(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム及びフレキシブルプリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/28 20060101AFI20230404BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230404BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H05K3/28 F
H05K3/28 D
B32B15/08 J
B32B27/00 M
(21)【出願番号】P 2020512275
(86)(22)【出願日】2019-04-03
(86)【国際出願番号】 JP2019014722
(87)【国際公開番号】W WO2019194208
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2018072403
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】一松 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】柏原 秀樹
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-285178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/08
B32B 27/00
G03F 7/004
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着層と、この接着層の表面に積層される保護層とを備え、
接着層の粘度に対する保護層の粘度の比が5倍以上となるラミネート温度領域が、50℃以上150℃以下の温度範囲内に存在
し、
上記接着層の平均厚さが40μm以上100μm以下であり、
上記保護層の平均厚さが2μm以上10μm以下であるフレキシブルプリント配線板用カバーフィルム。
【請求項2】
上記ラミネート温度領域が、70℃以上90℃以下の温度範囲を含む請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板用カバーフィルム。
【請求項3】
上記接着層及び上記保護層が感光性材料を主成分とする請求項1又は請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板用カバーフィルム。
【請求項4】
絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの一方の面側に積層される導電パターンとを備えるフレキシブルプリント配線板であって、
上記ベースフィルム又は上記導電パターンの一方の面が、請求項1、請求項2又は請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板用カバーフィルムにより被覆されているフレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム及びフレキシブルプリント配線板に関する。本出願は、2018年04月04日出願の日本出願第2018-072403号に基づく優先権を主張し、上記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型軽量化に伴い、平面コイル素子等の各電子部品が、導電パターンを用いて構成することで小型化され、フレキシブルプリント配線板に搭載されている。
【0003】
このようなフレキシブルプリント配線板に搭載される電子部品は、その表面が例えばカバーレイにより被覆され保護される(例えば特開2008-205125号公報参照)。このカバーレイは、導電パターンに積層される薄い接着剤層と、この接着剤層の上に導電パターンを被覆するように積層される樹脂層により構成される。上記接着剤層及び上記樹脂層は柔軟性を有し、導電パターンに貼り合わせることで、主に樹脂層により電子部品が被覆され、保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板用カバーフィルムは、接着層と、この接着層の表面に積層される保護層とを備え、接着層の粘度に対する保護層の粘度の比が5倍以上となるラミネート温度領域が、50℃以上150℃以下の温度範囲内に存在する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板用カバーフィルムを示す模式的側面図である。
【
図2】
図2は、接着層及び保護層の粘度の温度依存を示す模式的グラフである。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
フレキシブルプリント配線板に搭載する電子部品が小型化されるに伴い、電子部品を構成する導電パターン(回路配線)のアスペクト比が高くなってきている。
このように回路配線のアスペクト比を高めることで、抵抗の増加を抑止しつつ、平面視での回路面積を削減できる。アスペクト比を高めて小型化された電子部品においては、電子部品を構成する導電パターン間の空隙が深くなるため、上記従来のカバーレイでラミネートを行おうとすると、この空隙を埋め切れず気泡が生じ十分な電子部品頂面の被覆をすることが困難となる。空隙を埋めるためには、樹脂層の加熱時の粘度を下げ、ラミネートを行う際に空隙に樹脂が流れ込むようにする方法も考えられる。しかしながら、このような方法では膜厚の制御が困難となり、電子部品の頂部がカバーレイから突出し、カバーレイによる保護効果が不十分となるおそれがある。このように従来のカバーレイでは、電子部品頂面の被覆と、電子部品間の空隙の充填とを両立させることが難しい。
