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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】有機発光素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/85 20230101AFI20230404BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20230404BHJP
   C07D 471/06 20060101ALI20230404BHJP
   C07F 5/02 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
H10K50/85
H10K85/60
C07D471/06
C07F5/02 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020521608
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 CN2018115705
(87)【国際公開番号】W WO2019100999
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】201711179577.3
(32)【優先日】2017-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201711179753.3
(32)【優先日】2017-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】王 鵬
(72)【発明者】
【氏名】金 光男
(72)【発明者】
【氏名】池田 武史
(72)【発明者】
【氏名】李 進才
(72)【発明者】
【氏名】田中 大作
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-237623(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0133880(US,A1)
【文献】国際公開第2013/179536(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00-33/28
H10K 50/00-99/00
H05B 44/00
H05B 45/60
C07D 471/06
C07F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、第1電極、発光層を含む一層以上の有機層膜、および第2電極を含む有機発光素子において、前記発光素子は被覆層をさらに有し、前記被覆層は低屈折層を含み、前記低屈折層材料は有機小分子化合物であり、前記低屈折層材料はホウ素配位化合物を含有し、前記ホウ素配位化合物は下式1~式3のいずれかに示される化合物であることを特徴とする有機発光素子。
【化1】
式1
ただし、R~Rは同じまたは異なって、それぞれ独立に水素、重水素、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いシクロアルキル基、置換されていても良い複素環基、置換されていても良いアルケニル基、置換されていても良いシクロアルケニル基、置換されていても良いアルキニル基、置換されていても良いアルコキシ基、置換されていても良いアルキルチオ基、置換されていても良いアリールエーテル基、置換されていても良いアリールスルフィド基、置換されていても良いアリール基、置換されていても良いヘテロアリール基、置換されていても良いカルボニル基、置換されていても良いカルボキシル基、置換されていても良いオキシカルボニル基、置換されていても良いカルバモイル基、置換されていても良いアルキルアミノ基または置換されていても良いシラニル基の中の1種または多種から選ばれ、R~Rは同じまたは異なって、それぞれ独立にフッ素、アルコキシ基、アリールエーテル基またはアリール基の中の1種から選ばれ、R~Rを結合して環を形成してもよく、
前記置換される場合には、置換基はそれぞれ独立に重水素、ハロゲン、C1-C15のアルキル基、C3-C15のシクロアルキル基、C3-C15の複素環基、C2-C15のアルケニル基、C4-C15のシクロアルケニル基、C2-C15のアルキニル基、C1-C15のアルコキシ基、C1-C15のアルキルチオ基、C6-C55のアリールエーテル基、C6-C55のアリールスルフィド基、C6-C55のアリール基、C5-C55の芳香族複素環基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、C1-C40のアルキルアミノ基またはC3-C15のケイ素原子数が1-5のシラニル基の中の1種または多種から選ばれる;
【化2】
式2
ただし、R~R14は同じまたは異なって、それぞれ独立に水素、重水素、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いシクロアルキル基、置換されていても良い複素環基、置換されていても良いアルケニル基、置換されていても良いシクロアルケニル基、置換されていても良いアルキニル基、置換されていても良いアルコキシ基、置換されていても良いアルキルチオ基、置換されていても良いアリールエーテル基、置換されていても良いアリールスルフィド基、置換されていても良いアリール基、置換されていても良いヘテロアリール基、置換されていても良いカルボニル基、置換されていても良いカルボキシル基、置換されていても良いオキシカルボニル基、置換されていても良いカルバモイル基、置換されていても良いアルキルアミノ基または置換されていても良いシラニル基の中の1種または多種から選ばれ、R13~R14を結合して環を形成してもよく、R15~R18は同じまたは異なって、それぞれ独立にフッ素、アルコキシ基、アリールエーテル基またはアリール基の中の1種から選ばれ、nは1-3の整数であり、R~Rを結合して環を形成してもよく、R10~R11を結合して環を形成してもよく、
前記置換される場合には、置換基はそれぞれ独立に重水素、ハロゲン、C1-C15のアルキル基、C3-C15のシクロアルキル基、C3-C15の複素環基、C2-C15のアルケニル基、C4-C15のシクロアルケニル基、C2-C15のアルキニル基、C1-C15のアルコキシ基、C1-C15のアルキルチオ基、C6-C55のアリールエーテル基、C6-C55のアリールスルフィド基、C6-C55のアリール基、C5-C55の芳香族複素環基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、C1-C40のアルキルアミノ基またはC3-C15のケイ素原子数が1-5のシラニル基の中の1種または多種から選ばれる;
【化3】
式3
ただし、R19~R30は同じまたは異なって、それぞれ独立に水素、重水素、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いシクロアルキル基、置換されていても良い複素環基、置換されていても良いアルケニル基、置換されていても良いシクロアルケニル基、置換されていても良いアルキニル基、置換されていても良いアルコキシ基、置換されていても良いアルキルチオ基、置換されていても良いアリールエーテル基、置換されていても良いアリールスルフィド基、置換されていても良いアリール基、置換されていても良いヘテロアリール基、置換されていても良いカルボニル基、置換されていても良いカルボキシル基、置換されていても良いオキシカルボニル基、置換されていても良いカルバモイル基、置換されていても良いアルキルアミノ基または置換されていても良いシラニル基の中の1種または多種から選ばれ、R29~R30を結合して環を形成してもよく、R31~R34は同じまたは異なって、それぞれ独立にフッ素、アルコキシ基、アリールエーテル基またはアリール基の中の1種から選ばれ、nは1-3の整数であり、
前記置換される場合には、置換基はそれぞれ独立に重水素、ハロゲン、C1-C6のアルキル基、C3-C6のシクロアルキル基、C3-C6の複素環基、C2-C6のアルケニル基、C4-C6のシクロアルケニル基、C2-C6のアルキニル基、C1-C6のアルコキシ基またはC1-C6のアルキルチオ基の1種または多種から選ばれる。
【請求項2】
前記被覆層は第2電極上にあり、前記被覆層は高屈折層および低屈折層を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記高屈折層の屈折率は1.8以上であり、前記低屈折層の屈折率は1.5-1.7であることを特徴とする請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記高屈折層の屈折率と前記低屈折層の屈折率との差は0.3以上であることを特徴とする請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記高屈折層材料は無機化合物と有機化合物の中の少なくとも1種であり、前記無機化合物はSiO、SiN、ZnS、ZnSe、ZrOまたはTiOの中の1種または多種であり、前記x,yは1~4の整数であり、前記有機化合物は芳香族アミン誘導体、カルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体またはトリアゾール誘導体の中の1種または多種であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光素子。
【請求項6】
式1においてR~Rはフッ素であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項7】
式2においてR15~R18はフッ素であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項8】
式3においてR19~R22およびR24~R27の中に少なくとも三つ以上が水素ではないことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項9】
式3においてR31~R34はフッ素であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項10】
