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特許7255740蒸着紙用原紙、蒸着紙、包装袋、積層体、及び液体紙容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】蒸着紙用原紙、蒸着紙、包装袋、積層体、及び液体紙容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 29/04 20060101AFI20230404BHJP
   D21H 19/82 20060101ALI20230404BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230404BHJP
   D21H 19/36 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
B32B29/04
D21H19/82
B65D65/40 D
D21H19/36 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022178850
(22)【出願日】2022-11-08
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2022109283
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022142414
(32)【優先日】2022-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】社本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】若林 美咲
(72)【発明者】
【氏名】浪岡 萌夏
(72)【発明者】
【氏名】野一色 泰友
【審査官】青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/010040(WO,A1)
【文献】特開2019-064684(JP,A)
【文献】特開2019-059141(JP,A)
【文献】特開2022-050503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D21B 1/00- 1/38
D21C 1/00-11/14
D21D 1/00-99/00
D21F 1/00-13/12
D21G 1/00- 9/00
D21H 11/00-27/42
D21J 1/00- 7/00
C09D 1/00-10/00;
101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の少なくとも一方の面に、クレーコート層及び樹脂層を前記紙基材側からこの順に有し、
前記クレーコート層は、無機顔料及びバインダーを含有し、
前記クレーコート層における、前記バインダーに対する前記無機顔料の質量比(無機顔料/バインダー)は、30/70以上70/30以下であり、
前記クレーコート層の塗工量(固形分換算)が、8g/m以上20g/m以下である、蒸着紙用原紙。
【請求項2】
前記無機顔料が、カオリン及び炭酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の蒸着紙用原紙。
【請求項3】
前記バインダーが、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-ブタジエン系樹脂、及びポリ乳酸からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の蒸着紙用原紙。
【請求項4】
前記樹脂層が、ポリウレタン系樹脂及びポリ乳酸からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の蒸着紙用原紙。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の蒸着紙用原紙と蒸着層とを有し、
前記蒸着層は、前記蒸着紙用原紙の前記樹脂層上に設けられている、蒸着紙。
【請求項6】
請求項5に記載の蒸着紙を用いてなる、包装袋。
【請求項7】
熱可塑性樹脂層、請求項5に記載の蒸着紙、及びシーラント層をこの順に有する、積層体。
【請求項8】
請求項7に記載の積層体を備える、液体紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸着紙用原紙、前記蒸着紙用原紙を用いた蒸着紙、前記蒸着紙を用いた包装袋、前記蒸着紙を有する積層体、及び前記積層体を用いた液体紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医療品、電子部品等の品質低下を防止するための包装材料として、紙基材上に蒸着層が設けられたガスバリア性蒸着紙が用いられている。このような蒸着紙を使用するにあたっては、包装対象に応じて、蒸着紙を包装容器、トレー、包装袋等に加工することが一般的である。
【0003】
蒸着紙を所望の形状とするためには、例えば折り曲げ加工等の加工を行う必要があるところ、加工に起因して、ガスバリア性を有する蒸着層に亀裂等の損傷が生じ、蒸着紙のガスバリア性が低下する場合があった。
そこで、折り曲げ加工を行った後においても、蒸着紙のガスバリア性を維持する技術の研究が行われてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、紙基材の少なくとも一面に、水懸濁性高分子及びアスペクト比80以上の板状無機化合物を含有する樹脂層を有し、この樹脂層上に厚さ1~1000nmの金属又はセラミックからなる蒸着層を有する紙積層体が開示されている。特許文献1では、樹脂層の上に蒸着層が形成されることにより蒸着層が保護され、その結果、加工後も紙積層体のバリア性を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-035753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の紙積層体を用いれば、加工によるガスバリア性の低下を抑制することは可能である。しかしながら、加工後もガスバリア性を維持するための手段の選択肢を増やすため、さらなる手段の開発が求められている。
【0007】
本開示の課題は、酸素バリア性、水蒸気バリア性といったガスバリア性に優れ、折り曲げ加工がされた後も優れたガスバリア性を維持できる蒸着紙の製造を可能にする蒸着紙用原紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、紙基材、クレーコート層及び樹脂層をこの順に有する蒸着紙用原紙において、クレーコート層に無機顔料及びバインダーを特定質量比で配合し、かつ、クレーコート層の塗工量を特定量とすることで、ガスバリア性及び加工耐性に優れた蒸着紙を提供できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
【0009】
すなわち、本開示は、以下の〔1〕~〔5〕に関する。
〔1〕 紙基材の少なくとも一方の面に、クレーコート層及び樹脂層を前記紙基材側からこの順に有し、
前記クレーコート層は、無機顔料及びバインダーを含有し、
前記クレーコート層における、前記バインダーに対する前記無機顔料の質量比(無機顔料/バインダー)は、25/75以上75/25以下であり、
前記クレーコート層の塗工量(固形分換算)が、8g/m以上20g/m以下である、蒸着紙用原紙。
〔2〕 前記無機顔料が、カオリン及び炭酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含む、〔1〕に記載の蒸着紙用原紙。
〔3〕 前記バインダーが、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-ブタジエン系樹脂、及びポリ乳酸からなる群より選択される1種以上を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の蒸着紙用原紙。
〔4〕 前記樹脂層が、ポリウレタン系樹脂及びポリ乳酸からなる群より選択される1種以上を含む、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の蒸着紙用原紙。
〔5〕 〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の蒸着紙用原紙と蒸着層とを有し、
前記蒸着層は、前記蒸着紙用原紙の前記樹脂層上に設けられている、蒸着紙。
〔6〕 〔5〕に記載の蒸着紙を用いてなる、包装袋。
〔7〕 熱可塑性樹脂層、〔5〕に記載の蒸着紙、及びシーラント層をこの順に有する、積層体。
〔8〕 〔7〕に記載の積層体を備える、液体紙容器。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ガスバリア性に優れ、折り曲げ加工がされた後も優れたガスバリア性を維持できる蒸着紙の製造を可能にする蒸着紙用原紙を提供することができる。
また、上記蒸着紙用原紙を用いることで、ガスバリア性に優れ、折り曲げ加工がされた後も優れたガスバリア性を維持できる蒸着紙を提供することができる。
さらには、上記蒸着紙を用いることで、包装袋、積層体及び液体紙容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の具体的な実施態様を詳細に説明する。各実施態様の構成は、本開示の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0012】
本明細書において、数値範囲を表す「X以上Y以下」及び「X~Y」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲の下限値と上限値とが個別に記載されている場合、当該数値範囲は、任意の下限値と任意の上限値とを組み合わせたものとすることができる。
また、本明細書において、「層上」とは、該層の直上の位置(すなわち、該層に隣接する位置)、又は該層との間に任意の層を介した配置を意味する。
【0013】
[蒸着紙用原紙]
本開示の一実施態様に係る蒸着紙用原紙は、紙基材の少なくとも一方の面に、クレーコート層及び樹脂層を前記紙基材側からこの順に有する。クレーコート層は、無機顔料及びバインダーを、バインダーに対する無機顔料の質量比(無機顔料/バインダー)が25/75以上75/25以下となる量で含有する。また、クレーコート層の塗工量(固形分換算)は、8g/m以上20g/m以下である。
【0014】
「蒸着紙用原紙」とは、少なくとも一方の面に蒸着層を形成することにより、蒸着紙を得るための紙である。蒸着層の形成方法は特段限定されず、蒸着紙用原紙への直接的な蒸着、蒸着層の転写等であってよい。
本実施形態の蒸着紙用原紙を用いることで、折り曲げ加工の有無を問わず、高いガスバリア性、特に高い酸素バリア性及び水蒸気バリア性を示す蒸着紙を得ることができる。なお、本明細書では、折り曲げ加工がされた後もガスバリア性を維持できる特性を、「加工
耐性」と称することがある。
【0015】
