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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】CD40Lを阻害するポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20230404BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20230404BHJP
   A61K 47/68 20170101ALN20230404BHJP
   A61P 1/04 20060101ALN20230404BHJP
   A61P 3/10 20060101ALN20230404BHJP
   A61P 7/04 20060101ALN20230404BHJP
   A61P 9/10 20060101ALN20230404BHJP
   A61P 11/06 20060101ALN20230404BHJP
   A61P 13/12 20060101ALN20230404BHJP
   A61P 17/06 20060101ALN20230404BHJP
   A61P 19/02 20060101ALN20230404BHJP
   A61P 21/04 20060101ALN20230404BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20230404BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20230404BHJP
   A61P 37/06 20060101ALN20230404BHJP
   A61P 37/08 20060101ALN20230404BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20230404BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230404BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
A61K39/395 Y
A61K47/68
A61P1/04
A61P3/10
A61P7/04
A61P9/10 101
A61P9/10 103
A61P11/06
A61P13/12
A61P17/06
A61P19/02
A61P21/04
A61P25/00
A61P29/00 101
A61P37/06
A61P37/08
C07K16/46
C12N15/13
C12P21/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018527745
(86)(22)【出願日】2016-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2016079048
(87)【国際公開番号】W WO2017089618
(87)【国際公開日】2017-06-01
【審査請求日】2019-11-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】62/260,411
(32)【優先日】2015-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/345,967
(32)【優先日】2016-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505166225
【氏名又は名称】アブリンクス エン.ヴェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】パッティン,エルス
(72)【発明者】
【氏名】ソムペル,アリエラ ヴァン デ
(72)【発明者】
【氏名】メールツ,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】バイセ,マリー-アンジュ
(72)【発明者】
【氏名】デヴィルデ,マーテン
(72)【発明者】
【氏名】ベシュテ,ゲラルト
(72)【発明者】
【氏名】フラッハ,ジャロミル
(72)【発明者】
【氏名】ス,ジョナサン
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】上條 肇
【審判官】牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/143209(WO,A1)
【文献】特開2012-167112(JP,A)
【文献】THE JOURNAL OF IMMUNOLOGY,2014,Vol.192,No.9,p.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
CAPlus/REGISTRY(STN)
UniProt/Geneseq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD40Lに特異的に結合する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含み、および血清アルブミンに結合するISVDを含むポリペプチドであって、
CD40Lへの結合がCD40Lの活性を調節し、
CD40Lに特異的に結合するISVDが、本質的に4つのフレームワーク領域(それぞれFR1からFR4)と3つの相補性決定領域(それぞれCDR1からCDR3)とからなり、ここで、
CDR1が配列番号33であり、CDR2が配列番号35であり、CDR3が配列番号37である;
CDR1が配列番号61であり、CDR2が配列番号63であり、CDR3が配列番号65である;
