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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】包装用の新規な材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20230404BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20230404BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230404BHJP
   B29C 70/58 20060101ALI20230404BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20230404BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
C08L67/04 ZBP
C08K7/00
C08K3/013
B29C70/58
C08J3/20 CFD
C08L101/16
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2019568819
(86)(22)【出願日】2018-03-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 FI2018050155
(87)【国際公開番号】W WO2018158506
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】20175194
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】519318096
【氏名又は名称】スラパック オイ
【氏名又は名称原語表記】SULAPAC OY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】ローラ ティルッコネン-ラジャサロ
(72)【発明者】
【氏名】スヴィ ハイミ
【審査官】長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-260108(JP,A)
【文献】特開2006-082353(JP,A)
【文献】特表2012-520099(JP,A)
【文献】特表2009-524553(JP,A)
【文献】特開2017-002291(JP,A)
【文献】特表2013-512361(JP,A)
【文献】M.Hietala et al.,Processing of wood chip-plastic composites: effect on wood particle size, microstructure and mechanical properties,Plastics, Rubber and Composites,2011年,Vol40 No2,49-56
【文献】M. Hietala et al.,The effect of pre-softened wood chips on wood fibre aspect ratio and mechanical properties of wood-polymer composites,Composites: Part A,2011年,42,2110-2116
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08J 3/00- 3/28
B29C41/00- 41/36
B29C41/46- 41/52
B29C41/70- 70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料組成物であって、
150℃より高い融点を有し、ポリラクチドのポリマーまたはコポリマーから選択される生分解性熱可塑性ポリマーの連続マトリックスと、
前記マトリックス内に分布した、1.0mmより大きいふるい分けサイズを有する非フィブリル化木材粒子であって、前記非フィブリル化木材粒子の少なくとも70重量%が1.0~2mmの範囲のふるい分けサイズを有し、または前記非フィブリル化木材粒子の少なくとも70重量%が、1.4~2.5mmの範囲のふるい分けサイズを有し、当該非フィブリル化木材粒子の少なくとも一部が平らな形の木材チップの形態である、非フィブリル化木材粒子と、
スレート様無機顔料と、
を含み、
前記生分解性熱可塑性ポリマーと前記非フィブリル化木材粒子の重量比が、35:65~80:20であり、
前記ポリラクチド中の繰り返し単位の少なくとも約90モルパーセントがL-ラクチドまたはD-ラクチドのいずれかである、複合材料組成物。
【請求項2】
前記複合材料組成物が、前記生分解性熱可塑性ポリマーと前記非フィブリル化木材粒子の総重量から計算して、0.1~20重量%の前記スレート様無機顔料を含む、請求項1に記載の複合材料組成物。
【請求項3】
前記非フィブリル化木材粒子が、1.0mmより大きく5mm未満のふるい分けサイズを有する粒子を含む、請求項1または2に記載の複合材料組成物。
【請求項4】
前記非フィブリル化木材粒子の少なくとも50重量%が、平らな形の木材チップの形態であり、特に、前記非フィブリル化木材粒子は、木材原料のチッピングによって得られる粒子から本質的になる、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合材料組成物。
【請求項5】
前記非フィブリル化木材粒子が、前記マトリックス全体に均一に分布している、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合材料組成物。
【請求項6】
1.5mmより大きいふるい分けサイズを有する前記非フィブリル化木材粒子が、前記複合材料組成物中の前記非フィブリル化木材粒子の総量の少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%を形成している、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合材料組成物。
【請求項7】
