(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】乾燥食肉製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23B 4/03 20060101AFI20230404BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20230404BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20230404BHJP
【FI】
A23B4/03 501A
A23B4/03 501E
A23L13/00 Z
A23L13/60 A
(21)【出願番号】P 2018230558
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000113067
【氏名又は名称】プリマハム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173511
【氏名又は名称】公益財団法人函館地域産業振興財団
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慶一
(72)【発明者】
【氏名】丹治 宏之
(72)【発明者】
【氏名】小西 靖之
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-160666(JP,A)
【文献】特開平07-194342(JP,A)
【文献】特開2013-021933(JP,A)
【文献】特開2012-044959(JP,A)
【文献】特開2010-284117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B4
A23L13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを順次備えることを特徴とする乾燥食肉製品の製造方法。
(A)食肉原料をケーシングに充填してなる食肉充填ケーシングを、温度60℃以上かつ相対湿度80%
~95%で0.5~8時間乾燥するステップ;
(B)前記食肉充填ケーシングを、温度25℃以下かつ相対湿度75%以下で引き続き乾燥するステップ;
【請求項2】
食肉原料が、練り肉であることを特徴とする請求項1に記載の乾燥食肉製品の製造方法。
【請求項3】
食肉充填ケーシングが、ステップ(A)の前に50~90℃で1~6時間加熱処理されることを特徴とする請求項1又は2に記載の乾燥食肉製品の製造方法。
【請求項4】
乾燥食肉製品の水分量が5~55質量%であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の乾燥食肉製品の製造方法。
【請求項5】
乾燥食肉製品が、ドライソーセージ又はセミドライソーセージであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の乾燥食肉製品の製造方法。
【請求項6】
ケーシングを有する乾燥食肉製品であって、表面と中心との水分活性差が0.05以上であり、かつ水分量が5~55質量%であることを特徴とする前記乾燥食肉製品。
【請求項7】
練り肉を含むことを特徴とする請求項6に記載の乾燥食肉製品。
【請求項8】
ドライソーセージ又はセミドライソーセージであることを特徴とする請求項6又は7に記載の乾燥食肉製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥食肉製品及びその製造方法に関し、詳しくは、乾燥食肉製品の製造における乾燥期間の短縮方法、並びに、表面はかみごたえがあり、一方で中心はやわらかな新しい食感を有する、ドライソーセージ等のケーシングを有する乾燥食肉製品に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥食肉製品とは、食肉を乾燥させることで、保存性を高め、独特の風味や食感を付与した食肉製品をいい、ドライソーセージ、セミドライソーセージ、ビーフジャーキー等を例示することができる。中でも、サラミ、カルパス等のドライソーセージは、保存性が高く、独特の硬い食感を有し、酒のつまみ等として広く食されている。乾燥食肉製品の製造においては、まず高温で短時間乾燥させ、その後乾燥ムラを防ぐために低温乾燥を行うことが一般的に行われているが、従来の乾燥方法では乾燥期間が長いことから、期間短縮による生産性向上及びコスト低減が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2013-21933)には、サラミの乾燥工程において、減圧、通電させることで、乾燥期間を短縮できることが開示されている。また、特許文献2(特開2017-139991)には、食肉塊を吸水シートで包装した状態で乾燥工程に供することにより、恒率乾燥期間を持続させ、それにより乾燥期間を短縮させる方法が記載されている。