本実施形態の蒸着紙用原紙は、紙基材の片面にクレーコート層及び樹脂層をこの順に有していてもよく、紙基材の両面にクレーコート層及び樹脂層をこの順に有していてもよいが、生産効率の観点からは、紙基材の片面にクレーコート層及び樹脂層をこの順に有することが好ましい。また、本実施形態の蒸着紙用原紙は、本発明の効果を損なわない限り、クレーコート層及び樹脂層以外の層を有していてもよい。
【0016】
<紙基材>
本実施形態における紙基材を構成するパルプは、植物由来のパルプを主成分とすることが好ましく、木材パルプを主成分とすることがより好ましい。木材パルプとしては、例えば、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、綿パルプ、麻パルプ、ケナフパルプ、竹パルプ等が挙げられる。紙基材は、本発明の効果を損なわない限り、パルプ繊維以外の材料、例えばレーヨン繊維、ナイロン繊維等の合成繊維を含有していてもよい。
【0017】
紙基材を構成するパルプに占める広葉樹パルプの割合は、リサイクル性向上の観点から、好ましくは65質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらよりに好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0018】
本実施形態の蒸着紙用原紙に用いられる紙基材としては、具体的には、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー紙、塗工紙、片艶紙、グラシン紙、グラファン紙、コートボール、カード紙、アイボリー紙、マニラボール等の板紙、ミルクカートン原紙、カップ原紙等が挙げられる。これらの中でも、紙基材は、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、上質紙、又は片艶紙であることが好ましい。液体紙容器用途の場合、紙基材は、積層体を保持する基材層としての機能を果たすものであり、積層体に液体紙容器材料としての強度を付与できるものが好ましい。
【0019】
(サイズ度)
紙基材のサイズ度は、特に限定されないが、ガスバリア性を向上させる観点から、JIS P 8122:2004に準ずるステキヒトサイズ度を1秒以上とすることが好ましい。紙基材のサイズ度の上限は、特に制限されないが、好ましくは100秒以下、より好ましくは30秒以下である。紙基材のサイズ度は、内添サイズ剤の種類、内添サイズ剤の含有量、パルプの種類、平滑化処理等によって制御することができる。
【0020】
内添サイズ剤としては、ロジン系、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン-不飽和カルボン酸系、高級脂肪酸系、石油樹脂系等が挙げられる。内添サイズ剤の含有量は、特に限定されないが、紙基材のパルプ100質量部に対して、好ましくは3質量部以下である。
【0021】
紙基材には、内添サイズ剤以外に、公知のその他の内添剤を添加してもよい。内添剤としては、例えば、填料、紙力増強剤、歩留り向上剤、pH調整剤、濾水性向上剤、耐水化剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、スライムコントロール剤、染料、顔料等が挙げられる。
【0022】
填料としては、例えば、二酸化チタン、カオリン、タルク、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム)、亜硫酸カルシウム、石膏、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネーテッドカオリン、珪藻土、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等が挙げられる。
【0023】
紙基材は、パルプスラリーを主成分とする抄紙原料を抄紙することにより得られる。
前記パルプスラリーは、木材又は非木材の原料チップから、蒸解、洗浄、漂白等の工程を経て得られる。蒸解工程、洗浄工程、漂白工程等は、公知の方法又はそれに準ずる方法に従って行うことができる。これらの工程を経て得られたパルプスラリーは、さらに、水の存在下で叩解される。
【0024】
紙基材の抄紙においては、公知の湿式抄紙機を適宜選択して使用することができる。抄紙機としては、長網式抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等が挙げられる。抄紙機によって形成された紙層は、例えば、フェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させることが好ましい。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
【0025】
また、上記のようにして得られた紙基材に、カレンダーによる表面処理を施して紙厚又は光沢のプロファイルの均一化を図ってもよい。カレンダー処理は、公知のカレンダー処理機により行うことができる。
【0026】
(坪量)
紙基材の坪量は、特に限定されないが、包装袋などの軟包装用途の場合は、好ましくは20g/m以上、より好ましくは30g/m以上、さらに好ましくは40g/m以上、また、好ましくは500g/m以下、より好ましくは400g/m以下、さらに好ましくは200g/m以下、さらにより好ましくは150g/m以下、特に好ましくは100g/m以下である。紙基材の坪量は、液体紙容器用途の場合は、好ましくは100g/m以上、より好ましくは200g/m以上、さらに好ましくは300g/m以上であり、そして、好ましくは1000g/m以下、より好ましくは700g/m以下、さらに好ましくは400g/m以下である。紙基材層の坪量が100g/m以上であることで、積層体に十分な強度を付与でき、液体紙容器用途に好適に使用できる。また、紙基材の坪量が1000g/m以下であることで、液体紙容器への加工耐性、輸送時の負荷低減が期待できる。なお、紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0027】
(厚さ)
紙基材の厚さは、特に限定されないが、包装袋などの軟包装用途の場合は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、また、好ましくは200μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは75μm以下である。紙基材の厚さは、液体紙容器用途の場合は、好ましくは100μm以上、より好ましくは300μm以上であり、そして、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下である。なお、紙基材の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0028】
(密度)
紙基材の密度は、成形加工性の観点から、好ましくは0.5/cm以上、より好ましくは0.6/cm以上、また、好ましくは1.2g/cm以下、より好ましくは1.0g/cm以下である。なお、紙基材の密度は、上述した方法により測定される紙基材の坪量及び厚さから算出される。
【0029】
(王研式平滑度)
紙基材の蒸着層を設ける側の面の王研式平滑度は、均一な蒸着層を得る観点から、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上、さらに好ましくは100秒以上、さらにより好ましくは300秒以上、また、好ましくは1000秒以下である。なお、紙基材の王研式平滑度は、JIS P 8155:2010に準拠して測定される。
【0030】
<クレーコート層>
本実施形態の蒸着紙用原紙は、クレーコート層を、前記紙基材と後述する樹脂層との間に有する。これにより、紙基材を目止めし、平滑化させることができ、より平坦な樹脂層を形成することができる。また、その結果、樹脂層上に均一な蒸着層を形成でき、蒸着紙のガスバリア性を向上することができる。
【0031】
前記クレーコート層は、主に無機顔料及びバインダーから構成されることが好ましい。「クレーコート層が主に無機顔料及びバインダーから構成される」とは、クレーコート層中の無機顔料及びバインダーの合計含有量が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上であることを意味する。クレーコート層中の無機顔料及びバインダーの合計含有量の上限は、特に限定されず、100質量%であってもよい。クレーコート層は、無機顔料及びバインダー以外に、任意の成分をさらに含んでいてもよい。
【0032】
(無機顔料)
クレーコート層に含まれる無機顔料としては、特に限定されないが、例えば、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。無機顔料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、無機顔料は、カオリン及び炭酸カルシウムからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、カオリンを含むことがより好ましい。
【0033】
クレーコート層中の無機顔料の含有量は、蒸着紙の加工耐性向上の観点から、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、また、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。
【0034】
クレーコート層における、バインダーに対する無機顔料の質量比(無機顔料/バインダー)は、通常25/75以上、好ましくは30/70以上、より好ましくは40/60以上、また、通常75/25以下、好ましくは70/30以下、より好ましくは65/35以下である。バインダーに対する無機顔料の質量比が上記範囲内である蒸着紙用原紙を用いて製造した蒸着紙は、折り曲げ加工による蒸着層の損傷が生じにくく、折り曲げ加工後も優れたガスバリア性を維持することができる。
【0035】
無機顔料のアスペクト比は、均一かつ平滑な樹脂層を形成する観点、及びクレーコート層中に細かく散在させ、蒸着紙用原紙の離解性を向上させる観点から、好ましくは75以下、より好ましくは50以下である。無機顔料のアスペクト比の下限は、特に限定されないが、1以上が好ましい。
無機顔料のアスペクト比は、以下の方法により算出される。まず、蒸着紙用原紙の厚さ方向断面の電子顕微鏡写真を撮影し、少なくとも30個の無機顔料の長さ及び厚さを測定し、算術平均することにより平均長さ及び平均厚さを求める。次いで、無機顔料の平均長さを平均厚さで除した値を無機顔料のアスペクト比として求める。
【0036】
(バインダー)
クレーコート層に含まれるバインダーとしては、特に限定されないが、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等のオレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体;スチレン-ブタジエン系樹脂;(メタ)アクリル系(共)重合体;ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂;等が挙げられ、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン-不飽和カルボン酸系共重合、スチレン-ブタジエン系樹脂、及びポリエステ
