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特許7255968ガラスセラミック組成物及びこれを組み込んだラミネートガラス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】ガラスセラミック組成物及びこれを組み込んだラミネートガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/04 20060101AFI20230404BHJP
   C03B 23/203 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C03C10/04
C03B23/203
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017522953
(86)(22)【出願日】2015-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-12-07
(86)【国際出願番号】 US2015057928
(87)【国際公開番号】W WO2016069823
(87)【国際公開日】2016-05-06
【審査請求日】2018-10-29
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】62/072,673
(32)【優先日】2014-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ボーク,ヘザー デブラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタラマン,ナテサン
(72)【発明者】
【氏名】ウェラー,マーク オーウェン
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】日比野 隆治
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/055840(WO,A1)
【文献】特開2001-184624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
68モル%~75モル%のSiO
7モル%~10モル%のAl
7モル%~15モル%のアルカリ酸化物ROであって、前記アルカリ酸化物ROはLiO及びNaOを含み、前記アルカリ酸化物ROは4モル%6モル%のLiOを含む、アルカリ酸化物RO;
0モル%~5モル%のアルカリ土類酸化物ROであって、前記アルカリ土類酸化物ROはMgOを含む、アルカリ土類酸化物RO;
を含み、
1未満の、比Al(モル%)/(RO(モル%)+RO(モル%));
LiSiの主要な結晶相;並びに
35kP(3.5kPa・s)超の液相粘度
を備える、ガラスセラミック組成物であって、
TiO、ZrO、P及びこれらの組み合わせからなる群から選択された核形成剤を更に含み、比(SiO(モル%)+Al(モル%)+LiO(モル%)+KO(モル%)+NaO(モル%))/(TiO(モル%)+P(モル%)+ZrO(モル%))は、26超かつ31未満であり、
20×10 -7 /℃以上70×10 -7 /℃以下のセラミック化後の熱膨張係数CTE AC を有する
ガラスセラミック組成物。
【請求項2】
前記アルカリ酸化物ROは、3モル%9モル%のNaOを含む、請求項1に記載のガラスセラミック組成物。
【請求項3】
前記アルカリ土類酸化物ROは、0モル%超及び5モル%までのMgOを含む、請求項1または2に記載のガラスセラミック組成物。
【請求項4】
Al(モル%)に対するSiO(モル%)の比は7超である、請求項1~3のいずれか1項に記載のガラスセラミック組成物。
【請求項5】
比(LiO(モル%)+2*SiO(モル%))/Al(モル%)は13超である、請求項1~4のいずれか1項に記載のガラスセラミック組成物。
【請求項6】
比(RO(モル%)+2*SiO(モル%))/Al(モル%)は8.5超である、請求項1~5のいずれか1項に記載のガラスセラミック組成物。
【請求項7】
Oを10モル%までの量で更に含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のガラスセラミック組成物。
【請求項8】
60×10 -7 /℃以上のコア熱膨張係数CTEを有するガラスコア層;
前記ガラスコア層に直接融着された、ガラスセラミック組成物を含む、少なくとも1つのガラスクラッド層
を備える、ラミネートガラス物品であって、
前記少なくとも1つのガラスクラッド層は、
68モル%~75モル%のSiO
7モル%~10モル%のAl
7モル%15モル%のアルカリ酸化物ROであって、前記アルカリ酸化物ROはLiO及びNaOを含む、アルカリ酸化物RO;
0モル%~5モル%のアルカリ土類酸化物ROであって、前記アルカリ土類酸化物ROはMgOを含む、アルカリ土類酸化物RO
を含み、
1未満の、比Al(モル%)/(RO(モル%)+RO(モル%));
LiSiの主要な結晶相
35kP(3.5kPa・s)超の液相粘度
iO、ZrO、P及びこれらの組み合わせからなる群から選択された核形成剤
を有し、
比(SiO(モル%)+Al(モル%)+LiO(モル%)+KO(モル%)+NaO(モル%))/(TiO(モル%)+P(モル%)+ZrO(モル%))は、26超であり、
前記少なくとも1つのガラスクラッド層のクラッド熱膨張係数CTECLは、20×10‐7/℃以上及び70×10‐7/℃以下、かつ前記コア熱膨張係数CTE未満であり、
|CTE -CTE CL |が、20×10 -7 /℃以上である
ラミネートガラス物品。
【請求項9】
コア熱膨張係数CTEを有するガラスコア層を、前記コア熱膨張係数CTE値の±20%以内のセラミック化前熱膨張係数CTEPC の値を有する少なくとも1つのガラスクラッド層に融着して、ラミネートガラス物品を形成するステップ;並びに
前記ラミネートガラス物品を熱処理して前記少なくとも1つのガラスクラッド層をセラミック化し、ガラスセラミック組成物を形成し、それにより、前記ガラスクラッド層の熱膨張係数を20×10 ‐7 /℃以上及び70×10 ‐7 /℃以下、かつ前記コア熱膨張係数CTE 未満であるセラミック化後の熱膨張係数CTE AC に低減するステップであって、|CTE -CTE AC |が、20×10 -7 /℃以上である、ステップ
を含み、
前記ガラスセラミック組成物が、
68モル%~75モル%のSiO
7モル%~10モル%のAl
7モル%15モル%のアルカリ酸化物ROであって、前記アルカリ酸化物ROはLiO及びNaOを含む、アルカリ酸化物RO;
0モル%~5モル%のアルカリ土類酸化物ROであって、前記アルカリ土類酸化物ROはMgOを含む、アルカリ土類酸化物RO;
を含み、
1未満の、比Al(モル%)/(RO(モル%)+RO(モル%));
LiSiの主要な結晶相;並びに
35kP(3.5kPa・s)超の液相粘度
を備え、
iO、ZrO、P及びこれらの組み合わせからなる群から選択された核形成剤を含み、比(SiO(モル%)+Al(モル%)+LiO(モル%)+KO(モル%)+NaO(モル%))/(TiO(モル%)+P(モル%)+ZrO(モル%))は、26超である
