(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02253 20210101AFI20230404BHJP
H01S 5/02208 20210101ALI20230404BHJP
H01S 5/024 20060101ALI20230404BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H01S5/02253
H01S5/02208
H01S5/024
H01L23/36 C
(21)【出願番号】P 2019137572
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】小櫻 隆之
【審査官】淺見 一喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-079896(JP,A)
【文献】特開2016-051902(JP,A)
【文献】特開平05-206522(JP,A)
【文献】実開平05-087973(JP,U)
【文献】特開2016-051755(JP,A)
【文献】国際公開第2016/186048(WO,A1)
【文献】米国特許第09130336(US,B2)
【文献】特開2017-139332(JP,A)
【文献】特開2005-165088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステムと、前記ステム上に載置された放熱ブロックと、前記放熱ブロック上に載置された半導体レーザチップとを含み、前記ステムの主面に直交する第一方向から見たときに前記ステムの外周の内側に前記放熱ブロック及び前記半導体レーザチップが位置し、前記半導体レーザチップを基準として前記ステムとは反対方向に光を出射する、複数の光源部材と、
前記複数の光源部材が備えるそれぞれの前記ステムが当接されることで、前記複数の光源部材を平面上に固定的に配置する保持部材と、
前記保持部材の前記光源部材が配置されている側の面に形成された複数のザグリと、
筒状体を呈し、前記ステムの外側面と当接する内側面を有すると共に、前記筒状体の軸方向の端部が前記保持部材に当接するように配置されたレンズホルダと、
前記半導体レーザチップを基準として前記ステムとは反対側に前記半導体レーザチップと離間して配置され、前記レンズホルダに支持されたレンズとを備え
、
前記複数の光源部材が備えるそれぞれの前記ステムは、対応する前記複数のザグリの露出面に前記外側面が当接するように配置されていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記保持部材は、前記ザグリに連結され、前記ザグリの開口幅よりも狭い開口幅を有する溝を備えることを特徴とする請求項
1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記レンズは、前記レンズホルダの前記内側面に覆われた空間内に配置されていることを特徴とする請求項
1又は2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記レンズホルダの前記内側面は、前記半導体レーザチップから出射された光を吸収する材料で構成されていることを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置に関し、特に複数の半導体レーザチップを備えた光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体光源を用いて高出力の光を得るための光源装置として、複数の半導体レーザチップを、同一のパッケージ内に配置させて構成した光源装置が知られている。例えば、下記特許文献1及び2には、複数の半導体レーザチップが一つの保持部材に載置されてなる光源装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-51755号公報
【文献】国際公開第2016/186048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の半導体レーザ光源を同一のパッケージ内に配置して構成される光源装置は、それぞれの半導体レーザチップから出射される光の出射方向や照射範囲等が許容される誤差範囲内に収まるように、光源部材とレンズとの位置関係をアライメント(位置合わせ)する作業が必要となる。なお、ここでいう「光源部材」とは、半導体レーザチップを搭載したステムを含む概念である。
