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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/08 20060101AFI20230404BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20230404BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230404BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230404BHJP
   H01B 3/40 20060101ALI20230404BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C08L63/08
C08G59/20
C08K3/013
C08L63/00 C
H01B3/40 C
H01B3/40 P
H05K1/03 610L
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019140112
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021021050
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-04-05
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 賢司
(72)【発明者】
【氏名】大石 凌平
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-017247(JP,A)
【文献】特開2019-014843(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181813(WO,A1)
【文献】特開2017-125211(JP,A)
【文献】特開2017-179346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/08
C08G 59/20
C08K 3/013
C08L 63/00
H01B 3/40
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂、(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂(ただし、25℃で固形のエポキシ樹脂を除く)、(C)窒素含有ノボラック樹脂、(D)無機充填材、及び(E)カルボジイミド系硬化剤を含む樹脂組成物であって、
(A)成分のエポキシ当量が200g/eq.以上であり、
(C)成分が、窒素含有量が13質量%以上であり、
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以上であり、
(E)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.5質量%以上20質量%以下である樹脂組成物。
【請求項2】
(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂、(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂(ただし、25℃で固形のエポキシ樹脂を除く)、(C)窒素含有ノボラック樹脂、及び(D)無機充填材を含む樹脂組成物であって、
(A)成分のエポキシ当量が200g/eq.以上であり、
(A)成分と(B)成分の含有量の質量比((A)成分の含有量/(B)成分の含有量)が、0.4以下であり、
(B)成分が、1分子中に1個のナフタレン環を有するエポキシ樹脂を含み、
(C)成分が、窒素含有量が13質量%以上であり、
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以上である樹脂組成物。
【請求項3】
(C)成分が、クレゾールノボラック構造を有する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(A)成分が、ポリブタジエンエポキシ樹脂である、請求項1~3の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分のエポキシ当量が250g/eq.以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(A)成分の数平均分子量(Mn)が、4,000以下である、請求項1~5の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1.5質量%以上10質量%以下である、請求項1~6の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(B)成分のエポキシ当量が130g/eq.以上400g/eq.以下である、請求項1~7の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、2質量%以上20質量%以下である、請求項1~8の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
(A)成分と(B)成分の含有量の質量比((A)成分の含有量/(B)成分の含有量)が、0.1以上である、請求項1~9の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
(C)成分が、トリアジン含有ノボラック樹脂である、請求項1~10の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
(C)成分の水酸基当量が130g/eq.以上である、請求項1~11の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
(D)成分が、シリカである、請求項1~12の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、70質量%以上である、請求項1~13の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
さらに(C)成分以外の成分として(E)硬化剤を含む、請求項1~14の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
(E)成分が、活性エステル系硬化剤を含む、請求項15に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
請求項1~16の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項18】
請求項1~16の何れか1項に記載の樹脂組成物を含有する、シート状積層材料。
【請求項19】
支持体と、当該支持体上に設けられた請求項1~16の何れか1項に記載の樹脂組成物から形成される樹脂組成物層と、を有する樹脂シート。
【請求項20】
請求項1~16の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を備えるプリント配線板。
【請求項21】
請求項20に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物に関する。さらには、当該樹脂組成物を用いて得られる硬化物、シート状積層材料、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造技術として、絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。ビルドアップ方式による製造方法において、一般に、絶縁層は樹脂組成物を硬化させて形成される。
【0003】
プリント配線板は、一般に、室温のような低温環境からリフローのような高温環境まで幅広い温度環境に晒されることになるため、線熱膨張係数が高く寸法安定性が劣ると、絶縁層の樹脂材料が膨張や収縮を繰り返し、その歪みによってクラックが生じてしまう。
【0004】
線熱膨張係数を低く抑える手法として、樹脂材料に無機充填材を高充填させる方法が知られている(特許文献1)。しかし、樹脂材料中に無機充填材を高充填させると、弾性率が高くなり、反りを抑えることが困難となる。
【0005】
なお、これまでにポリオレフィン系エポキシ樹脂を含む樹脂組成物が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-27097号公報
【文献】特開2019-14843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、反りが抑制され且つ優れた耐クラック性を備えた硬化物を得ることができる樹脂組成物等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題を達成すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、200g/eq.以上のエポキシ当量を有する(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂、(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂、窒素含有量が13質量%以上であり且つ/或いはクレゾールノボラック構造を有する(C)窒素含有ノボラック樹脂、及び60質量%以上の(D)無機充填材を含む樹脂組成物を用いることにより、反りが抑制され且つ優れた耐クラック性を備えた硬化物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂、(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂、(C)窒素含有ノボラック樹脂、及び(D)無機充填材を含む樹脂組成物であって、
