(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】管路洗浄方法及び管路洗浄システム
(51)【国際特許分類】
B08B 9/057 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
B08B9/057
(21)【出願番号】P 2017143413
(22)【出願日】2017-07-25
【審査請求日】2020-07-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】595053777
【氏名又は名称】吉佳エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】大岡 伸吉
(72)【発明者】
【氏名】張 満良
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】窪田 治彦
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-154288(JP,A)
【文献】特開2015-217344(JP,A)
【文献】特開2012-223710(JP,A)
【文献】特開2014-100675(JP,A)
【文献】特開2015-13282(JP,A)
【文献】特開2015-80745(JP,A)
【文献】特開2016-79738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B9/02,9/055,9/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と氷粒子とを含むシャーベット状の流動体を管路の洗浄対象区間内に加圧注入して、管路内の堆積物を除去する管路洗浄方法において、
前記流動体に、該流動体を構成する氷粒子よりも大径の固体粒子を一定の比率で混入して、前記流動体と前記固体粒子との混合物を生成する工程と、
前記混合物を前記洗浄対象区間内に加圧注入する工程と、を含み、
前記流動体を構成する氷粒子は、平均粒径が0.01~0.5mmであって、前記流動体中の含有量が該流動体の全質量に対して70~95%であり、
前記固体粒子は、平均粒径が10~60mmの氷粒子であり、
前記混合物における前記固体粒子の混入率は、10~40体積%であることを特徴とする管路洗浄方法。
【請求項2】
水と氷粒子とを含むシャーベット状の流動体を管路の洗浄対象区間内に加圧注入して、管路内の堆積物を除去する管路洗浄方法において、
前記洗浄対象区間と連通された注入用配管に、前記流動体と該流動体を構成する氷粒子よりも大径の固体粒子とを注入して、該注入用配管内に、前記流動体に対して前記固体粒子の含有率が低い第1の層と、該第1の層よりも前記固体粒子の含有率が高い第2の層とを交互に生成する工程と、
前記第1の層と前記第2の層とを前記洗浄対象区間内に加圧注入する工程と、を含み、
前記流動体を構成する氷粒子は、平均粒径が0.01~0.5mmであって、前記流動体中の含有量が該流動体の全質量に対して70~95%であり、
前記固体粒子は、平均粒径が10~60mmの氷粒子であ
り、
前記第1の層において、前記流動体の割合は70体積%以上であり、前記第2の層において、前記固体粒子の割合は50体積%以上であることを特徴とする管路洗浄方法。
【請求項3】
前記固体粒子は、塩分を含んでいることを特徴とする請求項1
又は2に記載の管路洗浄方法。
【請求項4】
請求項1に記載の管路洗浄方法を実施するための管路洗浄システムにおいて、
前記洗浄対象区間と外部とを連通する注入用配管と、
該注入用配管よりも少なくとも上流側にある前記洗浄対象区間の開口端部を閉鎖する閉鎖手段と、
前記注入用配管を介して前記洗浄対象区間内に前記流動体を加圧注入する流動体注入手段と、
前記注入用配管を介して前記洗浄対象区間内に前記流動体を構成する氷粒子よりも大径の前記固体粒子を注入する固体粒子注入手段と、を備え、
前記流動体注入手段及び前記固体粒子注入手段の作動により、前記注入用配管内で前記流動体と前記固体粒子との混合物を生成して、該記混合物を前記洗浄対象区間内に加圧注入することを特徴とする管路洗浄システム。
【請求項5】
請求項
2に記載の管路洗浄方法を実施するための管路洗浄システムにおいて、
前記洗浄対象区間と外部とを連通する前記注入用配管と、
該注入用配管よりも少なくとも上流側にある前記洗浄対象区間の開口端部を閉鎖する閉鎖手段と、
前記注入用配管を介して前記洗浄対象区間内に前記流動体を加圧注入する流動体注入手段と、
前記注入用配管を介して前記洗浄対象区間内に前記流動体を構成する氷粒子よりも大径の前記固体粒子を注入する固体粒子注入手段と、を備え、