nは1であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機発光素子に関し、特にホウ素配位化合物を応用した後、光取り出し効率を大幅に改善させる有機発光素子に関し、本発明はさらに前記有機発光素子用の発光素子材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は自己発光する表示装置であり、軽量かつ薄くて、広視野角、低消費電力、高コントラスト等の特徴を有する。
【0003】
有機発光素子の発光原理は、電極から注入された正孔と電子が発光層で再結合によって励起状態から基底状態に回復する場合光が発生することである。該発光素子は薄型でかつ低駆動電圧で高輝度に発光して発光材料を選択することによって多色で発光する特徴を有し、このため、注目を集める。
【0004】
Kodak会社のC.W.Tang等による該研究が、有機薄膜素子が高輝度で発光できることを開示してから、その応用に対して、既に数種の研究がある。有機薄膜発光素子は携帯電話のメインディスプレイ等に採用され、その実践的な進歩がなされる。しかし、まだ複数の技術的な問題が存在し、素子の高効率化および低消費電力は大きい課題である。有機発光層から発生する光の発射する方向によって、有機発光素子は底部発射有機発光素子および頂部発射有機発光素子に分けられる。底部発射有機発光素子においては、光が基板側に発射し、有機発光層の上部に反射電極を形成し、有機発光層の下部に透明電極を有する。この場合には、有機発光素子がアクティブマトリックス素子である場合、薄膜トランジスタが形成された部分は不透明であるので、発光面積が減少する。一方、頂部発射有機素子においては、透明電極が有機発光層の上部に形成され、反射電極が有機発光層の下部に形成されるので、光が基板側に反対する方向へ発射し、これによって、光の透過した面積が増加し、輝度を向上させる。
【0005】
従来技術において、頂部発射有機発光素子の発光効率を向上させるために採用された方法は、発光層の光を透過させる上部半透明金属電極に有機被覆層を形成し、これによって光学干渉距離を調整し、外光の反射および表面プラズマのエネルギー伝達による消光等を抑制する(特許文献1~5を参照できる)ことがある。
【0006】
例えば、特許文献2には、頂部発射有機発光素子の上部半透明金属電極に屈折率が1.7以上で、膜厚が600Aである有機被覆層を形成することにより、赤色発光および緑色発光有機発光素子の発光効率を約1.5倍向上させること、用いられた有機被覆層の材料がアミン誘導体、キノリノール錯体等であることが記載される。
【0007】
特許文献4には、エネルギーギャップが3.2eVよりも小さい材料は青色波長に影響をおよぼし、有機被覆層に適さず、使用された有機被覆層材料は特定の化学構造を有するアミン誘導体等であることが記載される。
【0008】
特許文献5には、低CIEy値の青色発光素子を実現するために、有機被覆層材料における波長430nm-460nmでの屈折率変化量は△n>0.08であり、使用された有機被覆層材料は特定の化学構造を有するプリン誘導体等であることが記載される。
【0009】
以上のように、従来技術においては、高屈折率の特定構造を有するアミン誘導体を使用するかまたは特定のパラメータ要求に符合する材料を使用することにより有機被覆層材料により光取り出し効率および色純度を改善したが、特に青色光発光素子を製造する場合には発光効率および色純度を両立するという課題を解決できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2001/039554号
【文献】特開2006-156390号公報
【文献】特開2007-103303号公報
【文献】特開2006-302878号公報
【文献】国際公開第2011/043083号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の発光効率および色純度を両立するという課題を解決するために、本発明者は被覆層が高屈折層および低屈折積層の積層体であり、かつ材料が特定のパラメータを満たす材料を使用し、特に低屈折層材料は特定のパラメータ要求を満たすとともにホウ素配位化合物を含有し、光取り出し効率の向上および色純度の改善を両立するという課題を解決することができることを発見した。本発明によれば、発光取り出し効率を大幅に向上させるとともに優れた色純度を有する有機発光素子を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は有機発光素子を提供し、基板、第1電極、発光層を含む一層以上の有機層膜、および第2電極を含み、前記発光素子は被覆層をさらに有し、前記被覆層は第2電極上にあり、前記被覆層は高屈折層および低屈折層を含み、前記被覆層の低屈折層材料は有機小分子化合物である。その被覆順序は第2電極から順次高屈折層および低屈折層、または順次低屈折層および高屈折層である。
【0013】
前記高屈折層の屈折率は1.8以上であり、低屈折層の屈折率は1.5-1.7である。前記高屈折層の屈折率と低屈折層の屈折率との差は0.3以上である。
【0014】
前記高屈折層は無機化合物および有機化合物の中の少なくとも1種であり、前記無機化合物はSiO、SiN、Zns、ZnSe、ZrOまたはTiOの中の少なくとも1種であり、前記x,yは1~4の整数である。前記有機化合物は芳香族アミン誘導体、カルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体またはトリアゾール誘導体の中の1種または多種である。無機化合物は有機化合物に比べて蒸着プロセスにおいてより高い温度を必要とするので、好ましくは高屈折率材料が有機化合物である。
【0015】
本発明の低屈折層は第1電極と第2電極との間に位置してもよいし、第2電極と被覆層との間に位置してもよいし、さらに第2電極の上に位置してもよい。
【0016】
被覆層が第2電極の上に位置することにより、第2電極と有機発光層を、外部の湿気、酸素および汚染物質の影響を防止するように効果的に保護し、これにより有機発光素子の寿命の短縮を防止することができる。頂部発射発光素子は底部発射発光素子に比べて発光面を拡大する利点を有し、これにより光取り出し効率を向上させる。
【0017】
上記の被覆層材料を使用した発光素子において高発光効率、高色純度を実現するためには、被覆層が低屈折率層を有することが必要である。
【0018】
低屈折層材料として、一般的に長鎖アルカンおよび無機フッ化物等を選択するが、長鎖アルカンは高温で分解しやすく、蒸着手段を利用しにくい。無機フッ化物は蒸着温度が高い問題が存在する。
【0019】
先行技術の中に、π共役構造の芳香族アミン誘導体、カルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体またはトリアゾール誘導体等を選択して低屈折層材料とすることも提案されているが、前記芳香族アミン誘導体は減衰係数が高いので、屈折率が高くて1.7以上に達する。減衰係数と吸光係数は式(A)に示す関係がある。(式において、α:吸光係数、k:減衰係数、ω:光周波数、c:光速)
【0020】
【数1】
【0021】
(A)
式(A)に示すように、減衰係数は吸光係数と比例するため、吸光係数の高い材料は、その減衰係数も高い。このため、上記の材料はいずれも低屈折率材料に適さない。以上の結果に基づいてさらに研究した結果、本発明者は、ホウ素配位化合物が低屈折率材料に適することを発見した。また、ホウ素配位化合物を被覆層に用いた場合良好な透明性があり、発光効率を向上させるとともに高色純度素子を得ることができることをさらに発見した。
【0022】
上記特性を満たす有機材料として、好ましくは被覆層の低屈折層材料はホウ素配位化合物を含有するものである。
【0023】
本発明において、好ましくはホウ素配位化合物は具体的に下記一般式1に示される化合物である。
【0024】
【化1】
【0025】
式1
ただし、R~Rは同じまたは異なって、それぞれ独立に水素、重水素、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いシクロアルキル基、置換されていても良い複素環基、置換されていても良いアルケニル基、置換されていても良いシクロアルケニル基、置換されていても良いアルキニル基、置換されていても良いアルコキシ基、置換されていても良いアルキルチオ基、置換されていても良いアリールエーテル基、置換されていても良いアリールスルフィド基、置換されていても良いアリール基、置換されていても良いヘテロアリール基、置換されていても良いカルボニル基、置換されていても良いカルボキシル基、置換されていても良いオキシカルボニル基、置換されていても良いカルバモイル基、置換されていても良いアルキルアミノ基または置換されていても良いシリル基の中の1種または多種から選ばれ、R~Rは同じまたは異なって、それぞれ独立にフッ素、アルコキシ、アリールエーテル基またはアリール基の中の1種から選ばれ、R~Rを結合して環を形成してもよい。
【0026】
フッ素の導入により屈折率を低減させることができるので、好ましくはR~Rはフッ素である。
【0027】
上記R~Rに示す基において、前記アルキル基は好ましくはC1-C20のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、N-プロピル基、イソプロピル基、N-ブチル基、sec-ブチル基またはtert-ブチル基等の飽和脂肪族炭化水素基の中の1種または多種である。上記アルキル基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0028】
前記シクロアルキル基は好ましくはC3-C20のシクロアルキル基であり、さらに好ましくはシクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、またはアダマンチル基等の飽和脂環式炭化水素基の中の1種または多種である。上記シクロアルキル基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0029】
前記複素環基は好ましくはC3-C20の複素環基であり、さらに好ましくはピラン環、ピペリジン環、または環状アミド等の環内には炭素以外の原子を有する脂肪族環の中の1種または多種である。上記複素環基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0030】
