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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】ブレーキホース及び架橋ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20230404BHJP
   C08L 55/04 20060101ALI20230404BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230404BHJP
   F16L 11/10 20060101ALI20230404BHJP
   C08L 23/20 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C08L23/16
C08L55/04
C08K3/04
F16L11/10 A
C08L23/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019235670
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105074
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】久永 寛子
(72)【発明者】
【氏名】寺西 康裕
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-059749(JP,A)
【文献】特開2006-241392(JP,A)
【文献】特開2013-032833(JP,A)
【文献】特開2009-137272(JP,A)
【文献】特開2008-179783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
F16L 9/00-11/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・αオレフィン・ジエンゴムとカーボンブラックとを含むブレーキホース用の架橋ゴム組成物において、
エチレン・αオレフィン・ジエンゴムとして、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)とエチレン・ブテン・ジエンゴム(EBDM)とを含み、EPDM/EBDM質量比が30/70~80/20であり、
カーボンブラックとして、よう素吸着量15~30mg/gかつDBP吸収量100~155cm/100gである特定カーボンブラックのみを含み、
架橋ゴム組成物は、ゲーマン捻り試験におけるT10が-50℃以下であり、体積固有抵抗が1.5×10Ω・cm以上であることを特徴とするブレーキホース用の架橋ゴム組成物。
【請求項2】
橋ゴム組成物は、100%モジュラス(M100)が3.2MPa以上である請求項1記載のブレーキホース用の架橋ゴム組成物。
【請求項3】
少なくとも外皮ゴム層と内管ゴム層と補強糸層とを備え、補強糸層は外皮ゴム層と内管ゴム層の間に位置し、内管ゴム層よりも内側にブレーキフルードを保持するように形成されたブレーキホースにおいて、
外皮ゴム層と内管ゴム層の少なくとも一方が請求項1又は2記載の架橋ゴム組成物からなることを特徴とするブレーキホース。
【請求項4】
少なくとも外皮ゴム層と内管ゴム層と補強糸層とを備え、補強糸層は外皮ゴム層と内管ゴム層の間に位置し、内管ゴム層よりも内側にブレーキフルードを保持するように形成されたブレーキホースにおいて、
外皮ゴム層と内管ゴム層の両方が下記架橋ゴム組成物からなり、
内管ゴム層の架橋ゴム組成物は、オイルを1重量部以上含まないことを特徴とするブレーキホース。

エチレン・αオレフィン・ジエンゴムとカーボンブラックとを含むブレーキホース用の架橋ゴム組成物であって、
エチレン・αオレフィン・ジエンゴムとして、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)とエチレン・ブテン・ジエンゴム(EBDM)とを含み、EPDM/EBDM質量比が30/70~80/20であり、
カーボンブラックとして、よう素吸着量15~33mg/gかつDBP吸収量50~155cm /100gである特定カーボンブラックのみを含み、
架橋ゴム組成物は、ゲーマン捻り試験におけるT10が-50℃以下であり、体積固有抵抗が1.5×10 Ω・cm以上であるブレーキホース用の架橋ゴム組成物。
【請求項5】
特定カーボンブラックは、よう素吸着量15~30mg/gかつDBP吸収量100~155cm /100gである請求項4記載のブレーキホース。