前記複合材料組成物が、前記生分解性熱可塑性ポリマーと前記非フィブリル化木材粒子の総重量から計算して、40~60重量%の前記非フィブリル化木材粒子を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合材料組成物。
【請求項8】
前記生分解性熱可塑性ポリマーが、約155℃より高い融点を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合材料組成物。
【請求項9】
前記複合材料組成物が、タルクおよびクレイの群から選択されるスレート様無機顔料を、任意にワックスおよびステアリン酸塩またはそれらの混合物ならびにシリカ顔料とともに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合材料組成物。
【請求項10】
前記スレート様無機顔料と適合性のあるポリマー材料をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合材料組成物。
【請求項11】
前記複合材料組成物が、気体、液体および油のバリアの組み合わせ特性を示す、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合材料組成物。
【請求項12】
前記複合材料組成物が、当該複合材料組成物に色の特性を付与することができる細かく分割された材料の粒子をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合材料組成物。
【請求項13】
前記複合材料組成物に色の特性を付与することができる前記材料、すなわち染色材料が、200℃以下の温度で安定である色を有する天然材料から選択される、請求項12に記載の複合材料組成物。
【請求項15】
複合材料の製造方法であって、
150℃より高い融点を有し、ポリラクチドのポリマーまたはコポリマーから選択される生分解性熱可塑性ポリマーを準備すること、
1.0mmより大きい、ふるい分けサイズを有する非フィブリル化木材粒子を準備することであって、その少なくとも70重量%が1~2mmの範囲のふるい分けサイズを有する前記非フィブリル化木材粒子を準備することまたはその少なくとも70重量%が、1.4~2.5mmの範囲のふるい分けサイズを有する前記非フィブリル化木材粒子を準備することを含み、当該非フィブリル化木材粒子の少なくとも一部、好ましくは50重量%以上が、平らな形の木材チップの形態である、非フィブリル化木材粒子を準備すること、
スレート様無機顔料を準備すること、
前記生分解性熱可塑性ポリマーを前記非フィブリル化木材粒子と前記スレート様無機顔料と、溶融混合して、複合材料溶融物を形成することであって、前記生分解性熱可塑性ポリマーと前記非フィブリル化木材粒子との混合比が、重量で30:70~90:10、例えば、35:65~80:20である、複合材料溶融物を形成すること;
および
前記複合材料溶融物を冷却すること、を含み、
前記ポリラクチド中の繰り返し単位の少なくとも約90モルパーセントがL-ラクチドまたはD-ラクチドのいずれかである、複合材料の製造方法。
【請求項16】
前記複合材料溶融物が、金型内で所定の形状を有する物品に成型される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記生分解性熱可塑性ポリマーが、細かく分割された粒子またはペレットの形態で、前記非フィブリル化木材粒子と一緒に乾燥混合物の形態で、溶融加工ポリマー加工装置の供給ゾーンに供給される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記スレート様無機顔料の量が、前記生分解性熱可塑性ポリマーおよび前記非フィブリル化木材粒子の総重量から計算して、0.1~20重量%である、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記生分解性熱可塑性ポリマー、前記非フィブリル化木材粒子および任意のスレート様無機顔料が、射出成形によって加工される、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記生分解性熱可塑性ポリマー、前記非フィブリル化木材粒子および任意のスレート様無機顔料が、射出ブロー成形または射出ストレッチブロー成形によって加工される、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記生分解性熱可塑性ポリマー、前記非フィブリル化木材粒子および前記スレート様無機顔料が、205℃未満の温度で、好ましくは、前記生分解性熱可塑性ポリマーの融点から200℃までの範囲の温度で加工される、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記スレート様無機顔料が、前記非フィブリル化木材粒子の熱分解なしで前記非フィブリル化木材粒子と前記生分解性熱可塑性ポリマーの混合と加工を可能にするのに十分な量で、前記非フィブリル化木材粒子および前記生分解性熱可塑性ポリマーと混合される、請求項15~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
染色材料を前記複合材料溶融物と混合することを含む、請求項15~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記生分解性熱可塑性ポリマーの融点が155℃より高い、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
チップ、特に、例えばポプラまたはアスペンなどのポプラ種の木材などの広葉樹から作られたチップの形態の前記非フィブリル化木材粒子を準備することを含む、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
コーティングが、前記複合材料溶融物の表面に適用され、特にコーティングが、冷却された前記複合材料溶融物の表面に適用される、請求項15~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
コーティングが、前記複合材料から成形された物品の表面に適用される、請求項15~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