方法。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、2014年10月30日出願の米国特許出願第62/072673号に対する優先権を主張するものであり、上記特許出願の内容は参照によってその全体が本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本明細書は一般に、ガラスセラミック組成物、及びガラスセラミック組成物を組み込んだラミネートガラス物品に関する。
【背景技術】
【0003】
カバーガラス、ガラス背面等のガラス物品は、LCD及びLEDディスプレイ、コンピュータモニタ、現金自動預け払い機(ATM)等の、消費者向け及び市販両方の電子デバイスにおいて使用される。これらのガラス物品の一部は、「タッチ」機能性を含んでよく、これは、ユーザの指及び/又はスタイラスデバイスを含む様々な物体でガラス物品による接触を必要とし、従って上記ガラスは、破損することなく通常の接触に耐えるために十分に堅牢でなければならない。更にこのようなガラス物品は、携帯電話、パーソナルメディアプレーヤ及びタブレットコンピュータ等の携帯型電子デバイスに組み込まれる場合がある。これらのデバイスに組み込まれたガラス物品は、関連するデバイスの輸送及び/又は使用中に損傷を受けやすい場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、電子デバイスに使用されるガラス物品は、実際の使用による日常的な「タッチ」接触だけでなく、デバイスの輸送中に発生し得る偶発的な接触及び衝突に耐えることができるよう、強度の増強を必要とし得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によると、ガラスセラミック組成物は:約60モル%~約75モル%のSiO;約5モル%~約10モル%のAl;約2モル%~約20モル%のアルカリ酸化物RO(上記アルカリ酸化物ROはLiO及びNaOを含む);並びに約0モル%~約5モル%のアルカリ土類酸化物RO(上記アルカリ土類酸化物ROはMgOを含む)を含んでよい。(RO(モル%)+RO(モル%))の合計に対するAl(モル%)の比は、上記ガラスセラミック組成物において1未満であってよい。上記ガラスセラミック組成物の主要な結晶質相は、LiSiであってよい。上記ガラスセラミック組成物の液相粘度は、35kP(3.5kPa・s)超であってよい。
【0006】
別の実施形態では、ラミネートガラス物品は、コア熱膨張係数CTEを有するガラスコア層を含んでよい。少なくとも1つのガラスクラッド層を、上記ガラスコア層に直接融着してよい。上記少なくとも1つのガラスクラッド層は:約60モル%~約75モル%のSiO;約5モル%~約10モル%のAl;約2モル%~約20モル%のアルカリ酸化物RO(上記アルカリ酸化物ROはLiO及びNaOを含む);並びに約0モル%~約5モル%のアルカリ土類酸化物RO(上記アルカリ土類酸化物ROはMgOを含む)を含んでよい。上記ガラスクラッド層中において、(RO(モル%)+RO(モル%))の合計に対するAl(モル%)の比は、1未満であってよい。上記少なくとも1つのガラスクラッド層の主要な結晶質相は、LiSiであってよい。上記少なくとも1つのガラスクラッド層は、20×10‐7/℃以上及び約70×10‐7/℃以下であり、かつ上記コア熱膨張係数CTE未満である、クラッド熱膨張係数CTECLを有してよい。
【0007】
本明細書に記載のガラスセラミック組成物の更なる特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、またその一部は、当業者には該記述から容易に明らかとなるか、又は以下の「発明を実施するための形態」、請求項及び添付の図面を含む本出願に記載の実施形態を実施することによって認識される。
【0008】
上述の「発明の概要」及び以下の「発明を実施するための形態」はいずれも、様々な実施形態について記載しており、また請求対象の主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、上記様々な実施形態の更なる理解を提供するために含まれるものであり、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。これらの図面は、本明細書に記載の上記様々な実施形態を図示し、本記載と併せて、請求対象の主題の原理及び動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本明細書に図示及び記載される1つ又は複数の実施形態によるラミネートガラス物品の断面の概略図
図2】本明細書に図示及び記載される1つ又は複数の実施形態によるラミネートガラス物品を形成するための装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0010】
これより、ガラスセラミック組成物及び上記ガラスセラミック組成物から形成されるラミネートガラス物品の様々な実施形態について、詳細に言及する。可能な場合は常に、同一の又は同様の部分を指すために、複数の図面全体を通して同一の参照番号を用いる。一実施形態によると、ガラスセラミック組成物は:約60モル%~約75モル%のSiO;約5モル%~約10モル%のAl;約2モル%~約20モル%のアルカリ酸化物RO(上記アルカリ酸化物ROはLiO及びNaOを含む);並びに約0モル%~約5モル%のアルカリ土類酸化物RO(上記アルカリ土類酸化物ROはMgOを含む)を含んでよい。(RO(モル%)+RO(モル%))の合計に対するAl(モル%)の比は、上記ガラスセラミック組成物において1未満であってよい。上記ガラスセラミック組成物の主要な結晶質相は、LiSiであってよい。上記ガラスセラミック組成物の液相粘度は、35kP(3.5kPa・s)超であってよい。ここで、ガラスセラミック組成物及び上記ガラスセラミック組成物を組み込んだラミネートガラス物品の様々な実施形態について、添付の図面を具体的に参照して更に詳細に記載する。
【0011】
本明細書において使用される場合、用語「液相粘度(liquidus viscosity)」は、上記ガラスセラミック組成物の、液相線温度における剪断粘度を指す。
【0012】
本明細書において使用される場合、用語「CTE」は、約20℃~約300℃の温度範囲にわたって平均された、ガラス又はガラスセラミック組成物の熱膨張係数を指す。
【0013】
用語「実質的に…を含まない(substantially free)」は、ガラス又はガラスセラミック組成物中にある特定の酸化物成分が存在しないことを説明するために使用される場合、上記成分が、上記ガラス又はガラスセラミック組成物中に、0.1モル%未満という微量で汚染物質として存在することを意味する。
【0014】
本明細書に記載のガラスセラミック組成物の実施形態において、構成成分(例えばSiO、Al、NaO等)の濃度は、そうでないことが指定されていない限り、酸化物ベースのモルパーセント(モル%)で与えられる。
【0015】
本明細書に記載のガラスセラミック組成物は、上記ガラスセラミック組成物を、フュージョンダウンドロープロセス及び/又はフュージョン積層プロセス等のフュージョン形成プロセスと共に使用するために特によく適したものとする、液相粘度等の特性を有する。これらの特性は、上記ガラスの具体的な組成に帰することができる。
【0016】
本明細書で更に詳細に記載するように、ラミネートガラス物品は、1つ又は複数のガラスクラッド層を1つのガラスコア層に融着させることによって形成してよい。上記ラミネートガラス物品の強化が望まれる場合、上記1つ又は複数のガラスクラッド層及び上記ガラスコア層は、異なる熱膨張係数(CTE)を有してよく、これにより、冷却すると、上記1つ又は複数のガラスクラッド層内に圧縮応力が発現する。
