(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】回路構成体
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20230404BHJP
H05K 7/06 20060101ALI20230404BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H05K7/20 N
H05K7/06 C
H01L23/46 Z
(21)【出願番号】P 2019201590
(22)【出願日】2019-11-06
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】伊佐治 優介
(72)【発明者】
【氏名】竹田 仁司
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0101838(US,A1)
【文献】特開2018-038128(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0062307(US,A1)
【文献】国際公開第2013/069277(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H05K 7/06
H01L 23/46-23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品と、
前記発熱部品の接続部に接続されたバスバーと、
前記発熱部品と前記バスバーを保持する絶縁性のベース部材と、
前記ベース部材の内部に設けられて冷媒が流通される冷媒流通路とを備え、
前記バスバーが前記冷媒流通路に熱的に接触して
おり、
前記ベース部材が前記冷媒流通路を構成する通路壁部を有し、該通路壁部に対して前記バスバーの一部が圧入されることで、前記バスバーが前記冷媒流通路に熱的に接触しており、
前記通路壁部が、前記冷媒が流通される凹溝と該凹溝内に突入される突入部を有し、前記突入部が前記凹溝に面しない上面に開口するスリット状のバスバー収容溝部を有し、前記バスバー収容溝部に前記バスバーが圧入されている回路構成体。
【請求項2】
前記ベース部材が、ロア側通路壁部を含むロアケースと、前記ロア側通路壁部と流体密に連結されるアッパ側通路壁部を含むアッパケースを含んでおり、流体密に連結された前記ロア側通路壁部と前記アッパ側通路壁部を含んで前記冷媒流通路が構成されている請求項
1に記載の回路構成体。
【請求項3】
前記アッパ側通路壁部が、前記ロア側通路壁部を蓋覆する蓋
部を含ん
でいる請求項
2に記載の回路構成体。
【請求項4】
前記ロア側通路壁部と前記アッパ側通路壁部の少なくとも一方がシールゴムを収容するシールゴム収容凹部を含んで構成されており、前記シールゴムが圧縮されて前記シールゴム収容凹部に密接することで、前記ロア側通路壁部と前記アッパ側通路壁部が流体密に連結されている請求項
2または請求項
3に記載の回路構成体。
【請求項5】
前記ベース部材には、一方の端部が前記冷媒流通路に接続され、他方の端部が外部の冷媒供給路に接続される冷媒入出力部が突設されている請求項1
から請求項4のいずれか1項に記載の回路構成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発熱部品を含む回路構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両には、リレー等の発熱部品を含む回路構成体が搭載されている。例えば、特許文献1には、車両側の負荷としてインバータを介して接続されるモータや発電機に対して、バッテリーの電力供給を断続するリレーを備えた回路構成体が示されている。
【0003】
このような回路構成体に用いられるリレー等の発熱部品は、大電流が流れることから、電流量の二乗に比例したジュール熱が発生し、発熱量も大きくなる。そこで、特許文献1では、ケース内に収容されたリレーの接続部とケース外に配置されたバッテリーの接続端子とを接続するバスバーの中間部分を利用して、リレーの放熱を行う構造が提案されている。具体的には、リレーを収容するケース外に延出されたバスバーの中間部において伝熱シートを介してシャーシや電源装置全体を収容する筐体等に当接させることで、リレーで発生した熱をシャーシや筐体に熱伝導して放熱する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リレーとバッテリーを接続する通電部材を構成するバスバーは、大電流に耐え得るように厚さや面積を大きく確保する必要がある。そのため、特許文献1の構造では、大型のバスバーを用いて放熱用の経路を追加する必要があり、材料費や加工費が上昇するという問題があった。また、大型のバスバーを放熱用にケース外に設けられた他部材まで長く引き回す必要があり、リレーの接続部と放熱部分との距離が大きくなることが避けられない。そのため、リレーでの発熱を効率よく放熱できていないという問題も内在していた。