前記流動体注入手段及び前記固体粒子注入手段の作動により、前記注入用配管内で前記第1の層と前記第2の層とを交互に生成して、該第1の層と該第2の層とを前記洗浄対象区間内に加圧注入することを特徴とする管路洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路洗浄方法及び管路洗浄システムに関し、特に、シャーベット状の流動体を用いて管路内を洗浄する管路洗浄方法及び管路洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
流体等を流す管路、例えば、上水道管や下水道管、工場における原料や燃料等を送るパイプ、又は家庭内での排水パイプ等の管路は、それらの多様な用途に合わせて様々な形態で用いられている。さらに、管路を流れる物体は、液体に限られず、気体、固体等、様々な形態のものがある。
【0003】
これらの管路は、長期間の使用により管路内に堆積物等が付着する。例えば、下水道管では、管路内に排出された生活排水や産業排水に含まれる汚物等が管路の内壁に付着し、堆積物が形成される。また、上水道管は、一般に、堆積物が付着しにくい構成になっているが、水道水に含まれるミネラル分や濾過をくぐり抜けた微細な異物や有機物等により、管路の内壁にぬめり等が付着し、時間の経過とともに堆積していく。
【0004】
このような堆積物の付着による詰まり等の不具合を防止するために、管路は、定期的に洗浄することが必要である。
【0005】
管路の洗浄方法として、従来、管路内に洗浄用ピグを挿入して移動させるピグ方式(例えば、特許文献1)や、管路内に挿入されたホースの先端に取付けられたノズルから洗浄水を噴射するノズル方式(例えば、特許文献2)が知られている。しかしながら、これらの方式では、多様な形状の管路に適用することが困難であり、近年では、これらの方式に替わる方法として、シャーベット状の流動体を用いた洗浄方法が注目されている(特許文献3)。
【0006】
この洗浄方法では、液体中に小さな氷粒子を含むシャーベット状の流動体を管路内に加圧注入し、流動体を移動させることにより、管路内の堆積物を除去する。具体的には、流動体が管路内を移動する際に、流動体を構成する氷粒子が管路の内壁に付着した堆積物に接触、衝突等することによって、堆積物に物理的な外力を加えられ、堆積物が削り取られる。削り取られた堆積物は、流動体とともに管路の排出口から排出される。
【0007】
この洗浄方法では、流動体がシャーベット状であるため、例えば、管路の曲がり部分や狭窄部分、T型連結管等の複雑な形状の管路、さらには下水道管の伏越し部に対して、流動体を通過させて堆積物をスムーズに排出させることが可能であり、多様な形状の管路の洗浄に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-191045号公報
【文献】特開平9-10716号公報
【文献】特許第4653921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、流動体を構成する氷粒子の接触、衝突による物理的外力のみでは、管路内に付着した堆積物を十分に除去できないという問題があった。つまり、流動性を維持するために、流動体を構成する氷粒子は比較的小さい粒径に設定されており、この氷粒子による除去能力では、管路内壁に付着した堆積物に対して表面部分しか削り取ることができず、堆積物の根の部分の削り残りが生じてしまっていた。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、多様な形状の管路に適用することができ、管路内に付着した堆積物に対して高い除去効果を有する管路洗浄方法及び管路洗浄システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、水と氷粒子とを含むシャーベット状の流動体を管路の洗浄対象区間内に加圧注入して、管路内の堆積物を除去する管路洗浄方法において、
前記流動体に、該流動体を構成する氷粒子よりも大径の固体粒子を一定の比率で混入して、前記流動体と前記固体粒子との混合物を生成する工程と、
前記混合物を前記洗浄対象区間内に加圧注入する工程と、を含み、
前記流動体を構成する氷粒子は、平均粒径が0.01~0.5mmであって、前記流動体中の含有量が該流動体の全質量に対して70~95%であり、
前記固体粒子は、平均粒径が10~60mmの氷粒子であり、
前記第1の層において、前記流動体の割合は70体積%以上であり、前記第2の層において、前記固体粒子の割合は50体積%以上であることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、水と氷粒子とを含むシャーベット状の流動体を管路の洗浄対象区間内に加圧注入して、管路内の堆積物を除去する管路洗浄方法において、