【0005】
上記特許文献1に記載の光源装置は、複数の保持部材を備え、一方の保持部材には複数の光源部材が載置され、他方の保持部材には複数のレンズが載置されており、これらが組み合わせられ構成されている。そのため、単一の光源部材と、これに対応する単一のレンズの位置関係を個別に微調整することができない。
【0006】
上記特許文献2に記載の光源装置は、単一の保持部材によって、複数の光源部材と複数のレンズが一体的に保持されている。具体的には、前記保持部材は、一方の面側に深く形成されたザグリを有し、このザグリの深い領域に光源部材が載置される。そして、ザグリの浅い領域(表面側)にレンズが載置される。このため、ザグリの深い領域に載置される光源部材の位置の微調整が難しい。さらに、保持部材の形状が複雑で形成が難しい。
【0007】
本発明の光源装置は、上記課題を鑑み、複数の光源部材をレンズと共に簡単かつ精度よく構成できる光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光源装置は、
ステムと、前記ステム上に載置された放熱ブロックと、前記放熱ブロック上に載置された半導体レーザチップとを含み、前記ステムの主面に直交する第一方向から見たときに前記ステムの外周の内側に前記放熱ブロック及び前記半導体レーザチップが位置し、前記半導体レーザチップを基準として前記ステムとは反対方向に光を出射する、複数の光源部材と、
前記複数の光源部材が備えるそれぞれの前記ステムが当接されることで、前記複数の光源部材を平面上に固定的に配置する保持部材と、
筒状体を呈し、前記ステムの外側面と当接する内側面を有すると共に、前記筒状体の軸方向の端部が前記保持部材に当接するように配置されたレンズホルダと、
前記半導体レーザチップを基準として前記ステムとは反対側に前記半導体レーザチップと離間して配置され、前記レンズホルダに支持されたレンズとを備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、各光源部材の半導体レーザチップの光出射面が同じ方向に面するため、光源装置の各光源部材から出射される光が、同一方向に向かって進行するように構成することができる。さらに、複数の光源部材を平面上に固定的に配置されることで、各光源部材の半導体レーザチップの光出射面と保持部材との距離が一定となるように配置される。なお、本明細書において、当接しているとは、部材同士の離間距離が100μm以下である状態をいい、部材同士が直接接触している状態や、部材同士が接着剤等を介して配置されている状態をも含む。
【0010】
また、筒状体であるレンズホルダの軸方向の端部が保持部材に当接することで、保持部材とレンズとの距離が一定となるように配置される。つまり、上述の内容により、各半導体レーザチップの出射面とそれぞれ対応するレンズとの距離が一定となるように配置することができる。さらに、レンズホルダの内側面がステムの側面に当接して配置されることで、半導体レーザチップから出射される光の光軸とレンズの光軸が一致するように配置される。
【0011】
したがって、上記構成とすることで、アライメント等をすることなく、各光源部材から出射されるそれぞれの光の方向と角度、及び、各光源部材と対応するレンズとの位置関係について誤差が少ない高精度な光源装置を簡単に構成することができる。
【0012】
上記光源装置において、
前記保持部材は、前記光源部材が配置されている側の面に形成された複数のザグリを有し、
前記複数の光源部材が備えるそれぞれの前記ステムは、対応する前記複数のザグリの露出面に当接するように配置されていても構わない。
【0013】
上記構成とすることで、ザグリの露出面が光源部材のステムの側面にも当接して光源部材を保持するため、ステムが載置される平面と直交する方向に対しても、光源部材を固定される。したがって、保持部材の所定の位置に光源部材を固定して配置することができ、各光源部材間における出射される光の方向について、さらに誤差が少ない光源装置とすることができる。
【0014】
上記光源装置において、
前記保持部材は、前記ザグリに連結され、前記ザグリの開口幅よりも狭い開口幅を有する溝を備えていても構わない。
【0015】