【0006】
そこで、短い伝熱経路でより確実に発熱部品の放熱を促すことができる新規な構造の回路構成体を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の回路構成体は、発熱部品と、前記発熱部品の接続部に接続されたバスバーと、前記発熱部品と前記バスバーを保持する絶縁性のベース部材と、前記ベース部材の内部に設けられて冷媒が流通される冷媒流通路とを備え、前記バスバーが前記冷媒流通路に熱的に接触しており、前記ベース部材が前記冷媒流通路を構成する通路壁部を有し、該通路壁部に対して前記バスバーの一部が圧入されることで、前記バスバーが前記冷媒流通路に熱的に接触しており、前記通路壁部が、前記冷媒が流通される凹溝と該凹溝内に突入される突入部を有し、前記突入部が前記凹溝に面しない上面に開口するスリット状のバスバー収容溝部を有し、前記バスバー収容溝部に前記バスバーが圧入されている回路構成体である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、短い伝熱経路でより確実に発熱部品の放熱を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係る回路構成体を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、電源から負荷に至る経路における電気的構成を概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、
図1におけるアッパケースとロアケースを組み付けた状態の横断面であって、冷媒流通路を抜粋した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の回路構成体は、
(1)発熱部品と、前記発熱部品の接続部に接続されたバスバーと、前記発熱部品と前記バスバーを保持する絶縁性のベース部材と、前記ベース部材の内部に設けられて冷媒が流通される冷媒流通路とを備え、前記バスバーが前記冷媒流通路に熱的に接触しており、前記ベース部材が前記冷媒流通路を構成する通路壁部を有し、該通路壁部に対して前記バスバーの一部が圧入されることで、前記バスバーが前記冷媒流通路に熱的に接触しており、前記通路壁部が、前記冷媒が流通される凹溝と該凹溝内に突入される突入部を有し、前記突入部が前記凹溝に面しない上面に開口するスリット状のバスバー収容溝部を有し、前記バスバー収容溝部に前記バスバーが圧入されている回路構成体である。
【0011】
本開示の回路構成体によれば、発熱部品と発熱部品の接続部に接続されたバスバーを保持するベース部材の内部に冷媒流通路が設けられており、冷媒流通路に対してバスバーが熱的に接触している。発熱部品の熱が伝熱されるバスバーを、冷媒流通路に熱的に接触させて冷却することができ、従来構造に比べて短い伝熱経路でより確実に発熱部品の放熱を促し、回路構成体の放熱性能の向上を図ることができる。
【0012】
特に、発熱部品の熱が伝熱されるバスバーが、冷媒流通路を流通する冷媒により冷却されることから、バスバーが熱的に接触されるシャーシや筐体自体が70℃を越える高温になる従来構造に比して、放熱効果や冷却効果の向上が図られ得る。また、バスバーの一部が冷媒流通路を構成する通路壁部に圧入されることで、より確実且つ安定してバスバーを冷媒流通路に熱的に接触させることができ、本開示の回路構成体の放熱性能を一層有利に向上させることができる。さらに、冷媒が流通される凹溝内に突入部が突入されていることから、突入部は周囲を流通する冷媒によって速やかに冷却される。そして、この突入部に対してバスバーが圧入されていることから、冷媒を利用して速やかにバスバーを冷却することができ、発熱部品のバスバーからの放熱を一層有利に促すことができる。
【0013】
なお、冷媒流通路を流通する冷媒は、ラジエター液等の車両内で利用可能な冷媒であれば、何れも採用可能である。また、バスバーの冷媒流通路への熱的接触は、バスバーを冷媒流通路の周囲に配置したり、冷媒流通路を構成する通路壁部に接触させること等、任意の構造により実現し得る。加えて、バスバーは、発熱部品の接続部に接続されているため、発熱部品の熱が有利に伝熱されるものであるが、発熱部品の接続部に接続されたバスバーは、導通部材として用いられるものも、単に放熱用に用いられるものも何れも含まれる。
【0014】
【0015】
