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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】誘導灯装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/10 20200101AFI20230404BHJP
   F21S 9/02 20060101ALI20230404BHJP
   F21V 33/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H05B47/10
F21S9/02 110
F21V33/00 430
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019095750
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020191228
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148057
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 淑己
(72)【発明者】
【氏名】今▲吉▼ ちづる
(72)【発明者】
【氏名】篠田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】江口 健太郎
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-188792(JP,A)
【文献】特開2017-228473(JP,A)
【文献】特開2007-188345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00
H05B 47/00
F21S 9/02
F21V 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED光源と、
前記LED光源を点滅させる点滅回路と、
前記点滅回路に電力を供給する電池と、
予め定められた検査時間だけ前記LED光源を点滅させたときに前記電池の電圧が予め定められた閾値電圧よりも高いか否かを判別し、判別結果を出力する制御部と、
を備え、
前記電池の電圧は、前記LED光源の点滅に伴い、前記電池から前記点滅回路に電流を流して、前記LED光源が点灯状態のとき第1電圧となり、前記電池から前記点滅回路に電流を流していないとき第2電圧となり、
前記制御部は、前記電池の電圧が前記第1電圧または前記第2電圧のタイミングに合わせて前記電池の電圧を取り込んで、前記第1電圧または前記第2電圧の少なくとも一方から前記電池の電圧を検出することを特徴とする誘導灯装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1電圧と前記第2電圧とを検出し、前記第1電圧と前記第2電圧の差分が前記閾値電圧よりも高いか否かを判別することを特徴とする請求項1に記載の誘導灯装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記LED光源と並列に第1疑似負荷を接続した状態で、前記検査時間だけ前記LED光源を点滅させたときに前記電池の電圧が前記閾値電圧よりも高いか否かを判別し、判別結果を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の誘導灯装置。
【請求項4】
前記電池から電力の供給を受け、避難を促す音声を発する音声出力部を備え、
前記制御部は、前記検査時間だけ前記LED光源を点滅させ、かつ、前記音声を出力させたときに、前記電池の電圧が前記閾値電圧よりも高いか否かを判別し、前記判別結果を出力することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の誘導灯装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記音声の1周期の間での前記電池の電圧の平均値を算出し、前記平均値が前記閾値電圧よりも高いか否かを判別することを特徴とする請求項4に記載の誘導灯装置。
【請求項6】
前記音声出力部は、スピーカを備え、
