(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】枝豆を含む青果物用包装体及び当該青果物の鮮度保持方法
(51)【国際特許分類】
B65D 85/50 20060101AFI20230404BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230404BHJP
A23L 3/3418 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
B65D85/50 120
B65D65/40 D
A23L3/3418
(21)【出願番号】P 2018018008
(22)【出願日】2018-02-05
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】葉 永安
(72)【発明者】
【氏名】廣田 幸治
(72)【発明者】
【氏名】田原 修二
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-228811(JP,A)
【文献】特開2006-204194(JP,A)
【文献】特開平06-125696(JP,A)
【文献】特開2003-199490(JP,A)
【文献】特開平07-184538(JP,A)
【文献】及川 彰 Akira Oikawa,成分からみたエダマメの特徴 Characterization of edamame by using metabolomic techniques,香料,第272号,日本,日本香料協会 NIPPON KORYO KYOKAI 渡辺 洋三,2016年12月10日,p. 29~35
【文献】阿部利徳 Toshinori Abe,エダマメ中のr-アミノ酪酸(GABA)含量の差異 Difference in r-aminobutyric Acid Content in Vegemble Soybean Seeds,日本食品科学工学会誌 Vol.52 No.11,第52巻,日本,森 友彦 社団法人日本食品科学工学会,2005年11月15日,p. 39~43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/50
B65D 65/40
A23L 3/3418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子フィルムを含んでなる包装容器内に枝豆を含む青果物を収納してなる包装体であって、前記包装体の封止後、室温で24時間以上保持された後の、該枝豆の遊離ヒスチジン含有量が、55mg/100g以下、かつ、封止直後の85%以下であり、
前記高分子フィルムの酸素透過度が、35000~60000(cc/m
2・day・atm)であり、
該枝豆の品種がサヤムスメであり、該包装体の封止直後の該枝豆の遊離ヒスチジン含有量が、62mg/100g以下である、上記包装体。
【請求項2】
前記枝豆の黄化を、室温において、包装体の封止後72時間以上にわたって抑制する、請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
内部二酸化炭素濃度が1体積%以下である、請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項4】
高分子フィルムを含んでなる包装容器内に枝豆を含む青果物を収納する工程、
該包装容器を封止して包装体を形成する工程、
該包装体を室温に保持する工程、及び
室温で24時間以上保持された後の、該枝豆の遊離ヒスチジン含有量を測定する工程、
を有する、包装体の製造方法であって、
前記高分子フィルムの酸素透過度が、35000~60000(cc/m
2・day・atm)であり、
該枝豆の品種がサヤムスメであり、該包装体の封止直後の該枝豆の遊離ヒスチジン含有量が、62mg/100g以下であ
り、
上記枝豆の遊離ヒスチジン含有量を測定する工程において測定された、室温で24時間以上保持された後の、該枝豆の遊離ヒスチジン含有量が、55mg/100g以下、かつ、封止直後の85%以下である、
上記包装体の製造方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枝豆を含む青果物の鮮度保持性能に優れた包装体に関し、より具体的には、高分子フィルムを有する包装容器内に枝豆を含む青果物を収納してなり、前記枝豆の遊離ヒスチジン含有量が特定値以下である、包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
枝豆は収穫された後も呼吸作用を持続する。このため収穫後の貯蔵・流通および食するまでの間は、枝豆の品質劣化を防止することが必要である。枝豆の鮮度保持の為にポリプロピレンフィルムなどによる密封包装が使用されているが、密封包装された枝豆は、無酸素状態の雰囲気中にさらされ、嫌気呼吸せざるをえない状態に置かれてしまい、袋を開けたときにはほとんどの包装体で異臭がする。そこで、枝豆の包装体において、枝豆の異臭が発生せず、食味の低下、萎れもなく、枝豆の鮮度を長期間保つことができる枝豆の包装体を提供するため、有孔合成樹脂フィルムを用いて枝豆を包装した枝豆入り包装体において、有孔合成樹脂フィルムの開孔面積比率、及び枝豆100gあたりの袋内面積を、それぞれ特定の数値範囲内に限定した枝豆入り包装体が提案されている(特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、これらの技術を用いたとしても、枝豆の莢などが黄色に変色する、いわゆる黄化現象が発生する場合があり、黄化を十分に抑制できる技術が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来技術の限界に鑑み、高分子フィルムを含んでなる包装容器内に枝豆を含む青果物を収納してなる包装体であって、枝豆の莢等の黄化を特に室温において有効に抑制することができる包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、枝豆の遊離ヒスチジン含有量とその莢等の黄化との間に密接な関係があることを見出し、更に枝豆のヒスチジン含有量が特定値以下であるときに、枝豆の莢の黄化が有効に抑制されることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
