が行われる場合、放送出力を停止することは困難である。このため、運用系の配信装置の保守交換等のために当該配信装置の出力を停止し、予備系の配信装置へ配信を切り替える必要があり、再生装置が受信するパケットに含まれる上記情報が乱れると、コンテンツを良好に再生することが困難となる。
【0175】
これに対して、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムでは、複数のIP再送信装置101は、放送波を受信し、放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信する。本開示の実施の形態に係る切り替え方法では、コンテンツの再送信を運用系のIP再送信装置101から待機系のIP再送信装置101へ切り替える切り替え方法である。まず、運用系のIP再送信装置101が受信している放送波の周波数に待機系のIP再送信装置101が受信する放送波の周波数を合わせる。次に、運用系のIP再送信装置101において生成される情報である、各IP再送信装置101において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく同期カウント値と、コンテンツの再生装置における処理タイミングを示すタイムスタンプとの差分Δtを含むタイミング情報を待機系のIP再送信装置101に与える。次に、所定のタイミングにおいて、運用系のIP再送信装置101から待機系のIP再送信装置101へコンテンツの再送信を切り替える。次に、切り替え先のIP再送信装置101が、与えられたタイミング情報に基づく処理タイミングをIPパケットに含めて送信する。
【0176】
このような方法により、運用系のIP再送信装置101の出力停止のタイミングおよび待機系のIP再送信装置101の出力開始のタイミングを単に合わせて切り替える場合と比べて、再生装置において、切り替え先のIP再送信装置101から伝送されるIPパケットを安定して処理し、コンテンツを良好に再生することが可能となる。また、各IP再送信装置101において取得され得る同期情報を用いる方法により、運用系のIP再送信装置101から待機系のIP再送信装置へのタイミング情報の伝送遅延による影響を回避することができる。
【0177】
したがって、本開示の実施の形態に係る切り替え方法では、コンテンツの送信装置を切り替え可能な構成において、再生装置における安定したコンテンツ再生を実現することができる。
【0178】
また、本開示の実施の形態に係る切り替え方法では、同期カウント値のカウント周波数およびタイムスタンプのカウント周波数が異なる。タイミング情報は、さらに、差分Δtの算出元である同期カウント値を含む。本開示の実施の形態に係る切り替え方法は、さらに、切り替え先のIP再送信装置101が、タイミング情報に含まれる差分Δtおよび同期カウント値と、自己が取得した同期情報に基づくカウント値とに基づいて、処理タイミングを算出する。
【0179】
このような方法により、同期カウント値およびタイムスタンプの周波数が異なるシステムにおいて、運用系のIP再送信装置101におけるタイムスタンプおよび待機系のIP再送信装置におけるタイムスタンプのタイミングを容易に合わせることができる。
【0180】
また、本開示の実施の形態に係る切り替え方法では、同期情報は、放送波に含まれるNTPデータである。処理タイミングは、TLV格納TTSに含まれるタイムスタンプである。
【0181】
このような方法により、高度広帯域衛星デジタル放送を、IP網401を介して加入者宅へ送信するIP再送信サービスを行うシステムにおいて、NTPデータを有効に活用し、切り替え先のIP再送信装置101から伝送されるIPパケットを安定して処理し、コンテンツを良好に再生することが可能となる。
【0182】
また、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムでは、複数のIP再送信装置101は、分配器152から同じ放送波を受信し、当該放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信する。L3スイッチ155は、各IP再送信装置101から出力されるIPパケットを中継してネットワークへ送信する。待機系のIP再送信装置101は、受信する放送波の周波数を、運用系のIP再送信装置101が受信している放送波の周波数に合わせる。待機系のIP再送信装置101は、運用系のIP再送信装置101において生成される情報である、各IP再送信装置101において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく同期カウント値と、コンテンツの再生装置における処理タイミングを示すタイムスタンプとの差分Δtを含むタイミング情報を制御装置151を介して取得する。制御装置151は、コンテンツの再送信の切り替えとして、運用系のIP再送信装置101に所定のタイミングにおいてコンテンツの再送信を停止させ、待機系のIP再送信装置101に所定のタイミングにおいてコンテンツの再送信を開始させ、切り替え先のIP再送信装置101は、与えられたタイミング情報に基づく処理タイミングをIPパケットに含めて送信する。
