IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 南京工▲業▼大学の特許一覧

特許7255940放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物及びその製造方法
<>
  • 特許-放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物及びその製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20230404BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20230404BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20230404BHJP
【FI】
C09K3/00 105
B82Y30/00
B82Y40/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022506229
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 CN2020084640
(87)【国際公開番号】W WO2021017524
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】201910695003.4
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515083491
【氏名又は名称】南京工▲業▼大学
【氏名又は名称原語表記】NANJING TECH UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.5 Xinmofan Road, Gulou, Nanjing, Jiangsu 210009, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュー チュンフア
(72)【発明者】
【氏名】ニー ヤル
(72)【発明者】
【氏名】ファン ジェンガン
(72)【発明者】
【氏名】シュー ジョンジ
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-485(JP,A)
【文献】国際公開第2008/154691(WO,A1)
【文献】特開2015-78338(JP,A)
【文献】Materials Letters,2011年,Vol. 65,pp. 1585-1587
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
B82Y 30/00;
40/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノシリカ、希土類ケイ酸塩化合物及びモリブデン酸塩化合物を、質量比1:(0.5~2):(0.5~2)で、均一な粉体の混合物として含む放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物であって、前記希土類ケイ酸塩化合物は化学量論比SiO-(0.5~2)Re-(0.1~1.0)NaOを満たし、且つ9~12μmの範囲内に高い赤外線選択的放射特性を有し、前記ReはLa、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Er、Tm、Yb、Y又はScであり、前記モリブデン酸塩化合物は化学量論比RMoOを満たし、且つ10~14μmの範囲内に高い赤外線選択的放射特性を有し、前記RはMg、Ca、Sr又はBaである、放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物。
【請求項2】
8~14μmの大気の窓で高い選択的吸収-放射特性を有し、紫外線-可視光-近赤外線太陽光を透過可能であることを特徴とする、請求項1に記載の放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物。
【請求項3】
(a)前記希土類ケイ酸塩化合物の化学量論比に基づき、ナノシリカ、希土類硝酸塩及び硝酸ナトリウムを正確に秤量し、エタノール・水混合溶液中に混合分散させ、水浴撹拌条件で溶媒を蒸発させてゲルを得、120~150℃にて3~6時間の低温仮焼処理を行ってから、600~900℃にて3~12時間熱処理して希土類ケイ酸塩化合物を得るステップと、
