(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】キャンバー制御装置および金属板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21B 37/68 20060101AFI20230404BHJP
B21B 37/00 20060101ALI20230404BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20230404BHJP
B21B 38/02 20060101ALI20230404BHJP
B21C 47/26 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
B21B37/68 Z
B21B37/00
B21C51/00 L
B21B38/02
B21C47/26 F
(21)【出願番号】P 2021010791
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2020040534
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】石塚 陽大
(72)【発明者】
【氏名】重見 將人
(72)【発明者】
【氏名】田尻 大裕
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-102805(JP,A)
【文献】特開平10-166055(JP,A)
【文献】特開2006-130546(JP,A)
【文献】特開2005-313212(JP,A)
【文献】米国特許第5755131(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00-37/78
B21C 51/00
B21B 38/00-38/12
B21C 45/00-49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の形状矯正を行うラフレベラーと、
ラフレベラーの下流側に設置され、金属板を幅方向に2以上に分割するスリッターと、
スリッターの下流側に設置され、幅方向に分割された金属板の形状矯正を行うファイナルレベラーと、
金属板の板幅方向の板厚偏差
および金属板に発生したキャンバー量のうち少なくとも1つを測定する形状測定装置と、を備え、
ラフレベラーおよびファイナルレベラーの少なくとも一方は、ワークロールの軸方向に2以上に分割され、独立して圧下量が制御可能な分割バックアップロールを備え、形状測定装置によって測定された板厚偏差およびキャンバー量の
両者に基いて、分割バックアップロールの圧下量が制御される、キャンバー制御装置。
【請求項2】
形状測定装置は、スリッターの下流に設置され、幅方向に分割された金属板のキャンバー量を測定するキャンバー測定装置であり、
キャンバー測定装置によって測定されたキャンバー量に基いて、分割バックアップロールの圧下量が制御される、請求項1に記載のキャンバー制御装置。
【請求項3】
形状測定装置は、金属板の板幅方向の板厚偏差を測定するプロフィール測定装置であり、
プロフィール測定装置によって測定された板幅方向の板厚偏差に基いて、分割バックアップロールの圧下量が制御される、請求項1または2に記載のキャンバー制御装置。
【請求項4】
分割バックアップロールは、少なくとも、スリッターでの金属板の切断位置に相当する位置に配されている、請求項1乃至3のいずれかに記載のキャンバー制御装置。
【請求項5】
金属板の板幅方向の板厚偏差
および金属板に発生したキャンバー量を測定し、
測定された板幅方向の板厚偏差
および金属板に発生したキャンバー量の
両者に基いて、ラフレベラーおよびファイナルレベラーの少なくとも一方のワークロールの軸方向に2以上に分割された分割バックアップロールの圧下量を独立に制御して
スリッターによる条切後の金属板の形状矯正を行う、金属板の製造方法。
【請求項6】
スリッターの下流において、幅方向に分割された金属板のキャンバー量を測定し、
測定されたキャンバー量に基いて、ラフレベラーおよびファイナルレベラーの少なくとも一方の分割バックアップロールの圧下量を制御する、請求項5に記載の金属板の製造方法。
【請求項7】