CDR1が配列番号40であり、CDR2が配列番号42であり、CDR3が配列番号44である;または
CDR1が配列番号68であり、CDR2が配列番号70であり、CDR3が配列番号72である、
前記ポリペプチド。
【請求項2】
ISVDが配列番号8、配列番号6、配列番号7または配列番号3である、
請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
CDR1が配列番号40であり、CDR2が配列番号42であり、CDR3が配列番号44であり、
ISVDが配列番号7または配列番号3である、
請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
ポリペプチドがCD40Lに結合し、
- 1E-07Mおよび1E-13Mの間のKを有し、
- 1E-07Mおよび1E-12Mの間のIC50を有し、および/または
- 5E-04(s-1)未満のoff-rateを有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
CD40LがヒトCD40Lである、
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
活性の調節が
- CD40Lの活性に拮抗することであり、
- 少なくとも20%の、CD40へのCD40Lの結合をブロックすることであり、
- T細胞共刺激分子ならびに/または免疫刺激性分子のCD40によって媒介される誘導に拮抗することであり、
- B細胞活性化を阻害することであり、
- ジャーカットT細胞におけるJNKリン酸化を実質的に誘導しないことであり、
- 抗CD3抗体によって共刺激されたジャーカットT細胞によるIFNγ分泌を実質的に誘導しないことであり、
- 初代内皮細胞の活性化を実質的に誘導しないことであり、および/または
- 血小板活性化または血小板凝集を実質的に誘導しないことである、
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
C末端延長をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項8】
血清アルブミンに結合するISVDが、本質的に4つのフレームワーク領域(それぞれF1からFR4)と3つの相補性決定領域(それぞれCDR1からCDR3)とからなり、
CDR1が配列番号74であり、CDR2が配列番号75であり、CDR3が配列番号76である、
請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
血清アルブミンに結合するISVDが、ALB135(配列番号15)、ALB129(配列番号13)、ALB8(配列番号11)、ALB23(配列番号12)、およびALB132(配列番号14)からなる群から選ばれる、
請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項10】
C末端延長がC末端延長(X)nであり、式中、nが1から10であり;各Xが独立して選ばれるアミノ酸残基である、
請求項7~9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
ポリペプチドが、少なくとも80%の配列同一性をC010003318(配列番号9)またはC010003313(配列番号78)に対して有する、
請求項1~10のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
CD40L/CD40によって媒介される経路の不適切な活性化が関わる個体の疾患または障害の処置または防止のために用いられる、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
医薬としての使用のための、
請求項1~12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、移植拒絶、クローン病、シェーグレン症候群、炎症性腸疾患(IBD)、大腸炎、喘息/アレルギー、動脈硬化症、重症筋無力症、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、強直性脊椎炎、冠動脈性心疾患、1型糖尿病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および/または組換え医薬品に対する免疫応答の症状を処置または防止することへの使用のための、
請求項1~13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
ポリペプチドが、ポリペプチド46B03(配列番号6)、28B02(配列番号3)、C010003290(配列番号8)、およびC010003318(配列番号9)の少なくとも1つのCD40Lへの結合を交差ブロックし、ならびに/またはポリペプチド46B03(配列番号6)、28B02(配列番号3)、C010003290(配列番号8)、およびC010003318(配列番号9)の少なくとも1つによってCD40Lへの結合を交差ブロックされる、
請求項1~13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD40Lに結合する免疫グロブリンに、より具体的には、1つ以上のかかる免疫グロブリンを含むかまたは本質的にそれからなるポリペプチドに関する(本明細書においては、それぞれ「本発明の免疫グロブリン」および「本発明のポリペプチド」ともまた言われる)。
【0002】
本発明は、かかるポリペプチドをコードする核酸に(本明細書においては「本発明の核酸(単数もしくは複数)」ともまた言われる;かかるポリペプチドを調製するための方法に;かかるポリペプチドを発現するかまたは発現する能力がある宿主細胞に;かかるポリペプチド、核酸、および/または宿主細胞を含む組成物、特に医薬組成物に;ならびに特に予防および/または治療目的、例えば本明細書において挙げられる予防および/または治療目的のための、ポリペプチド、核酸、宿主細胞、および/または組成物の使用にもまた関する。
