(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】画像処置装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
A61B6/03 360J
A61B6/03 360D
(21)【出願番号】P 2019111098
(22)【出願日】2019-06-14
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】519390106
【氏名又は名称】CIMAホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519217261
【氏名又は名称】森 正人
(73)【特許権者】
【識別番号】519217272
【氏名又は名称】田畑 慶人
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 正人
(72)【発明者】
【氏名】田畑 慶人
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-070782(JP,A)
【文献】特開平09-035043(JP,A)
【文献】特開平09-187444(JP,A)
【文献】特開2015-205064(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0337343(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00~6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が載置されるベッドと、円筒状の回転フレームと、該回転フレームの中心を挟んで対向する箇所に配置されたX線発生部及びX線検出部とを備え、前記回転フレームを回転させるとともに前記ベッドを該回転フレームの軸方向に移動させながら前記X線発生部から前記ベッドに載置された被検体にX線を照射したときの前記X線検出器の検出結果から該被検体のCT断層像のデータを生成するX線CT装置の、前記CT断層像データを処理する画像処理装置であって、
前記CT断層像データを記憶する記憶部と、
前記CT断層像データに基づき、前記被検体の身体に対応する領域である身体領域を前記CT断層像から抽出する身体領域抽出部とを備え、
前記身体領域抽出部が、
前記CT断層像データを二値化して、二値化断層像を形成する二値化処理部と、
前記二値化断層像から閉領域を形成している輪郭線を抽出する輪郭線抽出部と、
前記抽出された輪郭線の中から、閉領域の面積が所定の閾値よりも大きい輪郭線を選択する輪郭線選択部と、
前記二値化断層像上に、前記選択された輪郭線が形成する閉領域の全てが含まれ
、且つ該閉領域に接するように矩形枠を設定して、該矩形枠の中心の位置を特定する中心位置特定部と、
前記中心との距離が最短となる輪郭線を探索し、その輪郭線により形成される閉領域を身体領域として設定する身体領域設定部と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
被検体が載置されるベッドと、円筒状の回転フレームと、該回転フレームの中心を挟んで対向する箇所に配置されたX線発生部及びX線検出部とを備え、前記回転フレームを回転させるとともに前記ベッドを該回転フレームの軸方向に移動させながら前記X線発生部から前記ベッドに載置された被検体にX線を照射したときの前記X線検出器の検出結果から該被検体のCT断層像のデータを生成するX線CT装置の、前記CT断層像データを処理する画像処理装置であって、
前記CT断層像データを記憶する記憶部と、
前記CT断層像データに基づき、前記被検体の身体に対応する領域である身体領域を前記CT断層像から抽出する身体領域抽出部とを備え、
前記身体領域抽出部が、
前記CT断層像データを二値化して、二値化断層像を形成する二値化処理部と、
前記二値化断層像から閉領域を形成している輪郭線を抽出する輪郭線抽出部と、
前記抽出された輪郭線の中から、閉領域の面積が所定の閾値よりも大きい輪郭線を選択する輪郭線選択部と、
前記二値化断層像上に、前記選択された輪郭線が形成する閉領域の全てが含まれ
、且つ該閉領域に接するように矩形枠を設定して、該矩形枠の中心の位置を特定する中心位置特定部と、
前記中心が輪郭線の内側に位置するときは、その輪郭線による閉領域を身体領域として設定し、前記中心が輪郭線の外側に位置するときは、該中心を挟んで両側に位置する2個の閉領域を身体領域として設定する身体領域設定部と
を備える画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像処理装置において、さらに、
前記輪郭線選択部によって選択された輪郭線のうち、前記身体領域として設定された閉領域を形成する輪郭線を除く輪郭線によって形成される閉領域の重心の位置を求める重心位置算出部と、
前記身体領域の下側端部を特定する下側端部特定部と
を備え、
前記身体領域設定部が、前記輪郭線選択部によって選択された輪郭線のうち、前記求められた重心が前記下側端部よりも前記中心が位置する側にある閉領域を、さらに身体領域として設定する、画像処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の画像処理装置において、さらに、
前記身体領域設定部によって身体領域として設定された閉領域の、上側端部と下側端部の距離である上下径寸法、及び左側端部と右側端部の距離である左右径寸法を、それぞれ求め、前記上下径寸法及び前記左右径寸法から、身体領域の面積の指標値を算出する面積指標値算出部と備える、画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置において、
前記記憶部が、所定の線量検出用ファントムを用いて予め求められた、前記X線CT装置の被曝線量の評価指標を記憶しており、
前記評価指標と、前記面積指標値算出部によって算出された前記指標値とに基づいて、SSDE値を算出して出力する被曝線量出力部をさらに備える、画像処置装置。
【請求項6】
被検体が載置されるベッドと、円筒状の回転フレームと、該回転フレームの中心を挟んで対向する箇所に配置されたX線発生部及びX線検出部とを備え、前記回転フレームを回転させるとともに前記ベッドを該回転フレームの軸方向に移動させながら前記X線発生部から前記ベッドに載置された被検体にX線を照射したときの前記X線検出器の検出結果から該被検体のCT断層像のデータを生成するX線CT装置の前記CT断層像データを処理し、前記被検体の身体に対応する領域である身体領域を前記CT断層像から抽出する身体領域抽出方法であって、
前記CT断層像データを二値化して、二値化断層像を形成する二値化ステップと、
前記二値化断層像から閉領域を形成している輪郭線を抽出する輪郭線抽出ステップと、
前記輪郭線で囲まれた複数の領域のそれぞれの面積値を算出するステップと、