【0004】
また、乾燥食肉製品は、その硬い食感から、子供や高齢者にとっては咀嚼が困難であり、敬遠される要因となっていた。かかる問題点を解決するための試みがなされており、例えば特許文献3(特開2003-259840)には、ケーシングがされておらず且つ含泡状であることを特徴とする乾燥食肉製品が記載されている。また、特許文献4(特開2011-160666)には、組織状大豆蛋白をドライソーセージ生地にほぼ均一に存在させることにより、ドライソーセージ類の歯切れ感を向上させ、食感を改質する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-21933号公報
【文献】特開2017-139991号公報
【文献】特開2003-259840号公報
【文献】特開2011-160666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、乾燥食肉製品の製造における乾燥期間を短縮し、かつ食感に優れたドライソーセージ等の乾燥食肉製品を効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、乾燥食肉製品の製造において、原料と乾燥工程とを鋭意検討した結果、食肉原料をケーシングに充填してなる食肉充填ケーシングを、高温高湿下で一定期間乾燥させた後に低温乾燥に供することにより、乾燥期間を短縮できるだけでなく、表面はかみごたえがあり、一方で中心はやわらかな新しい食感を有する乾燥食肉製品を製造できることを見いだした。さらに、低温乾燥期間において、相対湿度を変動させることで、さらに乾燥期間を短縮することができた。本発明は、以上の知見に基づくものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下の事項により特定されるとおりのものである。
(1)以下のステップを順次備えることを特徴とする乾燥食肉製品の製造方法。
(A)食肉原料をケーシングに充填してなる食肉充填ケーシングを、温度60℃以上かつ相対湿度80%以上で0.5~8時間乾燥するステップ;
(B)前記食肉充填ケーシングを、温度25℃以下かつ相対湿度75%以下で引き続き乾燥するステップ;
(2)食肉原料が、練り肉であることを特徴とする上記(1)に記載の乾燥食肉製品の製造方法。
(3)食肉充填ケーシングが、ステップ(A)の前に50~90℃で1~6時間加熱処理されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の乾燥食肉製品の製造方法。
(4)乾燥食肉製品の水分量が5~55質量%であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の乾燥食肉製品の製造方法。
(5)乾燥食肉製品が、ドライソーセージ又はセミドライソーセージであることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかに記載の乾燥食肉製品の製造方法。
(6)ケーシングを有する乾燥食肉製品であって、表面と中心との水分活性差が0.05以上であり、かつ水分量が5~55質量%であることを特徴とする前記乾燥食肉製品。
(7)練り肉を含むことを特徴とする上記(6)に記載の乾燥食肉製品。
(8)ドライソーセージ又はセミドライソーセージであることを特徴とする上記(6)又は(7)に記載の乾燥食肉製品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、従来の方法よりも短時間で乾燥食肉製品を製造できるだけでなく、表面はかみごたえがあり、一方で中心はやわらかであるという、これまでにない新しい食感を有する乾燥食肉製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1における、乾燥工程中の製品の歩留まりを示す図である。
【
図2】実施例3における、乾燥工程中の製品の歩留まりを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、食肉原料をケーシングに充填してなる食肉充填ケーシングを、温度60℃以上かつ相対湿度80%以上で0.5~8時間乾燥するステップ(A)、及び前記食肉充填ケーシングを、温度25℃以下かつ相対湿度75%以下で引き続き乾燥するステップ(B)を順次備えることを特徴とする、乾燥食肉製品の製造方法に関する。以下、本明細書において、ステップ(A)を「高温高湿乾燥」、ステップ(B)を「低温乾燥」ということがある。
【0012】