(A)成分のエポキシ当量が200g/eq.以上であり、
(C)成分が、窒素含有量が13質量%以上であり且つ/或いはクレゾールノボラック構造を有し、
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以上である樹脂組成物。
[2] (A)成分が、ポリブタジエンエポキシ樹脂である、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (A)成分のエポキシ当量が250g/eq.以下である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (A)成分の数平均分子量(Mn)が、4,000以下である、上記[1]~[3]の何れかに記載の樹脂組成物。
[5] (A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1.5質量%以上10質量%以下である、上記[1]~[4]の何れかに記載の樹脂組成物。
[6] (B)成分のエポキシ当量が130g/eq.以上400g/eq.以下である、上記[1]~[5]の何れかに記載の樹脂組成物。
[7] (B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、2質量%以上20質量%以下である、上記[1]~[6]の何れかに記載の樹脂組成物。
[8] (A)成分と(B)成分の含有量の質量比((A)成分の含有量/(B)成分の含有量)が、0.1以上0.5以下である、上記[1]~[7]の何れかに記載の樹脂組成物。
[9] (C)成分が、トリアジン含有ノボラック樹脂である、上記[1]~[8]の何れかに記載の樹脂組成物。
[10] (C)成分の水酸基当量が130g/eq.以上である、上記[1]~[9]の何れかに記載の樹脂組成物。
[11] (D)成分が、シリカである、上記[1]~[10]の何れかに記載の樹脂組成物。
[12] (D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、70質量%以上である、上記[1]~[11]の何れかに記載の樹脂組成物。
[13] さらに(C)成分以外の成分として(E)硬化剤を含む、上記[1]~[12]の何れかに記載の樹脂組成物。
[14] (E)成分が、活性エステル系硬化剤を含む、上記[13]に記載の樹脂組成物。
[15] 上記[1]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物。
[16] 上記[1]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物を含有する、シート状積層材料。
[17] 支持体と、当該支持体上に設けられた上記[1]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物から形成される樹脂組成物層と、を有する樹脂シート。
[18] 上記[1]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を備えるプリント配線板。
[19] 上記[18]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂組成物によれば、反りが抑制され且つ優れた耐クラック性を備えた硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0012】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、200g/eq.以上のエポキシ当量を有する(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂、(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂、窒素含有量が13質量%以上であり且つ/或いはクレゾールノボラック構造を有する(C)窒素含有ノボラック樹脂、及び60質量%以上の(D)無機充填材を含む樹脂組成物を含む。このような樹脂組成物を用いることにより、反りが抑制され且つ優れた耐クラック性を備えた硬化物を得ることができる。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂、(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂、(C)窒素含有ノボラック樹脂、及び(D)無機充填材の他に、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(E)硬化剤、(F)硬化促進剤、(G)その他の添加剤、(H)有機溶剤が挙げられる。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0014】
<(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂を含む。(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂とは、2個以上のエポキシ基が導入されたエチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類の重合体を意味し、好ましくは、2個以上のエポキシ基が導入されたブタジエンの重合体、即ち、ポリブタジエンエポキシ樹脂が好ましい。ポリブタジエンエポキシ樹脂は、例えば、1,2-ポリブタジエンのビニル基を部分的に酸化することによりエポキシ基を導入して得られるエポキシ化1,2-ポリブタジエンであることが好ましい。このようなポリブタジエンエポキシ樹脂は、全部又は部分的に水素化されていてもよく、さらに、ポリエチレン構造、ポリプロピレン構造、ポリウレタン構造、ポリエステル構造等のその他の構造を有していてもよい。また、分子中に、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基等の官能基が導入されたものであってもよい。
【0015】
(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂は、下記式(1):
【0016】
【化1】
【0017】
(式中、nは10~300の整数を示し、mは3~150の整数を示す。)
で表される構造を含むポリブタジエンエポキシ樹脂であることが好ましい。(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂が式(1)で表される構造を含む場合、式(1)で表される構造を80質量%以上含むことが好ましく、85質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましく、95質量%以上含むことが特に好ましい。
【0018】
式(1)中、nは、好ましくは10~200、より好ましくは10~100、特に好ましくは10~60である。mは、好ましくは3~100、より好ましくは3~50、特に好ましくは3~30である。
【0019】
(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂は、好ましくは1分子中に3個以上のエポキシ基、より好ましくは1分子中に4個以上のエポキシ基を有するポリオレフィン系エポキシ樹脂を含む。
【0020】
(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂のエポキシ当量は、200g/eq.以上である。(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂のエポキシ当量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは1,000g/eq.以下、より好ましくは500g/eq.以下、さらに好ましくは300g/eq.以下、特に好ましくは250g/eq.以下である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量である。エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0021】
(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂の粘度(45℃)は、好ましくは3,000Pa・s以下、より好ましくは1,000Pa・s以下、さらに好ましくは500Pa・s以下、特に好ましくは200Pa・s以下である。
【0022】
(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)は、特に限定されるものではないが、好ましくは500以上、より好ましくは800以上、さらに好ましくは1,000以上、特に好ましくは1,200以上である。(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは10,000以下、より好ましくは7,000以下、さらに好ましくは5,000以下、特に好ましくは4,000以下である。