【0008】
本開示は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、電子部品頂面の被覆と、電子部品間の空隙の充填とが両立できるフレキシブルプリント配線板用カバーフィルム及びこのフレキシブルプリント配線板用カバーフィルムを用いたフレキシブルプリント配線板の提供を目的とする。
【0009】
[本開示の効果]
本開示のフレキシブルプリント配線板用カバーフィルムは、電子部品頂面の被覆と、電子部品間の空隙の充填とが両立できる。従って、フレキシブルプリント配線板用カバーフィルムを用いることで、回路配線のアスペクト比が高い電子部品を搭載したフレキシブルプリント配線板であっても、その回路を好適に保護できる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板用カバーフィルムは、接着層と、この接着層の表面に積層される保護層とを備え、接着層の粘度に対する保護層の粘度の比が5倍以上となるラミネート温度領域が50℃以上150℃以下の温度範囲内に存在する。
【0011】
当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルムは、接着層の粘度に対する保護層の粘度の比が5倍以上となるラミネート温度領域が上記温度範囲内に存在する。このラミネート温度領域では、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルムの保護層の粘度を比較的高く保ったまま接着層の粘度を低くできる。このため、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルムをラミネート温度領域で用いることで、粘度の低い接着層が電子部品間の空隙に容易に充填されると共に、粘度の高い保護層が電子部品を覆ったまま電子部品の頂部に留まるので、電子部品頂面の被覆と、電子部品間の空隙の充填とが両立できる。
【0012】
上記ラミネート温度領域が、70℃以上90℃以下の温度範囲を含むとよい。ラミネート温度領域が上記温度範囲を含むことで、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルムにより被覆されたフレキシブルプリント配線板を高温環境下で使用しても当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルムが軟化することを抑止できると共に、ラミネート時の電子部品が熱損傷を受けることを抑止できる。
【0013】
上記接着層及び上記保護層が感光性材料を主成分とするとよい。上記接着層及び上記保護層の主成分を感光性材料とすることで、選択的に電子部品頂面の被覆と、電子部品間の空隙の充填を行うことができる。
【0014】
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの一方の面側に積層される導電パターンとを備えるフレキシブルプリント配線板であって、上記ベースフィルム又は上記導電パターンの一方の面が、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルムにより被覆されている。
【0015】
当該フレキシブルプリント配線板は、導電パターンにより構成される電子部品が、本開示のフレキシブルプリント配線板用カバーフィルムにより被覆されているので、回路配線のアスペクト比が高い電子部品を搭載したフレキシブルプリント配線板であっても、その回路を好適に保護できる。
【0016】
ここで、「主成分」とは、最も含有量の多い成分をいい、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示に係るフレキシブルプリント配線板用カバーフィルム及びフレキシブルプリント配線板について図面を参照しつつ詳説する。
【0018】
〔フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム〕
図1に示すように、本開示の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1は、接着層11と、この接着層11の表面に積層される保護層12とを備える。
【0019】
当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1の平面視形状としては、フレキシブルプリント配線板に搭載された電子部品を保護できる限り特に限定されないが、例えば方形状や円形状とできる。また、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1の平面視での大きさは、フレキシブルプリント配線板に搭載された電子部品を保護できる限り特に限定されない。
【0020】
接着層11の平均厚さは、電子部品を構成する導電パターンの平均厚さに応じて適宜決定される。接着層11の平均厚さの下限としては、3μmが好ましく、40μmがより好ましい。一方、接着層11の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、60μmがより好ましい。接着層11の平均厚さが上記下限未満であると、電子部品間の空隙を十分に埋め切れないおそれがある。逆に、接着層11の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1により被覆されたフレキシブルプリント配線板の平均厚みが大きくなり、薄型化の要請に反するおそれがある。
【0021】
