(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】音響部材用組成物および音響部材
(51)【国際特許分類】
H04R 7/20 20060101AFI20230404BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20230404BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230404BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20230404BHJP
C08L 23/22 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H04R7/20
H04R1/02 106
C08K3/013
C08L101/12
C08L23/22
(21)【出願番号】P 2021530475
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2019037801
(87)【国際公開番号】W WO2021005807
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2019127198
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】宮田 智矢
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-169321(JP,A)
【文献】特開2010-144142(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018426(WO,A1)
【文献】特開平05-168090(JP,A)
【文献】特開2007-214840(JP,A)
【文献】特開2001-064461(JP,A)
【文献】特開2018-177853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 7/20
H04R 1/02
C08K 3/013
C08L 101/12
C08L 23/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ジエン系のブチルゴムと、液状ポリマーを含む音響部材用組成物であって、該組成物の第一の架橋体の、20℃、動的歪み0.1%、周波数1Hzの条件で測定される動的粘弾性測定における内部損失(tanδ)が、該組成物から液状ポリマーを除いて形成した第二の架橋体と比較して120%以上に上昇し、且つ、該第一の架橋体のJIS K6253に準拠するA硬度が該第二の架橋体のA硬度の60%以上90%以下であ
り、前記第一の架橋体のA硬度が、110℃、300時間保持の前後の変化率で10%未満であることを特徴とする音響部材用組成物。
【請求項2】
前記液状ポリマーの分子量が1,000~120,000であり、前記液状ポリマーと前記ブチルゴムとのSP値差が±0.5以内であることを特徴とする請求項1に記載の音響部材用組成物。
【請求項3】
前記第一の架橋体中に樹脂材料による海島構造を有さないことを特徴とする請求項1又は2に記載の音響部材用組成物。
【請求項4】
前記ブチルゴム100質量部に対して、前記液状ポリマーを1~100質量部含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の音響部材用組成物。
【請求項5】
前記液状ポリマーは、前記ブチルゴムと同じ構成単位を含む、請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の音響部材用組成物。
【請求項6】
前記組成物は、さらに加硫剤及びフィラーを含有する請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の音響部材用組成物。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の音響部材用組成物を架橋成形してなる音響部材。
【請求項8】
前記音響部材は、スピーカーのエッジである請求項
7に記載の音響部材。
【請求項9】
前記音響部材は、ハンドマイクのマイクカプセルを支持するインシュレータである請求項
7に記載の音響部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカーのエッジやハンドマイクのインシュレータなどの音響部材を製造するための組成物及び該組成物を用いた音響部材に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカーの振動板の外周端部を支えるエッジ部材(スピーカーエッジという)など、振動板の余分な振動を吸収して発生させる音質を向上させる部材には、各種ゴムの弾性材料が使用されている。また、ハンドマイクなどにおいて、グリップ部からのハンドリングノイズをカットして、内包されるマイクカプセルでの集音性能を高めるインシュレータにも同様のゴム弾性材料が使用されている。
