(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】異なる形状およびサイズのアイテムまたはコンポーネントを操作するための把持デバイス
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
B25J15/08 J
B25J15/08 S
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021023105
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2021-09-27
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513318515
【氏名又は名称】シー.アール.エフ. ソシエタ コンソルティレ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザネッラ アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ジリッチ ミカル
(72)【発明者】
【氏名】ピエトロネイヴ ジョルジオ
(72)【発明者】
【氏名】ゾッピ マッテオ
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0168393(US,A1)
【文献】特開昭59-069288(JP,A)
【文献】米国特許第05200679(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット上で使用可能な、可変の形状およびサイズのアイテムまたはコンポーネントを操作するための把持デバイスであって、前記把持デバイスは、
支持構造体と、
複数の把持アームであって、各把持アームは前記支持構造体に回動可能に接続された第1の近位アーム部と、前記第1の近位アーム部に接続された少なくとも1つの第2の遠位アーム部とを有する、複数の把持アームと、
前記第1の近位アーム部の前記支持構造体に対する関節運動を命令するための、前記支持構造体に支持される複数のアクチュエータデバイスであって、各アクチュエータデバイスはそれぞれの把持アームに関連付けられている、複数のアクチュエータデバイスと、
各把持アームと関連付けられた少なくとも1つの腱であって、前記腱は、前記第1の近位アーム部と前記第2の遠位アーム部とにそれぞれ固定された第1の先端と第2の先端とを有し、各腱は、前記第1の近位アーム部および前記第2の遠位アーム部に関連付けられた一連のガイド要素を通して、前記第1の近位アーム部および前記第2の遠位アーム部に沿って自由に摺動可能にガイドされる、少なくとも1つの腱と、を備え、
前記第1の近位アーム部と関連付けられた前記ガイド要素は、前記第1の近位アーム部の内側に配置された内側に曲がりやすいパネルによって支持され、前記内側に曲がりやすいパネルは、把持されるべき前記アイテムまたはコンポーネントと面し、
前記第1の近位アーム部の前記内側の前記内側に曲がりやすいパネルが、それぞれの前記アクチュエータデバイスにより付与される命令の後、把持されるべきアイテムまたはコンポーネントに対し係合すると、前記内側に曲がりやすいパネルにより支持される前記腱の前記ガイド要素は、前記腱の張力を生じさせることで、前記第2の遠位アーム部の前記第1の近位アーム部に対する関節運動および/または屈折運動を引き起こし、
各把持アームは、他の前記把持アームとは独立に、把持すべき前記アイテムまたはコンポーネントの構成に自動的に適合できる、把持デバイス。
【請求項2】
前記内側に曲がりやすいパネルは、把持されるべき前記アイテムまたはコンポーネントと面する第1の表面と、前記第1の表面と対向する第2の表面とを有し、前記ガイド要素は前記第2の表面に支持される、請求項1に記載の把持デバイス。
【請求項3】
互いに実質的に平行な2つの腱が各把持アームに関連付けられ、前記腱は、前記ガイド要素を貫通して形成された一連の穴を通して、自由に摺動可能にガイドされる、請求項2に記載の把持デバイス。
【請求項4】