[1] 高分子フィルムを含んでなる包装容器内に枝豆を含む青果物を収納してなる包装体であって、該枝豆の遊離ヒスチジン含有量が、55mg/100g以下である、上記包装体。
[2] 前記包装体の封止後、室温で24時間以上保持された後の、前記枝豆の遊離ヒスチジン含有量が、55mg/100g以下である、[1]に記載の包装体。
[3] 前記高分子フィルムの酸素透過度が、35000~60000(cc/m2・day・atm)である、[1]又は[2]に記載の包装体。
[4] 前記枝豆の黄化を、室温において、包装体の封止後72時間以上にわたって抑制する、[1]から[3]のいずれかに記載の包装体。
[5] 内部二酸化炭素濃度が1体積%以下である、[1]から[4]のいずれかに記載の包装体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高分子フィルムを含んでなる包装容器内に収納した青果物中の枝豆の黄化を長期間にわたって有効に抑制することができる。
る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
本発明は、高分子フィルムを含んでなる包装容器内に枝豆を含む青果物を収納してなり、前記枝豆に含まれる遊離ヒスチジン量が55mg/100g以下である包装体である。すなわち、本発明の包装体は、少なくとも包装容器と、そこに収納された青果物とを有するものである。
【0009】
<包装容器>
本発明の包装体を構成する包装容器は、高分子フィルムを含んでなるものである。ここで「高分子フィルムを含んでなる」とは、包装容器の全部が高分子フィルムで構成されている場合、及び蓋材等包装容器の一部が高分子フィルムで構成されている場合、の双方を含む趣旨である。
従って、上記包装容器は、全部又は主要部が可撓性の高分子フィルムで構成された可撓性の包装容器、いわゆる包装袋であってもよく、可撓性の高分子フィルムとコーティング紙等のそれ以外の可撓性の部材を組み合わせた可撓性の包装容器であってもよく、あるいは可撓性の高分子フィルムと剛直な部材とを組み合わせた包装容器、例えば、蓋材としての高分子フィルムと、トレー、カップ等の剛直な部材とを組み合わせた形態のものであってもよい。
【0010】
包装容器がいわゆる包装袋である実施形態においては、例えば、2枚の高分子フィルムを互いに重ね合わせた状態、または1枚の高分子フィルムを折り重ねた状態で、3辺または2辺を熱シールにより融着させる等して包装袋を形成することができる。残る1辺は、青果物等の内容物を包装袋内に配置した後、同様に熱シールにより融着させるなどして封止することができる。
なお、このような包装袋は、その平面視での形状は円形、三角形、四角形、四角形以上の多角形でもよいが、加工性や取扱いの容易さの観点から長方形をなすことが好ましい。 また、袋内の枝豆の密度が高すぎると、枝豆同士の接触により傷が付き、変色し易くなるため、最適な密度形態とするのが好ましい。
【0011】
本発明で用いる包装容器は、以上説明した高分子フィルムを含んでなるものであり、その酸素透過度には特に限定は無いが、例えば35000~60000(cc/m2・day・atm)の範囲内であるものが好ましい。その炭酸ガス(二酸化炭素)透過度も、特に限定は無いが、例えば45000~60000(cc/m2・day・atm)の範囲内であるものが好ましい。
本発明で用いる包装容器を構成する高分子フィルムでは、収納される青果物の量、種類、並びに所望の内部酸素濃度や二酸化炭素濃度の各種ガス濃度等に合わせて適正な酸素透過度及び/又は炭酸ガス透過度を選択することができる。
【0012】
<青果物>
本発明の包装体は、上記包装容器内に枝豆を含む青果物を収納してなる。ここで、青果物が枝豆を「含む」とは、当該青果物の全部が枝豆で構成されている場合、及び当該青果物の一部が枝豆で構成されている場合、の双方を包含する趣旨である。従って、通常は、当該青果物の全部が枝豆で構成されているが、必要に応じて、枝豆以外の野菜、果物等も包装容器内に収納される青果物として含めることも可能である。本発明において包装容器内に、「枝豆」とともに収納することができる「枝豆」以外の青果物には特に制限は無く、非加熱又は加熱の青果物を適宜収納することが可能である。
また、枝豆を含んでいる限りにおいては、青果物以外の成分、例えば青果物以外の食品、調味料、食品添加物等を含んでいてもよい。
【0013】
本発明の包装体を構成する(具体的には、包装容器に収納される)「枝豆」とは、未成熟で青いうちの大豆を収穫したものを言う。「枝豆」の形態に特に制限は無い。枝付きでも、枝から外して莢にしたものでもよい。また、莢付きのものでもよいし、莢付きでないもの(即ち、莢から取り出された豆の状態のもの)であってもよい。但し、莢付きの枝豆が、保存安定性、喫食時の風味及び製造時の簡便性等の観点から、好ましい。
また、ここで言う「枝豆」は、その起源、産地、種類及び品種は特に制限されない。枝豆の種類は、種皮の違いから普通種、茶豆、黒豆に大別されるが、いずれも用いることができる。普通種の枝豆としては、例えば大袖の舞、サッポロミドリ、味緑、湯あがり娘、サヤムスメ等が挙げられる。茶豆の枝豆としては、例えば、白山、福成、越乃茶太郎等が挙げられる。黒豆の枝豆としては、例えば、丹波黒、紫ずきん、黒頭巾等が挙げられる。これらの枝豆は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。枝豆の熟度、色調、豆の硬さ、莢の強さ、見栄え、加熱適性等を総合して、商品として適切なものが好適に用いられる。
【0014】
「枝豆」は、収穫したものをそのまま用いてもよいし、衛生面、鮮度等の観点から食品としての商品価値を高めるために、適宜、水洗いによる洗浄処理や殺菌処理等がなされていてもよい。
【0015】
本発明において包装体に収納され鮮度保持される「枝豆」を含む青果物の形態にも特に制限は無い。また、青果物は、洗浄、冷却、脱水等の処理のいずれか又は全てを行ったものであってもよく、またこれらの処理のいずれも行わないものであってもよい。
【0016】
<枝豆に含まれる遊離ヒスチジン量>