前記洗浄対象区間と連通された注入用配管に、前記流動体と該流動体を構成する氷粒子よりも大径の固体粒子とを注入して、該注入用配管内に、前記流動体に対して前記固体粒子の含有率が低い第1の層と、該第1の層よりも前記固体粒子の含有率が高い第2の層とを交互に生成する工程と、
前記第1の層と前記第2の層とを前記洗浄対象区間内に加圧注入する工程と、を含み、
前記流動体を構成する氷粒子は、平均粒径が0.01~0.5mmであって、前記流動体中の含有量が該流動体の全質量に対して70~95%であり、
前記固体粒子は、平均粒径が10~60mmの氷粒子であり、
前記第1の層において、前記流動体の割合は70体積%以上であり、前記第2の層において、前記固体粒子の割合は50体積%以上であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、シャーベット状の流動体とともに、流動体を構成する氷粒子よりも大径の固体粒子を管路内に加圧注入するので、管路の内壁に付着した堆積物に対し、大径の固体粒子を接触、衝突等させることができ、氷粒子よりも大きな力で堆積物を削り取ることができる。これにより、管路の内壁に付着した堆積物に対しても高い除去効果を発揮することができる。
【0014】
また、請求項1の構成によれば、管路の径や長さ、管路の用途や堆積物の付着状況等に応じて流動体中の固体粒子の比率を調整して流動性や削り取り性を最適に調整することができる。
【0016】
また、請求項2の構成によれば、第1の層によって、管路内における洗浄用の流動体及び固体粒子の流動性を確保しながら、固体粒子の含有率が高い第2の層によって、管路内に付着した堆積物に対して高い除去効果を得ることができる。
【0018】
この構成によれば、固体粒子が平均粒径10mm~60mmの氷粒子によって形成されているため、堆積物の削り取り性を高めながら流動性を維持することができる。また、一般的に製造し易く扱い易い大きさであるのでコストを抑えることができる。
【0021】
また、上記目的を達成するための請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の管路洗浄方法を実施するための管路洗浄システムにおいて、
前記洗浄対象区間と外部とを連通する注入用配管と、
該注入用配管よりも少なくとも上流側にある前記洗浄対象区間の開口端部を閉鎖する閉鎖手段と、
前記注入用配管を介して前記洗浄対象区間内に前記流動体を加圧注入する流動体注入手段と、
前記注入用配管を介して前記洗浄対象区間内に前記流動体を構成する氷粒子よりも大径の前記固体粒子を注入する固体粒子注入手段と、を備え、
前記流動体注入手段及び前記固体粒子注入手段の作動により、前記注入用配管内で前記流動体と前記固体粒子との混合物を生成して、該記混合物を前記洗浄対象区間内に加圧注入することを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の管路洗浄方法を実施するための管路洗浄システムにおいて、
前記洗浄対象区間と外部とを連通する前記注入用配管と、
該注入用配管よりも少なくとも上流側にある前記洗浄対象区間の開口端部を閉鎖する閉鎖手段と、
前記注入用配管を介して前記洗浄対象区間内に前記流動体を加圧注入する流動体注入手段と、
前記注入用配管を介して前記洗浄対象区間内に前記流動体を構成する氷粒子よりも大径の前記固体粒子を注入する固体粒子注入手段と、を備え、
前記流動体注入手段及び前記固体粒子注入手段の作動により、前記注入用配管内で前記第1の層と前記第2の層とを交互に生成して、該第1の層と該第2の層とを前記洗浄対象区間内に加圧注入することを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、流動体注入手段及び前記固体粒子注入手段により、注入用配管を介して管路の洗浄対象区間内にシャーベット状の流動体とともに、流動体を構成する氷粒子よりも大径の固体粒子を管路内に加圧注入するので、管路の内壁に付着した堆積物に対し、大径の固体粒子を接触、衝突等させることができ、氷粒子よりも大きな力で堆積物を削り取ることができる。これにより、管路の内壁に付着した堆積物に対して高い除去効果を発揮することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の管路洗浄方法及び管路洗浄システムによれば、多様な形状の管路に適用することができ、管路内に付着した堆積物に対して高い除去効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の管路洗浄システムを模式的に示す断面図。