前記抽出された輪郭線の中から、閉領域の面積が所定の閾値よりも大きい輪郭線を選択する輪郭線選択ステップと、
前記二値化断層像上に、前記選択された輪郭線が形成する閉領域の全てが含まれ、且つ該閉領域に接するように矩形枠を設定して、該矩形枠の中心の位置を特定する中心位置特定ステップと、
前記中心との距離が最短となる輪郭線を探索し、該輪郭線により形成される閉領域を身体領域として設定する、身体領域設定ステップと
を備える身体領域抽出方法。
【請求項7】
被検体が載置されるベッドと、円筒状の回転フレームと、該回転フレームの中心を挟んで対向する箇所に配置されたX線発生部及びX線検出部とを備え、前記回転フレームを回転させるとともに前記ベッドを該回転フレームの軸方向に移動させながら前記X線発生部から前記ベッドに載置された被検体にX線を照射したときの前記X線検出器の検出結果から該被検体のCT断層像のデータを生成するX線CT装置の前記CT断層像データを処理し、前記被検体の身体に対応する領域である身体領域を前記CT断層像から抽出する身体領域抽出方法であって、
前記CT断層像データを二値化して、二値化断層像を形成する二値化ステップと、
前記二値化断層像から閉領域を形成している輪郭線を抽出する輪郭線抽出ステップと、
前記輪郭線で囲まれた複数の領域のそれぞれの面積値を算出するステップと、
前記抽出された輪郭線の中から、閉領域の面積が所定の閾値よりも大きい輪郭線を選択する輪郭線選択ステップと、
前記二値化断層像上に、前記選択された輪郭線が形成する閉領域の全てが含まれ、且つ該閉領域に接するように矩形枠を設定して、該矩形枠の中心の位置を特定する中心位置特定ステップと、
前記中心が輪郭
線の内側に位置するか否かを判定する判定ステップと、
前記中心が輪郭
線の内側に位置するときは、その
輪郭線による閉領域を身体領域として設定し、前記中心が輪郭線の外側に位置するときは、該中心を挟んで両側に位置する2個の閉領域を身体領域として設定する、身体領域設定ステップと
を備える身体領域抽出方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の身体領域抽出方法において、さらに、
前記輪郭線選択ステップによって選択された輪郭線のうち、前記身体領域として設定された閉領域を形成する輪郭線を除く輪郭線によって形成される閉領域の重心の位置を求める重心位置算出ステップと、
前記身体領域の下側端部を特定する下側端部特定ステップと
を備え、
前記身体領域設定ステップが、前記輪郭線選択
ステップによって選択された輪郭線のうち、前記求められた重心が、前記下側端部よりも前記中心が位置する側にある閉領域を、さらに身体領域として設定する、身体領域抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT装置を用いて得られた医用画像を処理するための画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(Computed Tomography)装置では、対向配置されたX線発生器とX線検出器の間に被検体を配置し、該被検体を中心にX線発生器とX線検出器を360°回転させながら該被検体に対してX線を照射するとともに、被検体の体を透過してきたX線の強度を検出する。X線発生器とX線検出器を360°回転させる間に得られた検出データから、X線の透過面、つまり、人体を輪切りにしたスライス面の画像(CT断層像)が取得される。X線CT装置を用いた診断では、CT断層像に写る病変の位置や形状、大きさ等から疾患の有無を判断する。
【0003】
1方向又は数方向から被検体にX線を照射して被検体の体内の画像を取得する他のX線機器と比較すると、360°方向からX線を照射するX線CT装置を用いた診断では、被検体の被曝線量が多い。そのため、被検体の被曝線量を管理する目的で、X線CT装置には通常、CT断層像を取得したときの被検体の被曝線量を算出して表示する機能が備えられている。一般的に被曝線量の算出には、IEC(国際電気標準会議)規格に準じたCTDIvol(Volume Computed Tomography Dose Index)が用いられ、CTDIvolを算出するための基準値が予めX線CT装置に記憶されている。
【0004】
CTDIvolは、基準ファントムと呼ばれる被検体モデルを用いて測定された被曝線量の基準値から算出される。基準ファントムは、被検体と同程度の放射線の透過率を有する材質(例えばアクリル樹脂)から作製された円柱型の均質な物体から成り、その中央及び周縁部にそれぞれ検出器が取り付けられている。基準ファントムには、直径が16cmの頭部用ファントムと直径が32cmの腹部用ファントムがあり、各基準ファントムをX線CT装置に設置して360°方向からX線を照射したときの検出器の検出結果から所定の計算式を使って被曝線量の基準値が求められる。X線CT装置では、CT断層像の取得部位(頭部、腹部)に応じた基準値を元に、X線発生装置のパラメータの設定値を用いてCTDIvolが算出される。
【0005】
上述したように、CTDIvolの基準値を求めるために使用される基準ファントムは、CT断層像の取得部位により大きさが異なるものの、被検体の大きさや体型は考慮されていない。したがって、被検体に照射されるX線の強度が同一の場合は、被検体の大きさや体型が異なっていても、同じ値のCTDIvolが算出されることになり、子どもや幼児、痩せている被検体の場合は、被曝線量が実際よりも低く見積もられる傾向がある。
【0006】
このような不具合を解消するため、被検体のサイズを考慮したX線CT装置の新たな線量指標であるSSDE(Size-Specific Dose Estimates)をCTDIvolに加えて、あるいはCTDIvolに代えて用いることがAAPM(American Association of Physicists in Medicine)より提案されている。しかしながら、被検体の大きさや体型を正確に求めることは現実的には難しい。
【0007】
例えば、特許文献1には、X線CT装置のベッドに被検体を寝かした状態で、該被検体をその体軸方向に移動させつつ、一定の方向からX線を照射することにより得られた透視画像から該被検体の体型を求める方法が記載されている。X線発生器から出射されたX線は、被検体の体内を透過する経路長に応じて減衰し、検出器に至るため、検出器の検出結果である透視画像から、X線が被検体を透過した経路長、つまり、サイズを求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
X線発生器から被検体に照射されたX線は、被検体だけでなくベッドも透過し、その際に減衰する。したがって、特許文献1に記載の方法で求められる被検体のサイズには、ベッドによるX線の減衰量が反映されることになり、正確性に欠けるという問題があった。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、X線CT装置においてX線が照射される被検体のサイズを正確に求めることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明の第1態様は、