板幅方向の板厚偏差を測定し、
測定された板幅方向の板厚偏差に基いて、分割バックアップロールの圧下量を制御する、請求項5または6に記載の金属板の製造方法。
【請求項8】
スリッターでの金属板の切断位置に相当する位置を、分割バックアップロールで圧下する、請求項5乃至7のいずれかに記載の金属板の製造方法。
【請求項9】
スリッターラインの上流側に設けられたスキンパスミルと、
スキンパスミルの上流側もしくは下流側の少なくとも一方に設けられ、金属板の板幅方向の板厚偏差を測定する形状測定装置とを備え、
形状測定装置によって測定された金属板の板幅方向の板厚偏差に基いて、スキンパスミルのワークロールのたわみ量を制御するキャンバー制御装置。
【請求項10】
請求項1~4のいずれかに記載のキャンバー制御装置
である第1のキャンバー制御装置と、
スリッターラインの上流側に設けられたスキンパスミルと、
スキンパスミルの上流側もしくは下流側の少なくとも一方に設けられ、金属板の板幅方向の板厚偏差を測定する形状測定装置とを備え、
形状測定装置によって測定された金属板の板幅方向の板厚偏差に基いて、スキンパスミルのワークロールのたわみ量を制御する第2のキャンバー制御装置
とを有するキャンバー制御設備。
【請求項11】
スキンパスミルの上流側もしくは下流側の少なくとも一方において、金属板の板幅方向の板厚偏差を測定し、
測定された金属板の板幅方向の板厚偏差に基いて、スキンパスミルのワークロールのたわみ量を制御する、金属板の製造方法。
【請求項12】
請求項5~8のいずれかに記載の金属板の製造方法
である第1の金属板の製造方法と、
スキンパスミルの上流側もしくは下流側の少なくとも一方において、金属板の板幅方向の板厚偏差を測定し、
測定された金属板の板幅方向の板厚偏差に基いて、スキンパスミルのワークロールのたわみ量を制御する第2の金属板の製造方法
とを有する、金属板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板のキャンバーを抑制するキャンバー制御装置および金属板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の熱延コイルは、幅方向に2以上に分割するスリッターラインにおいて、ラフレベラーで形状矯正された後、スリッターによって幅方向に分割(条切り)されて製品寸法に切り出され、ファイナルレベラーにより形状矯正される。このように切り出された材料は、例えば、トラックの荷台部分のフレーム材に利用される。
【0003】
スリッターによる条切時においては、熱延コイル内に分布する残留応力が、スリット時に解放され、条切りされた金属板に横曲がり(キャンバー)が発生することがある。条切
時にキャンバーが発生すると、条切時の金属板の蛇行や、絞りといった操業トラブルの発生につながることがある。また、スリッターで発生したキャンバーは、金属板の幅方向の板厚差(クラウン)が大きい場合には、ファイナルレベラーでの形状矯正による軽圧下時に、クラウン起因の幅方向伸び率差でさらに助長される。
【0004】
キャンバーが発生すると、品質上の観点からも、条切りされた金属板から、さらに長さ方向に切り出されたフレーム材の1級品からの格落ち、およびフレーム材をプレス成形した後の部品形状の寸法精度不良により歩留が悪化するという問題がある。
【0005】
この問題を解決する手段として、レベラーに分割バックアップロールを配する方法がある。分割バックアップロールは、ロール軸方向に分割されたバックアップロールによりワークロールを支持する機構を有している各分割バックアップロールは独立して圧下制御することができる。分割バックアップロールにより、軸方向の位置に応じて圧下量を制御することで、キャンバーを抑制することができる。
【0006】