本発明において、包装体に収納され鮮度保持される「枝豆」の遊離ヒスチジン含有量は、莢から外した子実に含まれる遊離ヒスチジン量をアミノ酸自動分析法で測定することにより決定され、具体的には、前記枝豆の遊離ヒスチジン含有量が55mg/100g以下(即ち、枝豆100gあたり55mg以下)の値である。この遊離ヒスチジン含有量は、前記封止後、室温で24時間後に55mg/100g以下の値であることが好ましい。換言すると、前記封止後、室温で24時間保持された後の、前記枝豆の遊離ヒスチジン含有量が、55mg/100g以下であることが好ましい。更に、前記封止後、室温で72時間後も55mg/100gの値であることがより好ましい。換言すると、前記封止後、室温で24時間以上保持された後の、前記枝豆の遊離ヒスチジン含有量が、55mg/100g以下であることがより好ましい。ここで「室温」とは23℃以上25℃以下を言う。
【0017】
<包装体>
本発明の包装体の二酸化炭素濃度には特に限定は無いが、枝豆の黄変を抑制するという観点から、枝豆を室温で包装体に収納して包装体を封止後、室温での当該包装体の内部二酸化炭素濃度が1体積%以下であることが好ましい。また、前記封止後、室温で少なくとも72時間経過後の前記包装体の内部二酸化炭素濃度が、0.3体積%以上0.6体積%以下であることがより好ましく、0.5体積%であることが更に好ましい。前記封止後、室温で少なくとも168時間後の前記包装体の内部二酸化炭素濃度が、0.3体積%以上0.6体積%以下であることが更により好ましく、0.3体積%であることが特に好ましい。
また、本発明の包装体の内部酸素濃度も特に限定は無いが、同様の観点から、枝豆を室温で包装体に収納して包装体を封止後、室温で少なくとも72時間経過後の当該包装体の内部酸素濃度が17体積%以上21体積%以下であることが好ましく、当該封止後、室温で少なくとも168時間経過後の当該包装体の内部酸素濃度が20体積%以上21体積%以下であることがより好ましい。
【0018】
枝豆の保存時に枝豆内のタンパク質の分解が高まり、遊離アミノ酸である遊離ヒスチジンの量が高まると考えられる。当該枝豆の黄変抑制という観点から、枝豆内のタンパク質の分解を最適に抑える必要があるが、本発明の包装体はこの点で好ましい。
【0019】
本発明の包装体の内部の酸素濃度および二酸化炭素濃度は、例えば、包装体内部の気体を、食品ガス置換包装用O2&O2/CO2計 (CheckPointII、CheckPoint3またはCheckMate3、MoconEurope社)やガスクロマトグラフ、ガス検知管(ガステック製)にて測定することにより、特定することができる。
ここで、「封止後」とは、包装体封止後からの経過時間、具体的には、包装容器内に枝豆を含む青果物を収納した後、その包装容器を封止してからの経過時間を言う。そのため、例えば、「封止後、室温で24時間」とは、具体的には、包装容器内に枝豆を含む青果物を室温で収納した後、その包装容器を封止してから室温で24時間経過した後の状態を言う。
【0020】
本発明の包装体における収納温度及び保存温度は、特に限定されず、室温で収納及び保存することもできる。室温での収納及び保存は、低温設備や加温設備が不要で、保存場所を選ばない等の点で好ましい。
【0021】
<高分子フィルム>
また、上述した遊離ヒスチジン含有量を実現するためには、酸素透過度が所定値の範囲内にある高分子フィルムを用いて包装容器を構成することが望ましい。
すなわち、本発明で用いる高分子フィルムの酸素透過度は、20℃、90%RHにおいて、35000~60000(cc/m2・day・atm)であることが好ましい。本発明における包装体では、包装容器を構成する高分子フィルムの酸素透過度が上記範囲内であることによって、上述の好ましい内部酸素濃度を実現することが一層容易になる。
また、本発明で用いる高分子フィルムの炭酸ガス(二酸化炭素)透過度は、20℃、90%RHにおいて、例えば45000~60000(cc/m2・day・atm)の範囲内であることが好ましい。本発明における包装体では、包装容器を構成する高分子フィルムの炭酸ガス透過度が上記範囲内であることによって、上述の好ましい内部二酸化炭素濃度を実現することが一層容易になる。
本発明における包装体では、包装容器を構成する高分子フィルムが、20℃、90%RHにおける酸素透過度及び/又は炭酸ガス透過度が上記範囲内であることによって、包装容器内に収納した青果物中の枝豆の黄変を、封止後少なくとも72時間の長期間にわたり、抑制することが一層容易になり、しかも室温で抑制することが一層容易になる。
本発明において用いる高分子フィルムの酸素透過度は、20℃、90%RHにおいて、40000~55000(cc/m2・day・atm)であることがより好ましい。
また、本発明において用いる高分子フィルムの炭酸ガス透過度は、20℃、90%RHにおいて、48000~58000(cc/m2・day・atm)であることがより好ましい。
【0022】
本発明で用いる高分子フィルムの酸素透過度や炭酸ガス透過度は、例えば以下の方法によって測定することができる。
まず、次の方法で内寸a(cm)×b(cm)の袋を形成する。
1枚のフィルムをほぼ均等に2つ折りにし約5mm幅で、インパルスシーラー(富士インパルス社製、品番Fi-200-10WK)で加熱条件の目盛を3に設定してヒートシールを行い、当該ヒートシール辺がほぼ中央にくるようにヒートシール辺とほぼ垂直をなす辺の一方の全体を、他方の辺の一方の連通部となる端部約2cmを除く全体をヒートシールして、内寸a(cm)×b(cm)の袋を形成する。
次に前記連通部から窒素ガスを注入し、袋内が飽和状態になれば袋内のガスを連通部からほぼすべて排出する。この操作を5回繰り返した後、窒素ガスを注入して袋内を窒素ガスで飽和させて連通部を前記インパルスシーラーで同様の条件でヒートシールする。窒素ガスを飽和させた袋を22℃、相対湿度40%の空気中(1気圧、酸素濃度:21%、二酸化炭素濃度:0.03%)の室内に6時間放置する。
次に食品ガス置換包装用O2&O2/CO2計 (CheckPointII、MOCONEurope)を用いて袋中の酸素濃度を測定する。さらに、袋中の気体の体積を測定し、下記の式から酸素透過度及び炭酸ガス透過度を算出する。
(式) 酸素透過度=内部酸素濃度変化(%)/100×体積(cm3)×24×60/時間(360分)×10000cm2/面積(2×a×b cm2)/酸素の分圧(0.21atm)
(式) 炭酸ガス透過度=内部二酸化炭素濃度変化(%)/100×体積(cm3)×24×60/時間(360分)×10000cm2/面積(2×a×b cm2)/二酸化炭素の分圧(0.0003atm)