【0017】
ラミネートガラスの連続的なリボンが得られるフュージョン積層プロセスを含む、様々なプロセスを、ラミネートガラス物品を製造するために利用できる。複数の個別のラミネートガラス物品を、他のデバイスに組み込むために、上記ラミネートガラスの連続的なリボンから単体化してよい。この単体化の前に、上記ラミネートガラスの連続的なリボンの上記1つ又は複数のクラッドガラス層に圧縮応力が発現した場合、上記単体化プロセスは、圧縮応力の存在によってラミネートガラスの強度が上昇するため、困難になり得、これは、上記ラミネートガラスの連続的なリボン及び/又は上記個別のラミネートガラス物品に対する望ましくない損傷をもたらす可能性がある。
【0018】
しかしながら、圧縮応力の発現のタイミングは、少なくとも上記クラッドガラス層を形成するためにガラスセラミック組成物を利用することによって制御できる。ガラスセラミック組成物は、第1のセラミック化前熱膨張係数(CTEPC)及び第2のセラミック化後熱膨張係数(CTEAC)を有してよく、これにより、圧縮応力の導入のタイミングを、セラミック化プロセスに基づいて制御することが可能となる。例えば上記ガラスクラッド層は、上記ガラスコア層の熱膨張係数とおおよそ同一のセラミック化前CTEPCを有するガラスセラミック組成物から形成してよく、これにより、上記ラミネートガラスのリボンは初め、上記1つ又は複数のガラスクラッド層と上記ガラスクラッド層との間の熱膨張係数の不適合により、上記1つ又は複数のガラスクラッド層に圧縮応力を導入することなく形成できる。これにより、上記リボン又は上記個別のラミネートガラス物品を損傷することなく、上記個別のラミネートガラス物品を、上記ラミネートガラスの連続的なリボンから容易に単体化できる。その後、上記個別のラミネートガラス物品をセラミック化(即ち熱処理)して、上記ガラスクラッド層内にセラミック結晶相を形成してよく、これによって上記ガラスクラッド層の熱膨張係数をCTEACまで低下させ、これは、上記ガラスクラッド層の表面に圧縮応力を発現させる。本明細書に記載のガラスセラミック組成物は、セラミック化後CTEACより高いセラミック化前CTEPCを有し、従って、強化ラミネートガラス物品のガラスクラッド層として使用するのによく適している。
【0019】
本明細書に記載のガラスセラミック組成物の実施形態では、SiOは組成物の最大の構成要素であり、従ってSiOは、上記ガラスセラミック組成物から形成されるガラスネットワークの一次構成要素である。純粋なSiOは、比較的低いCTEを有する。しかしながら、純粋なSiOは、極めて高い融点を有する。従って、本明細書に記載のガラスセラミック組成物中のSiOの濃度が高過ぎる場合、SiOの濃度がより高いと、ガラスの溶融の困難さが増し、これがガラスの成形性に悪影響を及ぼすため、上記ガラスセラミック組成物の成形性が低下し得る。
【0020】
本明細書に記載の実施形態では、上記ガラスセラミック組成物のフュージョン形成を容易にするために、上記ガラスセラミック組成物は一般に、SiOを約60モル%以上及び約75モル%以下の濃度で含む。いくつかの実施形態では、上記ガラスセラミック組成物中のSiOの濃度は、約68モル%以上及び約75モル%以下である。更に他の実施形態では、上記ガラスセラミック組成物中のSiOの量は、約70モル%以上及び約74モル%以下である。いくつかの他の実施形態では、上記ガラスセラミック組成物は、SiOを約71モル%~約73モル%の濃度で含む。
【0021】
本明細書に記載のガラスセラミック組成物はまた、Alも含む。Alは、SiOと同様にガラスネットワーク形成剤として機能する。SiOと同様、Alは、上記ガラスセラミック組成物から形成されるガラス溶融物中での四面体配位により、上記ガラスセラミック組成物の粘度を上昇させる。しかしながら、Alの濃度が、SiOの濃度並びにアルカリ及びアルカリ土類酸化物の濃度と平衡させると、Alはガラス溶融物の液相線温度を低下させることができ、これによってガラス溶融物の液相粘度が高まり、上記ガラスセラミック組成物の、フュージョン形成プロセス等の特定の形成プロセスに対する適合性が改善される。
【0022】
本明細書に記載の実施形態では、上記ガラスセラミック組成物中のAlの濃度は、約5モル%以上及び約12モル%以下である。いくつかの実施形態では、上記ガラスセラミック組成物中のAlの濃度は、約5モル%以上及び約10モル%以下であってよい。いくつかの他の実施形態では、上記ガラスセラミック組成物中のAlの濃度は、約6モル%以上及び約10モル%以下であってよい。いくつかの他の実施形態では、上記ガラスセラミック組成物中のAlの濃度は、約7モル%以上及び約10モル%以下であってよい。
【0023】
本明細書に記載のガラスセラミック組成物はまた、アルカリ酸化物ROも含み、ここでRは、Li、Na、K、Rb、Cs又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、I族の金属のうちの少なくとも1つである。本明細書に記載の実施形態では、アルカリ酸化物は、ガラスの融点及び液相線温度を低下させ、これによって上記ガラスセラミック組成物の成形性を改善する。しかしながら、ガラス中に含まれる他の酸化物に対して、アルカリ酸化物は、上記ガラスセラミック組成物のCTEを上昇させながら、同時にイオン交換性を改善する。一般に、KOでNaOを置換すると、ガラスのCTEは一般に上昇するが、LiOでNaOを置換するとCTEは低下する。従って、ガラス中に存在するアルカリイオンが小さいほど、CTEの上昇が小さくなる。
【0024】
アルカリ酸化物ROの添加は、ガラス中での比較的高い移動性により、上記ガラスセラミック組成物を強化するイオン交換も促進する。例えば、上記ガラスセラミック組成物から形成されたガラス物品中の比較的小さいイオン、例えばLiイオン及びNaイオンは、溶融塩浴中の比較的大きいイオン、例えばKイオンに交換することによって、上記ガラスセラミック組成物から形成されたガラス物品の表面に圧縮応力を生成できる。
【0025】
更に、上記ガラスセラミック組成物に特定のアルカリ酸化物LiOを添加すると、初期形成後のセラミック化の際(即ち熱処理の際)の、ガラスネットワーク中でのLiSi(リチウムジシリケート)の形成が促進される。LiSiは、本明細書に記載の上記ガラスセラミック組成物の一次結晶相である。上記ガラスセラミック組成物中でのLiSiの形成は、形成後すぐの状態のガラスセラミック組成物の熱膨張係数を低下させ、これにより上記ガラスセラミック組成物は、強化が望まれる場合のラミネートガラス物品のクラッドガラス層として、特に有用となる。
【0026】
本明細書に記載の実施形態では、アルカリ酸化物ROは、LiO又はNaOのうちの少なくとも1つを含み、またいくつかの実施形態では、KOを含んでよい。本明細書に記載の実施形態では、NaOは上記ガラスセラミック組成物中に、約1モル%以上及び約10モル%以下の濃度、又は更に約2モル%以上及び約9モル%以下の濃度で存在してよい。いくつかの実施形態では、NaOは上記ガラスセラミック組成物中に、約3モル%以上及び約9モル%以下の濃度、又は更に約4モル%以上及び約8モル%以下の濃度で存在してよい。いくつかの実施形態では、NaOは上記ガラスセラミック組成物中に、約5モル%以上及び約8モル%以下の濃度で存在してよい。
【0027】