前記制御部は、前記スピーカと並列に第2疑似負荷を接続した状態で、前記検査時間だけ前記LED光源を点滅させ、かつ、前記音声を出力させたときに、前記電池の電圧が前記閾値電圧よりも高いか否かを判別し、前記判別結果を出力することを特徴とする請求項4または5に記載の誘導灯装置。
【請求項7】
前記判別結果を表示する判別結果表示部を備えることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の誘導灯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、誘導灯装置が開示されている。この誘導灯装置では、リモコン発信機から非常時動作の確認を指示する動作確認信号を送信することにより非常時動作を遠隔操作で確認可能である。マイコンは、リモコン受信部が動作確認信号を受信すると、誘導灯点灯回路をバッテリ駆動させることにより、第1の光源をT1期間点灯させる。次に、マイコンは、点滅回路をバッテリ駆動させることにより、第2の光源をT2期間、点滅させる。作業者は、第1の光源と第2の光源を異なる時間に確認できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-186616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の誘導灯装置では、点滅動作の確認ができる一方で電池の寿命を判定することはできない。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、電池の寿命を判定できる誘導灯装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る誘導灯装置は、LED光源と、該LED光源を点滅させる点滅回路と、該点滅回路に電力を供給する電池と、予め定められた検査時間だけ該LED光源を点滅させたときに該電池の電圧が予め定められた閾値電圧よりも高いか否かを判別し、判別結果を出力する制御部と、を備え、該電池の電圧は、該LED光源の点滅に伴い、該電池から該点滅回路に電流を流して、該LED光源が点灯状態のとき第1電圧となり、該電池から該点滅回路に電流を流していないとき第2電圧となり、該制御部は、該電池の電圧が該第1電圧または該第2電圧のタイミングに合わせて該電池の電圧を取り込んで、該第1電圧または該第2電圧の少なくとも一方から該電池の電圧を検出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る誘導灯装置では、検査時間だけLED光源を点滅させたときの電池の電圧が閾値電圧よりも高いか否かを判別できる。従って、電池の寿命を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る誘導灯装置の斜視図である。
図2】実施の形態1に係る誘導灯装置の分解斜視図である。
図3】実施の形態1に係る誘導灯装置の回路ブロック図である。
図4】第1疑似負荷と第2疑似負荷を説明する図である。
図5】第1疑似負荷と第2疑似負荷の接続方法を説明する図である。
図6】電圧検出部を説明する図である。
図7】電池の電圧波形を説明する図である。
図8】Low期間における電池電圧の検出タイミングを説明する図である。
図9】High期間における電池電圧の検出タイミングを説明する図である。
図10】音声出力部からの音声を説明する図である。
図11】実施の形態1に係るリモコンの平面図である。
図12】実施の形態1の変形例に係る誘導灯装置の斜視図である。
図13】誘導灯装置の機種を説明する図である。
図14】制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る誘導灯装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る誘導灯装置120の斜視図である。図2は、実施の形態1に係る誘導灯装置120の分解斜視図である。誘導灯装置120は、異常時に避難を促す音声を発するスピーカ5と、異常時に点滅する第2光源4を有する音声付加点滅形誘導灯である。ここで、異常時は、例えば誘導灯装置120が火災を報知する火災信号を受信した状態である。これに対し、通常時は誘導灯装置120が火災信号を受信していない状態を示す。
【0011】
