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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】作業機械の周囲監視装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20230404BHJP
   B60R 1/20 20220101ALI20230404BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
E02F9/26 A
B60R1/20
H04N7/18 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019202421
(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公開番号】P2021075883
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】永井 政樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 洋一郎
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-142228(JP,A)
【文献】特開2008-240362(JP,A)
【文献】特開2008-095307(JP,A)
【文献】特開2008-179940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
B60R 1/20
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、前記下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体とを備えた機械本体を有する作業機械の周囲を監視する、作業機械の周囲監視装置であって、
前記上部旋回体は、前記上部旋回体の本体に対して上下方向に回動可能な作業装置と、運転室と、を有しており、
前記下部走行体に対する前記上部旋回体の旋回角度を検出する旋回角度検出装置と、
前記作業装置の姿勢を検出する姿勢検出装置と、
前記上部旋回体に設けられ、前記上部旋回体の周囲を撮像する撮像装置と、
前記運転室内に設けられた表示装置と、
前記撮像装置が撮像した画像を前記表示装置に表示させる表示制御手段と、
前記旋回角度検出装置が検出した前記上部旋回体の旋回角度と、前記姿勢検出装置が検出した前記作業装置の姿勢とに基づいて、前記撮像装置の撮像方向に前記下部走行体が走行した場合の前記機械本体の軌跡の範囲を通過予想範囲として算出する通過予想範囲算出手段と、
を有し、
前記表示制御手段は、前記通過予想範囲算出手段が算出した前記通過予想範囲を示す範囲画像を、前記撮像装置が撮像した画像に重畳させて前記表示装置に表示させることを特徴とする作業機械の周囲監視装置。
【請求項2】
前記下部走行体の進行方向を検出する進行方向検出装置を有し、
前記下部走行体が走行し、前記進行方向検出装置が検出した前記下部走行体の進行方向が前記撮像装置の撮像方向であることを条件に、前記表示制御手段は、前記範囲画像を前記表示装置に表示させることを特徴とする請求項1に記載の作業機械の周囲監視装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記撮像装置の撮像方向に前記機械本体から所定距離だけ離れた位置に対応する前記画像中の位置に、前記範囲画像を重畳させて表示させることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機械の周囲監視装置。
【請求項4】
前記範囲画像が、前記機械本体の前記軌跡の幅を表す線、前記機械本体の前記軌跡の高さを表す線、および、前記機械本体の前記軌跡の奥行きを表す線を含む線画像を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の作業機械の周囲監視装置。
【請求項5】
前記範囲画像が、前記機械本体の輪郭を示す輪郭画像を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機械の周囲監視装置。
【請求項6】
前記下部走行体の進行方向を検出する進行方向検出装置と、
前記下部走行体が走行する場合に、前記表示装置に表示される画像の向きを、前記進行方向検出装置が検出した前記下部走行体の進行方向と平行にする画像方向制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の作業機械の周囲監視装置。