特許文献1には、上下どちらか一方または双方のロールアセンブリが、軸方向3分割以上に分割された補強ロールによって作業ロールを支持する機構を有する金属板材の圧延機が開示されている。特許文献1では、ピンチロールから金属板に作用する圧延方向の左右バランス、および金属板を通じて圧延機の作業ロールに作用する圧延方向の左右バランスの何れか一方または双方を測定するか、または測定値をもとに演算算出し、圧延方向力の左右バランスの測定値または演算値に基いて圧延機のロールの開度の左右非対称成分を制御することにより、金属板の左右バランスを調整してキャンバーを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法は、ピンチロールから金属板に作用する圧延方向の左右バランス、および金属板を通じて圧延機の作業ロールに作用する圧延方向の左右バランスの何れか一方または双方に基いて、圧延機のロール開度の左右非対称成分を制御しており、条切後に発生するキャンバーを抑制することができない。
【0009】
具体的には、条切後に発生するキャンバーは、条切前の金属板のクラウン(板幅中央と
端部との板厚差)が大きいほど、条切後の金属板の幅方向でも板厚差が生じ、その結果、板厚差が大きい条切後の金属板を圧延することでキャンバーが大きくなる。
【0010】
特許文献1の技術は、ピンチロールもしくは作業ロールに作用する圧延方向の左右バランスを検知しているため、条切前の金属板の左右バランスしか検出できない。そのため、特許文献1の技術を適用しても、左右対称のクラウンが発生している場合には、条切後のキャンバーを抑制することはできない。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、条切時に発生するキャンバーを抑制することができるキャンバー制御装置および金属板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下のことを要旨としている。
[1] 金属板の形状矯正を行うラフレベラーと、
ラフレベラーの下流側に設置され、金属板を幅方向に2以上に分割するスリッターと、
スリッターの下流側に設置され、幅方向に分割された金属板の形状矯正を行うファイナルレベラーと、
金属板の板幅方向の板厚偏差もしくは金属板に発生したキャンバー量のうち少なくとも1つを測定する形状測定装置と、を備え、
ラフレベラーおよびファイナルレベラーの少なくとも一方は、ワークロールの軸方向に2以上に分割され、独立して圧下量が制御可能な分割バックアップロールを備え、形状測定装置によって測定された板厚偏差およびキャンバー量のうち少なくとも1つに基いて、分割バックアップロールの圧下量が制御される、キャンバー制御装置。
[2] 形状測定装置は、スリッターの下流に設置され、幅方向に分割された金属板のキャンバー量を測定するキャンバー測定装置であり、
キャンバー測定装置によって測定されたキャンバー量に基いて、分割バックアップロールの圧下量が制御される、[1]に記載のキャンバー制御装置。
[3] 形状測定装置は、金属板の板幅方向の板厚偏差を測定するプロフィール測定装置であり、
プロフィール測定装置によって測定された板幅方向の板厚偏差に基いて、分割バックアップロールの圧下量が制御される、[1]または[2]に記載のキャンバー制御装置。
[4] 分割バックアップロールは、少なくとも、スリッターでの金属板の切断位置に相当する位置に配されている、[1]乃至[3]のいずれかに記載のキャンバー制御装置。
[5] 金属板の板幅方向の板厚偏差もしくは金属板に発生したキャンバー量のうち少なくとも1つを測定し、
測定された板幅方向の板厚偏差もしくは金属板に発生したキャンバー量のうち少なくとも1つに基いて、ラフレベラーおよびファイナルレベラーの少なくとも一方のワークロールの軸方向に2以上に分割された分割バックアップロールの圧下量を独立に制御して金属板の形状矯正を行う、金属板の製造方法。
[6] スリッターの下流において、幅方向に分割された金属板のキャンバー量を測定し、
測定されたキャンバー量に基いて、ラフレベラーおよびファイナルレベラーの少なくとも一方の分割バックアップロールの圧下量を制御する、[5]に記載の金属板の製造方法。
[7] 板幅方向の板厚偏差を測定し、
測定された板幅方向の板厚偏差に基いて、分割バックアップロールの圧下量を制御する、[5]または[6]に記載の金属板の製造方法。
[8] スリッターでの金属板の切断位置に相当する位置を、分割バックアップロールで圧下する、[5]乃至[7]のいずれかに記載の金属板の製造方法。
[9] スリッターラインの上流側に設けられたスキンパスミルと、
スキンパスミルの上流側もしくは下流側の少なくとも一方に設けられ、金属板の板幅方向の板厚偏差を測定する形状測定装置とを備え、