【0023】
(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されるものではないが、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、特に好ましくは0℃以下である。(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)の下限は、例えば、-70℃以上、-80℃以上等とし得る。
【0024】
(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、日本曹達社製の「JP-100」(エポキシ当量約210g/eq.、Mn1,300)、「JP-200」(エポキシ当量約225g/eq.Mn2,200)、「JP-400」(エポキシ当量約230g/eq.Mn3,500)等が挙げられる。
【0025】
樹脂組成物中の(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは2質量%以上である。(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0026】
<(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂を含む。(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂とは、1分子中に1個以上の縮合多環式芳香族炭化水素環及び2個以上のエポキシ基を有する樹脂を意味する。縮合芳香族炭化水素環は、2個以上のベンゼン環が縮合して得られる2環式以上の芳香族炭化水素環であり、炭素数は10~18であることが好ましく、10~14であることがより好ましく、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられ、特に好ましくはナフタレン環である。
【0027】
(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂としては、例えば、1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、1,5-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、2,7-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン等の1分子中に1個の縮合芳香族炭化水素環を有するエポキシ樹脂;ビス[2-(グリシジルオキシ)-1-ナフチル]メタン、ビス[2,7-ビス(グリシジルオキシ)-1-ナフチル]メタン、[2,7-ビス(グリシジルオキシ)-1-ナフチル][2-(グリシジルオキシ)-1-ナフチル]メタン等の1分子中に2個の縮合芳香族炭化水素環を有するエポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂等の1分子中に2個以上の縮合芳香族炭化水素環を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
【0028】
(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されるものではないが、好ましくは50g/eq.以上、より好ましくは100g/eq.以上、さらに好ましくは120g/eq.以上、さらにより好ましくは130g/eq.以上、特に好ましくは140g/eq.以上である。(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂のエポキシ当量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは1,000g/eq.以下、より好ましくは700g/eq.以下、さらに好ましくは500g/eq.以下、さらにより好ましくは450g/eq.以下、特に好ましくは400g/eq.以下である。
【0029】
(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、DIC社製の「HP-4032D」、「HP-4032SS」(1分子中に1個のナフタレン環を有するエポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-4750」、「HP-4770」、「HP-4700」、「HP-4710」(1分子中に2個のナフタレン環を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN-155」、「ESN-185V」、「ESN-175」、「ESN-475V」、「ESN-485」、「TX-1507B」(ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP-6000」、「HP-6000-L」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0030】
樹脂組成物中の(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、反りを抑制する観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは7質量%以上である。(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
【0031】
樹脂組成物中の(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂と(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂の含有量の質量比((A)成分の含有量/(B)成分の含有量)は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.2以上である。当該質量比の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは1以下、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.4以下である。
【0032】
<(C)窒素含有ノボラック樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(C)窒素含有ノボラック樹脂を含む。(C)窒素含有ノボラック樹脂は、分子中に窒素原子を有し且つノボラック構造を有する樹脂である。(C)窒素含有ノボラック樹脂は、(A)成分及び(B)成分を含むエポキシ樹脂を硬化する硬化剤としての機能を備え得る。
【0033】
本発明において(C)窒素含有ノボラック樹脂は、(C1)窒素含有量が13質量%以上であるか(当該実施形態を「第一の実施形態」という)、或いは(C2)クレゾールノボラック構造を有するか(当該実施形態を「第二の実施形態」という)、或いは(C3)窒素含有量が13質量%以上であり且つクレゾールノボラック構造を有する(当該実施形態を「第三の実施形態」という)。窒素含有量とは、(C)成分の分子を構成する窒素原子の質量割合を意味する。
【0034】
第一の実施形態において、(C)窒素含有ノボラック樹脂は、フェノール、クレゾール(具体的にo-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール)、ベンゼンジオール(具体的にカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン)、ナフトール(具体的に1-ナフトール、2-ナフトール)等の2個以上のフェノール系構造における芳香族炭素原子がメチレン基を介して連結して構成される一般的なノボラック構造に、さらに、1又は2個以上の含窒素複素環基が結合した構造を有することが好ましい。第二の実施形態及び第三の実施形態において、(C)窒素含有ノボラック樹脂は、2個以上のクレゾール(具体的にo-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール)における芳香族炭素原子がメチレン基を介して連結して構成されるクレゾールノボラック構造に、さらに、1又は2個以上の含窒素複素環基が結合した構造を有することが好ましい。
【0035】
含窒素複素環としては、例えば、ピロール環、ピリジン環、ピラゾール環、トリアゾール環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環等の含窒素芳香族複素環が挙げられ、中でも、トリアジン環であることが好ましい。また、含窒素複素環基は、1又は2個以上のアミノ基を有することが好ましい。
【0036】
(C)窒素含有ノボラック樹脂は、中でも、ノボラック構造に、1又は2個以上のメラミン(即ちトリアミノトリアジン)がアミノ基を介して結合した構造を有するトリアジン含有ノボラック樹脂であることがより好ましい。
【0037】
(C)窒素含有ノボラック樹脂は、下記式(2):
【0038】
【化2】
【0039】
(式中、pは1~30の整数を示す。)
で表される構造を有するトリアジン含有クレゾールノボラック樹脂であることが特に好ましい。
【0040】