【0003】
本発明の他の側面、態様、利点、および用途は、本明細書のさらなる記載から明瞭になるであろう。
【背景技術】
【0004】
CD40/CD40リガンド(CD40L、CD154)相互作用は、BおよびT細胞応答の開始(Grewal & Flavell, 1998 Annu. Rev. Immunol. 16:111-135; Yang & Wilson, 1996 Science 273:1862-1864)および維持(Grewal et al., 1996 Science 273:1864-1867; Buhlmann et al., 1999 J. Immunol. 162:4373-4376)に必要不可欠の役割を果たすことが示されている。CD40共刺激分子は、樹状細胞(DC)、Bリンパ球、マクロファージ、およびCD34細胞前駆体のサブセットを包含する種々の抗原提示細胞(APC)の表面上に、恒常的にまたはインビトロ活性化後にどちらかで発現される(McLellan et al., 1996 Eur. J. Immunol. 26:1204-1210; Rondelli et al., 1999 Blood 94:2293-2300)。CD40Lは、T細胞受容体によって媒介される刺激後にCD4およびいくつかのCD8Tリンパ球の表面上に発現される。CD40とCD40Lとの間の相互作用は、APCおよびT細胞機能両方に影響する二方向性シグナルに至る。一方では、CD40のCD40L依存的刺激は、DCおよびマクロファージがCD80およびCD86などのT細胞共刺激分子を発現することと、IL-12などの免疫刺激性サイトカインを産生することとを誘導し、それゆえに、ヘルパーおよび細胞傷害性T細胞応答両方を開始するそれらの能力を増強する(Kennedy et al., 1994 Eur. J. Immunol. 24:116-123; Caux et al., 1994 J. Exp. Med. 180:1263-1272)。他方で、CD40LのCD40依存的な刺激は共刺激シグナルを送達し(Brenner et al., 1997 FEBS Letters 417:301-306)、T細胞活性化に寄与する(Koppenhoefer et al., 1997 FEBS Letters 414:444-448; Blotta et al., 1996 J. Immunol. 156:3133-3140)。動物モデルおよびヒトからの証拠は、種々の自己免疫疾患、例えばループス腎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、ならびにルー・ゲーリッグ病およびシャルコー病としてもまた公知の筋萎縮性側索硬化症(ALS)において、病原性の自己抗体および組織損傷の生成に果たすCD40-CD40L相互作用の必須の役割を支持している。これらの知見は、CD40-CD40L相互作用を遮断する抗体の開発のきっかけとなった。
【0005】
ヒトCD40Lを標的とするヒト化モノクローナル抗体(mAb)(hu5C8またはルプリズマブ、Biogen)は、MHC(主要組織適合性複合体)がマッチしないドナーからの腎臓移植の非ヒト霊長類モデルにおいて、大部分のレシピエントにおける長期の移植片生着を誘導することが示されている(Kirk et al., 1999 Nat. Med. 5:686-693)。同じ抗体は、ループス腎炎の第II相治験でもまた試験された。しかしながら、研究は、心筋梗塞を包含する血栓塞栓事象(TE)ゆえに中途で終了しなければならなかった(Kawai et al., 2000 Nat. Med. 6:114)。
【0006】
IgG1アイソタイプのヒト化抗CD40L抗体toralizumab(IDEC-131、hu24-31)はマウス抗CD40Lハイブリドーマ24-31に由来する。ルプリズマブと類似に、toralizumabについて計画された複数の第I相治験および第II相治験もまた、ヒト患者における血栓塞栓事象のリスクが原因で止められた。
【0007】
開発された第3の抗CD40L抗体はABI793であった。これはHuMAbマウスに由来するヒトIgG1である(Medarex Inc.)。このケースにおいては、TEがアカゲおよびカニクイ腎移植モデルにおいて既に観察され、それゆえにABI793のさらなる開発は止められた。
【0008】
血栓塞栓事象は、種々の疾患バックグラウンドにおいて異なるエピトープに対する抗体によって発生し得、心筋、肺動脈、および末梢静脈を包含する多様な部位における静脈および動脈支配域両方が関わる。しかしながら、抗CD40Lによって誘導されるTEの底にある厳密なメカニズムはまだ解明されていない。主要仮説は:
(i)IgGモノクローナル抗体の二価性が原因の血小板上のCD40Lのクロスリンク;
(ii)血小板Fc受容体との抗CD40L抗体の相互作用、それゆえに血小板凝集および血栓症を促進、
である。
【0009】
加えて、既存抗体(PEA)および/または抗薬物抗体(ADA)などの治療蛋白質産物に対する免疫応答は、患者の安全性および産物の有効性両方について問題を呈し得る。これらの免疫学に基づく有害事象は、アナフィラキシー、サイトカイン放出症候群、「輸注反応」、および非急性反応(発熱、発疹、関節痛、筋肉痛、血尿、蛋白尿、漿膜炎、中枢神経系合併症、および溶血性貧血の遅延発症)、ならびに重大な機能を媒介する内在性蛋白質の交差反応性の中和を包含する。また、治療蛋白質産物に対する望まれない免疫応答は、それらの生物学的活性を中和し得、治療蛋白質産物の有効性を阻害することによってのみならず、内在性蛋白質カウンターパートに対して交差反応することによってもまた有害事象をもたらし得、その生理学的機能の喪失に至る。免疫原性の安全性の帰結は幅広く変動し得、治療蛋白質産物を投与された患者において多くの場合には予測不可能である。PEAおよびADAは、治療蛋白質産物の非冗長的な内在性カウンターパートまたは近縁蛋白質と交差反応し阻害する場合には深刻な帰結を有し得る(Macdougall et al., 2012 Kidney Int. 2012 81:727-32; Seidl et al., 2012 Pharm Res 29:1454-1467)。