(b)前記モリブデン酸塩化合物の化学量論比に基づき、モリブデン酸アンモニウム及びアルカリ土類金属硝酸塩を正確に秤量した後に脱イオン水に溶解して溶液とし、クエン酸溶液を調製し、前記溶液を撹拌しながらそこに前記クエン酸溶液を滴下して加え、次にpHを3.0~4.0に調整し、水浴撹拌条件で溶媒を蒸発させてゲルを得、120~150℃にて3~6時間の低温仮焼処理を行ってから、800~1000℃にて3~12時間熱処理し、モリブデン酸塩化合物を得るステップと、
(c)ナノシリカ、希土類ケイ酸塩化合物及びモリブデン酸塩化合物の質量比に基づき、一定量のナノシリカ、前記希土類ケイ酸塩化合物及び前記モリブデン酸塩化合物を秤量し、高速研削分散機で処理し、放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物を得るステップと、
を含む、請求項1に記載の放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)において、前記水浴撹拌条件の温度は70~80℃であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(b)において、前記クエン酸溶液の質量濃度は5%~10%であり、前記pHはアンモニア水で調整し、前記水浴撹拌条件の温度は70~80℃であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(c)において、前記高速研削分散機の回転速度は300~400回転/分間であり、処理時間は2~6時間であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱放射の技術分野に属し、放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界経済の急速な発展に伴い、エネルギー危機という問題が日増しに顕在化しているが、エアコンの冷却はエネルギー消費においてかなりの割合を占めている。高効率な放射冷却技術の開発は、電気エネルギー消費の低減、環境の保全に重要な意義を持つ。放射冷却とは、地球上の物体が赤外線の大気の窓から熱を宇宙空間へ伝達するプロセスをいい、放射冷却材料はこの原理に基づいて製造された自己冷却機能を有する材料である。熱の伝播において、大気は赤外線放射の主な伝達媒体であり、可視光を透過可能であるが、赤外線波長域におけるかなりの部分の赤外線放射を透過させることができない。なぜなら、大気に存在するHO、CO、O及びCH等の多原子気体分子は赤外線放射の伝達中に分子内の電気双極子モーメントの変化を引き起こして、赤外線放射の吸収又は散乱を起こすことがあるからであり、且つ、実際の大気には、煙、霧、雨、雪、埃等、他に多数の固体又は液体の浮上物質が存在し、それらも赤外線放射の伝達を阻害する。大気の透過率に対する研究によると、8~14μmの波長域では各種気体分子による吸収が弱く、赤外線放射が大気層を透過して遠方へ伝播可能であるため、この領域は「大気の窓」と呼ばれる。
【0003】
太陽光照射の環境において、放射冷却器の作動中の熱交換は、主に太陽放射の吸収、大気中の赤外線放射の吸収、赤外線の窓からの赤外線放射排出、及び自然空気での熱対流及び熱伝導を含む。最適なパッシブ冷却効果を達成するには、放射冷却材料が、8~14μmの赤外線波長域で高い放射率を、0.38~2.5μmの太陽光スペクトル波長域で高い反射率を有することが必要である。放射冷却器は通常、物体の熱を赤外線の大気の窓から宇宙へ排出する役割を果たす赤外線放射層、及び、太陽光を高効率で反射させ、太陽光熱の吸収を低減する役割を果たす太陽光反射層を含む。
【0004】
現在、夜間無照明条件での放射冷却器が実現されているが、昼間照明条件で実用性の要求を満たす高性能放射冷却器がまだ開発されていない。従来の報告された放射冷却器には主に以下の方法がある。1つは、フォトエッチング技術及びナノプラズマ堆積技術によって、ナノ構造の放射冷却器を構築する方法であるが、このような構造の光子放射冷却器は製造コストが高く、大量生産が実現できず、且つ光子放射冷却器は構造強度が低く、破損しやすく、長期間安定性が低いものである。もう1つは、二酸化チタン、ガラス微小球等の無機機能性物質を重合体と複合して高反射金属基材上に接着して放射冷却器を得る方法であるが、二酸化チタン、ガラス微小球等の機能性物質は赤外線スペクトル領域での吸収選択性が不足するため、製造される放射冷却器は8~14μmの範囲外の非赤外線大気窓での吸収率及び放射率が高く、選択的放射能力が低く、環境から余分な大気放射を大量吸収しやすく、それにより、放射器全体の冷却効果が低下し、有効冷却電力が好ましくない。