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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/70 20160101AFI20230404BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20230404BHJP
   B60R 16/027 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H02J50/70
H02J50/10
B60R16/027 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019187762
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021065013
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰行
(72)【発明者】
【氏名】石田 英敏
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟司
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-077372(JP,A)
【文献】特開2017-204576(JP,A)
【文献】特開2017-195693(JP,A)
【文献】特開2015-134513(JP,A)
【文献】特開2015-195675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
B60R 16/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床部に対してスライド及び回転軸を中心とした回転が可能なシートに給電する給電装置であって、
前記シートがスライドするスライド方向に沿って前記床部に配設される送電部と、
前記シートの底部において、前記送電部と間隔を空けて対向するように取り付けられる受電コイルと、を備え、
前記送電部は、前記受電コイルに非接触方式で電力を供給する主コイルと、
前記主コイルの径方向の外方に配され、前記給電装置から流出する漏れ磁束を抑制する少なくとも1つの副コイルと、を有し、
前記主コイルは、前記スライド方向に延びる第1主延伸部と、前記第1主延伸部とは間隔を空けて、かつ前記スライド方向に延びる第2主延伸部と、を有し、
前記受電コイルは、前記シートが前記スライド方向に変位する過程を通して、前記主コイルに近接した状態で前記送電部の設置範囲内に配置されており、
前記受電コイルの回転軸は、平面視にて前記第1主延伸部と前記第2主延伸部の中間に位置する、給電装置。
【請求項2】
前記主コイルを構成する巻線の巻き数は、前記副コイルを構成する巻線の巻き数よりも相対的に多い、請求項1に記載の給電装置。
【請求項3】
前記受電コイルは、前記シートの前記回転軸が前記受電コイルの内部を貫くように配される、請求項に記載の給電装置。
【請求項4】
前記副コイルは、前記主コイルの径方向の外側に、前記主コイルの全周に亘って間隔を空けて配設され、
前記主コイルに流れる電流の向きと、前記副コイルに流れる電流の向きは逆向きになっている、請求項に記載の給電装置。
【請求項5】
前記副コイルは、前記主コイルの径方向の外側において、前記第1主延伸部の近傍に配される第1副コイルと、前記第2主延伸部の近傍に配される第2副コイルと、からなり、
前記第1主延伸部の電流の向きと、前記第1副コイルにおける前記第1主延伸部とは反対側の部分に流れる電流の向きが逆であり、
前記第2主延伸部の電流の向きと、前記第2副コイルにおける前記第2主延伸部とは反対側の部分に流れる電流の向きが逆である、請求項に記載の給電装置。
【請求項6】
前記主コイル及び前記副コイルは、連続した1本の巻線から形成される、請求項又は請求項に記載の給電装置。
【請求項7】