前記アルケニル基は好ましくはC2-C20のアルケニル基であり、さらに好ましくはビニール基、アリル基、またはブタジエニル基等の二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基の中の1種または多種である。上記アルケニル基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0031】
前記シクロアルケニル基は好ましくはC3-C20のシクロアルケニル基であり、さらに好ましくはシクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、またはシクロヘキセニル基等の二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基の中の1種または多種である。上記シクロアルケニルは置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0032】
前記アルキニル基は好ましくはC2-C20のアルキニル基であり、さらに好ましくはエチニル基等の3つの結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基である。上記アルキニル基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0033】
前記アルコキシ基は好ましくはC1-C20のアルコキシ基であり、さらに好ましくはメトキシ基、エトキシ基、またはプロポキシ基等がエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基に結合された官能基の中の1種または多種である。該脂肪族炭化水素基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0034】
前記アルキルチオ基はアルコキシの酸素原子が硫黄原子に置換された基である。好ましくはC1-C20のアルキルチオ基であり、アルキルチオ基のアルキルは置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0035】
前記アリールエーテル基は好ましくはC6-C60のアリールエーテル基であり、さらに好ましくはフェノキシ基等がエーテル結合を介して芳香族炭化水素基に結合された官能基である。アリールエーテル基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0036】
前記アリールスルフィド基はアリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。好ましくはC6-C60のアリールスルフィド基である。アリールスルフィド基における芳香族炭化水素基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0037】
前記アリール基は好ましくはC6-C60のアリール基であり、さらに好ましくはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントレニル基、フェニルトリフェニル基またはピレニル基等の芳香族炭化水素基の中の1種または多種である。アリール基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0038】
前記ヘテロアリール基は好ましくはC4-C60の芳香族複素環基であり、さらに好ましくはフラニル基、チエニル基、ピロール基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ピリジル基またはキノリン基等の中の1種または多種である。芳香族複素環基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0039】
前記ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素から選ばれる。
【0040】
前記カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルアミノ基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。アルキルアミノ置換基の炭素数は特に限定されず、一般的に2以上60以下の範囲である。
【0041】
前記シラニル基は例えばトリメチルシリル等のケイ素原子に結合された結合を有する官能基に示され、シラニル基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。シラニル基の炭素数は特に限定されず、一般的に3以上20以下の範囲である。また、ケイ素数は一般的に1以上6以下の範囲である。
【0042】
前記置換される場合には、置換基はそれぞれ独立に重水素、ハロゲン、C1-C15のアルキル基、C3-C15のシクロアルキル基、C3-C15の複素環基、C2-C15のアルケニル基、C4-C15のシクロアルケニル基、C2-C15のアルキニル基、C1-C15のアルコキシ基、C1-C15のアルキルチオ基、C6-C55のアリールエーテル基、C6-C55のアリールスルフィド基、C6-C55のアリール基、C5-C55の芳香族複素環基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、C1-C40のアルキルアミノ基またはC3-C15のケイ素原子数が1-5のシラニル基の中の1種または多種から選ばれる。
【0043】
上記一般式(1)に示すホウ素配位化合物は、同じまたは異なる置換基を置換して立体障害効果を形成することができ、これにより優れた薄膜安定性を有する。
【0044】
以上の結果から分かるように、被覆層に低屈折率および優れた薄膜安定性を有するホウ素配位化合物を使用することにより、光取り出し効率の向上および経時安定性を両立するという課題を解決することができる。
【0045】
本発明におけるホウ素配位化合物は、好ましくは下式2に示される化合物である。
【0046】
【化2】
【0047】
式2
ただし、R~R14は同じまたは異なって、それぞれ独立に水素、重水素、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いシクロアルキル基、置換されていても良い複素環基、置換されていても良いアルケニル基、置換されていても良いシクロアルケニル基、置換されていても良いアルキニル基、置換されていても良いアルコキシ基、置換されていても良いアルキルチオ基、置換されていても良いアリールエーテル基、置換されていても良いアリールスルフィド基、置換されていても良いアリール基、置換されていても良いヘテロアリール基、置換されていても良いカルボニル基、置換されていても良いカルボキシル基、置換されていても良いオキシカルボニル基、置換されていても良いカルバモイル基、置換されていても良いアルキルアミノ基または置換されていても良いシラニル基の中の1種または多種から選ばれ、R13~R14を結合して環を形成してもよく、R15~R18は同じまたは異なって、それぞれ独立にフッ素、アルコキシ基、アリールエーテル基またはアリール基の中の1種から選ばれ、nは1-3の整数であり、R~Rを結合して環を形成してもよく、R10~R11を結合して環を形成してもよい。
【0048】
前記置換される場合には、置換基はそれぞれ独立に重水素、ハロゲン、C1-C15のアルキル基、C3-C15のシクロアルキル基、C3-C15の複素環基、C2-C15のアルケニル基、C4-C15のシクロアルケニル基、C2-C15のアルキニル基、C1-C15のアルコキシ基、C1-C15のアルキルチオ基、C6-C55のアリールエーテル基、C6-C55のアリールスルフィド基、C6-C55のアリール基、C5-C55の芳香族複素環基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、C1-C40のアルキルアミノ基またはC3-C15のケイ素原子数が1-5のシラニル基の中の1種または多種から選ばれる。
【0049】
フッ素の導入により屈折率を低減させることができるので、好ましくはR15~R18はフッ素である。
【0050】
上記置換基は上記の前記置換基の説明と同じである。
【0051】
Lorentz-Lorent式に示すように、屈折率は分極率および密度と比例する。材料は分極率および密度が小いほど、その屈折率が小さい。
【0052】
【数2】
【0053】
n:屈折率 λ:照射光波長 Pλ:分極率 V:分子体積
上記一般式2に示すホウ素配位化合物は、アルキレンがホウ素配位化合物に接続され、膜密度を低減させることができ、これにより低い屈折率を得ることができる。
【0054】
本発明におけるホウ素配位化合物は、さらに好ましくは下式3に示される化合物である。
【0055】
【化3】
【0056】
式3
ただし、R19~R30は同じまたは異なって、それぞれ独立に水素、重水素、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いシクロアルキル基、置換されていても良い複素環基、置換されていても良いアルケニル基、置換されていても良いシクロアルケニル基、置換されていても良いアルキニル基、置換されていても良いアルコキシ基、置換されていても良いアルキルチオ基、置換されていても良いアリールエーテル基、置換されていても良いアリールスルフィド基、置換されていても良いアリール基、置換されていても良いヘテロアリール基、置換されていても良いカルボニル基、置換されていても良いカルボキシル基、置換されていても良いオキシカルボニル基、置換されていても良いカルバモイル基、置換されていても良いアルキルアミノ基または置換されていても良いシラニル基の中の1種または多種から選ばれ、R29~R30を結合して環を形成してもよい。R31~R34は同じまたは異なって、それぞれ独立にフッ素、アルコキシ基、アリールエーテル基またはアリール基の中の1種から選ばれ、nは1-3の整数である。
【0057】
前記置換される場合には、置換基はそれぞれ独立に重水素、ハロゲン、C1-C6のアルキル基、C3-C6のシクロアルキル基、C3-C6の複素環基、C2-C6のアルケニル基、C4-C6のシクロアルケニル基、C2-C6のアルキニル基、C1-C6のアルコキシ基またはC1-C6のアルキルチオ基の1種または多種から選ばれる。
【0058】
上記置換基は以上の前記置換基の説明と同じである。
【0059】