(2)上記(1)において、前記ベース部材が、ロア側通路壁部を含むロアケースと、前記ロア側通路壁部と流体密に連結されるアッパ側通路壁部を含むアッパケースを含んでおり、流体密に連結された前記ロア側通路壁部と前記アッパ側通路壁部を含んで前記冷媒流通路が構成されていることが好ましい。ベース部材を構成するロアケースに設けられたロア側通路壁部とアッパケースに設けられたアッパ側通路壁部を流体密に連結する簡単な構造によりスペース効率よくベース部材に冷媒流通路を形成することができるからである。
【0016】
(3)上記(2)において、前記アッパ側通路壁部が、前記ロア側通路壁部を蓋覆する蓋部を含んでいることが好ましい。
【0017】
(4)上記(2)または(3)において、前記ロア側通路壁部と前記アッパ側通路壁部の少なくとも一方がシールゴムを収容するシールゴム収容凹部を含んで構成されており、前記シールゴムが圧縮されて前記シールゴム収容凹部に密接することで、前記ロア側通路壁部と前記アッパ側通路壁部が流体密に連結されていることが好ましい。ロア側通路壁部とアッパ側通路壁部の流体密な連結が、ロア側通路壁部とアッパ側通路壁部の少なくとも一方に設けられたシールゴム収容凹部に収容されたシールゴムにより確実に確保される。しかも、シールゴムがシールゴム収容凹部に収容されることで、シールゴムの保持性や位置決め性が確保され、組付作業性にも優れている。
【0018】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つにおいて、前記ベース部材には、一方の端部が前記冷媒流通路に接続され、他方の端部が外部の冷媒供給路に接続される冷媒入出力部が突設されていることが好ましい。ラジエター液等の車両内で利用可能な冷媒を、当該冷媒入出力部を介して冷媒流通路に容易に供給することができるからである。
【0019】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示の回路構成体の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1について、
図1から
図7を参照しつつ説明する。回路構成体10は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等の車両(図示せず)に搭載され、バッテリー等の電源12からモータ等の負荷14への電力の供給、制御を行う(
図3参照)。なお、回路構成体10は、任意の向きで配置することができるが、以下の説明においては、Z方向を上方、Y方向を長さ方向右方、X方向を幅方向前方として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0021】
<回路構成体10の概略的回路構成>
回路構成体10は、
図3に示すように、正極側に設けられた回路構成体10aと負極側に設けられた回路構成体10bを備えている。回路構成体10aの入力側には、電源12の正極側が接続されており、回路構成体10bの入力側には、電源12の負極側が接続されている。回路構成体10aの出力側には、負荷14の正極側が接続されており、回路構成体10bの出力側には、負荷14の負極側が接続されている。回路構成体10aと回路構成体10bの入力側と出力側の間にはそれぞれ、電源12を負荷14に接続する発熱部品であるリレー16が接続されている。加えて、電源12と負荷14の正極側を接続するリレー16には、プリチャージ抵抗18およびプリチャージリレー20がリレー16をバイパスするように直列に接続されたプリチャージ回路22が接続されている。なお、本開示の実施形態1では、
図3に示すように、プリチャージ抵抗18は、プリチャージリレー20の入力側に接続されている。なお、電源12と負荷14の負極側を接続するリレー16にも同様にプリチャージ回路22が接続されるが、理解を容易とするため、本開示の実施形態1では、電源12と負荷14の負極側を接続するリレー16に接続されるプリチャージ回路22の図示を省略する。また、リレー16とプリチャージリレー20はいずれも、励磁コイルの通電状態で接点部を移動させて接点部をON/OFFに切り換えるリレーであり、図示しない制御回路によりON/OFF制御がなされている。以上述べてきたように、回路構成体10aと回路構成体10bは略同一構造とされている。
【0022】
<回路構成体10>
回路構成体10は、例えば
図1および
図6に示すように、車両搭載時において下方に位置するロアケース24と上方に位置するアッパケース26を備えており、ロアケース24とアッパケース26によって絶縁性のベース部材28が構成されている。ロアケース24とアッパケース26が組み付けられた状態において、その内部にはリレー16とプリチャージ回路22を接続するバスバー29やプリチャージ回路22内を接続するバスバー30が収容されている。また、ロアケース24とアッパケース26が組み付けられたベース部材28に対して、2つのリレー16と、それぞれのリレー16の接続部32a,32bに接続されたバスバー34,36が保持されている。