現在、夜間と昼間の二重効果による放射冷却器の機能要求を実現可能な、低コストで大量生産しやすい放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物及びその製造プロセスは、まだ報告されていない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、従来技術に存在する欠点を解決できる放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物を提供することであり、本発明の別の目的は、上記放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物の製造方法を提供することである。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決手段によって実現する。放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物は、ナノシリカ、希土類ケイ酸塩化合物及びモリブデン酸塩化合物を、質量比1:(0.5~2):(0.5~2)で、ボールミル粉砕して均一に混合してなるものであり、ナノシリカは8~10μmの範囲内に高い赤外線選択的放射特性を有し(赤外線放射吸収係数が0.8より大きい)、希土類ケイ酸塩化合物は化学量論比SiO-(0.5~2)Re-(0.1~1.0)NaOを満たし、且つ9~12μmの範囲内に高い赤外線選択的放射特性を有し(赤外線放射吸収係数が0.8より大きい)、ここでReはLa、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Er、Tm、Yb、Y又はScであり、モリブデン酸塩化合物は化学量論比RMoOを満たし、且つ10~14μmの範囲内に高い赤外線選択的放射特性を有し(赤外線放射吸収係数が0.8より大きい)、ここでRはMg、Ca、Sr又はBaである。
【0007】
より好ましくは、希土類ケイ酸塩化合物SiO-(0.5~2.0)RE-(0.1~1.0)NaOにおいて、REはLa、Gd、Tm、Y、Scのうちのいずれか1種又は複数種の組み合わせであり、更に好ましくはLa、Gd、Yのうちのいずれか1種又は複数種の組み合わせである。
【0008】
前記モリブデン酸塩化合物が化学量論比RMoOを満たすことにおいて、Rは好ましくはMg、Caのうちのいずれか又は両者の組み合わせである。
【0009】
当該ナノ機能性組成物は8~14μmの大気の窓で高い選択的吸収-放射特性を有し、且つ紫外線-可視光-近赤外線太陽光を透過可能である。
【0010】
本発明は、具体的に、
(a)希土類ケイ酸塩化合物の化学量論比に基づき、ナノシリカ、希土類硝酸塩及び硝酸ナトリウムを正確に秤量し、エタノール・水混合溶液中に混合分散させ、水浴撹拌条件で溶媒を蒸発させてゲルを得、120~150℃にて3~6時間の低温仮焼処理を行ってから、600~900℃にて3~12時間熱処理して希土類ケイ酸塩化合物を得るステップと、
(b)モリブデン酸塩化合物の化学量論比に基づき、モリブデン酸アンモニウム及びアルカリ土類金属硝酸塩を正確に秤量した後に脱イオン水に溶解して溶液とし、クエン酸溶液を調製し、上記溶液に滴下し、滴下しながら激しく撹拌し、pHを3.0~4.0に調整し、水浴撹拌条件で溶媒を蒸発させてゲルを得、120~150℃にて3~6時間の低温仮焼処理を行ってから、800~1000℃にて3~12時間熱処理し、モリブデン酸塩化合物を得るステップと、
(c)ナノ機能性組成物の質量比に基づき、一定量のナノシリカ、希土類ケイ酸塩化合物及びモリブデン酸塩化合物を秤量し、高速研削分散機で処理し、放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物を得るステップと、を含む上記放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物の製造方法を更に提供する。
【0011】
好ましくは、ステップ(a)における水浴の温度は70~80℃である。好ましくは、ステップ(b)におけるクエン酸溶液の質量濃度は5%~10%であり、pHはアンモニア水で調整し、水浴の温度は70~80℃である。好ましくは、ステップ(c)における高速研削分散機の回転速度は300~400回転/分間であり、処理時間は2~6時間である。
【0012】
発明の効果
