(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】グラップル装置
(51)【国際特許分類】
B66C 1/44 20060101AFI20230404BHJP
B66C 13/12 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
B66C1/44 B
B66C13/12 D
(21)【出願番号】P 2018211329
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-09-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年3月27日田辺市大塔総合文化会館において開催された「新たな架線集材システム研修会」で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年7月20日田辺市政城山において開催された「新たな架線集材システム見学会」で公開
(73)【特許権者】
【識別番号】508150337
【氏名又は名称】イワフジ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】有吉 実
(72)【発明者】
【氏名】舞草 秀信
(72)【発明者】
【氏名】大沢 和志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 竜也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 裕樹
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3162428(JP,U)
【文献】特開2014-118214(JP,A)
【文献】特開平10-250986(JP,A)
【文献】実開昭57-203073(JP,U)
【文献】実開昭55-054284(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00- 3/20
B66C 13/00-15/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材木伐採地から材木集材地へ伐採された材木を搬送する架線集材システムのグラップル装置であって、
前記架線集材システムは、スカイライン、エンドレスライン、リフティングライン、およびホールバックラインを有するエンドレスタイラー式の架線集材システムとして構成されており、
前記グラップル装置は、前記リフティングラインのワイヤに沿って移動可能に設けられているとともに、前記ホールバックラインによって前記スカイラインの架け渡し方向に交差する横方向に移動可能であり、
前記グラップル装置は、
前記リフティングラインが掛け渡され、前記リフティングラインに沿って移動するための一対の滑車と、
材木を掴むための一対のグラップルアームと、
前記一対のグラップルアームの開閉動作を行うための油圧シリンダと、
前記
一対の滑車の回転により発電を行う発電機と、
前記一対の滑車のそれぞれの回転を増速させるとともに、一つの回転に合成して前記発電機へ伝達する増速機構と、
前記発電機によって発電された電力を充電する蓄電器と、
前記蓄電器に充電された電力により作動する油圧ポンプおよびバルブを有するパワーユニットと、を備え、
前記蓄電器の電力で前記パワーユニットが駆動されることによって、油圧により前記油圧シリンダが作動され、前記一対のグラップルアームが駆動されることを特徴とするグラップル装置。
【請求項2】
請求項1に記載のグラップル装置において、
前記増速機構が、多段階の増速機構として構成されていることを特徴とするグラップル装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のグラップル装置において、
前記
一対の滑車が、前記グラップル装置の本体部に設けられ、
前記一対のグラップルアームが、前記グラップル装置のアーム部に設けられており、
前記アーム部が、前記本体部に対し、旋回機構によって旋回可能に設けられており、
前記蓄電器の電力で前記パワーユニットが駆動されることによって、油圧により前記旋回機構が駆動されることを特徴とするグラップル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架線集材システムに備えられたグラップル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材木の伐採を行う材木伐採地から材木の集材を行う材木集材地へ伐採された材木を搬送する架線集材システムが知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1には、搬器を索条(ワイヤ)に沿って移動させることによって、この搬器に吊り下げた材木を材木集材地まで搬送することが記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載の架線集材システムでは、材木集材地での材木の荷降ろし作業を容易に行うことが可能になっている。しかし、材木伐採地での材木の荷掛け作業を人手によって行わなければならなかった。加えて、荷掛け作業を行うには、例えば険しい山道等を登って材木伐採地まで行く必要があり、荷掛け作業は、作業者にとって煩わしく危険な作業となっていた。
【0004】