【
図2】
図1のIIで囲んだ領域の拡大図であって、管路に付着した堆積物が除去される様子を示す説明図。
【
図3】本発明の第2の実施の形態の管路洗浄システムを模式的に示す断面図。
【
図4】
図3のIVで囲んだ領域の拡大図であって、(a)は第1の層により堆積物が除去される様子を示す説明図、(b)は第2の層により堆積物が除去される様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る管路洗浄システム10を模式的に示す断面図である。管路洗浄システム10は、シャーベット状の流動体12と固体粒子14とを用いて管路内の洗浄を行うものであり、管路の一例である上水道本管20と、上水道本管20と外部とを連通する複数の枝管21,22と、上水道本管20の洗浄対象区間16の上流側及び下流側の開口端部をそれぞれ閉鎖する制水弁(閉鎖手段)24a,24bと、上水道本管20内に流動体12を加圧注入する流動体注入装置(流動体注入手段)30と、上水道本管20内に固体粒子14を注入する固体粒子注入装置(固体粒子注入手段)40と、流動体12及び固体粒子14を回収する回収タンク50とを備える。
【0026】
上水道本管20は、地面から所定の深さに埋設されており、管路の途中に複数の制水弁24a,24bが設置される。上水道本管20の内径は、例えば、約100~400mmである。後述するように、洗浄時には、上水道本管20の洗浄対象区間16の両端部に位置する制水弁24a,24bを閉じることで、洗浄対象区間16における上水29の流れを止めることができる。洗浄対象区間16の長さは、例えば約300~4000mとすることができる。
【0027】
枝管21,22は、上水道本管20から分岐して地上へ延びる管路であって、上水道本管20の延在方向に所定の間隔をあけて複数設けられる。枝管21,22は、上水道本管20の点検等に用いられ、通常、止水弁21a,22aを介して図示していない消火栓又は排泥管等が取付けられる。
【0028】
複数の枝管21,22のうち、上水道本管20の洗浄対象区間16の一端部側に位置する枝管21は、流動体12及び固体粒子14を注入する注入用配管として用いられ、他端部側に位置する枝管22は、流動体12及び固体粒子14を排出する排出用配管として用いられる。
図1に示す例では、枝管21,22が、地面から所定深さ掘った凹所25,26内に突出しており、枝管21,22に取付けられた止水弁21a,22aを介して、注入用配管である接続管27a,27b及び排出用配管である接続管28が連結されている。
【0029】
流動体注入装置30は、流動体12を収容するタンク31と、タンク31内の流動体12を注入用連通管内に圧送する図示しない圧送手段とを備える。本実施の形態において、流動体注入装置30は、タンク31と、タンク31に接続された、圧送手段であるスクリュポンプとを搭載した車両(以下、タンク車両という)によって構成されている。スクリュポンプ32は、スクリュの回転数を調節することにより、流動体12を注入用連通管に送り出す圧力を自由に変更することができる。
【0030】
流動体12は、水と氷粒子とを含むシャーベット状であって、管路内を移動可能な流動性を有する。流動体12を構成する氷粒子の粒径(長径)は5mm以下であり、好ましくは平均粒径が約0.01~0.5mmである。また、流動体12中の水の含有量は、流動体12の全質量に対して約5~30%、好ましくは約15~25%であり、残りは氷粒子である。流動体12は塩分を含んでおり、これにより、氷粒子の周囲に存在する水を凍らせずに流動性を維持することができる。流動体12中の塩分の割合は、例えば約3~7質量%である。この流動体12は、工場で生成された後、タンク車両のタンク31に収容され、洗浄現場まで搬送される。
【0031】
固体粒子注入装置40は、注入用配管を介して多数の固体粒子14を上水道本管20内に注入するものであり、例えば、固体粒子14を貯蔵する貯蔵容器42と、貯蔵容器42内の固体粒子を排出する図示しないスクリュとを備える。
【0032】
固体粒子14は、流動体12を構成する氷粒子よりも粒径が大きい氷粒子であり、好ましくは平均粒径が約10~60mm、より好ましくは約20~50mmの氷粒子である。ここで、平均粒径が約10~60mmとは、固体粒子14である氷粒子の全質量に対し、少なくとも70~80%の割合を占める氷粒子の粒径が約10~60mmの範囲内にあることをいう。この固体粒子14は、球形であってもよいが、表面に突部のある形状(例えば、多角形表面を有する氷塊や、表面に凹凸のある歪な形状の氷塊など)であることが好ましい。なお、固体粒子14が歪な形状である場合、粒径は固体粒子14の長径である。なお、固体粒子14となる氷粒子に流動体12と同様に塩分を適宜加えてもよい。