ル系樹脂から選択される1種以上であることが好ましく、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-ブタジエン系樹脂、及びポリ乳酸から選択される1種以上であることがより好ましい。より詳細には、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂及びスチレン-ブタジエン系樹脂は、安価であるため、製造コストを低減することができる点で好ましく、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体は、高い成膜性を実現できる点で好ましく、ポリ乳酸は、生分解性樹脂であるため、環境負荷を低減できる点で好ましい。
【0037】
本明細書において、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂とは、スチレンと、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1つの単量体との共重合体である。スチレン-(メタ)アクリル系樹脂は、好ましくはスチレン-アクリル系樹脂であり、より好ましくはスチレン-アクリル酸共重合体及びスチレン-アクリル酸エステル共重合体から選択される1種以上である。
【0038】
本明細書において、(メタ)アクリル系(共)重合体は、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルから選択される1つ以上の単量体の(共)重合体である。(メタ)アクリル酸エステルは、好ましくは(メタ)アクリル酸の炭素数1~12のアルキルエステルである。
【0039】
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂としては、市販品を使用してもよく、例えば、BASF社製「Acronal S504」、「Acronal S728」;星光PMC株式会社製「SEIKOAT RE-2016」;等が挙げられる。
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体としては、市販品を使用してもよく、例えば、三井化学株式会社製「ケミパールS-100」、「ケミパールS-300」、「ケミパールS-500」;住友精化株式会社製「ザイクセンAC」;等が挙げられる。
スチレン-ブタジエン系樹脂としては、市販品を使用してもよく、例えば、BASF社製「Styronal ES7900」、「Styronal ES7902」、「Styronal ES316S」等が挙げられる。
ポリ乳酸としては、市販品を使用してもよく、例えば、中京油脂株式会社製「レゼムW-990」、ミヨシ油脂株式会社製「LANDY PL-3000」等が挙げられる。
【0040】
バインダーのガラス転移温度の上限は、特に限定されないが、クレーコート層の柔軟性を確保する観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは30℃以下、さらにより好ましくは10℃以下である。また、バインダーのガラス転移温度の下限は、特に限定されないが、良好な耐ブロッキング性を実現する観点から、好ましくは-30℃以上、より好ましくは-20℃以上、さらに好ましくは-10℃以上である。なお、ガラス転移温度は、JIS K 7122:2012に準拠して測定される。
【0041】
クレーコート層中のバインダーの含有量は、蒸着紙の加工耐性向上の観点から、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上、また、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0042】
(塗工量)
クレーコート層の塗工量は、固形分換算で、通常8g/m以上、好ましくは10g/m以上、より好ましくは12g/m以上、また、通常20g/m以下、好ましくは18g/m以下、より好ましくは16g/m以下である。クレーコート層の塗工量が上記範囲内である蒸着紙用原紙を用いて製造した蒸着紙は、折り曲げ加工による蒸着層の損傷が生じにくく、折り曲げ加工後も優れたガスバリア性を維持することができる。
【0043】
<樹脂層>
本実施形態の蒸着紙用原紙は、クレーコート層上に配置される樹脂層を有する。樹脂層を設けることで、蒸着紙の蒸着層と蒸着紙用原紙との密着性が向上し、ガスバリア性が向上する。また、樹脂層自体がガスバリア性を有することで、蒸着紙のガスバリア性を向上することもできる。
【0044】
樹脂層は、水懸濁性高分子を含むことが好ましく、主として水懸濁性高分子を含むことがより好ましい。なお、「樹脂層が主として水懸濁性高分子を含む」とは、樹脂層中の水懸濁性高分子の含有量が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上であることを意味する。樹脂層中の水懸濁性高分子の含有量の上限は、特に限定されず、100質量%であってもよい。なお、樹脂層は、水懸濁性高分子以外に、任意の成分をさらに含んでいてもよい。
【0045】
(水懸濁性高分子)
樹脂層に含まれる水懸濁性高分子としては、特に限定されないが、アルキッド樹脂;(メタ)アクリル系(共)重合体、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂;エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体等のオレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体;ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体(エチレン変性ポリビニルアルコール)等のビニルアルコール系樹脂;セルロース系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂;等が挙げられる。これらの中でも、水懸濁性高分子は、ビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びポリエステル系樹脂から選択される1種以上であることが好ましく、蒸着紙の生分解性及びリサイクル性のさらなる向上の観点から、ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂から選択される1種以上であることがより好ましく、ポリウレタン系樹脂であることがさらに好ましい。
【0046】
≪ポリエステル系樹脂≫
樹脂層に含まれるポリエステル系樹脂としては、特に限定されず、例えば水性溶媒中に分散(乳化を含む)可能なポリエステル系樹脂が挙げられ、好ましくは水性溶媒中に分散可能な生分解性ポリエステル系樹脂であり、より好ましくはポリ乳酸である。
【0047】
ポリエステル系樹脂としては、市販品を使用してもよく、例えば、ユニチカ株式会社製の「エリーテルKTシリーズ(商品名)」、ミヨシ油脂株式会社製の「ランディPLシリーズ(商品名)」、中京油脂株式会社製の「レゼムWシリーズ(商品名)」等が挙げられ、具体的には、エリーテルKT-8803、ランディPL-3000、及びレゼムW-990が例示される。
【0048】
≪ポリウレタン系樹脂≫
樹脂層に含まれるポリウレタン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、水性溶媒中に分散(乳化を含む)可能なポリウレタン系樹脂が好ましく挙げられる。
【0049】
ポリウレタン系樹脂は、メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位及び水添メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位からなる群より選択される1種以上を含有することが好ましい。ポリウレタン系樹脂がメタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位及び水添メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位の少なくとも一方を含有する場合において、ポリイソシアネート由来の構成単位全量に対する、メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位及び水添メタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位の合計含有量が、50モル%以上であることが好ましい。このようなポリウレタン系樹脂は、水素結合及びキシリレン基同士のスタッキング効果によって高い凝集力を発現するため、
優れたガスバリア性を有する。上記含有量は、H-NMR等の公知の分析手法を用いて同定することができる。
【0050】
ポリウレタン系樹脂は、ヒドロキシ基を有していてもよく、その水酸基価は、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、さらに好ましくは150mgKOH/g以上である。また、ポリウレタン系樹脂の水酸基価の上限は、特に限定されないが、好ましくは1000mgKOH/g以下、より好ましくは800mgKOH/g以下、さらに好ましくは600mgKOH/g以下である。ポリウレタン系樹脂の水酸基価が上記範囲内であると、酸素バリア性に優れるので好ましい。
【0051】
-酸素透過度-
ポリウレタン系樹脂は、25μm厚のシートを形成した際の23℃、50%RHにおける酸素透過度が、好ましくは100mL/(m・day・atm)以下、より好ましくは50mL/(m・day・atm)以下、さらに好ましくは25mL/(m・day・atm)以下、特に好ましくは10mL/(m・day・atm)以下である。なお、本明細書において、酸素透過度は、酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/22)を使用し、23℃、50%RHの条件にて測定される。
【0052】
-ガラス転移温度-
ポリウレタン系樹脂のガラス転移温度は、蒸着紙の蒸着層の保護の観点、及び成膜性の観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは135℃以下である。ポリウレタン系樹脂のガラス転移温度の下限は、特に限定されないが、好ましくは50℃以上である。なお、ガラス転移温度は、JIS K 7122:2012に準拠して測定される。
【0053】
ポリウレタン系樹脂としては、合成品を使用してもよく、例えば国際公開第2015/016069号に記載のポリウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0054】
ポリウレタン系樹脂としては、市販品を使用してもよく、例えば、三井化学株式会社製の「タケラックW系(商品名)」、「タケラックWPB系(商品名)」、「タケラックWS系(商品名)」等が挙げられ、具体的には、タケラックWPB-341が例示される。その他のポリウレタン系樹脂市販品としては、大日精化工業株式会社製の「HPU W-003」(水酸基価235mgKOH/g)等が挙げられる。
【0055】
