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特許7255816ガスを圧縮又は膨張させるための要素及びこのような要素を制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】ガスを圧縮又は膨張させるための要素及びこのような要素を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/16 20060101AFI20230404BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20230404BHJP
   F01C 21/02 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
F04C18/16 J
F04C29/00 C
F04C29/00 E
F01C21/02
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2021204037
(22)【出願日】2021-12-16
(65)【公開番号】P2022095595
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】2020/5940
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】593074329
【氏名又は名称】アトラス コプコ エアーパワー,ナームローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO AIRPOWER,naamloze vennootschap
(73)【特許権者】
【識別番号】521251567
【氏名又は名称】ヴリジェ ユニヴェルシテイ ブリュッセル
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【弁理士】
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】カロリエン ケンペン
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン フェレルスト
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ エルネンス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァウテル クーレマンス
(72)【発明者】
【氏名】ヒー デ フレーフ
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン フェットワイス
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08714951(US,B2)
【文献】特開2010-276019(JP,A)
【文献】特表2007-514096(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0148027(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0105773(US,A1)
【文献】特開平06-213232(JP,A)
【文献】国際公開第2020/112136(WO,A1)
【文献】特開2001-214874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/16
F04C 29/00
F01C 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部チャンバを収容する剛性ハウジング(2)と、
前記内部チャンバ内に位置し、ロータシャフト(4a、4b)を有するロータ(3a、3b)と、
前記ロータ(3a、3b)の前記ロータシャフト(4a、4b)が軸受支持される1又は2以上の軸受(7)であって、前記ロータシャフト(4a、4b)を有する前記ロータ(3a、3b)が、前記軸受(7)によって前記ハウジング(2)に対して回転可能に取り付けられる、1又は2以上の軸受(7)と、
を備え、
前記ロータ(3a、3b)が、前記内部チャンバの壁(5)に対して1又は2以上の間隙を有して取り付けられる、ガスを圧縮又は膨張させるための要素であって、
前記要素(1)は、
前記ハウジング(2)に対して固定された又は実質的に固定された位置を有する固定部分と、
前記間隙のうちの少なくとも1つに作用するように構成されている、前記ハウジング(2)に対して位置調節可能な部分と、
を含む、別個の柔軟構成要素(10)を備え、
前記別個の柔軟構成要素(10)は、前記ロータ(3a、3b)に直接取り付けられていない、ことを特徴とする要素。
【請求項2】
前記1又は2以上の軸受(7)のうちの1つの軸受は、全体が前記ハウジング(2)に対して移動可能に配置され、前記位置調節可能な部分は、前記軸受の全体が前記ロータ(3a、3b)と共に前記ハウジング(2)に対してシフトされるように、前記軸受の前記ハウジング(2)に対する非回転部と接触するように、その場合には、前記非回転部に力を作用させるように構成される、請求項1に記載の要素。
【請求項3】
前記位置調節可能な部分は、前記間隙のうちの少なくとも1つが前記位置調節可能な部分によって密封又は開放されるように、それ自体がそれぞれ前記間隙のうちの少なくとも1つに接近する又は離れるように構成される、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項4】
前記要素(1)は、複数のロータ(3a、3b)を備え、前記複数のロータ(3a、3b)は、前記ロータ(3a、3b)によって、複数の実質的に相互に遮断された作動チャンバが前記内部チャンバ内に形成されるように、相互の間隙を有して取り付けられ、
前記位置調節可能な部分は、前記相互の間隙の大きさを変更するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の要素。
【請求項5】
前記別個の柔軟構成要素(10)は、前記ロータシャフト(4a、4b)に関して、前記ロータ(3a、3b)及び前記ハウジング(2)が互いに対して半径方向にシフトすることができるように構成された半径方向ロータポジショナ(11)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の要素。
【請求項6】
前記軸受(7)のうちの少なくとも1つは、全体が前記ハウジング(2)に対して移動可能に配置された半径方向軸受(8)であり、
前記半径方向ロータポジショナ(11)は、第1の形状可変体(12)を備え、前記第1の形状可変体(12)は、前記半径方向軸受(8)の前記ハウジング(2)に対する非回転部と接触し、その場合、前記半径方向軸受(8)の全体が前記ロータ(3a、3b)と共に前記ハウジング(2)に対してシフトされるように、前記非回転部に力を加えるように構成される、請求項5に記載の要素。
【請求項7】