第一の実施形態及び第三の実施形態において、(C)窒素含有ノボラック樹脂の窒素含有量は、13質量%以上であり、好ましくは14質量%以上、より好ましくは15質量%以上、特に好ましくは16質量%以上である。第二の実施形態において、(C)窒素含有ノボラック樹脂の窒素含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは5質量%以上、8質量%以上、より好ましくは10質量%以上、12質量%以上、13質量%以上、さらに好ましくは14質量%以上、15質量%以上、特に好ましくは16質量%以上、17質量%以上である。第一の実施形態、第二の実施形態及び第三の実施形態において、(C)窒素含有ノボラック樹脂の窒素含有量の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、30%質量%以下、25%質量%以下、22%質量%以下等とし得る。
【0041】
(C)窒素含有ノボラック樹脂の水酸基当量は、特に限定されるものではないが、好ましくは100g/eq.以上、より好ましくは110g/eq.以上、さらに好ましくは120g/eq.以上、さらにより好ましくは130g/eq.以上、特に好ましくは140g/eq.以上である。(C)窒素含有ノボラック樹脂の水酸基当量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは300g/eq.以下、より好ましくは200g/eq.以下、さらに好ましくは180g/eq.以下、さらにより好ましくは170g/eq.以下、特に好ましくは160g/eq.以下である。水酸基当量は、水酸基1当量あたりの樹脂の質量である。
【0042】
(C)窒素含有ノボラック樹脂の市販品としては、DIC社製の「LA3018-50P」、「LA1356」、「LA7751」等が挙げられる。
【0043】
樹脂組成物中の(C)窒素含有ノボラック樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上である。(C)窒素含有ノボラック樹脂の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0044】
樹脂組成物中の(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂と(C)窒素含有ノボラック樹脂の含有量の質量比((A)成分の含有量/(C)成分の含有量)は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.2以上、さらにより好ましくは0.25以上、特に好ましくは0.3以上である。当該質量比の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下、さらにより好ましくは7以下、特に好ましくは5以下である。
【0045】
樹脂組成物中の(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂と(C)窒素含有ノボラック樹脂の含有量の質量比((B)成分の含有量/(C)成分の含有量)は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上、さらにより好ましくは1以上、特に好ましくは1.2以上である。当該質量比の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下、さらにより好ましくは20以下、特に好ましくは15以下である。
【0046】
<(D)無機充填材>
本発明の樹脂組成物は、(D)無機充填材を含む。(D)無機充填材は、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。
【0047】
(D)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。(D)無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(D)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0048】
(D)無機充填材の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「DAW-03」、「FB-105FD」などが挙げられる。
【0049】
(D)無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは40μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、さらにより好ましくは3μm以下、特に好ましくは2μm以下である。(D)無機充填材の平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上である。(D)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0050】
(D)無機充填材の比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは0.5m/g以上、特に好ましくは1m/g以上である。(D)無機充填材の比表面積の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは60m/g以下、より好ましくは50m/g以下、特に好ましくは40m/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0051】
(D)無機充填材は、適切な表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理されることにより、(D)無機充填材の耐湿性及び分散性を高めることができる。表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル系シランカップリング剤;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリル系シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル系シランカップリング剤;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート系シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン等の等のウレイド系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤;3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等の酸無水物系シランカップリング剤;等のシランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等の非シランカップリング-アルコキシシラン化合物等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0052】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製の「KBM-1003」、「KBE-1003」(ビニル系シランカップリング剤);「KBM-303」、「KBM-402」、「KBM-403」、「KBE-402」、「KBE-403」(エポキシ系シランカップリング剤);「KBM-1403」(スチリル系シランカップリング剤);「KBM-502」、「KBM-503」、「KBE-502」、「KBE-503」(メタクリル系シランカップリング剤);「KBM-5103」(アクリル系シランカップリング剤);「KBM-602」、「KBM-603」、「KBM-903」、「KBE-903」、「KBE-9103P」、「KBM-573」、「KBM-575」(アミノ系シランカップリング剤);「KBM-9659」(イソシアヌレート系シランカップリング剤);「KBE-585」(ウレイド系シランカップリング剤);「KBM-802」、「KBM-803」(メルカプト系シランカップリング剤);「KBE-9007N」(イソシアネート系シランカップリング剤);「X-12-967C」(酸無水物系シランカップリング剤);「KBM-13」、「KBM-22」、「KBM-103」、「KBE-13」、「KBE-22」、「KBE-103」、「KBM-3033」、「KBE-3033」、「KBM-3063」、「KBE-3063」、「KBE-3083」、「KBM-3103C」、「KBM-3066」、「KBM-7103」(非シランカップリング-アルコキシシラン化合物)等が挙げられる。
【0053】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量%~2質量%で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0054】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下がさらに好ましい。
【0055】
(D)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0056】
樹脂組成物中の(D)無機充填材の含有量は、60質量%以上であり、好ましくは63質量%以上、より好ましくは65質量%以上である。(D)無機充填材の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0057】
<(E)硬化剤>