これらの弾性材料には、適度に高い内部損失とともに、柔軟性及び耐久性が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では振動吸収性のよい熱可塑性樹脂と振動吸収性がよくかつ架橋したゴムとを所定量含み、熱可塑性樹脂中に粒子状となったゴムが均質に分散しているスピーカーのフリーエッジ材料が開示されている。実施例ではポリプロピレンと臭素化ブチルゴムを混練し、これに架橋剤として樹脂加硫剤と軟化剤として低分子量ポリブテンを加えて材料を調製し、成型したものはプラスチックのような硬さではなく、架橋ゴムのような柔軟性と弾性があるとされている。
また、ゴムにプロセスオイルを配合して軟化させる方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の材料では、ある程度の柔軟性と弾性とが達成されているようであるが、具体的な評価としてはこの材料で作ったフリーエッジの硬度が65(JIS A)であることに留まっている。ここでは振動吸収性のよい材料を使用したことで、従来のフリーエッジと同レベル以上のものが得られるとされているが、振動吸収性能については不明である。
また、プロセスオイル等の成分は、架橋後も液体のまま残り、ブリードアウトを起こしやすいという問題がある。
このようにゴム組成物を改質して音響部材用途に適した材料を提供しようという試みはあるが、音質的に満足できる材料の提供に至っていないのが現状である。
【0006】
そこで本発明の目的は、音響部材として適した、適度に高い内部損失と共に、柔軟性を確保し、さらに内添剤のブリードアウトなど発生せず耐久性に優れ、設計硬度を維持し得る音響部材用組成物及び該組成物を用いた音質に優れる音響部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、非ジエン系のブチルゴムと、分子量が1,000~120,000の液状ポリマーを含み、前記液状ポリマーと前記ブチルゴムとのSP値差が±0.5以内であることを特徴とする音響部材用組成物が提供される。
【0008】
また、本発明の他の態様によれば、非ジエン系のブチルゴムと、液状ポリマーを含む音響部材用組成物であって、該組成物の第一の架橋体の、20℃、動的歪み0.1%、周波数1Hzの条件で測定される動的粘弾性測定における内部損失(tanδ)が、該組成物から液状ポリマーを除いて形成した第二の架橋体と比較して120%以上に上昇し、且つ、該第一の架橋体のJIS K6253に準拠するA硬度が該第二の架橋体のA硬度の60%以上90%以下であることを特徴とする音響部材用組成物が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、音響部材として適した、適度に高い内部損失と共に、柔軟性を確保し、さらに内添剤のブリードアウトなど発生せず耐久性に優れ、設計硬度を維持し得る音響部材用組成物を提供することができる。
また、本発明に係る音響部材用組成物を用いることで、耐久性と共に音質に優れた音響部材の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る音響部材用組成物をエッジに適用したスピーカーの模式的断面図である。
【
図2】本発明に係る音響部材用組成物をインシュレータに適用したハンドマイクの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
<音響部材用組成物>
本発明に係る音響部材用組成物は、非ジエン系のブチルゴムと液状ポリマーを含む。好ましい実施形態について、以下に詳述する。
【0012】
(非ジエン系のブチルゴム)
ブチルゴムはイソブチレンに少量のイソプレンが共重合した不飽和度の低い合成ゴムであり、環境耐性に優れたゴム材料である。種類としてはレギュラーブチルゴムとハロゲン化ブチルゴムがある。不飽和度やハロゲン含量によってグレード分けされている。ハロゲン化ブチルゴムとしては塩素化ブチルゴム及び臭素化ブチルゴムが典型的である。
ブチルゴムは、一つの種類またはグレードを単独で、あるいは複数の種類またはグレードを組み合わせて使用することができる。
【0013】
(液状ポリマー)
本発明では、ブチルゴム組成物を改質するために液状ポリマーを含有する。なお、該液状ポリマーを改質剤ということがある。液状ポリマーはリキッドポリマーあるいは液状ゴムとも呼ばれ、常温で液状(半固体状を含む)のポリマーである。低分子量から高分子量まで様々なグレードがあるが、本発明では重量平均分子量(Mw)が1,000以上120,000以下のものを使用する。Mwが1,000以上であれば、本発明に係る音響部材用組成物から得られる架橋体(第一の架橋体ということがある)が必要以上に軟化することなく、べたつきもないものが得られる。Mwが120,000以下であれば、液状ポリマーを均一に組成物中に分散させることができ、均質な第一の架橋体を得ることができる。液状ポリマーのMwは2,000以上であることが好ましい。
【0014】