前記第1の形状可変体(12)は、前記内部チャンバから遮断された又は実質的に遮断された複数の第1のキャビティ(14)を取り囲み、前記第1のキャビティ(14)の各々は第1の圧力であり、
前記ロータシャフト(4a、4b)に直交する平面では、前記第1のキャビティ(14)の第1の部分(14a)は、前記ロータシャフト(4a、4b)に関して、前記第1のキャビティ(14)の少なくとも1つの第2の部分(14b)の正反対に位置し、
前記第1の形状可変体(12)は、
前記第1のキャビティ(14)の前記第1の部分(14a)の中の前記第1の圧力が増大すると、前記第1のキャビティ(14)の前記第1の部分(14a)の容量が増大し、かつ、前記第1のキャビティ(14)の少なくとも1つの第2の部分(14b)の中の前記第1の圧力が、前記第1のキャビティ(14)の前記少なくとも1つの第2の部分(14b)の容量が減少するように減少するように構成され、その結果、前記ロータシャフト(4a、4b)に関する半径方向において前記ロータシャフト(4a、4b)は、前記第1のキャビティ(14)の前記少なくとも1つの第2の部分(14b)に向かってシフトされる、請求項6に記載の要素。
【請求項8】
前記半径方向ロータポジショナ(11)は、外側リング(15)、内側リング(16)、及び前記外側リング(15)と前記内側リング(16)との間の前記内部チャンバから遮断された又は実質的に遮断された空間を備え、
前記外側リング(15)は、前記ハウジング(2)に対して固定的に取り付けられ、前記内側リング(16)は、前記半径方向軸受(8)の前記ハウジング(2)に対する前記非回転部に固定的に取り付けられ、又はその逆も同じであり、
前記空間内の前記半径方向ロータポジショナ(11)は、前記空間が、複数の相互に遮断された又は実質的に遮断されたリングセグメント形状の区画に分割され、前記区画の各々が、前記第1のキャビティ(14)の1つとして機能を果たすように、一方で前記外側リング(15)に、他方で前記内側リング(16)に接続されたばね構造(17)を備える、請求項7に記載の要素。
【請求項9】
前記別個の柔軟構成要素(10)は、前記ロータ(3a、3b)及び前記ハウジング(2)が、前記ロータシャフト(4a、4b)に関して、互いに対して軸方向にシフトすることができるように構成された軸方向ロータポジショナ(18)を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の要素。
【請求項10】
前記軸受(7)のうちの少なくとも1つは、前記ハウジング(2)に対して全体が移動可能に配置された軸方向軸受(9)であり、
前記軸方向ロータポジショナ(18)は、第2の形状可変体(19)を備え、前記第2の形状可変体(19)は、前記軸方向軸受(9)の前記ハウジング(2)に対する非回転部と接触し、その場合、前記軸方向軸受(9)の全体が前記ロータ(3a、3b)と共に前記ハウジング(2)に対してシフトされるように、前記非回転部に力を加えるように構成される、請求項9に記載の要素。
【請求項11】
前記第2の形状可変体(19)は、前記内部チャンバから遮断された又は実質的に遮断された第2のキャビティ(20)を取り囲み、前記第2の形状可変体(19)は、前記ロータシャフト(4a、4b)に関する、前記第2の形状可変体(19)の軸方向の寸法が、前記第2のキャビティ(20)の中の第2の圧力を増大又は減少させると、それぞれ増大又は減少するように構成される、請求項10に記載の要素。
【請求項12】
前記別個の柔軟構成要素(10)は、前記ロータシャフト(4a、4b)を取り囲む半径方向に適応可能なリング体(21)を備え、
前記半径方向に適応可能なリング体(21)の外周(22)は、前記ハウジング(2)に対して固定的に取り付けられ、前記半径方向に適応可能なリング体(21)は、前記半径方向に適応可能なリング体(21)の前記ロータシャフト(4a、4b)に関する半径方向の外部内側半径(23)の大きさを変更することができるように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載の要素。
【請求項13】
前記半径方向に適応可能なリング体(21)は、前記内部チャンバから遮断された又は実質的に遮断された第3のキャビティ(25)を取り囲む、リング形状の第3の形状可変体(24)を備え、前記第3の形状可変体(24)は、前記ロータシャフト(4a、4b)に関する半径方向の前記外部内側半径(23)が、前記第3のキャビティ(25)の中の第3の圧力を増大又は減少させると、それぞれ減少又は増大するように構成される、請求項12に記載の要素。
【請求項14】
前記内部チャンバは、前記ロータシャフト(4a、4b)の方向に関するボア(26)を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の要素。
【請求項15】
前記別個の柔軟構成要素(10)は、前記ボア(26)の端面(28)に取り付けられた軸方向に適応可能な本体(27)を備え、前記軸方向に適応可能な本体(27)は、前記内部チャンバの第1の作動チャンバが、それぞれ前記内部チャンバの第2の作動チャンバから隔離されるか又はこれと流体連通状態に置くことができるように、前記ロータ(3a、3b)と前記端面(28)との間の前記ロータシャフト(4a、4b)に関する軸方向の間隙を密封又は開放することができるように構成された第1の特定の変形可能な形状を有する、請求項14に記載の要素。
【請求項16】
前記軸方向に適応可能な本体(27)は、前記内部チャンバから遮断された又は実質的に遮断された第4のキャビティ(30)を取り囲む、第4の形状可変体(29)を備え、前記第4の形状可変体(29)は、前記ロータシャフト(4a、4b)に関する前記第4の形状可変体(29)の軸方向の寸法が、前記第4のキャビティ(30)の中の第4の圧力を増大又は減少させると、それぞれ増大又は減少するように構成される、請求項15に記載の要素。
【請求項17】
前記別個の柔軟構成要素(10)は、前記ボア(26)の回転面(32)に取り付けられた半径方向に適応可能な本体(31)を備え、前記半径方向に適応可能な本体(31)は、前記内部チャンバの第3の作動チャンバが、それぞれ前記内部チャンバの第4の作動チャンバから隔離されるか又はこれと流体連通状態に置くことができるように、前記ロータ(3a、3b)と前記回転面(32)との間の前記ロータシャフト(4a、4b)に関する半径方向の間隙を密封又は開放することができるように構成された第2の特定の変形可能な形状を有する、請求項14から16のいずれか一項に記載の要素。
【請求項18】
前記半径方向に適応可能な本体(31)は、前記内部チャンバから遮断された又は実質的に遮断された第5のキャビティ(34)を取り囲む、第5の形状可変体(33)を備える、前記第5の形状可変体(33)は、前記ロータシャフト(4a、4b)に関する前記第5の形状可変体(33)の半径方向の寸法が、前記第5のキャビティ(34)の中の第5の圧力を増大又は減少させると、それぞれ増大又は減少するように構成される、請求項17に記載の要素。
【請求項19】
前記要素(1)は、前記ハウジング(2)に対して位置調節可能な部分を位置調節するための機械的、油圧及び/又は空気圧手段を備える、請求項1から18のいずれか一項に記載の要素。