【0023】
<ロアケース24>
ロアケース24は、絶縁性の合成樹脂を所定の形状に射出成型してなる。ロアケース24を構成する合成樹脂は、ガラスファイバー等のフィラーを含んでいてもよい。ロアケース24は、例えば
図1に示すように、全体として横長の扁平なブロック形状を有している。
図1に示すように、ロアケース24の4隅にはそれぞれ、上方に向かって開口する矩形断面形状のねじ穴37が設けられている。
【0024】
ロアケース24には、例えば
図1に示すように、ロアケース24の幅方向の両周縁部近傍において周縁部に沿って延び上方に向かって開口する凹溝38a,38bが形成されている。凹溝38a,38bは、長さ方向の中央部分においてロアケース24の幅方向に延び上方に向かって開口する連結凹溝40によって連結されている。凹溝38a,38bと連結凹溝40の壁部によってロア側通路壁部42が構成されている。また、凹溝38aの長さ方向一方側(
図1中、右側)の端部には、凹溝38aの中央部に凹溝38aの深さ寸法と同じ高さ寸法で分割壁部44が突設されており、分割壁部44によって凹溝38aが二股に分割されている。分割壁部44は、矩形平板状を有しており、長さ方向一方側の端部が凹溝38aの壁部に連結され、長さ方向他方側(
図1中、左側)の端部には上下方向の全長に亘って延びる凹み部46が形成されている。後述するように、冷媒の流入および流出を行う2つのホース取付用の冷媒入出力部86を形成するために、二股に分割された凹溝38aの端部は、長さ方向で異なる位置に形成されている。さらに、凹溝38a,38bと連結凹溝40の周縁部近傍のロア側通路壁部42上には、凹溝38a,38bと連結凹溝40の周縁部に沿って延び上方に向かって開口する凹溝状のシールゴム収容凹部48が形成されている。シールゴム収容凹部48内には、環状のゴム製のシールゴム50が収容されている。
【0025】
加えて、ロアケース24の中央部分の4箇所には、例えば
図1に示すように、リレー16の接続部32a,32bに接続されたバスバー34,36の端部がボルト締結される角筒形状をなすバスバー固定部52が上方に向かって突設されている。バスバー固定部52の突出端面の中央部には、上方に向かって開口する矩形断面形状のボルト挿通孔54が形成されている。バスバー固定部52よりも中央側の6箇所には、後述するリレー16の脚部94がボルト締結される矩形断面形状をなすリレー固定部56が上方に開口して形成されている。
【0026】
<アッパケース26>
アッパケース26は、絶縁性の合成樹脂を所定の形状に射出成型してなる。アッパケース26を構成する合成樹脂は、ガラスファイバー等のフィラーを含んでいてもよい。アッパケース26は、例えば
図1に示すように、略横長矩形の平板状とされた上壁58の外周縁部に、上方に突出する周壁60が形成された、上方に開口する略箱体形状を有している。アッパケース26の上壁58の4隅には、上壁58を板厚方向に貫通するボルト挿通孔62が形成されている。
【0027】
アッパケース26の上壁58には、
図1に示すように、対応するロアケース24の凹溝38a,38bを覆蓋する蓋部64a,64bが、下方に向かって開口する凹溝形状で突設されている。さらに、ロアケース24の連結凹溝40を覆蓋する蓋部が、連結凹溝40を上方から覆う上壁58の領域A(
図1,2の破線部分)によって構成されている。すなわち、蓋部64a,64bと上壁58の領域Aは、アッパ側通路壁部を構成している。また、アッパケース26の底面68側を示す
図2に示すように、蓋部64a,64bの下面66には、アッパケース26の上壁58の底面68を越えて突出する突入部70a,70bが設けられている。アッパケース26の上壁58の領域Aには、底面68から突入部76が突設されている。突入部76は、
図2のX方向に延出して両端部が突入部70a,70bに一体的に連結されている。
図1に示すように、蓋部64a,64bの上面72
a,72bには、スリット状のバスバー収容溝部74a,74bが上面72
a,72bに開口して形成されている。また、バスバー収容溝部74a,74bは、蓋部64a,64bの長さ方向(
図1中、左右方向)に延出している。以上のように、アッパ側通路壁部は、ロア側通路壁部42を蓋覆する蓋部64a,64bおよび上壁58の領域Aと、蓋部64a,64bおよび領域Aから突出する突入部70a,70bおよび突入部76を含んで構成されている。
【0028】
加えて、アッパケース26の中央部分の4箇所には、例えば