被検体が載置されるベッドと、円筒状の回転フレームと、該回転フレームの中心を挟んで対向する箇所に配置されたX線発生部及びX線検出部とを備え、前記回転フレームを回転させるとともに前記ベッドを該回転フレームの軸方向に移動させながら前記X線発生部から前記ベッドに載置された被検体にX線を照射したときの前記X線検出器の検出結果から該被検体のCT断層像のデータを生成するX線CT装置の、前記CT断層像データを処理する画像処理装置であって、
前記CT断層像データを記憶する記憶部と、
前記CT断層像データに基づき、前記被検体の身体に対応する領域である身体領域を前記CT断層像から抽出する身体領域抽出部とを備え、
前記身体領域抽出部が、
前記CT断層像データを二値化して、二値化断層像を形成する二値化処理部と、
前記二値化断層像から閉領域を形成している輪郭線を抽出する輪郭線抽出部と、
前記抽出された輪郭線の中から、閉領域の面積が所定の閾値よりも大きい輪郭線を選択する輪郭線選択部と、
前記二値化断層像上に、前記選択された輪郭線が形成する閉領域の全てが含まれ、且つ該閉領域に接するように矩形枠を設定して、該矩形枠の中心の位置を特定する中心位置特定部と、
前記中心との距離が最短となる輪郭線を探索し、その輪郭線により形成される閉領域を身体領域として設定する身体領域設定部と
を備える。
【0012】
また、上記課題を解決するために成された本発明の第2態様は、
被検体が載置されるベッドと、円筒状の回転フレームと、該回転フレームの中心を挟んで対向する箇所に配置されたX線発生部及びX線検出部とを備え、前記回転フレームを回転させるとともに前記ベッドを該回転フレームの軸方向に移動させながら前記X線発生部から前記ベッドに載置された被検体にX線を照射したときの前記X線検出器の検出結果から該被検体のCT断層像のデータを生成するX線CT装置の、前記CT断層像データを処理する画像処理装置であって、
前記CT断層像データを記憶する記憶部と、
前記CT断層像データに基づき、前記被検体の身体に対応する領域である身体領域を前記CT断層像から抽出する身体領域抽出部とを備え、
前記身体領域抽出部が、
前記CT断層像データを二値化して、二値化断層像を形成する二値化処理部と、
前記二値化断層像から閉領域を形成している輪郭線を抽出する輪郭線抽出部と、
前記抽出された輪郭線の中から、閉領域の面積が所定の閾値よりも大きい輪郭線を選択する輪郭線選択部と、
前記二値化断層像上に、前記選択された輪郭線が形成する閉領域の全てが含まれ、且つ該閉領域に接するように矩形枠を設定して、該矩形枠の中心の位置を特定する中心位置特定部と、
前記中心が輪郭線の内側に位置するときは、その輪郭線による閉領域を身体領域として設定し、前記中心が輪郭線の外側に位置するときは、該中心を挟んで両側に位置する2個の閉領域を身体領域として設定する身体領域設定部と
を備える。
【0013】
第1態様及び第2態様の画像処理装置においてX線CT装置には、PET-CT(Positron Emission Tomography-Computed Tomography)装置も含まれることとする。第1態様及び第2態様の画像処理装置は、いずれも被検体のCT断層像データから該被検体の身体に対応する領域である身体領域を抽出する身体領域抽出部を備え、前記身体領域抽出部は、二値化処理部、輪郭線抽出部、輪郭線選択部、中心位置特定部、身体領域設定部を備えている。輪郭線抽出部は、二値化処理部によって形成された二値化断層像から閉領域を形成する輪郭線を抽出し、輪郭線選択部は、抽出された輪郭線のうち、閉領域の面積が所定の閾値よりも大きい輪郭線を選択する。この選択処理は、二値化断層像に含まれる閉領域のうち被検体の身体(具体的には腹部、胸部、腕部、脚部、及び頭部)に対応する閉領域ではない、ノイズである閉領域を除外するために行われる。従って、ノイズである閉領域が除外されるように、所定の閾値が設定される。
【0014】
なお、二値化断層像にベッドに対応する閉領域が含まれる場合、この閉領域の面積は、一般的に、腹部や胸部に対応する閉領域の面積ほど大きくないものの、腕部や脚部に対応する閉領域の面積よりも大きくなる。このため、輪郭線選択部による選択処理では、ベッドに対応する閉領域の輪郭線を除外することができない。
【0015】
そこで、第1態様の画像処理装置では、中心位置特定部が二値化断層像上に、輪郭線選択部によって選択された輪郭線が形成する閉領域の全てが含まれ、且つ該閉領域に接するように矩形枠を設定して該矩形枠の中心の位置を特定すると、身体領域設定部は、該中心との距離が最短となる輪郭線を探索し、その輪郭線により形成される閉領域を身体領域として設定する。
【0016】
上記構成では、前記選択された輪郭線が形成する閉領域を取り囲む最小の矩形枠が二値化断層像上に設定される。被検体の頭部、胸部、又は腹部付近のCT断層像であれば、矩形枠の中心は、頭部、胸部、又は腹部に対応する閉領域の輪郭線の内側に位置するため、この場合は頭部、腹部又は胸部に対応する閉領域の輪郭線が、前記中心との距離が最短の輪郭線となる。一方、被検体の脚部付近を撮影して得られたCT断層像であれば、矩形枠の中心は2個の脚部に対応する閉領域の中間点付近に位置するため、この場合は2個の脚部の両方又は一方に対応する閉領域の輪郭線が、前記中心との距離が最短の輪郭線となる。いずれの場合も、二値化断層像上の閉領域のうち、被検体の身体(頭部、胸部、腹部、又は脚部)に対応する閉領域が身体領域として設定され、ベッドに対応する閉領域が身体領域として設定されることはない。
【0017】
一方、第2態様の画像処理装置では、中心位置特定部が二値化断層像上に、輪郭線選択部によって選択された輪郭線が形成する閉領域の全てが含まれ、且つ該閉領域に接するように矩形枠を設定して該矩形枠の中心の位置を特定すると、身体領域設定部は、該中心が輪郭線の内側に位置するときは、その輪郭線による閉領域を身体領域として設定し、前記中心が輪郭線の外側に位置するときは、該中心を挟んで両側に位置する2個の閉領域を身体領域として設定する。
【0018】
上記構成では、前記選択された輪郭線が形成する閉領域を取り囲む最小の矩形枠が二値化断層像上に設定される。被検体の頭部、胸部、又は腹部付近のCT断層像であれば、矩形枠の中心は、頭部、胸部、又は腹部に対応する閉領域を形成する輪郭線の内側に位置するため、頭部、胸部、又は腹部に対応する閉領域が身体領域として設定される。一方、被検体の脚部付近のCT断層像であれば、矩形枠の中心は、2個の脚部に対応する閉領域の中間点付近に位置し、輪郭線の外側となるため、該中心を挟んで両側に位置する2個の閉領域、つまり、脚部に対応する閉領域が身体領域として設定される。したがって、いずれの場合も、ベッドに対応する閉領域が身体領域として設定されることはない。
【0019】
上記構成の画像処理装置においては、さらに、
前記輪郭線選択部によって選択された輪郭線のうち、前記身体領域として設定された閉領域を形成する輪郭線を除く輪郭線によって形成される閉領域の重心の位置を求める重心位置算出部と、