【0023】
高分子フィルムの材質、厚さ、加工方法等を適宜選択することで、高分子フィルムの酸素透過度を適宜調節することができる。例えば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムの場合には、厚みを100μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは45μm以下、最も好ましくは40μm以下とすることで、20℃、90%RHにおける酸素透過度や炭酸ガス透過度を上記好ましい範囲にすることが一層容易になる。機械的強度、加工性等も併せて考慮すれば、高分子フィルムの厚みは、5~60μmであることが好ましく、10~55μmであることがより好ましく、12~50μmであることがさらに好ましく、15~45μmであることがより一層好ましく、18~30μmであることが特に好ましい。
【0024】
上述の様に、高分子フィルムの酸素透過度や炭酸ガス透過度は、高分子フィルムの材質、厚さ、加工方法等を適宜選択することで、調節することができるので、必ずしも、酸素透過度や炭酸ガス透過度の調節のために高分子フィルムに開口部を設けることを要しない。
高分子フィルムに開口部を設けない場合には、製造プロセスがより簡便、低コストなものとなり、また開口部の大きさ、形状等を精密に制御することも不要となる。
高分子フィルム中に開口部が存在しないこと(即ち、「孔無し」であること)は、例えば、包装容器を構成する高分子フィルムが、インク洩れチェッカーで確認できる貫通孔を有さないことにより、確認することができる。
【0025】
一方で、本発明の一実施形態においては、厚い高分子フィルムや、酸素透過度の低い高分子素材を使用する必要がある場合等に、青果物の呼吸を維持するための所望の酸素透過度や炭酸ガス透過度を実現するために、高分子フィルムに設けた開口部を併用してもよい。枝豆は、青果物の中では比較的呼吸量が大きいので、枝豆の鮮度保持を目的の一つとする本発明においては、開口部を併用することが好適である場合が多い。
開口部の形状には特に限定は無く、円形、略円形であってもよく、スリット状であってもよい。円形、略円形の開口部は、加工が容易である点等において好ましく、スリット状での開口部は、異物の侵入を有効に防止できる点等において好ましい。個々の開口部の大きさと、開口部の個数は、高分子フィルムの酸素透過度や炭酸ガス透過度が適切な限りにおいて、適宜設定、変更可能である。例えば、開口部が円形の場合、これらの透過度を調節するうえで、直径20~100μm程度、より好ましくは直径30~80μm程度の大きさが好ましい。
開口部の個数には特に制限は無いが、例えば包装容器1個あたり1から300個の開口部を有することが、酸素透過度、二酸化炭素透過度を調整する観点から好ましい。
開口部の間隔は必要とされる開口部の数によるので特に制限は無いが、製造上の効率等、フィルムの強度等の観点からは、1~100mm程度であることが好ましい。
なお、個々の開口部の大きさと、開口部の個数は、包装容器全体の酸素透過度や二酸化炭素透過度が適切な限りにおいて、適宜設定、変更可能であり、その際には、高分子フィルムの有効面積に占める開口部の数が指針となる。例えば直径50μm程度(開口面積2000μm2程度)の開口部を設ける場合、200mm×200mmの包装容器に対して1つ存在するごとに約2000cc/m2/day/atm酸素透過度を上げる効果があり、この様な知見に基づき必要とされる包装容器全体の酸素透過度からスリット開口部の数を決めることが好ましい。この場合における、包装容器1個あたりの開口部の数は、5から50個であることが好ましく、10から40個であることが特に好ましい。
【0026】
本発明で用いる高分子フィルムの厚みには特に制限は無く、好適な酸素透過度、炭酸ガス透過度、包装容器を形成した際の可撓性、強度、透明性、経済性等、開口部を設ける場合には開口部の形成の際の精度や容易性等の観点から、高分子フィルムを形成する材料との関係において適宜好適な厚みを選択すればよい。典型的には、開口部を設ける場合の高分子フィルムの厚みは、5~60μmであることが好ましく、10~55μmであることがより好ましく、12~50μmであることがさらに好ましく、15~45μmであることがより一層好ましく、18~30μmであることが特に好ましい。
【0027】
上記高分子フィルムの材質には、特に制限は無いが、従来の青果物包装用のフィルムに用いられる高分子を適宜使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ナイロン(ポリアミド)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリ乳酸等を挙げることができる。また、例えば、セロハン等の天然高分子を用いることもできる。更にこれらのうちのいずれかの材質を単独で用いてもよく、これらの複数をブレンドして、及び/又はラミネートして用いてもよい。
【0028】
加工の容易さやコストの観点からは、上記高分子フィルムの材質は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。当該熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル・1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレンなどのエチレン系重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体などのプロピレン系重合体、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル・1-ペンテンなどのポリオレフィンが挙げられる。また、当該熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性樹脂、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、当該熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等が剛性、透明性に優れるため好ましい。また、当該熱可塑性樹脂としては、エチレン系重合体、プロピレン系重合体が軽量でフィルム加工性に優れるためより好ましく、柔軟性、透明性の観点からプロピレン系重合体がさらに好ましい。