【請求項20】
前記要素(1)は、前記位置調節可能な部分を駆動するためのコントローラを備える、請求項1から19のいずれか一項に記載の要素。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の要素(1)を備えるガスを圧縮又は膨張させるための装置。
【請求項22】
ガスを圧縮又は膨張させるための要素を制御するための方法であって、前記要素(1)は、
内部チャンバを収容する剛性ハウジング(2)と、
前記内部チャンバ内に位置し、ロータシャフト(4a、4b)を有するロータ(3a、3b)と、
前記ロータ(3a、3b)の前記ロータシャフト(4a、4b)が軸受支持される1又は2以上の軸受(7)であって、前記ロータシャフト(4a、4b)を有する前記ロータ(3a、3b)が、前記軸受(7)によって前記ハウジング(2)に対して回転可能に取り付けられる、1又は2以上の軸受(7)と、
を備え
前記ロータ(3a、3b)は、前記内部チャンバの壁(5)に対して1又は2以上の間隙を有して取り付けられ、
前記方法は、
前記ハウジング(2)に対して前記要素(1)の別個の柔軟構成要素(10)の位置調節可能な部分を位置調節することによって、前記間隙のうちの少なくとも1つに作用するステップを含み、
前記別個の柔軟構成要素(10)の固定部は、前記ハウジング(2)に対して固定された又は実質的に固定された位置に保持され、
前記別個の柔軟構成要素(10)は、前記ロータ(3a、3b)に直接取り付けられない、ことを特徴とする方法。
【請求項23】
前記1又は2以上の軸受(7)のうちの1つの軸受は、全体が前記ハウジング(2)に対して移動可能に配置され、前記間隙のうちの少なくとも1つに作用すると、前記位置調節可能な部分は、前記軸受の前記ハウジング(2)に対する非回転部と接触し、その場合には、前記軸受の全体が前記ロータ(3a、3b)と共に前記ハウジング(2)に対してシフトされるように前記非回転部に力を作用させる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記位置調節可能な部分は、前記間隙のうちの少なくとも1つが前記位置調節可能な部分によって密封又は開放されるように、それぞれ前記間隙のうちの少なくとも1つに接近する又は離れる、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記要素(1)は、複数のロータ(3a、3b)を備え、前記複数のロータ(3a、3b)は、前記内部チャンバの前記ロータ(3a、3b)によって、1又は複数の実質的に相互に遮断された作動チャンバが形成されるように相互の間隙を有して取り付けられ、
前記方法は、前記ハウジング(2)に対して前記位置調節可能な部分を位置調節することによって、前記相互の間隙の大きさを変更するステップを含む、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記間隙のうちの少なくとも1つは、前記要素(1)が作動状態にない場合に制御される、及び/又は前記要素(1)が作動状態となる前に所定の値で制御される、請求項22から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記間隙のうちの少なくとも1つは、前記要素(1)が作動状態にある場合に制御される、請求項22から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ハウジング(2)に対して前記位置調節可能な部分を位置調節するステップ、機械的に、油圧で及び/又は空気圧で行われる、請求項22から27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを圧縮又は膨張させるための要素及びこのような要素を制御するための方法に関する。
【0002】
より具体的には、内部チャンバ及び内部チャンバ内に位置するロータを収容する剛性ハウジングを有する要素に関し、ロータは、内部チャンバの壁に対して1又は2以上の間隙を有して取り付けられ、要素は、間隙のうちの少なくとも1つが作用することができるように、ハウジングに対して位置調節可能な別個の柔軟構成要素が備える。
【背景技術】
【0003】
従来、ハウジング内の1又は2以上のロータの回転によって、要素の入力と出力との間でガスを圧縮又は膨張させることができる要素が知られており、ハウジング内の内部チャンバは、ロータによって複数の実質的に相互に閉鎖された作動チャンバに分割され、各作動チャンバは、圧力が異なり、ロータの回転によって入力から出力に移動する。
【0004】
この場合に、ロータは、内部チャンバのロータと壁との間及び/又はロータ相互の間での機械的接触を回避するために、内部チャンバの壁に対して及び/又は互いに対して1又は2以上の間隙を有して内部チャンバに取り付けられる。この機械的接触は、結局のところ、ロータ又はハウジングの過度の機械的応力につながり、要素の損傷をもたらす可能性がある。
【0005】
一方で、これらの間隙は、作動チャンバの間の過度の漏出流を避けるために大き過ぎてはならず、漏出流は要素の効率を低下させる。
【0006】
他方で、間隙は、
-要素の構成要素に関する機械加工公差、
-要素の作動中の要素の構成要素の熱膨張、
-要素の作動中のロータの振動挙動、
-過度の軸受圧縮及びロータ曲げが組み合わさった、1又は2以上のロータ上の圧縮力の結果としての要素の作動中の要素の構成要素の機械的負荷、
-要素の構成要素の表面の経時的な損耗又は汚れ堆積、
に起因して、常に所望の最小値に低減させるか又は低減したままにすることができない。
【0007】
これに関連して、「要素の作動中」は、要素が、要素のロータが回転する作動状態にあることを意味する。
【0008】
加えて、間隙の所望のサイズは、要素の様々な作動条件に依存する。
【0009】
要素の始動時、要素の温度が公称作動条件に比べて比較的低い場合、比較的大きな間隙は、要素に対して機械的安定性をもたらすことができる。
【0010】
要素は依然として回転するが、ガスへの又はガスからの何らかの動力をほとんど又は全く供給又は消費する必要がない、フリーランニング状態で動作する素子では、全負荷状態の素子と比較して、そのような供給または消費される動力を制限するためにも、比較的大きな間隙が望ましい。
【0011】
ロータ及び/又は軸受の共振周波数において大きな振動が引き起こされる速度領域で作動する要素では、大きな間隙は、要素に機械的安定性をもたらすためにも望ましい。
【0012】
公称作動条件中に、要素の温度が、要素の始動時の温度に対して比較的高い場合、比較的小さな間隙は、この場合も同様に高い圧縮効率をもたらすことができる。
【0013】
これは、要素の作動中に要素の間隙を能動的に制御するためのシステムに対するニーズを引き起こす。
【0014】
米国特許第10,539,137号明細書には圧縮機要素が説明されており、これは、
-ボアを備えたハウジングと、
-圧縮機要素の作動中にボアに所定のロータ間隙を導入するように構成されたヘリカルロータと、
-ヘリカルロータが取り付けられる調節可能な軸受、例えば磁気軸受と、