前記身体領域の下側端部を特定する下側端部特定部と
を備え、
前記身体領域設定部が、前記輪郭線選択部によって選択された輪郭線のうち、前記求められた重心が前記下側端部よりも前記中心が位置する側にある閉領域を、さらに身体領域として設定するとよい。
【0020】
上記構成において、下側端部の「下側」とは、X線CT装置が生成するCT断層像データによって表されるCT断層像において、ベッドが位置する側をいう。したがって、被検体が背臥位(仰向け)でベッドに載置された状態で撮影されたCT断層像の二値化断層像の場合は、下側は身体の背側となり、被検体が腹臥位(俯せ)でベッドに載置された状態で撮影された場合は、通常、下側は身体の腹側となる。また、被検体が右脇側を下にした側臥位(横向け)でベッドに載置された状態で撮影された場合は、下側は身体の右脇側となる。上記構成において、「輪郭線選択部によって選択された輪郭線のうち、重心が前記下側端部よりも前記中心が位置する側にある閉領域」は、ベッドに対応する閉領域を除く閉領域となり、このような閉領域とは、胸部又は腹部とともにCT断層像に現れる、腕部に対応する閉領域を指す。上記構成の画像処理装置によれば、腕部に対応する閉領域を身体領域に加えることができるため、より正確に身体領域の面積を算出することができる。
【0021】
上記構成の画像処理装置においては、さらに、
前記身体領域設定部によって身体領域として設定された閉領域の、上側端部と下側端部の距離である上下径寸法、及び左側端部と右側端部の距離である左右径寸法を、それぞれ求め、前記上下径寸法及び前記左右径寸法から、身体領域の面積指標値を算出する面積指標値算出部と備えることが好ましい。
【0022】
上記構成において「面積指標値」とは、身体領域の面積そのものでも良いが、身体領域の面積と相関する値であれば面積以外の値でもよい。上記構成によれば、面積指標値算出部によって算出された面積指標値を利用することにより、被検体の体型に応じたX線の被曝線量を容易に算出することができる。
【0023】
上記構成の画像処理装置においては、前記記憶部が、所定の線量検出用ファントムを用いて予め求められた、前記X線CT装置の被曝線量の評価指標を記憶しており、
前記評価指標と、前記面積指標値算出部によって算出された前記指標値とに基づいて、SSDE値を算出して出力する被曝線量出力部をさらに備えることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、被検体のサイズに対応する被曝線量であるSSDE値を容易に求めることができる。ここで、評価指標の例としては「CTDIvol」が挙げられるが、これに限定されない。
【0025】
本発明の第3態様は、被検体が載置されるベッドと、被検体が載置されるベッドと、円筒状の回転フレームと、該回転フレームの中心を挟んで対向する箇所に配置されたX線発生部及びX線検出部とを備え、前記回転フレームを回転させるとともに前記ベッドを該回転フレームの軸方向に移動させながら前記X線発生部から前記ベッドに載置された被検体にX線を照射したときの前記X線検出器の検出結果から該被検体のCT断層像のデータを生成するX線CT装置からの前記CT断層像データを処理し、前記被検体の身体に対応する領域である身体領域を前記CT断層像から抽出する身体領域抽出方法であって、
前記CT断層像データを二値化して、二値化断層像を形成する二値化ステップと、
前記二値化断層像から閉領域を形成している輪郭線を抽出する輪郭線抽出ステップと、
前記輪郭線で囲まれた複数の領域のそれぞれの面積値を算出するステップと、
前記抽出された輪郭線の中から、閉領域の面積が所定の閾値よりも大きい輪郭線を選択する輪郭線選択ステップと、
前記二値化断層像上に、前記選択された輪郭線が形成する閉領域の全てが含まれ、且つ該閉領域に接するように矩形枠を設定して、該矩形枠の中心の位置を特定する中心位置特定ステップと、
前記中心との距離が最短となる輪郭線を探索し、該輪郭線により形成される閉領域を身体領域として設定する、身体領域設定ステップと
を備える。
【0026】
本発明の第4態様は、被検体が載置されるベッドと、円筒状の回転フレームと、該回転フレームの中心を挟んで対向する箇所に配置されたX線発生部及びX線検出部とを備え、前記回転フレームを回転させるとともに前記ベッドを該回転フレームの軸方向に移動させながら前記X線発生部から前記ベッドに載置された被検体にX線を照射したときの前記X線検出器の検出結果から該被検体のCT断層像のデータを生成するX線CT装置からの前記CT断層像データを処理し、前記被検体の身体に対応する領域である身体領域を前記CT断層像から抽出する身体領域抽出方法であって、
前記CT断層像データを二値化して、二値化断層像を形成する二値化ステップと、
前記二値化断層像から閉領域を形成している輪郭線を抽出する輪郭線抽出ステップと、
前記輪郭線で囲まれた複数の領域のそれぞれの面積値を算出するステップと、
前記抽出された輪郭線の中から、閉領域の面積が所定の閾値よりも大きい輪郭線を選択する輪郭線選択ステップと、
前記二値化断層像上に、前記選択された輪郭線が形成する閉領域の全てが含まれ、且つ該閉領域に接するように矩形枠を設定して、該矩形枠の中心の位置を特定する中心位置特定ステップと、
前記中心が輪郭線の内側に位置するか否かを判定する判定ステップと、
前記中心が輪郭線の内側に位置するときは、その輪郭線による閉領域を身体領域として設定し、前記中心が輪郭線の外側に位置するときは、該中心を挟んで両側に位置する2個の閉領域を身体領域として設定する、身体領域設定ステップと
を備える。
【0027】
上記身体領域抽出方法においては、さらに、
前記輪郭線選択ステップによって選択された輪郭線のうち、前記身体領域として設定された閉領域を形成する輪郭線を除く輪郭線によって形成される閉領域の重心の位置を求める重心位置算出ステップと、
前記身体領域の下側端部を特定する下側端部特定ステップと
を備え、
前記身体領域設定ステップが、前記輪郭線選択ステップによって選択された輪郭線のうち、前記求められた重心が、前記下側端部よりも前記中心が位置する側にある閉領域を、さらに身体領域として設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、被検体のCT断層像の二値化断層像から該被検体の身体領域だけを抽出することができるため、その抽出された身体領域から、X線CT装置においてX線が照射された被検体のサイズを正確に求めることができる。したがって、求められた被検体のサイズを利用することにより、該被検体のサイズに応じたX線の被曝線量を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態である医用画像管理システムの全体構成を示す概略図。
【
図4】画像処理装置の情報処理部の機能的構成を示すブロック図。
【
図5】画像処理装置の表示装置の表示画面に表示される初期画面の例を示す図。
【
図6】画像処理装置の表示装置の表示画面に表示される処理画面の例を示す図。