その一方で、材木伐採地での人手による荷掛け作業を不要にするために、材木を機械的に掴むことが可能なグラップル装置を用いて、材木を搬送することも検討されている。しかし、この場合、グラップル装置に駆動源を搭載する必要があり、グラップル装置の大型化や重量増加が懸念される。また、そのようなグラップル装置をワイヤに沿って円滑に移動させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述したような実情を考慮してなされたものであって、材木伐採地での人手による荷掛け作業が不要であり、しかも、小型化および軽量化を図ることが可能なグラップル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、材木伐採地から材木集材地へ伐採された材木を搬送する架線集材システムのグラップル装置であって、架線集材システムのワイヤに沿って移動するための滑車と、材木を掴むための一対のグラップルアームと、前記一対のグラップルアームの開閉動作を行うための油圧シリンダと、前記滑車の回転により発電を行う発電機と、前記発電機によって発電された電力を充電する蓄電器と、前記蓄電器に充電された電力により作動する油圧ポンプおよびバルブを有するパワーユニットと、を備え、前記蓄電器の電力で前記パワーユニットが駆動されることによって、油圧により前記油圧シリンダが作動され、前記一対のグラップルアームが駆動されることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、グラップル装置に発電機および蓄電器の両方を搭載しているので、一対のグラップルアームを駆動するための駆動源として、大容量の蓄電器を搭載しなくてもよくなる。これにより、蓄電器の小型化および軽量化を図ることができ、蓄電器を搭載したグラップル装置をワイヤに沿って円滑に移動させることができる。
また、材木伐採地において、グラップル装置に搭載された蓄電器の電力でパワーユニットを駆動することによって、一対のグラップルアームを駆動し、一対のグラップルアームによって材木を左右両側から機械的に容易に掴むことができる。そして、一対のグラップルアームによって材木を掴んだ状態で、材木伐採地から材木集材地まで容易に搬送することができる。また、材木集材地において、蓄電器の電力でパワーユニットを駆動することによって、一対のグラップルアームを駆動し、一対のグラップルアームによって掴まれた材木を解放して、材木集材地の所定の位置に容易に降ろすことができる。
これにより、材木伐採地での人手による荷掛け作業、および材木集材地での人手による荷降ろし作業を不要とすることができ、架線集材システムによって材木伐採地から材木集材地へ材木を容易に搬送することができる。この場合、荷掛け作業を行うために、例えば険しい山道等を登って材木伐採地まで行く必要がなくなり、作業者にとって煩わしく危険な作業である荷掛け作業を行わなくてもよくなる。
【0009】
本発明において、前記滑車の回転が、増速機構を介して前記発電機へ伝達されることが好ましい。この場合、前記増速機構が、多段階の増速機構として構成されていることを特徴とすることが好ましい。この構成によれば、滑車の回転が、増速機構を介して発電機へ伝達されるので、発電機による回生発電を効率よく行うことができる。この場合、増速機構を多段階の増速機構として構成することによって、発電機による回生発電をさらに効率よく行うことができる。
【0010】
本発明において、前記滑車が、前記グラップル装置の本体部に設けられ、前記一対のグラップルアームが、前記グラップル装置のアーム部に設けられており、前記アーム部が、前記本体部に対し、旋回機構によって旋回可能に設けられており、前記蓄電器の電力で前記パワーユニットが駆動されることによって、油圧により前記旋回機構が駆動されることが好ましい。この構成によれば、材木伐採地において、グラップル装置に搭載された蓄電器の電力でパワーユニットを駆動することにより、旋回機構を駆動して、アーム部を本体部に対して旋回させることによって、一対のグラップルアームの向きを、伐採された材木を左右両側から掴めるような向きに変更することができる。このように、材木伐採地で伐採された材木の向きに応じて一対のグラップルアームの向きを容易に変更することができ、一対のグラップルアームによって材木を容易に掴むことができる。
【0011】
本発明において、前記架線集材システムが、スカイライン、エンドレスライン、およびリフティングラインを少なくとも有するエンドレスタイラー式の架線集材システムとして構成されており、前記グラップル装置が、前記リフティングラインのワイヤに沿って移動可能に設けられていることが好ましい。この構成によれば、グラップル装置がリフティングラインのワイヤに沿って移動すると、滑車が回転し、この滑車の回転により発電機で発電された電力が蓄電器に充電され、蓄電器に充電された電力でパワーユニットを駆動することによって一対のグラップルアームが駆動される。このように、グラップル装置に発電機および蓄電器の両方を搭載しているので、一対のグラップルアームを駆動するための駆動源として、大容量の蓄電器を搭載しなくてもよくなる。これにより、蓄電器の小型化および軽量化を図ることができ、蓄電器を搭載したグラップル装置をリフティングラインのワイヤに沿って円滑に移動させることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、グラップル装置に発電機および蓄電器の両方を搭載しているので、一対のグラップルアームを駆動するための駆動源として、大容量の蓄電器を搭載しなくてもよくなる。これにより、蓄電器の小型化および軽量化を図ることができ、蓄電器を搭載したグラップル装置をワイヤに沿って円滑に移動させることができる。しかも、材木伐採地での人手による荷掛け作業、および材木集材地での人手による荷降ろし作業を不要とすることができ、架線集材システムによって材木伐採地から材木集材地へ材木を容易に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る