【請求項6】
架橋ゴム組成物は、100%モジュラス(M100)が3.2MPa以上である請求項5記載のブレーキホース。
【請求項7】
オイルを1重量部以上含まない請求項1記載のブレーキホース用の架橋ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキホースと該ブレーキホースのゴム層に用いる架橋ゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブレーキホースは、一般に、少なくとも外皮ゴム層と内管ゴム層と補強糸層とを備え、補強糸層は外皮ゴム層と内管ゴム層の間に位置し、内管ゴム層よりも内側にブレーキフルードを保持するように形成されている。現在では、特許文献1のように、同心上の外側から内側へ順に、外皮ゴム層、補強上糸層、中間ゴム層、補強下糸層及び内管ゴム層からなる5層構造のものが多い。そして、各ゴム層は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)に、剛性等の物性を出すためにカーボンブラックが配合され、加療された架橋ゴム組成物で形成されたものが多い。
【0003】
ブレーキホースの端部には接続用の金属からなる口金が取り付けられている。口金はかしめによりブレーキホースの端部に強固に締結されることで、口金・ホース間をシールしているとともに、ブレーキ液がホース端部からゴム層間の糸層へ侵入しないようにシールしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-230075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴム層は、通常使用下においても、熱劣化等によりシール性が徐々に低下することは避けられない。これに加えて、寒冷地においては、低温でさらに各ゴム層が硬化してゴム弾性が低下し、シール性が低下するため、ブレーキ液がホース端部からゴム層間の糸層へ侵入し、外皮が膨れることがある。
【0006】
また、ゴム層は、上記のとおりカーボンブラックが配合された架橋ゴム組成物で形成されているため、電気伝導性が高い。そのため、口金付近に水が付着すると、ゴム層と口金との間で通電し、口金に電食が生じる懸念がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、低温でもゴム層の硬化・弾性低下・シール性低下が起こりにくく、もって寒冷地でもブレーキ液がホース端部からゴム層間の糸層へ侵入することを防ぐことができるとともに、ゴム層の剛性等の物性を低下させずに電気伝導性を低くでき、もってホース端部に取り付ける口金の電食が生じにくい、優れたブレーキホースを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<1>ブレーキホース用架橋ゴム組成物
エチレン・αオレフィン・ジエンゴムとカーボンブラックとを含むブレーキホース用の架橋ゴム組成物において、
エチレン・αオレフィン・ジエンゴムとして、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)とエチレン・ブテン・ジエンゴム(EBDM)とを含み、EPDM/EBDM質量比が30/70~80/20であり、
カーボンブラックとして、よう素吸着量15~30mg/gかつDBP吸収量100~155cm/100gである特定カーボンブラックのみを含み、
架橋ゴム組成物は、ゲーマン捻り試験におけるT10が-50℃以下であり、体積固有抵抗が1.5×10Ω・cm以上であることを特徴とするブレーキホース用の架橋ゴム組成物。
【0009】
ここで、前記架橋ゴム組成物は、100%モジュラス(M100)が3.2MPa以上であることが好ましい。
【0010】
<2>ブレーキホース
少なくとも外皮ゴム層と内管ゴム層と補強糸層とを備え、補強糸層は外皮ゴム層と内管ゴム層の間に位置し、内管ゴム層よりも内側にブレーキフルードを保持するように形成されたブレーキホースにおいて、
外皮ゴム層と内管ゴム層の少なくとも一方が上記<1>の架橋ゴム組成物からなることを特徴とするブレーキホース。
【0011】
<3>ブレーキホース
少なくとも外皮ゴム層と内管ゴム層と補強糸層とを備え、補強糸層は外皮ゴム層と内管ゴム層の間に位置し、内管ゴム層よりも内側にブレーキフルードを保持するように形成されたブレーキホースにおいて、
外皮ゴム層と内管ゴム層の両方が下記架橋ゴム組成物からなり、
内管ゴム層の架橋ゴム組成物は、オイルを1重量部以上含まないことを特徴とするブレーキホース。