各アームの前記第2の遠位アーム部は、相互に関節接合された要素で構成される鎖の形態の背面部材と、把持されるべき前記アイテムまたはコンポーネントと面する内側要素とを有し、前記背面部材上に、前記第2の遠位アーム部と関連付けられた前記ガイド要素が支持され、前記内側要素は、第1の端部および第2の端部を有する可撓性補助パネルを有し、前記可撓性補助パネルは、複数の接続要素により、前記背面部材に対し実質的に平行に且つ離間して保持されている、請求項1に記載の把持デバイス。
【請求項5】
各アームの前記第2の遠位アーム部は、相互に関節接合された要素で構成される第1の鎖の形態の背面部材を有し、前記背面部材上に、前記ガイド要素と、把持されるべき前記アイテムまたはコンポーネントと面する内側要素とが支持され、前記内側要素は、相互に
関節接合された要素で構成される第2の鎖の形態であり、第1の端部および第2の端部を有し、前記内側要素は、複数の接続要素により、前記背面部材に対し実質的に平行に且つ離間して保持されている、請求項1に記載の把持デバイス。
【請求項6】
各把持アームは、前記第2の遠位アーム部に接続された第3の遠位アーム部をまた有し、
前記内側要素の前記第2の端部は、前記第3の遠位アーム部に接続され、その結果、前記腱の前記張力の状態はまた、前記第2の遠位アーム部に対する前記第3の遠位アーム部の関節運動
をもたらすことで、把持されるべき前記アイテムまたはコンポーネントへの各把持アームの前記適合をさらに改善する、請求項4または5に記載の把持デバイス。
【請求項7】
前記第1の近位アーム部は、それぞれ一端において前記支持構造体に、および、対向する一端において前記第1の近位アーム部と前記第2の遠位アーム部との間の中間接続部材に関節接合された二対のアームによって画される関節接合された四辺形構成を有し、
各把持アームに関連付けられた前記アクチュエータデバイスは、接続運動学的機構により、前記支持構造体と前記中間接続部材とにそれぞれ接続された対向する端部を有する流体アクチュエータシリンダであり、前記接続運動学的機構は、
前記流体アクチュエータシリンダ
の長さの変化が、前記支持構造体に対する前記第1の近位アーム部の
揺動を生じさせるように構成される、請求項1または6に記載の把持デバイス。
【請求項8】
前記第1の近位アーム部の前記内側に曲がりやすいパネルは、前記中間接続部材に接続された一端と、対向する自由な端部を有する、請求項7に記載の把持デバイス。
【請求項9】
前記内側に曲がりやすいパネルは、前記中間接続部材に接続された一端と、前記支持構造体に直接的または間接的に接続された対向する端部とを有する、請求項7に記載の把持デバイス。
【請求項10】
前記第2の遠位アーム部の内側要素の第1の端部は、中間接続部材に接続されている、請求項6または7に記載の把持デバイス。
【請求項11】
各把持アームの前記第1の近位アーム部の前記内側に曲がりやすいパネルは、可撓性パネルまたは相互に関節接合された要素で構成される鎖の形態である、請求項1に記載の把持デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業環境においてアイテムまたはコンポーネントを操作するための、例えばロボット上で使用可能なタイプの把持デバイスまたは「グリッパ」に関する。
【0002】
特に、本発明は、産業アセンブリラインにおいて適用可能な、アイテムまたはコンポーネントが保存されているコンテナから、これらのアイテムまたはコンポーネントを取得するための把持デバイスに関し、これらのアイテムまたはコンポーネントは、特定の場所に運搬され、運搬先の場所において、アセンブリライン沿いでオペレータまたはロボットによって取り付けるために用いられてよい。
【背景技術】
【0003】
専用構成を有する産業グリッパ、すなわち、グリッパが把持する必要のあるアイテムの形状およびサイズに従い設計されたグリッパが長い間知られており、用いられている。
【0004】
ある程度の動作柔軟性を有するグリッパも提案されており、当該柔軟性により、これらのグリッパは、異なる形状および/または異なるサイズのアイテムまたはコンポーネントを操作するために用いられ得る。しかしながら、このタイプの解決手段は、比較的複雑で信頼性が低いことが判明している。
【0005】
一部の具体的な適用の事例において(例えば、自動車のエンジンユニットのアセンブリラインにおいて)は、特定のアセンブリキットを構成するアイテムまたはコンポーネントは、形状およびサイズの両方において大きく異なる可能性がある。従って、これらの差異に自動的に適合可能で、あらゆる場合において、過度に複雑な構造体を採用する必要なく、グリップの安定性を保証可能で、またグリッパ制御システムにも適合可能なグリッパのニーズがある。