上記一般式3に示すホウ素配位化合物はアルキレン接続を有するので、立体障害効果を有し、これにより優れた薄膜安定性を有し、かつアルキレン接続構造により、吸光係数を低減させることができ、これにより薄膜は紫外線・可視光範囲内により低い屈折率を得ることができる。さらに好ましくはR19~R30は同じまたは異なって、それぞれ独立に水素、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いシクロアルキル基、置換されていても良いアルコキシ基または置換されていても良いアルキルチオ基の中の1種または多種から選ばれ、それは分極率を低減させる性能を有し、これによりさらに屈折率を低減させることができる。
【0060】
成膜する場合、耐熱性から考えると、好ましくは上記一般式3に示すホウ素配位化合物である。
【0061】
フッ素の導入により屈折率を低減させることができるので、好ましくはR31~R34はフッ素である。
【0062】
また、合成しやすいことおよび抵抗加熱蒸着法等の成膜際の耐熱性から考えると、nは好ましくは1である。
【0063】
また、膜密度の低減および成膜際の耐熱性から考えると、好ましくは置換基はメチル基、エチル基、N-プロピル基、イソプロピル基、N-ブチル基、tert-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基またはN-ブトキシ基の中の1種または多種である。
【0064】
前記アルキルは好ましくはC1-C20のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、N-プロピル基、イソプロピル基、N-ブチル基、sec-ブチル基またはtert-ブチル基等の飽和脂肪族炭化水素基の中の1種または多種である。上記アルキルは置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0065】
前記シクロアルキル基は好ましくはC3-C20のシクロアルキル基であり、さらに好ましくはシクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、またはアダマンチル基等の飽和脂環式炭化水素基の中の1種または多種である。上記シクロアルキル基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0066】
前記複素環基は好ましくはC2-C20の複素環基であり、さらに好ましくはピラン環、ピペリジン環、または環状アミド等の環内には炭素以外の原子を有する脂肪族環の中の1種または多種である。上記複素環基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0067】
前記アルケニル基は好ましくはC2-C20のアルケニル基であり、さらに好ましくはビニール基、アリル基、またはブタジエニル基等の二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基の中の1種または多種である。上記アルケニル基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0068】
前記シクロアルケニル基は好ましくはC3-C20のシクロアルケニル基であり、さらに好ましくはシクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、またはシクロヘキセニル基等の二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基の中の1種または多種である。上記シクロアルケニル基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0069】
前記アルキニル基は好ましくはC2-C20のアルキニル基であり、さらに好ましくはエチニル基等の3つの結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基である。上記アルキニル基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0070】
前記アルコキシ基は好ましくはC1-C20のアルコキシ基であり、さらに好ましくはメトキシ基、エトキシ基、またはプロポキシ基等がエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基に結合された官能基の中の1種または多種である。該脂肪族炭化水素基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0071】
前記アルキルチオ基はアルコキシ基の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。好ましくはC1-C20のアルキルチオ基であり、アルキルチオ基のアルキルは置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0072】
前記アリール基は好ましくはC6-C60のアリール基であり、さらに好ましくはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントレニル基、フェニルトリフェニル基またはピレニル基等の芳香族炭化水素基の中の1種または多種である。アリール基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0073】
前記ヘテロアリール基は好ましくはC4-C60の芳香族複素環基であり、さらに好ましくはフラニル基、チエニル基、ピロール基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ピリジル基またはキノリン基等の中の1種または多種である。芳香族複素環基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0074】
前記アリールエーテル基は好ましくはC6-C40のアリールエーテル基であり、さらに好ましくはフェノキシ基等がエーテル結合を介して芳香族炭化水素基に結合された官能基である。アリールエーテル基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0075】
前記アリールスルフィド基はアリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。好ましくはC6-C60のアリールスルフィド基である。アリールスルフィド基における芳香族炭化水素基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。
【0076】
前記ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素から選ばれる。
【0077】
前記カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルアミノ基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。アルキルアミノ置換基の炭素数は特に限定されず、一般的に2以上60以下の範囲である。
【0078】
上記シラニル基は例えばトリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルtert-ブチルシリル、トリフェニルシリル等のケイ素原子に結合された結合を有する官能基と示され、シラニル基は置換基を有してもよいし、置換基を有しなくても良い。シラニル基の炭素数は特に限定されず、一般的に1以上40以下の範囲である。
【0079】
前記置換される場合には、置換基はそれぞれ独立に重水素、ハロゲン、C1-C6のアルキル基、C3-C6のシクロアルキル基、C3-C6の複素環基、C2-C6のアルケニル基、C4-C6のシクロアルケニル基、C2-C6のアルキニル基、C1-C6のアルコキシ基またはC1-C6のアルキルチオ基の中の1種または多種から選ばれる。
【0080】
本発明により提供されるホウ素配位化合物は、優れた薄膜安定性と低屈折率を有し、発光効率を向上させるとともに色純度を改善する課題を解決することができる。
【0081】
前記ホウ素配位化合物は特に限定されず、好ましくは以下の例を挙げる。
【0082】
【化4】
【0083】
【化5】
【0084】
【化6】
【0085】
【化7】
【0086】
【化8】
【0087】
【化9】
【0088】
【化10】
【0089】
【化11】
【0090】
【化12】
【0091】
上記一般式1、2、3に示すホウ素配位化合物の合成は公知の方法を利用して行うことができる。例えば有機ホウ素試薬およびエチレンジアミン(サリチルを含む)誘導体反応等があるが、これらの方法に限定されない。
【0092】
以下、本発明の有機発光素子の実施形態を具体的に説明する。本発明の有機発光素子は順次基板、第1電極、発光層を含む一層以上の有機層膜、前記発光層の発生した光を透過させる第2電極および被覆層を有し、発光層は電力によって発光する。
【0093】
本発明の発光素子において、用いられる基板は好ましくはソーダガラスまたはアルカリフリーガラス等のガラス基板である。ガラス基板の厚さは機械的強度の厚さを保持すればよく、このため、0.5mm以上であれば良い。ガラスの材質に対して、ガラスから溶解したイオンが少ないほど良く、このため、好ましくはアルカリフリーガラスである。また、市販のSiO等により保護コーティングされたものを使用してもよい。なお、第1電極が安定的に機能を発揮すれば、基板は必ずしもガラスである必要はなく、例えば、プラスチック基板に陽極を形成しても良い。
【0094】
第1電極に使用される材料は好ましくは高屈折率の特性を有する金、銀、アルミニウム等の金属またはAPC系合金のような金属合金である。これらの金属または金属合金は多層積層であってもよい。なお、金属、金属合金またはそれらの積層体の上および/または下に酸化スズ、酸化インジウム、酸化スズインジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の透明導電性金属酸化物を積層してよい。
【0095】
第2電極に使用される材料は好ましくは光を透過できる半透明または透明膜を形成できる材料である。例えば、銀、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムまたはこれらの金属の合金、酸化スズ、酸化インジウム、酸化スズインジウム(ITO)または酸化亜鉛インジウム(IZO)等の透明導電性金属酸化物がある。これらの金属、合金または金属酸化物は多層積層されたものであってもよい。