本発明の樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分を含むエポキシ樹脂を硬化する硬化剤としての機能を備え得る(C)窒素含有ノボラック樹脂を含むが、さらに、(C)成分以外の任意成分として、エポキシ樹脂を硬化する機能を備える(E)硬化剤を含む場合がある。
【0058】
(E)硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸無水物系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤及びカルボジイミド系硬化剤が挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(E)硬化剤は、活性エステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤から選ばれる硬化剤を含むことが好ましく、活性エステル系硬化剤を含むことが特に好ましい。
【0059】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられ、1分子内中に2個以上の酸無水物基を有する硬化剤が好ましい。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」等が挙げられる。
【0060】
活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0061】
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンタレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0062】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB―9451」、「EXB―9460」、「EXB―9460S」、「HPC-8000」、「HPC-8000H」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB―9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「HPC-8100L-65T」、「EXB-8150L-65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0063】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
【0064】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0065】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V-03」、「V-07」等が挙げられる。
【0066】
樹脂組成物が(E)硬化剤を含む場合、(A)成分及び(B)成分を含むエポキシ樹脂と(E)硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基数]:[(E)硬化剤の反応基数]の比率で、1:0.2~1:2が好ましく、1:0.3~1:1.5がより好ましく、1:0.4~1:1.2がさらに好ましい。ここで、(E)硬化剤の反応基は、例えば、活性エステル系硬化剤であれば活性エステル基であり、硬化剤の種類によって異なる。
【0067】
(E)硬化剤の反応基当量は、好ましくは50g/eq.~3,000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1,000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。反応基当量は、反応基1当量あたりの硬化剤の質量である。
【0068】
(E)硬化剤に活性エステル系硬化剤が含まれる場合、その含有量は、特に限定されるものではないが、(E)硬化剤の総量を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。
【0069】
樹脂組成物が(E)硬化剤を含む場合、樹脂組成物中の(E)硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり得る。(E)硬化剤の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0070】
<(F)硬化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、任意成分として(F)硬化促進剤を含む場合がある。(F)硬化促進剤は、(A)成分及び(B)成分を含むエポキシ樹脂の硬化を促進させる機能を有する。
【0071】
(F)硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、イミダゾール系硬化促進剤が特に好ましい。硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウムクレゾールノボラック3量体塩、ジ-tert-ブチルメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp―トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0073】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0074】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0075】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。
【0076】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0077】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0078】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0079】
樹脂組成物が(F)硬化促進剤を含む場合、樹脂組成物中の(F)硬化促進剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上、特に好ましくは0.01質量%以上であり得る。(F)硬化促進剤の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以下である。
【0080】
<(G)その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物は、不揮発性成分として、さらに任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、(A)成分及び(B)成分以外のエポキシ樹脂;ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等の有機充填材;フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。(G)その他の添加剤の含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0081】
<(H)有機溶剤>
本発明の樹脂組成物は、上述した不揮発性成分以外に、揮発性成分として、さらに任意の有機溶剤を含有する場合がある。(H)有機溶剤としては、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。(H)有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(H)有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0082】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、例えば、任意の反応容器に(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂、(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂、(C)窒素含有ノボラック樹脂、(D)無機充填材、必要に応じて(E)硬化剤、必要に応じて(F)硬化促進剤、必要に応じて(G)その他の添加剤、及び必要に応じて(H)有機溶剤を、任意の順で及び/又は一部若しくは全部同時に加えて混合することによって、製造することができる。また、各成分を加えて混合する過程で、温度を適宜設定することができ、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、各成分を加えて混合する過程において、撹拌又は振盪を行ってもよい。また、加えて混合する際に又はその後に、樹脂組成物を、例えば、ミキサーなどの撹拌装置を用いて撹拌し、均一に分散させてもよい。
【0083】
<樹脂組成物の特性>
本発明の樹脂組成物は、200g/eq.以上のエポキシ当量を有する(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂、(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂、窒素含有量が13質量%以上であり且つ/或いはクレゾールノボラック構造を有する(C)窒素含有ノボラック樹脂、及び60質量%以上の(D)無機充填材を含むため、反りが抑制され且つ優れた耐クラック性を備えた硬化物を得ることができる。