グラップル装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1のグラップル装置のグラップルアームの開閉動作を示す図である。
【
図3】
図1のグラップル装置の増速機構を示す斜視図である。
【
図4】
図1のグラップル装置を備えた架線集材システムの概略構成を示す図である。
【
図5】
図4の架線集材システムの集材範囲の一例を示す平面図である。
【
図6】
図4の架線集材システムに備えられた架線集材機を示す斜視図である。
【
図7】
図6の架線集材機の油圧回路の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る
グラップル装置3の概略構成を示す図である。
図2は、
図1のグラップル装置3のグラップルアーム3c,3cの開閉動作を示す図である。
図3は、
図1のグラップル装置3の増速機構3eを示す斜視図である。
図4は、
図1のグラップル装置3を備えた架線集材システム100の概略構成を示す図である。
図5は、
図4の架線集材システム100の集材範囲R1の一例を示す平面図である。
図6は、
図4の架線集材システム100に備えられた架線集材機1を示す斜視図である。
図7は、
図6の架線集材機1の油圧回路の概略構成を示す図である。
【0015】
まず、架線集材システム100の概略構成について、
図4、
図5を参照して説明する。本実施形態では、架線集材システム100は、エンドレスタイラー式の架線集材システムとして構成されている。
図4、
図5に示すように、架線集材システム100は、架線集材機1、搬器(キャリッジ)2、グラップル装置3、スカイライン(主索)SKL、エンドレスライン(エンドレス索)ELL、リフティングライン(巻上索)LFL、ホールバックライン(引戻索)HBL等から構成されている。
【0016】
スカイラインSKLは、材木集材地P1と、材木伐採地P3よりも遠い位置に設けられた先柱位置P2との間に架け渡されている。スカイラインSKLは、略一直線状に延びており、例えば、スカイラインSKLの一端が材木集材地P1の樹木等に連結され、スカイラインSKLの他端が先柱位置P2の樹木等に連結されている。
【0017】
スカイラインSKLには、搬器2が滑車Sを介して走行可能に取り付けられている。搬器2には、無限軌道を構成するエンドレスラインELLの両端部が連結されている。エンドレスラインELLは、複数の滑車E、および架線集材機1のエンドレスライン用ウインチ10Eのウインチドラム11Eに掛け渡されている。この場合、滑車Eは、材木集材地P1の近傍や、先柱位置P2の近傍、架線集材機1の近傍等に設置されている。
【0018】
架線集材機1に備えられたエンドレスライン用ウインチ10EによってエンドレスラインELLを走行させることにより、搬器2をスカイラインSKLに沿って移動させることが可能になっている。具体的には、エンドレスラインELLをE1方向へ繰り出すように、エンドレスライン用ウインチ10Eのウインチドラム11Eを駆動することにより、搬器2がスカイラインSKLに沿ってS1方向へ移動する。逆に、エンドレスラインELLをE2方向へ繰り出すように、ウインチドラム11Eを駆動することにより、搬器2がスカイラインSKLに沿ってS2方向へ移動する。
【0019】
搬器2には、一対の滑車La,Laがワイヤ等の連結部材を介して吊り下げられており、これら一対の滑車La,La間には、架線集材機1から引き出されたリフティングラインLFLの中間部分が架け渡されている。一対の滑車La,La間に位置するリフティングラインLFLの中間部分には、グラップル装置3が設けられている。グラップル装置3は、一対の滑車Lb,Lbを介してリフティングラインLFLに吊り下げられている。
【0020】
リフティングラインLFLの一端は、例えば材木伐採地P3の樹木等に連結されている。リフティングラインLFLの他端は、架線集材機1のリフティングライン用ウインチ10Lのウインチドラム11Lに巻回されている。リフティングラインLFLは、上述した一対の滑車La,La、一対の滑車Lb,Lb、材木集材地P1の近傍に設けられた滑車L、架線集材機1の近傍に設けられた滑車L等に掛け渡されている。
【0021】
架線集材機1に備えられたリフティングライン用ウインチ10Lのウインチドラム11LへのリフティングラインLFLの巻き取り・繰り出しを行うことにより、グラップル装置3を昇降させることが可能になっている。具体的には、リフティングラインLFLをウインチドラム11LからL1方向へ繰り出すように、ウインチドラム11Lを駆動することにより、一対の滑車La,La間に位置するリフティングラインLFLの中間部分の長さが大きくなってグラップル装置3が下降する。逆に、リフティングラインLFLをウインチドラム11Lに巻き取るように、ウインチドラム11Lを駆動することにより、上述したリフティングラインLFLの中間部分の長さが小さくなってグラップル装置3が上昇する。
【0022】
