(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】スタッキング椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 3/04 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
A47C3/04
(21)【出願番号】P 2019172542
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】391014114
【氏名又は名称】株式会社SANKEI
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】阿萬 芳和
(72)【発明者】
【氏名】北岡 秀典
(72)【発明者】
【氏名】池谷 晃一
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-085814(JP,A)
【文献】米国特許第06863341(US,B1)
【文献】特開平07-184739(JP,A)
【文献】特開2019-063202(JP,A)
【文献】特開2015-066235(JP,A)
【文献】特開2002-136380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積み重ねできるよう前脚、後脚を形成した脚フレームに座部、背部を設けたスタッキング椅子において、
上記背部を構成する背もたれは、両端部にずれ止め部を有し、該ずれ止め部は、
上記背もたれの前面側に存する前面係止部と該前面係止部に対向して後面側に存する後面係止部を具備し、積層した際、該前面係止部と後面係止部を係合してずれ止め
を形成し、 かつ上記前面係止部は、上記背もたれの上下方向に沿って形成した係止段部であり、上記後面係止部は上記係止段部に対向して、上記背もたれの上下方向に沿って形成した係止縁であり、上記椅子を積層した際、上記係止段部を係止縁の側面に沿って係合するように構成したこと特徴とするスタッキング椅子。
【請求項2】
上記スタッキング椅子の前脚は、下フレームの前端よりも内方に湾曲するオフセット部を介して起立し、
上記下フレームには、積層した際、下方の椅子の下フレームに嵌合する長溝と上記オフセット部に嵌合する湾曲溝を具備する脚端具が設けられている
請求項1に記載のスタッキング椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ずれを生じない状態で積み重ねることができるスタッキング椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パイプ材料を屈曲して下フレームの前後に前脚、後脚を起立させた脚フレームを形成し、上方に積み重ねできるようにしたスタッキング椅子が広く用いられている。このようなスタッキング椅子は、下フレームの後端から起立する後脚よりも内方に前脚が位置するように下フレームの前端から内方に湾曲するオフセット部を介して前脚を起立してある。該前脚の上端には、後方に屈曲する上フレームを形成し、該上フレームに座板を設けて座部を形成してある。後脚の上部には背フレームが連続して設けられ、該背フレームに背もたれを設けて背部を形成してある。床面に沿って延びる下フレームには、脚端具(スペーサ)を設けてあり、脚端具が下方の椅子の下フレームに載置した状態で上方に椅子を積み重ねできる構成になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記脚端具は、特許文献1に記載のように、椅子を積層したとき、下方の椅子の下フレームに接して下方の椅子の座板面に上方の椅子の座板の裏面が当接しないように上方の椅子を浮かせて保持する。この際、脚端具の下面を下フレームに嵌合させて位置決めする構成も知られているが、不安定であり、特に、積層した椅子の上方部分は、ずれ止めされていないので、全体が不安定であり、くずれやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決課題は、積み重ねできるようにしたスタッキング椅子において、上方に積み重ねる際、椅子の上方部分でもずれ止めして全体を安定状態に積層できるようにしたスタッキング椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、積み重ねできるよう前脚、後脚を形成した脚フレームに、座部、背部を設けたスタッキング椅子において、上記背部を構成する背もたれは、両端部にずれ止め部を有し、該ずれ止め部は、背もたれの前面側に存する前面係止部と該前面係止部に対向して後面側に存する後面係止部を具備し、積層した際、該前面係止部と後面係止部を係合してずれ止めすること特徴とするスタッキング椅子が提供され、上記課題が解決される。
【0007】
上記前面係止部は、背もたれの上下方向に沿って形成した係止段部であり、上記後面係止部は、背もたれの上下方向に沿って形成した係止縁であり、椅子を積層した際、背もたれの上記係止段部が係止縁の側面に沿って係合するようにしたこと特徴とするスタッキング椅子が提供され、上記課題が解決される。
【0008】