【0084】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、反りが抑制されることから、下記試験例1のようにしてサンプルを作製し、長辺を固定して測定した短辺方向の反り量が10μm未満であり得る。
【0085】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、優れた耐クラック性を備えていることから、下記試験例2のように回路基板を作製及び粗化処理した後、回路基板の銅パッド部を100個観察した場合にクラックが好ましくは10個以下であり得る。
【0086】
<樹脂組成物の用途>
本発明の樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物、特に、絶縁層を形成するための樹脂組成物として好適に使用することができる。具体的には、絶縁層上に形成される導体層(再配線層を含む)を形成するための当該絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層形成用樹脂組成物)として好適に使用することができる。また、後述するプリント配線板において、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層形成用樹脂組成物)として好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はまた、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途で広範囲に使用できる。
【0087】
また、例えば、以下の(1)~(6)工程を経て半導体チップパッケージが製造される場合、本発明の樹脂組成物は、再配線層を形成するための絶縁層としての再配線形成層用の樹脂組成物(再配線形成層形成用の樹脂組成物)、及び半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)としても好適に使用することができる。半導体チップパッケージが製造される際、封止層上に更に再配線層を形成してもよい。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
【0088】
また、本発明の樹脂組成物は、部品埋め込み性に良好な絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。
【0089】
<シート状積層材料>
本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用することもできるが、工業的には一般に、該樹脂組成物を含有するシート状積層材料の形態で用いることが好適である。
【0090】
シート状積層材料としては、以下に示す樹脂シート、プリプレグが好ましい。
【0091】
一実施形態において、樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを含んでなり、樹脂組成物層は本発明の樹脂組成物から形成される。
【0092】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上、10μm以上等とし得る。
【0093】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0094】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0095】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0096】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0097】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0098】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0099】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、任意の層を含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0100】
樹脂シートは、例えば、液状の樹脂組成物をそのまま、或いは有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、これを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0101】
有機溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した有機溶剤と同様のものが挙げられる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0102】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物又は樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物又は樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0103】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0104】
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に本発明の樹脂組成物を含浸させて形成される。
【0105】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。プリント配線板の薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されない。通常、10μm以上である。
【0106】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
【0107】
プリプレグの厚さは、上述の樹脂シートにおける樹脂組成物層と同様の範囲とし得る。
【0108】
本発明のシート状積層材料は、プリント配線板の絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶縁層用)に好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するため(プリント配線板の層間絶縁層用)により好適に使用することができる。
【0109】
<プリント配線板>
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物を硬化して得られる硬化物からなる絶縁層を含む。
【0110】
プリント配線板は、例えば、上述の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して絶縁層を形成する工程
【0111】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0112】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0113】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施され得る。
【0114】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0115】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0116】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0117】
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0118】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
【0119】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃~120℃、好ましくは60℃~115℃、より好ましくは70℃~110℃の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0120】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(II)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0121】
他の実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に樹脂シートを用いる場合と同様である。
【0122】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0123】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0124】
粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0125】
粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0126】
また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0127】