【0183】
このような構成により、運用系のIP再送信装置101の出力停止のタイミングおよび待機系のIP再送信装置101の出力開始のタイミングを単に合わせて切り替える場合と比べて、再生装置において、切り替え先のIP再送信装置101から伝送されるIPパケットを安定して処理し、コンテンツを良好に再生することが可能となる。また、各IP再送信装置101において取得され得る同期情報を用いる構成により、運用系のIP再送信装置101から待機系のIP再送信装置へのタイミング情報の伝送遅延による影響を回避することができる。
【0184】
したがって、本開示の実施の形態に係るIP再送信システムでは、コンテンツの送信装置を切り替え可能な構成において、再生装置における安定したコンテンツ再生を実現することができる。
【0185】
また、本開示の実施の形態に係るIP再送信装置では、制御部18は、各IP再送信装置101において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく同期カウント値と、コンテンツの再生装置における処理タイミングを示すタイムスタンプとの差分Δtを含むタイミング情報を生成する。制御部18は、生成したタイミング情報を他のIP再送信装置101に通知する。制御部18は、他のIP再送信装置101から通知されたタイミング情報を取得する。パケット処理部22は、制御部18によって取得されたタイミング情報に基づく処理タイミングを含むIPパケットを生成して送信する。
【0186】
このような構成により、運用系のIP再送信装置101の出力停止のタイミングおよび待機系のIP再送信装置101の出力開始のタイミングを単に合わせて切り替える場合と比べて、再生装置において、切り替え先のIP再送信装置101から伝送されるIPパケットを安定して処理し、コンテンツを良好に再生することが可能となる。また、各IP再送信装置101において取得され得る同期情報を用いる構成により、運用系のIP再送信装置101から待機系のIP再送信装置へのタイミング情報の伝送遅延による影響を回避することができる。
【0187】
したがって、本開示の実施の形態に係るIP再送信装置では、コンテンツの送信装置を切り替え可能な構成において、再生装置における安定したコンテンツ再生を実現することができる。
【0188】
また、本開示の実施の形態に係る制御装置では、放送波命令部31は、待機系のIP再送信装置101に対して、受信する放送波の周波数を、運用系のIP再送信装置101が受信している放送波の周波数に合わせる運用指示を通知する。取得部32は、運用系のIP再送信装置101において生成される情報である、各IP再送信装置101において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく同期カウント値と、コンテンツの再生装置における処理タイミングを示すタイムスタンプとの差分Δtを含むタイミング情報を取得する。情報付与部33は、取得部32によって取得されたタイミング情報を待機系のIP再送信装置101に与える。切り替え命令部34は、所定のタイミングにおいて運用系のIP再送信装置101がコンテンツの再送信を停止し、かつ所定のタイミングにおいて待機系のIP再送信装置101がコンテンツの再送信を開始する命令を通知する。
【0189】
このような構成により、運用系のIP再送信装置101の出力停止のタイミングおよび待機系のIP再送信装置101の出力開始のタイミングを単に合わせて切り替える場合と比べて、再生装置において、切り替え先のIP再送信装置101から伝送されるIPパケットを安定して処理し、コンテンツを良好に再生することが可能となる。また、各IP再送信装置101において取得され得る同期情報を用いる構成により、運用系のIP再送信装置101から待機系のIP再送信装置へのタイミング情報の伝送遅延による影響を回避することができる。
【0190】
したがって、本開示の実施の形態に係る制御装置では、コンテンツの送信装置を切り替え可能な構成において、再生装置における安定したコンテンツ再生を実現することができる。
【0191】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0192】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
分配器から同じ放送波を受信し、前記放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信する複数のIP再送信装置と、
制御装置とを備え、
各前記IP再送信装置から出力される前記IPパケットは、中継装置によって中継されてネットワークへ送信され、
待機系の前記IP再送信装置は、受信する放送波の周波数を、運用系の前記IP再送信装置が受信している放送波の周波数に合わせ、
前記待機系のIP再送信装置は、前記運用系のIP再送信装置において生成される情報である、各前記IP再送信装置において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく第1のカウント値と、前記コンテンツの再生装置における処理タイミングを示す第2のカウント値との差分を含むタイミング情報を前記制御装置を介して取得し、