グラップル装置3の側面には、架線集材機1から引き出されたホールバックラインHBLの一端が連結されている。ホールバックラインHBLの他端は、架線集材機1のホールバックライン用ウインチ10Hのウインチドラム11Hに巻回されている。ホールバックラインHBLは、スカイラインSKLから離れた位置に設けられた滑車Ha、この滑車Haの近傍に設けられた滑車H、架線集材機1の近傍に設けられた滑車H等に掛け渡されている。ここで、上述した一対の滑車Lb,Lbがグラップル装置3の上側部分(本体部)3aに設けられており、ホールバックラインHBLがグラップル装置3の下側部分(アーム部)3bに連結されている。グラップル装置3の上側部分3aとグラップル装置3の下側部分3bとは、十字継手(自在継手)3dを介して連結されており、下側部分3bが上側部分3aに対して旋回可能に設けられている。グラップル装置3の下側部分3bには、一対のグラップルアーム3c,3cが設けられており、一対のグラップルアーム3c,3cを閉じることによって材木を左右両側から掴みとり、この状態で材木集材地P1へ搬送することが可能になっている。また、一対のグラップルアーム3c,3cを開くことによって掴んだ材木を放して、材木集材地P1へ降ろすことが可能になっている。グラップル装置3の詳細については後述する。
【0023】
架線集材機1に備えられたホールバックライン用ウインチ10Hのウインチドラム11HへのホールバックラインHBLの巻き取り・繰り出しを行うことにより、グラップル装置3をスカイラインSKLの架け渡し方向に交差する横方向に移動させることが可能になっている。この場合、ホールバックライン用ウインチ10Hのウインチドラム11Hの駆動を、上述したリフティングライン用ウインチ10Lのウインチドラム11Lの駆動に同調して行うことによって、グラップル装置3が吊り下げられているリフティングラインLFLの張力が調整されるようになっている。
【0024】
具体的には、リフティングラインLFLをウインチドラム11LからL1方向へ繰り出すように、ウインチドラム11Lを駆動することにより、一対の滑車La,La間に位置するリフティングラインLFLの中間部分の長さが大きくなって、グラップル装置3がスカイラインSKLから離れた横方向へ移動可能になる。この場合、ホールバックラインHBLをウインチドラム11Hに巻き取るように、ウインチドラム11Hを同調して駆動することにより、グラップル装置3が上述した滑車Haへ近づく方向に引っ張られ、スカイラインSKLから離れた横方向へグラップル装置3が移動する。
【0025】
逆に、リフティングラインLFLをウインチドラム11Lに巻き取るように、ウインチドラム11Lを駆動することにより、上述したリフティングラインLFLの中間部分の長さが小さくなって、グラップル装置3がスカイラインSKLへ近づく方向へ引っ張られるようになる。この場合、ホールバックラインHBLをウインチドラム11HからH1方向へ繰り出すように、ウインチドラム11Hを同調して駆動することにより、スカイラインSKLへ近づく方向にグラップル装置3が移動する。
【0026】
このようなホールバックラインHBLの繰り出し・巻き取りにより、グラップル装置3をスカイラインSKLの真下だけではなく、スカイラインSKLから離れた横方向へ移動させることが可能になっている。そして、このようなグラップル装置3の移動により、例えば、
図5に示すような集材範囲R1の材木を集材することが可能になっている。この場合、集材範囲R1は、上述した滑車Haの設置位置を調整することによって、材木伐採地P3を含むような任意の範囲に変更することが可能になっている。なお、ホールバックラインHBLの繰り出し・巻き取りは、上述したエンドレスラインELLの走行による搬器2の移動時や、リフティングラインLFLの繰り出し・巻き取りによるグラップル装置3の昇降時にも同調して行うことが可能になっている。
【0027】
架線集材機1は、
図4、
図6、
図7に示すように、3つのウインチ(エンドレスライン用ウインチ10E、リフティングライン用ウインチ10L、およびホールバックライン用ウインチ10H)と、これら3つのウインチ10E,10L,10Hの駆動源であるエンジン21とを備えた3胴型油圧集材機として構成されている。つまり、架線集材機1には、エンドレスラインELLの巻き取り・繰り出しを行うエンドレスライン用ウインチ10E、リフティングラインLFLの巻き取り・繰り出しを行うリフティングライン用ウインチ10L、およびホールバックラインHBLの巻き取り・繰り出しを行うホールバックライン用ウインチ10Hが搭載されている。各ウインチ10E,10L,10Hを回転駆動するためのウインチ駆動装置の構成部品が、ウインチ本体であるフレームASSY(フレームアッセンブリ)12に搭載されている。フレームASSY12は、エンジン21を内蔵するエンジンフレーム21aと一体的に設けられている。フレームASSY12およびエンジンフレーム21aは、地上に設置されるベースフレーム16上に設けられている。また、リフティングライン用ウインチ10Lおよびホールバックライン用ウインチ10Hの側方には、ウインチカバー17が取り付けられている。
【0028】
ホールバックライン用ウインチ10Hは、架線集材機1の前端部に設けられている。ホールバックライン用ウインチ10Hは、ウインチドラム11HがフレームASSY12に回転自在に支持された構成になっている。ウインチドラム11Hの回転軸は左右方向に沿って延びている。本実施形態では、ホールバックライン用ウインチ10Hのウインチドラム11Hが、フレームASSY12を構成する一対の壁部間に回転自在に支持されている。フレームASSY12の一対の壁部は、左右方向に所定の間隔を隔てて互いに平行に配置されている。ホールバックライン用ウインチ10Hは、ウインチドラム11Hの回転軸方向の両端に、一対の油圧モータ13A,13Bが対向して配置された構成になっており、一対の油圧モータ13A,13Bによって、ウインチドラム11Hを駆動する構成になっている。
【0029】