-調節可能な軸受が、ロータ間隙を減少させ又は増大させるようにロータを移動させる方法で、圧縮機要素の作動中に調節可能な軸受を制御するように構成されたコントローラと、
を備える。
【0015】
しかしながら、軸受、特に磁気軸受は、一般的にどちらかといえば圧縮機要素の堅牢でない構成要素であり、これは、過度の機械的負荷及びこれに起因する軸受部品の間の可能性のある相互変位の結果として、これらの動作が簡単に妨げられる可能性がある。
【0016】
特に、磁気軸受には、非常に剛性が低いという特有の欠点があり、それによって、ガスの圧縮又は膨張時のガス脈動の結果としての要素の振動は、磁気軸受においてわずかに減衰されるに過ぎない。要素が振動する場合、これは、磁気軸受の結果的に要素の各部品の間の著しい突然の偏り(deviation)につながる可能性がある。
【0017】
従って、軸受部品の相互位置に基づいて、ガスを圧縮又は膨張させるための要素の間隙を制御することは勧められない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許第10,539,137号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、ガスを圧縮又は膨張させるための要素における1又は2以上の間隙の、堅牢だが直接的かつ柔軟性のある制御を行うのを可能にすることで、前述の及び/又は他の欠点ののうちの少なくとも1つに対する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的のために、本発明は、
-内部チャンバを収容する剛性ハウジングと、
-内部チャンバ内に位置し、ロータシャフトを有するロータと、
-ロータのロータシャフトが軸受支持される1又は2以上の軸受であって、ロータシャフトを有するロータがこれらの軸受によりハウジングに対して回転可能に取り付けられる又は2以上の軸受と、
を備えるガスを圧縮又は膨張させるための要素に関し、
ロータは、内部チャンバの壁に対して1又は2以上の間隙を有して取り付けられ、
要素は、
-ハウジングに対して固定された又は実質的に固定された位置を有する固定部分と、
-間隙のうちの少なくとも1つに作用するように構成されている、ハウジングに対して位置調節可能な部分と、
を含む、別個の柔軟構成要素を備え、
別個の柔軟構成要素は、ロータに直接取り付けられていない。
【0021】
これに関連して、「剛性ハウジング」は、要素の作動条件下で、ハウジングの変形時、ハウジングの他の点に対するハウジングの所定の点の偏向が10μmに制限されたままであるハウジングを意味する。
【0022】
これに関連して、1又は2以上の軸受で「軸受支持された」ロータシャフトとは、ロータシャフトが、ロータシャフトに対して共回転している1又は2以上の軸受の一部に対して、軸方向及び半径方向の両方に剛性的に固定されることを意味する。
【0023】
これに関連して「柔軟(yielding)構成要素」は、表面を有する構成要素を意味し、この表面に力が加えられない場合のハウジングに対する元の位置に対して、この表面上への力の影響を受けて所定の点は、この場合には構成要素が塑性変形することなく、力の方向に少なくとも30μmだけ移動することができる。
【0024】
これに関連して「別個の柔軟構成要素」は、柔軟構成要素がハウジングと一体的に製造されないことを意味する。換言すると、別個の柔軟構成要素は、ハウジングの一部を形成せず、ハウジングとは別個に、それぞれ要素の中又はその外に取り付けるか又はそこから取り外すことができる。
【0025】
これに関連して、「ハウジングに対して固定された又は実質的に固定された位置を有する固定部分」は、ハウジングに対する固定部分の何らかの変位が、1又は2以上の間隙に大きな影響を及ぼさないことを意味する。
【0026】
これに関連して、「ハウジングに対して位置調節可能な部分」は、位置調節可能な部分の少なくとも1つの点がハウジングの所定の点に対してシフトする可能性があることを意味する。
【0027】
利点は、剛性ハウジングに別個の柔軟構成要素を提供することによって、ハウジング全体が柔軟的に実装された場合よりも、より局部的で方向性をもった作用が、間隙を取ることができる点である。
【0028】
また、ハウジングとは別に別個の柔軟構成要素を実装することで、互いに異なる材料の別個の柔軟構成要素及びハウジングを組み合わせることが、又は異なる製造技術に基づいて別個の柔軟構成要素及びハウジングを製造することが容易になる。
【0029】
間隙への作用によって、一方で内部チャンバのロータと壁との間の要素の過度の漏出流を回避することと、他方で内部チャンバの壁でのロータとハウジングとの間の大きな機械的応力を回避することとの間の、最適なバランスを確立することができる。
【0030】
加えて、別個の柔軟構成要素により、内部チャンバのロータと壁との間の間隙は、その場合には、軸受の動作又は軸受の部品の相互位置に直接作用することなく、影響を受けることができる。
【0031】
ハウジングに対する別個の柔軟構成要素は、例えば別個の柔軟構成要素に作用する遠心力としての、要素の動作時に別個の柔軟構成要素に対するロータの回転の影響を考慮することなく、位置調節することができる点も利点である。
【0032】
要素の好ましい実施形態では、1又は2以上の軸受のうちの1つの軸受は、全体がハウジングに対して移動可能に配置され、位置調節可能な部分は、ハウジングに対して回転しない軸受の一部と接触するように、その場合には、この非回転部に力を作用させるように構成される。
【0033】
このように、軸受全体はロータと共にハウジングに対してシフトされる。
【0034】
要素の以下の好ましい実施形態では、位置調節可能な部分は、それ自体が間隙のうちの少なくとも1つに接近する又は離れるように構成される。
【0035】
このように、間隙のうちの少なくとも1つは、位置調節可能な部分によって密封又は開放される。
【0036】
本発明の以下の好ましい実施形態では、要素は複数のロータを含み、複数のロータは、ロータによって、複数の実質的に相互に遮断された作動チャンバが内部チャンバ内に形成されるように、相互の間隙を有して取り付けられ、位置調節可能な部分は、ロータの間の相互の間隙の大きさを変更するように構成される。
【0037】
また、この場合の利点は、ロータの相互の間の過度の機械的応力及び/又は漏出流を回避することができる点であり、間隙は、要素の各作動条件に対して最適に設定とすることができる。
【0038】
本発明による要素の以下の好ましい実施形態では、別個の柔軟構成要素は、ロータシャフトに関して、ロータ及びハウジングが、互いに対して半径方向にシフトすることができるように構成された半径方向ロータポジショナを備える。
【0039】
このように、ロータシャフトに関する半径方向の間隙は、内部チャンバのロータと壁との間、及び/又はロータ相互の間の要素において、増大又は減少させることができる。
【0040】
本発明による要素のより好ましい実施形態では、軸受のうちの少なくとも1つは、全体がハウジングに対して移動可能に配置された半径方向軸受であり、半径方向ロータポジショナは、第1の形状可変体を備え、第1の形状可変体は、ハウジングに対する半径方向軸受の非回転部と接触し、その場合、非回転部に力を加えるように構成される。