[本発明の目的]
【0006】
従って、本発明の目的は、互いに非常に異なる形状およびサイズをまた有する把持されるべきアイテムおよびコンポーネントに自動的に適合可能という意味において、高い動作柔軟性を有するにもかかわらず、動作において高信頼性であり、複雑な制御システムを必要としない把持デバイスを提供することにある。
【発明の概要】
【0007】
上記の目的を達成する観点から、本発明は、例えばロボット上で使用可能な、可変の形状およびサイズのアイテムまたはコンポーネントを操作するための把持デバイスに関し、上記把持デバイスは、
支持構造体と、
複数の把持アームであって、各把持アームは支持構造体に回動可能に接続された第1の近位アーム部と、第1の近位アーム部に接続された少なくとも1つの第2の遠位アーム部とを有する、複数の把持アームと、
第1の近位アーム部の支持構造体に対する関節運動を命令するための、支持構造体によって支持される複数のアクチュエータデバイスであって、各アクチュエータデバイスはそれぞれの把持アームに関連付けられている、複数のアクチュエータデバイスと、
各把持アームと関連付けられた少なくとも1つの腱であって、腱は、第1の近位アーム部と第2の遠位アーム部とにそれぞれ固定された第1の先端と第2の先端とを有し、各腱は、上記第1の近位アーム部および第2の遠位アーム部に関連付けられた一連のガイド要素を通して、上記第1の近位アーム部および第2の遠位アーム部に沿って自由に摺動可能にガイドされる、少なくとも1つの腱と、を備え、
第1の近位アーム部と関連付けられたガイド要素は、上記第1の近位アーム部の内側に配置された内側に曲がりやすいパネルによって支持され、内側に曲がりやすいパネルは、把持されるべきアイテムまたはコンポーネントと面し、
第1の近位アーム部の内側の内側に曲がりやすいパネルが、それぞれのアクチュエータデバイスにより付与される命令の後、把持されるべきアイテムまたはコンポーネントに対し係合すると、内側に曲がりやすいパネルにより支持される腱のガイド要素は、腱の張力を生じさせることで、上記第2の遠位アーム部の第1の近位アーム部に対する関節運動および/または屈折運動を引き起こし、
各把持アームは、他の把持アームとは独立に、把持されるべきアイテムまたはコンポーネントの構成に自動的に適合可能である。
【0008】
上記の特徴のおかげで、本発明による把持デバイスは、非常に異なる形状およびサイズを持つアイテムまたはコンポーネントであっても、当該アイテムまたはコンポーネントに自動的に適合できる能力の観点から、高い動作柔軟性を有する。
【0009】
好ましい実施形態において、内側に曲がりやすいパネルは、把持されるべきアイテムまたはコンポーネントと面する第1の表面と、第1の表面と対向する第2の表面とを有し、ガイド要素は第2の表面に支持される。好ましくは、互いに実質的に平行な2つの腱が各アクチュエータアームに関連付けられ、上記腱は、ガイド要素を貫通して形成された一連の穴を通して、自由に摺動可能にガイドされる。
【0010】
本実施形態の第1の例において、各アームの第2の遠位部は、相互に関節接合された要素で構成される鎖の形態の背面部材と、把持されるべきアイテムまたはコンポーネントと面する内側要素とを有し、背面部材上に、第2の遠位アーム部と関連付けられたガイド要素が支持され、内側要素は、第1の端部および第2の端部を有する可撓性補助パネルを有し、可撓性補助パネルは、複数の接続要素により、背面部材に対し実質的に平行且つ離間して保持される。
【0011】
本実施形態の第2の例において、各アームの第2の遠位部は、相互に関節接合された要素で構成される第1の鎖の形態の背面部材と、把持されるべきアイテムまたはコンポーネントと面する内側要素とを有し、背面部材上に、ガイド要素が支持され、内側要素は、相互に関節接合された要素で構成される第2の鎖の形態であり、第1の端部および第2の端部を有し、内側要素は、複数の接続要素により、背面部材に対し実質的に平行に且つ離間して保持されている。
【0012】