【0033】
流動体注入装置30及び固体粒子注入装置40は地上に配置される。流動体注入装置30から吐出される流動体12は、第1の接続管27a及びこれに連結された枝管21を介して上水道本管20内に加圧注入される。固体粒子注入装置40から吐出される固体粒子14は、第2の接続管27b及び枝管21を介して上水道本管20内に加圧注入される。第2の接続管27bには固体粒子14の注入量を調節可能なバルブ43が設けられている。第2の接続管27bの下流端は、第1の接続管27aに連結されており、この連結部において、固体粒子14は流動体12と混合される。
【0034】
流動体注入装置30及び固体粒子注入装置40のそれぞれからの吐出量を適宜調節することにより、固体粒子14は、流動体12に対して一定の比率となるように連続的に混入される。流動体12及び固体粒子14の混合物において、固体粒子14の混入率は、好ましくは約10~40体積%、より好ましくは約20~30体積%である。
【0035】
なお、図示していないが、第1及び第2の接続管27a,27bの連結部に、流動体12及び固体粒子14のそれぞれの吐出量を調節する制御装置を設けてもよい。さらに、第1及び第2の接続管27a,27bの連結部又は連結部の下流側に、流動体12及び固体粒子14の混合物を攪拌するための攪拌装置に設けてもよい。また、第1の接続管27aに、例えばスネークポンプ等の圧送手段を設けて、上水道本管20に対する流動体12及び固体粒子14の混合物の注入量や、上水道本管20の洗浄対象区間16内の移動速度を調整してもよい。
【0036】
回収タンク50は、洗浄後の流動体12及び固体粒子14を回収するためのタンクであり、排出用配管である接続管28の下流端に設置される。
【0037】
次に、上述した管路洗浄システム10による上水道本管20の洗浄方法について説明する。
【0038】
まず、枝管21に、止水弁21a並びに第1及び第2の接続管27a,27bを介して、流動体注入装置30及び固体粒子注入装置40を接続し、枝管22に、止水弁22a及び接続管28を介して、回収タンク50を接続する。また、制水弁24a,24bを閉じて洗浄対象区間16の上水29の流れを止める。
【0039】
次に、止水弁21a,22aを開放し、流動体注入装置30及び固体粒子注入装置40のそれぞれを作動させ、洗浄対象区間16内に流動体12と固体粒子14との混合物18を加圧注入する。固体粒子14は、第1及び第2の接続管27a,27bの連結部位において、一定の混入率となるように流動体12に混入され、枝管21を経て上水道本管20内に注入される。なお、洗浄対象区間16内に残留している上水29は、混合物18の注入により下流側へ押し出されて排出される。
【0040】
混合物18は、洗浄対象区間16の少なく一部の領域で管路断面を充満するように加圧注入される。混合物18の管軸方向の長さは、少なくとも約30~50m以上であることが好ましい。本実施の形態では混合物18が洗浄対象区間16の全域に亘って充填され、洗浄対象区間16内を例えば、約0.3~1.0m/sの速度で移動するように加圧注入している。移動速度は一定であってもよいし、所定の範囲内で変化させてもよい。なお、混合物18は、注入用配管及び排出用配管に設置されたバルブにより、洗浄対象区間16に対する注入量と排出量とがほぼ等しくなるように調節される。一般に、上水道本管20の内壁には、全周に亘って堆積物55が付着している。混合物18が移動することにより、付着した堆積物55が削り取られて管路内が洗浄される。
【0041】
図2に示すように、堆積物55が内壁に付着している場合、流動体12の摩擦力によって、堆積物55の表面部分55aが擦り又は削り取られる。除去されずに残った堆積物55の基部55b、すなわち管路に付着した堆積物55の根の部分は、大径の固体粒子14が接触、衝突等することによって擦り又は削り取られる。
【0042】
洗浄対象区間16を通過した混合物18及び取り除かれた堆積物等は、枝管22及び接続管28を経て回収タンク50内へ排出される。なお、図示していないが、排出用配管には水質監視装置が接続され、この水質監視装置により排出された混合物18等の濁度、温度、管路内圧力等が監視される。
【0043】
洗浄に必要な量の混合物18の注入が完了すると、止水弁21aを閉鎖する。次に、上流側の制水弁24aを開放して、上水29を洗浄対象区間16に流すことにより、上水道本管20内の混合物18を押し流して枝管22から外部へ排出する。このような上水29による洗浄対象区間16のフラッシングは、水質監視装置によって所定の水質が得られるまで行われる。所定の水質が確認された後、止水弁22aを閉鎖し、制水弁24bを開放する。
【0044】