ホールバックライン用ウインチ10Hの後方側にリフティングライン用ウインチ10Lが設けられている。リフティングライン用ウインチ10Lは、ウインチドラム11LがフレームASSY12に回転自在に支持された構成になっている。ウインチドラム11Lの回転軸は左右方向に沿って延びている。本実施形態では、リフティングライン用ウインチ10Lのウインチドラム11Lが、フレームASSY12を構成する一対の壁部間に回転自在に支持されている。リフティングライン用ウインチ10Lは、ホールバックライン用ウインチ10Hと同様、ウインチドラム11Lの回転軸方向の両端に、一対の油圧モータ13A,13Bが対向して配置された構成になっており、一対の油圧モータ13A,13Bによって、ウインチドラム11Lを駆動する構成になっている。
【0030】
リフティングライン用ウインチ10Lの後方側にエンドレスライン用ウインチ10Eが設けられている。エンドレスライン用ウインチ10Eは、ウインチドラム11EがフレームASSY12に回転自在に支持された構成になっている。ウインチドラム11Eの回転軸は左右方向に沿って延びている。本実施形態では、エンドレスライン用ウインチ10Eのウインチドラム11Eが、フレームASSY12を構成する一対の壁部のうち、一方の壁部の側方に設けられている。エンドレスライン用ウインチ10Eは、ホールバックライン用ウインチ10Hおよびリフティングライン用ウインチ10Lとは異なり、上記一方の壁部に支持された油圧モータ13によって、ウインチドラム11Eを駆動する構成になっている。本実施形態では、油圧モータ13は、3連モータによって構成されている。
【0031】
架線集材機1は、例えば
図7に示すような油圧回路20を備えている。この油圧回路20を介して、3つのウインチ10E,10L,10Hの第1、第2の油圧モータ13A,13Bに供給する作動油を制御することによって、3つのウインチ10E,10L,10Hの駆動制御が行われるようになっている。本実施形態では、図示しない操作レバー等を操作することによって、3つのウインチ10E,10L,10Hの駆動制御をそれぞれ独立して行うことが可能になっている(単独制御)。また、図示しない操作レバー等を操作することによって、上述したように、エンドレスライン用ウインチ10Eや、リフティングライン用ウインチ10Lと同調して、ホールバックライン用ウインチ10Hの駆動制御を行うことが可能になっている(同調制御)。
【0032】
油圧回路20には、主に、作動油を貯留する作動油タンク22、エンジン21によって駆動される油圧ポンプ部23、各ウインチ10E,10L、10Hを駆動するウインチ駆動部24、切換制御部25、同調制御部26、張力制御部27等が備えられている。油圧ポンプ部23には、3つの油圧ポンプ(エンドレスライン用ポンプ23E、リフティングライン用ポンプ23L、およびホールバックライン用ポンプ23H)が備えられている。油圧ポンプ部23は、これら3つの油圧ポンプ23E,23L,23Hが、エンジン21の出力軸に直結されている3連直結型油圧ポンプとして構成されている。本実施形態では、エンジン21側から順に、ホールバックライン用ポンプ23H、エンドレスライン用ポンプ23E、およびリフティングライン用ポンプ23Lが、直列に配置されている。
【0033】
油圧ポンプ部23の各ポンプ23E,23L,23Hは、例えば斜板の傾斜角度を調整することによってポンプ流量(吐出量)を変更可能な可変容量型油圧ポンプとして構成されており、エンジン21の駆動力によって、各ポンプ23E,23L,23Hをそれぞれ駆動可能になっている。この場合、各ポンプ23E,23L,23Hに内蔵された斜板の傾斜角度を調整することによって、各ポンプ23E,23L,23Hの吐出量をそれぞれ独立して制御することが可能になっている。具体的には、各ポンプ23E,23L,23Hの斜板の傾斜角度を0°(中立状態)とすることによって、エンジン21が駆動していたとしても、作動油を吐出しない空転状態に、各ポンプ23E,23L,23Hをそれぞれ独立して制御することが可能になっている。また、各ポンプ23E,23L,23Hの斜板の傾斜角度を正側(プラス側)に制御することによって、正側の油路へ作動油を吐出する正転状態に、各ポンプ23E,23L,23Hをそれぞれ独立して制御することが可能になっている。逆に、各ポンプ23E,23L,23Hの斜板の傾斜角度を負側(マイナス側)に制御することによって、負側の油路へ作動油を吐出する逆転状態に、各ポンプ23E,23L,23Hをそれぞれ独立して制御することが可能になっている。
【0034】
油圧ポンプ部23は、切換制御部25、同調制御部26、張力制御部27等を介して、ウインチ駆動部24に接続されている。切換制御部25には、油圧回路20の油路の切り換えを行うためのバルブ等が備えられている。同調制御部26には、上述したホールバックライン用ウインチ10Hの同調制御を行うためのバルブ等が備えられている。張力制御部27には、エンドレスラインELL、リフティングラインLFL、およびホールバックラインHBLの張力を所定値に保持するためのバルブ等が備えられている。
【0035】
ウインチ駆動部24は、3つのウインチ駆動部(エンドレスライン用ウインチ駆動部24E、リフティングライン用ウインチ駆動部24L、およびホールバックライン用ウインチ駆動部24H)が備えられている。エンドレスライン用ウインチ駆動部24Eは、エンドレスライン用ポンプ23Eに接続されており、エンドレスライン用ポンプ23Eから吐出された作動油がエンドレスライン用ウインチ駆動部24Eの油圧モータ13へ供給されるようになっている。エンドレスライン用ポンプ23Eの駆動状態(正転状態、中立状態、および逆転状態)に応じて、油圧モータ13の駆動状態(正転状態、中立状態、および逆転状態)が切り換えられる。また、エンドレスライン用ポンプ23Eの吐出量に応じて、油圧モータ13の回転速度が制御される。