LiOは上記ガラスセラミック組成物中に、約1モル%以上及び約10モル%以下の濃度、又は更に約2モル%以上及び約8モル%以下の濃度で存在してよい。いくつかの実施形態では、LiOは上記ガラスセラミック組成物中に、約3モル%以上及び約7モル%以下の濃度、又は更に約4モル%以上及び約6モル%以下の濃度で存在してよい。
【0028】
Oは上記ガラスセラミック組成物中に、約0モル%以上及び約10モル%以下の濃度、又は更に約0.5モル%以上及び約8モル%以下の濃度で存在してよい。いくつかの実施形態では、KOは上記ガラスセラミック組成物中に、約1モル%以上及び約7モル%以下の濃度、又は更に約1モル%以上及び約5モル%以下の濃度で存在してよい。いくつかの他の実施形態では、KOは上記ガラスセラミック組成物中に、約2モル%以上及び約4モル%以下の濃度で存在してよい。更に他の実施形態では、上記ガラスセラミック組成物はKOを実質的に含まなくてよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラスセラミック組成物は更に、アルカリ土類酸化物ROを含んでよく、ここでRは、Mg、Ca、Ba及びSrのうちの1つ又は複数を含むがこれらに限定されない、アルカリ土類金属である。アルカリ土類酸化物ROは、上記ガラスセラミック組成物の溶融挙動を改善するものの、上記組成物の平均熱膨張係数を上昇させる場合がある。上記アルカリ土類酸化物は、上記ガラスセラミック組成物に含有されるアルカリ酸化物ほどは、上記ガラスセラミック組成物の熱膨張係数を上昇させないものの、上記アルカリ土類酸化物は、ガラス中のアルカリイオンの移動性を低下させ、これにより上記ガラスセラミック組成物のイオン交換性能を低下させる。従って、本明細書に記載の実施形態では、アルカリ土類酸化物ROの添加は制限される。実際には、いくつかの実施形態では、上記ガラスセラミック組成物はアルカリ土類酸化物を実質的に含まず、他の実施形態では、アルカリ土類酸化物の合計濃度は約5モル%以下である。即ち本明細書に記載の実施形態では、上記ガラスセラミック組成物中のアルカリ土類酸化物の濃度は、0モル%以上及び約5モル%以下であってよい。
【0030】
特定のアルカリ土類酸化物MgOは、アルカリ拡散性に対する悪影響を最小化し、従って上記ガラスセラミック組成物のイオン交換性能を最小限しか低下させないことが分かった。更にMgOは、例えばCaO及びBaOといった他のアルカリ土類酸化物ほどは、上記ガラスセラミック組成物の平均CTEを上昇させない。従って、アルカリ土類酸化物ROを含む上記ガラスセラミック組成物のいくつかの実施形態では、上記アルカリ土類酸化物はMgOを含む。これらの実施形態では、MgOは上記ガラスセラミック組成物中に、0モル%以上及び約5モル%以下の量で存在してよい。これらの実施形態のうちのいくつかにおいては、MgOは上記ガラスセラミック組成物中に、約4モル%以下、例えば約3モル%以下又は更に約2モル%以下の量で存在してよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、上記ガラスセラミック組成物は、アルカリ土類酸化物ROを実質的に含まなくてよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、TiOが上記ガラスセラミック組成物に含まれていてよい。TiOは、核形成剤として作用し、セラミック化後のLiSi一次結晶相の形成を補助する。更に、TiOを上記ガラスセラミック組成物に添加することにより、セラミック化後に二次結晶相、具体的にはルチル(TiO)の核形成及び形成ももたらされる。本明細書に記載の実施形態では、TiOは上記ガラスセラミック組成物中に、0モル%以上及び4モル%以下の濃度で存在してよい。いくつかの実施形態では、上記ガラスセラミック組成物中のTiOの濃度は、1モル%以上及び4モル%以下であってよい。いくつかの実施形態では、上記ガラスセラミック組成物中のTiOの濃度は、1モル%以上及び3モル%以下であってよい。いくつかの他の実施形態では、上記ガラスセラミック組成物中のTiOの濃度は、2モル%以上及び3モル%以下であってよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、ZrOが上記ガラスセラミック組成物に含まれていてよい。TiOと同様、ZrOは、核形成剤として作用し、セラミック化後のLiSi一次結晶相の形成を補助する。本明細書に記載の実施形態では、ZrOは上記ガラスセラミック組成物中に、0モル%以上及び4モル%以下の濃度で存在してよい。いくつかの実施形態では、上記ガラスセラミック組成物中のZrOの濃度は、1モル%以上及び3モル%以下であってよい。いくつかの他の実施形態では、上記ガラスセラミック組成物中のZrOの濃度は、2モル%以上及び3モル%以下であってよい。
【0034】
任意に、上記ガラスセラミック組成物は更にPを含んでよい。TiO及びZrOと同様、Pは、核形成剤として作用し、セラミック化後のLiSi一次結晶相の形成を補助する。上記ガラスセラミック組成物がPを含有する実施形態では、Pは上記ガラスセラミック組成物中に、0モル%以上及び3モル%以下の濃度で存在してよい。いくつかの実施形態では、Pは上記ガラスセラミック組成物中に、0.5モル%以上及び1.5モル%以下の濃度で存在してよい。
【0035】
本明細書に記載のガラスセラミック組成物の実施形態では、上記組成物中に単一の核形成剤(即ちTiO、ZrO、Pのうちの1つ)、又は2つ以上の核形成剤の組み合わせ(即ちTiO、ZrO、Pのうちの2つ以上の組み合わせ)が含まれていてよい。
【0036】
本明細書に記載のガラスセラミック組成物は任意に、1つ又は複数の清澄剤を含んでよい。上記清澄剤は、例えばSnOを含んでよい。上記清澄剤は、上記ガラスセラミック組成物中に、約0モル%以上及び約1.0モル%以下の量で存在してよい。例示的実施形態では、上記清澄剤は、SnOである。SnOは、上記ガラスセラミック組成物中に、約0モル%以上及び約0.5モル%以下の量で存在してよい。
【0037】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、上記ガラスセラミック組成物は、重金属及び重金属を含有する化合物を実質的に含まない。本明細書において使用される場合、用語「重金属(heavymetal)」は、Ba、As、Sb、Cd、及びPbを指す。
【0038】
本明細書に記載のガラスセラミック組成物の実施形態では、アルカリ酸化物RO及びアルカリ土類酸化物の濃度(モル%)の合計に対するAlの濃度(モル%)の比(即ちAl(モル%)/(RO(モル%)+RO(モル%)))は、1未満である。例えばいくつかの実施形態では、Al(モル%)/(RO(モル%)+RO(モル%))は、1未満及び0.5以上であってよい。これらの実施形態のうちのいくつかでは、Al(モル%)/(RO(モル%)+RO(モル%))は、0.9以下、例えば0.8以下であってよい。いくつかの他の実施形態では、Al(モル%)/(RO(モル%)+RO(モル%))は、0.5以上及び0.75以下、例えば0.7以下であってよい。比Al(モル%)/(RO(モル%)+RO(モル%)が1未満及び0.5以上となるように、上記ガラスセラミック組成物中の構成成分の濃度を維持すれば、液相線温度及び液相粘度を、フュージョン形成に好適な範囲内に維持することが補助されるという仮説が立てられる。
【0039】
本明細書に記載のガラスセラミック組成物のいくつかの実施形態では、Al(モル%)に対するSiO(モル%)の比は、7超、例えば7超及び10以下である。これらの実施形態のうちのいくつかでは、Al(モル%)に対するSiO(モル%)の比は、7.1超、又は7.2超でさえある。いくつかの他の実施形態では、Al(モル%)に対するSiO(モル%)の比は、7.3超である。