前記主コイル及び前記副コイルは、それぞれが別個の巻線から個別に形成されたものである、請求項又は請求項に記載の給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載されるスライド可能なシートに非接触給電する給電装置として、特開2013-162609号公報に記載のものが知られている。この給電装置は、車体の床部に立設された給電部と、スライドシートの脚部に設けられた受電部と、を有している。受電部は、給電部と前後方向に間隔を空けて対向しており、給電部と受電部が磁気的に結合することで、電磁誘導により給電部から受電部へと非接触給電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-162609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の給電装置では、スライドシートを前後に変位させて受電部と給電部の距離が大きくなれば、非接触給電が困難になる。さらに、スライドシートが回転機能を有する場合にも、シートの回転によって受電部と給電部が対向しなくなるため、非接触給電が困難になる。
【0005】
また、非接触給電では、磁束の一部は給電装置の周囲に流出し、漏れ磁束となる。漏れ磁束の流出により漏洩磁界が発生し、例えばラジオやカーナビゲーションシステム等、他の電子機器に対して電磁ノイズとなる場合があるため、流出する漏れ磁束を抑制することが望まれる。
【0006】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、スライド及び回転可能なシートへの非接触給電において、漏洩磁界の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、車両の床部に対してスライド及び回転が可能なシートに給電する給電装置であって、前記シートがスライドするスライド方向に沿って前記床部に配設される送電部と、前記シートの底部において、前記送電部と間隔を空けて対向するように取り付けられる受電コイルと、を備え、前記送電部は、前記受電コイルに非接触方式で電力を供給する主コイルと、前記主コイルの径方向の外方に配され、前記給電装置から流出する漏れ磁束を抑制する少なくとも1つの副コイルと、を有する給電装置である。
【発明の効果】
【0008】
本明細書によって開示される技術によれば、スライド及び回転可能なシートへの非接触給電が可能となる。さらに、非接触給電の際に発生する漏洩磁界の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係る給電装置並びにシートのスライド及び回転機構の斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る主コイル及び副コイルの平面図である。
図3図3は、シートの下部に取り付けられた受電部を斜め下から視た斜視図である。
図4図4は、受電部の要部拡大平面図である。
図5図5は、実施形態1に係る送電部上に受電部が配置された状態を示す平面図である。
図6図6は、図5のA-A断面において発生した磁束の状態を示す概念図である。
図7図7は、実施形態2に係る主コイル及び副コイルの平面図である。
図8図8は、実施形態2に係る送電部上に受電部が配置された状態を示す平面図である。
図9図9は、図8のB-B断面において発生した磁束の状態を示す概念図である。
図10図10は、実施形態3に係る主コイル及び副コイルの平面図である。
図11図11は、実施形態4に係る主コイル及び副コイルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
初めに、本明細書にて開示する実施形態の概要について説明する。
【0011】
(1)車両の床部に対してスライド及び回転が可能なシートに給電する給電装置であって、前記シートがスライドするスライド方向に沿って前記床部に配設される送電部と、前記シートの底部において、前記送電部と間隔を空けて対向するように取り付けられる受電コイルと、を備え、前記送電部は、前記受電コイルに非接触方式で電力を供給する主コイルと、前記主コイルの径方向の外方に配され、前記給電装置から流出する漏れ磁束を抑制する少なくとも1つの副コイルと、を有する。
【0012】
非接触給電の方式としては、例えば、1次コイルから発生する磁束が2次コイルと鎖交することで2次コイルに誘導起電力を発生させる電磁誘導方式や、1次コイルにより生じた磁界の変動が2次コイルと共振することで2次コイルに電流が流れる磁界共振方式等が挙げられる。これらの方式では、1次コイルから発生する磁束の一部は漏れ磁束として給電装置の外部に流出してしまうことがあり、この漏れ磁束に起因する漏洩磁界の発生が懸念される。
【0013】
本開示に係る構成の給電装置によると、給電装置の外に流出しようとする磁束を、副コイルから生じる逆向きの磁束により打ち消すことができる。この結果、主コイルから発生する磁束のうち、主コイルの径方向の外側に流出する漏れ磁束を抑制できる。これにより漏洩磁界の発生を抑制できる。