【0036】
リフティングライン用ウインチ駆動部24Lは、リフティングライン用ポンプ23Lに接続されており、リフティングライン用ポンプ23Lから吐出された作動油がリフティングライン用ウインチ駆動部24Lの第1、第2の油圧モータ13A,13Bへ同時に供給されるようになっている。リフティングライン用ポンプ23Lの駆動状態(正転状態、中立状態、および逆転状態)に応じて、リフティングライン用ウインチ駆動部24Lの第1、第2の油圧モータ13A,13Bの駆動状態(正転状態、中立状態、および逆転状態)が同時に切り換えられる。また、リフティングライン用ポンプ23Lの吐出量に応じて、リフティングライン用ウインチ駆動部24Lの第1、第2の油圧モータ13A,13Bの回転速度が同時に制御される。つまり、リフティングライン用ウインチ駆動部24Lの第1、第2の油圧モータ13A,13Bが、同一方向、且つ同一の回転速度で回転し、この第1、第2の油圧モータ13A,13Bの回転によって、リフティングライン用ウインチ10Lのウインチドラム11Lが駆動するように構成されている。
【0037】
ホールバックライン用ウインチ駆動部24Hは、ホールバックライン用ポンプ23Hに接続されており、ホールバックライン用ポンプ23Hから吐出された作動油がホールバックライン用ウインチ駆動部24Hの第1、第2の油圧モータ13A,13Bへ同時に供給されるようになっている。ホールバックライン用ポンプ23Hの駆動状態(正転状態、中立状態、および逆転状態)に応じて、ホールバックライン用ウインチ駆動部24Hの第1、第2の油圧モータ13A,13Bの駆動状態(正転状態、中立状態、および逆転状態)が同時に切り換えられる。また、ホールバックライン用ポンプ23Hの吐出量に応じて、ホールバックライン用ウインチ駆動部24Hの第1、第2の油圧モータ13A,13Bの回転速度が同一に制御される。つまり、ホールバックライン用ウインチ駆動部24Hの第1、第2の油圧モータ13A,13Bが、同一方向、且つ同一の回転速度で回転し、この第1、第2の油圧モータ13A,13Bの回転によって、ホールバックライン用ウインチ10Hのウインチドラム11Hが駆動するように構成されている。
【0038】
本実施形態では、グラップル装置3に搭載されたバッテリー3jに充電された電力により油圧シリンダ3pを作動させることによって、一対のグラップルアーム3c,3cを駆動するようにしている。以下、
グラップル装置3について、
図1~
図4を参照して説明する。
【0039】
グラップル装置3においては、上述したように、本体部である上側部分3aが、十字継手3dを介して、アーム部である下側部分3bに連結されている。グラップル装置3の上側部分3aには、一対の滑車Lb,Lb、増速機構3e、ラジコン受信機3f、オルタネータ(発電機)3h、バッテリー(蓄電器)3j、パワーユニット(油圧駆動装置)3k等が搭載されている。パワーユニット3kには、電動モータ3l、油圧ポンプ3m、バルブ3n等が備えられている。また、グラップル装置3の下側部分3bには、一対のグラップルアーム3c,3c、油圧シリンダ3p、リンク機構3q等が搭載されている。グラップル装置3の上側部分3aと下側部分3bとの間には、十字継手3d、ローテータ(旋回機構)3r等が設けられている。
【0040】
グラップル装置3の上側部分3aに設けられたオルタネータ3hは、発電リレー3iを介して、バッテリー3jに電気的に接続されており、オルタネータ3hによって発電された電力がバッテリー3jに充電されるようになっている。本実施形態では、一対の滑車Lb,Lbの回転エネルギーをオルタネータ3hによって電気的エネルギーに変換する回生発電を行うようにしている。詳細には、グラップル装置3がリフティングラインLFLに沿って移動すると、一対の滑車Lb,Lbが回転し、この回転が増速機構3eによって増速される。そして、増速機構3eによって増速された回転が、オルタネータ3hに伝達されることによって、オルタネータ3hによる発電が行われる。オルタネータ3hは、一対の滑車Lb,Lbが一方向側へ回転する場合にも発電可能であり、その反対方向側へ回転する場合にも発電可能になっている。例えば、上述したようにグラップル装置3の上昇時および下降時の両方の場合に、オルタネータ3hによる発電が可能になっている。オルタネータ3hによって発電された電力は、発電リレー3iを介してバッテリー3jに充電される。
【0041】
バッテリー3jは、ラジコン受信機3fおよび電動モータ3lに電気的に接続されており、バッテリー3jの電力が、ラジコン受信機3fおよび電動モータ3lにそれぞれ供給される。パワーユニット3kでは、油圧ポンプ3mおよびバルブ3nが電動モータ3lによって駆動されるようになっている。
【0042】
ラジコン受信機3fは、無線通信を介してラジコン送信機3gに通信可能に接続されている。また、ラジコン受信機3fは、発電リレー3i、バッテリー3j、および電動モータ3lに接続されている。ラジコン送信機3gは、グラップル装置3から離れた位置にある操作装置(図示省略)に設けられており、例えば材木集材地P1付近の作業者が、この操作装置を操作することによって、グラップル装置3の遠隔操作が可能になっている。この場合、材木集材地P1付近の作業者が操作装置を操作すると、その操作信号がラジコン送信機3gから送信される。そして、ラジコン送信機3gから送信された操作信号が、ラジコン受信機3fによって受信されると、その操作信号に応じて、発電リレー3i、バッテリー3j、および電動モータ3lが作動されるようになっている。これにより、バッテリー3jの充電制御や、パワーユニット3kによるグラップルアーム3c,3cの駆動制御、パワーユニット3kによるローテータ3rの駆動制御を、遠隔操作によって行うことが可能になっている。なお、ラジコン受信機3fおよびラジコン送信機3g以外の通信手段によって、グラップル装置3の遠隔操作を行ってもよい。