上記の好ましい実施形態において、各把持アームは、さらに、第2の遠位部に接続された第3の遠位部を有する。内側要素の第2の端部は、上記第3の遠位部に接続され、その結果、腱の張力の状態はまた、第2の遠位アーム部に対する第3の遠位アーム部の関節運動および/または屈折運動をもたらすことで、把持されるべきアイテムまたはコンポーネントへの各把持アームの適合をさらに改善する。
【0013】
さらに好ましくは、第1の近位アーム部は、それぞれ一端において上記支持構造体に、および、対向する一端において第1の近位アーム部と第2の遠位アーム部との間の中間接続部材に関節接合された、二対のアームで画される関節接合された四辺形構成を有する。この好ましい実施形態において、各把持アームに関連けられたアクチュエータデバイスは、それぞれが接続運動学的機構により、支持構造体と上記中間部材とに接続された対向する端部を有する流体アクチュエータシリンダであり、接続運動学的機構は、アクチュエータシリンダの長さの変化が、第1の近位アーム部の上記支持構造体に対する揺動を生じさせるように構成されている。
【0014】
各把持アームの第1の近位部の上記の内側に曲がりやすいパネルは、例えば、可撓性パネルまたは相互に関節接合された要素で構成される鎖の形態であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のさらなる特徴および利点は、純粋に非限定的例として示される添付図面を参照して説明される以下の説明から明らかになるであろう。
【
図1】本発明による把持デバイスの好ましい実施形態に係る第1の例の斜視図である。
【
図2】
図1の把持デバイスにより操作される対象であるアイテムまたはコンポーネントのキットを有するコンテナの例の斜視図であり、アイテムまたはコンポーネントは、車両のエンジンユニットを組み立てるために産業ラインで用いられる。
【
図3】
図1の把持デバイスの第1の動作状態における把持アームのうちの1つの側面図である。
【
図4】
図3の把持アームの第2の動作状態における横から見た図である。
【
図5】
図3の把持アームの一部の分解斜視図である。
【
図6】
図5に示される一部の3つの異なる動作状態における横から見た図である。
【
図7】本発明による把持デバイスの好ましい実施形態に係る第2の例の横から見た図である。
【
図8】異なる動作条件における、
図7の把持デバイスの把持アームのうちの1つを横から見た図である。
【
図9】異なるサイズおよび形状のアイテムと共に、
図7の把持デバイスの使用を示す図である。
【
図10】異なるサイズおよび形状のアイテムと共に、
図7の把持デバイスの使用を示す図である。
【
図11】異なるサイズおよび形状のアイテムと共に、
図7の把持デバイスの使用を示す図である。
【
図12】異なるサイズおよび形状のアイテムと共に、
図7の把持デバイスの使用を示す図である。
【
図13】異なるサイズおよび形状のアイテムと共に、
図7の把持デバイスの使用を示す図である。
【
図14】異なるサイズおよび形状のアイテムと共に、
図7の把持デバイスの使用を示す図である。
【
図15】
図7に示される把持デバイスの部分的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[好ましい実施形態の説明]
図1を参照すると、参照符号1は、好ましい実施形態に係る第1の例の把持デバイスの全体を示し、当該把持デバイスは、可変の形状およびサイズのアイテムまたはコンポーネントを操作するために、例えば、ロボット上で使用可能である。把持デバイス1は、例えば、自動車のエンジンユニットを組み立てるための産業ラインでの使用を目的とするアイテムまたはコンポーネントを操作するために用いられてよい。しかしながら、本発明による把持デバイスは、一般的な適用のためのものであり、特に、たとえ互いに大きく異なる形状およびサイズのアイテムまたはコンポーネントであっても、それらに把持デバイスが自動的に適合可能であることが必要とされるあらゆる適用に対し、把持デバイスが対象とされていることが明らかである。さらに、ここに示される把持デバイスは特に、操作ロボット上のエンドエフェクタとしての使用が意図されているが、あらゆる他のタイプのマシンまたは操作デバイス上でのその適用を除外するものではない。
【0017】
図1に示される通り、把持デバイス1は、支持構造体2および複数の把持アーム3を有する。本発明によると、把持アーム3は少なくとも2つであることで十分である。図示された例において、把持アーム3の数は4である。