【0014】
(2)前記主コイルを構成する巻線の巻き数は、前記副コイルを構成する巻線の巻き数よりも相対的に多い構成にしてもよい。
【0015】
このような構成では、主コイルと副コイルに流れる電流の大きさ及び位相を同じにした場合、相対的に多い巻き数の主コイルから発生する相対的に強い磁束のうち、給電装置の外部に流出しようとする一部の磁束のみを、相対的に少ない巻き数の副コイルから発生する相対的に弱い磁束により打ち消すことができる。これにより、送電部全体としては大部分の磁束を給電に寄与させることができるとともに、漏洩磁界の発生を抑制できる。
【0016】
(3)前記主コイルは、前記スライド方向に延びる第1主延伸部と、前記第1主延伸部とは間隔を空けて、かつ前記スライド方向に延びる第2主延伸部と、を有し、前記受電コイルは、前記シートが前記スライド方向に変位する過程を通して、前記主コイルに近接した状態で前記送電部の設置範囲内に配置されている構成としてもよい。
【0017】
このような構成では、シートをスライド方向に沿って変位させた場合でも、シートに取り付けられた受電コイルは、主コイルに近接した状態で送電部の設置範囲内に配置される。つまり平面に視て受電コイルは主コイルと重畳する位置に配されることになるため、シートを任意の位置にスライドさせても、主コイルから受電コイルへと非接触給電をすることができる。
【0018】
(4)前記受電コイルは、前記シートの前記回転軸が前記受電コイルの内部を貫くように配される構成としてもよい。
【0019】
このような構成では、シートが回転軸を中心として回転しても、主コイルから発生した磁束が受電コイルを貫くようになっている。このため、シートを任意に回転させても、非接触給電をすることができる。
【0020】
(5)前記副コイルは、前記主コイルの径方向の外側に、前記主コイルの全周に亘って間隔を空けて配設され、また、前記主コイルに流れる電流の向きと、前記副コイルに流れる電流の向きは逆向きになる構成としてもよい。
【0021】
このような構成では、主コイルと受電コイルの間から流出しようとする磁束を、副コイルから発生させた逆向きの磁束で打ち消すことができる。これにより、漏れ磁束の流出を抑制し、この結果、漏洩磁界の発生を抑制できる。また、副コイルの数は1つでよいため、給電装置の単純化、小型化が可能となる。
【0022】
(6)前記副コイルは、前記主コイルの径方向の外側において、前記第1主延伸部の近傍に配される第1副コイルと、前記第2主延伸部の近傍に配される第2副コイルと、からなり、前記第1主延伸部の電流の向きと、前記第1副コイルにおける前記第1主延伸部とは反対側の部分に流れる電流の向きが逆であり、前記第2主延伸部の電流の向きと、前記第2副コイルにおける前記第2主延伸部とは反対側の部分に流れる電流の向きが逆である構成としてもよい。
【0023】
このような構成では、受電コイルと第1主延伸部の間から流出しようとする磁束は、第1副コイルのうち第1主延伸部とは反対側の部分が発する磁束により打ち消される。そして、受電コイルと第2主延伸部の間から流出しようとする磁束は、第2副コイルのうち第2主延伸部とは反対側の部分が発する磁束により打ち消される。これにより、漏れ磁束の流出を抑止し、この結果、漏洩磁界の発生を抑制することができる。
【0024】
(7)前記主コイル及び前記副コイルは、連続した1本の巻線から形成される構成としてもよい。
【0025】
このような構成によると、1本の巻線によって主コイル及び副コイルをまとめて形成できるので、給電装置の製造コストを低減できる。また、複数のコイルが1本の巻線から形成されているため、各コイルに流れる電流とその位相は等しくなる。したがって、各コイルで電流値や位相の調整が不要となり、回路設計が容易になる。
【0026】
(8)前記主コイル及び前記副コイルは、それぞれが別個の巻線から個別に形成される構成としてもよい。
【0027】
このような構成では、別々に製造した主コイル及び副コイルを、任意の組み付け工程において任意の順序で実装できるので、給電装置の工程設計の自由度が上昇し、給電装置の製造効率を向上させることができる。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態について説明する。ただし、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0029】