中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0128】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、特に限定されるものではないが、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等とし得る。また、粗化処理後の絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)は、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等とし得る。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(Rq)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0129】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0130】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0131】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0132】
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0133】
まず、絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0134】
他の実施形態において、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0135】
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱山社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0136】
<半導体装置>
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
【0137】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例
【0138】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0139】
<実施例1>
ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP-100」、エポキシ当量約210g/eq.)1部とナフタレン骨格含有エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、エポキシ当量約144g/eq.)3.5部をMEK5部に溶解させた。そこへアミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.77μm、アドマテックス社製「SO-C2」)35部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8150-60T」、固形分60質量%のトルエン溶液)11部、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「LA-3018-50P」、窒素含有量18%、固形分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)1部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V03」、固形分50質量%のトルエン溶液)0.5部、イミダゾール化合物(四国化成社製「1B2PZ」)0.01部を加え、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を調製した。
【0140】
<実施例2>
ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP-100」、エポキシ当量約210g/eq.)1部の代わりにポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP-200」、エポキシ当量約225g/eq.)1部を使用した以外は実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。
【0141】
<実施例3>
ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP-100」、エポキシ当量約210g/eq.)1部の代わりにポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP-400」、エポキシ当量約230g/eq.)1部を使用した以外は実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。
【0142】
<実施例4>
ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP-100」、エポキシ当量約210g/eq.)1部とナフタレン骨格含有エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-475V」、エポキシ当量約332g/eq.)3.5部をMEK4部に溶解させた。そこへアミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.77μm、アドマテックス社製「SO-C2」)25部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8150-60T」、固形分60質量%のトルエン溶液)6部、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「LA-3018-50P」、窒素含有量18%、固形分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)0.5部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V03」、固形分50質量%のトルエン溶液)0.5部、イミダゾール化合物(四国化成社製「1B2PZ」)0.01部を加え、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を調製した。
【0143】
<実施例5>
ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP-100」、エポキシ当量約210g/eq.)1部とナフタレン骨格含有エポキシ樹脂(DIC社製「HP-6000-L」、エポキシ当量約213g/eq.)3.5部をMEK5部に溶解させた。そこへアミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.77μm、アドマテックス社製「SO-C2」)30部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8150-60T」、固形分60質量%のトルエン溶液)9部、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「LA-3018-50P」、窒素含有量18%、固形分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)0.5部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V03」、固形分50質量%のトルエン溶液)0.5部、イミダゾール化合物(四国化成社製「1B2PZ」)0.01部を加え、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を調製した。
【0144】
<実施例6>
ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP-100」、エポキシ当量約210g/eq.)1部とナフタレン骨格含有エポキシ樹脂(DIC社製「EXA-7311-G4S」、エポキシ当量約187g/eq.)3.5部をMEK5部に溶解させた。そこへアミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.77μm、アドマテックス社製「SO-C2」)31部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8150-60T」、固形分60質量%のトルエン溶液)9.5部、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「LA-3018-50P」、窒素含有量18%、固形分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)0.5部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V03」、固形分50質量%のトルエン溶液)0.5部、イミダゾール化合物(四国化成社製「1B2PZ」)0.01部を加え、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を調製した。
【0145】
<実施例7>