本発明において、食肉原料とは、食肉を、ケーシングに充填できるよう加工したものを意味し、食肉充填ケーシングとは、該食肉原料を、ケーシングに充填してなる食肉素材を意味する。ここで、食肉原料は、食肉塊やスライス肉であっても、細切れ肉、成型肉、挽き肉や、挽き肉に任意で香辛料、調味料、結着剤、脂質等を加え混練してなる練り肉であってもよいが、中でも挽き肉又は練り肉が好ましい。また、食肉としては、牛肉、豚肉、馬肉、羊肉、山羊肉等の畜肉、家禽肉、家兎肉、鰹や鮪等の魚肉、及び鯨肉を挙げることができ、中でも牛肉、豚肉、馬肉、羊肉、山羊肉等の畜肉、家禽肉、家兎肉が好ましく、牛肉、豚肉がより好ましい。
【0013】
また、本発明において、食肉原料は塩漬処理されていてもよい。塩漬処理の方法としては、食塩、発色剤(亜硝酸ナトリウム等)、結着剤(リン酸塩、ゼラチン、でん粉、小麦粉、コーンミール、植物性たん白、乳たん白等)、調味料(グルタミン酸ナトリウム、砂糖、酒、香辛料等)、酸化防止剤(アスコルビン酸ナトリウム等)、甘味料、着色料、品質改良剤(pH調整剤、保存料、ジグリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステル等)などを含む塩漬剤を直接食肉塊にすりこむか、挽き肉に混ぜ込む乾塩漬、塩漬剤を溶かした塩漬液(ピックル)に肉塊をつけこむ湿塩漬、食肉塊に塩漬液を注入するピックル注入が挙げられる。ピックル注入は、食肉塊に塩漬液を均一に注入するため、直進水流噴射ノズルを用いて高圧注入を行ってもよい。
【0014】
ケーシングとしては、食品製造に使用することのできるケーシングであれば特に制限されないが、羊腸(緬羊、山羊、ラム由来)、豚腸、牛腸等の天然ケーシング、或いは、コラーゲン、アルギン酸等から作製される可食性ケーシング又はプラスチック、セルロース等から作製される非可食性ケーシング等の人工ケーシング等を例示することができ、中でも人工ケーシング、より好ましくは可食性ケーシングを好適に例示することができる。ケーシングの太さとしては、例えば直径10~50mm、好ましくは15~40mm、より好ましくは20~35mmを挙げることができる。
【0015】
本発明において、ステップ(A)の高温高湿乾燥は、温度60℃以上かつ相対湿度80%以上で乾燥する工程であれば特に制限されないが、好ましい温度条件としては、例えば60℃~90℃、より好ましくは60℃~85℃、さらに好ましくは65℃~80℃、さらにより好ましくは65℃~75℃を挙げることができ、好ましい相対湿度条件としては、例えば80%~95%、より好ましくは85%~95%、さらに好ましくは90%~95%を挙げることができる。ステップ(A)の乾燥時間は適宜設定することができるが、好ましくは0.5~8時間、より好ましくは1~7時間、さらに好ましくは2~6時間を挙げることができる。高温高湿乾燥の手段としては、熱風乾燥、送風乾燥、通風乾燥、除湿乾燥、加湿乾燥、上記温度及び相対湿度に設定した環境下での静置乾燥など、いかなる公知の乾燥方法を用いてもよいが、好ましくは熱風乾燥を挙げることができる。
【0016】
本発明において、ステップ(B)の低温乾燥は、温度25℃以下かつ相対湿度75%以下で乾燥する工程であれば特に制限されないが、好ましい温度条件としては、例えば0℃~25℃や4℃~25℃、より好ましくは4℃~23℃、さらに好ましくは10℃~20℃、さらにより好ましくは15℃~20℃を挙げることができ、好ましい相対湿度条件としては、例えば25%~75%、より好ましくは35%~70%、さらに好ましくは45%~65%、さらにより好ましくは55%~65%を挙げることができる。ステップ(B)の乾燥時間は適宜設定することができ、例えば5~15日、好ましくは6~14日、より好ましくは7~13日、さらに好ましくは7~12日、さらにより好ましくは8~11日を挙げることができる。また、相対湿度75%以下の範囲であれば、相対湿度差が3%~30%、好ましくは5%~20%、より好ましくは5%~15%、さらに好ましくは5%~10%となるように低湿度状態と高湿度状態を設定し、その間で相対湿度を交互に変動させてもよく、インターバル(低湿度状態や高湿度状態の保持時間)は、例えば1~10時間、好ましくは3~8時間、より好ましくは5~7時間を挙げることができる。低温乾燥の手段としては、冷風乾燥、送風乾燥、通風乾燥、除湿乾燥、加湿乾燥、上記温度及び相対湿度に設定した環境下での静置乾燥など、いかなる公知の乾燥方法を用いてもよいが、好ましくは通風乾燥装置(乾燥庫)を用いた通風乾燥を挙げることができる。
【0017】