【0096】
上記電極の形成方法は抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンスプレーメッキまたはグルーコーティング法等であってよく、特に限定されない。なお、第1電極と第2電極は使用された材料の仕事関数によって、一方は有機膜層に対して陽極として働き、他方は陰極役割として働く。
【0097】
有機層は発光層のみで構成することができる以外、さらに1)正孔輸送層/発光層、2)発光層/電子輸送層、3)正孔輸送層/発光層/電子輸送層、4)正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層、5)正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層等を積層してなる構成であってもよい。なお、上記各層はそれぞれ単層または多層の中の任意の1種であってよい。1)~5)の構造を採用する場合、陽極側電極は正孔輸入層または正孔輸送層に接合され、陰極側電極は電子輸入層または電子輸送層に接合される。
【0098】
正孔輸送層は正孔輸送材料の1種または2種以上を積層または混合する方法、または正孔輸送材料および高分子接着剤の混合物を使用する方法によって形成されることができる。正孔輸送材料は電場を加えた電極の間に陽極からの正孔を高効率に輸送する必要があり、このため、正孔注入効率が高くて、注入された正孔を高効率に輸送することができることが望ましい。このため、正孔輸送材料が適当なイオンポテンシャルを有し、かつ正孔遷移率が大きくて、さらに、安定性がよく、製造および使用する場合トラップになる不純物が発生しにくいことが求められる。このような条件に満たす物質は特に限定されず、例えば4,4’-ビス(N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ)ビフェニル(TPD)、4,4’-ビス(N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ)ビフェニル(NPD)、4,4’-ビス(N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ)ビフェニル(TBDB)、ビス(N,N-ジフェニル-4-フェニルアミノ)-N,N-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル(TPD232)等のベンジジン、4,4’,4’’-トリス(3-メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)、4,4’,4’’-トリス(1-ナフチル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミン(1-TNATA)等のスター型トリアリールアミンと呼ばれる材料群、カルバゾール骨格を有する材料であってよく、そのうち好ましくはカルバゾール系マルチマーであり、具体的にビス(N-アリールカルバゾール)またはビス(N-アルキルカルバゾール)等のジカルバゾール誘導体、トリカルバゾール誘導体、テトラカルバゾール誘導体、トリフェニル系化合物、ピラゾリン誘導体、スティルベン系化合物、ヒドラジン系化合物、ベンゾフラン誘導体、チオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の複素環化合物、またはフラーレン誘導体を挙げることができる。ポリマー系において、さらに好ましくは側鎖に上記モノマーのポリカーボネートまたはスチレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾールおよびポリシラン等を有する。なお、さらにP型Si、P型SiC等の無機化合物を使用することができる。
【0099】
陽極と正孔輸送層との間に正孔注入層を設置することができる。正孔注入層を設置することにより、有機発光素子に低駆動電圧を実現させることができ、耐久寿命を向上させる。好ましくは正孔注入層は一般的に正孔輸送層材料のイオンポテンシャルよりも低い材料を使用する。具体的に、例えば上記TPD232ようなビフェニルアミン誘導体、スター型トリアリールアミン材料群であってよく、また、フタロシアニン誘導体等を使用してもよい。なお、さらに好ましくは正孔注入層は受容体化合物で単独に構成され、または受容体化合物は他の正孔輸送層にドーピングして使用される。受容体化合物は例えば塩化第二鉄(III)、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、塩化アンチモン等の金属塩化物、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化イットリウム等の金属酸化物、トリス(4-ブロモフェニル)ヘキサクロロアンチモン酸アンモニウム(TBPAH)等の電荷移動リガンドを挙げることができる。なお、さらに分子内にニトロ基、シアノ基、ハロゲンまたはトリフルオロメチル基を有する有機化合物、キノン系化合物、無水物系化合物またはフラーレン等を有しても良い。
【0100】
本発明において、発光層は単層、多層の中の任意の1種であってよく、それぞれ発光材料(ホスト材料、ドーピング材料)で形成されることができ、ホスト材料およびドーピング材料の混合物であってもよく、ホスト材料のみであってもよく、いずれの場合であってもよい。即ち、本発明の発光素子の各発光層において、ホスト材料のみまたはドーピング材料のみで発光してもよく、ホスト材料およびドーピング材料が一緒に発光してもよい。電力を高効率に利用して、高色純度の発光を得る観点から考えると、好ましくは発光層はホスト材料とドーピング材料を混合してなる。また、ホスト材料およびドーピング材料はそれぞれ1種であってもよいし、多種の組み合わせであっても良く、いずれの場合であってもよい。ドーピング材料は全体のホスト材料に添加されてもよいし、一部に添加されてもよく、いずれの場合であってもよい。ドーピング材料は積層されたものであってもよく、分散されたものであってもよく、いずれの場合であってもよい。ドーピング材料は発光色を制御することができる。ドーピング材料の量が多すぎる場合濃度消光現象が発生し、このため、その使用量はホスト材料に対して、好ましくは20重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以下である。ドーピング方法はホスト材料に共蒸着する方法であってもよいし、予めホスト材料に混合した後同時に蒸着する方法であってもよい。
【0101】
発光材料として、具体的には、従来の発光体として公知のアントラセン、ピレン等の縮合環誘導体、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム等の金属キレート類ヒドロキシキノリン化合物、ジベンゾフラン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリマーの中のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、およびポリチオフェン誘導体等を使用することができ、特に限定されない。
【0102】
発光材料に含まれたホスト材料は特に限定されず、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ベンゾフェナントレン、テトラセン、ペリレン、ベンゾ[9,10]フェナントレン、フルオランテン、フルオレン、インデン等の縮合芳香環を有する化合物またはその誘導体、N,N’-ジナフチル-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジフェニル-1,1’-ジアミン等の芳香族アミン誘導体、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム等の金属キレート類ヒドロキシキノリン化合物、ピロロピロール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、トリアジン誘導体を使用することができる。ポリマーにおいて、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体等を使用することができ、特に限定されない。
【0103】
なお、ドーピング材料は特に限定されず、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ベンゾフェナントレン、ペリレン、ベンゾ[9,10]フェナントレン、フルオランテン、フルオレン、インデン等の縮合芳香環を有する化合物またはその誘導体(例えば2-(ベンゾチアゾール-2-イル)-9,10-ジフェニルアントラセン等)、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9-シラフルオレン(silafluorene)、9,9’-スピロビシラフルオレン(silafluorene)、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピリジン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン、チオキサンテン等の複素芳香環を有する化合物またはその誘導体、ボラン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、アミノスチリル誘導体、ピロールメチン誘導体、ジケトピロロ[3,4-c]ピロール誘導体、クマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール等のアゾール誘導体、芳香族アミン誘導体等を使用することができる。
【0104】