【0043】
グラップル装置3の下側部分3bに設けられた一対のグラップルアーム3c,3cは、油圧シリンダ3pによって開閉駆動される。バッテリー3jの電力によってパワーユニット3kの電動モータ3lが駆動され、パワーユニット3kの油圧ポンプ3mおよびバルブ3nが作動すると、パワーユニット3kを介して油圧シリンダ3pに作動油が供給される。これにより、油圧シリンダ3pが伸縮動作し、この油圧シリンダ3pの伸縮動作がリンク機構3qを介して伝達されることによって、一対のグラップルアーム3c,3cが開閉動作する。具体的には、油圧シリンダ3pの収縮動作により、一対のグラップルアーム3c,3cが開く方向に動作する。逆に、油圧シリンダ3pの伸張動作により、一対のグラップルアーム3c,3cが閉じる方向に動作する。本実施形態では、一対のグラップルアーム3c,3cは、
図2の実線で示す開放位置と、2点鎖線で示す閉鎖位置との間で動作可能になっている。
【0044】
そして、一対のグラップルアーム3c,3cが開いており、一対のグラップルアーム3c,3c間に材木が位置している状態で、油圧シリンダ3pを伸張動作させることによって、一対のグラップルアーム3c,3cが徐々に閉じていき、一対のグラップルアーム3c,3cにより左右両側から材木が掴まれる(挟み込まれる)。一対のグラップルアーム3c,3cで材木を掴んだ状態で、架線集材機1を駆動することによって材木を上方へ持ち上げ、さらには、材木を材木集材地P1まで搬送することが可能になっている。また、材木集材地P1まで搬送した材木を一対のグラップルアーム3c,3cで掴んだ状態で、架線集材機1を駆動することによって材木を下方へ降下させることが可能になっている。
【0045】
逆に、一対のグラップルアーム3c,3cで材木を掴んだ状態で、油圧シリンダ3pを収縮動作させると、一対のグラップルアーム3c,3cが徐々に開いていき、一対のグラップルアーム3c,3cから材木が解放される。これにより、材木集材地P1まで搬送された材木を所定位置で降ろすことが可能になっている。
【0046】
グラップル装置3の上側部分3aと下側部分3bとの間に設けられたローテータ3rは、バッテリー3jの電力でパワーユニット3kを駆動することによって駆動される。つまり、バッテリー3jの電力によってパワーユニット3kの電動モータ3lが駆動され、これにより、パワーユニット3kの油圧ポンプ3mおよびバルブ3nが作動することで、ローテータ3rに作動油が供給される。これにより、ローテータ3rが回転動作し、ローテータ3rの回転動作に応じて、グラップル装置3の上側部分3aに対し、下側部分3bが旋回される。
【0047】
本実施形態では、増速機構3eは、
図3に示すように、3段階の増速機構として構成されている。つまり、増速機構3eは、一対の第1増速機構31,31、第2増速機構32、および第3増速機構33を備えている。
【0048】
一対の第1増速機構31,31は、ともに同様の構成になっており、各第1増速機構31は、滑車Lbと同軸上に設けられた大径ギヤ31aと、小径ギヤ31cとが、増速用チェーン31bによって連結された構成になっている。増速用チェーン31bには、アイドラスプロケット31dによって所定の張力が付与されている。各第1増速機構31によって、滑車Lbの回転が、大径ギヤ31aおよび小径ギヤ31cのギヤ比に応じて増速される。
【0049】
第2増速機構32は、各第1増速機構31の小径ギヤ31cと同軸上に設けられた大径プーリ32a,32aと、小径プーリ32cとが、増速用ベルト32bによって連結された構成になっている。増速用ベルト32bには、オートテンショナ32dによって所定の張力が付与されている。第2増速機構32によって、第1増速機構31の小径ギヤ31cの回転が、大径プーリ32aおよび小径プーリ32cのプーリ比(径比)に応じて増速される。また、第2増速機構32によって、一対の滑車Lb,Lbのそれぞれの回転が、1つの小径プーリ32cの回転として合成されるようになっている。
【0050】
第3増速機構33は、第2増速機構32の小径プーリ32cと同軸上に設けられた大径プーリ33aと、オルタネータ3hの入力軸上に一体的に設けられた小径プーリ33cとが、増速用ベルト33bによって連結された構成になっている。第3増速機構33によって、第2増速機構32の小径プーリ32cの回転が、大径プーリ33aおよび小径プーリ33cのプーリ比(径比)に応じて増速される。このように、増速機構3eの第1~第3増速機構31~33によって、一対の滑車Lb,Lbの回転が、3段階に増速されてオルタネータ3hに入力されるようになっている。
【0051】
本実施形態では、上述したように、グラップル装置3には、架線集材システム100のリフティングラインLFLに沿って移動するための一対の滑車Lb,Lbと、材木を掴むための一対のグラップルアーム3c,3cと、一対のグラップルアーム3c,3cの開閉動作を行うための油圧シリンダ3pと、一対の滑車Lb,Lbの回転により発電を行うオルタネータ3hと、オルタネータ3hによって発電された電力を充電するバッテリー3jと、バッテリー3jの電力により作動する油圧ポンプ3mおよびバルブ3nを有するパワーユニット3kとが設けられている。そして、バッテリー3jの電力でパワーユニット3kを駆動し、パワーユニット3kの油圧により油圧シリンダ3pを作動させることによって、一対のグラップルアーム3c,3cが駆動されることを特徴としている。つまり、バッテリー3jの電力がパワーユニット3kによって油圧に変換され、パワーユニット3kによって変換された油圧により一対のグラップルアーム3c,3cが駆動されるように構成されている。