本発明の好ましい態様において、ステップ(A)の高温高湿乾燥とステップ(B)の低温乾燥は順次1回ずつ行われるが、ステップ(A)の高温高湿乾燥とステップ(B)の低温乾燥を、乾燥終了まで交互に2回以上行ってもよい。本発明において、乾燥終了の指標としては、水分量、水分活性、歩留まり等を用いることができる。水分量を指標として用いる場合、例えば食品中の水分量が70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下となったときに乾燥終了とすることができ、食品中の水分量が5~70質量%、好ましくは5~55質量%、より好ましくは10~45質量%、さらに好ましくは15~35質量%になったときに、乾燥終了としてもよい。水分活性を指標として用いる場合、例えば水分活性が0.96以下、0.95以下、0.94以下、0.92以下、0.90以下、又は0.86以下となったときに乾燥終了とすることができる。高温高湿乾燥開始時からの歩留まりを指標として用いる場合、例えば歩留まりが90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下となったときに乾燥終了とすることができる。
【0018】
一態様では、ステップ(A)の高温高湿乾燥に先立って、食肉充填ケーシングを加熱処理に供してもよい。ここで、加熱処理とは、嗜好性向上、栄養価向上、消毒、保存性向上等の目的で食肉充填ケーシングに熱を加える処理を意味し、ボイル、焼き、炒め、揚げ、蒸し、炒り、あぶり、燻煙、マイクロ波加熱、ジュール加熱等のいかなる公知の方法を用いることができ、中でも燻煙が好ましい。加熱処理の温度としては、例えば、50℃~90℃、好ましくは50℃~80℃、より好ましくは55℃~75℃を挙げることができ、処理時間としては、例えば、1~6時間、好ましくは3~6時間、より好ましくは4~6時間を挙げることができる。
【0019】
本発明において、乾燥食肉製品とは、食肉充填ケーシングを乾燥してなる食肉製品を意味する。本発明の乾燥食肉製品の水分量としては、5~70質量%、好ましくは5~55質量%、より好ましくは10~45質量%、さらに好ましくは15~35質量%を例示することができる。本発明の乾燥食肉製品としては、ハム、ソーセージ、生ハム、ドライソーセージ、セミドライソーセージを例示することができ、中でもドライソーセージ(水分量35質量%以下)又はセミドライソーセージ(水分量35~55質量%)が好ましく、太さとしては、好ましくは直径10~50mm、より好ましくは15~40mm、さらに好ましくは20~35mmを挙げることができる。ドライソーセージには、サラミ、カルパスが包含される。
【0020】
本発明の製造方法により得られる乾燥食肉製品は、表面はかみごたえがあり、一方で中心はやわらかであるという新しい食感を有する。上記食感の指標としては、例えば乾燥食肉製品の表面部と中心部との水分活性差や硬さの差を挙げることができる。ここで、表面部とは、乾燥食肉製品の表面から中心(重心)までの深さの、表面側1/3の領域を意味し、中心部とは、乾燥食肉製品の表面から中心(重心)までの深さの、中心側1/3の領域を意味する。なお、本明細書において、中間部とは、表面部と中心部の間の領域を意味する。水分活性差を指標として用いる場合、表面部と中心部との水分活性差は、0.05以上、好ましくは0.06以上を挙げることができ、水分活性差の上限としては、0.07、0.08、0.09、0.10を例示することができ、水分活性差の範囲としては、0.05~0.07、0.05~0.08、0.05~0.09、0.05~0.10、0.06~0.07、0.06~0.08、0.06~0.09、0.06~0.10を挙げることができる。また、乾燥食肉製品の硬さは、公知のいかなる方法を用いて測定してもよく、例えば、クリープメーターを用いて測定した30%歪み時の応力を、乾燥食肉製品の硬さとすることができる。
【0021】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
1.高温乾燥による乾燥期間短縮効果
本実施例では、ドライソーセージの製造において、低温乾燥に先立って高温乾燥を行うことにより乾燥時間が短縮されるかどうかを検証した。
【0023】
1-1 方法
原料肉(豚肉、馬肉、マトンミンチ80質量部等)を、食塩、糖類(還元水あめ、砂糖、ぶどう糖)、香辛料、発色製剤、酸化防止剤(アスコルビン酸Na等)、リン酸塩製剤、調味料(アミノ酸等)等を含む塩漬剤、並びに調味料とともに高速で混合し、以下の表1に記載の組成の練り肉を得た。
【0024】
【0025】
得られた練り肉を、アルギン酸等からなる人工ケーシングに充填し、スモークハウス中で4時間燻煙及び加熱した。上記によって製造された食肉充填ケーシングを、以下に示す条件で乾燥処理に供し、水分活性が0.870未満になった時点で乾燥終了とし(乾燥開始時からの歩留まり目安:65質量%以下)、乾燥開始からの時間を比較した。なお、RHは相対湿度(Relative Humidity)を表す。
(1)18℃/RH75%
(2)18℃/RH60%
(3)70℃/RH5%で4時間乾燥後、18℃/RH60%
(4)70℃/RH95%で4時間乾燥後、18℃/RH60%
【0026】
また、得られたドライソーセージの含水率(湿式)、色差計測定、硬さ測定を行った。含水率(湿式)は、(水分量/全体質量)×100(%/WB)として算出した。色差(ΔE)は、乾燥前と乾燥終了後の色調変化(Lab)を、色差計(CR-400a、コニカミノルタ社製)で測定した。硬さ測定は、クリープメーター(RE-3305C、株式会社山電製)を用い、30%歪み時の応力を測定することで行った。