光源部材を保持部材に固定するために、多くの場合、接着剤や半田等(以下、説明の便宜のため、これらをまとめて「接着剤」として説明する。)が用いられる。しかし、接着剤を用いて光源部材を固定する場合、接着剤の量が過剰であったときには、光源部材と保持部材の間で多量の接着剤が滞留したり、光源部材と保持部材の隙間から保持部材の表面に漏れ出したりしてしまう。そうすると、光源部材が保持部材から浮き上がった状態で固定されてしまい、各半導体レーザチップの間で、保持部材に対する光出射面の位置や、光出射角度に誤差が生じてしまう、あるいは、固まった接着剤が邪魔となり、レンズホルダが保持部材に当接できなくなってしまう。
【0016】
上記構成とすることで、余分な接着剤は、光学部材と保持部材との間から溝に沿って各部材の配置の邪魔にならない領域へと排出される。したがって、光源部材と保持部材との間に接着剤が滞留してしまうことや、光源部材と保持部材の隙間から保持部材の表面に接着剤が漏れ出すことを回避することができる。なお、ザグリの露出面に当接して配置された光源部材が、溝に沿って移動してしまわないように、溝の開口幅は、レンズホルダの軸方向から保持部材に向かってザグリを見たときの最も狭い幅であるザグリの開口幅よりも狭く構成される。
【0017】
上記光源装置において、
前記レンズは、前記レンズホルダの前記内側面に覆われた空間内に配置されていても構わない。
【0018】
上記構成とすることで、レンズがレンズホルダの外部に露出しないため、レンズはレンズホルダによって外部の物と直接接触しにくくなり、衝突や摩擦から守られるため、光源装置としての耐久性を向上させることができる。
【0019】
上記光源装置において、
前記レンズホルダの前記内側面は、前記半導体レーザチップから出射された光を吸収する材料で構成されていても構わない。
【0020】
半導体レーザチップから出射面から出射された光は、ある程度の発散角を有するため、半導体レーザチップとレンズの入射面との距離によっては、一部の光がレンズの入射面に入射する前にレンズホルダの内側面に当たってしまう。ここで、何らの処理をしていないレンズホルダであれば、内壁面が少なからず光を反射してしまうため、内壁面で反射された光は、意図しない方向に向かって、レンズの出射面から出射されてしまう。
【0021】
上記構成とすることで、レンズホルダの内壁面に照射された光は吸収されるため、レンズの出射面から意図しない方向に進行する光の出射を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の光源部材をレンズと共に簡単かつ精度よく構成できる光源装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】本発明の光源装置の一実施形態を模式的に示す全体斜視図である。
【
図1B】
図1Aの光源装置からレンズホルダを取り除いた全体斜視図である。
【
図1C】
図1Aの光源装置からレンズホルダと光源部材を取り除いた全体斜視図である。
【
図2A】
図1Aの光源装置をX方向に向かって見たときの側面断面図である。
【
図2B】
図1Bの光源装置をX方向に向かって見たときの側面断面図である。
【
図2C】
図1Cの光源装置をX方向に向かって見たときの側面断面図である。
【
図3A】保持部材に載置された光源部材とレンズホルダの構成の一実施形態を示す図面である。
【
図3B】保持部材に載置された光源部材とレンズホルダの構成の一実施形態の一部を示す図面である。
【
図4A】保持部材に光源部材を載置する工程を模式的に示す図面である。
【
図4B】保持部材にレンズホルダを載置する工程を模式的に示す図面である。
【
図5】光源装置の組み立て精度の実験結果を示すグラフである。
【
図6】保持部材に載置された光源部材の構成の一実施形態を示す図面である。
【
図7】本発明の光源装置の別実施形態を模式的に示す全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の光源装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0025】
図1Aは、本発明の光源装置1の一実施形態を模式的に示す全体斜視図である。
図1Bは、
図1Aの光源装置1からレンズホルダ12を取り除いた全体斜視図である。
図1Cは、
図1Aの光源装置1からレンズホルダ12と光源部材10を取り除いた全体斜視図である。
図2A~
図2Cは、それぞれ
図1A~
図1Cの光源装置1をX方向から向かって見たときの側面断面図である。
図3Aは、保持部材11に載置された光源部材10とレンズホルダ12の構成の一実施形態を示す図面である。