内管ゴム層は、内側のブレーキフルードによってオイルが経年抽出されると物性が変化する。そこで、予めオイルを少なくして物性の変化を小さくするのである。

エチレン・αオレフィン・ジエンゴムとカーボンブラックとを含むブレーキホース用の架橋ゴム組成物であって、
エチレン・αオレフィン・ジエンゴムとして、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)とエチレン・ブテン・ジエンゴム(EBDM)とを含み、EPDM/EBDM質量比が30/70~80/20であり、
カーボンブラックとして、よう素吸着量15~33mg/gかつDBP吸収量50~155cm /100gである特定カーボンブラックのみを含み、
架橋ゴム組成物は、ゲーマン捻り試験におけるT10が-50℃以下であり、体積固有抵抗が1.5×10 Ω・cm以上であるブレーキホース用の架橋ゴム組成物。
【0012】
[作用]
EBDMはEPDMよりも低温での分子運動性が良いため、EPDM/EBDM質量比が30/70~80/20であることにより、加硫ゴムの低温物性が向上する。同比においてEBDMが20未満では同作用が弱くなる。
さらに、EBDMにEPDMをブレンドすると加硫ゴムの屈曲疲労性が向上するため、EPDM/EBDM質量比が30/70~80/20であることにより、加硫ゴムの低温物性が向上するとともに屈曲疲労性が向上する。同比においてEPDMが30未満では屈曲疲労性向上作用が弱くなる。
【0013】
カーボンブラックは、粒子径が大きいとゴム内での分散性が良く、また、ストラクチャーが小さいと粒子間が離れるため、いずれもゴムの電気抵抗が高くなる。
そして、粒子径が大きいほどよう素吸着量が小さい傾向があるから、よう素吸着量は粒子径の指標となる。また、ストラクチャーが大きいほどDBP吸収量が大きい傾向があるから、DBP吸収量はストラクチャーの指標となる。
そこで、本発明では、種々検討のうえ、よう素吸着量(JIS K6217-1:2008)15~33mg/gかつDBP吸収量(JIS K6217-4:2017)50~155cm/100gであるカーボンブラック(より好ましくは、よう素吸着量15~33mg/gかつDBP吸収量50~155cm /100gであるカーボンブラック)を「特定カーボンブラック」として採用するに至った。この特定カーボンブラックはゴム内での分散性に優れるとともに粒子間が離間するため、カーボンブラックとして特定カーボンブラックのみを含むことにより、ゴムの電気抵抗が高くなる。よう素吸着量が15mg/g未満では、後述するHA、TB、M100といった剛性が低下し、33mg/g超では、電気抵抗が低くなる。DBP吸収量が50cm/100g未満では、後述するHA、TB、M100といった剛性が低下し、155cm/100g超では、電気抵抗が低くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低温でもゴム層の硬化・弾性低下・シール性低下が起こりにくく、もって寒冷地でもブレーキ液がホース端部からゴム層間の糸層へ侵入することを防ぐことができるとともに、ゴム層の剛性等の物性を低下させずに電気伝導性を低くでき、もってホース端部に取り付けられた口金の電食が生じにくい、優れたブレーキホースを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は実施例のブレーキホースを示し、(a)は端部を破断した斜視図、(b)は半断面図である。
図2図2は実施例3,6及び比較例2,6で使用したカーボンブラックのよう素吸着量と加硫ゴム組成物の体積固有抵抗の常用対数との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<1>ブレーキホース用架橋ゴム組成物
EPDMは、特に限定されないが、エチレン含量41~69質量%、ジエン含量2.7~14質量%であるものが好ましい。
EBDMは、特に限定されないが、エチレン含量41~69質量%、ジエン含量2.7~14質量%であるものが好ましい。
架橋ゴム組成物は、ゴムポリマーとして、EPDMとEBDMのみを含んでもよいが、EPDMとEBDMに加え他のゴムポリマーを含んでもよい。
【0017】
ゴムポリマー100質量部に対する特定カーボンブラックの配合量は、特に限定されないが、補強性と低電気伝導性とのバランスから50~100質量部が好ましい。特定カーボンブラックの配合が多いほど、組成物の剛性は上昇するが電気伝導性は高くなる。
特に外皮ゴム層の架橋ゴム組成物では、オイルを例えば10重量部以上配合して屈曲疲労性を高めることが好ましいが、その反面、剛性が低下する傾向となるため、特定カーボンブラックの添加量を70~100質量部とすることが好ましい。