【0052】
本実施形態によれば、グラップル装置3がリフティングラインLFLに沿って移動すると、一対の滑車Lb,Lbが回転し、一対の滑車Lb,Lbの回転によりオルタネータ3hで発電された電力がバッテリー3jに充電される。バッテリー3jに充電された電力によりパワーユニット3kが駆動され、パワーユニット3kの油圧により一対のグラップルアーム3c,3cが駆動される。本実施形態では、グラップル装置3にオルタネータ3hおよびバッテリー3jの両方を搭載しているので、一対のグラップルアーム3c,3cを駆動するための駆動源として、大容量のバッテリー3jを搭載しなくてもよくなる。これにより、バッテリー3jの小型化および軽量化を図ることができ、バッテリー3jを搭載したグラップル装置3をリフティングラインLFLに沿って円滑に移動させることができる。
【0053】
また、材木伐採地P3において、グラップル装置3に搭載されたバッテリー3jの電力でパワーユニット3kを駆動することによって、一対のグラップルアーム3c,3cを駆動し、一対のグラップルアーム3c,3cによって材木を左右両側から機械的に容易に掴むことができる。そして、一対のグラップルアーム3c,3cによって材木を掴んだ状態で、材木伐採地P3から材木集材地P1まで容易に搬送することができる。また、材木集材地P1において、バッテリー3jの電力でパワーユニット3kを駆動することによって、一対のグラップルアーム3c,3cを駆動し、一対のグラップルアーム3c,3cによって掴まれた材木を解放して、材木集材地P1の所定の位置に容易に降ろすことができる。これにより、材木伐採地P3での人手による荷掛け作業、および材木集材地P1での人手による荷降ろし作業を不要とすることができ、架線集材システム100によって材木伐採地P3から材木集材地P1へ材木を容易に搬送することができる。この場合、荷掛け作業を行うために、例えば険しい山道等を登って材木伐採地まで行く必要がなくなり、作業者にとって煩わしく危険な作業である荷掛け作業を行わなくてもよくなる。
【0054】
また、本実施形態では、一対の滑車Lb,Lbの回転が、増速機構3eを介してオルタネータ3hへ伝達されるので、オルタネータ3hによる回生発電を効率よく行うことができる。この場合、増速機構3eが、第1~第3増速機構31~33を有する3段階の増速機構として構成されているので、オルタネータ3hによる回生発電をさらに効率よく行うことができる。
【0055】
また、本実施形態では、一対のグラップルアーム3c,3cが搭載された下側部分3bが、一対の滑車Lb,Lbが搭載された上側部分3aに対し、ローテータ3rによって旋回可能に設けられている。そして、バッテリー3jに充電された電力によりパワーユニット3kが駆動され、パワーユニット3kによってバッテリー3jの電力が油圧に変換され、パワーユニット3kの油圧によりローテータ3rが駆動される。これにより、材木伐採地P3において、グラップル装置3に搭載されたバッテリー3jの電力でパワーユニット3kを駆動することによって、ローテータ3rを駆動して、下側部分3bを上側部分3aに対して旋回させることによって、一対のグラップルアーム3c,3cの向きを、伐採された材木を左右両側から掴めるような向きに変更することができる。このように、材木伐採地P3で伐採された材木の向きに応じて一対のグラップルアーム3c,3cの向きを容易に変更することができ、一対のグラップルアーム3c,3cによって材木を容易に掴むことができる。
【0056】
今回、開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、前記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【0057】
上記実施形態では、グラップル装置3の上側部分(本体部)に、増速機構3e、ラジコン受信機3f、オルタネータ3h、バッテリー3j、パワーユニット3k等の構成部品を配置したが、これに限らず、これらの構成部品のうち一部または全部を、グラップル装置3の下側部分(アーム部)に設ける構成としてもよい。
【0058】
上記実施形態では、増速機構3eが、第1~第3増速機構31~33を有する3段階の構成であったが、これに限らず、増速機構3eは、1段階の構成であってもよいし、2段階の構成であってもよいし、あるいは、4段階以上の構成であってもよい。
【0059】
上記実施形態では、エンドレスタイラー式の架線集材システム100に備えられたグラップル装置3に本発明を適用した場合について説明した。しかし、これに限らず、上記以外の方式の架線集材システムに用いられるグラップル装置に本発明を適用してもよい。例えば架線集材システムが、リフティングラインLFL以外のワイヤに沿ってグラップル装置が移動可能な構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、架線集材システムに備えられたグラップル装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 架線集材機
2 搬器
3 グラップル装置
3a 上側部分(本体部)
3b 下側部分(アーム部)
3c グラップルアーム
3e 増速機構
3h オルタネータ(発電機)
3j バッテリー(蓄電器)
3k パワーユニット
3m 油圧ポンプ
3n バルブ
3p 油圧シリンダ
3r ローテータ(旋回機構)
100 架線集材システム
LFL リフティングライン
Lb 滑車