液状ポリマーとしてはポリブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどが挙げられる。特に本発明では、液状ポリマーはブチルゴムの構成単位であるイソブチレン単位を有するポリイソブチレンであることが好ましい。また、異なる構成単位を有するものでも、ブチルゴムとの相溶性に優れ、成形したゴム架橋体において、海島構造を形成しないものであれば、使用することができる。その際の指標として溶解度パラメータ(SP値)を採用することができ、ブチルゴムのSP値(7.3~8.1)に対して±0.5以内であれば、相溶性に優れると言える。ポリイソブチレンもこのSP値の範囲内である。単独で上記SP値の範囲を満たさない場合でも、混合することで上記SP値の範囲を満たす時は使用できる場合がある。したがって、液状ポリマーは1種を単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。なお、複数を混合する場合、分子量についても混合物としての分子量(Mw)を採用するが、Mwの近いものを組み合わせることが好ましい。
【0015】
本発明における「SP値」とは、ヒルデブラントパラメータとしての値である。SP値としては理論値として公開されている値を採用することができる。また、公知の計算方法によって求めることもできる。さらには濁点滴定法によって実測することができる。
また、重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0016】
(配合比)
本発明に係る音響部材用組成物における非ジエン系のブチルゴムと液状ポリマーとの配合比は、音響部材として適した特性を満足する範囲で適宜最適な配合比を選択することができる。例えば、ブチルゴム100質量部に対して液状ポリマーを、好ましくは1~100質量部、より好ましくは10~60質量部配合することができる。
【0017】
(その他成分)
本発明に係る音響部材用組成物には、非ジエン系のブチルゴムと液状ポリマー以外に、ゴム組成物を架橋させるための加硫剤及び加硫促進剤(加硫助剤)、フィラー、加工助剤等の当該技術分野で公知の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で適宜添加することができる。また、その他のゴム(エラストマー)成分や樹脂成分も本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。但し、このようなゴムまたは樹脂成分は、いずれも海島構造を形成しない範囲で適用されることが好ましい。
【0018】
これらの中でも、フィラーを添加することで、得られる架橋体の硬度を高めることができる。フィラーは、特に限定されるものではないが、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、チタンホワイトなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0019】
加硫剤(加硫促進剤を含む)は、特に限定されず、例えば、硫黄、テトラアルキルチラウム-ジスルフィドなどの硫黄系加硫剤、金属酸化物、有機過酸化物、樹脂加硫剤などが挙げられ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。特に硫黄と共に金属酸化物を含んでいることが好ましい。金属酸化物は、特に限定されず、例えば酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどが挙げられ、酸化亜鉛であることが好ましい。
加硫剤の配合量は、ブチルゴム100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。
【0020】
加工助剤は、加工性を向上する材料であれば特に限定されず、例えば、ステアリン酸等の脂肪酸骨格を有する化合物や、アミン類などが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
(音響部材用組成物の調製方法)
本発明に係る音響部材用組成物の調製方法については特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができるが、まず、各材料成分を公知の混練機で十分均一になるまで混練し、未加硫の組成物とする。次に未加硫組成物を圧縮プレス成形、トランスファー成形などにより加熱しつつ加硫しながら所望の形状に成形することができる。
【0022】
(架橋体の物性)
本発明に係る音響部材用組成物の架橋体(第一の架橋体)は、20℃、動的歪み0.1%、周波数1Hzの条件で測定される動的粘弾性測定における内部損失(tanδ)が、該組成物から液状ポリマーを除いて形成した第二の架橋体と比較して120%以上に上昇し、且つ、該第一の架橋体のJIS K6253に準拠するA硬度が該第二の架橋体のA硬度の60%以上90%以下である。
【0023】
液状ポリマーを含まないゴム組成物の架橋体である第二の架橋体は、本発明に係る音響部材用組成物から液状ポリマーを除いた組成物から形成した架橋体であり、本発明の規定の範囲内及び範囲外の液状ポリマー、あるいはプロセスオイル等の軟化剤のいずれも含まない、いわゆる非改質のブチルゴム組成物の架橋体である。この第二の架橋体の上記条件で測定されるtanδ値を100%としたとき、本発明に係る架橋体のtanδ値が120%以上であれば、音響部材として適した振動吸収性を発現することができる。