誘導灯装置120は、本体1、表示パネル2、第2光源用カバー3、第2光源4、本体カバー7、動作確認スイッチ10、第1光源12および充電モニタ16a、16bを備える。本体1には、点灯回路11a、電池13a、スピーカ5、電池13b、共有回路11b、点滅回路14、音声回路15およびリモコン受光部9が収納されている。
【0012】
本体カバー7は本体1を覆う。本体カバー7には、スピーカ5と対向する位置にスピーカ用穴7aが設けられる。また、本体カバー7には、表示パネル2を露出させる開口が設けられる。動作確認スイッチ10、充電モニタ16aおよびリモコン受光部9は、本体1の下面に設けられる。
【0013】
表示パネル2には誘導表示が設けられる。表示パネル2は避難口の位置または避難方向を示す。表示パネル2の上方には、第1光源12が設けられる。第1光源12は例えばLED光源である。第1光源12は、常用時および非常時に表示パネル2を照らす。ここで、常用時は商用電源50からの電力供給がある状態を示す。非常時は商用電源50の供給が無い停電状態を示す。
【0014】
本体1の下面には第2光源4が設けられる。第2光源4は、第2光源用カバー3に覆われる。第2光源4は短時間に大光量を発生するランプである。第2光源4は、LED光源から構成されるモジュールである。第2光源4の側面には、充電モニタ16bが設けられる。
【0015】
図3は、実施の形態1に係る誘導灯装置120の回路ブロック図である。点灯回路11aは、充電回路111aおよび制御部112aを有する。また、点灯回路11aには商用電源50および電池13aが接続される。商用電源50は例えば交流電源である。充電回路111aは、常用時は商用電源50から電力を供給され電池13aを充電する。
【0016】
第1光源12は、常用時には点灯回路11aを介して商用電源50から電力を供給され点灯する。また、第1光源12は、非常時には電池13aから電力を供給され点灯する。
【0017】
制御部112aは充電回路111aを制御する。制御部112aは、例えばマイコンを含む。制御部112aは、常用時は商用電源50から電力を供給され動作する。また、制御部112aは、非常時には電池13aから電力を供給され動作する。このように、点灯回路11aは、常用時は商用電源50から電力の供給を受け動作し、非常時は電池13aから電力の供給を受け動作する。
【0018】
共有回路11bは、充電回路111b、制御部112bおよび昇圧回路114bを有する。また、共有回路11bには商用電源50および電池13bが接続される。充電回路111bは、常用時に商用電源50から電力を供給され電池13bを充電する。電池13bは例えば蓄電池である。
【0019】
また、共有回路11bには、点滅回路14および音声回路15が接続される。点滅回路14は第2光源4を点滅させる。音声回路15はスピーカ5と接続される。音声回路15はスピーカ5から避難を促す音声を出力させる。この音声は誘導音とも呼ばれる。音声回路15とスピーカ5は音声出力部25を構成する。
【0020】
電池13bは、異常時に点滅回路14および昇圧回路114bに電力を供給する。点滅回路14は電池13bの電圧を、内部に有する昇圧回路14bで昇圧する。これにより、点滅回路14は第2光源4を点滅させる。また、昇圧回路114bは、異常時に音声回路15の動作電源を生成する。これにより音声出力部25は、昇圧回路114bを介して電池13bから電力の供給を受け、避難を促す音声を発する。このように、点滅回路14および音声回路15は、異常時には電池13bから電力を供給される。ここで、異常時は後述する火災検出部201から火災の検出信号を受信している状態を言う。
【0021】
制御部112bは、充電回路111b、昇圧回路114b、点滅回路14、昇圧回路14bおよび音声回路15を制御する。制御部112bは例えばマイコンを含む。制御部112bは、常用時は商用電源50から電力を供給され動作する。また、制御部112bは、非常時には電池13bから電力を供給され動作する。
【0022】
制御部112bには、火災報知部200が接続される。火災報知部200は、火災検出部201、火災報知設備202および誘導灯用信号装置203を有する。火災検出部201は火災を検出する。火災報知設備202は自動火災報知設備である。誘導灯用信号装置203は、火災報知設備202を介して火災検出部201から火災の検出信号を受けると、制御部112a、112bに火災を報知する火災信号を送信する。