【請求項7】
前記表示制御手段は、前記下部走行体がカーブ走行する場合に、前記下部走行体のカーブ走行に沿って湾曲する前記範囲画像を前記表示装置に表示させることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の作業機械の周囲監視装置。
【請求項8】
前記撮像装置が撮像した画像に障害物が含まれる場合に、前記障害物の位置および高さを算出する障害物情報算出手段と、
前記障害物情報算出手段が算出した前記障害物の位置および高さに基づいて、前記障害物が前記上部旋回体に接触するか否かを判定する判定手段と、
をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記上部旋回体に接触すると前記判定手段が判定した前記障害物を前記表示装置に強調して表示させることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の作業機械の周囲監視装置。
【請求項9】
前記撮像装置を、撮像方向を互いに異ならせて複数有し、
前記表示制御手段は、前記撮像装置の各々が撮像した画像を繋ぎ合わせて1つの画像として前記表示装置に表示させることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の作業機械の周囲監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の周囲を監視する作業機械の周囲監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、監視カメラによって撮影した画像をモニターに表示するとともに、上部旋回体の旋回動作領域を明示する円弧状の境界線をモニター画面に合成表示するモニター装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-12522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のものは、上部旋回体の旋回時における上部旋回体と障害物との接触を判断できるが、下部走行体の走行時における上部旋回体と障害物との接触を判断できない。
【0005】
例えば、下部走行体を走行させたときに、アタッチメントの姿勢によっては、上部旋回体の前方や上方にある障害物とアタッチメントとが接触する可能性がある。また、上部旋回体が旋回した状態で、下部走行体の走行を行った場合、上部旋回体の後端部であるカウンタウエイトの側面が運転室から死角となり、カウンタウエイトと障害物とが接触する可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、下部走行体を走行させた際の上部旋回体と障害物との接触を作業者に判断させやすくすることが可能な作業機械の周囲監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下部走行体と、前記下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体とを備えた機械本体を有する作業機械の周囲を監視する、作業機械の周囲監視装置であって、前記上部旋回体は、前記上部旋回体の本体に対して上下方向に回動可能な作業装置と、運転室と、を有しており、前記下部走行体に対する前記上部旋回体の旋回角度を検出する旋回角度検出装置と、前記作業装置の姿勢を検出する姿勢検出装置と、前記上部旋回体に設けられ、前記上部旋回体の周囲を撮像する撮像装置と、前記運転室内に設けられた表示装置と、前記撮像装置が撮像した画像を前記表示装置に表示させる表示制御手段と、前記旋回角度検出装置が検出した前記上部旋回体の旋回角度と、前記姿勢検出装置が検出した前記作業装置の姿勢とに基づいて、前記撮像装置の撮像方向に前記下部走行体が走行した場合の前記機械本体の軌跡の範囲を通過予想範囲として算出する通過予想範囲算出手段と、を有し、前記表示制御手段は、前記通過予想範囲算出手段が算出した前記通過予想範囲を示す範囲画像を、前記撮像装置が撮像した画像に重畳させて前記表示装置に表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、撮像装置の撮像方向に下部走行体が走行した場合の機械本体の軌跡の範囲である通過予想範囲を示す範囲画像が、撮像装置が撮像した画像に重畳されて表示装置に表示される。これにより、撮像装置が撮像した画像に障害物が含まれる場合に、通過予想範囲内に障害物があるか否かを、表示装置を見た作業者に把握させることができる。よって、下部走行体を走行させた際の上部旋回体と障害物との接触を作業者に判断させやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】作業機械の側面図である。