保護層12の平均厚さの下限としては、2μmが好ましく、3μmがより好ましい。一方、保護層12の平均厚さの上限としては、10μmが好ましく、7μmがより好ましい。保護層12の平均厚さが上記下限未満であると、保護層12の強度が不足し、電子部品の被覆が十分となるおそれがある。逆に、保護層12の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1により被覆されたフレキシブルプリント配線板の平均厚みが大きくなり、薄型化の要請に反するおそれがある。
【0022】
接着層11を形成する材料の主成分としては、カルボキシル基(-COOH)と光硬化可能な不飽和官能基とを有する酸変性オリゴマー、ポリイミド系樹脂、2種以上の光硬化可能な不飽和官能基を有する光重合性モノマー、熱硬化可能な官能基を有する熱硬化性バインダー、及び光開始剤を含む光硬化性及び熱硬化性を有する樹脂組成物等を挙げることができる。
【0023】
上記光重合性モノマーとしては、例えばヒドロキシル基含有多官能アクリレート系化合物、水溶性多官能アクリレート系化合物、多価アルコールの多官能ポリエステルアクリレート系化合物、多官能アルコール又はポリフェノールのエチレンオキシド付加物のアクリレート系化合物、多官能アルコール又はポリフェノールのプロピレンオキシド付加物のアクリレート系化合物、多官能又は単官能のポリウレタンアクリレート系化合物、エポキシアクリレート系化合物、ウレタンアクリレート系樹脂成分、カプロラクトン変性のアクリレート系化合物、及び感光性(メタ)アクリレート系化合物等を挙げることができる。これらの光重合性モノマーは、単独で用いられてもよいが、2種以上の光重合性モノマーを組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記光開始剤としては、例えばベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、アントラキノン系化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、オキシムエステル化合物、ビイミダゾール系化合物、及びトリアジン系化合物等を挙げることができる。これらの光開始剤は、単独で用いられてもよいが、2種以上の光開始剤を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記熱硬化可能な官能基としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基、イミド基、アミド基、環状エーテル基、及び環状チオエーテル基等を挙げることができる。これらの官能基は、1つの分子に2種以上が含まれていてもよいし、異なる官能基を有する熱硬化性バインダーを組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上述の接着層11を形成する材料の主成分の中でも70℃以上90℃以下の温度範囲での粘度の観点から、熱硬化可能な官能基を有する熱硬化性バインダーが好ましく、特に熱硬化可能な官能基としてエポキシ基を有する熱硬化性バインダーが好ましい。
【0027】
保護層12の主成分としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂等を挙げることができる。中でも70℃以上90℃以下の温度範囲での粘度の観点から、ポリイミドを主成分とすることが好ましい。
【0028】
また、接着層11及び保護層12の主成分が感光性材料であるとよい。接着層11及び保護層12の主成分を感光性材料とすることで、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1を容易にパターニングすることができる。このため、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1により、特定の場所に位置する電子部品に対して、選択的に電子部品頂面の被覆と、電子部品間の空隙の充填を行うことができる。
【0029】
接着層11及び保護層12の粘度は、例えばJIS-K7117-1:1999「プラスチック-液状,乳濁状又は分散状の樹脂-ブルックフィールド形回転粘度計による見掛け粘度の測定方法」に基づいて測定し、
図2に示すようにそれぞれ温度依存性を有する。当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1では、接着層11の粘度に対する保護層12の粘度の比が5倍以上となるラミネート温度領域A(
図2のAの温度範囲)が50℃以上150℃以下の温度範囲内に存在する。なお、
図2において縦軸は対数スケールであり、粘度は任意単位(AU:Arbitrary Unit)である。
【0030】
当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1のラミネート温度領域Aが、
図2に示すように70℃以上90℃以下の温度範囲を含むことが好ましい。ラミネート温度領域Aが上記温度範囲を含むことで、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1により被覆されたフレキシブルプリント配線板を高温環境下で使用しても当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1が軟化することを抑止できると共に、ラミネート時の電子部品が熱損傷を受けることを抑止できる。
【0031】
ラミネート温度領域Aの温度幅の下限としては、30℃が好ましく、50℃がより好ましい。ラミネート温度領域Aの温度幅が上記下限未満であると、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1により効果的にラミネートを行える温度領域が狭くなるため、温度管理等のコストが上昇するおそれがある。一方、ラミネート温度領域Aの温度幅の上限としては、特に限定されず、例えば100℃であってもよい。