【0023】
制御部112bは、火災信号に応じて点滅回路14と音声回路15を動作させる。これにより、第2光源4が例えば2Hzで点滅発光し、スピーカ5が誘導音を発声する。
【0024】
このように、共有回路11bは、通常時は商用電源50から電力の供給を受け動作し、異常時は電池13bから電力の供給を受け動作する。点滅回路14と音声回路15とで電池13bを共用することで、誘導灯装置120の部品点数の削減できる。また、点滅回路14と音声回路15とで共有回路11bを共用することで、さらに誘導灯装置120の部品点数の削減できる。
【0025】
充電モニタ16aは点灯回路11aに接続される。充電モニタ16aは、電池13aの充電状態を示す。制御部112aは、充電モニタ16aの点灯状態を制御する。電池13aの充電中には、充電モニタ16aが有する緑のランプが点灯する。電池13aが寿命となった場合、充電モニタ16aのランプが点滅する。
【0026】
充電モニタ16bは共有回路11bに接続される。充電モニタ16bは、電池13bの充電状態を示す。制御部112bは、充電モニタ16bの点灯状態を制御する。電池13bの充電中には、充電モニタ16bが有する緑のランプが点灯する。
【0027】
リモコン受光部9は、点灯回路11aと共有回路11bの両方に接続されている。リモコン受光部9は、後述するリモコン90からの信号を受信する。制御部112a、112bは、それぞれリモコン90からの信号に応じて動作する。
【0028】
火災報知部200と制御部112bとは、動作確認スイッチ10を介して接続される。動作確認スイッチ10は、押下することでオンオフできる。また、動作確認スイッチ10はリモコン90でオンオフできても良い。動作確認スイッチ10をオンまたはオフすることで、疑似的な火災信号を制御部112bに入力できる。これにより、点滅回路14と音声出力部25の動作確認ができる。
【0029】
図4は、第1疑似負荷34と第2疑似負荷35を説明する図である。第2光源4とスピーカ5の動作確認において、実際の火災報知時と同様に点滅および音声出力を行うと、フラッシュでの点滅は目立ち、大音量の音声はうるさいと感じられる場合がある。このため、特に24時間営業の設備等では動作確認を実施することが困難となる場合がある。
【0030】
これに対し、本実施の形態では、第1疑似負荷34が第2光源4と並列に接続される。また、第2疑似負荷35がスピーカ5と並列に接続される。第1疑似負荷34が第2光源4に接続されることで、電池13bに実動作時と同等の電力を消費させつつ、動作確認時の第2光源4の光量を低減できる。実動作時と同等の電力を消費することで、電池13bの寿命および劣化を正確に確認できる。つまり、実動作時に規定時間の動作が可能か否かの判定ができる。また、第2光源4の光量を低減させることで、目立たないように点滅させて点滅光源の異常の有無を確認できる。
【0031】
同様に、第2疑似負荷35がスピーカ5に接続されることで、電池13bに実動作時と同等の電力を消費させつつ、動作確認時の音量を低減できる。実動作時と同等の電力を消費することで、電池13bの寿命および劣化を正確に確認できる。また、スピーカ5の音量を低減させることで、周囲に迷惑が掛からないように音声出力部25の異常の有無を確認できる。
【0032】
第1疑似負荷34および第2疑似負荷35は、例えば抵抗である。これに限らず、第1疑似負荷34および第2疑似負荷35は、電流を供給されて電力を消費すれば良い。
【0033】
ここで、第2光源4がキセノンランプである場合、キセノンランプを放電させるために、一般に200V程度の高電圧を発生させる必要がある。キセノンランプの点灯回路は、一般に電池電圧の低下に伴い光出力が低下する方式である。このため、電池に実動作時と同等の電力を消費させつつ、光出力を下げることは難しい。これに対し、本実施の形態では、LED光源を用いることで、電池電圧に寄らず第2光源4に供給する電流値または電力値を操作できる。また、第2光源4の点滅のための電圧は数十Vで良く、キセノンランプに比べて省電力での動作を実現できる。
【0034】