バリア特性を付与するコーティングが、前記複合材料溶融物の表面または前記複合材料溶融物から成形された物品の表面に適用される、請求項15~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記コーティングが、ゾルゲル組成物であり、当該ゾルゲル組成物は、好ましくは前記複合材料溶融物の表面または前記複合材料溶融物から成形された物品の表面にスプレーコーティングによって適用される、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
射出成形によって製造された剛性壁容器であって、前記容器は、請求項1~14のいずれか一項に記載の複合材料組成物からなり、好ましくは1~10mmの壁の厚さを有する、剛性壁容器。
【請求項31】
化粧品もしくは食料品用の剛性壁容器もしくは半剛性壁容器などの容器、化粧品もしくは食料品用の瓶、または化粧品もしくは食料品用のしぼりチューブを製造するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の複合材料組成物の使用。
【請求項32】
前記容器の少なくとも1つの表面に、バリアコーティング、例えばゾルゲルコーティングが設けられている、請求項31に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融加工に適した複合材料に関する。特に、本発明は、熱可塑性ポリマーの連続マトリックスと、マトリックス中に分布した木材粒子とを含む組成物に関する。本発明はまた、複合材料の製造方法および溶融加工により包装などの物品を製造するためのそのような材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーおよび様々な木材系材料によって形成された複合材料は、当技術分野で公知である。
【0003】
米国特許第8,722,773号は、熱可塑性ポリマーによって形成されたポリマーマトリックス中に均一に分散した、65~90重量%の化学木材パルプシートからの化学木材パルプ繊維を含む複合ポリマー材料を教示している。そのポリマーと化学木材パルプは、溶融加工によって結合された。米国特許第8,722,773号は、クラフト漂白化学木材パルプを使用して、そのような材料に含まれるリグニンおよび他の化合物によるケナフのような天然繊維または全木材繊維に関連する色および臭気を回避することを開示している。
【0004】
しかしながら、複合材の製造のための出発材料として、天然繊維および天然製品はより安価であるため、米国特許第8,722,773号に開示されている種類の精製され漂白された繊維よりも魅力的である。
【0005】
木材粒子を組み込んだ複合材料は、特開2002‐113822号に開示されている。
この刊行物は、フィラーが粗いほど、表面の均一性が低くなり、製品の外観の魅力が低くなることに注目している。そのような問題に対処するために、この刊行物は、1~30mmの厚さを有し、1~10mmの直径を有する50重量%未満の木材粒子を含むベース層と、ベース層を覆う表面層であって、50~300μmの直径を有する木材粒子を含む表面層の層状構造を提案している。表面層の厚さは、ベース層を隠蔽するのに十分であるように選択される。その材料の具体的な用途は示唆されていない。
【0006】
特開2002‐113822号の2層構造は、少なくとも2つの異なる木材粒子源、2つの異なるポリマーブレンドおよび共押出に基づく製造プロセスの使用を必要とする。
【0007】
上記刊行物は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(エーテルイミド)およびアクリロニトリルブタジエンスチレン型コポリマーなどの化石ベースの原材料の加工に基づくポリマー材料を開示している。
【0008】
堆肥化可能なポリマー、ポリラクチドおよび微粉砕セルロース材料の組成物は、国際公開第2015/048589号に開示されており、これは、ポリ(乳酸)および30%以下の、微粉砕紙または微粉砕紙パルプなどの微粉砕セルロースを含むアニールされたポリ(乳酸)複合体を教示している。その微粉砕の粒子サイズは、10~250μm、特に20~50μmであり、狭いサイズ分布を有する。この刊行物によれば、この材料は、堆肥化可能であり、高い熱たわみ温度を示す。しかし、その微粉砕材料では機械的な利点は得られないようであり、この文献では、加工および成形の困難を回避するために、材料の最大負荷は30%に制限されていた。
【0009】
さらなる複合材料は、中国特許出願公開第101712804号明細書、米国特許出願公開第2013253112号明細書、米国特許出願公開第2016076014号明細書、米国特許出願公開第2002130439号明細書および欧州特許出願公開第0319589号明細書に開示されている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、技術水準に関連する問題の少なくとも一部を排除することである。特に、本発明の目的は、ポリマーおよびかなりの量の木材成分を含む新規な複合材料を提供することである。
【0011】
一態様では、本発明は、ポリマー加工技術によって製造される容器および他の物品を提供するために容易に溶融加工可能な複合材料の新規組成物を提供する。
【0012】
別の態様では、本発明は、上記の種類の複合材料を製造する方法を提供する。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、容器として適したポリマー物品およびそのような物品の製造方法を提供する。
【0014】
本発明は、熱可塑性ポリマーと非フィブリル化木材粒子とを組み合わせて、熱可塑性ポリマーが連続マトリックスを形成し、非フィブリル化木材粒子がそのマトリックス内に、好ましくは均一に、分布するようにすることにより、溶融加工性を有する複合材料に到達するという発見に基づいている。本目的に適した非フィブリル化木材粒子は、1.0mmより大きいふるい分けサイズを有し、木材粒子の少なくとも一部は、木材チップの形で存在する。
【0015】
さらに、木材粒子と組み合わせて、110℃より高い融点を有する熱可塑性ポリマーが選択される。
【0016】
熱可塑性ポリマーと木材粒子の重量比は、通常、20:80~90:10、特に35:65~80:20の範囲である。任意に、溶融ポリマーのメルトフロー特性は、タルク、シリカなどの流動向上剤を組み込むことにより向上し得る。
【0017】