樹脂層は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記水懸濁性高分子に加えて、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、シランカップリング剤、界面活性剤、分散剤、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、染料、可塑剤、潤滑剤、離型剤等が挙げられる。
【0056】
(塗工量)
樹脂層の塗工量は、特に限定されないが、固形分換算で、好ましくは0.1g/m以上、より好ましくは0.5g/m以上、さらに好ましくは1.0g/m以上、また、好ましくは10.0g/m以下、より好ましくは5.0g/m以下、さらに好ましくは3.0g/m以下である。
【0057】
[蒸着紙用原紙の特性]
(坪量)
本実施形態の蒸着紙用原紙の坪量は、特に限定されないが、包装袋などの軟包装用途の場合は、好ましくは20g/m以上、より好ましくは30g/m以上、さらに好ましくは40g/m以上、さらにより好ましくは50g/m以上であり、また、好ましくは500g/m以下、より好ましくは400g/m以下、さらに好ましくは200g
/m以下、さらにより好ましくは150g/m以下、特に好ましくは100g/m以下である。蒸着紙用原紙の坪量は、液体紙容器用途の場合は、好ましくは100g/m以上、より好ましくは200g/m以上、さらに好ましくは300g/m以上であり、そして、好ましくは1000g/m以下、より好ましくは700g/m以下、さらに好ましくは500g/m以下である。なお、蒸着紙用原紙の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0058】
(厚さ)
本実施形態の蒸着紙用原紙の厚さは、特に限定されないが、包装袋などの軟包装用途の場合は、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上、さらにより好ましくは50μm以上であり、また、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下、さらにより好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下である。蒸着紙用原紙の厚さは、液体紙容器用途の場合は、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、さらに好ましくは300μm以上であり、そして、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下である。なお、蒸着紙用原紙の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0059】
[蒸着紙用原紙の製造方法]
本実施形態の蒸着紙用原紙を製造する方法に制限はないが、紙基材の少なくとも一面上にクレーコート層を形成する工程と、クレーコート層上に樹脂層を形成する工程とを含むことが好ましい。
【0060】
クレーコート層の形成方法は、特に限定されないが、無機顔料及びバインダーを含む分散液を紙基材上に塗工し、乾燥することで形成する方法を採用することが好ましい。無機顔料及びバインダーを含む分散液としては、水性分散液等の水性媒体を溶媒とするものが好ましい。
【0061】
樹脂層の形成方法は、特に限定されないが、水懸濁性高分子を含む水溶液、水性分散液等の水性塗布液を塗工し、乾燥することで形成する方法を採用することが好ましい。
【0062】
[蒸着紙]
本開示の他の実施形態に係る蒸着紙は、上記蒸着紙用原紙と蒸着層とを有する。蒸着層は、蒸着紙用原紙の樹脂層上に設けられている。
【0063】
<蒸着層>
蒸着層は、金属からなる層、セラミックスからなる層、及び炭素系材料からなる層の少なくともいずれかである。すなわち、蒸着層は、金属からなる層、セラミックスからなる層、炭素系材料からなる層、及びこれらの積層体(例えば、金属層とセラミックス層の積層体)のいずれであってもよい。なお、蒸着層が金属からなる層、セラミックスからなる層、及び炭素系材料からなる層のち2種以上の層の積層体である場合、各層の積層順は特に限定されない。例えば、蒸着層が金属層とセラミックス層との積層体である場合、金属層が、蒸着紙用原紙の樹脂層側であってもよく、セラミックス層が、蒸着紙用原紙の樹脂層側であってもよい。
【0064】
蒸着層は、金属からなる層、セラミックスからなる層、炭素系材料からなる層、及びこれらの積層体のいずれであってもよいが、好ましくは金属からなる層である。
蒸着層が金属からなる層である場合、金属の具体例としては、アルミニウム、チタン等が挙げられ、好ましくはアルミニウムである。金属は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
蒸着層がセラミックスからなる層である場合、セラミックスの具体例としては、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)等が挙げられる。セラミックスは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。これらの中でも、セラミックスは、酸化ケイ素及び酸化アルミニウムの少なくともいずれかであることが好ましい。
蒸着層が炭素系材料からなる層である場合、炭素系材料の具体例としては、ダイヤモンドライクカーボン、グラファイト、グラフェン等が挙げられ、好ましくはダイヤモンドライクカーボンである。炭素系材料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0065】
すなわち、蒸着層は、アルミニウムからなる層、酸化ケイ素からなる層、酸化チタンからなる層、酸化アルミニウムからなる層、ダイヤモンドライクカーボンからなる層、及び、これらの積層体のいずれかであることがより好ましく、アルミニウムからなる層、酸化ケイ素からなる層、酸化アルミニウムからなる層、ダイヤモンドライクカーボンからなる層、及び、これらの積層体のいずれかであることがさらに好ましく、加工装置の普及によるコストや簡便さの観点からは、アルミニウムからなる層であることが特に好ましい。あるいは、蒸着層は、金属探知機の使用やリサイクル性の観点からは、酸化ケイ素からなる層、酸化アルミニウムからなる層、ダイヤモンドライクカーボンからなる層、及び、これらの積層体のいずれかであることが好ましい。
【0066】
蒸着層の厚さは、特に限定されず、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、さらに好ましくは3nm以上、また、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。
また、蒸着層の厚さは、ガスバリア性の観点からは、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上、さらに好ましくは20nm、さらにより好ましくは25nm以上、また、好ましくは80nm以下、より好ましくは70nm以下である。
さらに、蒸着層の厚さは、他層との密着性及びコストの観点からは、好ましくは4nm以上、より好ましくは5nm以上、また、好ましくは100nm以下、より好ましくは70nm以下、さらに好ましくは60nm以下である。
【0067】
<オーバーコート層>
本実施形態の蒸着紙は、蒸着層上にオーバーコート層を有していてもよい。本実施形態の蒸着紙は、蒸着層を有することで一定のガスバリア性を示すが、蒸着層上にオーバーコート層を有することで、蒸着紙のガスバリア性をさらに向上することができる。また、折り曲げ加工による蒸着層の損傷を抑制したり、蒸着層が損傷した場合にガスバリア性を担保したりすることで、折り曲げ加工がされた後も蒸着紙のガスバリア性の低下を抑制することができる。
【0068】
本実施形態の蒸着紙において、オーバーコート層は、最外層であってもよい。オーバーコート層が最外層であっても、光沢感を有する蒸着層の意匠性を阻害しない。また、蒸着紙が、蒸着紙用原紙の両面に蒸着層を有する場合、両蒸着層の上にオーバーコート層を有していてもよく、一方の蒸着層の上にのみオーバーコート層を有していてもよい。これらの中でも、蒸着紙の生産効率向上の観点から、一方の蒸着層の上にのみオーバーコート層を有することが好ましい。
【0069】
オーバーコート層に含まれるバインダーとしては、アルキッド樹脂;(メタ)アクリル系(共)重合体、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂;エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体等のオレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体;ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体(エチレン変性ポリビニルアルコール)等のビニルアルコール系樹脂;セルロース系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリ乳酸
等のポリエステル系樹脂;等が挙げられる。これらの中でも、バインダーは、ビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びポリエステル系樹脂から選択される1種以上であることが好ましく、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリウレタン系樹脂、及びポリエステル系樹脂から選択される1種以上であることがより好ましく、蒸着紙のリサイクル性のさらなる向上の観点から、ポリウレタン系樹脂であることがさらに好ましい。また、バインダーは、水性溶媒中に分散(乳化を含む)可能な樹脂であることが好ましい。
【0070】
バインダーであるポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂としては、それぞれ、蒸着紙用原紙の樹脂層に含まれるポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂が挙げられ、その好ましい態様も同様である。樹脂層中のポリウレタン系樹脂とオーバーコート層中のポリウレタン系樹脂とは、同一の種類であってもよく、異なる種類であってもよいが、同一の種類であることが好ましい。また、樹脂層中のポリエステル系樹脂とオーバーコート層中のポリエステル系樹脂とは、同一の種類であってもよく、異なる種類であってもよいが、同一の種類であることが好ましい。
エチレン-ビニルアルコール共重合体としては、市販品を使用してもよく、例えば、三菱ケミカル株式会社製「ソアノール16DX」、日本シーマ株式会社製「エバーソルブ#10」等が挙げられる。
【0071】
オーバーコート層に含まれるバインダーは、25μm厚のシートを形成した際の23℃、50%RHにおける酸素透過度が、好ましくは100mL/(m・day・atm)以下、より好ましくは50mL/(m・day・atm)以下、さらに好ましくは25mL/(m・day・atm)以下、特に好ましくは10mL/(m・day・atm)以下である。
【0072】