上述した管路洗浄システム10では、流動体12とともに固体粒子14を管路内に加圧注入するので、この固体粒子14により、流動体12を構成する氷粒子よりも大きな力で堆積物55を擦り又は削り取ることができる。これにより、管路の内壁に付着した堆積物55に対しても高い除去効果を発揮することができる。また、洗浄する管路の径や長さ、洗浄する管路の用途に応じて流動体12中の固体粒子14の比率を調整して流動性や削り取り性を最適に調整することができる。
【0045】
また、流動体12によって洗浄対象区間16における固体粒子14の詰まりをなくして、スムーズに移動させることができる。これにより、例えば、洗浄対象区間16において、管路形状が変化する変形部位(例えば、管路の曲がり部分等)がある場合であっても、この変形部位に発生した堆積物55を効果的に除去することができる。さらに、固体粒子14を氷粒子とすることで、洗浄後に上水道本管20内に残留した固体粒子14を上水29により溶かして排出することができる。
【0046】
また、上水道本管20や後述する下水道管60では、洗浄対象区間16の長さや管径が比較的大きいことから、洗浄の際に多量の流動体12を要する。流動体12はシャーベット状態を維持するために品質の管理が必要となる分、製造や搬送にコストがかかるが、このような品質管理を要しない固体粒子14を混入させることで流動体12の使用量を低減することができ、洗浄コストを抑えることができる。
【0047】
(第2の実施の形態)
次に、
図3及び
図4を用いて本発明の第2の実施の形態の管路洗浄システム10を説明する。なお、
図3において、上述した第1の実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0048】
本実施の形態の管路洗浄システム10は、洗浄対象管路である下水道管60と、下水道管60の洗浄対象区間16の上流側及び下流側の開口端部を閉鎖する蓋体(閉鎖手段)64,65と、注入用配管67及び排出用配管68と、流動体注入装置30と、固体粒子注入装置40と、回収タンク50と、迂回用配管70とを備える。
【0049】
下水道管60は、地面から所定の深さに埋設されており、下水道管60の延在方向に沿って所定の区間ごとにマンホール61,62が設置される。下水道管60の内径は、例えば、約150~600mmである。本実施の形態では、隣り合うマンホール61,62の間の区間を下水道管60の洗浄対象区間16としている。洗浄対象区間16の長さは、例えば、約15~300mである。
【0050】
蓋体64,65は、洗浄対象区間16の開口端部を封鎖して、洗浄対象区間16から水等が漏れないようにするものであり、金属製、樹脂製等、何れの材質のものであってもよい。本実施の形態において蓋体64,65は、下水道管60とマンホール61,62との接続部にそれぞれ設置され、注入用配管67及び排出用配管68のそれぞれの端部が連結される開口部64a,65aを有する。
【0051】
注入用配管67及び排出用配管68は、下水道管60と外部とを連通する配管であり、本実施の形態では可撓性を有し、マンホール61,62の中にそれぞれ挿入される。注入用配管67の一端は、蓋体64の開口部64aに水密状態で連結され、他端側は、制御装置45を介して、流動体注入装置30に接続される第1の接続管27aと、固体粒子注入装置40に接続される第2の接続管27bとに分岐している。
【0052】
排出用配管68の一端は、蓋体65の開口部65aに水密状態で連結され、他端は回収タンク50に連結される。図示例では、洗浄対象区間16における流動体12及び固体粒子14の移動を円滑にするために、排水用配管68に吸引ポンプ52を設けている。なお、吸引ポンプ52及び回収タンク50としてバキューム車を用いてもよい。
【0053】
制御装置45は、流動体注入装置30から吐出される流動体12と、固体粒子注入装置40から吐出される固体粒子14とが洗浄対象区間16内に注入される量を調節するものであり、特に、固体粒子14の含有率が低い第1の層71と、第1の層71よりも固体粒子14の含有率が高い第2の層72とが洗浄対象区間16の管軸方向に沿って交互に形成されるように注入量を調節する。
【0054】
本実施の形態の制御装置45は、制御ユニットにより制御される切替バルブ(図示せず)を備えており、所定量の流動体12と所定量の固体粒子14とが、連続して交互に注入用配管67に注入されるように制御する。ここで連続してとは、注入される流動体12と固体粒子14との間に空気層が形成されないようにという意味である。このような制御により、洗浄対象区間16内には、ほぼ流動体12のみからなる第1の層71と、ほぼ固体粒子14のみからなる第2の層72とが交互に形成される。
【0055】