【0018】
図示された事例においては、支持構造体2は、環状板の形態であり、環状板には固定ネジを、把持デバイス1が取り付けられる必要のあるロボットの手首によって支持されるフランジ(不図示)に係合するための穴が設けられている。把持アーム3は、環状板2を始点に、互いに等しい角度距離において離間された半径方向に延在する。
【0019】
各把持アーム3は、第1の近位部3A、第2の遠位部3Bおよび第3の遠位部3Cを有する。各把持アーム3の第1の近位部3Aは、環状板2に回動可能に接続されている。第2の遠位部3Bは、第1の近位部3Aに回動可能に接続されている。第3の遠位部3Cは、第2の遠位部3Bに接続されている。
【0020】
図示された例について(
図3、3A~3Eおよび5を参照)、第1の近位部3Aは、二対のアーム301、302により画される関節接合された四辺形構成を有する。特に
図5を参照すると、各アーム301、302は、ブラケット303に関節接合された端部を有する。ブラケット303は、フォーク形状を有し、環状板2の対応する側面に強固に接続された中央部と、二対のアーム301および302が関節接合されている先の2つのウィングとを有する。
【0021】
ブラケット303と対向する側で、それぞれのアーム301、302が、第1の部分3Aと第2の部分3Bとの中間にある接続部材304に関節接合されており、図示された例において、接続部材304は、共に強固に接続された2つの平行且つ離間されたプレート305を有する。
【0022】
図1で見てわかるように、それぞれのアクチュエータデバイス4が把持アーム3と関連付けられており、アクチュエータデバイス4は、環状板2に対する第1の部分3Aの関節運動を命令するために設けられている。
図5で見ることができるように、各アクチュエータデバイス4は、円筒体4Aおよび摺動ロッド4Bを有する流体アクチュエータシリンダ(好ましくは、油圧シリンダ)である。
【0023】
本明細書および添付図面では、アクチュエータデバイス4の電源回路を示していないが、電源回路が任意の既知の態様で実装されてよい。典型的に、この回路は、加圧下で流体をアクチュエータシリンダに供給するためのソレノイド弁を含む。さらにまた、この分野の従来技術により、当該システムは、オペレータにより付与される命令または所定のプログラムに基づき自動的に生成される命令により上記のソレノイド弁を制御する電子コントローラを有する。これらのコンポーネントは任意の既知の態様で作成できるので、これらのコンポーネントに関する構造上の詳細は省略している。これらを別途に捉えた場合、これらの詳細は本発明の主題ではなく、最終的に図面からこれらを除外した方が、図面がシンプルでより容易に理解しやすくなるからである。
【0024】
再度
図5および
図6を参照すると、各アクチュエータシリンダ4は、接続運動学的機構(関節接合されたアーム306、307、308、309)により、環状板2およびプレート305にそれぞれ接続された対向する端部を有し、接続運動学的機構は、
アクチュエータシリンダ4
の長さの変化が、第1の部分3Aの環状板2に対する
揺動を生じさせるように構成されている。図示された例において、上記の運動学的機構は、いわゆるHoeken運動学的機構(本技術分野で知られている)に対応し、且つ、各アクチュエータシリンダ4が、各アーム部3Aに対し平行且つ隣接する位置に配置されることを可能にし、その結果、各部3Aおよび関連するアクチュエータシリンダ4で構成されるアセンブリのサイズ全体を小さく維持できるという利点を有する。しかしながら、本発明の目的として、接続運動学的機構により制御されるアクチュエータシリンダ4とアーム部3Aとの間の接続運動学的機構の配置および構成は、任意のタイプのものであってよい。
【0025】
具体的に
図3および
図4を参照すると、1または複数の腱5が、把持デバイス1の各把持アーム3に関連付けられている(図示された例においては、互いに実質的に平行且つ離間された2つの腱が設けられている)。各腱5は、第1の部分3Aに関連付けられた第1の先端5Aと、第2の部分3Bに関連付けられた第2の先端5Bとを有する。
図3および