オーバーコート層中のバインダーの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上である。オーバーコート層中のバインダーの含有量の上限は、特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0073】
オーバーコート層は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記バインダー以外の樹脂及び添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、界面活性剤、分散剤、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、染料、可塑剤、潤滑剤、離型剤等が挙げられる。オーバーコート層を塗布液の塗工により形成する場合、均一なオーバーコート層の膜を得る観点から、分散剤を用いて前記バインダーを水性媒体に分散させ、塗布液を調製することが好ましい。
【0074】
前記オーバーコート層の塗工量は、固形分換算で、好ましくは0.1g/m以上、より好ましくは0.2g/m以上、さらに好ましくは0.3g/m以上、また、好ましくは10.0g/m以下、より好ましくは7.0g/m以下、さらに好ましくは4.0g/m以下である。
【0075】
オーバーコート層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上、また、好ましくは10.0μm以下、より好ましくは7.0μm以下、さらに好ましくは4.0μm以下である。オーバーコート層の厚さが0.1μm以上10.0μm以下であると、蒸着層に対する保護性を向上しつつ、リサイクル時の紙の離解性の向上、及びリサイクル性の向上も可能となる。
【0076】
<ヒートシール層>
本実施形態の蒸着紙は、蒸着層上にヒートシール層を有することが好ましい。ヒートシール層は、加熱により溶融接着する層であり、蒸着紙同士を相互に結合させることができる層である。ヒートシール層は、オーバーコート層を介して蒸着層上に配置されてもよい
し、蒸着層上に直接配置されてもよい。
【0077】
ヒートシール層に含まれる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル系重合体、ポリ酢酸ビニル重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等の合成樹脂;ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、3-ヒドロキシブタン酸-3-ヒドロキシヘキサン酸共重合体(PHBH)等の生分解性樹脂;等が挙げられる。これらの中でも、ヒートシール層に含まれる樹脂は、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、及び生分解性樹脂から選択される1種以上であることが好ましく、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、及びポリ乳酸から選択される1種以上であることがより好ましい。なお、(メタ)アクリル酸由来の構成単位の一部又は全部は、ナトリウム塩、アンモニア塩等の塩に変換されていてもよい。すなわち、ヒートシール層に含まれる樹脂は、アイオノマーであってもよい。
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体及びポリ乳酸としては、市販品を使用してもよく、例えばそれぞれ上述したものが挙げられる。
スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体としては、市販品を使用してもよく、例えば、星光PMC株式会社製「XP-8829」、「SEIKOAT RE-2016」等が挙げられる。
【0078】
ヒートシール層の厚さは、好ましくは1~50μm、より好ましくは3~30μmである。また、ヒートシール層の塗工量は、固形分換算で、好ましくは1~50g/m、より好ましくは3~30g/mである。
【0079】
[蒸着紙の物性]
(坪量)
本実施形態の蒸着紙の坪量は、特に限定されないが、包装袋などの軟包装用途の場合は、好ましくは20g/m以上、より好ましくは30g/m以上、さらに好ましくは40g/m以上、さらにより好ましくは50g/m以上、また、好ましくは500g/m以下、より好ましくは400g/m以下、さらに好ましくは200g/m以下、さらにより好ましくは150g/m以下、特に好ましくは100g/m以下である。蒸着紙の坪量は、液体紙容器用途の場合は、好ましくは100g/m以上、より好ましくは200g/m以上、さらに好ましくは300g/m以上であり、そして、好ましくは1000g/m以下、より好ましくは700g/m以下、さらに好ましくは500g/m以下である。なお、蒸着紙の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0080】
(厚さ)
本実施形態の蒸着紙の厚さは、特に限定されないが、包装袋などの軟包装用途の場合は、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上、さらにより好ましくは50μm以上であり、また、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下、さらにより好ましくは80μm以下である。蒸着紙用原紙の厚さは、液体紙容器用途の場合は、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、さらに好ましくは300μm以上であり、そして、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下、さらに好ましくは600μm以下である。なお、蒸着紙用原紙の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
[酸素透過度]
本実施形態の蒸着紙について、蒸着紙のオーバーコート層上(蒸着層上にオーバーコート層を介さずにヒートシール層を有する場合及びオーバーコート層上にヒートシール層を
有する場合は、ヒートシール層上)に厚さ20μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)を貼合して積層シートを形成した場合において、JIS K 7126-2:2006に準拠して測定される、温度23℃、相対湿度50%における積層シートの酸素透過度が、2.0mL/m・day・atm以下であり、好ましくは1.0mL/m・day・atm以下、より好ましくは0.5mL/m・day・atm以下である。下限は特に制限されないが、好ましくは0mL/m・day・atm以上、0.05mL/m・day・atm以上である。蒸着紙とCPPフィルムの貼合には、例えば、接着剤を使用する。接着剤の種類及び塗布量は、ガスバリア性を有さない限り特に限定されないが、例えば実施例に記載したとおりである。酸素透過度は、例えば、樹脂層を前述の最適な厚みにすること、樹脂層の平滑性を向上させること、蒸着層の厚さを増やすことにより小さくすることができる。ここで、「接着剤がガスバリア性を有さない」とは、JIS P 8117:2009に準拠して測定される王研式透気抵抗度が100秒以下の紙基材に、対象の接着剤を4g/m塗布し、厚さ20μmのCPPフィルムを貼り合わせた積層シートについて、JIS K 7126-2:2006に準拠して測定される、温度23℃、相対湿度50%(50%RHと表記することもある)における酸素透過度が、2000mL/m・day・atm以上であることを意味する。
【0081】
[水蒸気透過度]
本実施形態の蒸着紙の水蒸気透過度は、40℃、90%RHにおいて、1.5g/(m・day)以下であることが好ましく、1.0g/(m・day)以下であることがより好ましく、0.8g/(m・day)以下であることがさらに好ましい。下限は特に制限されないが、好ましくは0g/(m・day)以上、0.1g/(m・day)以上、0.2g/(m・day)以上である。なお、蒸着紙の水蒸気透過度は、JIS Z 0208:1976(カップ法)B法に準拠して測定される。水蒸気透過度は、例えば、樹脂層を前述の最適な厚みにすること、樹脂層の平滑性を向上させること、蒸着層の厚さを増やすことにより小さくすることができる。
【0082】
[蒸着紙の製造方法]
本実施形態の蒸着紙を製造する方法に制限はないが、上記蒸着紙用原紙の樹脂層が設けられている面に蒸着層を形成する工程と、必要に応じて、蒸着層上にオーバーコート層を形成する工程と、蒸着層上又はオーバーコート層上にヒートシール層を形成する工程とを含むことが好ましい。
【0083】
蒸着層を形成する方法は、特に限定されず、蒸着紙用原紙の樹脂層の表面に直接金属又はセラミックスを真空蒸着する方法;転写用基材上に、蒸着等により形成された金属層又はセラミックス層を、蒸着紙用原紙の樹脂層上に転写する方法;等が挙げられる。真空蒸着で蒸着層を形成する場合、バッチ式真空蒸着装置及び連続式真空蒸着装置のいずれを使用してもよい。連続式真空蒸着装置を用いると、巻き取り交換時における大気圧解放及び減圧の作業工程を省略することができる。装置内に設置可能な基材巻き取りの大きさは限定されるため、特に厚い紙基材ではその分巻き長が短くなり、同面積の蒸着紙を製造するためには大気圧解放及び減圧の回数が増えるが、連続式真空蒸着装置の場合はこの工程を省略できるため、蒸着紙の製造効率が大幅に向上する。
【0084】
オーバーコート層又はヒートシール層は、蒸着層に直接形成することが、蒸着層を効率的に保護し、ガスバリア性を高める観点から好ましい。オーバーコート層及びヒートシール層を形成する方法としては、オーバーコート層用塗布液又はヒートシール用塗布液を塗工し、乾燥して得ることが好ましい。これにより、10μm以下の比較的薄い膜のオーバーコート層又はヒートシール層を形成することができる。このような比較的薄いオーバーコート層又はヒートシール層を形成することにより、蒸着紙に優れた離解性が付与され、蒸着紙のリサイクル性を向上することができる。
【0085】
ここで用いられるオーバーコート層用塗布液及びヒートシール層用塗布液は、各層に含まれる樹脂と当該樹脂を溶解し得る有機溶媒とを含有する溶液;各層に含まれる樹脂と当該樹脂を分散可能な有機溶媒とを含有する分散液、各層に含まれる樹脂と水性媒体とを含有する水性分散液;等が挙げられ、塗工性及び環境負荷の点から、好ましくは水性分散液である。
【0086】
オーバーコート層用塗布液及びヒートシール層用塗布液を塗工する方法としては、バーコート法、ブレードコート法、スクイズコート法、エアーナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法、トランスファーコート法等が挙げられ、ファウンテンコーター、スリットダイコーター等の塗工機を用いてもよい。
【0087】
オーバーコート層用塗布液及び/又はヒートシール層用塗布液が塗工された塗工蒸着紙は、乾燥して有機溶媒又は水性媒体を除去し、オーバーコート層及び/又はヒートシール層を有する蒸着紙を得ることができる。
【0088】
[蒸着紙の用途]