図2】周囲監視装置の回路図である。
図3】第1実施形態において、直進する作業機械を上方から見た図である。
図4A】第1実施形態において、直進する作業機械におけるディスプレイの画面を示す図であり、アタッチメントの姿勢が低い場合の図である。
図4B】第1実施形態において、直進する作業機械におけるディスプレイの画面を示す図であり、アタッチメントの姿勢が高い場合の図である。
図5】第1実施形態において、カーブ走行する作業機械を上方から見た図である。
図6】第1実施形態において、カーブ走行する作業機械におけるディスプレイの画面を示す図である。
図7】第2実施形態における作業機械を上方から見た図である。
図8】第2実施形態におけるディスプレイの画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
[第1実施形態]
(作業機械の構成)
本発明の第1実施形態による作業機械の周囲監視装置(周囲監視装置)は、作業機械の周囲を監視するものである。
【0012】
作業機械20の側面図である図1に示すように、作業機械20は、アタッチメント30で作業を行う機械であり、例えば油圧ショベルである。作業機械20は、下部走行体21と上部旋回体22とを備えた機械本体24と、アタッチメント(作業装置)30と、シリンダ40と、を有している。
【0013】
下部走行体21は、作業機械20を走行させる部分であり、一対のクローラ25を備える。上部旋回体22は、下部走行体21の上部に旋回装置を介して旋回可能に取り付けられる。上部旋回体22の前部には、キャブ(運転室)23が設けられている。キャブ23は、上部旋回体22の左右方向において、上部旋回体22の中央よりも左側に配置されている。上部旋回体22の後端部には、カウンタウエイト26が設けられている。上部旋回体22の後端は、カウンタウエイト26の後端である。
【0014】
アタッチメント30は、上部旋回体22の本体に対して上下方向に回動可能に上部旋回体22に取り付けられる。アタッチメント30は、ブーム31と、アーム32と、バケット33と、を備える。ブーム31は、上部旋回体22に回動可能(起伏可能)に取り付けられる。アーム32は、ブーム31に回動可能に取り付けられる。バケット33は、アーム32に回動可能に取り付けられる。バケット33は、作業対象(土砂など)の、掘削、ならし、すくい、などの作業を行う部分である。
【0015】
シリンダ40は、アタッチメント30を回動させることが可能である。シリンダ40は、油圧式の伸縮シリンダである。シリンダ40は、ブームシリンダ41と、アームシリンダ42と、バケットシリンダ43と、を備える。
【0016】
ブームシリンダ41は、上部旋回体22に対してブーム31を回転駆動させる。ブームシリンダ41の基端部は、上部旋回体22に回動可能に取り付けられる。ブームシリンダ41の先端部は、ブーム31に回動可能に取り付けられる。
【0017】
アームシリンダ42は、ブーム31に対してアーム32を回転駆動させる。アームシリンダ42の基端部は、ブーム31に回動可能に取り付けられる。アームシリンダ42の先端部は、アーム32に回動可能に取り付けられる。
【0018】
バケットシリンダ43は、アーム32に対してバケット33を回転駆動させる。バケットシリンダ43の基端部は、アーム32に回動可能に取り付けられる。バケットシリンダ43の先端部は、バケット33に回動可能に取り付けられたリンク部材に、回動可能に取り付けられる。
【0019】
(周囲監視装置の構成)
周囲監視装置1の回路図である図2に示すように、周囲監視装置1は、走行レバー2と、角度センサ3と、傾斜角センサ4と、カメラ5と、ディスプレイ6と、コントローラ7とを有している。
【0020】
走行レバー2は、キャブ23内に設けられている。走行レバー2は、左右一対で設けられ、作業機械20を操縦する作業者が着座するシートの前方において横並びに配置されている。右側の走行レバー2は、右側のクローラ25に対応し、左側の走行レバー2は、左側のクローラ25に対応している。走行レバー2は、作業者により操作される。本実施形態では、下部走行体21を前進させる際に、走行レバー2の各々が前側に傾動され、下部走行体21を後進させる際に、走行レバー2の各々が後側に傾動される。走行レバー2の一方の傾動量が他方よりも大きい場合には、下部走行体21はカーブ走行する。なお、走行レバー2は走行ペダルを兼ねていてもよい。