図5は、第1疑似負荷34と第2疑似負荷35の接続方法を説明する図である。第1疑似負荷34はスイッチ34aを介して点滅回路14と接続されても良い。制御部112bは動作確認時以外においては、スイッチ34aをオフし、点滅回路14と第1疑似負荷34とを遮断する。制御部112bは動作確認時にスイッチ34aをオンし、点滅回路14と第1疑似負荷34とを接続しても良い。
【0035】
同様に、第2疑似負荷35はスイッチ35aを介して音声回路15と接続されても良い。制御部112bは動作確認時以外においては、スイッチ35aをオフし、音声回路15と第2疑似負荷35とを遮断する。制御部112bは動作確認時にスイッチ35aをオンし、音声回路15と第2疑似負荷35とを接続しても良い。以上から、動作確認時に第1疑似負荷34と第2疑似負荷35を接続する手間が省ける。これに限らず、点検時に作業者が第1疑似負荷34と第2疑似負荷35を取り付けても良い。
【0036】
図6は、電圧検出部を説明する図である。誘導灯装置120は電圧検出部を備える。電圧検出部は、電池13bの正極と負極との間に接続された抵抗R1、R2の直列回路から構成される。抵抗R1、R2の接続点は、制御部112bに接続される。電池13bの両端に印加される電圧Vbatは、抵抗R1、R2で分圧され、制御部112bに入力される。これにより、制御部112bは電池13bの電圧Vbatを検出する。電圧検出部の構成はこれに限らず、電池13bの電圧Vbatを検出できれば良い。
【0037】
図7は、電池の電圧波形を説明する図である。制御部112bは、火災信号を受信すると、500ms毎にHighとなる2Hz信号を点滅回路14に出力する。2Hz信号に応じて点滅回路14は第2光源4を点灯させる。これにより、図7の最上段に示されるように、第2光源4は2Hzで点滅し、閃光を発する。
【0038】
図7の第1比較例と第2比較例は、点滅光源としてキセノンランプを使用したときの電池電圧の挙動を示す。消費電力が大きいキセノンランプを2Hzで点滅させる場合、一般に、キセノンランプを放電させるためのエネルギーが充電される大容量の電解コンデンサが使用される。このとき、500msのほとんどの時間をかけて昇圧を行う必要がある。このため、2Hz信号を発信したあとの電池電圧は下降状態が続き、安定しない。
【0039】
よって、矢印で示される電圧取り込みタイミングにより検出電圧が大きくばらつく。従って、正確な電圧を把握することが困難である。さらに、個体バラツキを考慮すると、電圧取り込みタイミングの僅かなずれにより、検出電圧が大きく変動することとなる。
【0040】
これに対し、本実施の形態では、第2光源4としてLEDを使用している。図7の最下段は、本実施の形態の電池13bの電圧Vbatを示す。電池電圧は、点滅動作及び音声の動作に伴う負荷電流により変動する。電池13bからの放電電流は、2Hz信号に同期して流れる。電池電圧は2Hz信号の発信後Low期間となり、その後High期間となる。電池13bからの放電電流は点滅回路14の動作電源となり、第2光源4が点灯可能となる。
【0041】
電池13bの電圧Vbatは、電池13bから点滅回路14に電流を流しているとき第1電圧となり、電池13bから点滅回路14に電流を流していないとき第2電圧となる。本実施の形態では、矢印に示されるように、電池13bの電圧Vbatが第1電圧または第2電圧のタイミングに合わせて電圧を取り込むことで、検出の精度を向上できる。また、第2光源4の点滅のための電圧は数十Vで良く、キセノンランプに比べて電池電圧の変動が小さい。従って、電池電圧を正確に検出できる。
【0042】
次に、電池13bの電圧の検出タイミングについて説明する。図8は、Low期間における電池電圧の検出タイミングを説明する図である。2Hz信号は電圧Vbatの立下りのエッジから生成される。Low期間の幅は、例えば50msである。制御部112bは、図8の矢印に示される2Hz信号の立ち上がりエッジから0ms以上45ms未満の間に、Low期間の電池13bの第1電圧を検出する。これに限らず、制御部112bは、2Hz信号の立下りエッジから規定時間の間に電池13bの電圧を検出しても良い。
【0043】
図9は、High期間における電池電圧の検出タイミングを説明する図である。制御部112bは、図9の矢印に示される2Hz信号の立ち上がりエッジから55ms以上495ms未満の間に、High期間の電池13bの第2電圧を検出する。以上から、High期間およびLow期間の電池電圧を正確に検出できる。本実施の形態では、電池電圧の検出タイミングを制御部112bが指定することで、正確な電池電圧を検出できる。