【0032】
ラミネート温度領域Aにおける接着層11の粘度に対する保護層12の粘度の比の最大値としては、200倍以下が好ましく、100倍以下がより好ましい。上記粘度の比が上記上限を超えると、ラミネートを行う際の加熱時に接着層11の粘度が極端に低くなったり、保護層12の粘度が極端に高くなったりする温度が存在し、ラミネートが困難となるおそれがある。なお、ラミネート温度領域Aにおける接着層11の粘度に対する保護層12の粘度の比の最小値は、ラミネート温度領域Aの定義より5倍である。
【0033】
当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1は、粘度の高い保護層12を電子部品を覆ったまま電子部品の頂部に留めつつ、粘度の低い接着層11を電子部品間の空隙に充填する。この電子部品頂面の被覆及び電子部品間の空隙の充填を効率的に行うためには、適切な粘度T(dPa・s)があって、ラミネート温度領域Aが、保護層12の粘度がT以上、かつ接着層11の粘度がT未満である温度範囲(以下「好適ラミネート温度領域」ともいう)を含むとよい。なお、この適切な粘度Tは、接着層11や保護層12の材料に応じて決定される。
【0034】
上記好適ラミネート温度領域の温度幅の下限としては20℃が好ましく、40℃がより好ましい。上記好適ラミネート温度領域の温度幅が上記下限未満であると、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1により効果的にラミネートを行える温度領域が狭くなるため、温度管理等のコストが上昇するおそれがある。一方、上記好適ラミネート温度領域の温度幅の上限としては、特に限定されず、例えば100℃であってもよい。
【0035】
また、上記好適ラミネート温度領域が70℃以上90℃以下の温度範囲を含むことが好ましい。上記好適ラミネート温度領域が上記温度範囲を含むことで、さらに効果的に電子部品のラミネートを行える。
【0036】
〔フレキシブルプリント配線板〕
図3に示すように、本開示の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルム2と、このベースフィルム2の一方の面側に積層される導電パターン3とを備える。
また、当該フレキシブルプリント配線板は、ベースフィルム2又は導電パターン3の一方の面が、本開示の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板用カバーフィルム4により被覆されている。
【0037】
<ベースフィルム>
ベースフィルム2は、導電パターン3を支持する部材であって、当該フレキシブルプリント配線板の強度を担保する構造材である。また、ベースフィルム2は、絶縁性及び可撓性を有する。
【0038】
このベースフィルム2の主成分としては、例えばポリイミド、液晶ポリエステルに代表される液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンエーテル、フッ素樹脂等の軟質材、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、ガラス基材等の硬質材、軟質材と硬質材とを複合したリジッドフレキシブル材などを用いることができる。これらの中でも耐熱性に優れるポリイミドが好ましい。なお、ベースフィルム2は、多孔化されたものでもよく、また、充填材、添加剤等を含んでもよい。
【0039】
上記ベースフィルム2の厚さは、特に限定されないが、ベースフィルム2の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、12μmがより好ましい。また、ベースフィルム2の平均厚さの上限としては、500μmが好ましく、200μmがより好ましい。ベースフィルム2の平均厚さが上記下限未満であると、ベースフィルム2の強度が不十分となるおそれがある。一方、ベースフィルム2の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板の可撓性が不十分となるおそれがある。
【0040】
<導電パターン>
導電パターン3は、電気配線構造、グラウンド、シールドなどの構造を構成するものである。この導電パターン3により例えば平面コイル素子が形成できる。平面コイル素子は、導電パターン3が比較的厚く設計される素子であり、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム4により被覆する効果が高い。
【0041】
導電パターン3を形成する材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されないが、例えば銅、アルミニウム、ニッケル等の金属が挙げられ、一般的には比較的安価で導電率が大きい銅が用いられる。また、導電パターン3は、表面にめっき処理が施されてもよい。
【0042】
導電パターン3の平均厚さの下限としては、2μmが好ましく、20μmがより好ましく、40μmがさらに好ましい。一方、導電パターン3の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、70μmがより好ましい。導電パターン3の平均厚さが上記下限未満であると、導電パターン3の導電性が不十分となるおそれがある。逆に、導電パターン3の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板が不必要に厚くなるおそれがある。
【0043】