<実施形態1>
本開示の実施形態1について、図1から図6を参照しつつ説明する。実施形態1は、図1に示すように、車両に搭載されるシートSに電力を供給する給電装置10を例示している。図3は、給電装置10を見やすくするために、便宜上、シートSを図示省略している。なお、給電装置10が搭載される車両の進行方向を前方として、前後方向、左右方向、及び上下方向を定める。また、各図に示した矢印FR及びRRの方向はそれぞれ前後方向を示し、矢印L及びRの方向はそれぞれ左右方向を示し、矢印UP及びDWの方向はそれぞれ上下方向を示す。
【0030】
[全体構成]
シートSは、図1に示すように、車両の床部Fにボルト締結等によって固定された一対のレール20に対して前後方向にスライド可能とされている。
【0031】
一対のレール20には、シートSが前後方向にスライド可能に取り付けられている。シートSは、例えば、電動リクライニング装置、シートヒータ、タッチパネル等のディスプレイ、エアコン、乗員の着座の有無を検出するセンサ、シートベルトの装着の有無を検出するセンサ等の各種電装品が備えられている。各種電装品には、シートSの下部に取り付けられた給電装置10から電力が供給される。
【0032】
一対のレール20は、図1から図3に示すように、左右方向に間隔を開けて、平行に並んで配されている。各レール20は、前後方向に直線状に延びる角筒状に形成されている。レール20を構成する金属としては、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。
【0033】
レール20内には、図1に示すように、前後にスライドする支持部材30が一対のレール20にわたって取り付けられている。支持部材30は、それぞれのレール20の上板に設けられた通し溝22に上下方向に挿通された一対の脚部32と、一対の脚部32の間を繋ぐ支持部本体34を備える。
【0034】
脚部32は、前後方向に長い板状に形成されている。脚部32の下端部は、レール20内を前後方向に移動可能とされている。したがって、脚部32がレール20内を前後方向に移動することに伴って支持部材30、ひいては支持部材30に取り付けられたシートSがレール20上を前後方向(スライド方向)に移動するようになっている。
【0035】
脚部32の上端部には、支持部本体34が前後方向に全長にわたって連なっている。支持部本体34は、平板状に形成されている。支持部本体34には、図1に示すように、支持部材30とシートSの間に設けられた回転機構35が取り付けられている。
【0036】
回転機構35は、金属製であって、支持部本体34に固定されるベース台座36と、ベース台座36に回転可能に組み付けられたシート台座37を有している。ベース台座36は、図1に示すように、円形平板状に形成されており、支持部本体34にボルト締結等によって固定されている。
【0037】
シート台座37は、ベース台座36より一回り小さい円形平板状に形成されている。シート台座37は、シートSの底面にボルト締結等によって固定されている。シート台座37は、ベアリング等を介してベース台座36の内側に、シート回転軸38を中心として回転可能に組み付けられている。したがって、シート台座37がベース台座36に対して回転することにより、シートSが床部Fに対してシート回転軸38を中心として回転するようになっている。
【0038】
[送電部]
給電装置10は、床部Fに取り付けられる送電部40と、送電部40から非接触方式で電力を受電する受電部70と、を備えている。
【0039】
送電部40は、図1図2及び図5に示すように、一対のレール20の間において前後方向に延設されている。送電部40は、巻線を巻回して形成された主コイル41と、巻き線を巻き回して形成され、主コイル41の径方向の外方に、主コイル41の全周に亘って一定の間隔D1を空けて配設される副コイル42を有する。
【0040】
図2に示すように、主コイル41は、前後方向に延びる第1主延伸部41Aと、第1主延伸部41Aとは間隔を空け、かつ平行な第2主延伸部41Bを有しており、両者の長さは等しい。また、第1主延伸部41Aと第2主延伸部41Bは、それぞれの端部において、円周の半分の形状をなす半円周部41Cによって互いに接続されている。つまり、主コイル41の全体形状は、前後方向に長い長円形であり、第1主延伸部41Aと第2主延伸部41Bの間隔R2は、半円周部41Cの直径R1と等しくなっている。
【0041】