出発材料は、それらを所定の比率で溶融混合することにより組み合わされて、溶融物を形成し、これは任意に、所定の形状に成形された後に冷却され、または例えば、金型内にに物品を提供する。
【0018】
冷却された溶融物または成形物品は、その少なくとも1つの表面上にバリアコーティングを適用することによりさらに処理することができる。
【0019】
本材料は、例えば、化粧品、食料品および飲料用の瓶、しぼりチューブおよびボトルなどの容器に使用することができる。
【0020】
より具体的には、本発明は、独立請求項の特徴部分に記載されていることを特徴とする。
【0021】
本発明によりかなりの利点が得られる。すなわち、本ポリマー組成物は、溶融加工可能である。組成物中の木材チップ、すなわち平らな形状の木材粒子は、ポリマーマトリックス全体によく分散している。ポリマーの融点を超える温度でポリマーと平らな木材粒子によって形成される混合物の加工中、木材粒子は、装置、例えば、ノズル部品をスムーズに通過し、ポリマー材料のメルトフローレートを損なわないことが見出された。一方、本組成物は、例えば、ニートポリマーよりも射出成形によって、より容易に加工されるようである。対照的に、立方体形状の木材粒子は、同じ比率でポリマーマトリックスと混合すると、メルトフローレートが低下し、ノズルの目詰まりを引き起こすため、金型への溶融物の不均一な供給を生ずる。
【0022】
本発明により、1mmより大きく3mmまたはそれを超えるまでの一般的な粒子サイズを有する木材粒子の使用が可能である。一実施形態では、一般的な粒子サイズは、1.40~2.49mmの範囲にある。
【0023】
本文脈において、用語「一般的な」は、示された範囲内に入る最大寸法を有する粒子によって形成されている粒子状物質の重量の80%以上を表す。
【0024】
ポリマー組成物における大きな木材粒子の使用は、材料のコストを削減する。さらに、大きな木材粒子の使用によって、木材粒子の組み込みによる吸湿性の増大および耐候性の損失により従来生じていた問題を低減するまたは部分的に排除することさえできる。
【0025】
好ましい実施形態では、ポリマーマトリックスに堆肥化可能なポリマーを使用することにより、本発明は、真に堆肥化可能なポリマー-木材-複合材物品を提供する。
【0026】
水性組成物と接触する表面は、成型物品のバリア特性をさらに向上するために、ゾルゲルコーティングおよび同様のバリアコーティングで処理し得る。これにより、水性組成物および油性成分と脂肪成分とを含む組成物の保存に、本複合材から作られた容器を使用することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【0027】
本技術の一実施形態では、組成物は、110℃より高い融点を有する熱可塑性ポリマーのマトリックスと、その熱可塑性ポリマーのマトリックスに分布している、1.0mmより大きいふるい分けサイズの非フィブリル化木材粒子とを含む。木材粒子の少なくとも一部は、平らな形の木材チップの形で存在する。
【0028】
熱可塑性ポリマーと木材粒子の重量比は、通常35:65~80:20である。一実施形態において、熱可塑性ポリマーと木材粒子との重量比は、30:70~90:10である。好ましい実施形態では、複合材は、熱可塑性ポリマーと木材粒子の総重量から計算して、30~70重量%、特に40~60重量%の木材粒子を含む。
【0029】
一実施形態において、使用される木材粒子は、1.0mmより大きく5mm未満のふるい分けサイズを有する粒子を含む、またはからなる、または本質的にからなる。
【0030】
したがって、一実施形態において、木材粒子の少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、典型的には80~95重量%は、1~2mmの範囲のふるい分けサイズを有する。
【0031】
第2の実施形態において、木材粒子の少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、典型的には80~95重量%は、1.4~2.5mmの範囲のふるい分けサイズを有する。
【0032】
「ふるい分けサイズ」という用語は、熱可塑性ポリマーと混合して溶融加工ポリマー-木材組成物を形成する前の木材粒子のサイズを指す。溶融加工中に、例えば、木材粒子の粉砕によって、少なくともある程度の減少が通常起こる。
【0033】
組成物の木材粒子は、非立方体形状を有する粒子によって少なくとも部分的に形成される。そのような粒子は、「板状」または「スレート様」または「平らな」または「平らな形」であると特徴付けることができる。本発明の一実施形態では、組成物の木材粒子は、木材原料のチッピングによって得られる粒子である。本文脈において、木材粒子は、それらが概して、その粒子の平面表面の最大寸法の、典型的には40%未満、特に25%未満、例えば、10%未満である平面の断面厚を有する平面構造を有する場合、平らな形状の木材チップと考えられる。
【0034】
一実施形態において、木材粒子の少なくとも50重量%は、溶融加工前に板状である。
【0035】
当然、木材のチッピングによって、細かく分割された粒子状物質が得られ、これは、さまざまな他の形状を有する粒子とともに木材チップまたは木材の削りくずを含む。したがって、本組成物は、おがくずおよび木粉も含むことができる。
【0036】
しかしながら、好ましい実施形態では、1.0mmより大きい、例えば、1.5mmより大きいふるい分けサイズを有する木材チップは、複合材中の木材粒子の総重量の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも80%、例えば、少なくとも90%または少なくとも95%を形成する。
【0037】
上述のように、本技術の実施形態に含まれる木材チップは、ポリマー中の木材材料の良好な分散と、ポリマー加工装置内での材料の良好な加工性とに貢献する。したがって、結果として、例えば、1.40~2.49mmの一般的な(80%)粒子サイズを有する比較的大きな木材粒子を使用することができる。さらに、木材チップは、射出成形装置などの溶融加工装置のノズル部品をスムーズに通過し、複合材のメルトフローレートを妨げないことが見出された。
【0038】