【0044】
制御部112bは、自己点検時に電池13bの電圧Vbatから電池13bの寿命を判定する。寿命の判定に用いる電圧Vbatは、Low期間の第1電圧またはHigh期間の第2電圧の何れかであっても良い。つまり、制御部112bは第1電圧または第2電圧の少なくとも一方から電圧Vbatを検出すれば良い。また、電圧Vbatは第1電圧と第2電圧の平均値であっても良い。また、電圧Vbatは第1電圧と第2電圧から得られる実効値であっても良い。
【0045】
また、制御部112bは、第1電圧と第2電圧を検出し、第1電圧と第2電圧の差分を算出しても良い。第1電圧と第2電圧の差分は、回路動作時の電圧降下に対応する。一般に動作時間が長くなり電池容量が低下するほど、電圧降下が大きくなる。また、電池電圧を昇圧して第2光源4を点滅させる場合、出力を一定に保つため、電池電圧が低下するほど電池からの放電電流が増える。このため、電圧降下が大きくなる。従って、制御部112bは、第1電圧と第2電圧の差分から電池13bの電圧Vbatまたは容量を算出しても良い。
【0046】
また、制御部112bは、第1電圧、第2電圧、第1電圧と第2電圧の差分、平均値または実効値の組合せから電池13bの電圧Vbatを判定しても良い。これにより、正確に電池電圧を把握することができる。
【0047】
図10は、音声出力部25からの音声を説明する図である。電池13bの電圧Vbatには、音声発声の為の放電電流に応じた変化分も重畳される。なお、電池13bの電圧Vbatは、消費電力の大きい点滅回路14の動作に大きく影響される。音声出力部25からの音声信号の1周期には、例えば2回の警報音と、2回の音声が含まれる。1周期は例えば7.5秒である。
【0048】
制御部112bは、音声出力部25が発する音声の1周期の間での電池13bの電圧Vbatの平均値を算出しても良い。これにより、より正確に電池電圧を把握することができる。
【0049】
図11は、実施の形態1に係るリモコン90の平面図である。リモコン90は、確認ボタン91、自己点検ボタン92、手動点検ボタン93および中断ボタン94を有する。確認ボタン91は、電池13aが24時間以上充電されているか否かを確認するボタンである。自己点検ボタン92を押下することで、自動で第1光源12および電池13aの点検が実施される。自己点検では、制御部112aにより、規定時間だけ第1光源12を点灯させたときに電池13aの電圧が放電基準電圧よりも高いか否かが判別される。なお、制御部112aは規定時間前に電池13aが放電基準電圧を下回った場合は、点検を終了させる。判別結果は、充電モニタ16aに出力される。なお、中断ボタン94を押下することで、自己点検の中断が可能である。
【0050】
手動点検ボタン93を押下することで、動作確認スイッチ10がオンオフされた場合と同様の動作となり、火災信号を模擬的に制御部112bに入力できる。従って、手動点検ボタン93が押下されることで、点滅および音声出力の模擬動作が順番または同時に実施される。
【0051】
このように、本実施の形態では既存のリモコン90を使って、容易に点検動作が可能となる。また、中断ボタン94により長時間に及ぶ自己点検の中断が可能となる。従って、点検機能を使い易くできる。
【0052】
図12は、実施の形態1の変形例に係る誘導灯装置110の斜視図である。誘導灯装置110は、音声回路15およびスピーカ5を備えない点が誘導灯装置120と異なる。その他の回路構成は、誘導灯装置120と同じである。誘導灯装置110は、音声出力部25を備えない為、誘導灯装置120よりも小型である。
【0053】
図13は、誘導灯装置の機種を説明する図である。誘導灯装置には、一般に音声の有無および動作時間の違いによってA~Dの4種類がある。機種Aは点滅の継続時間が25分であり、音声の継続時間が75分である。機種Bは点滅の継続時間と音声の継続時間が共に75分である。機種Cは点滅の継続時間が25分であり、音声の出力がない。機種Dは点滅の継続時間が75分であり、音声の出力がない。機種A、Bは音声点滅機種であり、機種C、Dは点滅機種である。
【0054】
ここで、誘導灯装置の自己点検では、規定時間である25分または75分だけ点滅動作が継続される。つまり、自己点検での検査時間t1は規定時間と等しい。
【0055】