【0024】
tanδは、例えば、JIS K 6394(加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの動的性質試験方法/小型試験装置)に準拠して測定される値であり、損失たて弾性係数(E”:Pa)と貯蔵たて弾性係数(E’:Pa)との比(E”/E’)である。tanδの値が大きいほど、振動を低減する効果が高い。
【0025】
また、第一の架橋体のA硬度が第二の架橋体のA硬度の60%以上であれば、柔らかくなりすぎることがなく、得られた製品にべたつき(タック性)もなく、取り扱いが容易となる。第一の架橋体のA硬度が第二の架橋体のA硬度の90%以下であれば、液状ポリマーの添加効果が十分に発現され、適度な柔らかさを製品に与えることができる。具体的なA硬度としては、50度前後(45度~55度程度、より好ましくは47度~52度)となるように組成物の成分や量を調整することが好ましい。ここでのA硬度は製造後すぐに測定した初期硬度を示す。
【0026】
さらに、第一の架橋体のA硬度が、110℃、300時間保持の前後の変化率(絶対値)で10%未満であることが好ましい。当該変化率が10%未満であれば、実際の製品の使用環境においてはほとんど変化がなく、長期に亘って優れた性能を維持することができる。当該変化率は5%以下がより好ましく、2%以下が最適である。実質的に変化しない(0%)ことが特に好ましい。
【0027】
(音響部材)
本発明に係る音響部材用組成物は、特に振動する部材を有する音響部材において、該振動部材の振動を制御する制振材として使用される。代表的には、スピーカーの振動板とフレーム間とを繋ぐエッジ等のスピーカー部材が挙げられる。また、音響部材としては、スピーカー部材以外に、不要な振動を吸収/排除したい音響部材(例えばマイクインシュレーター)にも使用することができる。
【0028】
図1は、本発明に係る音響部材用組成物からなるエッジが適用されるスピーカーの構成を模式的に示す断面図である。このスピーカー10は、スピーカフレーム14に取り付けられた、振動板11とコイル12と磁石13とを備えている。振動板11は、本発明に係るエッジ(サラウンド(surround)ともいう)15によってスピーカフレーム14に取り付けられている。エッジ15は、当技術分野で理解されるように、ロール形状を有する。典型的な例では、エッジ15は、任意の適切な種類ののり、ペースト、接着剤あるいは留め具、または当技術分野で理解される任意の好適な方法によって、振動板11に取り付けられた第一端部15aと、スピーカフレーム14に取り付けられた第二端部15bとを有している。コイル12は、ボイスコイルと称されることもあり、可撓性サスペンション16によってスピーカフレーム14に取り付けられてもよい。可撓性サスペンション16は、一般に「スパイダー(spider)」と呼ばれ、波形の生地などの可撓性材料、または、当技術分野で理解される任意の適切な方法で作製される。コイル12は、従来のコイルと同様に、コイルの外側の一部分に巻き付けられたワイヤ巻線(不図示)を有しており、例えば、当技術分野で理解される端子盤(不図示)に接続されている。磁石13は、当技術分野で理解される任意の適切な種類の取り付け構造によってスピーカフレーム14に取り付けられている。
エッジのサイズ(厚みや長さ等)は特に限定されるものではなく、スピーカーのサイズや出力パワーに応じて適宜最適なサイズに形成することができる。
【0029】
本発明に係る音響部材用組成物をスピーカーのエッジに適用することで、インパルス応答に優れた挙動が実現できるため、高音から低音まで、解像度のよい音を再現するスピーカーを提供することができる。また、オイルブリードがなく耐久性に優れるため、エッジの張替えを行うことなく長期間使用が可能となる。さらにブチルゴムは、温度特性がよいため、環境温度に左右されにくく、寒冷地から酷暑地までの様々な環境下で安定した音を提供し得るスピーカーを形成することができる。
【0030】
図2は、本発明に係る音響部材用組成物からなる消音部材(インシュレータ)が適用されるハンドマイク20の構成を模式的に示す断面図である。同図に示すようにグリップにあたるボディ23にマイクカプセル21を取り付ける部位に、本発明に係る音響部材用組成物からなるインシュレータ22を配置することで、ハンドリングノイズをマイクカプセルで拾うことがなくなり、優れた音質の集音が可能となる。24はマイクカプセル21を覆う風防である。
【0031】
なお、スピーカーのエッジとハンドマイクのインシュレータでは、要求される性能、材料の厚みなどに差異があることから、弾性特性や硬度についてもそれぞれ最適化されることが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で当業者が適宜変更できるものである。
【0033】
(対照例)