【0040】
本明細書に記載のガラスセラミック組成物のいくつかの実施形態では、Al(モル%)の濃度に対する、LiOの濃度(モル%)とSiOの濃度(モル%)の2倍との合計の比(即ち(LiO(モル%)+2*SiO(モル%))/Al(モル%))は、13超、例えば13超及び22以下である。これらの実施形態のうちのいくつかでは、比(LiO(モル%)+2*SiO(モル%))/Al(モル%)は、14超、又は15超及び22以下でさえある。比(LiO(モル%)+2*SiO(モル%))/Al(モル%)が13超となるように、上記ガラスセラミック組成物中の構成成分の濃度を維持すれば、一次結晶相LiSiの形成が補助されるという仮説が立てられる。しかしながら、Alの濃度が高過ぎる(即ち比(LiO(モル%)+2*SiO(モル%))/Al(モル%))が低過ぎる)場合一次結晶相LiSiの形成が少なくなり、代わりに、ユークリプタイト、ベータ石英及び/又はLiAlSiOの固溶体といった望ましい相の形成が少なくなる。
【0041】
本明細書に記載のガラスセラミック組成物のいくつかの実施形態では、Al(モル%)の濃度に対する、アルカリ酸化物ROの濃度(モル%)とSiOの濃度(モル%)の2倍との合計の比(即ち(RO(モル%)+2*SiO(モル%))/Al(モル%))は、8.5超である。例えばいくつかの実施形態では、比(RO(モル%)+2*SiO(モル%))/Al(モル%)は、8.5超及び9.5以下である。比(RO(モル%)+2*SiO(モル%))/Al(モル%)が8.5超となるように、上記ガラスセラミック組成物中の構成成分の濃度を維持すれば、比(LiO(モル%)+2*SiO(モル%))/Al(モル%)に関して上述したように、一次結晶相LiSiの形成が補助されるという仮説が立てられる。しかしながら、NaO及びKOの濃度がAlに対して上昇すると、より多くのLiSiが生成され、ガラスの熱膨張係数が、所与のセラミック化スケジュールに対して低下することが分かった。
【0042】
本明細書に記載のガラスセラミック組成物のいくつかの実施形態では、核形成剤の濃度の合計に対する、SiOの濃度(モル%)、Alの濃度(モル%)、LiOの濃度(モル%)、KOの濃度(モル%)、及びNaOの濃度(モル%)の合計の比(即ち(SiO(モル%)+Al(モル%)+LiO(モル%)+KO(モル%)+NaO(モル%))/(TiO(モル%)+P(モル%)+ZrO(モル%)))は、26超、例えば26超及び約31以下である。これらの実施形態のうちのいくつかでは、上記比は約27以上、約28以上、又は約29以上でさえあってよい。比(SiO(モル%)+Al(モル%)+LiO(モル%)+KO(モル%)+NaO(モル%))/(TiO(モル%)+P(モル%)+ZrO(モル%))を26超に維持すれば、LiSiの核形成が改善されるという仮説が立てられる。即ち、TiO、ZrO及びPはそれぞれ、核形成剤として機能する。核形成剤の濃度が高過ぎる場合、ガラス中で核形成される所望の相、例えばルチル及びジルコンは少なくなる。しかしながら、核形成剤の濃度が低過ぎる場合、ガラスは結晶化しない。
【0043】
本明細書に記載のガラスセラミック組成物は、フュージョン形成(フュージョンダウンドロープロセス及び/又はフュージョン積層プロセスによるもの等)に好適な液相粘度を有する。特に本明細書に記載のガラスセラミック組成物は、約35000Poise(35kPoise)(3.5kPa・s)以上の粘度を有する。いくつかの実施形態では、上記液相粘度は50kPoise(5kPa・s)以上、又は100kPoise(10kPa・s)以上でさえある。
【0044】
本明細書に記載のガラスセラミック組成物は一般に、20℃~300℃の範囲において、65×10‐7/℃以上及び約110×10‐7/℃以下のセラミック化前平均熱膨張係数CTEPC(即ち、ガラス中でのセラミック相の核形成を引き起こすいずれの処理前のCTE)を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラスセラミック組成物は、20℃~300℃の範囲において、約20×10‐7/℃以上及び約70×10‐7/℃以下のセラミック化後平均熱膨張係数CTEACを有する。更に他の実施形態では、上記ガラスセラミック組成物のセラミック化後平均熱膨張係数CTEACは、20℃~300℃の範囲において、約30×10‐7/℃以上及び約70×10‐7/℃であってよい。
【0045】
上述のように、本明細書に記載のガラスセラミック組成物を形成後に処理して、セラミック相の核形成及び成長を誘発してよく、これは、形成後すぐの状態のガラスセラミック組成物の熱膨張係数を低下させる。本明細書に記載の実施形態では、上記ガラスセラミック組成物中でのセラミック相の核形成及び成長を誘発するための処理は、2段階プロセスであり、これは、核形成温度まで加熱するステップと、上記ガラスセラミック組成物をこの核形成温度に、核形成保持時間にわたって保持することによって、1つ又は複数のセラミック相の核形成を開始させるステップとを含む。上記2段階プロセスの第2段階は更に、上記ガラスセラミック組成物を結晶化温度まで加熱するステップと、上記ガラスセラミック組成物をこの温度に、結晶化保持時間にわたって保持することによって、核形成された上記1つ又は複数のセラミック相を結晶化させて成長させるステップとを含む。本明細書に記載の実施形態では、上記核形成温度は約700℃~約750℃であってよく、上記核形成時間は約1時間~約2時間であってよい。本明細書に記載の実施形態では、上記結晶化温度は約750℃~約900℃であってよく、上記結晶化保持時間は約2時間~約24時間であってよい。しかしながら、4時間超(例えば6時間以上、8時間以上、10時間以上、12時間以上、14時間以上、16時間以上、18時間以上、20時間以上、22時間以上、又は更に24時間以上)の上記結晶化保持時間では、4時間以下の結晶化保持時間において生成されるセラミック結晶に比べて、上記結晶化相の開始時の核形成前駆体の個数が同一であるにもかかわらず、セラミック結晶の個数が少なくなり、各セラミック結晶のサイズが大きくなることが分かった。これらの比較的長い結晶化保持時間はまた、これに対応するセラミック化後CTEACの低下をもたらす。従って、本明細書に記載のいくつかの実施形態では、上記ガラスセラミック組成物は、上記結晶化温度において、4時間超の結晶化保持時間にわたって熱処理される。
【0046】
ここで図1を参照すると、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラスセラミック組成物を用いて、図1に断面図が概略的に示されているラミネートガラス物品100等のラミネートガラス物品のガラスクラッド層を形成できる。ラミネートガラス物品100は一般に、ガラスコア層102及び少なくとも1つのガラスクラッド層104aを備える。図1に示すラミネートガラス物品100の実施形態では、上記ラミネートガラス物品は、ガラスコア層102の対向する側部に位置決めされた、第1のガラスクラッド層104a及び第2のガラスクラッド層104bを含む。図1はラミネートガラス物品100を、ラミネートガラスシートとして概略的に示しているが、他の構成及び形成因子も考えられ、かつ可能であることを理解されたい。例えば上記ラミネートガラス物品は、湾曲ガラスシート等の非平面構成を有してよい。あるいは上記ラミネートガラス物品は、ラミネートガラスチューブ、コンテナ等であってよい。