本発明の木材粒子は、典型的には「非フィブリル化」であり、これは、それらがチッピングまたはシェービングなどの機械的処理によって得られることを意味する。この機械的処理は、フィブリル化、特にチップまたは丸太の精製または粉砕によって行われるフィブリル化、または化学パルプ化液でのパルプ化などの化学的手段による木材原料のパルプ化によって木材から繊維が遊離するものとは異なる。このような処理では、「繊維」または「フィブリル」が生成する。
【0039】
それにもかかわらず、非フィブリル化木材粒子に加えて、本組成物に、繊維またはフィブリルの一部、特にリグノセルロース材料、例えば、木材に由来する繊維またはフィブリルの一部を組み込むことは可能である。典型的に、そのようなフィブリル化成分は、組成物の非ポリマー部分の総重量の50%未満を形成する。特に、フィブリル化成分は、組成物の非ポリマー部分の総重量の40重量%未満、例えば、30重量%未満、好ましくは20重量%未満、例えば、10重量%未満または5重量%未満を形成する。
【0040】
適切な繊維は、一年生植物または多年生植物などのリグノセルロース材料、または草、干し草、わら、竹、ケナフ、麻、ジュート、米、大豆、草の種、穀物、特にオート麦、小麦、ライ麦、大麦およびココナッツの殻の粉砕された種皮などの作物の収穫後に残った植物残渣を含む木材材料から入手できる。
【0041】
一実施形態では、組成物は、無機充填剤をさらに含む。好ましい実施形態では、無機充填剤は、タルクまたはカオリンなどのスレート様粒子によって形成される。他の充填剤および混和剤は、シリカとワックスに代表される。典型的には、もしあれば、無機充填剤の含有量は、熱可塑性ポリマーと木材粒子の総重量から計算して約0.1~40%、特に約0.5~30%に達する。
【0042】
スレート様無機顔料は、組成物に向上したバリア特性を付与し得る。スレート様無機顔料は、組成物の溶融加工中に加工助剤としても機能し得る。シリカ、すなわち、細かく分割された二酸化ケイ素材料は、メルトフロー特性を向上する。
【0043】
他の無機充填剤および顔料も組成物に存在してもよい。典型的には、スレート様無機顔料を含む無機充填剤の総含有量は、組成物の非ポリマー部分の50%未満である。
【0044】
無機充填剤および無機顔料の例には、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、二酸化チタン、酸化アルミニウムおよびアルミノケイ酸塩が含まれる。
【0045】
一実施形態では、複合材は、複合材に色の特性を付与することができる細かく分割された材料の粒子をさらに含む。染色材料は、例えば、溶融加工中に採用される加工温度で安定した色を有する天然材料から選択することができる。一実施形態では、染色材料は、200℃以下の温度で安定である。
【0046】
上記のいずれかなど、加工助剤を含む追加の成分は、マスターバッチの形の熱可塑性材料を使用することにより複合材に組み込むことができる。
【0047】
したがって、改質PLAマスターバッチは、加工助剤として使用でき、例えば、SukanoPLA 533である。
【0048】
木材粒子は、マツ、トウヒ、カラマツ、ジュニパー、カバノキ、ハンノキ、ポプラ、ポプラ、ユーカリ、よび混合熱帯広葉樹を含む針葉樹または広葉樹から得ることができる。好ましい実施形態では、木材材料は、広葉樹、特にポプラまたはアスペンなどのポプラ種の広葉樹から選択される。非針葉樹木材材料を使用することで、針葉樹種に典型的なテルペンおよびその他の揮発性成分のガス放出を、溶融加工中に回避できる。
【0049】
木材粒子は、熱可塑性ポリマーマトリックス全体に均一に分布していることが好ましい。一実施形態では、これは、材料の任意の1cmの体積における木材粒子の含有量が、同じ1cm体積を有する材料の他の体積の平均含有量と異なるものが50%未満であることを意味する。好ましい実施形態では、特に木材粒子の含有量が30を超える場合、透光性ポリマーから形成され、2.5mmの厚さを有するプレートに成形された複合材は、その中に木材粒子が存在するため、特に、木材粒子の含有量が、木材粒子と熱可塑性ポリマーの総重量の30%を超える、特に40%以上である場合に、非透光性である。
【0050】
複合材料のマトリックスは、熱可塑性ポリマーによって形成される。
【0051】
一実施形態では、熱可塑性ポリマーは、約150℃より高い、特に約155℃より高い融点を有する。熱可塑性ポリマーは、ポリラクチドおよびポリ(乳酸)を含むポリエステル、ポリグリコリドおよびポリ(グリコール酸)、酢酸プロピオン酸セルロースまたはポリヒドロキシアルカノエート、例えば、ポリヒドロキシ酪酸などの生分解性ポリマーの群から特に選択される。熱可塑性ポリマーは、ポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)およびそのコポリマーであってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、ポリオレフィン、ポリエステル、特に生分解性ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドなどの非生分解性ポリマーも、本明細書に記載の木材粒子で充填された複合材料を達成するために使用される。
【0053】
本文脈において、用語「生分解性ポリマー」は、例えば、ASTM規格D-5488-94dおよび欧州規格EN13432で規定されているように、それらを二酸化炭素、メタン、水、無機化合物およびバイオマスから選択される化合物に分解することができるという意味で生分解性であるポリマーを意味する。生分解性ポリマーのレビューは、Isabelle VromanとLan Tighzertによる「Biodegradable Polymers」、Materials 2009、2、307-344;doi:10.3390/ma2020307に提供されている。
【0054】
上記の規格、規格およびレビュー記事の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
生分解性ポリマーの分子量は、ポリマー分子間の絡み合いを可能にするために十分高い方がよく、しかし溶融加工するために十分に低い方がよい。
【0056】