【0021】
コントローラ(進行方向検出装置)7は、走行レバー2の傾動量に基づいて、下部走行体21の進行方向を検出する。具体的には、右側の走行レバー2は、右走行操作量センサを備えている。右走行操作量センサは、右側の走行レバー2の操作方向を含む操作量(傾動量)を検出する。同様に、左側の走行レバー2は、左走行操作量センサを備えている。左走行操作量センサは、左側の走行レバー2の操作方向を含む操作量(傾動量)を検出する。右走行操作量センサおよび左走行操作量センサは、角度センサや圧力センサにより構成され、操作量に応じた信号をコントローラ7に出力する。コントローラ7は、検出された左右の走行レバー2の操作量から下部走行体21の進行方向を検出する。
【0022】
角度センサ(旋回角度検出装置)3は、下部走行体21に対する上部旋回体22の旋回角度を検出する。角度センサ3は、例えば、エンコーダ、レゾルバ、又は、ジャイロセンサである。本実施形態では、上部旋回体22の前方が下部走行体21の前方と一致するときの上部旋回体22の旋回角度を0°としている。
【0023】
傾斜角センサ(姿勢検出装置)4は、アタッチメント30の姿勢を検出する。図1にも示すように、傾斜角センサ4は、ブーム傾斜角センサ51と、アーム傾斜角センサ52と、バケット傾斜角センサ53と、を備える。
【0024】
ブーム傾斜角センサ51は、ブーム31に取り付けられ、ブーム31の姿勢を検出する。ブーム傾斜角センサ51は、水平線に対するブーム31の傾斜角度を取得するセンサであり、例えば傾斜(加速度)センサ等である。なお、ブーム傾斜角センサ51は、ブームフットピン(ブーム基端)の回転角度を検出する回転角度センサや、ブームシリンダ41のストローク量を検出するストロークセンサであってもよい。
【0025】
アーム傾斜角センサ52は、アーム32に取り付けられ、アーム32の姿勢を検出する。アーム傾斜角センサ52は、水平線に対するアーム32の傾斜角度を取得するセンサであり、例えば傾斜(加速度)センサ等である。なお、アーム傾斜角センサ52は、アーム連結ピン(アーム基端)の回転角度を検出する回転角度センサや、アームシリンダ42のストローク量を検出するストロークセンサであってもよい。
【0026】
バケット傾斜角センサ53は、リンク部材34に取り付けられ、バケット33の姿勢を検出する。バケット傾斜角センサ53は、水平線に対するバケット33の傾斜角度を取得するセンサであり、例えば傾斜(加速度)センサ等である。なお、バケット傾斜角センサ53は、バケット連結ピン(バケット基端)の回転角度を検出する回転角度センサや、バケットシリンダ43のストローク量を検出するストロークセンサであってもよい。
【0027】
作業機械20を上方から見た図である図3に示すように、カメラ(撮像装置)5は、上部旋回体22に設けられている。カメラ5は、上部旋回体22の周囲を撮像する。カメラ5は、その取付位置において鉛直軸心を中心に水平方向に回転可能である。なお、カメラ5を回転させることで、任意の方向にカメラ5を向かせることができる構成であってもよい。また、カメラ5は、自身を回転させる駆動部を備えていてもよい。駆動部は、例えば、コントローラ7で制御可能な電動モータにより構成される。図3においては、下部走行体21に対する上部旋回体22の旋回角度が90°の状態を図示している。カメラ5は、上部旋回体22の右方にある障害物50を撮像可能である。
【0028】
ディスプレイ(表示装置)6は、キャブ23内に設けられている。ディスプレイ6の画面を示す図である図4A図4Bに示すように、コントローラ(表示制御手段)7は、カメラ5が撮像した画像をディスプレイ6に表示させる。ディスプレイ6には、障害物50が映し出されている。
【0029】
図3に示すように、カメラ5は、キャブ23から見て死角となる領域を撮像する。具体的には、カメラ5は、上部旋回体22の左右方向において、上部旋回体22の中央よりも右側に配置されており、上部旋回体22の右方を撮像する。上述したように、キャブ23は、上部旋回体22の左右方向において、上部旋回体22の中央よりも左側に配置されている。よって、キャブ23内の作業者にとって、上部旋回体22の左方は、視認可能な領域である。そのため、図3に示す状態で下部走行体21が図中左方に走行する場合に、上部旋回体22の左方に障害物があっても、キャブ23内の作業者は、上部旋回体22の後端部が障害物に接触するか否かを目視で判断することができる。一方、キャブ23内の作業者にとって、上部旋回体22の右方は、死角となる領域である。そのため、図3に示す状態で下部走行体21が図中右方(矢印方向)に走行する場合に、上部旋回体22の右方に障害物があっても、キャブ23内の作業者は、上部旋回体22の後端部が障害物に接触するか否かを目視で判断することができない。