また、本発明によれば、上記スタッキング椅子の前脚は、下フレームの前端よりも内方に湾曲するオフセット部を介して起立され、下フレームには、積層した際、下方の椅子の下フレームに嵌合する長溝とオフセット部に嵌合する湾曲溝を具備する脚端具が設けられている上記スタッキング椅子が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のように構成され、積み重ねできるよう前脚、後脚を形成した脚フレームに座部、背部を設けたスタッキング椅子において、上記背部を構成する背もたれの両端部にずれ止め部を設け、該ずれ止め部を、背もたれの前面側に存する前面係止部と、該前面係止部に対向して後面側に存する後面係止部で構成し、積層した際、該前面係止部と後面係止部を係合するようにしたから、積み重ねた椅子は、背もたれ部分での左右動が規制され、ずれが防止される。そして、上記前面係止部を、背もたれの前面側に沿って上下方向に延びる係止段部とし、後面係止部を、背もたれの上下方向に延びる係止縁で構成すると、上方に椅子を重ねるときの動作で係止段部が係止縁の側面に滑り込んで嵌合、係止され、積層作業が簡単である。上記前脚は、椅子の下フレームの前端に内方に湾曲するオフセット部を介して起立され、このオフセット部に対応して、下方の椅子の下フレームに嵌合する長溝と上記オフセット部に嵌合する湾曲溝を形成した脚端具を設けて下フレームに固定すると、椅子を積み重ねたとき、上方の椅子は下方に椅子よりも、背もたれ分だけ前方に移動して重ねられるから、上方の椅子に設けた脚端具は、下方の椅子の下フレームに長溝が嵌合するとともにオフセット部分に湾曲溝が嵌合する。そのため、脚端具の長溝により、上下の椅子の横移動を阻止できるとともに上記湾曲溝がオフセット部分に当って上方の椅子の前進が阻止され、椅子の横方向及び前方へのずれを防止できる。したがって、積層した椅子の背もたれによる上方部分でのずれ止めとあわせて、下方部分でもずれ止めできるので、全体としてのずれを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例を示す椅子の斜視図及び一部の拡大断面図。
【
図5】ずれ止め部を示し、(A)は背もたれの前面から見た部分斜視図、(B)は背もたれの裏面からみた部分斜視図。
【
図7】脚端具が前脚のオフセット部分に嵌合している状態の説明図。
【
図10】(A)、(B)は、ずれ止め部の他の実施例一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~
図4を参照し、本発明のスタッキング椅子1は、断面円形のパイプ材料を屈曲して脚フレーム2を形成し、床面に沿って延びる下フレーム3の後端を上方に起立して後脚4とその上方に延びる背フレーム5を形成し、該下フレーム3の前端に内方に湾曲するオフセット部6を設け、その先端を上方に起立して前脚7を形成し、該前脚7の上部に設けた上端屈曲部8を介して後方に延出する上フレーム9を形成している。左右の前脚7間及び後脚4間は、前連結フレーム10と後連結フレーム11で連結され、上記上フレーム9の後端は、上記後連結フレームに11固定されている。上記上フレーム9は、前脚7の上方部分から上端屈曲部8を経て後端までほぼ一様な断面略楕円形に形成されている。該上フレーム9と、上記前連結フレーム10の上方に固定した座受けパイプ11と、上フレーム9の後端に固定した座受けプレート13により座フレーム14が構成されている。該座フレーム14には、座板15が載置され、座受けパイプ12、座受けプレート13及び上フレーム9の内方に突設した取付片16に設けた取付孔17にねじ(図示略)を挿入して座板15を固定することにより、座部18を構成している。
【0012】
上記背フレーム5には、背もたれ19を取り付けて背部20を構成してあり、下フレーム3には脚端具21が取り付けられている。なお、上記座板15及び背もたれ19等の支持体は、図においては、説明を容易にするため、板状体で図示してあるが、例えば、木材料製、金属材料製、プラスチック材料製等の板状の支持体や、基板にクッション材を載置して外装材で被覆した支持体や、中心孔を有する枠体にメッシュ材料や布材料を張設し所望により外装材で被覆した弾性的な支持体や、プラスチック板に多数の孔を設けた孔明き板状体で構成した支持体、その他適宜の構造の支持体で構成することができる(図示略)。
【0013】
図2に示すように、実施例では、後脚4に続いて上方に延びる背フレーム5には、後脚4の上部に近い中間部に後方屈曲部22が設けられている。該後方屈曲部22から上方に延びる背フレーム5は、左右の上端部が断面略楕円形等の背連結フレーム23で連結されているが、背もたれ自体に十分な強度がある場合には、上記背連結フレーム23を省略することもできる。そして、背もたれ19は、図に示す実施例では、左右の背フレーム5と背連結フレーム23を、前面側から覆うように取り付けられている。
【0014】
図3、