本発明は8~10μmの範囲内に高い赤外線選択的放射特性を有するナノシリカ、9~12μmの範囲内に高い赤外線選択的放射特性を有する希土類ケイ酸塩化合物、及び10~14μmの範囲内に高い赤外線選択的放射特性を有するモリブデン酸塩化合物を組み合わせて、紫外線-可視光-近赤外線太陽光を透過可能で8~14μmの赤外線の大気の窓で高い赤外線選択的放射冷却特性を有するナノ機能性組成物を得、夜間と昼間の二重効果による高性能の放射冷却器、自己放射冷却コーティング等の低コスト大量生産において技術的難易度を低下させ、建築物、穀倉と油倉、高出力電子機器、及び冷蔵庫と冷蔵包装等におけるゼロエネルギー消費の冷却・降温、及び大規模なエネルギー節約と効率向上に新たな技術的アプローチを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1に係る赤外線選択的吸収/放射スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明をより良く理解するために、特に以下の実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の内容は決して以下の実施例に限定されるものではない。説明により、本発明の利点及び特徴は更に明確になるが、本発明を何ら限定する根拠とはならない。当業者であれば、本発明を閲覧した上で、本発明に対して行った様々な等価形態での修正又は置換は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれることを理解すべきである。
【実施例1】
【0015】
本実施例は放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物及びその製造プロセスを開示し、以下のステップを含む。
(a)希土類ケイ酸ランタン化合物の化学量論比SiO-La-0.5NaOに基づき、30gのナノシリカ(50nm、市販)、324.9gの硝酸ランタン及び85gの硝酸ナトリウムを正確に秤量し、エタノール・水混合溶液に溶解し、70℃の水浴撹拌条件で溶媒を蒸発させてゲルを得、120℃にて6時間熱処理して希土類ケイ酸ランタンの仮焼粉を得、700℃にて12時間熱処理して平均粒度が106nmの希土類ケイ酸ランタン化合物を得る。
(b)モリブデン酸カルシウムの化学式CaMoOに基づき、82gの硝酸カルシウム及び170gの二モリブデン酸アンモニウムを正確に秤量し、脱イオン水に溶解する。8%のクエン酸溶液を調製し、上記溶液に1滴ずつ滴下し、滴下しながら激しく撹拌し、アンモニア水でpHを3.5に調整し、70℃の水浴撹拌条件で溶媒を蒸発させてゲルを得、150℃にて6時間熱処理してモリブデン酸カルシウムの仮焼粉を得、900℃にて6時間熱処理して平均粒度が103nmのモリブデン酸カルシウムを得る。
(c)機能性粉体組成物の重量比1:1:1に基づき、40gのナノシリカ(50nm、市販)、40gのステップ(a)で得た希土類ケイ酸ランタン化合物、及び40gのステップ(b)で得たモリブデン酸カルシウムをそれぞれ秤量し、併せて高速研削分散機のボールミルポットに加え、ボールミルの回転速度を300回転/分間とし、ボールミルの粉砕時間を6時間とし、所要の放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物を得る。得られたナノ機能性組成物は8~14μmの赤外線波長範囲での吸収/放射率が最高0.90に達する。その赤外線選択的吸収/放射スペクトルは図1に示されるとおりである。
【実施例2】
【0016】
本実施例は放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物及びその製造プロセスを開示し、以下のステップを含む。
(a)希土類ケイ酸ランタン化合物の化学量論比SiO-1.5Sm-0.25NaOに基づき、24gのナノシリカ(50nm、市販)、134.5gの硝酸サマリウム及び42.5gの硝酸ナトリウムを正確に秤量し、エタノール・水混合溶液に溶解し、70℃の水浴撹拌条件で溶媒を蒸発させてゲルを得、150℃にて3時間熱処理して希土類ケイ酸ランタンの仮焼粉を得、900℃にて3時間熱処理して平均粒度が115nmの希土類ケイ酸ランタン化合物を得る。
(b)モリブデン酸カルシウムの化学式MgMoOに基づき、72.2gの硝酸マグネシウム及び85gの二モリブデン酸アンモニウムを正確に秤量し、脱イオン水に溶解する。10%クエン酸溶液を調製し、上記溶液に1滴ずつ滴下し、滴下しながら激しく撹拌し、アンモニア水でpHを3.0に調整し、80℃の水浴撹拌条件で溶媒を蒸発させてゲルを得、120℃にて6時間熱処理してモリブデン酸カルシウムの仮焼粉を得、1000℃にて3時間熱処理して平均粒度が103nmのモリブデン酸カルシウムを得る。