以下では、一例として機種Bである音声付加点滅形誘導灯の長時間定格の動作を説明する。通常時には、共有回路11bは商用電源50から電力を供給され、電池13bを充電している。また、点滅回路14は待機状態、第2光源4は消灯状態、音声回路15は待機状態、スピーカ5は動作していない無音状態である。
【0056】
制御部112bは、火災を報知する火災信号を受信すると、第2光源4の点滅と、スピーカ5の発声を開始する。点滅と発声の開始から規定時間である75分間は、電池13bの電圧が放電基準電圧V1より高い状態が維持され、点滅と発声が継続される必要がある。点滅回路14は、電池13bの電圧が放電基準電圧V1の時に、第2光源4を点滅させることが可能な規定値以上の出力電圧が得られるように設計されている。また、音声回路15は、電池13bの電圧が放電基準電圧V1の時に、スピーカ5から音声を出力することが可能な規定値以上の出力電圧が得られるように設計されている。
【0057】
図14は、制御部112bの動作を示すフローチャートである。図14を用いて、リモコン90の自己点検ボタン92が押下された際の自動点検動作について説明する。まず、制御部112bが火災を報知する火災信号を受信した場合、規定時間の点滅および音声出力動作が実施される。
【0058】
火災信号を受信していない場合は、充電時間の確認が実施される。充電時間が24時間以下の場合、電池13bの充電が十分ではないため、自己点検は実施されない。充電時間が24時間よりも長い場合、自己点検ボタン92が押下されたか否かが確認される。自己点検ボタン92が押下されていない場合、制御部112bは充電状態および火災信号の待機状態に戻る。
【0059】
なお、充電時間は、確認ボタン91の押下によって確認することもできる。確認ボタン91が押下された場合、電池13aが24時間以上充電されているか否かが使用者に通知される。通知は、例えば充電モニタ16aの点滅によって行われる。充電モニタ16aの近傍にはランプモニタおよび点検モニタが設けられる。例えば点検モニタと充電モニタ16aが共に点滅する場合、電池13aの充電時間が24時間以上であることを示す。また、例えばランプモニタと充電モニタ16aが共に点滅する場合、電池13aの充電時間が24時間未満であることを示す。同様に、充電モニタ16bの近傍にランプモニタおよび点検モニタを設け、電池13bが24時間以上充電されているか否かを使用者に通知しても良い。
【0060】
自己点検ボタン92が押下された場合、制御部112bは自己点検を開始する。制御部112bは、点滅回路14と音声回路15に模擬動作信号を送信し、点滅および音声出力の模擬動作を開始する。一定時間だけ模擬動作を継続した時点で、制御部112bは電池13bの電圧Vbatを検出する。制御部112bは、図8または図9に示されるタイミングまたはその両方のタイミングで電池電圧を検出し、電池電圧が放電基準電圧V1よりも高いか否かを判別する。
【0061】
また、制御部112bは点滅および音声出力の動作時間が検査時間t1よりも長いか否かを確認する。検査時間t1は誘導灯装置の機種によって予め定められた時間であり、機種Bでは点滅、音声出力で共に75分である。
【0062】
動作時間が検査時間t1以下の時点で、電池13bの電圧Vbatが放電基準電圧V1以下となった場合、電池13bの寿命であると判断できる。このとき、制御部112bは不合格の判定を行う。この場合、制御部112bは充電モニタ16bを点滅させる。その後、制御部112bは充電状態および火災信号の待機状態に戻る。
【0063】
電池13bの電圧Vbatが放電基準電圧V1よりも高い状態で、検査時間t1が経過した場合、電池13bは規定時間の動作に十分な容量を有すると判断できる。このとき、制御部112bは合格の判定を行う。この場合、制御部112bは充電モニタ16bを点灯させる。その後、制御部112bは充電状態および火災信号の待機状態である通常時に戻る。
【0064】
このように、自己点検では、検査時間t1後に電池電圧が放電基準電圧V1より高ければ合格となる。また、電池電圧が検査時間t1の経過前に放電基準電圧V1以下になった場合、不合格となり、その時点で点検を終了する。以上から、電池13bの寿命を判定できる。
【0065】