図4に示される例においては、各腱5の先端5Aは、アクチュエータシリンダ4に関連付けられた運動学的機構の要素309に接続されている一方、第2の先端5Bは、以下に詳しく後述する第2の部分3Bの構造体に接続されている。
【0026】
2つの腱5は、プラスチック材料の可撓性パネル7(
図3Aも参照)に支持される一連のガイド要素6に形成される貫通孔6A(
図3Bも参照)を通して自由に摺動可能に係合される。
図3および
図4を参照すると、可撓性パネル7は、把持されるべきアイテムまたはコンポーネントと面する、アーム3の内側にあるプレート305により片持ち梁式に支持される。可撓性パネル7は、プレート305に接続された一端部を有し、対向する端部は自由であり、対向する端部は、把持されるアイテムまたはコンポーネントと係合した後、アーム3の部分3Aの方向において運動可能な曲がりやすい要素を構成する。ガイド要素6は、パネル7の、把持されるべきアイテムまたはコンポーネントと面する表面と対向する表面に取り付けられている。
【0027】
具体的には、
図4は、把持されるアイテムまたはコンポーネント(不図示)との係合後にパネル7の取る構成を示す。見てわかるように、この係合の結果、パネル7が曲がると、パネル7はガイド要素6を押し、腱5の張力を生じさせ、これにより、第2の部分3Bの第1の部分3Aに対する
揺動(oscillation)または座屈(buckle)を生じさせる。
【0028】
従って、第1の部分3Aの揺動運動は、それぞれのアクチュエータシリンダ4により積極的に制御される一方、第2の部分3Bの運動は、第1の部分3Aの運動により自動的に得られる結果であり、さらなるアクチュエータにより制御されない。その結果、上記のアーム3の各々は、いわゆる「劣駆動」操作アームのカテゴリに属する。
【0029】
図3、
図3Cおよび
図4を参照すると、各アーム3の第2の遠位部3Bは、相互に関節接合された要素311、312で構成される鎖の形態の背面部材310を有する。312と示されるこの鎖の端部要素は、プレート305(第1の部分3Aと第2の部分3Bとの間の中間接続部材304を構成)への、および、第3の遠位部3C(
図3Eの斜視図で見ることができる)への回動式接続のためのヒンジブッシング313を有する。
【0030】
第2の遠位部3Bは、把持されるべきアイテムまたはコンポーネントと面する内側要素をさらに有する。内側要素は、第1の端部314Aおよび第2の端部314Bを有する可撓性補助パネル314を含み、第1の端部314Aおよび第2の端部314Bの各々は、中間接続部材304に、および、第3の遠位部3Cに、回動式接続するための2つのヒンジブッシング315を有する。
図3Eで見えるように、遠位部3Cは、関節ピンをブッシング313および315に係合させるための2つの穿孔された付属部316を有する。
【0031】
可撓性補助パネル314は、複数の接続要素317により、背面部材310と実質的に平行に、且つ背面部材310から離間された状態で保持される。好ましい実施形態において、接続要素317は、パネル314および2つのストリップ318の両方と共に単一のシートに形成されたシート要素の形態であり、ストリップ318は、固定ネジを、背面部材310の要素311、312に係合させるための穴319を有する。
【0032】
腱5をガイドするために設けられた複数のガイド要素320(
図3Dも参照)もまた、第2の遠位部3Bと関連付けられている。ガイド要素320は、可撓性補助パネル314のストリップ318の同一固定ネジにより、背面部材310の要素311、312に固定される。好ましい実施形態において、ガイド要素320は、固定ネジのための穴および2つの追加の貫通孔320Bを有する2つの側部320Aを備えたブリッジ形状を有し、貫通孔320Bはネジ穴に対し直角に向けられており、そこを通して腱5が係合される。以下に、上記の把持デバイス1の動作について説明する。
【0033】
図1に見られる把持デバイス1は、様々な形状およびサイズのアイテムまたはコンポーネントを取得、操作、および置くために任意のタイプのロボットに取り付けられてよい。
【0034】
例えば、把持デバイス1は、エンジンユニットのアセンブリラインにおいて組み立てられるべきアイテムおよびコンポーネントのキットを準備するロボットによって用いられてよい。