また、発光層には燐光発光材料をドーピングしてもよい。燐光発光材料は室温でも燐光で発光できる材料である。燐光発光材料を使用してドーパントとする場合、基本的に室温で燐光発光することができる必要があるが、特に限定されず、好ましくはインジウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、プラチナ、オスミウムおよびレニウムの中の少なくとも1種の金属から選ばれる有機金属錯体化合物を含む。室温で高い燐光発光効率を有する観点から考えると、さらに好ましくはインジウムまたはプラチナを有する有機金属錯体である。燐光発光性ドーパントと組み合わせて使用するホスト材料として、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ピリジン、ピリミジン、トリアジン骨格を有する含窒素芳香族化合物誘導体、ポリアリールベンゼン誘導体、スピロフルオレン誘導体、トルクセン(Truxene)、ベンゾ[9,10]フェナントレン等の芳香族炭化水素化合物誘導体,ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン等の酸素元素を含む化合物、ヒドロキシキノリンベリリウム錯体等の有機金属錯体を良く使用することができるが、基本的に使用されたドーパントの三重項エネルギーが大きくて、電子および正孔がそれぞれの層の輸送層から順調に注入または輸送されることができるものであれば、特に限定されない。また、2種以上の三重項発光ドーパントを含有してもよいし、2種以上のホスト材料を含有してもよい。なお、1種以上の三重項発光ドーパントおよび1種以上の蛍光発光ドーパントを含有してもよい。
【0105】
本発明において、電子輸送層は電子が陰極から注入されて、さらに電子を輸送する層である。電子輸送層は好ましくは高い電子注入効率を有し、かつ注入された電子を高効率に輸送することができる。このため、電子輸送層は好ましくは電子親和力および電子遷移率が大くてかつ安定性に優れ、製造および使用する場合トラップになる不純物が発生しにくい物質からなる。しかし、正孔および電子の輸送バランスを考えると、もし電子輸送層が陽極からの正孔が、陰極側に流れて再結合することを高効率に阻止する役割を主に発揮する場合、電子輸送能力があまり高くない材料で構成されても、発光効率を改善する効果は電子輸送能力の高い材料で構成される場合と等しい。このため、本発明における電子輸送層において、正孔遷移を高効率に阻止する正孔阻止層は等価物としても含まれる。
【0106】
電子輸送層に使用された電子輸送材料は特に限定されず、ナフタレン、アントラセン等の縮合芳香環誘導体、4,4’-ビス(ジフェニルビニール)ビフェニルを代表としてのスチレン系芳香環誘導体、アントラセンキノン、ビフェニルキノン等のキノン誘導体、ホスフィンオキシド誘導体、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム等のヒドロキシキノリン錯体、ベンゾヒドロキシキノリン錯体、ヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、シクロヘプタジオロン金属錯体またはフラボノール金属錯体を挙げることができる。駆動電圧を低減させ、高効率の発光を得ることができる観点から考えると、好ましくは複素芳香環構造を有する化合物を使用し、前記複素芳香環構造は炭素、水素、窒素、酸素、シリコン、リンから選ばれる元素から構成されて電子吸引性窒素を含有する。
【0107】
電子吸引性窒素を含有するヘテロ芳香環は高電子親和性を有する。電子吸引性窒素を有する電子輸送材料は高電子親和性を有する陰極からの電子を受けやすいので、発光素子の駆動電圧を低減させることができる。なお、発光層への電子供給量が増大し、発光層に再結合する確率が増加し、このため、発光効率を向上させる。電子吸引性窒素を含有するヘテロ芳香環として、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、ピリミドピリミジン環、ベンゾキノリン環、フェナントロリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、またはフェナントレンイミダゾール環等を挙げることができる。
【0108】
また、これらのヘテロ芳香環構造を有する化合物として、例えばベンズイミダゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン、トリプルピリジン等のオリゴマーピリジン誘導体を挙げることができる。上記誘導体は縮合芳香環骨格を有する場合、ガラス転移温度を向上させ、かつ電子遷移率を増加させ、これにより、発光素子の駆動電圧を低減させる効果を増大させるため好ましい。なお、発光素子の耐久寿命を向上させ、合成しやすく、原料を購買しやすい観点から考えると、好ましくは上記縮合芳香環骨格はアントラセン骨格、ピレン骨格またはフェナントロリン骨格である。
【0109】
上記電子輸送材料は単独的に使用されてもよいし、2種以上の上記電子輸送材料を混合して使用されてもよく、または1種以上の他の電子輸送材料を上記電子輸送材料に混合して使用されてもよい。また、ドナー化合物を添加してもよい。ここで、ドナー化合物とは電子注入エネルギー障壁を改善することによって電子を陰極または電子注入層から電子輸送層へ注入しやすくして、さらに電子輸送層の電気伝導度を改善する化合物である。本発明のドナー化合物の好ましい例として、アルカリ金属、アルカリ金属を含む無機塩、アルカリ金属と有機物との錯体、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属を含む無機塩、またはアルカリ土類金属と有機物との錯体等を挙げることができる。アルカリ金属、またはアルカリ土類金属の好ましい種類として、低仕事関数かつ電子輸送能力を改善する効果が大きいリチウム、ナトリウム、またはセシウムようなアルカリ金属またはマグネシウム、カルシウムようなアルカリ土類金属を挙げることができる。
【0110】
本発明において、陰極と電子輸送層との間に電子注入層を設置してもよい。一般的に、電子注入層は電子を陰極から電子輸送層に注入するために挿入されるものであり、電子吸引性窒素の複素芳香環構造を含む化合物を使用してもよいし、上記ドナー化合物を含む層を使用してもよい。また、電子注入層において、絶縁体または半導体の無機物をさらに使用することができる。これらの材料を使用して、発光素子の短絡を効果的に防止することができ、かつ電子注入性を向上させることができるため、好ましい。これらの絶縁体として、好ましくはアルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属ハロゲン化物およびアルカリ土類金属ハロゲン化物の中の少なくとも1種から選ばれる金属化合物を使用する。また、有機物と金属の錯体も好ましく使用される。
【0111】
発光素子を構成する上記各層の形成方法として、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法またはコーティング法等を挙げることができ、特に限定されない。しかし、一般的に、素子特性の観点から考えると、抵抗加熱蒸着または電子ビーム蒸着が好ましい。
【0112】
有機層の厚さは発光物質の抵抗値によって異なり、限定されないが、好ましくは1~1000nmである。発光層、電子輸送層、正孔輸送層の膜厚はそれぞれ好ましくは1nm以上200nm以下であり、さらに好ましくは5nm以上100nm以下である。
【0113】
本発明の被覆層は上記のホウ素含有配位化合物を含有することによって、高発光効率を実現することができる。ホウ素配位化合物はアルキレン接続を有するとともにフッ素元素を有するので、低い屈折率を有する。さらに、ホウ素配位化合物は良好な蒸着薄膜の成膜性能を有するので、底層がガラスまたは金属等のどのような底層であっても安定的な屈折率および減衰係数を有する。蒸着薄膜の成膜性能の低い材料の底層が変化する場合、屈折率および減衰係数も大きく変化することがある。発光効率を最大化させ、色再現性を実現するために、好ましくはホウ素含有配位化合物を20nm~120nmの厚さで積層する。さらに好ましくは積層厚さは40nm~80nmである。また、発光効率を最大化することができる観点から考えると、さらに好ましくは積層厚さは50nm~70nmである。
【0114】
被覆層の形成方法は特に限定されない。抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、コーティング法、インクジェット法、スクレーパー法またはレーザー転写法等を挙げることができ、特に限定されない。
【0115】
本発明の発光素子は電力を光に転換することができる機能を有する。ここで、電力としては、直流電流が主に使用されるが、パルス電流または交流電流を使用してもよい。電流値および電圧値は特に限定されないが、素子の消費電力および寿命を考える場合、できるだけ低いエネルギーで最大輝度を得るように選択すべきである。
【0116】
本発明の発光素子は例えばマトリックスおよび/またはフィールドモードで表示するフラットパネルディスプレイとして良く使用されてよい。
【0117】
マトリックスモードとは表示するための画素が格子状またはモザイク状等で二次元配置され、画素の集合によって文字または画像を表示するものである。画素の形状、サイズは用途に応じて決められる。例えば、コンピュータ、モニター、テレビの画像および文字表示において、辺長が300μm以下の四角形の画素を一般的に使用し、また、ディスプレイパネルような大型ディスプレイの場合には、辺長がmmレベルである画素を使用する。モノクロ表示する場合には、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示する場合には、赤、緑、青色画素を配列して表示する。この場合には、代表的に三角形状およびストライプ状がある。かつ、該マトリックスの駆動方法はライン単位駆動方法およびアクティブマトリックスの中の任意の1種であってよい。ライン単位駆動はその構造が簡単であるが、操作特性を考える場合、アクティブマトリックスが優れる場合がある。このため、用途に応じて柔軟に使用する必要がある。
【0118】
本発明におけるフィールドモードとはパターンを形成して、該パターンの配置によって確定された領域を発光させ、これにより予め確定された情報を表示するモードである。例えば、デジタル時計、温度計における時刻、温度表示、オーディオ機器、電磁調理器等の作動状態表示および自動車のパネル表示等を挙げることができる。かつ、前記マトリックス表示およびフィールド表示は同一のパネルに共存してよい。
【発明の効果】
【0119】
本発明の発光素子は好ましくは照明光源として、従来のものよりも薄くて軽く、面発光を行うことができる光源を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0120】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に挙げられたホウ素配位化合物および合成方法に限定されない。