【0027】
1-2 結果
結果を
図1及び表2に示す。高温高湿乾燥を行わない条件(1)、(2)と比較すると、高温高湿乾燥を低温乾燥前に加えた条件(4)で乾燥時間を220時間に短縮することができた。一方で、低湿度(RH5%)で高温乾燥を行った場合、低温乾燥期における乾燥効率が悪くなり、乾燥時間が十分に短縮されないことがわかった(
図1参照)。また、高温高湿乾燥を低温乾燥前に加えた条件(4)では、条件(1)~(3)で乾燥した製品と比較してやや柔らかいドライソーセージが製造できた。いずれの条件でも、目視での色調に差は見られず、色差計測定でも顕著な差は見られなかった。
【0028】
【実施例2】
【0029】
2.本発明のドライソーセージの食感についての検討
本実施例では、本発明の製造方法で得られたドライソーセージの食感を、ドライソーセージの水分活性を指標として検証した。
【0030】
2-1 方法
実施例1と同様の方法で製造した食肉充填ケーシングを、実施例1における条件(2)(高温乾燥処理なし)及び(4)(高温乾燥処理あり)で水分活性が0.870未満になるまで乾燥して、ケーシングありのドライソーセージを製造した。また、実施例1と同様の方法で製造した練り肉を、ケーシングに充填せずに直径約30mm、長さ約160mmの棒状に成型した食肉原料を、実施例1における条件(2)(高温乾燥処理なし)及び(4)(高温乾燥処理あり)で水分活性が0.870未満になるまで乾燥して、ケーシングなしのドライソーセージを製造した。
【0031】
上記の方法で得たドライソーセージを中心から表面までの深さを3等分し、中心側1/3の領域である中心部、表面側1/3の領域である表面部、両者の中間である中間部の3領域について、水分活性計(Lab MASTER-aw、ノバシーナ社製)を用いて水分活性(Aw)を測定した。
【0032】
2-2 結果
水分活性値を、表3に示す。本発明の製造方法による、ケーシングあり、高温乾燥処理ありのドライソーセージで、他の製品より表面部と中心部との水分活性の幅が大きくなった。水分活性は、低いほど食感が硬く、高いほど食感が柔らかいため、本発明の製造方法で得られたドライソーセージの表面は硬く、中心は柔らかな食感の製品であることがわかった。
【0033】
【実施例3】
【0034】
3.低温乾燥中の相対湿度変動による乾燥時間短縮
本実施例では、ドライソーセージの製造において、低温乾燥中に相対湿度60%及び75%の間で相対湿度を変動させることにより、乾燥時間が短縮されるかどうかを検証した。
【0035】
3-1 方法
実施例1と同様の方法で製造した食肉充填ケーシングを、以下に示す条件で乾燥処理に供し、水分活性が0.870未満になった時点で乾燥終了とし(乾燥開始時からの歩留まり目安:65質量%以下)、乾燥開始からの時間を比較した。ここで、「⇔」は、乾燥期間中に相対湿度を交互に変更することを意味し、インターバルとは、低湿度状態(相対湿度60%)と高湿度状態(相対湿度75%)それぞれの保持時間を意味する。
(1)18℃/RH75%
(2)18℃/RH60%
(3)18℃/RH75%⇔60%/インターバル16時間
(4)18℃/RH75%⇔60%/インターバル6時間
(5)18℃/RH75%⇔60%/インターバル3時間
【0036】
また、得られたドライソーセージの含水率(湿式)、色差計測定、硬さ測定を行った。含水率(湿式)は、(水分量/全体質量)×100(%/WB)として算出した。色差(ΔE)は、乾燥前と乾燥終了後の色調変化(Lab)を、色差計(CR-400a、コニカミノルタ社製)で測定した。硬さ測定は、クリープメーター(RE-3305C、株式会社山電製)を用い、30%歪み時の応力を測定することで行った。
【0037】
3-2 結果
結果を
図2及び表4に示す。インターバル6時間で相対湿度を変動させた条件(4)で、乾燥時間を222時間に短縮することができた。また、条件(4)で得られたドライソーセージは、硬さ、色調とも、他の乾燥条件で乾燥させたドライソーセージと同等の品質であった。ここでの結果より、本発明の製造方法におけるステップ(B)において、相対湿度を低湿度状態と高湿度状態の間で交互に変動させることにより、乾燥時間を短縮し得ることがわかった。
【0038】
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の製造方法によれば、従来の方法と比較して短時間で乾燥食肉製品を製造することができる。また、本発明の製造方法により得られる乾燥食肉製品は、表面はかみごたえがあり、一方で中心はやわらかであるという、これまでにない新しい食感を有する乾燥食肉製品であり、新たな需要者を開拓できるという点で、食品分野における産業上の利用可能性は高い。