【0030】
そこで、コントローラ(通過予想範囲算出手段)7は、角度センサ3が検出した上部旋回体22の旋回角度と、傾斜角センサ4が検出したアタッチメント30の姿勢とに基づいて、カメラ5の撮像方向(矢印方向)に下部走行体21が走行した場合の機械本体24の軌跡の範囲を通過予想範囲として算出する。
【0031】
図4A図4Bに示すように、コントローラ7は、自身が算出した通過予想範囲を示す範囲画像11を、カメラ5が撮像した画像に重畳させてディスプレイ6に表示させる。図4A図4Bに示すように、範囲画像11は、機械本体24の軌跡の幅を表す線a,b、機械本体24の軌跡の高さを表す線c,d、および、機械本体24の軌跡の奥行きを表す線e,f,g,hを含む線画像12を有している。また、範囲画像11は、機械本体24の輪郭を示す輪郭画像13を有している。
【0032】
ここで、図4Aに示す線画像12は、アタッチメント30の姿勢が低い場合の線画像12である。一方、図4Bに示す線画像12は、アタッチメント30の姿勢が高い場合の線画像12である。
【0033】
このように、カメラ5が撮像した画像に範囲画像11を重畳させてディスプレイ6に表示させることにより、カメラ5が撮像した画像に障害物50が含まれる場合に、通過予想範囲内に障害物50があるか否かを、ディスプレイ6を見た作業者に把握させることができる。よって、下部走行体21を走行させた際の上部旋回体22と障害物50との接触を作業者に判断させやすくすることができる。
【0034】
また、通過予想範囲が、線画像12としてディスプレイ6に表示されるので、カメラ5が撮像した画像に重畳される範囲画像11の面積を最小限に抑えることができる。よって、カメラ5が撮像した画像に障害物50が含まれるか否かを作業者に判断させやすくすることができる。
【0035】
また、通過予想範囲が、輪郭画像13としてディスプレイ6に表示されるので、輪郭画像13と障害物50との位置関係から、下部走行体21を走行させた際の上部旋回体22と障害物50との接触を作業者により判断させやすくすることができる。また、輪郭画像13が示す機械本体24の輪郭から、機械本体24の姿勢を作業者に客観的に把握させることができる。
【0036】
また、コントローラ7は、カメラ5の撮像方向に機械本体24から所定距離だけ離れた位置に対応する画像中の位置に、範囲画像11を重畳させて表示させる。これにより、カメラ5が撮像した画像に奥行き感が生じるので、下部走行体21を走行させた際の上部旋回体22と障害物50との接触を作業者により判断させやすくすることができる。上部旋回体22に対してクローラ25が下部走行体21の進行方向に突出する突出量よりも大きな距離が、所定距離として設定される。所定距離は、作業者により変更可能であってもよい。
【0037】
ここで、本実施形態では、下部走行体21が走行し、コントローラ7が検出した下部走行体21の進行方向がカメラ5の撮像方向であることを条件に、コントローラ7は、範囲画像11をディスプレイ6に表示させる。よって、下部走行体21が走行していない場合や、下部走行体21の進行方向がカメラ5の撮像方向でない場合には、範囲画像11がディスプレイ6に重畳表示されない。これらの場合、カメラ5が撮像した画像が範囲画像11で遮られないので、カメラ5が撮像した画像を見やすくすることができる。
【0038】
また、コントローラ(画像方向制御手段)7は、下部走行体21が走行する場合に、ディスプレイ6に表示される画像の向きを、自身が検出した下部走行体21の進行方向と平行にする。具体的には、コントローラ7は、カメラ5が下部走行体21の進行方向を向くように、カメラ5を回転させることで、ディスプレイ6に表示される画像の向きを、下部走行体21の進行方向と平行にする。これにより、上部旋回体21がどのように旋回しようとも、ディスプレイ6に表示される画像の向きが下部走行体21の進行方向となる。よって、下部走行体21の進行方向に障害物50があるか否かを、ディスプレイ6を見た作業者に直感的に理解させることができる。
【0039】
なお、カメラ5を回転させずに、カメラ5が撮像した画像をコントローラ7が補正することで、ディスプレイ6に表示される画像の向きを、下部走行体21の進行方向と平行にしてもよい。
【0040】
なお、図3では、下部走行体21が図中右方に直進する場合を図示している。ここで、下部走行体21が走行しているか否かは、例えば、右走行操作量センサおよび左走行操作量センサからの信号に基づいて判定される。走行レバー2の操作量が閾値以上である場合に、下部走行体21が走行していると判定される。走行レバー2の操作量には、所謂あそびがあり、あそびの範囲内で走行レバー2を傾動させても、クローラ25は走行しない。操作量の閾値とは、クローラ25が走行しないときと走行するときとの境目の操作量である。