導電パターン3の平均幅は、電子部品、電気配線構造、グラウンド、シールドなどの各構造に応じて適宜決定される。導電パターン3の平均幅の下限としては、2μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、導電パターン3の平均幅の上限としては、20μmが好ましく、15μmがより好ましい。導電パターン3の平均幅が上記下限未満であると、導電パターン3の導電性が不十分となるおそれがある。逆に、導電パターン3の平均幅が上記上限を超えると、導電パターン3の実装密度が下がるため、電子部品等の高密度実装が困難となるおそれがある。
【0044】
導電パターン3の平均回路ピッチの下限としては、5μmが好ましく、7μmがより好ましい。一方、導電パターン3の平均回路ピッチの上限としては、20μmが好ましく、15μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。導電パターン3の平均回路ピッチが上記下限未満であると、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム4により導電パターン3を被覆することが困難となるおそれがある。逆に、導電パターン3の平均回路ピッチが上記上限を超えると、導電パターン3の実装密度が下がるため、電子部品等の高密度実装が困難となるおそれがある。なお、「導電パターンの平均回路ピッチ」とは、直線状に導電パターンを最密に積層した場合の隣接する導電パターンの中心軸間の距離を指す。
【0045】
導電パターン3のアスペクト比(導電パターン3の平均幅に対する平均厚さの比)の下限としては、1が好ましく、2がより好ましい。一方、導電パターン3のアスペクト比の上限としては、5が好ましく、4がより好ましい。導電パターン3のアスペクト比が上記下限未満であると、導電パターン3の抵抗を下げるためには平均幅を大きくとる必要が生じるため、電子部品等の高密度実装が困難となるおそれがある。逆に、導電パターン3のアスペクト比が上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム4により導電パターン3を被覆することが困難となるおそれがある。
【0046】
<カバーフィルム>
当該フレキシブルプリント配線板のカバーフィルムには、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム4が用いられている。当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム4は、接着層41と保護層42とを備える。
【0047】
接着層41及び保護層42の主成分、粘度、及びラミネート温度領域については、
図1に示す当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1と同様とできるので、説明を省略する。
【0048】
接着層41の平均厚さは、導電パターン3が被覆されるように決定される。具体的には、導電パターン3の頂面と保護層42との間に挟まれる接着層41の平均厚さ(
図3のDの平均厚さ)の下限としては、0.1μmが好ましく、0.3μmがより好ましい。一方、上記接着層41の平均厚さDの上限としては、1.5μmが好ましく、1μmがより好ましい。上記接着層41の平均厚さDが上記下限未満であると、接着層41による電子部品間の空隙の充填が不十分となるおそれがある。逆に、上記接着層41の平均厚さDが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板の薄型化の要請に反するおそれがある。
【0049】
なお、保護層42の平均厚さは、
図1に示す当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1と同様とできるので、説明を省略する。
【0050】
〔フレキシブルプリント配線板の製造方法〕
当該フレキシブルプリント配線板の製造方法は、積層体形成工程及びラミネート工程を主に備える。
【0051】
<積層体形成工程>
積層体形成工程では、絶縁性を有するベースフィルム2と、このベースフィルム2の一方の面側に積層される導電パターン3とを備える積層体を形成する。具体的には以下の手順による。
【0052】
まず、ベースフィルム2の一方の面に導体層を形成する。
【0053】
導体層は、例えば接着剤を用いて箔状の導体を接着することにより、あるいは公知の成膜手法により形成できる。導体としては、例えば、銅、銀、金、ニッケル等が挙げられる。接着剤としては、ベースフィルム2に導体を接着できるものであれば特に制限はなく、公知の種々のものを使用することができる。成膜手法としては、例えば蒸着、めっき等が挙げられる。導体層は、ポリイミド接着剤を用いて銅箔をベースフィルム2に接着して形成することが好ましい。
【0054】
次に、この導体層をパターニングして導電パターン3を形成する。
【0055】
導体層のパターニングは、公知の方法、例えばフォトエッチングにより行うことができる。フォトエッチングは、導体層の一方の面に所定のパターンを有するレジスト膜を形成した後に、レジスト膜から露出する導体層をエッチング液で処理し、レジスト膜を除去することにより行われる。
【0056】
<ラミネート工程>
ラミネート工程では、フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム4によりベースフィルム2又は導電パターン3の一方の面を被覆する。ラミネート工程は、重畳工程及び加熱工程を有する。
【0057】
(重畳工程)
重畳工程では、例えば
図1に示す加熱前のフレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1を接着層11を内側として上記積層体のベースフィルム2又は導電パターン3の一方の面に重畳する。
【0058】
(加熱工程)