活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8150-60T」、固形分60質量%のトルエン溶液)11部の代わりに活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、固形分65質量%のトルエン溶液)10.5部を使用した以外は実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。
【0146】
<実施例8>
ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP-100」、エポキシ当量約210g/eq.)1部とナフタレン骨格含有エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、エポキシ当量約144g/eq.)3.5部をMEK5部に溶解させた。そこへアミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.77μm、アドマテックス社製「SO-C2」)21部、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「LA-3018-50P」、窒素含有量18%、固形分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)5部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V03」、固形分50質量%のトルエン溶液)0.5部、イミダゾール化合物(四国化成社製「1B2PZ」)0.01部を加え、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を調製した。
【0147】
<比較例1>
ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP-100」、エポキシ当量約210g/eq.)1部の代わりにポリブタジエンエポキシ樹脂(ダイセル社製「PB3600」」、エポキシ当量約193g/eq.)1部を使用した以外は実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。
【0148】
<比較例2>
ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP-100」、エポキシ当量約210g/eq.)1部とナフタレン骨格含有エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、エポキシ当量約144g/eq.)3.5部をMEK5部に溶解させた。そこへアミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.77μm、アドマテックス社製「SO-C2」)33部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8150-60T」、固形分60質量%のトルエン溶液)10部、トリアジン含有フェノールノボラック樹脂(DIC社製「LA-7054」、窒素含有量12%、固形分60質量%のメチルエチルケトン溶液)1部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V03」、固形分50質量%のトルエン溶液)0.5部、イミダゾール化合物(四国化成社製「1B2PZ」)0.01部を加え、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を調製した。
【0149】
<比較例3>
ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP-100」、エポキシ当量約210g/eq.)1部とエポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1059」、エポキシ当量約165g/eq.、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の1:1混合物)3.5部をMEK5部に溶解させた。そこへアミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.77μm、アドマテックス社製「SO-C2」)33部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「HPC-8150-60T」、固形分60質量%のトルエン溶液)10部、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「LA-3018-50P」、窒素含有量18%、固形分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)1部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V03」、固形分50質量%のトルエン溶液)0.5部、イミダゾール化合物(四国化成社製「1B2PZ」)0.01部を加え、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物を調製した。
【0150】
<製作例1:樹脂組成物層の厚さが40μmの樹脂シート>
支持体として、離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるように均一に塗布した。その後、樹脂組成物を80℃~100℃(平均90℃)で4分間乾燥させて、支持体及び樹脂組成物層を含む樹脂シートを得た。
【0151】
<製作例2:樹脂組成物層の厚さが25μmの樹脂シート>
製作例1と同様に実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を乾燥後の樹脂組成物層の厚さが25μmとなるように均一に塗布し、70℃~80℃(平均75℃)で2.5分間乾燥させて、支持体及び樹脂組成物層を含む樹脂シートを得た。
【0152】
<試験例1:反りの評価>
製作例1で得た厚さ40μmの樹脂シートを、厚さ200μmの銅をすべてエッチアウトしたコア材(日立化成工業社製「E700GR」、サイズ:16cmx12cm)の片面にバッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が前記の内層基板と接合するように、内層基板の両面にラミネートした。このラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、温度100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより、実施した。これを、130℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えて30分間加熱した。次いで、オーブンから室温雰囲気下に取り出した後、支持体を剥離し更に200℃のオーブンに投入して90分間追加で加熱した。室温雰囲気化に取り出し冷却したのち、水平な台にひとつの長辺を固定し、反対側の長辺の台からの高さを測定することにより短辺方向の反り量を求めた。反り量が10μm未満であれば「〇」、10μm以上であれば「×」と評価した。
【0153】
<試験例2:デスミア後のクラックの評価>
製作例2で得た厚さ25μmの樹脂シートを残銅率60%になるように直径350μmの円形の銅パッド(銅厚35μm)を400μm間隔で格子状に形成したコア材(日立化成工業社製「E705GR」、厚さ400μm)の両面にバッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が前記の内層基板と接合するように、内層基板の両面にラミネートした。このラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、温度100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより、実施した。これを、130℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えて30分間加熱した。さらに支持層を剥離し、得られた回路基板を、膨潤液であるアトテックジャパン(株)のスエリングディップ・セキュリガントPに60℃で10分間浸漬した。次に、粗化液であるアトテックジャパン(株)のコンセントレート・コンパクトP(KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で30分間浸漬した。最後に、中和液であるアトテックジャパン(株)のリダクションソリューション・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬した。粗化処理後の回路基板の銅パッド部を100個観察し、樹脂組成物層のクラックの有無を確認した。クラックが10個以下であれば「〇」、10個より多ければ「×」とした。
【0154】
実施例及び比較例の樹脂組成物の不揮発成分の使用量、試験例の評価結果等を下記表1に示す。
【0155】
【表1】
【0156】
エポキシ当量が200g/eq.以上の(A)ポリオレフィン系エポキシ樹脂、(B)縮合多環式芳香族炭化水素含有エポキシ樹脂、窒素含有量が13質量%以上であり且つ/或いはクレゾールノボラック構造を有する(C)窒素含有ノボラック樹脂、及び(D)無機充填材を含む樹脂組成物を用いることにより、反りが抑制され且つ優れた耐クラック性を備えた硬化物を得ることができることがわかった。