防災用照明では、電池での動作確認をして電池の異常の有無を確認する機能が設けられることがある。日本照明工業会規格のJIL5502では、誘導灯器具及び避難誘導灯システム用装置技術基準が規定されている。この基準は、表示面を有する誘導灯について、自動点検機能を用いて、規定時間後の電池電圧を検出して電池の寿命判定を行うというものである。
【0066】
ここで、点滅形誘導灯において光源がキセノンランプである場合、必要な電力が大きく、電池電圧の変動が大きい。このため、一般に正確な電池電圧が把握することが難しい。このような理由から、点滅形誘導灯については、一般に自動点検機能が付加されておらず、日本照明工業会規格でも自動点検機能が規格化されていない。
【0067】
しかし、現在は点滅光源にLEDを使用する事が規格化されている。本実施の形態によれば、第2光源4にLEDを用いることで、点滅形誘導灯、点滅装置、音声付加点滅形誘導灯に自動点検機能を適用できる。これにより、点滅装置および音声装置について手動で点検を行う必要が無く、容易に点検を実施できる。従って、誘導灯装置のメンテナンスを容易にできる。また、電池13bの寿命を判定できるため、誘導灯装置の信頼性を向上できる。
【0068】
本実施の形態の変形例として、制御部112bは、1回の点滅ごとに電池電圧を検出し、電池電圧が放電基準電圧V1よりも高いか否かを判別し、放電基準電圧V1以下の場合に電池13bの寿命であると判定しても良い。また、制御部112bは、音声出力部25が発する音声の1周期の間での電池13bの電圧Vbatの平均値を算出し、平均値が放電基準電圧V1よりも高いか否かを判別し、放電基準電圧V1よりも高くない場合に電池13bの寿命であると判定しても良い。
【0069】
また、本実施の形態では、電池電圧と放電基準電圧V1とを比較した。これに限らず、制御部112bは、検査時間だけ第2光源4を点滅させ、かつ、音声を出力させたときに、電池13bの電圧Vbatが予め定められた閾値電圧よりも高いか否かを判別すれば良い。閾値電圧は、求められる信頼性等に応じて適宜設定できる。また、第1電圧と第2電圧の差分を算出する場合、制御部112bは第1電圧と第2電圧の差分が閾値電圧よりも高いか否かを判別し、差分が予め定められた値以上の場合に、電池13bの寿命であると判定しても良い。
【0070】
また、制御部112bは、第2光源4と並列に第1疑似負荷34を接続し、スピーカ5と並列に第2疑似負荷35を接続した状態で、自己点検を実施しても良い。
【0071】
ここでは機種Bの自己点検方法について説明した。機種Aの場合は、点滅の模擬動作は25分の時点で終了し、その後、音声出力の模擬動作のみが75分の時点まで継続される。また、機種C、Dでは点滅のみの模擬動作が実施される。この場合、制御部112bは、検査時間t1だけ第2光源4を点滅させたとき、電池13bの電圧Vbatが予め定められた閾値電圧よりも高いか否かを判別し、閾値電圧以下の場合に電池13bの寿命であると判定しても良い。
【0072】
また、制御部112bは、電池13bの電圧Vbatが閾値電圧よりも高いか否かの判別結果を充電モニタ16bに出力する。充電モニタ16bは、判別結果を表示する判別結果表示部である。判別結果表示部は、これに限らず判別結果が外部から判断できれば良い。
【0073】
本実施の形態で説明した技術的特徴は適宜に組み合わせて用いてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 本体、2 表示パネル、3 第2光源用カバー、4 第2光源、5 スピーカ、7 本体カバー、7a スピーカ用穴、9 リモコン受光部、10 動作確認スイッチ、11a 点灯回路、11b 共有回路、12 第1光源、13a 電池、13b 電池、14 点滅回路、14b 昇圧回路、15 音声回路、16a 充電モニタ、16b 充電モニタ、25 音声出力部、34 第1疑似負荷、34a スイッチ、35 第2疑似負荷、35a スイッチ、50 商用電源、90 リモコン、91 確認ボタン、92 自己点検ボタン、93 手動点検ボタン、94 中断ボタン、110 誘導灯装置、111a 充電回路、111b 充電回路、112a 制御部、112b 制御部、114b 昇圧回路、120 誘導灯装置、200 火災報知部、201 火災検出部、202 火災報知設備、203 誘導灯用信号装置、R1、R2 抵抗
図1
図2
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