図1に示すように、ロアケース24に設けられたバスバー固定部52をアッパケース26上に露出させるバスバー固定部開口窓78が貫設されている。さらにアッパケース26には、ロアケース24に設けられた6つのリレー固定部56をアッパケース26上に露出させる6つのリレー固定部開口窓80が貫設されている。また、アッパケース26の上壁58の長さ方向の一方側(
図1中、右側)には、プリチャージ抵抗18およびプリチャージリレー20を収容するプリチャージ抵抗装着部82およびプリチャージリレー装着部84が上方に向かって開口して設けられている。さらに、プリチャージリレー装着部84の前方側には、後述する冷媒流通路104に冷媒を供給するための一対の冷媒入出力部86,86が形成されている。一対の冷媒入出力部86,86は、上下方向に開口する円筒形状を有しており、上方開口部に金属製のホースジョイント88を介して取り付けられた冷媒を供給する図示しないホースにより冷媒が流入および流出されるようになっている。
【0029】
<リレー16>
リレー16は、機械式のリレーであって、図示しない制御回路によりON/OFF制御がなされている。リレー16は、
図1,
図4,
図5に示すように、ブロック状のリレー本体90と、一対の円環状の接続部32a,32bと、複数(本実施形態では3個)の脚部94とを備えている。リレー本体90は、図示しない接点部およびコイル部を内部に有している。リレー本体90の前面には、一対の接続部32a,32bが幅方向(
図1,
図4,
図5中、左右方向)に並んで配置されている。一対の接続部32a,32bは、リレー本体90の接点部を介して一対の接続部32a,32b間に電流を流すことにより、接点部で生じる熱が伝達されて発熱する。各接続部32a,32bは、後方に向かって延びる有底円筒形状のボルト挿通孔92を有している。脚部94はそれぞれ、リレー本体90の幅方向一方側(
図1中、右側)の側面に2個、リレー本体90の幅方向他方側(
図1中、左側)の側面に1個、外方に向かって平板状に突出して形成されている。脚部94は、上下方向に貫通するボルト挿通孔96を有している。
【0030】
<バスバー34,36>
一対のバスバー34,36は、それぞれが導電性を有する金属板材を加工することによって形成されている。各バスバー34,36は、例えば
図1に示すように、U字形状に形成されており、一方側の端部がリレー16の接続部32a,32bに接続される第一接続部34a,36aとされており、板厚方向である前後方向に貫通するボルト挿通孔98を有している。バスバー34,36は、リレー16の接続部32a,32bに対してボルト締結することにより、リレー16の接続部32a,32bに対して電気的および熱的に接続されている。各バスバー34,36の他方側の端部が、後方に向かって直線的あるいはL字状に延び出して延出端部に第二接続部34b,36bが形成されている。第二接続部34b,36bは、板厚方向である上下方向に貫通するボルト挿通孔100を有している。また、一対のバスバー34,36には、第一接続部34a,36aの下端部から相互に離隔する方向に向かって延び出す延出部102が設けられている。本実施形態1では、一対のバスバー34,36は、バスバー34がリレー16のプラス側の接続部32aに接続され、バスバー36がリレー16のマイナス側の接続部32bに接続されている。
【0031】
<回路構成体10の組み付け工程>
続いて、回路構成体10の組み付け工程の一例について説明する。回路構成体10の組み付け工程は、以下の記載に限定されない。
【0032】
まず、ベース部材28を構成するロアケース24とアッパケース26を準備する。次に、ロアケース24に対して上方からリレー16とプリチャージ回路22を接続するバスバー29やプリチャージ回路22内を接続するバスバー30を収容配置する。さらにシールゴム収容凹部48にシールゴム50を収容し配置する。続いて、このように構成されたロアケース24に対してアッパケース26を上方から載置し、図示しないボルトを用いて4隅に設けられたアッパケース26のボルト挿通孔62を通してロアケース24のねじ穴37に締結する。これにより、ロアケース24とアッパケース26が組み付けられて、バスバー29,30の外部の他部材に対する絶縁性が確保されている。
【0033】