【0121】
実施例および比較例で使用される材料および方法は、他に特定されない限り、当業者に一般的に知られているように入手または使用される。
【0122】
実施例と比較例の中に使用されたトルエン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ジクロロメタン、炭酸ナトリウム3,5-ジ-tert-ブチルサリチルアルデヒド、三フッ化ホウ素エーテラート等は中国医薬集団総公司から購買される。
【0123】
H-NMRスペクトルはJEOL(400MHz)核磁気共鳴装置で測定され、HPLCスペクトルは島津LC-20AD高性能液体メーターで測定される。
【0124】
実施例および比較例において下記の化合物を合成および/あるいは使用した:
化合物[10]:B-ビフェニル-N-ビフェニル-3-ビフェニル-2-アザ6-オキシシクロヘキサンボラン
化合物[51]:[[[2,2’-[1,2-エタンジ[(三価窒素)メチン]]ビス[4,6-ビス(tert-ブチル)フェノール]](2-)]]テトラフルオロジボロン
化合物[53]:[[[2,2’-[1,2-エタンジ[(三価窒素)メチン]]ビス[5-N,N’-ジエチルアミンフェノール]](2-)]]テトラフルオロジボロン
化合物[55]:[[[2,2’-[1,2-エタンジ[(三価窒素)メチン]]ビス[5-メトキシフェノール]](2-)]]テトラフルオロジボロン
化合物[69]:[[[2,2’-[1,2-エタンジ[(三価窒素)ジメチレンメチン]]ビス[4,6-ビス(tert-ブチル)フェノール]](2-)]]テトラメトキシジボロン
化合物[70]:[[[2,2’-[1,2-エタンジ[(三価窒素)ジメチレンメチン]]ビス[5-N,N’-ジエチルアミンフェノール]](2-)]]テトラフルオロジボロン
化合物[118]:[[[2,2’-[1,2-ビス(三価窒素)シクロヘキシル]ビス[4,6-ビス(tert-ブチル)フェノール]](2-)]]テトラフルオロジボロン
化合物[124]:[[[2,2’-[1,2-ビス(三価窒素)シクロヘキシル]ビス[5-N,N’-ジエチルアミンフェノール]](2-)]]テトラフルオロジボロン
化合物[136]:[[[2,2’-2 -[1-エタンジ[(三価窒素)エテニル]メチルアミン]ビス[4,6-ビス(tert-ブチル)フェノール]](2-)]]テトラフルオロジボロン
化合物[141]:[[[2,2’-2 -[1-エタンジ[(三価窒素)エテニル]メチルアミン]ビス[ジエチルアミンフェノール]](2-)]]テトラフルオロジボロン
化合物[154]:3,3’-(1,4-ブタンジイル)ジ[3-,5-ビス(フェニル)-3,4-ジヒドロ-2-ジフルオロ3-アザ-6オキサ-シクロヘキシルボラン
化合物[159]:[[[2,2’-[1,2-ジブチル[(三価窒素)メチン]]ビス[4,6-ビス(tert-ブチル)フェノール]](2-)]]テトラフルオロジボロン
化合物[160]:3,3’-(1,4-ブタンジイル)-N,N’-フェニル-ジフルオロ3,6-アザ-シクロヘキシルボラン
【0125】
【化13】
【0126】
実施例および比較例においても以下の化合物を使用した:
BF3・EtO:三フッ化ホウ素エーテラート錯体
DIEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
NPD:(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(1-ナフチル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン)
【0127】
【化14】
【0128】
F4-TCNQ(2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7’,8,8’-テトラシアノジメチルp-ベンゾキノン)
【0129】
【化15】
【0130】
BH:(9-(2-ナフチル)-10-(4-(1-ナフチル)フェニル)アントラセン)
【0131】
【化16】
【0132】
BD:(E-7-(4-(ジフェニルアミノ)スチリル)-N,N-ジフェニル-9,9’-ジメチルフルオレン基-2-アミン)
【0133】
【化17】
【0134】
Alq3:(トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム)
【0135】
【化18】
【0136】
TBDB:(N,N,N’,N’-4(4-ビフェニル)ビフェニルジアミン)
【0137】
【化19】
【0138】
本明細書に記載の化合物に関して、本明細書にはその化学的な命名および構造式が同時に記載される場合には、化合物の構造は構造式を標準とする。
【0139】
製造例1
化合物[51]の合成
窒素雰囲気下で、反応容器にN,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルサリチリデン)-1,2エチレンジアミン15.0g(30mmol)、三フッ化ホウ素-エーテル錯体21.6g(152mmol)、トルエン300ml、N,N-ジイソプロピルエチルアミン20g(152mmol)を加え、40℃で2.5時間加熱攪拌する。室温まで冷却し、300mlの水を加え、濾液を有機層および水層に分けて、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。得られた固体をトルエン(150ml)およびエタノール(750ml)で再結晶化し、17.89gの粗生成物を得る。粗生成物を圧力3×10-3Pa、温度220℃で昇華して化合物[51](淡黄色の固体)を得る。
【0140】
HNMR(DMSO):δ8.28~7.10(s,6H),4.31~4.27(m,4H),1.57~1.40(m,36H).
HPLC(純度=99.0%)。
【0141】
製造例2
化合物[53]の合成
窒素雰囲気下で、反応容器に2,2’-[1,2-エチレンジイルビス(ニトリロメチルメチレン)]ビス[5-(ジエチルアミノ)]フェノール12.32g(30mmol)、三フッ化ホウ素-エーテル錯体21.6g(152mmol)、トルエン300ml、N,N-ジイソプロピルエチルアミン20g(152mmol)を加え、40℃で2.5時間加熱攪拌する。室温まで冷却し、300mlの水を加え、濾液を有機層および水層に分けて、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。得られた固体をトルエン(150ml)およびエタノール(750ml)で再結晶化し、20.35gの粗生成物を得る。粗生成物を圧力3×10-3Pa、温度215℃で昇華して化合物[53](淡黄色の固体)を得る。
【0142】
HNMR(DMSO):δ8.40~7.15(s,8H),4.30~4.27(m,4H),3.70~3.82(m,8H),1.21~1.30(m,12H).
HPLC(純度=98.9%)。
【0143】
製造例3
化合物[55]の合成
窒素雰囲気下で、反応容器に2,2’-[1,2-エチレンジイルビス(ニトリロメチルメチレン)]ビス[5-メトキシ]フェノール9.85g(30mmol)、三フッ化ホウ素-エーテル錯体21.6g(152mmol)、トルエン300ml、N,N-ジイソプロピルエチルアミン20g(152mmol)を加え、40℃で2.5時間加熱攪拌する。室温まで冷却し、300mlの水を加え、濾液を有機層および水層に分けて、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。得られた固体をトルエン(150ml)およびエタノール(750ml)で再結晶化し、17.56gの粗生成物を得る。粗生成物を圧力3×10-3Pa、温度220℃で昇華して化合物[55](淡黄色の固体)を得る。
【0144】
HNMR(DMSO):δ8.35~7.10(s,8H),4.29~4.26(m,4H),3.80~3.85(s,6H).
HPLC(純度=99.2%)。
【0145】
製造例4
化合物[69]の合成
窒素雰囲気下で、反応容器に2,2’-[(1,1,2,2-テトラメチル-1,2-エタンジイル)ビス(ニトロメチルアルキル)]ビス[4,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)]フェノール16.46g(30mmol)、三フッ化ホウ素-エーテル錯体21.6g(152mmol)、トルエン300ml、N,N-ジイソプロピルエチルアミン20g(152mmol)を加え、40℃で2.5時間加熱攪拌する。室温まで冷却し、300mlの水を加え、濾液を有機層および水層に分けて、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。得られた固体をトルエン(150ml)およびエタノール(750ml)で再結晶化し、18.78gの粗生成物を得る。粗生成物を圧力3×10-3Pa、温度225℃で昇華して化合物[69](淡黄色の固体)を得る。
【0146】
HNMR(DMSO):δ8.30~7.10(s,6H),1.55~1.37(m,12H),1.57~1.40(m,36H).
HPLC(純度=99.4%)。
【0147】
製造例5
化合物[70]の合成
窒素雰囲気下で、反応容器に2,2’-[(1,1,2,2-テトラメチル-1,2-エタンジイル)ビス(ニトロメチルアルキル)]ビス[5-(ジエチルアミノ)]フェノール14.00g(30mmol)、三フッ化ホウ素-エーテル錯体21.6g(152mmol)、トルエン300ml、N,N-ジイソプロピルエチルアミン20g(152mmol)を加え、40℃で2.5時間加熱攪拌する。室温まで冷却し、300mlの水を加え、濾液を有機層および水層に分けて、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。得られた固体をトルエン(150ml)およびエタノール(750ml)で再結晶化し、16.55gの粗生成物を得る。粗生成物を圧力3×10-3Pa、温度230℃で昇華して化合物[70](淡黄色の固体)を得る。
【0148】
HNMR(DMSO):δ8.30~7.10(s,8H),3.70~3.82(m,8H),1.55~1.37(m,12H),1.21~1.30(m,12H).