【0041】
このように、半径方向軸受全体は、ロータと共にハウジングに対してシフトされる。
【0042】
本発明による要素の以下の好ましい実施形態では、別個の柔軟構成要素は、ロータ及びハウジングが、ロータシャフトに関して、互いに対して軸方向にシフトすることができるように構成された軸方向ロータポジショナを備える。
【0043】
このように、ロータシャフトに関する軸方向の間隙は、内部チャンバのロータと壁との間の要素において、増大又は減少させることができる。
【0044】
要素が複数のロータを含む場合、ロータの間の相互の間隙は、ハウジングに対する複数のロータのうちの1つのロータシャフトに関する軸線方向の変位によって大きさを変更することもできる。
【0045】
本発明による要素のより好ましい実施形態では、軸受のうちの少なくとも1つは、全体がハウジングに対して移動可能に配置された軸方向軸受であり、軸方向ロータポジショナは、第2の形状可変体を備え、第2の形状可変体は、ハウジングに対する軸方向軸受の非回転部と接触し、その場合に、非回転部に力を加えるように構成される。
【0046】
このように、半径方向軸受全体は、ロータと共にハウジングに対してシフトされる。
【0047】
本発明による要素の以下の好ましい実施形態では、別個の柔軟構成要素は、ロータシャフトを取り囲む半径方向に適応可能なリング体を備え、半径方向に適応可能なリング体の外周は、ハウジングに対して固定的に取り付けられ、半径方向に適応可能なリング体は、半径方向に適応可能なリング体のロータシャフトに関する半径方向の外部内側半径の大きさを変更することができるように構成される。
【0048】
半径方向に適応可能なリング体の外部内側半径を減少又は増大させることによって、ロータシャフトに関する半径方向の間隙は、ロータシャフトとハウジングとの間の要素におい、半径方向に適応可能なリング体によってそれぞれ密封又は開放することができる。
【0049】
本発明による要素の以下の好ましい実施形態では、内部チャンバは、ロータシャフトの方向に関するボアを含む。
【0050】
この要素のより好ましい実施形態では、別個の柔軟構成要素は、ボアの端面に取り付けられた軸方向に適応可能な本体を含み、軸方向に適応可能な本体は、内部チャンバの第1の作動チャンバが、それぞれ内部チャンバの第2の作動チャンバから隔離されるか又はこれと流体連通状態に置くことができるように、ロータと端面との間のロータシャフトに関する軸方向の間隙を密封又は開放することができるように構成された第1の特定の変形可能な形状を有する。
【0051】
この要素の以下のより好ましい実施形態では、別個の柔軟構成要素は、ボアの回転面に取り付けられた半径方向に適応可能な本体を備え、半径方向に適応可能な本体は、内部チャンバの第3の作動チャンバが、それぞれ内部チャンバの第4の作動チャンバから隔離されるか又はこれと流体連通状態に置くことができるように、ロータと回転面との間のロータシャフトに関する半径方向の間隙を密封又は開放することができるように構成された第2の特定の変形可能な形状を有する。
【0052】
本発明の以下の好ましい実施形態では、要素は、ハウジングに対して位置調節可能な部分を位置調節するための機械的、油圧及び/又は空気圧手段を備える。
【0053】
利点は、このような機械的、油圧及び/又は空気圧手段が機械的に堅牢であり、このような機械的、油圧及び/又は空気圧手段によって位置調節された柔軟構成要素は、磁気軸受のような、例えば、(電)磁気手段によって位置調節された柔軟構成要素よりも、大きな機械的負荷に耐えることができる点である。
【0054】
さらなる利点は、機械的手段の移動又は油圧又は空気圧手段を駆動するための圧力は、正確に制御できる点であり、あらゆる点で、別個の柔軟構成要素の位置調節可能な部分の熱膨張又は収縮を引き起こす可能性がある熱的手段を駆動するための温度よりも正確である。
【0055】
本発明の以下の好ましい実施形態では、要素は、位置調節可能な部分を駆動するためのコントローラを備える。
【0056】
このようなコントローラの助けにより、間隙のうちの1又は2以上は、要素に対して人間オペレータによる手動介入を必要とせずに自動的に作用されることができる。
【0057】
本発明は、上述の実施形態のうちの1つによる要素を備えるガスを圧縮又は膨張させる装置に関する。
【0058】
このよう装置は、上述の実施形態のうちの1つによる要素と同じ利点を呈することは言うまでもない。
【0059】
さらにまた、本発明は、上述の実施形態のうちの1つによる又は上述の装置による要素で用いる別個の柔軟構成要素に関する。
【0060】
さらにまた、本発明は、ガスを圧縮又は膨張させるための要素を制御するための方法に関し、要素は、
-内部チャンバを収容する剛性ハウジングと、
-内部チャンバ内に位置し、ロータシャフトを有するロータと、
-ロータのロータシャフトが軸受支持される1又は2以上の軸受であって、ロータシャフトを有するロータがこれらの軸受によりハウジングに対して回転可能に取り付けられる又は2以上の軸受と、
を備え、
方法は、
ハウジングに対して要素の別個の柔軟構成要素の位置調節可能な部分を位置調節することによって、間隙のうちの少なくとも1つに作用するステップを含み、
別個の柔軟構成要素の固定部は、ハウジングに対して固定された又は実質的に固定された位置に保持され、
別個の柔軟構成要素は、ロータに直接取り付けられない、
【0061】
このよう装置は、上述の実施形態のうちの1つによる要素と同じ利点を呈することは言うまでもない。
【0062】
本発明による方法の好ましい実施形態では、1又は2以上の間隙のうちの少なくとも1つは、要素が作動状態である場合に制御される。
【0063】
この場合の利点は、作動時、要素の作動条件に基づいて間隙を制御することができ、従って、一方で要素の過度の漏出流を回避することと、他方で内部チャンバの壁でのロータとハウジングとの間の大きな機械的応力を回避することとの間の、最適なバランスを設定することができる点である。
【0064】
本発明の特徴をより良く示すことを目的として、例示的かつ非限定的な一部の好ましい実施形態は、添付の図面を参照してガスを圧縮又は膨張させるための本発明による要素に関して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】本発明による要素の第1の実施形態の断面図を示す。
図2図1の要素の第1の別個の柔軟構成要素の部品をより詳細に示す。
図3】本発明による要素の代替的な第2の実施形態の断面を示す。
図4図3の要素の第2の別個の柔軟構成要素をより詳細に断面図で示す。
図5】本発明による要素の代替的な第3の実施形態の断面を示す。
図6】F6として図5で指定された部分をより詳細に示し、この部分は図5の要素の第3の別個の柔軟構成要素を断面図で示す。
図7】本発明による要素の代替的な第4の実施形態の断面を示す。
図8】F8として図7で指定された部分をより詳細に示し、この部分は図7の要素の第4の別個の柔軟構成要素を断面図で示す。