特に内管ゴム層の架橋ゴム組成物では、上記のとおりオイルを1重量部以上含まないことが好ましいが、その反面、剛性が上昇しすぎる傾向となるため、特定カーボンブラックの添加量を50~80質量部とすることが好ましい。
架橋ゴム組成物は、ゴムポリマーへの添加物として、特定カーボンブラックのほか、オイル、白色フィラー、脂肪酸、老化防止剤、加工助剤、加硫剤、加硫促進剤等の成分を含んでもよい。加硫剤としては、特に限定されず、硫黄、過酸化物、キノイド架橋剤、樹脂架橋剤、ヒドロシリコーン等を例示できるが、硫黄又は過酸化物が好ましい。
【0018】
<2>ブレーキホース
ブレーキホースの層構造としては、特に限定されないが、次の態様(ア)(イ)を例示できる。
(ア)同心上の外側から内側へ順に、外皮ゴム層、補強糸層及び内管ゴム層からなる3層構造のもの
(イ)同心上の外側から内側へ順に、外皮ゴム層、補強上糸層、中間ゴム層、補強下糸層及び内管ゴム層からなる5層構造のもの
態様(イ)において、中間ゴム層は、本発明の架橋ゴム組成物からなるものでもよいし、従来配合の架橋ゴム組成物(ゴムポリマーはEPDM)からなるものでもよい。
補強糸層は、ブレーキホースの耐圧性を向上させるため、繊維糸を編組してなるものが好ましい。繊維糸の材質としては、特に限定はされないが、ポリビニルアルコール(PVA)やポリエチレンテレフタレート(PET)等を例示できる。
【実施例
【0019】
[外皮ゴム層用の加硫ゴム組成物]
次の表1に示す配合(配合数値は質量部)の実施例1~6及び比較例1~6の各ゴム材料を調製し、後述するとおり混練・成形および加硫して、外皮ゴム層用の加硫ゴム組成物を作製した。
【表1】
【0020】
ここで、使用した各材料の詳細は次のとおりである。
・EPDM:JSR社の商品名「EP27」(エチレン含量54.5質量%、ジエン含量4質量%)である。
・EBDM:三井化学社の商品名「EBT K-8370EM」(エチレン含量50質量%、ジエン含量4.7質量%)である。
・オイル:JXTGエネルギー社の商品名「P400」(プロセスオイル)である。
【0021】
・カーボンブラック:次の表2に、カーボンブラックの成分名、グレード名、よう素吸着量及びDBP吸収量を4種類示すとともに、それぞれに属するカーボンブラックの商品の例を示す。「特定カーボンブラック」に相当するのがSRF級カーボン及びSRF級開発品(未発売)であり、「好ましい特定カーボンブラック」はSRF級開発品である。ここでは、シースト116、シーストSO、シーストS、又はSRF級開発品を使用した。
【0022】
【表2】
【0023】
・非導電フィラー:バーゲスピグメント社の商品名「バーゲスKE」(シラン処理クレイ)である。なお、シリカ、タルク等を加えてもよい。
・加工助剤:花王社の商品名「ルナックS-50V」(脂肪酸)と神戸油化学工業社の商品名「EPタック100」とを併用した。
・加硫促進剤:大内新興化学工業社の商品名「リターダーCTP」と商品名「ノクセラーPX-P」と商品名「ノクセラーM-60-OT」と井上石灰工業社の商品名「META-Z102」(活性亜鉛華)とを併用した。
・加硫剤:ランクセス社の商品名「レノグランS-80」(硫黄)と大内新興化学工業社の商品名「ノックマスターR-80E」(DTDM)とを併用した。
【0024】
[内管ゴム層用の加硫ゴム組成物]
次の表3に示す配合(配合数値は質量部)の実施例7~10及び比較例7,8の各ゴム材料を調製し、後述するとおり混練・成形および加硫して、内管ゴム層用の加硫ゴム組成物を作製した。
【表3】
【0025】
ここで、使用した各材料の詳細は次のとおりである。
・EPDM:JSR社の商品名「EP342」(エチレン含量47質量%、ジエン含量9質量%)である。
・EBDM:三井化学社の商品名「EBT K-9330M」(エチレン含量50質量%、ジエン含量7.2質量%)である。
【0026】
・カーボンブラック:上記表2に示したSRF級開発品である。
・非導電フィラー:加えていないが、シリカ、タルク、クレイ等を加えてもよい。
・加工助剤:花王社の商品名「ルナックS-50V」と、ヒュルス社の商品名「ベステネマー8012」(トランスポリオクテネマー)とを併用した。
・加硫促進剤:大内新興化学工業社の商品名「リターダーCTP」と商品名「ノクセラーPX-P」と商品名「ノクセラーM-60-OT」と正同化学工業社の商品名「AZO」(活性亜鉛華)とを併用した。
・老化防止剤:大内新興化学工業社の商品名「ノクラック224」と商品名「ノクラックMB」とを併用した。
・加硫剤:微粉硫黄(200メッシュ)と大内新興化学工業社の商品名「バルノックR」とを併用した。
【0027】