副コイル42は、主コイル41の径方向の外方に、主コイル41を全周に亘って取り囲むように一定の間隔D1を空けて配設されており、主コイル41よりも一回り大きな長円形状をなしている。副コイル42は、第1主延伸部41Aの外側に第1副延伸部42Aを、第2主延伸部41Bの外側に第2副延伸部42Bを、それぞれ有する。
【0042】
また、主コイル41の巻線の巻き数は、副コイル42の巻線の巻き数よりも相対的に多くなっている。そのため、主コイル41と副コイル42に流す電流の大きさが同じであれば、副コイル42から生じる磁束(副磁束M13)よりも、主コイル41から発生する磁束(主磁束M11と漏れ磁束M12の和)の方が強くなる。
【0043】
実施形態1においては、図2に示すように、1本の巻線から主コイル41及び副コイル42の2つのコイルが一続きに形成されている。また、図2に示す方向で巻線を巻き回しているため、第1主延伸部41Aに流れる電流の向きと、その近傍にある第1副延伸部42Aに流れる電流の向きは逆向きになり、第2主延伸部41Bに流れる電流の向きと、その近傍にある第2副延伸部42Bに流れる電流の向きは逆向きになる。つまり、例えば主コイル41に時計回りの方向に電流が流れるようにすると、副コイル42には反時計回りに電流が流れるようになっている。
【0044】
[受電部]
受電部70は、図1及び図3に示すように、主コイル41から電力を受け取る受電コイル71と、受電コイル71が載置される載置板72と、載置板72をシート台座37の底部に取り付ける複数の取付棒73と、を有している。複数の取付棒73は、略円柱状に形成されており、シート台座37の底部から下方に延びる状態で設けられている。
【0045】
載置板72は、板厚が薄い円形平板上に形成されている。載置板72は、送電部40における主コイル41の直上に対向して配置されるように、複数の取付棒73の下面にボルト締結等によって固定されている。
【0046】
受電コイル71は、図4に示すように、巻線を円形に巻き回して形成された円形コイルであり、載置板72の上に固定されている。そして、受電コイル71の直径R3は、主コイル41を構成する半円周部41Cの直径R1、及び第1主延伸部41Aと第2主延伸部41Bの間隔R2と等しい。さらに、受電コイル71は、回転機構35の回転軸であるシート回転軸38が受電コイル71の中心74を貫くように配される。
【0047】
載置板72に対する受電コイル71の固定は、載置板72に、超音波溶着や熱溶着等によって受電コイル71を接合したり、粘着剤や接着剤によって受電コイル71を固定したりする等、公知の固定方法によって固定してもよい。また、載置板72と、他の板状の抑え部材等によって受電コイル71を上下方向に挟持して固定してもよい。
【0048】
このようにすれば、シートSに対して受電コイル71が固定されるため、シートSがレール20に沿って前後方向に変位すれば、受電コイル71もこれに伴って変位する。さらに、シートSが回転機構35により回転すれば、受電コイル71もこれに伴ってシート回転軸38を中心として回転する。
【0049】
ここで、図5に受電コイル71と主コイル41を平面に視た場合の位置関係を示す。本実施形態では、シートSをレール20の最前端から最後端まで前後させた際に受電コイル71の通過する領域が、主コイル41によって囲まれた領域内に収まるようになっている。そのため、シートSがレール20上のどの位置にあっても受電コイル71は主コイル41の直上に存在する。
【0050】
また、受電コイル71は円形であり、受電コイル71の中心74(内部)をシート回転軸38が貫いていることから、シートSが回転機構35により回転しても受電コイル71と主コイル41の位置関係は変化しない。
【0051】
次に、図5のA-A断面を概念的に表した図6に示すように、主コイル41を下から上へ貫く向きの主磁束M11が発生するように送電部40に電流を流した場合の磁束の向きについて説明する。以下の記載では、電磁誘導方式の非接触給電を例示して説明するが、本開示に係る技術は、以下の記載に限定されない。例えば電磁誘導方式の非接触給電では、主磁束M11は、主コイル41の上方に間隔を空けて配される受電コイル71と鎖交する。これにより、受電コイル71に誘導起電力が発生し、送電部40から受電部70に向けての非接触給電が行われる。
【0052】
一方、上述したように、副コイル42には主コイル41とは逆向きの電流が流れるため、第1主延伸部41A及び第2主延伸部41Bから発生する磁束のうち、主コイル41と受電コイル71の間から流出する漏れ磁束M12と、第1副延伸部42A及び第2副延伸部42Bから発生する副磁束M13はそれぞれ逆向きとなる。