【
図7】身体領域を設定する処理の流れを説明するための図であり、(a)は、CT断層像の例、(b)は(a)のCT断層像の二値化断層像の例、(c)は(b)の二値化断層像から閉領域を抽出した後の図、(d)はノイズである閉領域の除外、矩形枠の設定、及び該矩形枠の中心位置の特定の処理が行われた後の図、(e)は主身体領域の最下端の特定、及び主身体領域以外の閉領域の重心の特定の処理が行われた後の図である。
【
図8】CT断層像の別の例(a)、及び(a)のCT断層像の二値化断層像において、閉領域の抽出から主身体領域の最下端の特定、及び主身体領域以外の閉領域の重心の特定までの処理が行われた後の図。
【
図10】
図6に描かれている処理画面に表示されたSSDE
204値及びSSDE
220値を強調表示した図。
【
図11】画像処理装置の表示装置の表示画面に表示された、PET-CT装置から取得された画像(CT断層像及びMIP像)の一例を示す図。
【
図12】画像処理装置の表示装置の表示画面に表示された、PET-CT装置から取得された画像(CT断層像及びMIP像)の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0031】
[医用画像管理システムの構成]
図1は、本実施形態における医用画像管理システムの構成を示す概略図である。同図に示すように、医用画像管理システム1は、X線CT装置10と、被検体情報管理装置20と、情報提供用端末30と、閲覧用端末40と、画像処理装置50とを備えている。X線CT装置10、被検体情報管理装置20、情報提供用端末30、閲覧用端末40、画像処理装置50は、有線LAN(Locl Area Network)又は無線LAN等のネットワーク60を介して通信可能に接続されている。
【0032】
X線CT装置10と被検体情報管理装置20は、病院や診療所等の医療施設毎に設置されている。また、情報提供用端末30、閲覧用端末40、及び画像処理装置50は、通常は医療施設に設置されているが、医療施設以外に設置されていても良い。X線CT装置10、被検体情報管理装置20、情報提供用端末30、閲覧用端末40及び画像処理装置50が同一の医療施設内に設置されている場合、これらの間の通信は、それぞれ当該医療施設内に構築されたコンピュータネットワーク(LAN)を介して行うようにしても良い。また、X線CT装置10は、画像処理装置50と有線または無線で接続されていれば、前記ネットワーク60に直接接続されていなくても良い。
【0033】
図2はX線CT装置10の概略構成図である。なお、
図2に示す座標系100は、X線CT装置10における方向を定義するものである。
図1及び
図2に示すように、X線CT装置10は、X線スキャナ11とコンソール12とを有する。X線スキャナ11は、架台13とベッド14とを備える。架台13は、円筒状の回転フレーム131と、該回転フレーム131の回転中心を挟んで対向する箇所の一方側に配置されたX線管132及びコリメータ133と他方側に配置されたX線検出器134と、X線管132に電圧を供給する高電圧電源135と、前記回転フレーム131を回転させる回転駆動装置136と、データ取得部137と、コントローラ138と、通信I/F139等を有している。また、ベッド14は、被検体Pが載置される天板141と、該天板141をZ軸方向に移動させて回転フレーム131の開口内に出し入れする水平駆動装置142とを有している。コントローラ138はCPU、メモリによって構成されている。
【0034】
コンソール12はコンピュータをベースとして構成されており、CPU121、メモリ122、HDD(Hard disc drive)123、入力装置124、及び表示装置125等の基本的なハードウェアから構成されている。CPU121は信号伝送路を介して各ハードウェア構成要素に相互接続されている。CPU121は、入力装置124を介した操作に応じてメモリ122に記憶されているプログラムを実行する。これによって、コンソール12は、スキャン制御部126、断層画像データ生成部127、表示制御部128として機能する。スキャン制御部126は、入力装置124を介して設定された撮影条件に基づき、X線スキャナ11のコントローラ138を制御して、高電圧電源135、回転駆動装置136、水平駆動装置142を制御する。これによって、高電圧電源135からX線管132に所定の管電流や管電圧が供給されると同時に、回転フレーム131が回転するとともに天板141がZ軸方向に移動し、スキャン動作が実行される。
【0035】
スキャン動作では、X線管132から出射され、コリメータ133を通じて被検体Pに照射されたX線が、該被検体Pを透過した後、X線検出器134に入射する。X線検出器134は、入射したX線の強度に応じた大きさの信号を出力する。この信号はデジタル信号に変換された後、コントローラ138を介してコンソール12に供給される。コンソール12では、X線スキャナ11から供給される信号に基づいて被検体Pの体内の画像(CT断層像)のデータ(CT断層像データ)を生成する。コンソール12で生成されたCT断層像データ、該CT断層像データに付帯されるテキストデータ(スキャン動作時のX線スキャナ11の設定条件、X線強度等のデータ、被検体Pの固有ID、X線CT装置10のメーカー名、型番、X線CT装置10で使用されているソフトウェア名、該ソフトウェアのバージョン等)は、検査によって得られた情報(検査結果情報)としてX線CT装置10から情報提供用端末30に送信される。なお、本実施形態で扱う情報としては、例えば、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格の情報が挙げられるが、これに限られない。
【0036】
被検体情報管理装置20は、医療施設において検査を受ける被検体の情報を登録・管理する機能を有する。この機能を実現するため、被検体情報管理装置20は、入力装置(キーボード、マウス(ポインティングデバイス)、タッチパネルなど)201と表示装置202を備え、入力装置201を操作することにより被検体情報(身体的特徴(体重、身長、BMI、体脂肪率、年齢、性別等)や病歴など)が登録される。また、当該医療施設で初めて検査を受ける被験者には、該被検体を識別するための固有IDが付与される。登録された被検体情報は固有IDが付帯されて被検体情報記憶装置203に記憶される。
【0037】
情報提供用端末30はX線CT装置10から送られてくる検査結果情報データ、及び被検体情報管理装置20から送られてくる被検体情報データを受信し、これら検査結果情報データ及び被検体情報データを保管する機能、及び、画像処理装置50からの要求に応じて、検査結果情報データ及び被検体情報データを該画像処理装置50に送信する機能を有する。これらの機能を実現するため、情報提供用端末30は、CPU、記憶装置、通信I/F、入力装置(キーボード、マウス(ポインティングデバイス)、タッチパネル等)、及び表示装置(いずれも図示せず)を備えている。
【0038】