一実施形態では、ポリ乳酸またはポリラクチド(両方とも略語「PLA」と呼ばれる)が使用される。特に好ましい一実施形態は、約10,000g/mol~約600,000g/mol、好ましくは約500,000g/mol未満または約400,000g/mol未満、より好ましくは約50,000g/mol~約300,000g/molまたは約30,000g/mol~約400,000g/mol、および最も好ましくは約100,000g/mol~約250,000g/molまたは約50,000g/mol~約200,000g/molの重量平均分子量を有するPLAポリマーまたはコポリマーを使用することを含む。
【0057】
PLAを使用する場合、PLAが、半結晶形または部分結晶形であることが好ましい。半結晶性PLAを形成するには、ポリラクチド中の繰り返し単位の少なくとも約90モルパーセントがL-ラクチドまたはD-ラクチドのいずれかであることが好ましく、少なくとも約95モルパーセントがL-ラクチドまたはD-ラクチドのいずれかであることがさらにより好ましい。
【0058】
別の実施形態において、熱可塑性ポリマーは、約110~150℃、または110~120℃の範囲の融点を有する。そのような熱可塑性物質は、ポリブチレート(PBATとも略される)から選択することができる。
【0059】
この種の熱可塑性ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーのいずれかの形態のニートポリマーを含むことができ、コポリマーは、例えば、アジピン酸、1,4-ブタンジオールおよびジメチルテレフタレートのコポリエステルなどのランダムコポリマーである。
【0060】
PBATポリマーは典型的には、生分解性の統計的な脂肪族芳香族コポリエステルである。適した材料は、商品名Ecoflex(登録商標)でBASFから供給されている。PBATのポリマー特性は、その高分子量と長鎖分岐分子構造のため、PE-LDと類似している。
【0061】
PBATは、そのランダム構造のためにランダムコポリマーとして分類される。また、これは、あらゆる種類の構造秩序が広く存在しないため、有意な程度には結晶化することができないことを意味する。これにより、いくつかの物理的特性:広い融点、低い引張応力と剛性、しかし、高い可撓性と靭性が得られる。
【0062】
バージンポリマーに加えて、組成物はまた、リサイクルされたポリマー材料、特にリサイクルされた生分解性ポリマーを含んでもよい。さらに、組成物は、繊維強化PLAなどのポリエステル、セラミック材料およびガラス材料(バイオガラス、リン酸塩ガラスなど)の複合材を含んでもよい。
【0063】
一実施形態では、複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
・110℃よりも高い融点を有する熱可塑性ポリマーを準備すること、
・1.0mmより大きい、特に1.5mmより大きいふるい分けサイズを有する非フィブリル化木材粒子を準備すること、ここで、木材粒子の少なくとも一部、好ましくは50重量%以上が、平らな形状の木材チップである;
・熱可塑性ポリマーと木材粒子を重量で30:70~90:10、例えば、35:65~80:20の混合比で溶融混合して、複合材料溶融物を形成すること;
・その溶融物を冷却すること。
【0064】
上述したふるい粒子サイズは、この方法にも適用できる。したがって、一実施形態では、使用される木材粒子は、1.0mmより大きく5mm未満のふるい分けサイズを有する粒子を含む、またはそれからなる、または本質的にそれからなる。
【0065】
一実施形態において、木材粒子の少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、典型的には80~95重量%は、1~2mmの範囲のふるい分けサイズを有する。
【0066】
第2の実施形態では、木材粒子の少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、典型的には80~95重量%は、1.4~2.5mmの範囲のふるい分けサイズを有する。
【0067】
一実施形態は、以下を含む複合材料を提供する。
・150℃より高い融点を有する熱可塑性ポリマーの連続マトリックス;前記熱可塑性ポリマーは、ポリラクチド、酢酸プロピオン酸セルロース、ポリヒドロキシ酪酸およびPBS(ポリブチレンサクシネート)によって形成される生分解性ポリマーの群から選択される、
・そのマトリックス内に分布した、1.0mmより大きいふるい分けサイズを有する非フィブリル化木材粒子;その木材粒子の少なくとも70重量%は、1~3mmのふるい分けサイズを有し、その木材粒子の少なくとも一部は、平らな形の木材チップの形態である、
複合材は、熱可塑性ポリマーと木材粒子の総重量から計算して、20~60重量%の木材粒子を含む。
【0068】
溶融物が所定の形状を有する物品に成形される金型内で冷却ステップを実施することが好ましい。
【0069】
典型的には、熱可塑性ポリマーは、細かく分割された粒子またはペレットの形態で、非フィブリル化木材粒子とともに乾燥混合物の形態で、溶融加工ポリマー加工装置の供給ゾーンに供給される。熱可塑性ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーとして、ニートポリマーの形で供給される。
【0070】
さらなる実施形態は、以下のステップを含む。
・スレート様無機顔料を準備すること、および
・その無機顔料を木材粒子および熱可塑性ポリマーと溶融混合すること、
無機顔料の量は、熱可塑性ポリマーと木材粒子の総重量から計算して、0.1~40重量%である。
【0071】
熱可塑性ポリマー、木材粒子および任意のスレート様無機顔料を含むブレンドまたは混合物は、射出成形によって所定の物品に加工される。
【0072】
一実施形態では、成分は、物理的に混合され、スクリュー混合ゾーンを有する射出成形機のホッパーに供給される。ポリマーの劣化を低減または防止するために、典型的には約10分未満の限られた時間の間、成分は、スクリュー内での溶融混合にかけられる。加工温度は、ポリマーの分解温度未満に保たれる。PLAの場合、最高温度は、200℃が好適である。処理中のポリマーの劣化を低減または防止するために、好ましい実施形態では、少なくとも20:1のL/D比を有するスクリューが使用される。
【0073】
溶融物を所定の形状の物品に成形するために、金型が使用される。金型温度は、一般に、ポリマーのガラス転移温度よりも低い。PLAの場合、約25~60℃の温度が好ましく、アモルファスPLAの場合、好ましい範囲は、約35~55℃である。
【0074】