【0047】
図1に示すラミネートガラス物品100の実施形態では、ガラスコア層102は一般に、第1の表面103aと、第1の表面103aに対向する第2の表面103bとを備える。第1のガラスクラッド層104aは、ガラスコア層102の第1の表面103aに融着され、第2のガラスクラッド層104bは、ガラスコア層102の第2の表面103bに融着される。ガラスクラッド層104a、104bは、接着剤、コーティング層等のいずれの追加の非ガラス材料をガラスコア層102とガラスクラッド層104a、104bとの間に配置することなく、ガラスコア層102に融着される。よっていくつかの実施形態では、ガラスクラッド層104a、104bは、ガラスコア層102に直接融着されるか、又は上記ガラスコア層に直接隣接する。いくつかの実施形態では、ラミネートガラス物品100は、上記ガラスコア層と上記1つ又は複数のガラスクラッド層との間に配置された、1つ又は複数の中間層を備える。例えば上記中間層は、(例えば上記ガラスコア及びガラスクラッド層の1つ又は複数の成分を拡散層に拡散させることによって)上記ガラスコア層と上記1つ又は複数のガラスクラッド層との界面に形成された、中間ガラス層及び/又は拡散層を備えてよい。いくつかの実施形態では、上記ラミネートガラス物品は、ガラス‐ガラスラミネート(例えばインシチュ融着多層ガラス‐ガラスラミネート)を備え、直接隣接したガラス層の間の界面は、ガラス‐ガラス界面である。
【0048】
本明細書に記載のラミネートガラス物品の実施形態では、ガラスクラッド層104a、104bのガラスセラミック組成物は初め、ガラスコア層102とガラスクラッド層104a、104bとの間にCTEの一致を生成し、これによりガラスクラッド層104a、104b内には、圧縮応力は、もし存在する場合であってもわずかしか形成されない。例えばガラスクラッド層104a、104bのセラミック化前CTEPCは、ガラスコア層102の熱膨張係数の約20%以内、約15%以内、約10%以内、約5%以内、約2%以内又は約1%以内である。しかしながら、形成後、上記ラミネートガラス物品を更に熱処理することによって上記ガラスクラッド層をセラミック化でき、これによって、ガラスコア層102とガラスクラッド層104a、104bとの間にCTEの不適合が生成される。例えば本明細書に記載の実施形態では、ガラスクラッド層104a、104bは、上述のようなガラスセラミック組成物から形成され、これはラミネートガラス物品の形成後に、ガラスクラッド層104a、104bの平均クラッド熱膨張係数CTECLが、ガラスコア層102のコア熱膨張係数CTE未満であるガラスセラミックの熱膨張係数CTEACとなるように、熱処理可能である。熱処理後の熱膨張係数のこのような差異により、ガラスクラッド層104a、104b中に、イオン交換又は熱強化を用いずに圧縮応力が生成される。
【0049】
例えばいくつかの実施形態では、ガラスコア層102の平均コアCTEは、20℃~300℃の範囲において、約60×10‐7/℃以上であってよい。更に他の実施形態では、上記ガラスコア層のガラスセラミック成分の平均コアCTEは、20℃~300℃の範囲にわたって平均して、約80×10‐7/℃以上であってよい。更に他の実施形態では、上記ガラスコア層のガラスセラミック成分の平均コアCTEは、20℃~300℃の範囲にわたって平均して、約90×10‐7/℃以上であってよい。
【0050】
本明細書に記載の実施形態では、本明細書に記載のラミネートガラス物品100の熱処理後の、ガラスコア層102とガラスクラッド層104a、104bとの間のCTEの差異(即ち|CTE‐CTECL|)は、上記ガラスクラッド層中に圧縮応力を生成するために十分なものである。いくつかの実施形態では、上記ガラスコア層と上記ガラスクラッド層との間のCTEの差異は、約20×10‐7/℃又は30×10‐7/℃以上でさえある。いくつかの他の実施形態では、上記ガラスコア層と上記ガラスクラッド層との間のCTEの差異は、約40×10‐7/℃又は50×10‐7/℃以上でさえある。更に他の実施形態では、上記ガラスコア層と上記ガラスクラッド層との間のCTEの差異は、約60×10‐7/℃、又は65×10‐7/℃以上でさえある。
【0051】
本明細書に記載の実施形態では、上記ガラスコア層は、以下の表1に列挙されている例示的なガラスコア組成物から形成してよい。しかしながら、他のガラスコア組成物も考えられ、かつ可能であることを理解されたい。
【0052】
【表1】
【0053】
本明細書に記載のラミネートガラス物品を製造するために、多用なプロセスを用いてよく、これはスロットドロープロセス、積層フロートプロセス又はフュージョン積層プロセスを含むがこれらに限定されない。これらの積層プロセスはそれぞれ:第1の溶融ガラス組成物を流すステップ;第2の溶融ガラスセラミック組成物を流すステップ;及び上記第1の溶融ガラス組成物と上記第2の溶融ガラスセラミック組成物とを、各組成物のガラス転移温度より高い温度で接触させることによって、これら2つの組成物間の界面を形成し、ガラスが冷却されて固化するに従って上記組成物を上記界面において一体に融着させるステップを含む。
【0054】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載のラミネートガラス物品100は、米国特許第4214886号明細書(これは参照によって本出願に援用される)に記載のプロセスのようなフュージョン積層プロセスによって形成できる。図2を参照すると、例えば、ラミネートガラス物品を形成するための積層フュージョンプロセス装置200は、上側流出分分配器又はアイソパイプ202を含み、これは下側流出分分配器又はアイソパイプ204を覆うように位置決めされる。この上側流出分分配器202はトラフ210を含み、溶融ガラスセラミッククラッド組成物206(例えば本明細書に記載のガラスセラミック組成物)が溶融器(図示せず)からこのトラフ210内へと供給される。同様に、下側流出分分配器204はトラフ212を含み、溶融ガラスコア組成物208が溶融器(図示せず)からこのトラフ212内へと供給される。
【0055】
溶融ガラスコア組成物208がトラフ212を充填すると、溶融ガラスコア組成物208はトラフ212からあふれ、下側流出分分配器204の外側形成表面216、218全体にわたって流れる。下側流出分分配器204の外側形成表面216、218は、基部220に集束する。従って、外側形成表面216、218全体にわたって流れる溶融ガラスコア組成物208は、下側流出分分配器204の基部220において再結合し、ラミネートガラス物品のガラスコア層102を形成する。
【0056】
同時に、溶融ガラスセラミッククラッド組成物206は、上側流出分分配器202に形成されたトラフ210からあふれ、上側流出分分配器202の外側形成表面222、224全体にわたって流れる。溶融ガラスセラミッククラッド組成物206は、上側流出分分配器202によって外向きに偏向され、これにより溶融ガラスセラミッククラッド組成物206は、下側流出分分配器204の周りを流れて、上記下側流出分分配器の外側形成表面216、218全体にわたって流れる溶融ガラスコア組成物208と接触し、上記溶融ガラスコア組成物に融着して、ガラスコア層102の周りにガラスクラッド層104a、104bを形成する。
【0057】
図2は、シート又はリボン等の平面状ラミネートガラス物品を形成するための特定の装置を概略的に示しているが、他のジオメトリ的構成が可能であることを理解されたい。例として、例えば米国特許第4023953号明細書に記載の装置及び方法を用いて、円筒形のラミネートガラス物品を形成できる。