検査結果情報データには、X線CT装置10で作成されたCT断層像データ及び画質情報データが含まれる。画質情報データには、スキャン動作時のX線スキャナ11の設定条件、X線強度等のデータ、被検体の固有IDが含まれる。さらに、画質情報データには、X線CT装置10のメーカー名、型番、X線CT装置10で使用されているソフトウェア名、該ソフトウェアのバージョン等の装置特定情報データが含まれている。情報提供用端末30は、画像処理装置50より検査結果情報が要求されると、それに応じて記憶装置からCT断層像データと画質情報データを読み出すとともに、画質情報データに含まれ被検体の固有IDに対応する被検体情報データを記憶装置から読み出して、画像処理装置50に送信する。
【0039】
このように情報提供用端末30は、X線CT装置10で作成されたCT断層像データを取得して画像処理装置50に送信することから、本発明のX線CT装置の構成要素として機能する。本実施形態では、X線CT装置10及び情報提供用端末30をネットワーク60に接続しているが、情報提供用端末30のみをネットワーク60に接続し、X線CT装置10と情報提供用端末30とは有線または無線(LAN)で接続されていてもよい。また、X線CT装置10が、情報提供用端末30の機能を備えていてもよい。
【0040】
閲覧用端末40は、ネットワーク60を介して画像処理装置50が提供するWebサイトにアクセスして、CT断層像並びに該CT断層像の被検体情報を閲覧する機能を有している。この機能を実現するため、閲覧用端末40は、CPU、記憶装置、通信I/F、入力装置(キーボード、マウス(ポインティングデバイス)、タッチパネル等)、表示装置、及び出力装置(いずれも図示せず)を備えている。また、閲覧用端末40は、クライアントアプリケーションとして、例えば、ビューワ機能(閲覧機能)及びデータ入力機能を司るWebブラウザを備えている。Webブラウザは、画像処理装置50へHTTP GETに基づく通信(例えば、HTTP通信)を行い、画像処理装置50に対して閲覧用端末40のユーザが閲覧を所望する情報の提供要求を送信する。また、Webブラウザは情報の提供要求に応じて画像処理装置50にて生成された情報を含むファイルを受信し、該ファイルに基づく画像をディスプレイに表示する。この情報を含むファイルは、例えば、JSON(JavaScript(登録商標)Object Notation)ファイルとして提供される。
【0041】
なお、被検体情報管理装置20、情報提供用端末30及び閲覧用端末40は、いわゆるデスクトップ型又はノート型のパーソナルコンビュータでも良く、携帯型端末(タブレット型PCなど)でも良い。この場合、被検体情報管理装置20、情報提供用端末30及び閲覧用端末40は、記憶装置に記憶(インストール)されたプログラムをCPUがロードして実行することによって、それぞれの機能を実現する。
【0042】
図3に示すように、画像処理装置50は、CPU501と、主記憶装置502と、記憶部550を含む補助記憶装置503と、通信I/F504と、入力装置(キーボード、マウス(ポインティングデバイス)、タッチパネルなど)505と、表示装置506とを備えている。画像処理装置50は、補助記憶装置503に記憶(インストール)されたWebサイト構築用プログラムをCPU501が主記憶装置502にロードして実行することによって、Webサイト構築部510のWebサイト構築機能を実現する。また、画像処理装置50は、補助記憶装置503に記憶(インストール)された各種処理プログラムをCPU501が主記憶装置502にロードして実行することによって、情報処理部520の情報処理機能、データ受付部530のデータ受付機能、レコード抽出部540のレコード抽出機能を実現する。
【0043】
データ受付部530は、情報提供用端末30から送られてくるCT断層像データ、画質情報データ及び被検体情報データを受け付ける。情報処理部520は、データ受付部530がCT断層像データ、画質情報データ及び被検体情報データを受け付けると、これらを紐付けて一つのレコードとして記憶部550に記憶する機能を有する。また、データ受付部530は、X線CT装置10から送られてくる該X線CT装置10の被曝線量の評価指標を受け付け、これを記憶部550に記憶する機能を有する。この評価指標は、X線CT装置10の天板141にCT線量検出用の基準ファントム(CT dosimetry phantom)を載置してX線を照射したときのX線検出器134の検出結果から得られたものであり、評価指標の具体例としては「CTDIvol」が挙げられる。基準ファントムには胴体用ファントムと頭部用ファントムがあり、いずれも均質なアクリル樹脂の円柱状体からなり、その中央部と外周部の4箇所に線量測定器が挿入されている。
【0044】
レコード抽出部540は、データ受付部530が選択条件データを受け付けると、記憶部550に保管されているレコードの中から該選択条件データに該当するレコードを抽出する。情報処理部520は、レコード抽出部540が抽出したレコードに含まれるCT断層像データに基づき、被検体の身体に対応する領域である身体領域をCT断層像から抽出する機能を有する。従って、情報処理部520が本発明の身体領域抽出部に相当する。
図4は情報処理部520の機能的構成を示すブロック図である。
図4に示すように、情報処理部520は、二値化処理部521、輪郭線抽出部522、輪郭線選択部523、中心位置特定部524、身体領域設定部525、重心位置算出部526、下側端部特定部527、面積指標値算出部528、被曝線量出力部529を備える。
【0045】
なお、画像処理装置50は、補助記憶装置503に記憶(インストール)された閲覧プログラム、データ閲覧-付加プログラムをCPU501が主記憶装置502にロードして実行することによって、閲覧が許可された所定のユーザの閲覧用端末40においてWebサイトを構築する機能を有する。前記Webサイトでは、前記レコード抽出部540によるレコード抽出結果が表示され、前記ユーザは、閲覧用端末40の表示装置に表示されるWebサイトにおいてレコード抽出結果を閲覧可能となる。
【0046】
[画像処理装置の処理動作]
次に、画像処理装置50の情報処理部520による身体領域抽出処理を、
図5~
図9を参照しつつ説明する。
図5は、画像処理装置50を起動することにより表示装置506の表示画面に表示される初期画面を示している。初期画面の最上段にはアイコンによって表された操作キーを含む操作パネル601が表示されている。また、初期画面には、画像処理装置50の主記憶装置502に記憶されているレコードの被検体リスト611、前回、画像処理装置50をシャットダウンしたときに被検体リスト611から選択された状態にある特定の被検体のレコードのリスト612、各レコードに含まれるファイルのリスト613、CT断層像614が表示されている。
【0047】
なおここでは、「レコード」は1回のスキャン動作によって撮影された一連のCT断層像データを含む検査結果情報データを指し、「ファイル」は回転フレーム131を1回転させることにより得られたCT断層像データを含む検査結果情報データを指すこことする。したがって、「レコード」には、通常、複数の「ファイル」が含まれる。