本実施形態の蒸着紙は、優れたガスバリア性を生かして、コーヒー、菓子、牛乳等の食品;医薬品;医療品;電子部品;等の包装用材料として好適に用いることができる。本実施形態の蒸着紙は、折り曲げ加工後も優れたガスバリア性を維持できることから、これらの中でも、包装紙、包装袋、蓋、ラベル等の軟包装用材料;ミルクカートンなどの液体容器(以下、液体紙容器とも称する);カップ、トレー、皿、蓋材、ラミネートチューブ等の包装容器;等に好適に用いることができる。包装される内容物は、液体、固体(粒状物、粉状物など)、ゲル体であってもよい。
【0089】
[包装袋]
本開示の他の実施形態に係る包装袋は、上記蒸着紙を用いてなる包装袋である。包装袋としては、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型などの形態が挙げられる。
【0090】
本実施形態の包装袋は、上記蒸着紙のうちヒートシール層を有するものを折り曲げるか又は二枚重ね合わせることでヒートシール層を対向させ、上記形態となるよう、その周辺端部をヒートシールしたものであってもよく、上記蒸着紙を折り曲げるか又は二枚重ね合わせ、上記形態となるよう、その周辺端部を接着剤により接着したものであってもよい。或いは、後述する積層体を折り曲げるか又は二枚重ね合わせることでシーラント層を対向させ、上記形態となるよう、その周辺端部をヒートシールしたものであってもよい。
【0091】
[積層体]
本開示の他の実施形態に係る積層体は、熱可塑性樹脂層、上記蒸着紙、及びシーラントをこの順に有する。本形態の積層体は、蒸着紙がバリア性を有していることにより、積層体を透過する酸素や水蒸気を大幅に抑制することができるため、液体紙容器に好適に用いられる。
本実施形態においては、上記蒸着紙は、ガスバリア性及び折り曲げ加工後のガスバリア性を確保する観点から、蒸着層上にオーバーコート層を有するものであることが好ましい。また、このオーバーコート層が蒸着紙の最外層であることがより好ましい。本実施形態の積層体は、上記蒸着紙が奏する効果を阻害しない限り、上記層以外の任意の層を有していてもよい。
【0092】
(坪量)
積層体の坪量は、液体紙容器の形状保持の観点から、好ましくは100g/m以上、より好ましくは200g/m以上、さらに好ましくは300g/m以上であり、そして、加工性及び輸送性の観点から、好ましくは1000g/m以下、より好ましくは700g/m以下、さらに好ましくは500g/m以下である。
【0093】
積層体の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定する。なお、積層体に含まれる紙基材層の坪量は、公知の方法及び下記の手順で樹脂層の材料、厚さ及び密度などを特定したうえで、紙基材の坪量を算出しうる。具体的には、所定の大きさにカットした、積層体の重量(全重量)を測定し、その後、積層体をセルラーゼなどの酵素水溶液や銅エチレンジアミン水溶液に含浸させ、紙基材を完全に溶解させたことを確認の後、紙基材以外の重量を測定し、全重量から紙基材以外の重量を差し引くことで紙基材のみの重量を算出し、紙基材の坪量を測定する。
【0094】
(厚さ)
積層体の厚さは、液体紙容器の形状保持の観点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、さらに好ましくは300μm以上であり、そして、加工性及び輸送性の観点から、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下、さらに好ましくは600μm以下である。なお、積層体の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0095】
<熱可塑性樹脂層>
熱可塑性樹脂層は、例えば後述する液体紙容器を成形する際に液体紙容器の外側の面(印刷面)となる層であり、液体紙容器を成形する際に熱可塑性樹脂層とシーラント層とはヒートシールされる。
【0096】
熱可塑性樹脂層に用いる熱可塑性樹脂は、シーラント層とヒートシール可能なものであれば、特に限定されないが、熱可塑性樹脂自身がヒートシール性を有することが好ましい。具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、及びアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂等のポリオレフィン系樹脂:エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、及びエチレン-メチルメタアクリレート共重合体等のアクリル樹脂;シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂;変性ポリフェニレンエーテル(PPE);ポリアミド樹脂;ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(ブチレンアジペート-co-ブチレンテレフタレート)(PBAT)、ポリカプロラクトン(PCL)、及びポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)等の生分解性樹脂;等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0097】
熱可塑性樹脂層の形成方法は、特に制限されず、公知の方法又はこれに準ずる方法を適宜採用することができる。公知の方法又はこれに準ずる方法としては、熱可塑性樹脂を溶融して蒸着紙の上に押出積層する方法、及び熱可塑性樹脂を含むエマルションを蒸着紙に塗布する方法等が挙げられる。熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂は、好ましくはポリエチレン及び生分解性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、より好ま
しくは低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び生分解性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、さらに好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる群より選択される少なくとも1種であり、さらにより好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)である。ポリエチレンは、低コストであり、かつ適度な柔軟性を有するため、液体紙容器の材料として好ましく用いられる。
【0098】
熱可塑性樹脂層の厚さは、特に限定されないが、シーラント層との接着性の観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、環境負荷低減の観点から、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。
熱可塑性樹脂層の坪量は、特に限定されないが、シーラント層との接着性の観点から、好ましくは5g/m以上、より好ましくは10g/m以上であり、環境負荷低減の観点から、好ましくは40g/m以下、より好ましくは30g/m以下である。
【0099】
<シーラント層>
シーラント層は、例えば液体紙容器を成形する際に液体紙容器の内側の面(接液面)となる層であり、液体紙容器を成形する際に熱可塑性樹脂層とシーラント層とはヒートシールされる。
【0100】
シーラント層に使用される樹脂は、ヒートシール性を有するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、上述した<熱可塑性樹脂層>の項で挙げられた熱可塑性樹脂を使用することができる。
シーラント層の形成方法は、特に制限されず、公知の方法又はこれに準ずる方法を適宜採用することができる。公知の方法又はこれに準ずる方法としては、樹脂を溶融して蒸着紙の上に押出積層する方法、及び樹脂を含むエマルションを蒸着紙に塗布する方法等が挙げられる。このとき、蒸着紙とシーラント層との密着性をより強固にするために、蒸着紙上にアンカー層を設けてもよい。シーラント層に用いる樹脂は、好ましくはポリエチレン、ポリエステル樹脂及び生分解性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、より好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリエステル樹脂及び生分解性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、さらに好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0101】
シーラント層の厚さは、特に限定されないが、ヒートシール性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、環境負荷低減の観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。
シーラント層の坪量は、特に限定されないが、ヒートシール性の観点から、好ましくは10g/m以上、より好ましくは15g/m以上であり、環境負荷低減の観点から、好ましくは50g/m以下、より好ましくは30g/m以下である。
【0102】
シーラント層は、単層構造を有していてもよく、2層以上からなる多層構造を有していてもよい。シーラント層が多層構造を有する場合、各層に使用される樹脂は同一であってもよく、異なっていてもよい。積層体の最外層となるシーラント層に用いられる樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)であることが好ましい。積層体の最外層として低密度ポリエチレン(LDPE)を含むシーラント層を設けることで、シール後の接着力が過剰にならず、液体紙容器において適度な開封性を持たせることができる。
【0103】
[液体紙容器]
本開示のさらに他の実施形態は、上記積層体を備える液体紙容器である。上記積層体は、ガスバリア性に優れることから、液体全般の包装容器として好適に用いることができる
。本実施形態に係る液体紙容器は、公知の方法又はこれに準ずる方法により成形することで製造されるものである。液体紙容器の形状は、特に限定されず、例えば、屋根型(ゲーブルトップ型)、直方体型(フラットトップ型、ブリック型、ストレート型など)、三角錐型、スラントトップ型、正四面体型、カップ型、トレー型等の形状であってよい。また、液体紙容器は、ガスバリア性を損なわない限り、ストロー挿入穴、口栓、及び蓋材等を備えるものであってもよい。
【0104】
液体紙容器に収容する液体は、食品、非食品のいずれであってもよい、液体紙容器に収容する液体としては、特に限定されず、日本酒、焼酎、及びワイン等のアルコール飲料;牛乳等の乳飲料;ジュース、コーヒー、お茶、紅茶等の嗜好飲料;即席食品、電子レンジ対応食品、嗜好食品(ヨーグルト、ゼリー、プリンなど)、惣菜などの液体を伴う食品;医薬品;カーワックス、シャンプー、リンス、洗剤、入浴剤、染毛剤、歯磨き粉等の化学製品;等が挙げられる。
【実施例
【0105】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。また、実施例及び比較例の操作は、特にことわりがない限り、室温(20~25℃)、常湿(40~50%RH)の条件で行った。