【0058】
本明細書に記載の実施形態では、溶融ガラスコア組成物208は一般に、溶融ガラスセラミッククラッド組成物206の平均クラッド熱膨張係数CTECLと同様の平均コア熱膨張係数CTEを有する。この実施形態では、ガラスコア層102及びガラスクラッド層104a、104bが冷却されて固化した後、得られたラミネートガラス物品を、例えば熱処理等による更なる加工に供して、少なくともガラスクラッド層104a、104bをセラミック化してよく、これは上記ガラスクラッド層のCTEを変化(即ち低下)させて、上記ラミネートガラス物品のガラスクラッド層104a、104bに圧縮応力が形成されるという結果をもたらす。例えばガラスクラッド層104a、104bが、本明細書に記載のガラスセラミック組成物から形成される場合、得られたラミネートガラス物品を熱処理することにより、ガラスクラッド層104a、104bの熱膨張係数CTECLがCTEACまで低下し、これによってガラスコア層102に関連するクラッド熱膨張係数CTECLが低下する。得られた熱膨張係数の差異は、ガラスクラッド層104a、104b内に圧縮応力を発現させる。
【実施例
【0059】
本明細書に記載の実施形態を、以下の実施例によって更に明らかにする。
【0060】
組成及び熱処理スケジュールの両方の、セラミック化前CTEPC及びセラミック化後CTEACに対する影響を決定するために、以下の表2に列挙した組成を有する一連のガラス試料を作製した。各組成の試料を最初に、3Dデジタル画像相関を用いて測定して、熱膨張係数を決定した。3Dデジタル画像相関は、画像の変化の3D測定のために追跡及び画像登録技法を採用する、光学立体撮像方法である。この技法は、非接触全面変位センサを利用し、標本表面上のランダムパターンの、初期パターンに対する3D変位の視認に依存する。上記ランダムパターンは、試料表面上に高温塗料スペックルパターンをエアブラシで塗布することによって調製される。視野(field of view:FOV)はファセットフィールドによって記述され、このファセットフィールドでは、ファセットは上記フィールドを満たす正方形である。上記正方形は、数十ピクセルの寸法である。試料の画像を、高温への曝露前及び曝露中に撮影し、その後これらを比較して、熱膨張挙動を決定する。表1に示すように試料のセラミック化前CTEPC値は、約66×10‐7/℃~約72×10‐7/℃であった。
【0061】
その後、表2に列挙された各ガラス組成の試料を、表2において同定されている様々な熱処理スケジュールに従ってセラミック化し、これらの試料に関してセラミック化後CTEAC値を測定した。具体的には、表2のCTEACデータは、試料が供された熱処理スケジュールに従って提示されており、上記熱処理スケジュールは、慣習的な記載方法(A℃,B H)及び(Y℃,Z H)を用いて提示されている。ここでAは核形成温度であり、Bは核形成保持時間であり、Yは結晶化温度であり、Zは結晶化保持時間である。従って、(700℃,2H)(750℃,24H)の熱処理は、核形成温度700℃、及び形成保持時間2時間、及び結晶化温度750℃、及び結晶化保持時間24時間に対応する。
【0062】
【表2-1】
【0063】
【表2-2】
【0064】
表2に示すように、ガラスセラミック試料の熱処理は一般に、各試料の熱膨張係数をセラミック化前CTEPCに対して低下させる。セラミック化後CTEACは、ガラスセラミック試料中の結晶質相のタイプ、量及び分布に依存する。実施例A~Gのガラスセラミック試料では、熱処理後に存在する一次結晶質相はLiSiであり、ルチル(TiO)の二次相を伴っていた。これらの結晶質相両方の量は、処理条件の時間及び温度、並びにガラスセラミックの組成に依存していた。特に、KOの濃度に対してNaOの濃度が高い場合、LiSi相の核形成及び結晶化が多くなり、これはセラミック化後CTEACのより大きな低下をもたらすことが決定された。
【0065】
更に、同一のガラスセラミック組成物から形成され、所与の核形成温度及び核形成保持時間で熱処理され、その後同一の結晶化温度で、ただし異なる結晶化保持時間にわたって熱処理された2つの試料に関して、より長い結晶化保持時間にわたって熱処理された試料は、より短い結晶化保持時間にわたって熱処理された試料に比べて、両試料において熱処理の初期核形成相後の核形成前駆体の個数がおおよそ同一であるにもかかわらず、実際には結晶化後のセラミック結晶の数が少ない(ただしサイズが大きい)ことも観察された。
【0066】
ここで、本明細書に記載のガラスセラミック組成物は、セラミック化前CTEPC未満のセラミック化後CTEACを有し、従って上記ガラスセラミック組成物は、強化ラミネートガラス物品のガラスクラッド層としての使用によく適していることを理解されたい。
【0067】
上記ガラスセラミック組成物を用いてラミネートガラス物品を製造すると、上記ラミネートガラス物品は、例えば:例えばLCD、LED、OLED及び量子ドットディスプレイ、コンピュータモニタ、並びに現金自動預け払い機(ATM)等の消費者向け若しくは市販の電子デバイスのカバーガラス若しくはガラス背面用途;例えば携帯電話、パーソナルメディアプレーヤ及びタブレットコンピュータを含む携帯型電子デバイス用のタッチスクリーン又はタッチセンサ用途;例えば半導体ウエハを含む集積回路用途;光電池用途;建築用ガラス用途;自動車若しくは車両ガラス用途;市販若しくは家庭用電化製品用途;照明若しくは標識(例えば静的若しくは動的標識)用途;又は例えば鉄道及び航空用途を含む輸送用途を含む、多用な用途に使用できる。
【0068】
本明細書に記載の実施形態に対して、請求対象の主題の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形を実施できることは、当業者には明らかであろう。よって本明細書は、本明細書に記載の様々な実施形態の修正例及び変形例を、これらの修正例及び変形例が添付の請求項及びその均等物の範囲内にある限りにおいて、包含することが意図されている。
【0069】
以下、本発明の実施形態を項分け記載する。
【0070】
実施形態1
約60モル%~約75モル%のSiO
約5モル%~約10モル%のAl
約2モル%~約20モル%のアルカリ酸化物ROであって、上記アルカリ酸化物ROはLiO及びNaOを含む、アルカリ酸化物RO;
0モル%~約5モル%のアルカリ土類酸化物ROであって、上記アルカリ土類酸化物ROはMgOを含む、アルカリ土類酸化物RO;
1未満の、比Al(モル%)/(RO(モル%)+RO(モル%));
LiSiの主要な結晶相;並びに
35kP(3.5kPa・s)超の液相粘度
を備える、ガラスセラミック組成物。
【0071】
実施形態2
上記アルカリ酸化物ROは、約1モル%~約10モル%のLiOを含む、実施形態1に記載のガラスセラミック組成物。
【0072】
実施形態3
上記アルカリ酸化物ROは、約1モル%~約10モル%のNaOを含む、実施形態1又は2に記載のガラスセラミック組成物。
【0073】
実施形態4
上記アルカリ土類酸化物ROは、0モル%超及び約5モル%までのMgOを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載のガラスセラミック組成物。
【0074】
実施形態5
Al(モル%)に対するSiO(モル%)の比は7超である、実施形態1~4のいずれか1つに記載のガラスセラミック組成物。
【0075】