図2は、アイテムまたはコンポーネントPを収容するコンテナ8の例を示す。アイテムまたはコンポーネントPは取得され、手動オペレータまたは自動デバイスにより、アセンブリライン沿いで組み立てるために設けられた位置へと搬送される必要がある。
【0035】
図1、4および5を参照すると、把持デバイス1がアイテムPを把持する必要があるとき、把持デバイス1は、
図1に示されるように、把持アーム3が開放位置にある状態で位置付けられる。この位置から開始して、アクチュエータシリンダ4の作動化により、ロボットにより支持される環状板2に対する第1の部分3Aの
揺動を生じさせる。すると、アーム3が、アイテムPを取得すべく、各アーム3の可撓性パネル7と係合するまでアイテムPに接近する。この係合の後、可撓性パネル7は、例えば、
図4に見られるようなアーチ状の適合構成を取り、あるいは、いずれの場合においても、可撓性パネル7は弾性的に変形することで、第1の近位部3Aのガイド要素6が腱5に張力を生じさせるように至らせる。既に上記した通り、腱5の張力は、把持されるべきアイテムP に向けて第2の遠位部3Bの
揺動を生じさせる。
図4に見られるように、部分3Bのさらなる
揺動の後、今度は補助可撓性パネル314が、第3の遠位部3Cの
揺動を生じさせる。
【0036】
図9、10、11、12および13は、以下に説明する第2の実施形態について、上記の操作後の異なる形状およびサイズのアイテムPの把持状態を示す。さらに
図14を参照すると、本発明の重要な利点は、毎回アクチュエータシリンダ4の作動後に、把持デバイス1のアーム3の各々が、他の把持アーム3が取る把持構成とは独立した把持構成に配置される点である。また
図15を参照すると、アーム3間に取得されるアイテムPが存在しない状態での把持デバイス1の運動の間に、例えば、異物との偶然の衝突の後、それぞれのアーム3が外部からの力Fを受けた場合、アーム3は弾性的に曲がることができる。このことが、本発明による把持デバイスを、協働ロボット、すなわち、オペレータと一緒に働くロボットと共に、オペレータが閉め出されるフェンスで囲まれた領域ではない領域において使用されることについても好適とする。
【0037】
図7、
図8は、好ましい実施形態の第2の例を示す。これらの図において、
図1~6の部分と同一または対応する部分は、同一の参照符号で示されている。上記の第1の例との主な差は、この事例においては、各アーム3の第1の近位部3Aの内側にある可撓性パネル7と、各アーム3の第2の遠位部3Bの可撓性補助パネル314の両方が、相互に関節接合された要素の鎖で構成される点である。
図8を参照すると、背面部材310は、関節ピンにより互いに直接接続された要素を有し、背面部材がガイド要素320を支持する。
【0038】
好ましい実施形態の第2の例の動作は、第1の例について上記した動作と完全に同様である。
【0039】
具体的に、
図9および
図10で見てわかるように、本発明による把持デバイス1は、たとえアイテムを把持する前であったとしても、アーム3を閉じた状態の適合構成に配置でき、これにより、把持デバイス1が、例えば、コンテナの底部に置かれたアイテムを収集するために、アイテムの保持コンテナの中へ入りやすくする。
【0040】
上記の説明から明らかなように、本発明による把持デバイスは、高い動作柔軟性を有することを特徴とし、その結果、把持デバイスを、たとえ大きく異なる形状およびサイズのアイテムおよびコンポーネントであったとしてもそれらと共に動作できるようにする。さらに、この適合構成のおかげで、把持デバイスは、オペレータが存在する環境においてさえも完全に安全に動作できる。
【0041】
当然、本発明の原理を損なうことなく、添付の特許請求の範囲により画定される本発明の範囲から逸脱することなく、純粋に例示として記載および図示されたものから、構造の詳細および実施形態は非常に大きく変わってよい。
【0042】
例えば、支持構造体2は、添付図面に図示された環状板の構成ではなく、任意の異なる構成を有してよい。各アクチュエータシリンダ4を、各把持アーム3の部分3Aへと接続する運動学的機構も、アクチュエータシリンダ4の長さの変化を、支持構造体2に対する部分3Aの揺動に変えることができる任意のタイプのものであってよい。また上記の説明から明らかに推測できるように、内側に曲がりやすいパネル7、背面部材310および補助内側パネル314の構造の詳細は、示された例に対し大きく変わってよい。