【0029】
<プロピレン系重合体>
前記プロピレン系重合体としては、ポリプロピレンの名称で製造、販売されているプロピレン単独重合体(ホモPPとも呼ばれている)、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(ランダムPPとも呼ばれている)、プロピレン単独重合体と、低結晶性または非晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体との混合物(ブロックPPとも呼ばれている)などのプロピレンを主成分とする結晶性の重合体が挙げられる。また、プロピレン系重合体は、分子量が異なるプロピレン単独重合体の混合物であってもよく、プロピレン単独重合体と、プロピレンとエチレン又は炭素数4から10のα-オレフィンとのランダム共重合体との混合物であってもよい。
【0030】
前記プロピレン系重合体としては、具体的には、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ペンテン共重合体、プロピレン・1-ヘキセン共重合体、プロピレン・1-オクテン共重合体などのプロピレンを主要モノマーとし、これとエチレン及び炭素数4から10のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種類以上との共重合体が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0031】
前記プロピレン系重合体の密度は、0.890~0.930g/cm3であることが好ましく、0.900~0.920g/cm3であることがより好ましい。また、前記プロピレン系重合体のMFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度230℃)は、0.5~60g/10分が好ましく、0.5~10g/10分がより好ましく、1~5g/10分がさらに好ましい。
【0032】
<エチレン系重合体>
前記エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主要モノマーとし、それと炭素数3から8のα-オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、そのケン化物及びアイオノマーが挙げられる。具体的には、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体などのエチレンを主要モノマーとし、これと炭素数3から8のα-オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体が挙げられる。これらの共重合体中のα-オレフィンの割合は、1~15モル%であることが好ましい。
【0033】
また、前記エチレン系重合体としては、ポリエチレンの名称で製造・販売されているエチレンの重合体が挙げられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましく、LLDPEがより好ましい。LLDPEは、エチレンと、少量のプロピレン、ブテン-1、ヘプテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチル-ペンテン-1等との共重合体である。また、前記エチレン系重合体は、エチレンの単独重合体であってもよく、LLDPE等のエチレンを主体とする重合体であってもよい。
【0034】
前記エチレン系重合体の密度は0.910~0.940g/cm3が好ましく、0.920~0.930g/cm3がより好ましい。当該密度が0.910g/cm3以上であることにより、ヒートシール性が向上する。また、当該密度が0.940g/cm3以下であることにより、加工性および透明性が向上する
【0035】
なお、ブレンド、及び/又はラミネートは、上記の高分子のうちのいずれか同士のブレンド、及び/又はラミネートであってもよく、また上記の高分子のうちのいずれかと、高分子以外の材料とのブレンド、及び/又はラミネートであってもよい。すなわち、高分子フィルムは、高分子以外の素材、例えば耐熱安定剤(酸化防止剤)、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の他、タルク、シリカ、珪藻土などの各種フィラー類を含んでいてもよいし、高分子フィルムと金属箔、紙、不織布等とのラミネートであってもよい。
【0036】
本発明において包装容器を構成する高分子フィルムは、無延伸フィルム、延伸フィルムのいずれであってもよい。
機械的強度等の観点からは、各種高分子の延伸フィルムを好適に用いることができる。
特に、プロピレン系重合体を用いた延伸フィルム(延伸ポリプロピレンフィルム)は、機械的強度、透明性、耐熱性等に優れるため、本発明に用いる包装容器において、特に好ましく使用することができる。
また、エチレン系重合体を用いたフィルム(ポリエチレン系フィルム)も、無延伸フィルム、延伸フィルムのいずれであってもよいが、ヒートシール性等の観点から、無延伸のものを、特に好ましく使用することができる。
本発明において包装容器を構成する高分子フィルムとして特に好適なものの例として、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、及び延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を挙げることができる。
【0037】
<延伸ポリプロピレンフィルム>
本発明において好ましく用いられる延伸ポリプロピレンフィルムは少なくとも一方向に延伸されたフィルムから構成されていてもよいし、延伸ポリプロピレンフィルム自体が少なくとも一方向に延伸されていてもよい。また、延伸ポリプロピレンフィルムとして二軸延伸フィルムを得る場合には、例えば逐次、あるいは同時二軸延伸することにより容易に製造することも可能である。延伸ポリプロピレンフィルムとして二軸延伸フィルムを得る場合には、通常、縦方向に5~8倍延伸し、続いて横方向にテンター機構を用いて8~10倍延伸し、フィルムの厚さを最終的に20~40μmとする方法、あるいは、縦方向及び横方向にそれぞれ5~10倍(面倍率で25~100倍)延伸することにより製造することができる。