【0041】
ここで、作業機械20を上方から見た図である図5に示すように、下部走行体21がカーブ走行する場合、ディスプレイ6の画面を示す図である図6に示すように、コントローラ7は、下部走行体21のカーブ走行に沿って湾曲する範囲画像11をディスプレイ6に表示させる。これにより、下部走行体21がカーブ走行する場合においても、通過予想範囲内に障害物50があるか否かを、ディスプレイ6を見た作業者に把握させることができる。
【0042】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る周囲監視装置1によれば、カメラ5の撮像方向に下部走行体21が走行した場合の機械本体24の軌跡の範囲である通過予想範囲を示す範囲画像11が、カメラ5が撮像した画像に重畳されてディスプレイ6に表示される。これにより、カメラ5が撮像した画像に障害物50が含まれる場合に、通過予想範囲内に障害物50があるか否かを、ディスプレイ6を見た作業者に把握させることができる。よって、下部走行体21を走行させた際の上部旋回体22と障害物50との接触を作業者に判断させやすくすることができる。
【0043】
また、下部走行体21が走行し、その方向がカメラ5の撮像方向であることを条件に、範囲画像11がディスプレイ6に重畳表示される。よって、下部走行体21が走行していない場合や、下部走行体21の進行方向がカメラ5の撮像方向でない場合には、範囲画像11がディスプレイ6に重畳表示されない。これらの場合、カメラ5が撮像した画像が範囲画像11で遮られないので、カメラ5が撮像した画像を見やすくすることができる。
【0044】
また、カメラ5の撮像方向に機械本体24から所定距離だけ離れた位置に対応する画像中の位置に、範囲画像11が重畳されて表示される。これにより、カメラ5が撮像した画像に奥行き感が生じるので、下部走行体21を走行させた際の上部旋回体22と障害物50との接触を作業者により判断させやすくすることができる。
【0045】
また、通過予想範囲が、機械本体24の軌跡の幅を表す線、機械本体24の軌跡の高さを表す線、および、機械本体24の軌跡の奥行きを表す線を含む線画像12としてディスプレイ6に表示される。これにより、カメラ5が撮像した画像に重畳される範囲画像11の面積を最小限に抑えることができる。よって、カメラ5が撮像した画像に障害物50が含まれるか否かを作業者に判断させやすくすることができる。
【0046】
また、通過予想範囲が、機械本体24の輪郭を示す輪郭画像13としてディスプレイ6に表示される。これにより、輪郭画像13と障害物50との位置関係から、下部走行体21を走行させた際の上部旋回体22と障害物50との接触を作業者により判断させやすくすることができる。また、輪郭画像13が示す機械本体24の輪郭から、機械本体24の姿勢を作業者に客観的に把握させることができる。
【0047】
また、下部走行体21が走行する場合に、ディスプレイ6に表示される画像の向きが、下部走行体21の進行方向と平行にされる。これにより、上部旋回体22がどのように旋回しようとも、ディスプレイ6に表示される画像の向きが下部走行体21の進行方向となる。よって、下部走行体21の進行方向に障害物50があるか否かを、ディスプレイ6を見た作業者に直感的に理解させることができる。
【0048】
また、下部走行体21がカーブ走行する場合に、下部走行体21のカーブ走行に沿って湾曲する範囲画像11がディスプレイ6に表示される。これにより、下部走行体21がカーブ走行する場合においても、通過予想範囲内に障害物50があるか否かを、ディスプレイ6を見た作業者に把握させることができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の周囲監視装置について、図面を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態と共通する構成およびそれにより奏される効果については説明を省略し、主に、第1実施形態と異なる点について説明する。なお、第1実施形態と同じ部材については、第1実施形態と同じ符号を付している。
【0050】
(周囲監視装置の構成)
第2実施形態の周囲監視装置101は、作業機械20を上方から見た図である図7に示すように、カメラ5を、撮像方向を互いに異ならせて複数有している。本実施形態では、キャブ23から見て死角となる領域である上部旋回体22の右方を撮像するカメラ5aと、キャブ23から見て死角となる領域である上部旋回体22の後方を撮像するカメラ5bと、を有している。カメラ5bは、上部旋回体22の後端部に配置されている。