【0048】
前記初期画面において、操作パネル601の「インポート」キーが操作されると、情報提供用端末30に対してCT断層像データ、画質情報データ及び被検体情報データの送信を要求し、これにより情報提供用端末30より送られてくるCT断層像データ、画質情報データ及び被検体情報データを受け付ける。
【0049】
また、初期画面において、ファイルリスト613から特定のファイルが選択され、操作パネル601の操作キー(ビューワキー)が操作されると、
図6に示された画面に切り替わる。この画面は、画像処理装置50に様々なデータ処理を実行させるための画面(処理画面)である。処理画面の上段の操作パネル601には、データ処理の実行を指示するための操作キーがアイコンによって表示されている。
【0050】
また、処理画面の左側には選択されたファイルに含まれるCT断層像データが示すCT断層像が表示され、右側には選択されたファイルに含まれる画質情報データ及び被検体情報データが示す情報、並びに操作パネル601の操作キーの操作に基づいてデータ処理が実行された結果、得られた情報が表示されている。
【0051】
次に、処理画面の左側に
図7(a)に示すCT断層像が表示されている状態で操作パネル601において「SSDE]キーが操作された場合に実行される画像処理について説明する。
図7(a)のCT断層像には、被検体Pの腹部と腕部、及び天板141の画像が含まれている。なお、以下の説明において「上下左右」とは、
図7(a)~(e)に示されている各画像における「上下左右」を指すこととする。
【0052】
<二値化処理>
操作パネル601において「SSDE]キーが操作されると、まず、二値化処理部521は、
図7(a)のCT断層像に対して二値化処理を施し、所定の閾値よりも輝度が大きい(淡色の)画素を白に、前記閾値よりも輝度が小さい(濃色の)画素を黒に変換する。これにより、
図7(b)に
示す白黒画像(本発明の「二値化断層像」に相当する)が作成される。二値化処理の閾値は、予め設定されていてもよく、ユーザが設定してもよい。
【0053】
<輪郭線の抽出及び選択>
次に、輪郭線抽出部522は、白黒画像上において白色の領域と黒色の領域の境界である輪郭線を設定し、該輪郭線のうち閉領域を形成している輪郭線を抽出する。この場合、或る閉領域の中に別の閉領域が含まれる場合は、最も面積が大きい閉領域の輪郭線を抽出することとする。これにより
図7(c)に示す例では、白黒画像上に6個の閉領域(領域1~6)の輪郭線が抽出される。
【0054】
輪郭線抽出部522によって輪郭線が抽出されると、次に、輪郭線選択部523は、各輪郭線により形成される閉領域の面積を所定の閾値と比較し、閾値よりも面積が大きい閉領域の輪郭線を選択する。
図7(c)に示す例では、領域1~3及び領域6の輪郭線が選択され、領域4及び領域5の輪郭線は白黒画像から除去される(
図7(d))。領域1は被検体Pの腹部に対応し、領域2及び領域3は被検体Pの腕部に対応する。また、領域6は天板141に対応する。一方、除去された領域4,5は身体領域ではなくノイズである。
【0055】
<矩形枠の中心位置の特定>
続いて、中心位置特定部524は、輪郭線選択部523によって選択された輪郭線が形成する閉領域の全てが含まれ、且つ、該閉領域と接するように白黒画像上に矩形枠を設定する。これにより、領域1~3及び領域6を取り囲む最小の矩形枠が白黒画像上に設定される(
図7(d)参照)。
矩形枠が設定されると、次に中心位置特定部524は矩形枠の中心の位置(座標値)を特定する。例えば矩形枠の対向する2辺の中点同士を結んだ線分の交点の位置、あるいは、矩形枠の2本の対角線の交点の位置を、矩形枠の中心の位置とすることができる。
【0056】
なお、中心位置特定部524が設定した矩形枠の位置や大きさはユーザが手動で変更できるようにしてもよい。このように構成することで、二値化断層像上に特定される矩形枠の中心の位置を適宜の位置に変更することができる。
【0057】
<主身体領域の設定>
矩形枠の中心の位置が特定されると、身体領域設定部525は、該中心との距離が最も短い輪郭線を探索し、その輪郭線により形成される閉領域を身体領域の一部(以下「主身体領域」という。)とする。輪郭線と中心との距離は、例えば該中心の周囲の8方向(
図7(d)の中心を基点とする8本の矢印の方向)に向かう直線と輪郭線との交点を求め、これと前記中心との長さから求めることができる。
【0058】
処理画面に表示されているCT断層像が被検体Pの頭部、胸部又は腹部付近のCT断層像であるときは、中心との距離が最短となる輪郭線は、頭部、胸部又は腹部に対応する閉領域の輪郭線となる。従って、この場合は頭部、胸部又は腹部に対応する閉領域(
図7(d)の例では
「領域1」)が主身体領域として設定される。一方、処理画面に表示されているCT断層像が被検体Pの脚部付近のCT断層像であるときは、中心との距離が最短となる輪郭線は、脚部に対応する閉領域を形成する輪郭線となる。従って、この場合は脚部に対応する閉領域が主身体領域として設定される。天板141上の被検体Pの載置位置にもよるが、通常、2本の脚部の中間点に矩形枠の中心が位置するため、2本の脚部に対応する閉領域の輪郭線と前記中心との距離は等しくなる。このため、通常は、2本の脚部に対応する閉領域の両方が主身体領域として設定される。
【0059】
<副身体領域の設定>
主身体領域が設定されると、次に、下側端部特定部527は主身体領域として設定された閉領域の最下端を特定する。また、重心位置算出部526は主身体領域として設定された閉領域以外の閉領域(
図7(e)の例では領域2、3、6)の重心の位置(座標値)を算出する。重心の位置は、周知の方法から計算により求めることができる。
続いて、身体領域設定部525は、重心の位置を算出した閉領域のうち、その重心位置が最下端よりも矩形枠の中心が位置する側にある閉領域を求め、それを身体領域の一部(以下「副身体領域」という。)として設定する。
図7(e)に示す例では、領域2と領域3(いずれも腕部に対応する閉領域)が副身体領域として設定される。この副身体領域と上述した主身体領域とから被検体Pの身体領域が構成される。
【0060】
上述した処理において、天板141に対応する領域
6は、その重心が最下端よりも下側(つまり、矩形枠の中心とは反対側)にあるため、副身体領域として設定されない。
また、
図8(a)は、天板141が複数の部分から構成されている場合のCT断層像であり、
図8(b)は、
図8(a)のCT断層像の二値化断層像において、複数の閉領域が天板141に対応する閉領域として抽出された例を示している。この例でも、天板141に対応する閉領域の重心は、いずれも主身体領域の最下端よりも下側に位置しているため、天板141に対応する閉領域が身体領域として設定されることはない。
【0061】