ロアケース24とアッパケース26が組み付けられた状態で、アッパケース26のリレー固定部開口窓80から外部に露呈しているリレー固定部56に対して、2つのリレー16の脚部94を載置後、ボルトを用いて固定する。続いて、2つのリレー16に対してそれぞれバスバー34,36を組み付ける。より詳細には、バスバー34,36の第一接続部34a,36aがそれぞれリレー16の接続部32a,32bの前方側に載置され、バスバー34,36の第二接続部34b,36bがそれぞれバスバー固定部開口窓78から外部に露呈しているロアケース24のバスバー固定部52上に載置されるように、バスバー34,36の延出部102をそれぞれアッパケース26の蓋部64a,64bに設けられたバスバー収容溝部74a,74bに対して圧入する。最後に、バスバー34,36の第一接続部34a,36aがそれぞれリレー16の接続部32a,32bにボルト締結されて熱的および電気的に接続され、バスバー34,36の第二接続部34b,36bがそれぞれロアケース24のバスバー固定部52上でバスバー29と共締めされて、本実施形態の回路構成体10が完成する。このように構成された本実施形態の回路構成体10が、車両の所定位置に配設され、アッパケース26の一対の冷媒入出力部86,86に対してホースジョイント88を介して冷媒を供給するホースを取り付けた状態で使用される。すなわち、一対の冷媒入出力部86,86はそれぞれ、一方の端部が後述する冷媒流通路104に接続され、他方の端部が図示しない外部の冷媒供給路に接続される。本実施形態では、ラジエター液等の車両内で利用可能な冷媒を利用することで一対の冷媒入出力部86,86を介して冷媒流通路104に容易に供給することができる。
【0034】
このようにして組み付けられた回路構成体10では、例えば
図1,
図5,
図6に示すように、凹溝38a,38bの壁部と連結凹溝40の壁部によって構成されているロア側通路壁部42に対して、上方からアッパ側通路壁部を構成するアッパケース26の蓋部64a,64bと上壁58の領域Aが組み付けられて覆蓋されている。この際、シールゴム収容凹部48に収容されたシールゴム50が圧縮されてシールゴム収容凹部48およびアッパケース26の上壁58に密接することで、ロア側通路壁部42とアッパ側通路壁部を構成するアッパケース26の蓋部64a,64bが流体密に連結されている。流体密に連結されたロア側通路壁部42とアッパ側通路壁部を構成する蓋部64a,64bを含んで冷媒流通路104が構成されている。アッパ側通路壁部はまた、アッパケース26の蓋部64a,64bから突出する突入部70a,70bを含んでいる。突入部70a,70bはロア側通路壁部42によって区画されて冷媒が流通される凹溝38a,38b内に突入されており、突入端部が凹溝38a,38bの底面に当接することにより冷媒流通路104を幅方向に2分している。一方、凹溝38a,38bを連結する連結凹溝40の壁部によって構成されているロア側通路壁部42に対しても、上方からアッパケース26の上壁58の領域Aが組み付けられて覆蓋されている。この場合も、シールゴム収容凹部48に収容されたシールゴム50が圧縮されてシールゴム収容凹部48およびアッパケース26の上壁58の領域Aに密接することで、ロア側通路壁部42とアッパケース26の上壁58の領域Aが流体密に連結されている。流体密に連結されたロア側通路壁部42とアッパケース26の上壁58の領域Aを含んで冷媒流通路連結部106が構成されている
。
【0035】
アッパケース26の上壁58の領域Aに突設された突入部76は、ロア側通路壁部42によって区画されて冷媒が流通される連結凹溝40内に突入されており、突入端部が連結凹溝40の底面に当接することにより冷媒流通路連結部106を左右方向に2分している(図
7参照)。以上の結果、例えば
図7に示すように、2分された冷媒流通路104と冷媒流通路連結部106によって、一対の冷媒入出力部86,86の一方から流入された冷媒が、一対の冷媒入出力部86,86の他方から流出される冷媒流通経路108が形成されている。これにより、冷媒が滞ることなく流れることから、冷媒によって冷媒流通路104および冷媒流通路連結部106近傍のベース部材28を効率的に冷却することが可能となっている。このように、回路構成体10は、ベース部材28の内部に冷媒が流通される冷媒流通路104および冷媒流通路連結部106を有している。そして、突入部70a,70bのバスバー収容溝部74a,74bに圧入されたバスバー34,36の延出部102が突入部70a,70bを介して冷媒流通路104に熱的に接触していることにより、バスバー34,36も効率的に冷却することが可能となっている。ここでは、理解を容易とするため、冷媒流通経路108を仮想線で記載している。
【0036】
このような構造とされた本開示の回路構成体10によれば、ベース部材28の内部に冷媒が流通される冷媒流通路104を有している。冷媒流通路104を構成する凹溝38a,38b内に突入された突入部70a,70bのバスバー収容溝部74a,74bに対してバスバー34,36の延出部102が圧入され、バスバー34,36が突入部70a,70bを介して冷媒流通路104に熱的に接触している。これにより、発熱部品であるリレー16の熱が一対の接続部32a,32bを介して伝熱されるバスバー34,36の延出部102を、突入部70a,70bを介して冷媒流通路104に熱的に接触させて効率的に冷却することができる。それゆえ、従来構造に比べて短い伝熱経路でより確実に発熱部品であるリレー16の放熱を促すことができることから、回路構成体10自体の放熱性能の向上を図ることができる。しかも、バスバー34,36が冷媒流通路104を流通する冷媒により冷却されることから、バスバー34,36が熱的に接触するシャーシや筐体自体が70℃を越える高温になる従来構造に比して、放熱効果や冷却効果の向上が図られ得る。