【0053】
[実施形態1の作用・効果]
実施形態1に係る給電装置10は以上のような構成である。続いて、実施形態1に係る給電装置10の作用及び効果について説明する。例えば、車室の床部Fに配設された送電部40と、シートSの脚部32に配設された受電コイル71の間で非接触給電を行う場合、送電部40と受電コイル71の間の空間から磁束が流出してしまうと、ラジオ等の電子機器に対して電磁ノイズとなる。
【0054】
このような課題を解決するため、本実施形態は、車両の床部Fに対してスライド及びシート回転軸38を中心とした回転が可能なシートSに給電する給電装置10であって、シートSがスライドするスライド方向に沿って床部Fに配設される送電部40と、シートSの底部において、送電部40と間隔を空けて対向するように取り付けられる受電コイル71と、を備え、送電部40は、受電コイル71に電力を供給する主コイル41と、主コイル41の径方向の外方に配され、給電装置10から流出する漏れ磁束M12を抑制する少なくとも1つの副コイル42と、を有する。
【0055】
本実施形態に係る構成の給電装置10によると、主コイル41から発生する磁束のうち、受電コイル71とは鎖交せずに主コイル41と受電コイル71の間を抜けて主コイル41の径方向の外側に流出しようとする漏れ磁束M12を、副コイル42から生じる逆向きの副磁束M13により打ち消すことができる。この結果、主コイル41から発生する磁束のうち、給電装置10の外部に流出する漏れ磁束M12を抑制できるとともに、この漏れ磁束M12に起因する漏洩磁界の発生も抑制できる。
【0056】
また、主コイル41を構成する巻線の巻き数は、副コイル42を構成する巻線の巻き数よりも相対的に多い。
【0057】
このようにすれば、主コイル41と副コイル42に流れる電流の大きさを同じにした場合、相対的に多い巻き数の主コイル41から発生する相対的に強い磁束(主磁束M11及び漏れ磁束M12の和)のうち、給電装置10の外部に流出しようとする一部の磁束(漏れ磁束M12)のみを、相対的に少ない巻き数の副コイル42から発生する相対的に弱い磁束(副磁束M13)により打ち消すことができる。これにより、送電部40全体から生じる磁束の大部分を非接触給電に寄与させることができるとともに、漏れ磁束M12の流出を抑制し、その結果、漏洩磁界の発生を抑制できる。
【0058】
主コイル41は、スライド方向に延びる第1主延伸部41Aと、第1主延伸部41Aとは間隔R2を空けて、かつ前記スライド方向に延びる第2主延伸部41Bと、を有し、受電コイル71は、シートSがスライド方向に変位する過程を通して、主コイル41に近接した状態で送電部40の設置範囲内に配置されている。
【0059】
このようにすれば、シートSをスライド方向に沿って変位させた場合でも、シートSに取り付けられた受電コイル71は、主コイル41に近接した状態で送電部40の設置範囲内に配置される。つまり平面に視て受電コイル71は主コイル41と重畳する位置に配されることになるため、シートSを任意の位置にスライドによって変位させても、主コイル41から受電コイル71へと非接触給電をすることができる。
【0060】
主コイル41は、長さの等しい第1主延伸部41A及び第2主延伸部41Bと、それぞれの端部において両主延伸部を円周の半分で接続する2つの半円周部41Cと、からなる長円形をしており、受電コイル71は巻線を円形に巻回した円形コイルであって、その直径R3は主コイル41を構成する半円周部41Cの直径R1と等しく、かつ、シートSのシート回転軸38が受電コイル71の中心74を貫くようになっている。
【0061】
このようにすれば、受電コイル71がシートSに伴って回転しても、その回転の角度に関わらず、主コイル41と円形の受電コイル71の相対的な位置関係は変化しないため、受電コイル71を鎖交する磁束の量は増減しない。よって、シートSが回転しても非接触給電には影響がなく受電コイル71に生じる誘導起電力の変動が抑制される。
【0062】
副コイル42は、主コイル41の径方向の外側に、長円形状である主コイル41の全周に亘って間隔D1を空けて配設され、主コイル41に流れる電流の向きと、副コイル42に流れる電流の向きは逆向きになっている。
【0063】