図9】本発明による要素の代替的な第5の実施形態の断面を示す。
図10】F10として図9で指定された部分をより詳細に示す図であり、この部分は図9の要素の第5の別個の柔軟構成要素を断面図で示す。
図11】本発明による要素の代替的な第6の実施形態の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
使用される用語は、単に実施例として好ましい実施形態を説明することを目的としており、請求項で定義するような特許請求の範囲を制限すると解釈すべきではない。
【0067】
「a」又は「the」が先行する単数形の用語は、これらの用語の複数形を指定する場合がある。
【0068】
以下では、用語「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」、又は「第5の」が様々な形状可変体、キャビティ、圧力、又は作動チャンバを指定するために用いられるが、これらの形状可変体、キャビティ、圧力、又は作動チャンバは、これらの用語によって制限されない。これらの用語は、形状可変体、キャビティ、圧力、又は作動チャンバのタイプを区別するのに用いられるに過ぎない。以下で「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」、又は「第5の」などの用語が用いられる場合、これらの用語は、何らかの特定の順序又は順番を意味するものではない。そのため、第1の形状可変体、キャビティ、圧力又は作動チャンバは、この場合、例示的な実施形態の範囲を越えことなく、例えば、第2又は第3の形状可変体、キャビティ、圧力、又は作動チャンバとして全く同じように容易に指定することができる。複数の第1の、第2の、第3の、第4の又は第5の形状可変体、キャビティ、圧力、又は作動チャンバが存在し得ることにも言及できるはずである。
【0069】
図1は、本発明によるガスを圧縮するための要素1を示す。
【0070】
この要素1は、内部チャンバを収容する剛性ハウジング2を含む。このハウジング2は、この場合、複数の部品で実現され、これは、内部チャンバ内にロータ3a、3bをそれぞれ配置又は取り外すために容易に相互に組み立てること又は分解することができる。
【0071】
図1の要素1において、内部チャンバ内には各々がロータシャフト4a、4b有する2つのロータ3a、3bがある。2つのロータ3a、3bは、この場合、内部チャンバの壁5に対して及び互いに対して間隙を有する2つの噛み合い式ヘリカルロータとして実装され、それによって、内部チャンバは、ヘリカルロータによって、間隙を除いて相互に閉鎖された複数の作動チャンバに分割される。
【0072】
ロータ3a、3bの回転によって、ガスは、入口ポート6から、内部チャンバのこの入口ポート6に接続された作動チャンバに及びその中に吸い込まれることになる。ロータ3a、3bのさらなる回転によって、この作動チャンバは、ロータシャフト4a、4bに関して、入口ポート6から軸方向に離れるように移動し、入口ポート6から遮断され、その後、ロータ3a、3bのさらなる回転によって、作動チャンバの中の吸い込まれたガスが圧縮されることになる。
【0073】
このことは、ロータシャフト4a、4bに関して、入口ポート6から軸方向に連続する作動チャンバ内で、内部チャンバの中の吸い込まれたガスがますます大きな圧力で圧縮されることを意味する。
【0074】
この連続する作動チャンバの間の圧力差により、ガスの漏出流は、入口ポート6の方向に間隙を介して生じる。
【0075】
ロータ3a、3bのロータシャフト4a、4bは、軸受7で支持され、それによって、これらのロータシャフト4a、4bを備えるロータ3a、3bは、軸受7によってハウジング2に対して回転可能に取り付けられる。
【0076】
軸受7は、
-ロータシャフト4a、4bに関して半径方向の機械的負荷を吸収することができる半径方向軸受8、及び/又は
-ロータシャフト4a、4bに関して軸方向の機械的負荷を吸収することができる軸方向軸受9、
として実装することができる。
【0077】
図1の軸受7は、要素の入口ポート6から最も遠くに位置するロータシャフト4a、4bの端部の周りに位置するが、軸受7が入口ポート6においてロータシャフト4a、4bの端部に位置することは、本発明の範囲にあり排除されない。
【0078】
優先的ではないが、この場合、要素1は、油注入式圧縮機要素である。
【0079】
要素が内部チャンバ内に油注入しない圧縮機要素であることは、本発明の範囲にあり排除されないか又は勧められ、内部チャンバ内のロータの回転は、例えば、これらのロータのロータシャフト上の歯車を噛み合わせることによって同期される。
【0080】
要素がガスを膨張させるための要素であるということは、本発明の範囲にある排除されない。
【0081】
間隙のうちの少なくとも1つに作用するために、ハウジング2は、ハウジング2に対して位置調節可能な少なくとも1つの別個の柔軟構成要素10を備える。
【0082】
「間隙のうちの少なくとも1つに作用する」とは、別個の柔軟構成要素10によって、内部チャンバ内のロータ3a、3bと壁5との間又はロータ3a、3bの相互の間の間隙の最小断面が、
-減少又は増大される、及び/又は
-密封又は開放される、
のいずれかであることを意味する。
【0083】
図1の要素1の場合、別個の柔軟構成要素10は、半径方向ロータポジショナ11として実装され、半径方向ロータポジショナ11は、互いに対してロータ3a、3b及びハウジング2をロータシャフト4a、4bに関する半径方向にシフトさせることができる。
【0084】
図2は、このような半径方向ロータポジショナ11の部品のより詳細で具体的な実施例を示す。
【0085】
半径方向ロータポジショナ11は、貫通孔13を有する第1の形状可変体12を含む。
【0086】
貫通孔13において、この場合は半径方向軸受8とする必要がある軸受7のうちの1つのハウジングに対する非回転部は、しっかりと固定する必要がある。
【0087】
さらに、第1の形状可変体12は、内部チャンバから遮断された又は実質的に遮断された複数の第1のキャビティ14を取り囲み、この第1のキャビティ14の各々は、別個の第1の圧力にあり、ロータシャフト4a、4bに垂直な平面において、この第1のキャビティ14の第1の部分14aは、ロータシャフト4a、4bに関して、これらの第1のキャビティ14の少なくとも1つの第2の部分14bの正反対に位置する。
【0088】
第1の形状可変体12は、第1のキャビティ14の第1の部分14aの中の第1の圧力が増大すると、
-第1のキャビティ14の第1の部分14aの容量が増大し、
-第1のキャビティ14の少なくとも1つの第2の部分14bの中の第1の圧力が、第1のキャビティ14の少なくとも1つの第2の部分14bの容量が減少するように減少する、
ように構成され、このような方法で制御され、その結果、半径方向軸受8は、ロータ3a、3bと共に、第1のキャビティ14の少なくとも1つの第2の部分14bに向かってロータシャフト4a、4bに関連して半径方向に、ハウジング2に対してシフトされる。
【0089】