【0037】
また、バスバー34,36の延出部102が突入部70a,70bのバスバー収容溝部74a,74bに圧入されて固定されていることから、より確実且つ安定してバスバー34,36を冷媒流通路104に対して熱的に接触できる。それゆえ、本開示の回路構成体10の放熱性能を有利に向上させることができる。しかも、ロア側通路壁部42に設けられたシールゴム収容凹部48にシールゴム50が収容され、アッパ側通路壁部を構成する蓋部64a,64bおよび領域Aによりシールゴム50を圧縮する簡単な構造により、ロア側通路壁部42とアッパ側通路壁部をスペース効率よく流体密に連結することができる。さらに、シールゴム50をシールゴム収容凹部48に収容することにより、シールゴム50の保持性や位置決め性が確保されており、組付作業性にも優れている。
【0038】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
【0039】
(1)上記実施形態では、冷媒流通路104を構成する凹溝38a,38b内に突入された突入部70a,70bのバスバー収容溝部74a,74bにバスバー34,36の延出部102が圧入されることにより、バスバー34,36が突入部70a,70bを介して冷媒流通路104に熱的に接触していたが、これに限定されない。バスバー34,36の冷媒流通路104への熱的接触は、バスバー34,36を冷媒流通路104の周囲に配置したり、冷媒流通路104を構成するロア側通路壁部42および蓋部64a,64bに接触させること等、任意の構造により実現し得る。
【0040】
(2)上記実施形態では、例えばバスバー34,36は導通部材として用いられていたが、これに限定されず、発熱部品の接続部に接続されるものであれば、単に放熱用として用いられるバスバーであってもよい。
【0041】
(3)上記実施形態では、冷媒流通路104を構成する凹溝38a,38b内に突入された突入部70a,70bのバスバー収容溝部74a,74bにバスバー34,36の延出部102が圧入されていたが、これに限定されない。バスバー34,36の一部がロア側通路壁部42やアッパ側通路壁部を構成する蓋部64a,64bにインサート成形等により埋設されていてもよい。
【0042】
(4)本開示の回路構成体10では、ロア側通路壁部42やアッパ側通路壁部を構成する蓋部64a,64bはいずれも凹溝状であるが、これに限定されない。冷媒流通路連結部106のようにアッパ側通路壁部が平板状の上壁58の領域Aによって構成されていてもよいし、ロア側通路壁部やアッパ側通路壁部や冷媒流通路の形状は任意に設定可能である。
【0043】
(5)本開示の回路構成体10では、シールゴム収容凹部48はロアケース24側に設けられていたが、これに限定されず、アッパケース26側に設けられていてもよいし、ロアケース24とアッパケース26の両方に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 回路構成体
10a 回路構成体
10b 回路構成体
12 電源
14 負荷
16 リレー(発熱部品)
18 プリチャージ抵抗
20 プリチャージリレー
22 プリチャージ回路
24 ロアケース
26 アッパケース
28 ベース部材
29 バスバー
30 バスバー
32a,32b 接続部
34 バスバー
34a 第一接続部
34b 第二接続部
36 バスバー
36a 第一接続部
36b 第二接続部
37 ねじ穴
38a,38b 凹溝
40 連結凹溝
42 ロア側通路壁部
44 分割壁部
46 凹み部
48 シールゴム収容凹部
50 シールゴム
52 バスバー固定部
54 ボルト挿通孔
56 リレー固定部
58 上壁
60 周壁
62 ボルト挿通孔
64a,64b 蓋部
66 下面
68 底面
70a,70b 突入部
72a,72b 上面
74a,74b バスバー収容溝部
76 突入部
78 バスバー固定部開口窓
80 リレー固定部開口窓
82 プリチャージ抵抗装着部
84 プリチャージリレー装着部
86 冷媒入出力部
88 ホースジョイント
90 リレー本体
92 ボルト挿通孔
94 脚部
96 ボルト挿通孔
98 ボルト挿通孔
100 ボルト挿通孔
102 延出部
104 冷媒流通路
106 冷媒流通路連結部
108 冷媒流通経路