このようにすれば、主コイル41から発生した磁束のうち、受電コイル71とは鎖交せずに主コイル41と受電コイル71の間から流出した漏れ磁束M12を、副コイル42から発生した逆向きの副磁束M13で打ち消すことができる。これにより、給電装置10の外部に流出する漏れ磁束M12を抑制できる。また、1つの副コイル42で、主コイル41の全周に亘って漏れ磁束M12の流出を抑制できるため、送電部40の構造が簡易なものとなり、給電装置10の単純化や、信頼性の向上を実現できる。
【0064】
また、主コイル41と、副コイル42は、連続した1本の巻線から形成されている。
【0065】
このようにすれば、1本の巻線から主コイル41と副コイル42をまとめて製造できるので、給電装置10の製造コストを低減できる。また、複数のコイルが1本の巻線から形成されているため、各コイルに流れる電流とその位相は等しくなる。したがって、各コイル間で電流値や位相の調整が不要となり、回路設計が容易になる。
【0066】
<実施形態2>
次に、本明細書に開示された技術における実施形態2について図7から図9を参照して説明する。なお、上述した実施形態1と共通する構成、作用、及び効果についてはその説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0067】
実施形態2は、上述した実施形態1の構成とは、副コイルの数、位置等が異なっている。具体的には、実施形態2に係る給電装置110は、図7に示すように主コイル41の右側に配される第1副コイル43、及び左側に配される第2副コイル44の2つの副コイルを備える。
【0068】
第1副コイル43は、主コイル41の第1主延伸部41Aと平行であって、第1主延伸部41Aと間隔D2を空けて延設される第1内延伸部43Aと、第1主延伸部41Aと平行であって、第1内延伸部43Aと間隔D3を空けて延設される第1外延伸部43Bを有する。
【0069】
第2副コイル44は、主コイル41の第2主延伸部41B側において、上記第1副コイル43と対称となる構成を備えており、第2内延伸部44A及び第2外延伸部44Bを有する。ここで、主コイル41と、各副コイル43、44との間隔D2は、副コイル内における各延伸部間の間隔D3よりも相対的に小さくなっている。
【0070】
また、図7及び図8に示すように、第1主延伸部41Aと第1外延伸部43Bに流れる電流が逆向きになるように主コイル41と第1副コイル43は接続されている。このとき、第1主延伸部41Aと第1内延伸部43Aに流れる電流の向きは同一である。
【0071】
さらに、第2主延伸部41Bと第2外延伸部44Bに流れる電流が逆向きになるように主コイル41と第2副コイル44は接続されている。このとき、第2主延伸部41Bと第2内延伸部44Aに流れる電流の向きは同一である。そして、主コイル41と受電コイル71は平面に視て重畳するように配される。
【0072】
このようにすれば、図8のB-B断面図を概念的に表した図9に示すように、各コイルに電流を流し、主コイル41に発生する主磁束M21が、主コイル41を下から上へ貫く向きである場合、2つの副コイルの、第1外延伸部43B及び第2外延伸部44Bに発生する副磁束M23は、主コイル41と受電コイル71の間では、ともに主コイル41の径方向の内側に向かうようになっている。なお、上述したように間隔D2は間隔D3よりも相対的に小さいため、第1主延伸部41Aと第1内延伸部43Aから生じるそれぞれの磁束、及び、第2主延伸部41Bと第2内延伸部44Aから生じるそれぞれの磁束は、個別に表示せずまとめて表示している。つまり、これらの磁束は主磁束M21及び漏れ磁束M22として表示している。
【0073】
[実施形態2の作用・効果]
実施形態2は以上のような構成である。続いて、実施形態2に係る給電装置110の作用及び効果について説明する。
【0074】
実施形態2に係る副コイルは、主コイル141の径方向の外側において、第1主延伸部41Aの側方に配される第1副コイル43と、第2主延伸部41Bの側方に配される第2副コイル44と、からなる。そして、第1主延伸部41Aの電流の向きと、第1副コイル43における第1主延伸部41Aとは反対側の部分に流れる電流の向きが逆であり、第2主延伸部41Bの電流の向きと、第2副コイル44における第2主延伸部41Bとは反対側の部分に流れる電流の向きが逆になっている。
【0075】
このようにすれば、図9に示すように、主コイル141から発生した磁束のうち、受電コイル71と鎖交せずに受電コイル71と主コイル141の間から外部に流出しようとする漏れ磁束M22は、第1外延伸部43B及び第2外延伸部44Bが発する副磁束M23により打ち消される。これにより、漏れ磁束M22の外部への流出を抑制し、その結果、漏洩磁界の発生を抑制することができる。