HPLC(純度=98.9%)。
【0149】
製造例6
化合物[118]の合成
窒素雰囲気下で、反応容器にN,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルサリチリデン)-1,2-シクロヘキサンジアミン16.40g(30mmol)、三フッ化ホウ素-エーテル錯体21.6g(152mmol)、トルエン300ml、N,N-ジイソプロピルエチルアミン20g(152mmol)を加え、40℃で2.5時間加熱攪拌する。室温まで冷却し、300mlの水を加え、濾液を有機層および水層に分けて、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。得られた固体をトルエン(150ml)およびエタノール(750ml)で再結晶化し、18.16gの粗生成物を得る。粗生成物を圧力3×10-3Pa、温度230℃で昇華して化合物[118](淡黄色の固体)を得る。
【0150】
HNMR(DMSO):δ8.28~7.10(s,6H),3.51~3.54(s,2H),2.13~2.25(m,4H),1.68~1.72(m,4H),1.55~1.40(m,36H).
HPLC(純度=99.6%)。
【0151】
製造例7
化合物[124]の合成
窒素雰囲気下で、反応容器に2,2’-[1,2-シクロヘキサンジイルビス(O-メチルメチン)]ビス[5-(ジエチルアミノ)]フェノール、13.93g(30mmol)、三フッ化ホウ素-エーテル錯体21.6g(152mmol)、トルエン300ml、N,N-ジイソプロピルエチルアミン20g(152mmol)を加え、40℃で2.5時間加熱攪拌する。室温まで冷却し、300mlの水を加え、濾液を有機層および水層に分けて、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。得られた固体をトルエン(150ml)およびエタノール(750ml)で再結晶化し、17.56gの粗生成物を得る。粗生成物を圧力3×10-3Pa、温度230℃で昇華して化合物[124](淡黄色の固体)を得る。
【0152】
HNMR(DMSO):8.28~7.10(s,8H),3.51~3.54(s,2H),2.13~2.25(m,4H),1.68~1.72(m,4H),3.70~3.82(m,8H),1.21~1.30(m,12H).
HPLC(純度=99.5%)。
【0153】
製造例8
化合物[136]の合成
窒素雰囲気下で、反応容器にN,N’-ビス[2-[N-2,4-ジ-tert-ブチルサリチルアルデヒド1-エチルアミン]メチルアミン13.13g(30mmol)、三フッ化ホウ素-エーテル錯体21.6g(152mmol)、トルエン300ml、N,N-ジイソプロピルエチルアミン20g(152mmol)を加え、40℃で2.5時間加熱攪拌する。室温まで冷却し、300mlの水を加え、濾液を有機層および水層に分けて、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。得られた固体をトルエン(150ml)およびエタノール(750ml)で再結晶化し、17.56gの粗生成物を得る。粗生成物を圧力3×10-3Pa、温度220℃で昇華して化合物[136](淡黄色の固体)を得る。
【0154】
HNMR(DMSO):δ8.28~7.10(s,6H),4.02~4.14(m,4H),3.12~3.25(m,4H),2.67(s,3H),1.55~1.40(m,36H).
HPLC(純度=99.8%)。
【0155】
実施例1
アルカリフリーガラスをイソプロパノール中で15分間超音波洗浄した後、大気中で30分間のUVオゾン洗浄処理を行う。スパッタリング法を用いてアルカリフリーガラスに、100nmの銀(Ag)、10nmのITOを順次成膜して反射陽極を形成する。反射陽極を10分間UVオゾン洗浄処理した後、真空蒸着法を用いて、陽極上に蒸着正孔注入層(NPDおよびF4-TCNQ(重量比97:3)、50nm)、正孔輸送層(NPD、80nm)、青色発光層(BHおよびBD(重量比97:3、20nm)、電子輸送層(Alq3、35nm)、電子注入層(LiF、1nm)を順次積層した後、MgおよびAg(重量比10:1、15nm)を共蒸着して半透明陰極を作成する。その後、半透明陰極上に、膜厚10nmの波長460nm、屈折率1.56の化合物[51]-被覆層1および膜厚50nmの波長460nm、屈折率2.06の化合物TBDB-被覆層2を順次蒸着する。最後に、乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内において、エポキシ樹脂接着剤を用いてアルカリフリーガラスで製造されたシールプレートをパッケージし、発光素子を製造する。
【0156】
上記発光素子は室温、大気中で、10mA/cmの直流電流を加えて、シールプレートの発光用分光放射輝度計(CS1000、コニカミノルタ株式会社)を用いて輝度および色純度をテストする。上記測定値で測定された光度効率が5.3cd/Aであり、色純度がCIE(x,y)=(0.138,0.050)である。
【0157】
表1に示す結果から分かるように、化合物[51]を被覆層として用いて高発光効率、高色純度の高性能発光素子を得る。
【0158】
実施例2
被覆層1が化合物[53]である以外、他のものは実施例1と同じである。
【0159】
有機発光素子を評価する。評価結果を表1に示す。
【0160】
実施例3
被覆層1が化合物[55]である以外、他のものは実施例1と同じである。
【0161】
有機発光素子を評価する。評価結果を表1に示す。
【0162】
実施例4
被覆層1が化合物[70]である以外、他のものは実施例1と同じである。
【0163】
有機発光素子を評価する。評価結果を表1に示す。
【0164】
実施例5
被覆層1が化合物[141]である以外、他のものは実施例1と同じである。
【0165】
有機発光素子を評価する。評価結果を表1に示す。
【0166】
実施例6
被覆層1が化合物[10]である以外、他のものは実施例1と同じである。
【0167】
有機発光素子を評価する。評価結果を表1に示す。
【0168】
実施例7
被覆層1が化合物[154]である以外、他のものは実施例1と同じである。
【0169】
有機発光素子を評価する。評価結果を表1に示す。
【0170】
実施例8
被覆層1が化合物[159]である以外、他のものは実施例1と同じである。
【0171】
有機発光素子を評価する。評価結果を表1に示す。
【0172】
実施例9
被覆層1がTBDBであり、被覆層2がNPDである以外、他のものは実施例1と同じである。
【0173】
有機発光素子を評価する。評価結果を表1に示す。
【0174】
実施例10
被覆層1がTBDBであり、被覆層2がAlqである以外、他のものは実施例1と同じである。
【0175】
有機発光素子を評価する。評価結果を表1に示す。
【0176】
実施例11
被覆層1が化合物[51]であり、被覆層2が化合物[141]である以外、他のものは実施例1と同じである。
【0177】
有機発光素子を評価する。評価結果を表1に示す。
【0178】
実施例12
被覆層1が化合物[160]であり、被覆層2がTBDBである以外、他のものは実施例1と同じである。
【0179】
有機発光素子を評価する。評価結果を表1に示す。
【0180】
比較例1
被覆層1がTBDBで、被覆層2がない以外、他のものは実施例1と同じである。
【0181】
有機発光素子を評価する。評価結果を表1に示す。
【0182】
比較例2
被覆層1が化合物[51]で、被覆層2がない以外、他のものは実施例1と同じである。
【0183】
有機発光素子を評価する。評価結果を表1に示す。
【0184】
【表1】
【0185】
表においてn1(460)は被覆層材料1の波長460nmにおける屈折率である。n2(460)は被覆層材料2の波長460nmにおける屈折率である。
【0186】
上記表1に示すように、実施例1~実施例8、12の発光素子は高発光効率および高色純度を同時に満たす。実施例9-11の発光素子において、被覆層材料1および被覆層材料2の屈折率の差は0.3未満であり、その発光効率はわずかに低い。また、比較例1~比較例2の発光素子と実施例との色純度は等しいが、発光効率は実施例よりも低く、高発光効率および高色純度を同時に満たすことができない。
【0187】
本明細書に言及されたすべての特許文献、非特許文献はすべて参考として援用される。本明細書に言及された「多種」は1種よりも大きいすべての場合を含み、即ち、「1種または多種」は1種、2種、3種、・・・等を含む。本明細書においてある数値範囲に対してそれぞれ上限および下限を記載する場合、または上限と下限を組み合わせるようにある数値範囲を記載する場合、そのうちに記載された各上限と各下限を任意に新しい数値範囲に組み合わせることができ、これは組み合わせられた数値範囲を直接明確に記載する記載様態と同じであるとみなす。本発明の主旨から離れない場合には、当業者は本発明に対して改変および改良を行うことができ、これらのものも本発明の範囲内に含まれる。