図3Bは、保持部材11に載置された光源部材10とレンズホルダ12の構成の一実施形態の一部を示す図面である。以下、
図1A~
図3Bの各図を参照して光源装置1の構造について説明する。
【0026】
図1A及び
図1Bに示すように、本実施形態の光源装置1は、保持部材11と、保持部材11上に整列して配置されたレンズホルダ12と、各レンズホルダ12に支持されているレンズ13を備え、各レンズホルダ12の内側には、光源部材10が平面上に固定的に配置されている。ここで、本明細書では、ステム10a、サブマウント10b、半導体レーザチップ10c、及び放熱ブロック10dを含む概念を、「光源部材10」と総称する。
【0027】
さらに、
図1Cに示すように、保持部材11は、光源部材10のステム10aを嵌合するための凹部(以下、「ザグリ15」と称し、保持部材11にザグリ15を形成することによって外部に露出した面を「露出面15a」と称する。)が形成されている。このザグリ15は、保持部材11に保持される対象となる光源部材10の数に応じた数だけ設けられる。
【0028】
なお、以下の説明において、半導体レーザチップ10cの光出射面が向いている方向、すなわち、第一方向をZ方向とし、Z方向に直交する面をXY平面、半導体レーザチップ10cが載置されている平面をYZ平面として説明する。
【0029】
半導体レーザチップ10cは、基板と基板上に積層された多層の半導体層とを含んでなり、半導体層の構成材料に応じて決定される波長のレーザ光L1を出射する。例えば、半導体層が、InGaP、又はInGaAlPからなる活性層を含む場合、半導体レーザチップ10cは、波長が600nm~800nm帯の、いわゆる赤色光のレーザ光L1を出射する。ただし、本発明において、光源装置1が出射するレーザ光L1の波長は限定されない。
【0030】
サブマウント10bは、例えば面上に不図示の電極配線が設けられることで、半導体レーザチップ10cに対する給電のための電気的な接続が形成される。また、サブマウント10bは、半導体レーザチップ10cの発光時に生じる熱を、放熱ブロック10d側に導く機能も有している。サブマウント10bは、放熱性、絶縁性、半導体レーザチップ10cとの線膨張係数差等に鑑み、適宜材料が選択される。一例として、サブマウント10bは、AlN、Al2O3、SiC、CuW等の材料で構成される。
【0031】
ステム10aは、鉄(Fe)やコバール等の鉄合金、銅(Cu)、銅合金等を利用することができる。ステム10aの一部には貫通穴が設けられており、この貫通穴内に絶縁材料としての低融点ガラスを介して、給電ピン10eが挿入される。給電ピン10eは、コバール等の導電性材料で構成される。給電ピン10eは、1個の半導体レーザチップ10cに対して2本設けられ、これらの給電ピン10eによって半導体レーザチップ10cに対して電流が供給され、半導体レーザチップ10cからレーザ光L1が出射される。
【0032】
保持部材11は、複数の光源部材10を保持するための部材である。保持部材11の形状は特に限定されない。なお、
図1Bには、単一の保持部材11に対して、4行×2列の計8個の光源部材10が保持されている場合が図示されているが、保持される光源部材10の個数についても限定されない。
【0033】
保持部材11は、熱伝導性の良好な材料で形成されていることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ステンレス等の金属材料や、AlN等のセラミックス等で構成することができる。より好ましくは、熱伝導率の観点から無酸素銅やアルミニウム合金を材料として構成される。また、保持部材11の表面には、ステム10aとの半田による接合性を高めるため、金属メッキが形成されていることが好ましい。金属メッキは、例えば、金、銀、ニッケル等で構成することができる。
【0034】
また、
図1Cに示すように、保持部材11は、光源部材10のステム10aを嵌合するためのザグリ15が形成されており、ステム10aの一部がザグリ15の露出面15aと当接して配置される。なお、本実施形態では、ステム10aの一部がザグリ15の露出面15aの全面に当接して、光源部材10を固定する構成で図示されているが、ステム10aの一部がザグリ15の露出面15aの一部で当接するようにして光源部材10を固定する構成であっても構わない。
【0035】