【0076】
<実施形態3>
次に、本開示の実施形態3について、図10を参照しつつ説明する。実施形態3は、上述した実施形態1の構成とは、送電部240が有する各コイル(主コイル241及び副コイル242)が連続する1本の巻線から形成されたものではなく、それぞれ別個の巻線から個別に形成されたものである、という点で異なっている。
【0077】
[実施形態3の作用・効果]
このような構成では、各コイルを個別に製造した後に、給電装置210の製造工程において、個々のコイルを任意の工程で給電装置210に実装することができる。これにより、給電装置210の工程設計の自由度が上昇し、製造効率を向上させることができる。また、いずれかのコイルが破損した場合には、その破損したコイルのみを交換すればよいため、給電装置210のメンテナンス性を高めることができる。
【0078】
<実施形態4>
次に、本開示の実施形態4について、図11を参照しつつ説明する。実施形態4は、上述した実施形態2の構成とは、送電部340が有する各コイル(主コイル341及び第1副コイル343、第2副コイル344)が連続する1本の巻線から形成されたものではなく、それぞれ別個の巻線から個別に形成されたものである、という点で異なっている。
【0079】
[実施形態4の作用・効果]
このような構成では、各コイルを個別に製造した後に、給電装置310の製造工程において、個々のコイルを任意の工程で給電装置310に実装することができる。これにより、給電装置310の工程設計の自由度が上昇し、製造効率を向上させることができる。また、いずれかのコイルが破損した場合には、その破損したコイルのみを交換すればよいため、給電装置310のメンテナンス性を高めることができる。
【0080】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0081】
(1)上述した各実施形態では、送電部と受電部の間で電磁誘導方式の非接触給電が行われる場合について例示したが、他の方式による非接触給電、例えば磁界共振方式による非接触給電においても、本開示は適用可能である。
【0082】
(2)上述した各実施形態では、送電部は1つ又は2つの副コイルを有する構成としていた。しかし、副コイルの数はこれらに限らず、送電部が3つ以上の副コイルを有する構成としてもよい。
【0083】
(3)上述した各実施形態では、主コイル及び副コイルの形状を長円形状とする構成としていた。しかし、主コイル及び副コイルの形状はこれに限らず、多角形状や、任意の直線もしくは曲線又はこれらを組み合わせたもので囲まれた形状としてもよい。
【0084】
(4)上述した各実施形態では、受電コイルの形状を円形とした場合について例示した。しかし、受電コイルの形状はこれに限られず、多角形状や、任意の直線もしくは曲線又はこれらを組み合わせたもので囲まれた形状としてもよい。
【0085】
(5)主コイルと副コイルとの間隔は、特に限定されず、一定でなくてもよい。
【符号の説明】
【0086】
S:シート
F:床部
R1:半円周部の直径
R2:間隔(実施形態1の第1主延伸部と第2主延伸部との間隔)
R3:受電コイルの直径
D1:間隔(実施形態1の主コイルと副コイルの間隔)
D2:間隔(実施形態2の主コイルと第1、第2副コイルの内延伸部との間隔)
D3:間隔(実施形態2の副コイルの内延伸部と外延伸部との間隔)
M11:主磁束(実施形態1)
M12:漏れ磁束(実施形態1)
M13:副磁束(実施形態1)
M21:主磁束(実施形態2)
M22:漏れ磁束(実施形態2)
M23:副磁束(実施形態2)
10、110、210、310:給電装置
20:レール
22:通し溝
30:支持部材
32:脚部
34:支持部本体
35:回転機構
36:ベース台座
37:シート台座
38:シート回転軸
40、240、340:送電部
41、141、241、341:主コイル
41A:第1主延伸部
41B:第2主延伸部
41C:半円周部
42、242:副コイル
42A:第1副延伸部
42B:第2副延伸部
43、343:第1副コイル
43A:第1内延伸部
43B:第1外延伸部
44、344:第2副コイル
44A:第2内延伸部
44B:第2外延伸部
70:受電部
71:受電コイル
72:載置板
73:取付棒
74:中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11