射出成形中に使用される圧力は、典型的には50~150バール、例えば、約80~120バールの範囲であり、背圧は、1~10バール、例えば、1~3バールの範囲である。
【0075】
例えば、剛性壁の容器および他の容器などの三次元物体を形成するための従来の射出成形に加えて、組成物は、射出ブロー成形または射出ストレッチブロー成形によって加工して、弾性または可撓性壁を有する容器を製造できる。
【0076】
典型的には、剛性壁の容器およびその他の容器は、1~10mmの範囲の壁の厚さを有する。
【0077】
好ましい実施形態では、しぼりチューブは、内容物が分配されるノズルまたは開口部を画定するチューブのヘッド部分を射出成形し、次いでチューブの管状本体部分を個別に押し出し、最終的にヘッド部分と本体部分をヒートシールまたは超音波溶接などの適切な方法によって、接合することによって作られる。経済的な理由から、チューブ全体をワンピースの一体部品として射出成形することもできる。
【0078】
溶融加工中、温度をポリマー材料および木材成分の分解温度未満に維持することが一般に好ましい。したがって、好ましい実施形態では、材料は、205℃未満の温度で加工される。
【0079】
一実施形態では、溶融加工は、熱可塑性ポリマーの融点から約200℃までの範囲の温度で実施することができる。
【0080】
組成物の熱特性は、無機成分の添加により改質および向上することができる。したがって、タルクまたはクレイなどのスレート様無機顔料を使用すると、バリア特性が向上するだけでなく、耐熱性も向上し、この耐熱性によって、180℃を超える温度でも木材粒子が熱分解することなく、木材粒子とポリマーの混合および加工が可能となる。
【0081】
本複合材は、気体、液体および油バリアの組み合わせ特性を示す。材料自体の特性は良好であるが、溶融物の表面にバリアコーティングを施すことにより、形状製品のバリア特性をさらに改善することが可能である。特に、冷却された溶融物の表面または複合材料から成形された物品の表面にコーティングが適用される。
【0082】
一実施形態において、コーティングは、ゾルゲル組成物であり、これは、好ましくは、溶融物の表面または溶融物から成形された物品の表面にスプレーコーティングによって適用される。
【0083】
本発明の材料は、例えば、射出成形によって、化粧品または食料品用の剛性壁または半剛性壁の容器などの容器、または化粧品用、食料品または飲料用の瓶、または化粧品、食料品および飲料用(非発泡性または炭酸化)のしぼりチューブを製造するのに適している。内容物は、冷たくても温かくてもよく、典型的には、内容物は、0~100℃、例えば、1~80℃の温度を有することができるが、本容器は、氷点下の条件でも使用できる。一実施形態では、容器は、-45℃~-0℃、特に-25℃~0℃で使用できる。
【0084】
特に興味深い一実施形態では、瓶は、射出延伸ブロー成形(ISBM)によって本材料から製造される。典型的には、ISBMは、単一ステップまたは2ステップのプロセスであり得る。あるいは、瓶は、例えば、ポリマーの可塑化およびその成形に従来適用される標準的な押出機バレルおよびスクリューアセンブリを使用する押出ブロー成形によって製造することができる。
【0085】
好ましい実施形態では、加工は、より良いプロセス制御と、機械の効率と能力を備えた柔軟性を可能にする2段階プロセスとして実行される。第1のステップでは、射出成形機を使用してプリフォームを作成する。これらのプリフォームは、後で別のストレッチブローマシンでブローされる。プリフォームの壁の厚さは、第2のステップを成功させるために重要である。プリフォームの壁が厚すぎる場合、材料を結晶化させる過剰な加熱が必要である。対照的に、プリフォームの壁が薄すぎると、破れやすくなる。
【0086】
第2のステップでは、プリフォームを回転スピンドルで搬送し、赤外線バンクオーブンを通過させ、そこでそれは85~95℃(2段階プロセスでのブロー成形に最適な温度)に加熱される。加熱されたプリフォームは、ブロー金型に移され、ブローノズルが下に移動してプリフォームのネックにシールを作る。次に、ストレッチロッドがプリフォーム内をプリフォームの先端に向かって1.2~2m/sの速度で移動し、ブロー金型内のベースに向かってプリフォームを引き伸ばす。約0.2~0.5MPaの比較的低い空気圧で圧縮空気を同時にプリフォームに吹き込み、ストレッチロッドに触れないようにプリフォームを部分的に膨張させる。ストレッチロッドをベースカップまで移動させたら、空気圧を3.8~4.0MPaに上げて、プリフォームを良好な輪郭の望ましい形状に成形する。プリフォームのストレッチブロー成形に続く再加熱ステップは、使用するPLA樹脂のグレードに大きく依存する。
【0087】
このようにして製造された物品、例えば、容器は、バリア特性を向上するためにコーティングしてもよい。
【0088】
一実施形態では、容器の内面にコーティングを適用して、流体またはエマルションの貯蔵のための適したバリア特性を達成する。
【0089】
好ましい一実施形態では、コーティングは、スプレーコーティング装置によって容器の内面に適用される水性ゾルゲル組成物を含む。別の実施形態では、コーティングは、ポリマー成分と無機成分を含むハイブリッド複合材を含む。このようなコーティングは、室温で硬化する、またはUV光もしくは熱による硬化が必要になる場合がある。
【0090】
コーティングを容器の外側に適用して、耐スクラッチ性、高光沢またはその他の表面特性の向上を実現することもできる。
【0091】
容器のコーティングに関して、生分解性または堆肥化可能な容器をフィルム化する方法、およびそのような方法によって形成された容器を開示する米国特許出願公開第2007/0148384号明細書が参照される。米国特許出願公開第2007/0148384号明細書の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
以下の非限定的な実施例は、本技術の実施形態を示している。
【実施例
【0093】
・実施例1
材料の第1のセットを、射出成形によってポリ乳酸(PLA)と木材チップから製造した。PLAペレットと木材チップを射出成形前に乾燥させて、加工中の水分を除去した。PLAペレットおよびアスペン木材チップ[1.00~1.99mmの範囲の一般粒子サイズ(木材1)または1.40~2.49mmの範囲の一般粒子サイズ(木材2)]を、60重量部のポリマーと40重量部の木材チップの重量比で計量した。針葉樹の木材粉塵を参照として使用した(木材3)。