ブチルゴム(JSR社製、商品名「ブチル268」)100質量部に対して、フィラーとしてカーボンブラック(東海カーボン社製、商品名「シーストSO(FEF)」)50質量部、酸化亜鉛(正同化学工業社製、2種酸化亜鉛)5質量部、加工助剤としてステアリン酸(日油社製)2質量部、加硫剤として硫黄(細井化学社製)1.5質量部、加硫促進剤としてテトラメチルチウラムジスルフィド(略号:TMTD、大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーTT-P(TT)」)1質量部及び2-メルカプトベンゾチアゾール(略号:MBT、大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーM-P(M)」)1質量部を配合し、第二の架橋体製造用の対照組成物とした。
【0034】
(実施例1~4、比較例1~4)
表1に示す配合で各組成物を調製した。ゴム共通組成は対照例と同じ材料を同じ組成比で配合し、改質剤として表1のI~VIIを使用した。I~VIIの詳細は以下の通り。
I:ポリブテン(JXTGエネルギー社製、商品名「日石ポリブテン」、グレードLV-7、Mn=300)
II:ポリブテン(JXTGエネルギー社製、商品名「日石ポリブテン」、グレードHV-35、Mn=750)
III:ポリブテン(DEALIM社製、商品名「PB-2400」)
IV:ポリイソブチレン(JXTGエネルギー社製、商品名「テトラックス」、グレード6T)
V:ポリイソブチレン(山東鴻瑞石油化工社製、商品名「HDR-950」)
VI:ポリブタジエン(日本曹達社製、商品名「NISSO-PB」銘柄B-3000、Mn=3200)
VII:プロセスオイル(日本サン石油社製、商品名「SUNTHENE 410」)
【0035】
【0036】
改質剤の重量平均分子量(Mw)は、GPCにより測定した。SP値は文献値を採用した。
各例における諸特性は、以下の方法により測定した。また、結果を表2に示す。
<弾性特定>
(測定サンプルの製造)
表1に示す配合の組成物をゴム用混練ロールを用いて室温で、約15分混練し、160℃で、30分加熱することにより加硫して、測定サンプル(長さ20mm、幅5mm、厚み2mm)を成型した。
(測定条件)
JIS K 6394に準拠し、TAインスツルメンツ社製の動的粘弾性測定装置(型番RSA-G2)を使用して、20℃、動的歪み0.1%、周波数1Hzの条件で弾性係数E’(MPa)とtanδを測定し、対照例を100%とした場合の相対比をそれぞれ示した。
【0037】
<環境試験:A硬度>
JIS K6253に準拠して測定した。
また、耐熱試験用恒温槽中、110℃で300時間保持する耐久試験を実施した。試験開始前(初期)のA硬度と、対照例を100%とした場合の相対比、さらに試験後のA硬度と、初期値からの変化率を表2に示す。
【0038】
<音感パネルテスト>
約10Lサイズのスピーカーボックスを用い、下記方法で成型したエッジを6.5インチサイズスピーカーユニット振動板に取り付け、対照例を0とし、-5~+5の10段階評価として、10名のパネラーによる主観評価を実施した。結果を表2に示す。評価基準は以下の通り。
「立ち上がり」
対照例のエッジを有するスピーカーでの音の立ち上がりを基準として、立ち上がりが早くタイトな音であれば+1、立ち上がりが遅くルーズな音であれば-1として付加/減点方式で評価した。
「明瞭度」
対照例のエッジを有するスピーカーでの明瞭度を基準として、奥行き感のあり、小さな音まで認識できる音であれば+1、奥行き感がなく、小さな音が埋もれて認識できない音であれば-1として付加/減点方式で評価した。
【0039】
(エッジ(及びスピーカー)の製造例)
エッジ用の金型に、測定サンプル製造と同様に混練した混練物を配置し、同様の温度、時間で成型した。得られたエッジを
図1に示すスピーカーの振動板11に取り付け、さらにフレーム14に熱可塑性ゴム系溶剤型接着剤で接着した。
【0040】
【0041】
比較例1,2ではMwが1000未満の低分子量のポリブテンを使用したことで、tanδは向上するもののA硬度が35前後と大きく低下し、また、成型ゴムの表面にべたつきが生じていた。また、音感パネルテストでは、比較例1,2では、ゴムの硬度が低下したことで明瞭度に劣る結果となった。
比較例3では、分子量は規定の範囲であったが、ポリブタジエンはブチルゴムとのSP値差が0.5より大きく、ブチルゴムとの相溶性が悪かった。ジエン構造の導入によりtanδは大きく向上したが、A硬度は対照例よりも高く、硬くなっており、環境試験では試験後に硬度がさらに高くなり、変化率が10%を越えていた。したがって、長期の耐久性に劣ると判断できる。
比較例4では、tanδ及び初期A硬度のいずれも対照例と変わりなく、添加の効果は確認されなかった。試験後に硬度がやや上昇し、耐久性は対照例よりも劣る結果となった。比較例3,4では柔軟性の改善がなく、音感パネルテストでは、立ち上がりに劣る結果となった。
一方、実施例1~4ではtanδが向上し、一方、初期硬度は有意に低下しており、音感パネルテストでは、実施例1~4では立ち上がり、明瞭度共に優れた結果が得られた。また、A硬度の変化率も対照例と同等かそれよりも優れる結果となった。
【符号の説明】
【0042】
10 スピーカー
11 振動板
12 コイル
13 磁石
14 スピーカフレーム
15 エッジ(音響部材)
16 可撓性サスペンション
20 ハンドマイク
21 マイクカプセル
22 インシュレータ(音響部材)
23 ボディ
24 風防