(c)機能性粉体組成物の重量比1:1.5:0.5に基づき、40gのナノシリカ(50nm、市販)、60gのステップ(a)で得た希土類ケイ酸ランタン化合物及び15gのステップ(b)で得たモリブデン酸カルシウムをそれぞれ秤量し、併せて高速研削分散機のボールミルポットに加え、ボールミルの回転速度を350回転/分間とし、ボールミルの粉砕時間を4時間とし、所要の放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物を得る。得られたナノ機能性組成物は8~14μmの赤外線波長範囲での吸収/放射率が最高0.89に達する。
【実施例3】
【0017】
本実施例は放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物及びその製造プロセスを開示し、以下のステップを含む。
(a)希土類ケイ酸ランタン化合物の化学量論比SiO-1.5La-0.5NaOに基づき、30gのナノシリカ(30nm、市販)、487.4gの硝酸ランタン及び42.5gの硝酸ナトリウムを正確に秤量し、エタノール・水混合溶液に溶解し、80℃の水浴撹拌条件で溶媒を蒸発させてゲルを得、120℃にて6時間熱処理して希土類ケイ酸ランタンの仮焼粉を得、650℃にて12時間熱処理して平均粒度が94nmの希土類ケイ酸ランタン化合物を得る。
(b)モリブデン酸カルシウムの化学式CaMoOに基づき、82gの硝酸カルシウム及び170gの二モリブデン酸アンモニウムを正確に秤量し、脱イオン水に溶解する。8%クエン酸溶液を調製し、上記溶液に1滴ずつ滴下し、滴下しながら激しく撹拌し、アンモニア水でpHを4.0に調整し、70℃の水浴撹拌条件で溶媒を蒸発させてゲルを得、150℃にて3時間熱処理してモリブデン酸カルシウムの仮焼粉を得、900℃にて3時間熱処理して平均粒度が90nmのモリブデン酸カルシウムを得る。
(c)機能性粉体組成物の重量比1:0.5:2に基づき、35gのナノシリカ(50nm、市販)、17.5gのステップ(a)で得た希土類ケイ酸ランタン化合物及び70gのステップ(b)で得たモリブデン酸カルシウムをそれぞれ秤量し、併せて高速研削分散機のボールミルポットに加え、ボールミルの回転速度を300回転/分間とし、ボールミルの粉砕時間を6時間とし、所要の放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物を得る。得られたナノ機能性組成物は8~14μmの赤外線波長範囲での吸収/放射率が最高0.91に達する。
【実施例4】
【0018】
本実施例は高い選択性を有する光子放射冷却器の製造方法を開示し、以下のステップを含む。
(a)希土類ケイ酸ジスプロシウムの化学量論比SiO-0.5La-0.1Gd-1.0NaOに基づき、30gのナノシリカ、162.5gの硝酸ランタン、34.3gの硝酸ガドリニウム及び85gの硝酸ナトリウムを正確に秤量し、体積エタノール・水混合溶液で溶解し、70℃の水浴撹拌条件で溶媒を蒸発させてゲルを得、150℃にて3時間熱処理して希土類ケイ酸ジスプロシウムの仮焼粉を得、750℃にて10時間熱処理して平均粒度が120nmの希土類ケイ酸ジスプロシウムガドリニウム化合物を得る。
(b)モリブデン酸カルシウムの化学式CaMoOに基づき、41gの硝酸カルシウム及び85gの二モリブデン酸アンモニウムを正確に秤量し、脱イオン水に溶解する。5%クエン酸溶液を調製し、上記溶液に1滴ずつ滴下し、滴下しながら激しく撹拌し、アンモニア水でpHを4.0に調整し、80℃の水浴撹拌条件で溶媒を蒸発させてゲルを得、150℃にて4時間熱処理してモリブデン酸カルシウムの仮焼粉を得、850℃にて12時間熱処理して平均粒度が85nmのモリブデン酸カルシウムを得る。
(c)機能性粉体組成物の重量比1:2:1.5に基づき、28gのナノシリカ(50nm、市販)、56gのステップ(a)で得た希土類ケイ酸ジスプロシウムガドリニウム化合物及び42gのステップ(b)で得たモリブデン酸カルシウムをそれぞれ秤量し、併せて高速研削分散機のボールミルポットに加え、ボールミル回転速度を300回転/分間とし、ボールミル粉砕時間を6時間とし、所要の放射冷却のための赤外線選択的ナノ機能性組成物を得る。得られたナノ機能性組成物は8~14μmの赤外線波長範囲での吸収/放射率が最高0.92に達する。
図1