<ポリエチレン系フィルム>
本発明において好ましく用いられるポリエチレン系フィルムは、前記エチレン系重合体を含むフィルムである。ポリエチレン系フィルムは種々の公知の成型方法を用いることができるが、エクストルーダーによる押出によるキャスト成型が、生産効率の観点から好ましい。
【0038】
<延伸フィルム>
ナイロン6、ナイロン66等からなるポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルからなるフィルム、ポリカーボネートフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン及びポリL乳酸、ポリD乳酸、またはポリL乳酸とポリD乳酸を精密に配位したステレオコンプレックス晶ポリ乳酸からなる一軸あるいは二軸延伸フィルムである。
【0039】
<延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体>
本発明において好ましく用いられる延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体は上記ポリエチレン系フィルムの層と延伸フィルムの層を積層して得られる。ポリエチレン系フィルムは一方向または二方向に延伸されていてもよいが、包装袋の機械的強度の安定性の観点から、無延伸フィルムであることが好ましい。
予め作製された延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとを接着剤により貼着させるドライラミネーションを行うが、ここで接着剤を塗布する延伸フィルム表面にはコロナ処理をしておくことが接着安定性の観点から好ましい。具体的には、コロナ処理後のフィルム表面の表面張力が接着安定性の観点から、35mN/m以上が好ましく、40mN/m以上がより好ましい。
【0040】
また、これらの高分子フィルムは、延伸加工、防曇加工や印刷が施されていてもよく、銀、銅のような無機系抗菌剤や、キチン、キトサン、アリルイソチオシアネートのような有機系抗菌剤が塗布されたものであってもよいし、これらがフィルム中に練り込まれているものであってもよい。
青果物等の内容物の鮮度保持の観点からは、上記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有することが好ましい。
また、上記高分子フィルムの表面に特定の界面活性剤が特定量存在し、又は上記高分子フィルムが特定の界面活性剤を特定量含むことで、抗菌機能を有していてもよい。例えば、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物が、上記高分子フィルムの少なくとも一方の表面に存在することが好ましく、当該少なくとも1種の化合物が0.002~0.5g/m2存在することが特に好ましい。あるいは、上記高分子フィルムが、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびグリセリンモノカプレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有していることが好ましく、0.001~3質量部含有していることが特に好ましい。
上記高分子フィルムの表面に特定の界面活性剤が特定量存在し、又は上記高分子フィルムが特定の界面活性剤を特定量含むことで、当該高分子フィルムの表面での結露が抑制され、雑菌の繁殖が抑制されることにより、結露(ドリップ)中での雑菌の増殖が抑制され、抗菌機能が発揮される。
【0041】
透明性、可撓性、コスト等の観点からは、従来当該技術分野において広く用いられていた延伸ポリプロピレンフィルム、又は延伸ポリプロピレンフィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を高分子フィルムとして用いることが特に好ましい。これらのフィルムは一般にヒートシール性に優れるので、包装容器の製造において生産性が良好である。
この場合、延伸プロピレンフィルム単体で用いる場合は、その厚さが10~100μmであることが好ましく、延伸ポリプロピレンフィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を用いる場合には、前者の厚さが10~50μm、後者の厚さが10~120μmであることが好ましい。
【0042】
なお、ヒートシールに必ずしも適さない高分子フィルムを用いる場合には、当該高分子フィルムの全部又は一部にシーラント層をラミネートあるいはコーティングすることで形成すればよい。例えば、アクリル樹脂をコーティングしたセロハンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)に線状低密度ポリエチレン(LLDPE)ポリスチレンとEVAをラミネートしたフィルムが挙げられ、これらを好適な高分子フィルムとして用いることができる。
【0043】
<包装体の製造方法、及び鮮度保持方法>
枝豆を含む青果物を本発明の包装容器に収納し、その枝豆の遊離ヒスチジン含有量を最適に調整することで、本発明の包装体を製造することができ、また本発明の一実施形態である当該青果物の黄変抑制を実施することができる。
以下、本発明の包装体の製造方法を枝豆の鮮度保持用包装体を例に説明する。
【0044】
まず前処理工程において、収穫した枝豆から枝を外して莢付き枝豆とし、これを洗浄機等で水洗いして泥等の汚れや雑菌を取り除き、遠心脱水機等で脱水する。脱水後の莢付き枝豆は、計量され、本実施形態で用いる高分子フィルムを含んでなる包装容器(一辺が封止されていないもの)に室温で詰められ、その後に包装容器が封止され、枝豆の鮮度保持用包装体が製造される。
【0045】
包装容器に詰める上記枝豆に当初から雑菌が多く付着していると、鮮度保持がより困難で、また不衛生であるため、よく洗浄するなどして、包装容器に詰める前に雑菌の付着をできるだけ低減することが好ましい。また、洗浄は、雑菌の付着を低減するばかりか、活性の高い酵素等を含み変色等の原因となりうる細胞液等を除去する効果もあるため、鮮度保持のために特に有効である。
加えて、洗浄後、包装容器に詰める前に上記枝豆の莢の表面に付着した水分を十分に除去することも、鮮度保持のために有効である。
【0046】