【0106】
<実施例1>
(蒸着紙用原紙の作製)
カオリン(イメリス社製、Contour Xtreme、アスペクト比33)60質量部(固形分)と、スチレン-アクリル系樹脂バインダー(BASF社製、Acronal S504、ガラス転移温度5℃)40質量部(固形分)を混合し、クレーコート層用塗布液を調製した。紙基材(坪量50g/m、紙厚62μm、片艶晒、王子エフテックス社製)の高平滑面(王研式平滑度500秒)上に、上記クレーコート層用塗布液をメイヤーバー塗工し、120℃で1分乾燥して、クレーコート層(固形分換算12g/m)を形成した。次に、上記クレーコート層上に、25μm厚のシートを形成した際の酸素透過度(23℃、50%RH)が2.0mL/(m・day・atm)であるポリウレタン系樹脂バインダーの水性分散液(三井化学株式会社製、タケラックWPB-341:ガラス転移温度130℃)をメイヤーバー塗工し、120℃で1分乾燥して、樹脂層(1g/m)を形成し、坪量63g/m、厚さ67μmの蒸着紙用原紙を得た。
【0107】
(蒸着紙の作製)
上記蒸着紙用原紙の樹脂層上に、バッチ式真空蒸着装置を用いてアルミニウム蒸着層(厚さ50nm)を形成した。次いで、上記アルミニウム蒸着層上に、25μm厚のシートを形成した際の酸素透過度(23℃、50%RH)が2.0mL/(m・day・atm)であるポリウレタン系樹脂バインダーの水性分散液(三井化学株式会社製、タケラックWPB-341)をメイヤーバー塗工し、120℃で1分乾燥して、オーバーコート層(0.5g/m、厚さ:0.5μm)を形成した。さらにオーバーコート層の上にエチレン-メタクリル酸共重合体アンモニウム塩の水性分散液(有効分35質量%、ケミパールS-300、三井化学株式会社製)を有効分が20質量%となるように水で希釈し、メイヤーバー塗工し、120℃で1分間乾燥して、ヒートシール層(3g/m)とし、坪量66.5g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。なお、樹脂層及びオーバーコート層に使用したポリウレタン系樹脂について、H-NMR測定を行ったところ、ポリイソシアネート由来の構成単位全量に対するメタキシリレンジイソシアネート由来の構成単位の含有量は、50モル%以上であった。
【0108】
<実施例2>
蒸着紙用原紙の作製において、クレーコート層用塗布液中のカオリンを70質量部(固形分)とし、スチレン-アクリル系樹脂バインダーを30質量部(固形分)としたこと以外、実施例1と同様にして、坪量63g/m、厚さ67μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量66.5g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0109】
<実施例3>
蒸着紙用原紙の作製において、クレーコート層用塗布液中のカオリンを50質量部(固形分)とし、スチレン-アクリル系樹脂バインダーを50質量部(固形分)としたこと以外、実施例1と同様にして、坪量63g/m、厚さ67μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量66.5g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0110】
<実施例4>
蒸着紙用原紙の作製において、クレーコート層用塗布液中のカオリンを30質量部(固形分)とし、スチレン-アクリル共重合体バインダーを70質量部(固形分)としたこと以外、実施例1と同様にして、坪量63g/m、厚さ67μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量66.5g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0111】
<実施例5>
蒸着紙用原紙の作製において、クレーコート層の塗工量を8g/m(固形分換算)としたこと以外、実施例1と同様にして、坪量59g/m、厚さ65μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量62.5g/m、厚さ68μmの蒸着紙を得た。
【0112】
<実施例6>
蒸着紙用原紙の作製において、クレーコート層の塗工量を16g/m(固形分換算)としたこと以外、実施例1と同様にして、坪量67g/m、厚さ69μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量70.5g/m、厚さ72μmの蒸着紙を得た。
【0113】
<実施例7>
蒸着紙用原紙の作製において、クレーコート層の塗工量を20g/m(固形分換算)としたこと以外、実施例1と同様にして、坪量71g/m、厚さ71μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量74.5g/m、厚さ74μmの蒸着紙を得た。
【0114】
<実施例8>
蒸着紙用原紙の作製において、クレーコート層の塗工量を8g/m(固形分換算)としたこと以外、実施例2と同様にして、坪量59g/m、厚さ65μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量62.5g/m、厚さ68μmの蒸着紙を得た。
【0115】
<実施例9>
蒸着紙の作製において、ヒートシール層を形成しなかったこと以外、実施例1と同様にして、坪量63.5g/m、厚さ67μmの蒸着紙を得た。
【0116】
<実施例10>
蒸着紙の作製において、ヒートシール層用塗布液をスチレン-アクリル酸共重合体の水性分散液(有効分48質量%、XP-8829、星光PMC社製)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、坪量66.5g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0117】
<実施例11>
蒸着紙の作製において、オーバーコート層用塗布液をポリエステル系樹脂の酢酸エチル溶液(有効分30質量%、エリーテルUE-9800-30EA、ユニチカ株式会社製)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、坪量66.5g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0118】
<実施例12>
蒸着紙の作製において、オーバーコート層用塗布液をエチレン-ビニルアルコール共重合体の水/アルコール溶液(有効分15質量%、ソアノール16DX、三菱ケミカル株式会社製)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、坪量66.5g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0119】
<実施例13>
蒸着紙の作製において、オーバーコート層を形成しなかったこと以外、実施例1と同様にして、坪量66g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0120】
<実施例14>
蒸着紙の作製において、ヒートシール層の塗工量を6g/mとしたこと以外、実施例13と同様にして、坪量69g/m、厚さ73μmの蒸着紙を得た。
【0121】
<実施例15>
蒸着紙用原紙の作製において、クレーコート層用塗布液中のスチレン-アクリル系樹脂バインダーをエチレン-アクリル酸共重合体バインダー(有効分29.2質量%、ザイクセンAC、住友精化株式会社製、ガラス転移温度51℃)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、坪量63g/m、厚さ67μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量66.5g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0122】
<実施例16>
蒸着紙用原紙の作製において、クレーコート層用塗布液中のスチレン-アクリル系樹脂バインダーをスチレン-ブタジエン系ラテックス(有効分50質量%、Styronal
ES7900、BASF社製、ガラス転移温度-6℃)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、坪量63g/m、厚さ67μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量66.5g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0123】
<実施例17>
蒸着紙用原紙の作製において、クレーコート層用塗布液中のスチレン-アクリル系樹脂バインダーをポリ乳酸の水性分散液(有効分52質量%、レゼムW-990、中京油脂株式会社製)に変更し、樹脂層用塗布液をポリ乳酸の水性分散液(有効分52質量%、レゼムW-990、中京油脂株式会社製)に変更し、また、蒸着紙の作製において、ヒートシール層用塗布液をポリ乳酸の水性分散液(有効分52質量%、レゼムW-990、中京油脂株式会社製)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、坪量63g/m、厚さ67μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量66.5g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0124】
<実施例18>
蒸着紙用原紙の作製において、クレーコート層用塗布液中のカオリンを炭酸カルシウム(Brilliant-15、白石工業株式会社製、アスペクト比3)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、坪量63g/m、厚さ67μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量66.5g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0125】
<実施例19>
蒸着紙用原紙の作製において、紙基材をフレキソ印刷用の片艶晒(坪量70g/m、紙厚88μm、塗工面の王研式平滑度160秒、OKブリザード(フレキソ用)、王子マテリア社製)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、坪量83g/m、厚さ93μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量86.5g/m、厚さ96μmの蒸着紙を得た。
【0126】
<実施例20>
蒸着紙用原紙の作製において、紙基材を未晒軽包装原紙(坪量120g/m、紙厚170μm、塗工面の王研式平滑度11秒、王子マテリア社製)に変更し、クレーコート層の塗工量を15g/mとしたこと以外、実施例1と同様にして、坪量136g/m、厚さ175μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量139.5g/m、厚さ178μmの蒸着紙を得た。