より具体的には、半径方向ロータポジショナ11は、外側リング15、内側リング16、及び外側リング15と内側リング16との間で内部チャンバから遮断され又は実質的に遮断された空間を含む。
【0090】
この場合、外側リング15は、例えば、外側リング15の一部であるフランジ15aによってハウジング2に対して固定的に取り付けられるが、内側リング16は、半径方向軸受8のハウジング2に対する非回転部に固定的に取り付けられる。
【0091】
この場合、外側リング15が半径方向軸受8のハウジング2に対する非回転部に固定的に取り付けられるが、内側リング16がハウジング2に固定的に取り付けられることは、本発明の範囲にあり排除されない。
【0092】
この場合、半径方向ロータポジショナ11は、外側リング15と内側リング16との間の前述の空間にばね構造17を備え、このばね構造17は、一方で外側リング15に結合し、他方で内側リング16に結合する。このように、前述の空間は、複数の相互に分離された本質的にリングセグメント形状の区画に分割され、これらの区画の各々は、前述の第1のキャビティ14のうちの1つとしての機能を果たす。
【0093】
これらの区画の各々は、区画のそれぞれにおいて初期圧力を増大又は減少させるために作動流体を供給又は吐出するための接続点(図1又は2には示されていない)を備えることができる。
【0094】
また、図2に示すような半径方向ロータポジショナ部品は、円盤形密封板(図2には示されていない)を含み、これは、外側リング15の両側に軸方向(ロータシャフト4a、4bに関する)に取り付けられ、内部チャンバから軸方向(ロータシャフト4a、4bに関する)の、外側リング15と内側リング16との間の空間を密封する働きをする。
【0095】
図3は、本発明による要素1の代替的な第2の実施形態を示す。
【0096】
図3の要素1の場合、別個の柔軟構成要素10は、軸方向ロータポジショナ18として実装され、軸方向ロータポジショナ18は、互いに対して軸方向(ロータシャフト4a、4bに関する)にロータ3a、3b及びハウジング2をシフトさせることができる。
【0097】
この場合、軸方向ロータポジショナ18は、ハウジング2と、軸方向軸受9とする必要がある軸受7のうちの少なくとも1つのハウジング2に対する非回転部との間に位置する。
【0098】
図4は、このような軸方向ロータポジショナ18のより詳細で具体的な実施例を示す。
【0099】
軸方向ロータポジショナ18は、内部チャンバから遮断された又は実質的に遮断された第2のキャビティ20を取り囲む、第2の形状可変体19を備える。
【0100】
この場合、第2の形状可変体19は、第2の形状可変体19のロータシャフト4a、4bに関する軸方向の寸法が、第2のキャビティ20の中の第2の圧力を増大又は減少させることによって、それぞれ増大する又は減少するように構成されて制御される。
【0101】
この目的のために、第2の形状可変体19は、第2のキャビティ20の中の第2の圧力をそれぞれ増大又は減少させるように、作動流体を供給又は吐出するための接続点35を備えることができる。
【0102】
第2の形状可変体19の軸方向寸法を増大させることによって、第2の形状可変体19は、ハウジング2に対して、ロータシャフト4a、4bに関する軸方向にロータ3a、3bと共に軸方向軸受9をシフトさせる。第2の形状可変体19の軸方向寸法を遡及的に減少させると、軸方向軸受9及びロータ3a、3bは、ロータシャフト4a、4bに関する軸方向でその元の位置に戻ることができる。
【0103】
このように、ロータ3a、3bとハウジング2との間のロータシャフト4a、4bに関する軸方向の間隙は、増大又は減少させることができる。
【0104】
図5は、本発明による要素1の第3の代替の実施形態の断面を示す。
【0105】
図5の要素1の場合、別個の柔軟構成要素10は、ロータシャフト4a、4bを取り囲む半径方向に適応可能なリング体21として実装される。半径方向に適応可能なリング体21の外周22は、ハウジング2に対して固定的に取り付けられる。さらに、半径方向に適応可能なリング体21は、半径方向に適応可能なリング体21のロータシャフト4a、4bに関する半径方向の外部内側半径23のサイズを変更することができるように構成される。
【0106】
「半径方向に適応可能なリング体のロータシャフトに関する半径方向の外部内側半径」によって、直線半径は、
-ロータシャフト4a、4bに直交する平面に位置し、
-そのうち、第1の終点はロータシャフト4a、4bに位置し、
-そのうち、第2の終点は半径方向に適応可能なリング体21の点であり、
-そのうち、第1の終点と第2の終点との間の各点は、半径方向に適応可能なリング体21の点ではない、
ことを意味する。
【0107】
図6は、半径方向に適応可能なリング体21のより詳細で具体的な実施例を示す。
【0108】
半径方向に適応可能なリング体21は、内部チャンバから遮断された又は実質的に遮断された第3のキャビティ25を取り囲むリング状の第3の形状可変体24を含む。
【0109】
前述の第3の形状可変体24は、ロータシャフト4a、4bに関する半径方向の外部内側半径23が、第3のキャビティ25の中の第3の圧力を増大又は減少させることによって、それぞれ減少又は増大するように構成される。
【0110】
この目的のために、第3の形状可変体24は、第3のキャビティ25の中の第3の圧力をそれぞれ増大又は減少させるように、作動流体を供給又は吐出するための接続点(図5又は6には示されていない)を備えることができる。
【0111】
半径方向の外部内側半径23を減少させることによって、半径方向に適応可能なリング体21は、ロータシャフト4a、4bの周りで内向きに半径方向(ロータシャフト4a、4bに関する)に膨張する。半径方向の外部内側半径23を遡及的に増大させると、半径方向に適応可能なリング体21とロータシャフト4a、4bとの間のロータシャフト4a、4bに関する半径方向の距離は、遡及的に増大する。
【0112】
このように、ロータシャフト4a、4bとハウジング2との間のロータシャフト4a、4bに関する半径方向の間隙は、それぞれ減少又は増大させることができる。
【0113】
図7は、本発明による要素1の代替的な第4の実施形態を示す。
【0114】
内部チャンバは、ロータシャフト4a、4bの方向に関するボア26を含む。
【0115】
図7の要素1の場合、別個の柔軟構成要素10は、ボア26の端面28に取り付けられた軸方向に適応可能な本体27として実装される。
【0116】
この軸方向に適応可能な本体27は、内部チャンバの第1の作動チャンバが、それぞれ内部チャンバの第2の作動チャンバから隔離することができるか又はこれと流体連通状態に置くことができるように、ロータ3a、3bと端面28との間のロータシャフト4a、4bに関する軸方向の間隙を密封又は開放することができるように構成された第1の特定の変形可能な形状を有する。
【0117】
図7の端面28は、要素の入口ポート6から最も遠くのボア26の側面に位置するが、この端面が、入口ポート6のボア26の側面に位置することは、本発明の範囲にあり排除されない。
【0118】
図8は、軸方向に適応可能な本体27のより詳細で具体的な実施例を示す。
【0119】