レンズホルダ12は、筒状体を呈し、保持部材11に載置された光源部材10を覆うように配置され、ステム10aの外側面は、レンズホルダ12の内側面に当接して配置されている。すなわち、ステム10aは、ザグリ15の内側面と、レンズホルダ12の内側面のいずれにも当接するように構成されている。なお、本実施形態では、レンズホルダ12は、円筒形状として図示したが、角筒形状や楕円筒状であっても構わなく、軸方向、すなわちZ方向から見たときの形状がステム10aの主面の形状と異なっていても構わない。
【0036】
なお、
図3Bに示すように、保持部材11と当接しているレンズホルダ12のZ方向の端部12cの形状は、
図3Aに示すように、保持部材11と面で当接するように形成されていなくてもよく、先端が尖っている形状や、円弧形状を呈するものであっても構わない。
【0037】
図2A及び
図3Aに示すように、レンズホルダ12には、レンズ13を支持するための突起12bが形成されている。レンズ13は、光入射面の一部が、レンズホルダ12の突起12bに引っ掛かるようにして所定の位置に配置される。そのため、保持部材11とレンズ13との距離d1が一定となるように載置される。さらに、保持部材11と光源部材10の半導体レーザチップ10cの光出射面との距離d2は、保持部材11において光源部材10が平面上に固定的に配置されているため一定である。したがって、上述のように、各半導体レーザチップ10cの出射面とそれぞれ対応するレンズ13との距離d3(=d1-d2)は、一定となる。
【0038】
さらに、レンズホルダ12は、レンズ13を支持しつつ、ステム10aの外側面を保持していることから、載置して固定するだけで、光源部材10とレンズ13のXY平面上の位置関係を所定の配置となるように固定することができる。例えば、各光源部材10とレンズ13において、半導体レーザチップ10cから出射された光の中心が、レンズ13の光軸を通過するように構成することができる。
【0039】
レンズホルダ12の材料としては、Fe-Ni、Fe-Ni-Co、Fe-Cr、Fe-Cr-Ni等のFe系の合金材料、さらには、Al系、Cu系の合金材料等を採用することができる。
【0040】
溝14は、余分な接着剤が、光源部材10と保持部材11との間から排出できるように、ザグリ15に連結するように保持部材11に形成されている。また、溝14は、上述のように、ザグリ15に配置された光源部材10が、溝14に沿って移動してしまわないように、溝14の開口幅が、ザグリ15の開口幅よりも狭く形成されている。
【0041】
本実施形態における溝14の深さは、ザグリ15の深さと同じように図示しているが、溝14とザグリ15の深さは、異なっていてもよく、保持部材11の内部を延伸するトンネルのように形成されていても構わない。また、本実施形態における溝14は、Y方向に向かって配列して構成されているザグリ15において、隣接するザグリ15と連絡するように図示しているが、溝14は、余分な接着剤を排出させるだけの十分な空間が設けられていればよいため、X方向に向かって配列したザグリ15とで連絡していてもよく、他のザグリ15と連絡していなくてもよい。また、接着剤の量が適切な量となるように機械等で制御する場合や、溶接のような接着剤を使用することなく固定する方法を用いる場合には、溝14を設けなくても構わない。
【0042】
ここで、本実施形態の光源装置1を構成する手順について説明する。なお、本実施形態では接着剤として半田を使用する。
図4Aは、保持部材11に光源部材10を載置する工程を模式的に示す図面である。
図4Aに示すように、まず、保持部材11のザグリ15に半田(不図示)を配置し、露出面15aに光源部材10のステム10aが当接するように載置する。そして、半田を溶かすために保持部材11が加熱される。このとき、保持部材11に溝14が構成されていることで、上述のように、余分な半田が存在していた場合は、光源部材10と保持部材11との間に残留させないように排出させることができる。
【0043】
図4Bは、保持部材11にレンズホルダ12を載置する工程を模式的に示す図面である。
図4Bに示すように、保持部材11に光源部材10を固定した後は、固定されている光源部材10の半導体レーザチップ10cを覆うと共に、レンズ13を支持した状態のレンズホルダ12を軸方向の端部12cが保持部材11に当接するように載置する。そして、レンズホルダ12は、端部12cと保持部材11との当接している部分を接着剤、あるいは溶接によって固定される。
【0044】