なお、本実施形態の青果物鮮度保持用包装体は、上記枝豆を含む青果物の収納及び包装容器の封止の際に、窒素封入及び/又は脱気を行ってもよい。また、流通の過程での効率向上やスペース節約、特定の気体の排除等の観点から、包装容器の封止後に脱気を行ってもよい。
【0047】
上述の様な方法に従って高分子フィルムを含んでなる包装容器内に上記枝豆を収納する工程を実施した後、当該包装容器内の枝豆の遊離ヒスチジン含有量を、アミノ酸自動分析法による測定で55mg/100g以下(枝豆100gあたり55mg以下)の値とする工程を実施することで、枝豆(具体的には、枝豆の莢)の黄変を有効に抑制することができる。
【0048】
本発明の包装体は、包装容器中に枝豆を含む青果物のみが収納されていてもよいし、更にそれ以外の部材が収納されていてもよい。
例えば、青果物に加えて、吸湿剤及び/又は抗菌剤が包装容器中に収納されていてもよい。
吸湿剤には特に限定は無く、吸湿効果または調湿効果を有する公知又は市販の材料を使用することができる。吸湿剤として好適に用いられるものとしては、例えば、活性炭、シリカゲル、アルミナゲル、シリカアルミナゲル、無水硫酸マグネシウム、ゼオライト、合成ゼオライト、酸化カルシウム、塩化カルシウム、及び、焼ミョウバン、又はこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの中でも、青果物への影響や食品である青果物等の近くで使用することに関する懸念の比較的少ない活性炭を用いることが特に好ましい。活性炭は粉末状、粒状どちらでも何ら差し支えなく、原料はヤシ殻、おがくず、木炭、竹炭、褐炭、泥炭、ほね、石油ピッチなどどんなものでも差し支えない。また活性炭は不織布、セロファン、紙などなどで使用単位毎に包装してあることが望ましいが、活性炭自体が繊維状になったものでも差し支えない。活性炭の包材としては、合成樹脂からなる不織布のように、ヒートシール性を有するものが好ましいが、水蒸気透過性を有しかつ活性炭がこぼれないもので有れば、紙、天然繊維などでも何ら問題ない。
【0049】
抗菌剤には特に限定は無く、抗菌作用を有する物質を適宜使用することができるが、千切りキャベツを含む青果物への影響や食品である青果物等の近くで使用することに関する懸念の比較的少ない天然性抗菌剤を好ましく使用することができる。より具体的には、天然性抗菌剤であるキトサン、アリルイソチオシアネート、ヒノキチオール、リモネン等を、包装容器内に収納することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例/比較例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0051】
以下の実施例/比較例において、各特性の評価は以下の方法で行った。
(酸素透過度及び炭酸ガス透過度)
まず、次の方法で内寸175mm×190mmの袋を形成した。
1枚のフィルムをほぼ均等に2つ折りにし約5mm幅で、インパルスシーラー(富士インパルス社製、品番Fi-200-10WK)で加熱条件の目盛を3に設定してヒートシールを行い、当該ヒートシール辺がほぼ中央にくるようにヒートシール辺とほぼ垂直をなす辺の一方の全体を、他方の辺の一方の連通部となる端部約2cmを除く全体をヒートシールして、内寸175mm×190mmの袋を形成した。その際、ヒートシール部に、ガス測定用のピンチコックを1個設けた。
次に前記連通部から窒素ガスを注入し、袋内が飽和状態になってから袋内のガスを連通部からほぼすべて排出した。この操作を5回繰り返した後、窒素ガスを注入して袋内を窒素ガスで飽和させて連通部を前記インパルスシーラーで同様の条件でヒートシールした。窒素ガスを飽和させた袋を22℃、相対湿度40%の空気中(1気圧、酸素濃度:21%、二酸化炭素濃度:0.03%)の室内に6時間放置した。
次に食品ガス置換包装用O2&O2/CO2計 (CheckPointII、MOCONEurope)を用いて袋中の酸素濃度及び二酸化炭素濃度を測定した。さらに、袋中の気体の体積を測定し、下記の式から酸素透過度及び炭酸ガス透過度を算出した。
(式) 酸素透過度=内部酸素濃度変化(%)/100×体積(cm3)×24×60/時間(360分)×10000cm2/面積(665cm2)/酸素の分圧(0.21atm)
(式) 炭酸ガス透過度=内部二酸化炭素濃度変化(%)/100×体積(cm3)×24×60/時間(360分)×10000cm2/面積(665cm2)/二酸化炭素の分圧(0.0003atm)
(酸素濃度及び二酸化炭素濃度)
ガス測定用のピンチコックから包装体内のガスをCheckPointII袋中の酸素濃度及び二酸化炭素濃度を測定した。
(枝豆の重量)
枝豆の重量は、莢ごとパッキングされた枝豆の重量を、上皿天秤を用いて継続的に計測することによって決定した。
(枝豆の遊離ヒスチジン含有量)
遊離アミノ酸自動分析法:遊離ヒスチジンはイオン交換クロマトグラフィーで分離した後に、ニンヒドリン試薬で反応させて可視吸光検出器で検出することにより測定する。測定対象の枝豆の莢から外した子実を冷凍、摩砕し、80%エタノールを加え得られた残さを3回抽出した。抽出液をメンブランフィルター(0.45μm)に通してサンプル液とした。スルホサリチル酸溶液を加えpH2.2に調製し、メンブランフィルター(0.2μm)により不純物を取り除き、適宜希釈した試験溶液をアミノ酸自動分析により枝豆の遊離ヒスチジン含有量を決定した。遊離アミノ酸自動分析には、全自動アミノ酸分析装置(日本電子製JLC-500/V2)を使用した。
(黄化度)
莢の色調は、表色系(CIE1976)による、L*値(明度)、a*値(+赤色度~-緑色度)、b*値(+黄色度~-青色度)について測定し、色彩色差計(CR400、コニカミノルタ製)により計測し、黄化度としてL*×b*/|a*×100|を算出した。計測には莢付き枝豆を9つ使用し(n=9)、3粒入りの莢については中央、2粒入りの莢については枝に近い方の膨らみ部分を評価した。なお、黄化度は値が大きくなるほど、緑色が消失し、黄化が進行していることを示す。
(開口部の有無)
高分子フィルムに設ける開口部の有無は、インク洩れチェッカーにより確認した。具体的には、赤色浸透液(三菱ガス化学株式会社製、商品名:エージレスシールチェックスプレー)を包装容器内に注入後、インパルスシーラーで加熱条件の目盛を3に設定し、約5mm幅でヒートシールして、紙(コクヨ PPC用紙 共用紙 A4)を押しあて、紙へのインクの転写の有無により確認した。