なお、第1及び第2の層71,72における流動体12と固体粒子14との割合は、これに限られず、第1の層71は、第2の層72よりも固体粒子14の含有量が低く、高い流動性を維持できるものであればよい。流動性を確保するために、第1の層71における流動体12の割合は、好ましくは約70体積%以上、より好ましくは約80体積%以上である。また、第2の層72における固体粒子14の割合は、約50体積%以上であることが好ましい。第1の層71及び/又は第2の層72が流動体12及び固体粒子14の混合物からなる場合、制御装置45に攪拌部を設けて、流動体12及び固体粒子14を攪拌混合させてもよい。
【0056】
迂回用配管70は、下水道管60を流れる下水を管路洗浄中に洗浄対象区間16を迂回させて下水道管60の下流側へ流す管路である。迂回用配管70は、一方のマンホール61から地上を経て他方のマンホール62へと延びており、迂回用配管70に取付けられたポンプ76によって下水道管60内の下水75を汲み上げ、洗浄対象区間16を迂回させて下流側へ流す。
【0057】
次に、上述した管路洗浄システム10による下水道管60の洗浄方法について説明する。
【0058】
下水道管60に対して迂回用配管70を設置し、下水道管60の洗浄対象区間16の両端部に蓋体64,65を設置するとともに、迂回用配管70のポンプ76を作動させて下水75を迂回用配管70側へ流す。洗浄対象区間16の上流側に位置する蓋体64の開口部64aに注入用配管67の一端部を連結し、この注入用配管67の他端部に制御装置45並びに第1及び第2接続管27a,27bを介して流動体注入装置30及び固体粒子注入装置40を接続する。洗浄対象区間16の下流側に位置する蓋体65の開口部65aに排出用配管68の一端部を連結して、排出用配管68の他端部に回収タンク50を接続する。洗浄対象区間16内には、注入用配管67に接続された図示していない第3の接続管を介して水が充満される。
【0059】
次に、流動体注入装置30、固体粒子注入装置40及び制御装置45を作動させて、注入用配管67を介して洗浄対象区間16に流動体12と固体粒子14とを加圧注入する。本実施の形態では、この加圧注入工程において、最初に、流動体12からなる第1の層71が、洗浄対象区間16の所定長を充満する量だけ加圧注入している。これにより洗浄対象区間16には、所定長さの第1の層71が形成される。
【0060】
最初に第1の層71が注入された後、制御装置45により連続して固体粒子14からなる第2の層72が洗浄対象区間16の所定長を充満する量だけ加圧注入される。その後、連続して再び第1の層71が洗浄対象区間16の所定長を充満する量だけ加圧注入される。これを繰り返すことにより、洗浄対象区間16内には、
図3に示すように固体粒子14の含有率が低い第1の層71と、第1の層71よりも固体粒子14の含有率の高い第2の層72とが交互に形成される。加圧注入工程の最後には、洗浄対象区間16内に第1の層71が形成される。
【0061】
洗浄対象区間16における第1の層71の所定長さL1は、第2の層72の所定長さL2と同じかそれ以上であることが好ましい。複数の第1及び第2の層71,72からなる混合層の管軸方向の長さは、少なくとも約30~50m以上であることが好ましい。本実施の形態では混合層が洗浄対象区間16の全域に亘って充填されており、洗浄対象区間16内の混合層の移動速度が、約0.3~1.0m/sに設定されている。移動速度は一定であってもよいし、所定の範囲内で変化させてもよい。例えば、作業開始直後の移動速度は遅く、作業終了間際は速くてもよい。
【0062】
一般に、下水道管60は、管路内の底部に堆積物55が付着しやすい。
図4(a)に示すように、堆積物55が下水道管60の底部に付着している場合、第1の層71が移動することにより、流動体12の摩擦力によって、堆積物55の表面部分55aが擦り又は削り取られる。除去されずに残った堆積物55の基部55bは、
図4(b)に示すように、第2の層72において固体粒子14が接触、衝突等することによって擦り又は削り取られる。
【0063】
洗浄対象区間16を通過した流動体12、固体粒子14及び取り除かれた堆積物等は、排出用配管68を経て回収タンク50内へ排出される。本実施の形態において第2の層72は固体粒子14のみの層であるが、両側が第1の層71に挟まれているため、管路内をスムーズに移動することができる。排出用配管68には図示していない水質監視装置が接続され、この水質監視装置により排出物の濁度、温度、管路内圧力等が監視される。
【0064】
洗浄に必要な量の流動体12及び固体粒子14の注入が完了した後、注入用配管67から洗浄対象区間16内に水を流してフラッシングを行う。このフラッシングは水質監視装置によって所定の水質が確認されるまで行われる。洗浄後に下水道管60内に残留した固体粒子14は、氷粒子が溶けることによって自然排出することができる。