【0051】
ディスプレイ6の画面を示す図である図8に示すように、コントローラ7は、カメラ5の各々が撮像した画像を繋ぎ合わせて1つの画像としてディスプレイ6に表示させる。図8の左半分が、カメラ5aが撮像した画像であり、図8の右半分が、カメラ5bが撮像した画像である。これにより、上部旋回体22の後端部と障害物50との位置関係を、ディスプレイ6を見た作業者により広い範囲で把握させることができる。
【0052】
また、コントローラ(障害物情報算出手段)7は、カメラ5が撮像した画像に障害物50が含まれる場合に、障害物50の位置および高さを算出する。そして、コントローラ(判定手段)7は、自身が算出した障害物50の位置および高さに基づいて、障害物50が上部旋回体22(アタッチメント30を含む)に接触するか否かを判定する。
【0053】
図8に示すように、コントローラ7は、上部旋回体22に接触すると自身が判定した障害物50をディスプレイ6に強調して表示させる。具体的には、上部旋回体22に接触すると判定された障害物50を囲う枠画像14がディスプレイ6に重畳表示される。これにより、上部旋回体22に接触する障害物50があることを、ディスプレイ6を見た作業者に直感的に理解させることができる。
【0054】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る周囲監視装置101によれば、上部旋回体22に接触すると判定された障害物50がディスプレイ6に強調して表示される。これにより、上部旋回体22に接触する障害物50があることを、ディスプレイ6を見た作業者に直感的に理解させることができる。
【0055】
また、カメラ5の各々が撮像した画像が繋ぎ合わされて1つの画像としてディスプレイ6に表示される。これにより、上部旋回体22と障害物50との位置関係を、ディスプレイ6を見た作業者により広い範囲で把握させることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0057】
例えば、上記実施形態では、走行レバー2の操作量が閾値以上である場合に、下部走行体21が走行していると判定しているが、これに限定されない。下部走行体21が走行しているか否かは、作業者と走行レバー2との状態が、非相互作用状態から相互作用状態に遷移したことで判定してもよい。ここで、非相互作用状態とは、例えば、作業者が走行レバー2に握っていない状態、または、触れていない状態である。また、相互作用状態とは、例えば、作業者が走行レバー2を握っている状態、または、触れている状態である。また、下部走行体21が走行しているか否かは、作業者により走行レバー2が不感帯において操作されているか否かに基づいて判定してもよい。
【0058】
また、走行レバー2の0ではない操作量が検知されたものの、その大きさが閾値未満である場合、下部走行体21が走行しているか否かは、作業者と走行レバー2と状態が非相互作用状態から相互作用状態に遷移したか否か、または、作業者により走行レバー2が不感帯において操作されているか否かで判定してもよい。こうすることで、作業者が下部走行体21を動作させる意思がある蓋然性が高い一方で下部走行体21がまだ動作を開始していない操作初期段階で、カメラ5が撮像した画像に範囲画像11を重畳してディスプレイ6に表示することができる。これにより、上部旋回体22と障害物50との接触を作業者に判断させやすくすることができる。
【符号の説明】
【0059】
1,101 周囲監視装置
2 走行レバー
3 角度センサ(旋回角度検出装置)
4 傾斜角センサ(姿勢検出装置)
5 カメラ(撮像装置)
6 ディスプレイ(表示装置)
7 コントローラ(表示制御手段、通過予想範囲算出手段、進行方向検出装置、画像方向制御手段、障害物情報算出手段、判定手段)
11 範囲画像
12 線画像
13 輪郭画像
14 枠画像
20 作業機械
21 下部走行体
22 上部旋回体
23 キャブ(運転室)
24 機械本体
25 クローラ
26 カウンタウエイト
30 アタッチメント(作業装置)
31 ブーム
32 アーム
33 バケット
34 リンク部材
40 シリンダ
41 ブームシリンダ
42 アームシリンダ
43 バケットシリンダ
50 障害物
51 ブーム傾斜角センサ
52 アーム傾斜角センサ
53 バケット傾斜角センサ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8