形状測定装置によって測定された金属板の板幅方向の板厚偏差に基いて、スキンパスミルのワークロールのたわみ量を制御するキャンバー制御装置。
[10] [1]~[4]のいずれかに記載のキャンバー制御装置と、[9]に記載のキャンバー制御装置を有するキャンバー制御設備。
[11] スキンパスミルの上流側もしくは下流側の少なくとも一方において、金属板の板幅方向の板厚偏差を測定し、
測定された金属板の板幅方向の板厚偏差に基いて、スキンパスミルのワークロールのたわみ量を制御する、金属板の製造方法。
[12] [5]~[8]のいずれかに記載の金属板の製造方法と、[11]に記載の金属板の製造方法を有する、金属板の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るキャンバー制御装置および金属板の製造方法によれば、キャンバーが発生する原因となる板幅方向の板厚偏差、もしくは、条切後に発生したキャンバー量自体に基いて、分割バックアップロールの圧下量を制御して、金属板の形状矯正を行うことにより、条切時に発生するキャンバーを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、1つの金属板を3つに分割する場合に発生するキャンバーの概要を示す図である。
【
図2】
図2は、金属板の有するクラウン量と外開きキャンバー量との関係を示した図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態1に係るキャンバー制御装置の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、金属板の切断位置と分割バックアップロールの相対位置を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明のキャンバー制御の適用前後において、金属板に発生したキャンバー量を示した図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態2に係るキャンバー制御装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付した図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
[実施の形態1]
図1は、1つの金属板を3つに分割する場合に発生するキャンバーの概要を示す図である。本説明においては、3つに分割された金属板を、DR(Drive)金属板、CE(Center)
金属板、OP(Operation)金属板と称する(
図1(a)参照)。
【0017】
図1(b)に示すように、キャンバーは、金属板内に分布する残留応力が、スリット時に解放されることで発生する。金属板を幅方向に切断した断面は、通常、中央部の板厚が両端部の板厚も大きくなるクラウン形状となる。金属板の有するクラウン(中央部の板厚と両端部の板厚の差)が大きいと、スリッターで金属板を幅方向に分割した際、金属板の端部と切断した部分の板厚差が生じる。
【0018】
図1(c)に示すように、切断後(条切後)の金属板の板厚差が大きいと、条切後の金属板をファイナルレベラーで圧延すると、作業側(OP側)の金属板はOP側に、駆動側(DR側)の金属板はDR側へ曲がる、いわゆる、外開きキャンバーが助長される。
【0019】
図2は、金属板の有するクラウン量と外開きキャンバー量との関係を示した図である。左右の板厚差が小さいCE金属板では外開きキャンバー量が小さいのに対し、OP金属板ではクラウン量が大きければ大きいほどOP側への外開きキャンバー量が大きい。同様に、DR金属板ではクラウン量が大きければ大きいほどDR側への外開きキャンバー量が大きい。金属板のクラウン(板幅中央と端部との板厚差)が大きいと、条切後、それぞれの金属板の幅方向でも板厚差が生じる。
【0020】
幅方向で板厚差が大きい金属板を、レベラーにて幅方向で同じ圧下量で矯正した場合、幅方向で伸び率差が生じる。具体的には、板厚が厚いとより圧下されて伸び率が大きく、板厚が薄いとより圧下されずに伸び率が小さい。その結果、
図1に示すように、作業側(OP側)の金属板はOP側に、駆動側(DR側)の金属板はDR側へ曲がる。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態に係るキャンバー制御装置の構成を示す図である。キャン