上記の外皮ゴム層用及び内管ゴム層用の各ゴム組成物を混練し、下記測定に応じた所定の形状に成形し、外皮ゴム層用ゴム組成物については160℃×10分(但しデマッチャ屈曲疲労性の試験片のみ15分)の条件で加硫し、内管ゴム層用ゴム組成物については160℃×15分の条件で加硫した。
加硫後の実施例1~10及び比較例1~8の加硫ゴム組成物について、次の常態物性、ゲーマン捻り試験、体積固有抵抗を測定し、さらに外皮ゴム層用の加硫ゴム組成物についてはデマッチャ屈曲疲労性を測定した。
【0028】
(1)常態物性
硬さ(HA)は、JIS K6253に準拠し、タイプAデュロメータを用いて測定した。
引張強さ(TB)、切断時伸び(EB)、伸び100%時の引張応力(M100)は、JIS K6251:2017に準拠し、測定機は東洋精機社の「STROGRAPH AE」を使用し、試験片はダンベル状5号形とし、室温で引張試験を行って測定した。
【0029】
(2)ゲーマン捻り試験
ゲーマン捻り試験は、JIS K6261-3:2017に準拠し、測定機は東洋精機社の「GEHMAN STIFFNESS TESTER」を使用し、ねじりワイヤは2.8mN・m(標準ワイヤ)を使用し、熱媒体はエタノールとし、-60℃から測定し、規準測定は空気中で実施し、室温時の硬さの10倍に相当する温度T10を求めた。
【0030】
(3)体積固有抵抗
体積固有抵抗は、JIS K6271-1:2015に準拠し、測定機はADVANTEST社の「ULTRA HIGH RESISTANCE METER (R8340A)」と「RESISTIVITY CHAMBER (R12702A)」を使用し、銀ペーストなし、標準二重リング電極とし、試験片は厚さ2.0mmの成形シートから長さ及び幅それぞれ100mmに切り取り、印加電圧1Vにて測定した。
【0031】
(4)デマッチャ屈曲疲労性
デマッチャ屈曲疲労性は、JIS K6260:2017に準拠し、測定機は上島製作所社の「CCDデマチャ屈曲試験機MODEL FT-1513」を使用し、室温にて繰り返し屈曲変形を与えて破断回数を求めた。破断しない場合は50万回で打ち切り「破断なし」とした。
【0032】
[測定結果]
実施例1~10は、ゲーマン捻り試験におけるT10が-50℃以下であり、かつ、体積固有抵抗が1.5×10Ω・cm以上であり、合格と評価できる。
さらに、実施例1~5,7~10は、100%モジュラス(M100)が3.2MPa以上であり、より好ましいと評価できる。
これに対して、比較例1,4,7はT10が高く、比較例2,3,5,6,8は体積固有抵抗が低かった。
【0033】
カーボンブラックの種類のみ相違し、その他の配合は共通である実施例3,6及び比較例2,6の4例について、使用したカーボンブラックのよう素吸着量(メーカー公表値。SRF級開発品については表2に示した範囲の平均値22.5mg/g)と、加硫ゴム組成物の体積固有抵抗の常用対数との関係を、図2に示す。
【0034】
[ブレーキホースの実施例]
図1に示すブレーキホース10は、同心上の外側から内側へ順に、外皮ゴム層1、補強上糸層2、中間ゴム層3、補強下糸層4及び内管ゴム層5からなる5層構造のものである。
外皮ゴム層1は、実施例1~6のいずれかの架橋ゴム組成物で形成されている。
中間ゴム層3は、従来配合の架橋ゴム組成物(ゴムポリマーはEPDM)で形成されているが、実施例1~10の架橋ゴム組成物で形成されていてもよい。
内管ゴム層5は、実施例7~10のいずれかの架橋ゴム組成物で形成されている。
補強上糸層2は、例えば極性を材料的に有しないポリエステル繊維製の撚糸にエポキシ処理して極性を付与してなる繊維糸を、中間ゴム層3の外周にブレード又はスパイラル編みしてなるものである。
と補強下糸層4は、同じく繊維糸を、内管ゴム層5の外周にブレード又はスパイラル編みしてなるものである。
【0035】
ブレーキホース10のホース端部には、金属からなる口金11がかしめ(口金を縮径するように塑性変形させる)により取り付けられている。
【0036】
このブレーキホースは、低温でもゴム層1,5の硬化・弾性低下・シール性低下が起こりにくく、もって寒冷地でもブレーキ液がホース端部からゴム層間の補強上糸層2,補強下糸層4へ侵入することを防ぐことができる。また、ゴム層1,5の剛性等の物性を低下させずに電気伝導性を低くでき、もってホース端部に取り付けられた口金11の電食が生じにくい。
【0037】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 外皮ゴム層
2 補強上糸層
3 中間ゴム層
4 補強下糸層
5 内管ゴム層
10 ブレーキホース
11 口金
図1
図2