前記制御装置は、前記コンテンツの再送信の切り替えとして、前記運用系のIP再送信装置に所定のタイミングにおいて前記コンテンツの再送信を停止させ、前記待機系のIP再送信装置に所定のタイミングにおいて前記コンテンツの再送信を開始させ、
切り替え先の前記IP再送信装置は、与えられた前記タイミング情報に基づく前記処理タイミングを前記IPパケットに含めて送信し、
前記第2のカウント値は、前記IP再送信装置における高確度発振器により生成されたクロックのタイミングに従って動作するカウンタのカウント値であり、
前記待機系のIP再送信装置は、取得した前記タイミング情報に基づいて前記第2のカウント値を補正し、
前記IP再送信装置は、前記コンテンツが複数に分割された情報を含む複数のTSパケットを1または複数の前記IPパケットに含めて再送信し、
前記処理タイミングは、前記再生装置における前記TSパケットの処理タイミングである、IP再送信システム。
【0193】
[付記2]
放送波を受信し、前記放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信するIP再送信システムにおけるIP再送信装置であって、
各前記IP再送信装置において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく第1のカウント値と、前記コンテンツの再生装置における処理タイミングを示す第2のカウント値との差分を含むタイミング情報を生成するタイミング情報生成部と、
前記タイミング情報生成部によって生成された前記タイミング情報を他の前記IP再送信装置に通知する通知部と、
他の前記IP再送信装置から通知された前記タイミング情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記タイミング情報に基づく前記処理タイミングを含む前記IPパケットを生成して送信するパケット処理部とを備え、
前記第2のカウント値は、前記IP再送信装置における高確度発振器により生成されたクロックのタイミングに従って動作するカウンタのカウント値であり、
前記パケット処理部は、取得した前記タイミング情報に基づいて前記第2のカウント値を補正し、
前記パケット処理部は、前記コンテンツが複数に分割された情報を含む複数のTSパケットを1または複数の前記IPパケットに含めて再送信し、
前記処理タイミングは、前記再生装置における前記TSパケットの処理タイミングである、IP再送信装置。
【0194】
[付記3]
放送波を受信し、前記放送波に含まれるコンテンツをIPパケットに含めて再送信する複数のIP再送信装置を備えるIP再送信システムにおける制御装置であって、
待機系の前記IP再送信装置に対して、受信する放送波の周波数を、運用系の前記IP再送信装置が受信している放送波の周波数に合わせる命令を通知する放送波命令部と、
前記運用系のIP再送信装置において生成される情報である、各前記IP再送信装置において取得され得る時刻同期用の同期情報に基づく第1のカウント値と、前記コンテンツの再生装置における処理タイミングを示す第2のカウント値との差分を含むタイミング情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記タイミング情報を前記待機系のIP再送信装置に与える情報付与部と、
所定のタイミングにおいて前記運用系のIP再送信装置が前記コンテンツの再送信を停止し、かつ所定のタイミングにおいて前記待機系のIP再送信装置が前記コンテンツの再送信を開始する命令を通知する切り替え命令部とを備え、
前記第2のカウント値は、前記IP再送信装置における高確度発振器により生成されたクロックのタイミングに従って動作するカウンタのカウント値であり、
前記待機系のIP再送信装置は、前記情報付与部によって与えられた前記タイミング情報に基づいて前記第2のカウント値を補正し、
前記IP再送信装置は、前記コンテンツが複数に分割された情報を含む複数のTSパケットを1または複数の前記IPパケットに含めて再送信し、
前記処理タイミングは、前記再生装置における前記TSパケットの処理タイミングである、制御装置。
【符号の説明】
【0195】
11 チューナ
17 IP変換部
18 制御部(タイミング情報生成部、通知部および取得部)
19A,19B カウンタ
20 スイッチ回路
21 高確度発振器
22 パケット処理部
23 逓倍回路
24 NTPパケット取得部
25 換算部
26 削除部
27 TS化部
28 TTS化部
31 放送波命令部
32 取得部
33 情報付与部
34 切り替え命令部
81 アンテナ
101,102 IP再送信装置
151 制御装置
152 分配器
153 L2スイッチ
155 L3スイッチ
156 NTPサーバ
161 全局SIサーバ
162 緊急警報サーバ
301 IP再送信システム
401 IP網
171 IP-STB
172 TV
301 IP再送信システム