軸方向に適応可能な本体27は、内部チャンバから遮断された又は実質的に遮断された第4のキャビティ30を取り囲む、第4の形状可変体29を含む。
【0120】
この第4の形状可変体29は、第4の形状可変体29のロータシャフト4a、4bに関する軸方向の寸法が、第4のキャビティ30の中の第4の圧力を増大又は減少させることによって、それぞれ増大又は減少するように構成される。
【0121】
この目的のために、第4の形状可変体29は、第4のキャビティ30の中の第4の圧力をそれぞれ増大又は減少させるように、作動流体を供給又は吐出するための接続点(図7又は8には示されていない)を備えることができる。
【0122】
第4の形状可変体29のロータシャフト4a、4bに関する軸方向寸法を増大させることによって、第4の形状可変体29は、ロータシャフト4a、4bに関する軸方向にロータ3a、3bに向かって増大する。結果として、ロータ3a、3bとハウジング2との間のロータシャフト4a、4bに関する半径方向の間隙は、内部チャンバの前述の第1の作動チャンバを、内部チャンバの前述の第2の作動チャンバから分離することができるように密封することができる。
【0123】
第4の形状可変体29のロータシャフト4a、4bに関する軸方向の寸法を遡及的に減少させると、ロータ3a、3bの第4の形状可変体29は、ロータシャフト4a、4bに関する軸方向に絶えず減少する。結果として、ロータ3a、3bとハウジング2との間のロータシャフト4a、4bに関する半径方向の間隙は、内部チャンバの前述の第1の作動チャンバを、内部チャンバの前述の第2の作動チャンバと流体連通状態に遡及的に置くように、遡及的に開放される。
【0124】
複数のロータを含む要素の場合、一方で端面と他方で両ロータとの間の間隙は、同じ軸方向に適応可能な本体を利用して密封又は開放することができることは、本発明の範囲にあり排除されない。
【0125】
図9は、本発明による要素1の代替的な第5の実施形態を示す。
【0126】
この第5の実施形態では、内部チャンバはまた、ロータシャフト4a、4bの方向に関するボア26を備える。
【0127】
図9の要素1の場合、別個の柔軟構成要素10は、ボア26の回転面32に取り付けられた半径方向に適応可能な本体31として実装される。
【0128】
前述の半径方向に適応可能な本体31は、内部チャンバの第3の作動チャンバが、それぞれ内部チャンバの第4の作動チャンバから隔離されるか又はこれと流体連通状態に置くことができるように、ロータ3a、3bと回転面32との間のロータシャフト4a、4bに関する半径方向の間隙を密封又は開放することができるように構成された第2の特定の変形可能な形状を有する。
【0129】
図10は、半径方向に適応可能な本体31のより詳細で具体的な実施例を示す。
【0130】
半径方向に適応可能な本体31は、内部チャンバから遮断された又は実質的に遮断された第5のキャビティ34を取り囲む、第5の形状可変体33を備える。
【0131】
前述の第5の形状可変体33は、第5の形状可変体33のロータシャフト4a、4bに関する半径方向の寸法が、第5のキャビティ34の中の第5の圧力を増大又は減少させることによって、それぞれ増大又は減少するように構成される。
【0132】
この目的のために、第5の形状可変体33は、それぞれ第5のキャビティ34の中の第5の圧力を減少又は増大させるように、作動流体を供給又は吐出するための接続点(図9又は10には示されていない)を備えることができる。
【0133】
第5の形状可変体33のロータシャフト4a、4bに関する半径方向の寸法を増大させることによって、第5の形状可変体33は、ロータシャフト4a、4bに関する半径方向にロータ3a、3bに向かって増大する。結果として、ロータ3a、3bとハウジング2との間のロータシャフト4a、4bに関する半径方向の間隙は、内部チャンバの前述の第3の作動チャンバを、内部チャンバの前述の第4の作動チャンバから分離することができるように密封することができる。
【0134】
第5の形状可変体33のロータシャフト4a、4bによる軸方向寸法を遡及的に減少させると、ロータ3a、3bの第5の形状可変体33は、ロータシャフト4a、4bに関する半径方向に絶えず減少する。結果として、ロータ3a、3bとハウジング2との間のロータシャフト4a、4bに関する半径方向の間隙は、内部チャンバの前述の第3の作動チャンバを、内部チャンバの前述の第4の作動チャンバと流体連通状態に遡及的に置くように、遡及的に開放される。
【0135】
複数のロータを含む要素の場合、一方で端面と他方で両ロータとの間の間隙は、同じ半径方向に適応可能な本体を利用して密封又は開放することができることは、本発明の範囲にあり排除されない。
【0136】
図11は、本発明による要素1の代替的な第6の実施形態を示す。
【0137】
この代替的な第6の実施形態では、ハウジング2は、前述の全ての様々なタイプの別個の柔軟構成要素10を備える。
【0138】
また、この要素1は、例えば、機械的アクチュエータ又は油圧又は空気圧回路のような別個の柔軟構成要素10を位置調節するための機械的、油圧、及び/又は空気圧手段を備える。
【0139】
さらにまた、要素1は、別個の柔軟構成要素10を駆動するためのコントローラを備えることができる。
【0140】
間隙は、要素1が作動状態にない場合に制御すること、及び/又は要素1が作動状態となる前に所定の値で制御することができる。
【0141】
また、間隙は、この要素1が作動状態にある場合に制御することができる。
【0142】
間隙の制御は、
-要素1の性能測定、
-振動測定、及び/又は
-間隙の直接測定、
に基づいて行うことができる。
【0143】
勿論、ハウジング2がこれらの様々なタイプの別個の柔軟構成要素10の一部のみが備えることは、本発明の範囲になり排除されない。
【0144】
別個の柔軟構成要素が、前述の別個の柔軟構成要素10の複数の技術的特徴又は機能を兼ね備えることは、本発明の範囲内にあり排除されない。
【0145】
さらに、要素1がスクリュー圧縮機要素ではないことは、排除されない。他の可能性としては、例えば、スクリューブロワ要素、スクリュー真空ポンプ要素、スクリュー膨張機要素、歯式圧縮機要素、歯式ブロア要素、歯式真空ポンプ要素、歯式膨張機要素、ルーツ圧縮機要素、ルーツブロア要素、ルーツ真空ポンプ要素、ルーツ膨張機要素、ターボ圧縮機要素、ターボブロワ要素、ターボ真空ポンプ要素、又はターボ膨張機要素を挙げることができる。
【0146】
本発明は、実施例として説明されて図示された実施形態に限定されるものではないが、ガスを圧縮又は膨張させるための本発明による要素は、請求項で定義するような本発明の範囲を越えることなく複数の変形物、形態、及び寸法で実現することができる。
【符号の説明】
【0147】
1 要素
2 ハウジング
3a、3b ロータ
4a、4b ロータシャフト
6 入口ポート
7、8、9 軸受
11 半径方向ロータポジショナ
18 軸方向ロータポジショナ
21 半径方向に適応可能なリング体
26 ボア
27 軸方向に適応可能な本体
31 半径方向に適応可能な本体
32 回転面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11