さらに、処理画面に表示されているCT断層像が被検体Pの脚部付近のCT断層像である場合であって、2本の脚部に対応する閉領域の一方のみが主身体領域として設定された場合は、上述した処理によって他方の脚部に対応する閉領域が副身体領域として設定される。このため、CT断層像から被検体の身体に対応する領域を漏れなく抽出することができる。
【0062】
<身体領域の面積指標値の算出>
(1)身体領域の実効径の算出
身体領域が設定されると、面積指標値算出部528は、身体領域を構成する閉領域のそれぞれの最左端、最右端、最上端、最下端の座標値を求める(
図9参照)。求められた座標値は、面積指標値算出部528が備えるメモリ(図示せず)に一旦記憶されるようにしても良い。続いて、面積指標値算出部528は、最左端、最右端、最上端、最下端の座標値から各閉領域の実効径を算出する。ここで、実効径とは、該閉領域を円形領域に置き換えたときのその直径に相当する。身体領域の実効径は、全ての閉領域の実効径を合算したものとなる。閉領域の実効径は例えば以下の式(1)~(3)から求められる。
【0063】
【数1】
上記式(1)~(3)において、LATは閉領域の左右方向の長さ、APは閉領域の前後方向(
図9における上下方向)の長さ、XLeftは最左端の座標値、XRightは最右端の座標値、XUpperは最上端の座標値、XLowerは最下端の座標値、Deffは閉領域の実効径である。
【0064】
(2)身体領域の水等価径の算出
身体領域が設定されると、面積指標値算出部528は、身体領域を構成する閉領域の面積(AROI)を算出する。面積(AROI)は、閉領域内の画素数をN個、画素の一辺の長さをΔx[cm]とすると、以下の式(4)から求められる。
AROI = N*(Δx)2 [cm2] …(4)
【0065】
次に、以下の式(5)より、閉領域の平均画素値(CT値)を算出する。
【数2】
式(5)において、CTval(n)は、閉領域内の各画素の画素値である。
続いて、以下の式(6)より、閉領域の水等価径Dwを算出する。
【数3】
【0066】
(3)身体領域の面積指標値の算出
身体領域の実効径及び水等価径が求められると、次に、面積指標値算出部528は、以下の式(7)を用いて、面積指標値を算出する。ここでは、被検体PのサイズからCTDIvolを補正するためのサイズ係数fsizeを面積指標値として求めることとする。
【0067】
【数4】
上記式(7)において、A、Bは、X線CT装置の種類やCT断層像の取得部位によって決まる定数であり、例えば被検体の胸部又は腹部付近のCT断層像であるときのA、Bの値は以下のデータセット1となり、被検体の頭部又は脚部付近のCT断層像であるときのA、Bの値は以下のデータセット2となる。また、式(7)において、Dには、上記(1)又は(2)の処理で算出された実効径Deff又は水等価径Dwが代入される。
データセット1: [A, B] = [3.704369, -0.03671937]
データセット2: [A, B] = [1.874799, -0.03871313]
【0068】
<SSDE値の算出>
身体領域の面積指標値(サイズ係数fsize)が算出されると、次に、被曝線量出力部529は、記憶部550に記憶されている評価指標(CTDIvol)とサイズ係数fsizeとから被検体Pの被曝線量であるSSDE値を算出する。以下にSSDE値の算出式(8)を示す。
SSDE=fsize * CTDIvol [mGy] …(8)
【0069】
式(8)において、実効径Deffから求められたサイズ係数fsizeが用いられたときのSSDE値はSSDE204値となり、水等価径Dwから求められたサイズ係数fsizeが用いられたときのSSDE値はSSDE220値となる。
【0070】
以上のようにしてSSDE値が求められると、被曝線量出力部529は、そのSSDE値を処理画面の右側に表示する。
図10は、
図6の処理画面と同じ図であり、この
図10では、表示されたSSDE
204値及びSSDE
220値を強調するために、それぞれ四角形の枠602及び枠603で囲んでいる。なお、
図10に示す例では、SSDE
204値及びSSDE
220値以外に、実効径Deff、水等価径Dw、サイズ係数fsize等も処理画面に表示されている。
【0071】
従って、ユーザは、処理画面に表示されたSSDE204値及びSSDE220値から、被検体Pのサイズに合致した被曝線量を容易に認識することができる。
【0072】
<変形例>
上記実施形態では、X線CT装置で取得されたCT断層像を処理する例について説明したが、PET-CT装置で取得されたCT断層像を処理することも可能である。また、PET-CT装置では、被検体のPET画像とCT断層像が同時に取得される。そこで、PET画像とCT断層像の両方を含む画像(以下、PET-CT画像)を表示装置506の表示画面に表示し、このPET-CT画像を処理するようにしても良い。
【0073】
図11及び
図12は、PET-CT画像が表示された表示装置506の表示画面の一例を示している。この例では、表示画面には、CT断層像とMIP(Maximum Intensity Projection)画像が左右に並んで表示され、MIP画像の上段に複数の指標値が表示されている。
【0074】
MIP画像上にはCT断層像の取得箇所を示すバー701が表示されており、ユーザは、バー701の位置から表示画面の左側に表示されているCT断層像の取得部位を認識することができる。例えば図12では、バー701の位置から、被検体の肩部付近のCT断層像であることが分かる。また、図11では被検体のみぞおち付近のCT断層像であることが分かる。上記バー701はユーザが上下に移動させることが可能であり、バー701の移動にともない表示画面に表示されるCT断層像を切り替えることができる。
【0075】
また、表示装置506の表示画面のMIP画像の上段には、核医学画像の画質評価に利用される物理評価指標であるNEC(Noise Equivalent Count:雑音等価係数)が表示される。このNECは、表示画面の範囲指定部702でCT断層像の撮影範囲を指定することにより自動的に計算される。なお、MIP画像の上段には、NECの他、NECの計算に利用される数値(撮影範囲[BED]、画像番号[INST]、撮影範囲の長さ[Length]、撮影範囲の身体体積[Volume]等)が表示される。
【符号の説明】
【0076】
1…医用画像管理システム
10…X線CT装置
11…X線スキャナ
12…コンソール
127…断層画像データ生成部
13…架台
131…回転フレーム
132…X線管
134…X線検出器
136…回転駆動装置
14…ベッド
141…天板
20…被検体情報管理装置
30…情報提供用端末
40…閲覧用端末
50…画像処理装置
502…主記憶装置
503…補助記憶装置
504…通信I/F
506…表示装置
510…Webサイト構築部
520…情報処理部
521…二値化処理部
522…輪郭線抽出部
523…輪郭線選択部
524…中心位置特定部
525…身体領域設定部
526…重心位置算出部
527…下側端部特定部
528…面積指標値算出部
529…被曝線量出力部
550…記憶部