バー制御装置は、金属板の流れる方向から順に、第1プロフィール測定装置1、ラフレベラー2、第2プロフィール測定装置3、スリッター4、キャンバー測定装置5、ファイナルレベラー6を有している。
【0022】
ラフレベラー2は、
図4に示すように、ワークロール21の軸方向に2以上に分割され、独立して圧下量を制御可能な分割バックアップロール22を備え、金属板の形状矯正を行う。
【0023】
スリッター4は、ラフレベラー2の下流側に設置され、金属板を幅方向に2以上に分割する。なお、スリッター4による条切時には、条切前の金属板のDR(Drive)側およびOP
(Operation)側の両端部にエッジヘゲなどの欠陥がある、または、所定の板厚が確保で
きていない場合、幅方向の分割によるフレーム材の採取と同じタイミングで、条切前の金属板のDR(Drive)側およびOP(Operation)側の両端部をトリミングして製品外として廃棄できる。
【0024】
ファイナルレベラー6は、スリッター4の下流側に設置されている。ファイナルレベラー6は、ラフレベラー2と同様に、ワークロール21の軸方向に2以上に分割され、独立して圧下量を制御可能な分割バックアップロール22を備え(
図4参照)、幅方向に分割された金属板の形状矯正を行う。
【0025】
本発明の実施の形態に係るキャンバー制御装置は、金属板の板幅方向の板厚偏差もしくは金属板に発生したキャンバー量のうち少なくとも1つを測定する形状測定装置を備えている。本実施の形態に係るキャンバー制御装置では、形状測定装置によって測定された板厚偏差およびキャンバー量のうち少なくとも1つに基いて、分割バックアップロールの圧下量を制御する。
【0026】
形状測定装置は、第1プロフィール測定装置1、第2プロフィール測定装置3、およびキャンバー測定装置5に相当する。
【0027】
第1プロフィール測定装置1は、レベラー2の上流に設けられ、金属板の板幅方向の板厚偏差(プロフィール)を測定して、測定した板幅方向の板厚偏差をラフレベラー2およびファイナルレベラー6に出力する。第1プロフィール測定装置1は、スリッター4が設けられたスリッターラインの入側に設置することもできるし、スリッターラインの上流の熱延ラインの巻取装置の前に設置することもできる。
【0028】
第2プロフィール測定装置3は、レベラー2とスリッター4との間に設けられ、金属板の板幅方向の板厚偏差(プロフィール)を測定して、測定した板幅方向の板厚偏差をラフレベラー2およびファイナルレベラー6に出力する。
【0029】
キャンバー測定装置5は、スリッター4の出側に設けられ、幅方向に分割された金属板のキャンバー量を測定して、測定結果をラフレベラー2およびファイナルレベラー6に出力する。
【0030】
なお、
図5に示すように、ラフレベラー2およびファイナルレベラー6の有する分割バックアップロール22は、金属板の切断位置(
図5の一点鎖線)に相当する位置に、分割バックアップロール22が配されることが好ましい。DR(Drive)金属板やOP(Operation)金属板では、条切された端部と(条切される前の金属板の中央側)、他方の端部(条切される前の金属板の端部)との板厚差に起因してキャンバーが発生するため、この切断位置の板厚を分割バックアップロール22で適切に制御することで、キャンバー発生を抑制するという本発明の効果を高めることができるためである。
【0031】
ラフレベラー2およびファイナルレベラー6は、形状測定装置、具体的には、第1プロフィール測定装置1、第2プロフィール測定装置3、およびキャンバー測定装置5から入力された、金属板の板幅方向の板厚偏差もしくは金属板に発生したキャンバー量のうち少なくとも1つに基いて、分割バックアップロール22の圧下制御を行う。具体的には、レベラー2は、スリッター4による条切後の金属板の幅方向の板厚差を低減させるように圧下制御を行う。
【0032】
本発明によれば、形状測定装置(第1プロフィール測定装置1、第2プロフィール測定装置3、キャンバー測定装置5)から入力された、金属板の板幅方向の板厚偏差もしくは金属板に発生したキャンバー量のうち少なくとも1つに基いて、ラフレベラー2およびファイナルレベラー6の分割バックアップロール22の圧下制御を行うことで、スリッター4による条切時に発生するキャンバーを抑制することができる。