実施形態6
比(LiO(モル%)+2*SiO(モル%))/Al(モル%)は13超である、実施形態1~5のいずれか1つに記載のガラスセラミック組成物。
【0076】
実施形態7
比(RO(モル%)+2*SiO(モル%))/Al(モル%)は8.5超である、実施形態1~6のいずれか1つに記載のガラスセラミック組成物。
【0077】
実施形態8
約1モル%~約4モル%のTiOを更に含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のガラスセラミック組成物。
【0078】
実施形態9
比(SiO(モル%)+Al(モル%)+LiO(モル%)+KO(モル%)+NaO(モル%))/(TiO(モル%)+P(モル%)+ZrO(モル%))は26超である、実施形態8に記載のガラスセラミック組成物。
【0079】
実施形態10
上記比(SiO(モル%)+Al(モル%)+LiO(モル%)+KO(モル%)+NaO(モル%))/(TiO(モル%)+P(モル%)+ZrO(モル%))は31超である、実施形態8又は9に記載のガラスセラミック組成物。
【0080】
実施形態11
Oを約10モル%までの量で更に含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載のガラスセラミック組成物。
【0081】
実施形態12
ZrOを約4モル%までの量で更に含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載のガラスセラミック組成物。
【0082】
実施形態13
上記液相粘度は約100kP(約10kPa・s)以上である、実施形態1~12のいずれか1つに記載のガラスセラミック組成物。
【0083】
実施形態14
上記ガラスセラミック組成物は、約65×10‐7/℃以上及び約110×10‐7/℃以下のセラミック化前CTEPCを有する、実施形態1~13のいずれか1つに記載のガラスセラミック組成物。
【0084】
実施形態15
上記ガラスセラミック組成物は、20×10‐7/℃以上及び約70×10‐7/℃以下のセラミック化後CTEACを有する、実施形態1~14のいずれか1つに記載のガラスセラミック組成物。
【0085】
実施形態16
コア熱膨張係数CTEを有するガラスコア層;
上記ガラスコア層に直接融着された、少なくとも1つのガラスクラッド層であって、上記少なくとも1つのガラスクラッド層は:
約60モル%~約75モル%のSiO
約5モル%~約10モル%Al
約2モル%~約20モル%のアルカリ酸化物ROであって、上記アルカリ酸化物ROはLiO及びNaOを含む、アルカリ酸化物RO;
0モル%~約5モル%のアルカリ土類酸化物ROであって、上記アルカリ土類酸化物ROはMgOからなり、比Al(モル%)/(RO(モル%)+RO(モル%))は1未満である、アルカリ土類酸化物RO;
上記少なくとも1つのガラスクラッド層の主要な結晶相は、LiSiであり;
上記少なくとも1つのガラスクラッド層は、20×10‐7/℃以上及び約70×10‐7/℃以下、かつ上記コア熱膨張係数CTE未満である、クラッド熱膨張係数CTECLを有する、ガラスクラッド層
を備える、ラミネートガラス物品。
【0086】
実施形態17
上記アルカリ酸化物ROは、約1モル%~約10モル%のLiOを含む、実施形態16に記載のラミネートガラス物品。
【0087】
実施形態18
上記アルカリ酸化物ROは、約1モル%~約10モル%のNaOを含む、実施形態16又は実施形態17に記載のラミネートガラス物品。
【0088】
実施形態19
上記少なくとも1つのガラスクラッド層は更に、約1モル%~約4モル%のTiOを含む、実施形態16~18のいずれか1つに記載のラミネートガラス物品。
【0089】
実施形態20
比(SiO(モル%)+Al(モル%)+LiO(モル%)+KO(モル%)+NaO(モル%))/(TiO(モル%)+P(モル%)+ZrO(モル%))は26超である、実施形態19に記載のラミネートガラス物品。
【0090】
実施形態21
消費者向け若しくは市販の電子デバイスのカバーガラス若しくはガラス背面用途;携帯型電子デバイス用のタッチスクリーン又はタッチセンサ用途;集積回路用途;光電池用途;建築用ガラス用途;自動車若しくは車両ガラス用途;市販若しくは家庭用電化製品用途;照明若しくは標識用途;又は輸送用途における、実施形態1~15のいずれか1つに記載のガラスセラミック組成物又は実施形態16~20のいずれか1つに記載のラミネートガラス物品の使用。
【0091】
実施形態22
コア熱膨張係数CTEを有するガラスコア層を、上記CTEの約20%以内のセラミック化前熱膨張係数CTEPCを有する少なくとも1つのガラスクラッド層に融着して、ラミネートガラス物品を形成するステップであって、上記少なくとも1つのガラスクラッド層は:
約60モル%~約75モル%のSiO
約5モル%~約10モル%Al
約2モル%~約20モル%のアルカリ酸化物ROであって、上記アルカリ酸化物ROはLiO及びNaOを含む、アルカリ酸化物RO;並びに
0モル%~約5モル%のアルカリ土類酸化物ROであって、上記アルカリ土類酸化物ROはMgOからなり、比Al(モル%)/(RO(モル%)+RO(モル%))は1未満である、アルカリ土類酸化物RO
を含む、ステップ;並びに
上記ラミネートガラス物品を熱処理して上記少なくとも1つのガラスクラッド層をセラミック化することにより、上記ガラスクラッド層の上記熱膨張係数を、20×10‐7/℃以上及び約70×10‐7/℃以下、かつ上記コア熱膨張係数CTE未満である、セラミック化後熱膨張係数CTEACへと低下させるステップであって、上記少なくとも1つのガラスクラッド層の主要な結晶質相はLiSiである、ステップ
を含む、方法。
【0092】
実施形態23
上記セラミック化前CTEPCは約65×10‐7/℃以上及び約110×10‐7/℃以下である、実施形態22に記載の方法。
【0093】
実施形態24
上記アルカリ酸化物ROは約1モル%~約10モル%のLiOを含む、実施形態22又は23に記載の方法。
【0094】
実施形態25
上記アルカリ酸化物ROは、約1モル%~約10モル%のNaOを含む、実施形態22~24のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
実施形態26
上記少なくとも1つのガラスクラッド層は更に、約1モル%~約4モル%のTiOを含む、実施形態22~25のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
実施形態27
比(SiO(モル%)+Al(モル%)+LiO(モル%)+KO(モル%)+NaO(モル%))/(TiO(モル%)+P(モル%)+ZrO(モル%))は26超である、実施形態26に記載の方法。
【符号の説明】
【0097】
100 ラミネートガラス物品
102 ガラスコア層
103a ガラスコア層102の第1の表面
103b ガラスコア層102の第2の表面
104a第1のガラスクラッド層
104b第2のガラスクラッド層
200 積層フュージョンプロセス装置
202 上側流出分分配器又はアイソパイプ
204 下側流出分分配器又はアイソパイプ
206 溶融ガラスセラミッククラッド組成物
208 溶融ガラスコア組成物
210 トラフ
212 トラフ
216 下側流出分分配器204の外側形成表面
218 下側流出分分配器204の外側形成表面
220 基部
222 上側流出分分配器202の外側形成表面
224 上側流出分分配器202の外側形成表面
図1
図2