加熱工程では、重畳工程で上記積層体に重畳したフレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1を加熱する。
【0059】
加熱工程での加熱温度は、ラミネート温度領域内に設定される。ラミネート温度領域が、上述の好適ラミネート温度領域を含む場合、加熱温度は、好適ラミネート温度領域内に設定されることが好ましい。つまり、具体的な加熱温度の下限としては、70℃が好ましく、75℃がより好ましい。一方、加熱温度の上限としては、90℃が好ましく、85℃がより好ましい。加熱温度が上記下限未満であると、接着層11の粘度が高くなり過ぎ、電子部品間の空隙を十分に埋め切れないおそれがある。また、加熱温度が上記下限未満においても接着層11の粘度が低い場合、当該フレキシブルプリント配線板を高温環境下で使用した際に、ラミネート後の当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム4が軟化し、電子部品が十分に保護されないおそれがある。逆に、加熱温度が上記上限を超えると、電子部品が熱損傷を受けるおそれがある。
【0060】
加熱工程では、加熱と同時に加圧を行うことが好ましい。加圧を行う場合の圧力の下限としては、0.1MPaが好ましく、0.2MPaがより好ましい。一方、上記圧力の上限としては、0.7MPaが好ましく、0.6MPaがより好ましい。上記圧力が上記下限未満であると、加圧の効果が十分に得られないおそれがある。逆に、上記圧力が上記上限を超えると、圧力により保護層42や電子部品が変形するおそれがある。
【0061】
加熱工程での加熱時間は、加熱温度や接着層11の粘度等に依存して適宜決定される。上記加熱時間の下限としては、10秒が好ましく、15秒がより好ましい。一方、上記加熱時間の上限としては、240秒が好ましく、180秒がより好ましい。上記加熱時間が上記下限未満であると、電子部品間の空隙を十分に埋め切れないおそれがある。逆に、上記加熱時間が上記上限を超えると、製造効率が低下するおそれがある。
【0062】
〔利点〕
当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1は、接着層11の粘度に対する保護層12の粘度の比が5倍以上となるラミネート温度領域Aが50℃以上150℃以下の温度範囲内に存在する。このラミネート温度領域Aでは、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1の保護層12の粘度を比較的高く保ったまま接着層11の粘度を低くできる。このため、当該フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム1をラミネート温度領域Aで用いることで、粘度の低い接着層11が電子部品間の空隙に容易に充填されると共に、粘度の高い保護層12が電子部品を覆ったまま電子部品の頂部に留まるので、電子部品頂面の被覆と、電子部品間の空隙の充填とが両立できる。
【0063】
また、当該フレキシブルプリント配線板は、導電パターン3により構成される電子部品が、本開示のフレキシブルプリント配線板用カバーフィルム4により被覆されているので、回路配線のアスペクト比が高い電子部品を搭載したフレキシブルプリント配線板であっても、その回路を好適に保護できる。
【0064】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0065】
上記実施形態では、ベースフィルムの片面のみに導電パターンが積層される場合について説明したが、導電パターンは、ベースフィルムの両面に積層されてもよい。この場合、2枚のフレキシブルプリント配線板用カバーフィルムが、ベースフィルムの両面に積層される。この場合、ラミネート工程は、片面ずつ行ってもよいが、重畳工程でベースフィルムの両面にフレキシブルプリント配線板用カバーフィルムを重畳させ、加熱工程で一度に加熱を行ってもよい。
【0066】
上記実施形態では、ベースフィルムの片面に構成された導電パターンを1枚のフレキシブルプリント配線板用カバーフィルムで被覆する場合について説明したが、ベースフィルムの片面について複数のフレキシブルプリント配線板用カバーフィルムを用いてもよい。この場合、重畳工程で複数のフレキシブルプリント配線板用カバーフィルム同士は、重なり合わないように重畳させることが好ましい。つまり、それぞれのフレキシブルプリント配線板用カバーフィルムは、異なる位置の導電パターンを被覆する。このように複数のフレキシブルプリント配線板用カバーフィルムを用いることで、導電パターンにより構成される電子部品を選択的に被覆することが可能となる。
【0067】
また、フレキシブルプリント配線板用カバーフィルムの接着層及び保護層の主成分が感光性材料である場合、フォトリソグラフィーにより導電パターンにより構成される電子部品を選択的に被覆することもできる。具体的には、当該フレキシブルプリント配線板の製造方法が、ラミネート工程として、加熱工程後にフォトリソグラフィー加工を行うフォトリソグラフィー工程をさらに備えるとよい。
【0068】
このフォトリソグラフィー工程は、以下の手順による。まず、加熱工程後のフレキシブルプリント配線板用カバーフィルムの除去したい部分に対応するマスクを用意し、このマスクを介して紫外線を照射し硬化させる。次に、マスクされ紫外光が照射されていない部分、すなわち未硬化の部分を現像液を用いて溶解させ、除去する。このようにフォトリソグラフィー加工を行うことで、必要な箇所のみにフレキシブルプリント配線板用カバーフィルムを残し、電子部品を選択的に被覆できる。
【符号の説明】
【0069】
1、4 フレキシブルプリント配線板用カバーフィルム
11、41 接着層
12、42 保護層
2 ベースフィルム
3 導電パターン