【0033】
具体的には、本発明は、第1プロフィール測定装置1によって計測された金属板の板幅方向の板厚偏差に基いて、ラフレベラー2の分割バックアップロール22の圧下制御を行うことにより(フィードフォワード)、キャンバーの発生原因となるクラウン形状を矯正し、条切時に発生するキャンバーを抑制することができる。第1プロフィール測定装置1によって計測された金属板の板幅方向の板厚偏差に基いて、ファイナルレベラー6の分割バックアップロール22の圧下制御を行うことにより(フィードフォワード)、ファイナルレベラー6での圧下時にキャンバーの助長を低減することができる。
【0034】
同様に、第2プロフィール測定装置3によって計測された金属板の板幅方向の板厚偏差に基いて、ラフレベラー2の分割バックアップロール22の圧下制御を行うことにより(フィードバック)、キャンバーの発生原因となるクラウン形状を矯正し、条切時に発生するキャンバーを抑制することができる。第2プロフィール測定装置3によって計測された金属板の板幅方向の板厚偏差に基いて、ファイナルレベラー6の分割バックアップロール22の圧下制御を行うことにより(フィードフォワード)、ファイナルレベラー6での圧下時にキャンバーの助長を低減することができる。
【0035】
また、キャンバー測定装置5によって計測されたキャンバー量に基いて、分割バックアップロール22の圧下制御を行うことにより(フィードバック)、条切時に発生するキャンバー自体をモニタして、これを低減するように、ラフレベラー2で形状矯正を行うことができる。キャンバー測定装置5によって計測された金属板の板幅方向の板厚偏差に基いて、ファイナルレベラー6の分割バックアップロール22の圧下制御を行うことにより(フィードフォワード)、ファイナルレベラー6での圧下時にキャンバーの助長を低減することができる。
【0036】
なお、本発明に係るキャンバー制御装置では、第1プロフィール測定装置1、第2プロフィール測定装置3、キャンバー測定装置5から入力された、金属板の板幅方向の板厚偏差もしくは金属板に発生したキャンバー量のうち少なくとも1つに基いて、ラフレベラー2およびファイナルレベラー6の分割バックアップロール22の圧下制御を行っているが、もちろん、第1プロフィール測定装置1、第2プロフィール測定装置3、キャンバー測定装置5から入力された、金属板の板幅方向の板厚偏差もしくは金属板に発生したキャンバー量のうち2つの測定結果に基いて分割バックアップロールの圧下量を制御してもよいし、もしくは、すべての測定結果に基いて分割バックアップロール22の圧下量を制御してもよい。
【0037】
また、分割バックアップロールは、1つずつ独立した圧下制御を行ってもよいか、2以上の隣接する分割バックアップロールをまとめたロールセットごとに、独立して圧下制御
してもよい。
【0038】
上述の説明では、ラフレベラー2およびファイナルレベラー6がそれぞれ分割バックアップロール22を備えているとして説明したが、ラフレベラー2およびファイナルレベラー6の少なくとも一方に分割バックアップロール22を備えていればよい。形状測定装置(第1プロフィール測定装置1、第2プロフィール測定装置3、キャンバー測定装置5)の測定結果に基いて、ラフレベラー2およびファイナルレベラー6が少なくとも一方で分割バックアップロール22の圧下量を制御すれば、キャンバー量を低減できるという本発明の効果を奏する。
【0039】
また、
図3では、形状測定装置(第1プロフィール測定装置1、第2プロフィール測定装置3、キャンバー測定装置5)の測定結果を直接ラフレベラー2およびファイナルレベラー6に出力するよう図示されているが、図示しない制御装置に、測定結果を出力して、制御装置から測定結果もしくは測定結果に応じた分割バックアップロール22の圧下量を制御値として出力するように構成してもよい。
【0040】
本発明は、熱延工程の後のスリッターラインに適用することができる。具体的には、本発明は、板幅方向の板厚偏差もしくは金属板に発生したキャンバー量のうち少なくとも1つを測定し、測定された板幅方向の板厚偏差もしくは金属板に発生したキャンバー量のうち少なくとも1つに基いて、ワークロールの軸方向に2以上に分割された分割バックアップロールの圧下量を独立に制御して金属板の形状矯正を行う鋼板の製造方法として実現することができる。