【0065】
本実施の形態の管路洗浄システム10では、第1の層71によって管路内の流動性を確保しながら堆積物55を除去できるとともに、第2の層72により管路内に付着した堆積物55を除去することができる。
【0066】
また、流動体12及び固体粒子14の加圧注入工程の最初と最後に、洗浄対象区間16内に流動性の高い第1の層71を注入することで、固体粒子14の含有量の高い第2の層72による管路内の詰まり発生を防止したり、固体粒子14の管路内の残留を抑制したりすることができる。なお、かかる効果を向上させるために、加圧注入工程の最初及び/又は最後に、流動体12のみ(又は固体粒子14が混入した第1の層71のみ)を洗浄対象区間16に充填させて管路内洗浄を行ってもよい。
【0067】
なお、本実施の形態では、制御装置45を用いて第1及び第2の層71,72を形成しているが、制御装置45を設置せずに、流動体注入装置30及び固体粒子注入装置40のそれぞれからの吐出量を調節する(例えば、吐出量を周期的に変化させる等)ことにより、第1の層71と第2の層72とを形成してもよい。また、下水道管60における下水75の流れ方向と、洗浄対象区間16における流動体12及び固体粒子14の移動方向は同一方向であってもよい。また、洗浄対象区間16内に最初に第2の層72を加圧注入し、その後、第1の層71を加圧注入してもよい。
【0068】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、本発明の管路洗浄システムは、上水道管路や下水道管路に限らず、流動体及び固体粒子が挿入可能な多種の管路に適用することが可能である。
【0069】
また、固体粒子14は、氷粒子に限られず、シャーベット状の流動体12の氷粒子よりも粒径が大きいものであって、洗浄対象管路の内径よりも小さく流動性を大きく阻害しないものであればよく、例えば、樹脂製や金属製、木材等からなる粒子であってもよい。固体粒子14の比重は、流動体12の氷粒子の比重と同じかそれよりも僅かに小さいことが好ましく、例えば、上述した実施の形態の流動体12の氷粒子の比重、約0.9168に対して、好ましい固体粒子14の比重は約0.8~1.0であり、より好ましい比重は約0.85~0.95である。このように比重を設定することで、固体粒子14を流動体12中にほぼ均一に混合させたり、洗浄対象区間16において第1の層71と第2の層72との混ざり合いを抑制ししながら、これらを洗浄対象区間16の下流側へ移動させたりすることができる。
【0070】
固体粒子14の他の例として、籾殻及び/又は大鋸屑を用いることができる。籾殻や大鋸屑は、水分を含浸させた状態で流動体12の氷粒子の比重よりも僅かに小さい比重(例えば、比重0.8~0.85)とすることができ、洗浄材料として好適に用いることができる。籾殻及び大鋸屑の粒径(長径)の平均粒径は、約10~60mmであることが好ましく、約10~30mmであることがより好ましい。また、籾谷が及び/又は大鋸屑の混入率は、約10~40体積%であることが好ましく、約20~30体積%であることがより好ましい。籾殻や大鋸屑は、表面に鋭利な突部を有しているので、洗浄対象区間16の移動中に、この突部によって堆積物55を効果的に削り取ることができるとともに、環境汚染を引き起こすことがなく、さらに経済的にも優れている。なお、固体粒子14として、籾殻及び/又は大鋸屑とともに、上述した氷粒子を用いてもよい。管路の洗浄材料として流動体12とともに安価な籾殻及び/又は大鋸屑を用いることで、流動体12の使用量を減らして洗浄工事全体のコストを低減することができる。
【0071】
なお、上述した実施の形態では、洗浄対象区間16において流動体12及び固体粒子14が管路断面を充満するように加圧注入しているが、例えば、堆積物が底面に付着する下水道管等では、管路断面に隙間がある状態で流動体12及び固体粒子14を流してもよい。また、上述した実施の形態では、洗浄対象区間16の上流側及び下流側の両方の開口端部を閉鎖手段で閉鎖しているが、例えば、洗浄対象区間16が洗浄対象管路の下流領域である場合、上流側の開口端部のみを閉鎖手段で閉鎖し、洗浄対象管路の下流側の開口から流動体12及び固体粒子14を排出させてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 管路洗浄システム
20 上水道本管
21 枝管(注入用配管)
22 枝管(排出用配管)
24a,24b 制水弁(閉鎖手段)
30 流動体注入装置
40 固体粒子注入装置
50 回収タンク
60 下水道管
64,65 蓋体(閉鎖手段)
67 注入用配管
68 排出用配管