以上のように構成することで、光源装置1は、アライメント等をすることなく、それぞれの光源部材10から出射される光の方向と角度、及び、光源部材10とレンズ13の位置関係の誤差が抑制される。
【0045】
また、
図2A及び
図3Aに示すように、レンズ13は、レンズホルダ12の内壁面の内側の空間内に配置されているため、レンズ13が外部の物と直接接触しにくくなり、衝突や摩擦から守られ、光源装置1の耐久性が向上される。
【0046】
(検証)
本実施形態にかかる光源装置1による、各光源部材10から出射される光の出射方向や出射角度につき、どの程度の誤差範囲内に収まっているのかを確認するために行った検証実験について説明する。
【0047】
(検証方法)
本実施形態に記載の方法で配置した各光源部材から、レンズ13の出射面から1m先に配置したスクリーンに向かって光を出射させ、スクリーン上の到達位置を測定する。測定点は、スクリーンに到達した光のうち、光強度が一定値以上の領域の中心点とした。
【0048】
(結果)
図5は、光源装置1の組み立て精度の実験結果を示すグラフである。理想的には、スクリーン上でのビームの配置は、光源部材10の配置と同じ配置となる。
図5には、ビームの到達位置の測定点と理想的なビーム位置との差をプロットしている。
図5が示す結果によれば、本発明の光源装置1によれば、各光源部材10から出射された光は、理想的な到達位置を示す原点に対して、X方向及びY方向それぞれで誤差が5mm以内の範囲に収まっている。以上より、上記構成によれば、アライメント等をすることなく、光の出射方向の誤差が十分小さい光源装置1を実現できていることが確認される。
【0049】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0050】
〈1〉 本発明の光源装置1のレンズホルダ12の内側面は、半導体レーザチップ10cから出射された光を吸収する材料で構成されている。例えば、レンズホルダ12が黒色の材料で構成されていてもよく、内壁面に黒色の材料が塗布されているものであってもよい。
【0051】
また、内壁面で光を吸収させるために、化学反応や物理反応を用いて内壁面を黒色の材料でコーティングする方法がある。例えば、アルミニウムを含む材料でレンズホルダ12を構成し、内壁面を黒アルマイト処理する方法や、銅やニッケル等を含む材料でレンズホルダ12を構成し、内壁面を電着処理する方法、ステンレス材料でレンズホルダ12を構成し、黒色のニッケルメッキやクロムメッキ等のメッキ処理を行う方法等があり、これらを採用しても構わない。
【0052】
〈2〉
図6は、保持部材11に載置された光源部材10の構成の一実施形態を示す図面である。上述の各実施形態では、光源部材10が、一つのチップにおいて一つの光出射面を有する、いわゆるシングルエミッタ型とも称される半導体レーザチップ10cを備える光源装置1を説明したが、
図6に示すように、光源部材10が、一つのチップにおいて複数の光出射面を有する、いわゆるマルチエミッタ型とも称される半導体レーザチップ10cを備えることによって光源装置1が構成されていても構わない。なお、
図3A等においては、半導体レーザチップ10cをハッチングで図示しているが、
図6においては、半導体レーザチップ10cがマルチエミッタ型の半導体レーザチップ10cであることを明示するために、半導体レーザチップ10cにおいて、光の発振が生じる活性領域のみをハッチングで図示している。
【0053】
〈3〉
図7は、本発明の光源装置1の別実施形態を模式的に示す全体斜視図である。
図7に示すように、本発明の光源装置1のレンズホルダ12が、複数の光源部材10を内包し、各光源部材10のステム10aの外側面と当接するものであってもよく、レンズ13も同様に、複数の光源部材10に対応したレンズ13が、レンズホルダ12に形成された、レンズ13保持用の突起12bに併せて、一体として構成されていても構わない。
【0054】
〈4〉 上述した光源装置1が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0055】
1 : 光源装置
10 : 光源部材
10a : ステム
10b : サブマウント
10c : 半導体レーザチップ
10d : 放熱ブロック
10e : 給電ピン
11 : 保持部材
12 : レンズホルダ
12b : 突起
12c : 端部
13 : レンズ
14 : 溝
15 : ザグリ
15a : 露出面
L1 : レーザ光
d1,d2,d3 : 距離