【0041】
このような製造方法を用いることで、製造された金属板のキャンバー量を低減させ、条切時の金属板の蛇行や、絞りといった操業トラブルの発生を低減させることができる。また、条切りされた金属板からさらに長さ方向に切り出されたフレーム材や、フレーム材をプレス成形した後の部品形状において発生する、寸法精度不良を低減させ、歩留を向上させることができる。
【0042】
[実施の形態2]
図7は、本発明の実施の形態2に係るキャンバー制御装置200の構成を示す概要図である。実施の形態2に係るキャンバー制御装置200は、スリッターラインの上流側にスキンパスミル201を有する製造ラインに適用される。ここで、スキンパスミルを有する製造ラインとしては、スキンパスラインや酸洗ラインを例に挙げることができる。
【0043】
キャンバー制御装置200は、スキンパスミル201よりも上流側に、形状測定装置202を有している。形状測定装置202は、金属板の板幅方向の板厚偏差を測定する。キャンバー制御装置200は、形状測定装置202により計測した金属板の幅方向の板厚偏差に基いて、スキンパスミル201のワークロールのたわみ量を制御する。
【0044】
図7では、形状測定装置202は、スキンパスミル201の上流側に設けられているが、形状測定装置202は、スキンパスミル201の下流側に設けられていてもよいし、上流側と下流側の両方に設けられていてもよい。実施の形態2に係るキャンバー制御装置200は、スキンパスミル201の上流側もしくは下流側の少なくとも一方に設けられた形状測定装置202によって計測された、金属板の幅方向の板厚偏差に基いて、ワークロールのたわみ量が制御されていればよい。
【0045】
スキンパスミルを有する製造ラインの下流には、スリッターラインが設けられている。スリッターラインで生じるキャンバーは、金属板の幅方向の板厚偏差が大きければ大きいほどキャンバー量が大きくなる。そこで、実施の形態2では、スリッターラインの前段にある製造ラインにおいて、この金属板の幅方向の板厚偏差を低減するようスキンパスミルのワークロールのたわみ量を制御する。これにより、スリッターラインで生じる条切後の金属板のキャンバー量を効果的に低減することができる。
【0046】
なお、実施の形態2は、実施の形態1と組み合わせて実施することができる。実施の形態1に係るキャンバー制御装置と実施の形態2に係るキャンバー制御装置を有するキャンバー制御設備とすればよい。スリッターラインよりも上流側のスキンパスミルを有する製造設備において、金属板の幅方向の板厚偏差を低減するようにスキンパスミルの圧下制御をするとともに、スリッターラインにおいて金属板の幅方向の板厚偏差を低減するように分割バックアップロールを制御することで、キャンバー量を相乗的に低減させることが可能となる。
【実施例】
【0047】
図6は、本発明の実施の形態1に係るキャンバー制御の適用前後において、フレーム材に発生したキャンバー量を示した図である。縦軸は、フレーム材数(本)であり、横軸はキャンバー量である。
図6(a)は、本発明適用前のキャンバー量を示す図である。
図6の横軸中心が、キャンバーがない(キャンバー量がゼロ)の金属板であり、紙面左側になるほどDR曲がりが大きく、紙面右側になるほどOP曲がりが大きい金属板である。
【0048】
図6(b)は、本発明適用後のキャンバー量を示す図である。具体的には、
図3に示す第1プロフィール測定装置1によって、板幅方向の板厚偏差(プロフィール)を測定し、測定された板幅方向の板厚偏差に基いて、ラフレベラー2の分割バックアップロール22の圧下量をそれぞれ制御して金属板の形状矯正を行った。
【0049】
この結果、本発明適用前の
図6(a)よりも、本発明を適用した
図6(b)の方が、キャンバー量(OP金属板のOP曲がりおよびDR金属板のDR曲がり)が低減していることが分かる。
【符号の説明】
【0050】
1 第1プロフィール測定装置
2 ラフレベラー
3 第2プロフィール測定装置
4 スリッター
5 キャンバー測定装置
6 ファイナルレベラー
21 ワークロール
22 分割バックアップロール
200 キャンバー制御装置
201 スキンパスミル
202 形状測定装置