【0127】
<実施例21>
アルミニウム蒸着層(50nm)を酸化ケイ素(シリカ)蒸着層(20nm)としたこと以外、実施例13と同様にして、坪量66g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0128】
<実施例22>
アルミニウム蒸着層(50nm)を酸化アルミニウム(アルミナ)蒸着層(20nm)としたこと以外、実施例13と同様にして、坪量66g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0129】
<実施例23>
アルミニウム蒸着層(50nm)をダイヤモンドライクカーボン蒸着層(20nm)としたこと以外、実施例13と同様にして、坪量66g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0130】
<実施例24>
アルミニウム蒸着層(50nm)を酸化ケイ素(シリカ)蒸着層(20nm)としたこと以外、実施例1と同様にして、坪量66.5g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0131】
<実施例25>
アルミニウム蒸着層(50nm)を酸化アルミニウム(アルミナ)蒸着層(20nm)としたこと以外、実施例1と同様にして、坪量66.5g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0132】
<実施例26>
アルミニウム蒸着層(50nm)をダイヤモンドライクカーボン蒸着層(20nm)としたこと以外、実施例1と同様にして、坪量66.5g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0133】
<実施例27>
蒸着紙用原紙の作製において、紙基材を板紙(坪量330g/m、紙厚456μm、塗工面の王研式平滑度11秒、OKピエナス、王子マテリア社製)に変更し、クレーコート層の塗工量を20g/mとし、ヒートシール層を形成しなかったこと以外、実施例1と同様にして、坪量351g/m、厚さ463μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量351.5g/m、厚さ464μmの蒸着紙を得た。
【0134】
<比較例1>
蒸着紙用原紙の作製において、クレーコート層用塗布液中のカオリンを80質量部(固形分)とし、スチレン-アクリル系樹脂バインダーを20質量部(固形分)としたこと以外、実施例1と同様にして、坪量63g/m、厚さ67μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量66.5g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0135】
<比較例2>
蒸着紙用原紙の作製において、クレーコート層用塗布液中のカオリンを20質量部(固形分)とし、スチレン-アクリル系樹脂バインダーを80質量部(固形分)としたこと以外、実施例1と同様にして、坪量63g/m、厚さ67μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量66.5g/m、厚さ70μmの蒸着紙を得た。
【0136】
<比較例3>
蒸着紙用原紙の作製において、クレーコート層の塗工量を6g/m(固形分換算)としたこと以外、実施例1と同様にして、坪量57g/m、厚さ65μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量60.5g/m、厚さ68μmの蒸着紙を得た。
【0137】
<比較例4>
蒸着紙用原紙の作製において、クレーコート層の塗工量を25g/m(固形分換算)としたこと以外、実施例1と同様にして、坪量76g/m、厚さ71μmの蒸着紙用原紙を作製し、実施例1と同様にして、坪量79.5g/m、厚さ75μmの蒸着紙を得た。
【0138】
<比較例5>
蒸着紙用原紙の作製において、紙基材を板紙(坪量330g/m、紙厚456μm、塗布面の王研式平滑度11秒、OKピエナス、王子マテリア社製)に変更し、クレーコート層の塗工量を20g/mとし、ヒートシール層を形成しなかったこと以外、比較例1と同様にして、坪量351g/m、厚さ463μmの蒸着紙用原紙を作製し、比較例1と同様にして、坪量351.5g/m、厚さ464μmの蒸着紙を得た。
【0139】
<蒸着紙の評価>
実施例及び比較例で得た蒸着紙について、下記評価を行った。結果を表1~5に示す。
【0140】
[折り曲げ染色評価]
実施例及び比較例で得た蒸着紙を、質量700g、幅30cmのゴムローラーを使用して、塗工層が内側になるようにして一度折り曲げた(折り目の角度180°)。その後、ヒートシールチェッカー(商品名:エージレスシールチェック、三菱ガス化学株式会社製)を塗工層側から吹きつけ、120秒後に拭き取った。裏面の紙側折り目部分にヒートシールチェッカーが染みていないかを目視で確認し、下記基準に基づいて評価を行った。
【0141】
S:直径1cm以下のスポット状の染みの数が0個であった。
A:直径1cm以下のスポット状の染みの数が1~3個であった。
B:直径1cm以下のスポット状の染みの数が4個以上あったか、直径1cm以上の染みが見られた。
【0142】
[酸素透過度]
(折り曲げ前の酸素透過度)
酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/22)を使用し、温度23℃、相対湿度50%の条件にて、蒸着紙の酸素透過度を測定した。具体的には、実施例及
び比較例で得られた蒸着紙の塗工層表面に、イソシアネート系接着剤(DIC株式会社製、ディックドライLX-500を10質量部に対してディックドライKW―75を1質量部混合)を5g/m塗布した後、厚さ20μmのCPPフィルム(北越化成株式会社製、GP-32)を貼合して積層シートを形成した。積層シートについて、JIS K7126-2:2006に準拠して、温度23℃、相対湿度50%における酸素透過度を測定した。酸素透過度の値が低いほど、蒸着紙の酸素バリア性が高いことを意味する。
【0143】
(折り曲げ後の酸素透過度)
加工耐性の評価として、折り曲げ後の酸素透過度も測定した。折り曲げ方法は、質量700g、幅30cmのゴムローラーを使用して、蒸着紙を一度折り曲げた後(折り目の角度180°)に開き、折れ線と垂直になる線で再度折り曲げた後(折り目の角度180°)に開き、前記積層シートを形成した後、酸素透過率測定装置の測定部の中央に、折れ線の交点が来るようにして酸素透過度を測定した。
【0144】
(空袋の酸素透過度)
横型ピロー包装機(FW3410/Bα8、株式会社フジキカイ製)を使用して、実施例及び比較例で得た蒸着紙から内寸14cm×22cmの空袋を作製した。酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/22)と付属の紙パックアダプターを使用し、温度23℃、相対湿度50%の条件にて、前記空袋のパッケージでの酸素透過度を測定した。
【0145】
[水蒸気透過度]
(折り曲げ前の水蒸気透過度)
実施例及び比較例で得た蒸着紙の水蒸気透過度は、JIS Z 0208:1976(カップ法)B法(40℃±0.5℃、相対湿度90%±2%)に準拠して、塗工層を内側にして測定した。水蒸気透過度の値が低いほど、蒸着紙の水蒸気バリア性が高いことを意味する。
【0146】
(折り曲げ後の水蒸気透過度)
加工耐性の評価として、折り曲げ後の水蒸気透過度も測定した。折り曲げ方法は、質量700g、幅30cmのゴムローラーを使用して、蒸着紙を一度折り曲げた後(折り目の角度180°)に開き、折れ線と垂直になる線で再度折り曲げた後(折り目の角度180°)に開き、前記積層シートを形成した後、水蒸気透過率測定装置の測定部の中央に、折れ線の交点が来るようにして水蒸気透過度を測定した。
【0147】
(液体紙容器の酸素透過度)
実施例27及び比較例5で得た蒸着紙の両面に、溶融した低密度ポリエチレン(ノバテックLD LC600A、日本ポリエチレン株式会社製)を押し出すことで、蒸着紙の表面及び裏面のそれぞれに厚さ20μm(坪量18.4g/m)のLDPE層を有する、坪量388.3g/m、厚さ504μmの積層体を得た。積層体の必要箇所に罫線を設け、所定の形状に打ち抜き、ブランク材を得た。次に、フレームシールにより胴部を貼り合わせて、筒状のスリーブを得た。続いて、この筒状スリーブを充填機に供給し、ボトム部を形成した後、トップ部をシールし、容量1000mLのゲーブルトップ型の液体紙容器を作製した。この液体紙容器について、酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/22)と付属の紙パックアダプターを使用し、温度23℃、相対湿度50%の条件にて、前記液体紙容器での酸素透過度を測定した。
【0148】
【表1】
【0149】
【表2】
【0150】
【表3】
【0151】
【表4】
【0152】
【表5】
【0153】
【表6】
【0154】
実施例の結果から、紙基材上にクレーコート層及び樹脂層を有する蒸着紙用原紙であって、クレーコート層中のバインダーに対する無機顔料の質量比(無機顔料/バインダー)、及びクレーコート層の塗工量を特定範囲内である蒸着紙用原紙は、紙基材の種類、バインダー種、樹脂層を構成する樹脂種等によらず、酸素バリア性及び水蒸気バリア性の高い蒸着紙を提供できることがわかる。また、実施例の蒸着紙は、蒸着層を形成する材料の種類、オーバーコート層の有無及びその材料、並びにヒートシール層の有無及びその材料によらず、折り曲げ加工後においても高いガスバリア性が維持されており、したがって、加工耐性にも優れていることがわかる。
【0155】
さらに、実施例の蒸着紙で作製した空袋、並びに熱可塑性樹脂層、実施例の蒸着紙、及びシーラント層をこの順に有する積層体から作製した液体紙容器は、高い酸素バリア性を示すことが確認された。
以上の結果から、実施例の蒸着紙は、包装袋及び液体紙容器等の包装用途に好適に用いることができるといえる。
【0156】
一方、比較例の結果から、クレーコート層の無機顔料/バインダー比が75/25を上
回る場合(比較例1)、クレーコート層の塗工量が8~20g/mの範囲を満たさない場合(比較例3、4)では、折り曲げ加工後に酸素バリア性及び水蒸気バリア性が著しく低下することがわかる。また、クレーコート層中の無機顔料/バインダーの比が25/75を下回る場合(比較例2)では、折り曲げ加工前の段階で酸素バリア性及び水蒸気バリア性に乏しく、折り曲げ加工後にはガスバリア性がさらに低下していることから、蒸着紙のガスバリア性及び加工耐性のいずれもが不十分であることがわかる。
【要約】
【課題】ガスバリア性に優れ、折り曲げ加工がされた後も優れたガスバリア性を維持できる蒸着紙の製造を可能にする蒸着紙用原紙を提供する。
【解決手段】紙基材の少なくとも一方の面に、クレーコート層及び樹脂層を前記紙基材側からこの順に有し、前記クレーコート層は、無機顔料及びバインダーを含有し、前記クレーコート層における、前記バインダーに対する前記無機顔料の質量比(無機顔料/バインダー)は、25/75以上75/25以下であり、前記クレーコート層の塗工量(固形分換算)が、8g/m以上20g/m以下である、蒸着紙用原紙。
【選択図】なし