図4に示すように、上記背もたれ19の上端には、上記背連結フレーム23に掛け止めできるよう背もたれ前面24から後方に屈曲する外周縁25及び該外周縁25から下方に屈曲する後端縁26により断面略U字状に形成された嵌着部27が設けられている。なお、上述したように、背連結フレーム23を具備しない椅子の場合は、嵌着部27を設けずに、背もたれ前面24から後方に屈曲する外周縁25により断面略L字状に後方に突出するフランジ(図示略)を形成することもできる。上記嵌着部27若しくはフランジは、背もたれ19の左右方向に延びており、その両端の背もたれの外周縁25の内方には、下方に延びる接続突起28が形成されている。該接続突起28は、背もたれ19を装着するとき、背フレーム5の上端開口部に嵌合して背もたれをしっかりと背フレームに固定する。また、背もたれ19の後面両側には、上下方向に延びる上記外周縁25との間に、背フレーム5を受け入れできる差込空間29を形成するよう外周縁25の内側に沿って上下方向に延びる保持リブ30が突設されている。
図1、
図2に示すように、上記背もたれ19には、上記背フレーム5の途中に形成した上記後方屈曲部22に対応して、上記差込空間29に沿って背フレーム5を嵌め込みできるよう背もたれ屈曲部31を形成してあり、外周縁25に設けた取付孔32からねじ33を背フレーム5に差し込んで背もたれ19を固定している。
【0015】
上記背もたれ19の両側に、図に示す実施例では、上記背もたれ屈曲部31と背もたれ19の下端間には、ずれ止め部34が設けられている。該ずれ止め部34は、背もたれ19の前面側に存する前面係止部35と、該前面側係止部35に対応して後面側に設けた後面係止部36を具備し、積層した際、該前面係止部35と後面係止部36を係合してずれ止めする。該前面係止部35と後面係止部36は種々の構造に形成することができる。図に示す実施例では、
図1、
図2及び
図5に示すように、上記背もたれ19の上記外周縁25の幅を、背もたれ屈曲部31から下方部分にわたって幅広に形成し、該幅広部37の前面側を、段部を介して背もたれ前面24に連絡することにより、該段部を係止段部38とした前面係止部35を形成している。そして、上記段部に対応して背もたれ19の後面側に延びる幅広部37の内面に、上記係止段部38を受け入れる寸法で上下方向及び後方に開口する挿入空間39を形成することにより、幅広部37を構成する外周縁の後縁側を係止縁40とした後面係止部36を形成している。なお、
図5(B)に示すように、挿入空間39に隣接して、背フレーム5を嵌め込むための上記差込空間29を形成するよう内段部41を設けてあり、該内段部41には上記取付孔32の内方端があらわれている。
【0016】
図1、
図2を参照し、上述したように、下フレーム3には、脚端具21が設けられている。
図6に示すように、該脚端具21は、前方脚端具21aと、後方脚端具21bを有し、それぞれの底面には、下フレーム3に嵌合する長溝42が形成され、さらに、前方脚端具21aには、上記長溝42に続いてオフセット部6に嵌合するよう内方に湾曲する湾曲溝43が設けられている。この湾曲溝43は、脚フレーム2の左右に存するオフセット部6にそれぞれ嵌合するよう、左右の前方脚端具21aでその湾曲方向が相違している。そして、椅子を積み重ねるとき、椅子の背もたれ分だけ上方の椅子は下方の椅子より前方に位置するから、
図7に示すように、上方の椅子の前方脚端具21aは、下方の椅子のオフセット部6に嵌合する。したがって、脚端具21の長溝42が下フレーム3に嵌合するにより椅子の左右動を規制するとともに湾曲溝43がオフセット部6に嵌合することにより椅子の前後動を規制することができる。
【0017】
上記構成により、
図8に示すように、下方の椅子1の上に上方の椅子1を重ねると、
図9に示すように、下方の椅子の係止段部38は、上方の椅子の係止縁40の内側面に沿って係合し、この係合状態は背もたれ5の両側で対抗して存在するから、積み重ねた椅子は左右動が制限され、ずれが防止される。
【0018】
上述したように、ずれ止め部の前面係止部35と後面係止部36は、種々の構造に構成することができ、
図10には、他の実施例の一例が示されている。例えば、同図(A)に示すように、背もたれ前面24の両端側に上下方向に延びるリブ44を設けて前面係止部35とし、背もたれ19の後面の両端側に上記リブ44に対応して該リブ44を受け入れる段部状の挿入空間45を外方に形成するよう係止縁46を設けて後面係止部36としてもよい。このようにすれば、椅子1を積み重ねると、下方の椅子のリブ44は、挿入空間45に入り込み、係止縁46の外側に沿ってリブ44が係合して、ずれ止めできる。
【0019】
また、
図10(B)に示すように、背もたれ19の両端側に、前面側に開口する溝状の嵌合部47を設けて前面係止部35とし、該前面係止部35に対向して外周縁を後方に突縁状に延出して挿入片48を形成して後面係止部36としてある。この構成によれば、椅子を積み重ねたとき、溝状の嵌合部47に挿入片48が嵌入すれば、嵌合部47の側壁が係止縁となってずれ止することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 スタッキング椅子
2 脚フレーム
3 下フレーム
4 後脚
5 背フレーム
6 オフセット部
7 前脚
9 上フレーム
19 背もたれ
21 脚端具
24 背もたれ前面
25 外周縁
26 後端縁
27 嵌着部
28 接続突起
29 差込空間
30 保持リブ
31 背もたれ屈曲部
34 ずれ止め部
35 前面係止部
36 後面係止部
38 係止段部
39 挿入空間
40 係止縁