【0094】
材料の第2セットでは、タルクとの混合物(20重量%のタルク、40重量%の木材チップおよび40重量%のPLA)を調製した。マイクロサイズのタルクは、Specialty MineralsからULTRATALC(登録商標)609の商品名で供給された。このタルクは、0.9ミクロン未満の粒子サイズ中央値、比重2.8、かさ密度0.10グラム/cc、タップ密度0.32g/ccおよびpH8.8であった。
【0095】
それらの成分、すなわち、PLAペレット、木材チップおよび場合によってはタルクを容器内で物理的に混合し、エンゲル射出成形機のホッパーに供給して、つぼの形状の複合物品を製造した。それらの成分を、スクリュー内で溶融混合した。加工温度は、200℃未満であった。金型温度は、35℃であった。冷却時間(40秒)後、製品を金型から取り出した。
【0096】
つぼ内に液体またはエマルションを保存するのに適したバリア特性を達成するために、つぼの内面にコーティングを塗布した。そのコーティングは、つぼの内面にスプレーコーティング装置によって塗布した水性ゾルゲル組成物(Avalon、Millidine Oyから供給)であった。
【0097】
射出成形によって製造された複合材の機械的特性は、引張試験(ISO 527)および衝撃試験(シャルピー衝撃、ノッチ付き、ISO 179)によって分析した。本発明による射出成形プロセスによって製造した種々の木材‐ポリマー複合材について測定した典型的な値を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
バリア試験用のサンプルを、上記のように射出成形によって準備した。そのサンプルは、サイズが100mm×100mm×3mmのシートであった。
【0100】
射出成形によって製造した複合材および対照の酸素、水蒸気および油透過性に対するバリア特性を分析した。
【0101】
酸素透過率(OTR)は、ASTM D3985(23℃、相対湿度0%)に基づく標準手順を使用して測定した。
【0102】
水蒸気透過率(WVTR)は、ASTME-96(38℃、相対湿度90%)に基づく標準手順を使用して重量分析で測定した。
【0103】
食用油を使用した修正Tappi T 507法(40℃で0~2日、60℃で3~6日、80℃で7~8日)によって、油の浸透を測定した。本発明で記載した射出成形プロセスによって調製した木材-ポリマー組成物および対照について測定した典型的な値を表2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
・実施例2
長くて薄い壁のワンピースしぼりチューブの射出成形用組成物は、密度が約1.24g/ccより大きいポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、およびふるい分けサイズが1.0mmより大きい非フィブリル化木材チップを、ポリマーと木材粒子の重量比50:50~95:5で含む。
【0106】
組成物は、金型内でのその成形組成物の流動性を高めるため、PBATおよび木材チップと混和性および適合性のあるポリマーも含み、それは、ポリカプロラクトン(PCL)などの低融点の生分解性ポリエステルである。
【0107】
PCLの特に好ましい分子量範囲は、35,000~50,000g/molである。このブレンドは、好ましくは、約65重量%のPBAT;5重量%のPCL;30重量%の木材チップを含む。そのブレンドは、0.1~1.0%の射出成形添加剤(例えば、シリカまたはタルクなどの無機成分)も含み得る。射出成形しぼりチューブのための組成物は、得られる組成物が金型内の組成物の流動性を高めるための高いメルトインデックスを有し、強度と耐引裂性を損なうことなく適切な可撓性を有するように選択された複数の成分のブレンドを含む。組成物への木材の添加は、たとえ例えば、10%の低レベルであっても、成形部品を金型から取り外すのに役立つ。
【0108】
チューブ形状は、標準的な射出成形機を使用して作成される。その金型は、一端が開いているチューブの管状本体部分の形状と、本体部分の反対側の端部に接合されたヘッド部分の形状を含む。ヘッド部分にはノズルがあり、そこから内容物を分配することができ、ねじキャップ用の雄ねじ、または他のタイプのクロージャー用の他の特徴がある。
【0109】
金型を固定し、押出機のノズルを前進させて、ポリマー-木材の溶融物を金型のキャビティに注入する。PBAT-木材複合材の場合、ホッパーからダイに向かう射出成形バレルの温度プロファイルは160、165、165、165、170℃であることが好ましい。金型温度は、55℃に設定したほうがよい。注入されたプリフォームは、周囲温度まで冷却される。チューブは、開口端を通して充填され、その後、その開口端は、ヒートシールまたは超音波装置によってシールされる。複合材への熱および超音波シーリングを試験し、10~40%の木材チップを含む複合材シートを互いにしっかりと取り付けるのに成功した。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明による材料、ならびに上述の実施形態は、例えば、化粧品、食料品および飲料(冷たいおよび温かいならびに非発泡性および炭酸化および任意に圧力下で保管される)用の、つぼ、しぼりチューブおよび瓶などの容器として多くの用途を見出す。他の用途には、温かい飲み物と冷たい飲み物用のコップ、皿とボウル、使い捨てカトラリー、食品トレイなどがある。材料は、堆肥化可能または生分解性である。
【0111】
引用リスト
特許文献
米国特許第8,722,773号
特開2002-223822号
国際公開第2015/049589号
中国特許出願公開第101712804号明細書
米国特許出願公開第2013/253112号明細書
米国特許出願公開第2016/076014号明細書
米国特許出願公開第2002/130439号明細書
米国特許出願公開第2007/0148384号明細書
欧州特許出願公開第0319589号明細書
非特許文献
ASTM規格 D5488-94d
欧州規格EN13432
Isabelle VromanとLan Tighzertによる「Biodegradable Polymers」、Materials 2009、2、307-344;doi:10.3390/ma2020307