【0052】
(実施例1)
厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムに対し、レーザー加工で直径50μmほどの開口部を設けたフィルムを用意した。
上記のフィルムを用いて内寸175mm×190mmサイズの袋をヒートシールして作製した。前記開口部数は28個とした。なお、袋にはピンチコックを取り付けた。
この袋の酸素透過度と炭酸ガス透過度を測定したところ、各々48344(cc/m2・day・atm)と51051(cc/m2・day・atm)であった。
予め準備した莢付き枝豆(品種:サヤムスメ(埼玉県産))200gを室温、空気中で袋に詰めて収納後、上部1cm程度をヒートシールで封止して包装体とした。この包装体を計3袋作成した。
これら包装体を室温で保管し、経日的(具体的には、上記封止後、0時間、24時間、72時間、168時間後)に包装体内部の酸素濃度と二酸化炭素濃度、並びに枝豆の莢から外した子実に含まれる遊離ヒスチジン量と黄化度を測定し、莢付き枝豆の黄変を評価した。ここで、封止後、24時間の前記遊離ヒスチジン量と黄化度は、上記包装体の一袋を、封止後、24時間後に開封して枝豆を9つ取り出し、その莢から外した子実に含まれる遊離ヒスチジン量と黄化度を上述のとおりに測定することにより評価し、封止後、72時間後の前記遊離ヒスチジン量と黄化度は、上記包装体の別の一袋を、封止後、72時間後に開封して枝豆を9つ取り出し、その莢から外した子実に含まれる遊離ヒスチジン量と黄化度を上述のとおりに測定することにより評価し、封止後、168時間後の黄化度は、上記包装体の残りの一袋を、封止後、168時間後に開封して枝豆を9つ取り出し、その莢から外した子実に含まれる黄化度を上述のとおりに測定することにより評価した。また、封止後、0時間の酸素濃度と二酸化炭素濃度とは、封止直後の包装体内部の酸素濃度と二酸化炭素濃度のことであり、封止後、0時間の前記遊離ヒスチジン量と黄化度は、封入する直前の枝豆を9つ取り出し、その莢から外した子実に含まれる遊離ヒスチジン量と黄化度を上述のとおりに測定することにより評価した。
結果を表1に示す。
本実施例の包装体によれば、封止後、0時間後において、62mg/100gであった枝豆の遊離ヒスチジン含有量は、封止後、24時間後、72時間後のいずれにおいても、55mg/100g以下であった。そして、この包装体によれば、枝豆の黄化度は、封止後、0時間で1.34であり、封止後、24時間後で1.26、封止後、72時間後で1.26、そして封止後、168時間後でも黄化度が1.30といずれも、封止後、0時間の黄化度と同程度であることから、長期にわたり、枝豆の黄化を抑制できることが確認された。
【0053】
(比較例1)
開口部を設けていない厚さ45μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いたことを除き、実施例1と同様にして、莢付き枝豆を収納してなる包装体を作製し、評価を行った。なお、開口部(貫通孔)が無いことは、インク洩れチェッカーで確認した。
包装体の酸素透過度は、1430(cc/m2・day・atm)で、炭酸ガス透過度は、6550(cc/m2・day・atm)であった。
結果を表1に示す。
本比較例の包装体によれば、封止後、0時間後の枝豆の遊離ヒスチジン含有量は、62mg/100gであり、また、封止後、24時間後、72時間後のいずれにおいても、枝豆の遊離ヒスチジン含有量は、55mg/100gを大きく上回っていた。そして、この包装体によれば、枝豆の黄化度は、封止後、72時間後には1.35と実施例1の168時間後の黄化度1.30を上回り、また、封止後、168時間後には1.74と、封止後、0時間の黄化度1.34よりも極めて著しく大きくなるため、本実施例と異なり、長期にわたって枝豆の黄化を抑制することはできないことが確認された。
【0054】
(比較例2)
開口部数を42個設けた包装体としたことを除き、実施例1と同様にして、莢付き枝豆を収納してなる包装体を作製し、評価を行った。
包装体の酸素透過度は、67416(cc/m2・day・atm)で、炭酸ガス透過度は、65811(cc/m2・day・atm)であった。
評価結果を表1に示す。
本比較例の包装体によれば、0時間後の枝豆の遊離ヒスチジン含有量は、62mg/100gであり、封止後、24時間後の枝豆の遊離ヒスチジン含有量もそれと同じで、55mg/100gを大きく上回っていた。また、封止後、72時間後の枝豆の遊離ヒスチジン含有量も55mg/100gを上回っていた。そして、この包装体によれば、封止後、72時間後と168時間後の枝豆の黄化度は、いずれも1.4以上と大きく、封止後、0時間の黄化度1.34よりも上回り、また、実施例1の168時間後の黄化度1.30を大きく上回ることから、本実施例と異なり、長期にわたって枝豆の黄化を抑制することは難しいことが確認された。
【0055】
(比較例3)
無包装としたことを除き、実施例1と同様にして評価を行った。なお、無包装の場合の酸素濃度と炭酸ガス濃度は、常に、室温、1気圧中の酸素及び二酸化炭素濃度(酸素濃度:21%、二酸化炭素濃度:0.03%)と同じと見做した。
評価結果を表1に示す。
本比較例の包装体によれば、0時間後の枝豆の遊離ヒスチジン含有量は、62mg/100gであり、封止後、24時間後の枝豆の遊離ヒスチジン含有量も、55mg/100gを上回っていた。また、封止後、72時間後の枝豆の遊離ヒスチジン含有量は、55mg/100gを大きく上回るものであった。そして、この包装体によれば、枝豆の黄化度は、封止後、72時間後には1.37と実施例1の168時間後の黄化度1.30を上回り、また、封止後、168時間後には黄化度が1.55と、封止後、0時間の黄化度1.34よりもかなり大きくなるため、本実施例と異なり、長期にわたって枝豆の黄化を抑制することはできないことが確認された。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の包装体は、包装容器内に枝豆を含む青果物を収納してなる包装体において、当該包装体内の枝豆の黄化を極めて高いレベルで抑制できるなど、実用上高い価値を有する技術的効果を実現するものであり、食品加工、流通、外食などの産業の各分野において高い利用可能性を有する。