【0010】
WO2013/056068は、CD40Lを標的とするドメイン抗体(dAb)のC末端にリンクされたIgG1の改変されたFc断片から構成される二量体融合蛋白質に関する。WO2013/056068はPEAについて報告していないが、サルにおいてはADAが蛋白質に対して発生し、速いクリアランス(低い血漿暴露および低い血清中T1/2)をもたらしたということを報告している。
【0011】
十分に有効な免疫グロブリン単一可変ドメイン抗体の報告は明かされていない。現行では、BiogenおよびUCBは既存の抗CD40L抗体をFab’-PEG分子(CDP7657)として作り替えるために共同研究し、hu5C8で見られるTE事象を克服することを試みている。半減期を引き延ばすために、Fab’部分がポリエチレングリコール(PEG)にカップリングされた。PEGは工業製造から医療まで多種多様な用途を有し、それゆえにそれはユビキタスに用いられている。最近の知見は、健康な血液ドナーにおける抗PEG抗体の22~25%の発生率を実証した。抗PEG抗体のこの発生は、いくつかの患者においては有効性を限定し得、PEGが非免疫原性であるという一般的な想定に反する。ゆえに、PEG化された治療薬は、特に免疫低下した疾患設定において臨床使用にとっての潜在的重大性を有する。その上に、Fab’分子のPEG化がその活性を4~5倍減少させるということが報告されている(US2010/0104573)。Xie et al.はFcフォーマットの必要性を記載しており、これは、効力を改善するために分子を二価にすることを包含する(Xie et al., 2014 J. Immunol. 192:4083-4092)。
【0012】
従って、安全で有効な抗CD40L医薬の必要がある。
【0013】
本発明者は、機能的なFcドメインなしのCD40Lをターゲティングする一価の実体が、血小板凝集および/または活性化による有害事象を誘導することなしにCD40-CD40LのT細胞共刺激を阻害するであろうモダリティにあたり得るという仮説をたてた。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、従来技術のアミノ酸配列および抗体と比較して、(例えば、調製の改善された容易さ、良好な安定性、および/または品物の縮減されたコストなどの)他の有利な特性に加えて、改善された予防、治療、および/または薬理学的特性を有するCD40Lに対するポリペプチドを提供することに取りかかった。
【0015】
非従来的なスクリーニング、キャラクタリゼーション、およびコンビナトリアル戦略に基づいて、本発明者は、意外なことに、スタンドインの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)がインビボの有効性研究およびインビトロの安全性実験において格別な性能であるということを観察した。
【0016】
その上に、本発明者は、ベンチマークCDP7657よりも高性能であるのみならず、この性能を半減期延長後にもまた保持するように、ISVDを作り替えることができた。他方で、本発明のISVDは従来技術の抗体よりも有意に安全であることもまた実証された。
【0017】
従って、本発明は、CD40Lを標的とするおよび/またはそれに特異的に結合し得る(本明細書において定義される通り)ポリペプチドに関する。
【0018】
特に、本発明は、CD40Lに特異的に結合する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドに関し、CD40Lへの結合はCD40Lの活性を調節する。
【0019】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、CD40Lに特異的に結合する前期ISVDは本質的に4つのフレームワーク領域(それぞれF1からFR4)と3つの相補性決定領域(それぞれCDR1からCDR3)とからなり、
(i)CDR1は、
配列番号33、61、40、および68;ならびに
1、2、または3個のアミノ酸の違いを配列番号33、40、61、または68に対して有するアミノ酸配列、
からなる群から選ばれ;
(ii)CDR2は、
配列番号35、63、42、および70;ならびに
1、2、または3個のアミノ酸の違いを配列番号35、42、63、または70に対して有するアミノ酸配列、
からなる群から選ばれ;
(iii)CDR3は、
配列番号37、65、44、および72;ならびに
1、2、3、または4個のアミノ酸の違いを配列番号37、65、44、または72に対して有するアミノ酸配列、
からなる群から選ばれる;
【0020】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、CDR1は、
(a)配列番号61;ならびに
(b)1、2、または3個のアミノ酸の違いを配列番号61に対して有し、
- 位置1においてはGがEもしくはRに変化しており;
- 位置2においてはRがHもしくはGに変化しており;
- 位置3においてはTがI、A、S、もしくはPに変化しており;
- 位置4においてはPがSに変化しており;
- 位置5においてはLがPに変化しており;
- 位置6においてはNがS、D、もしくはIに変化しており;
- 位置7においてはYがHに変化しており;
- 位置8においてはHがNに変化しており;
- 位置9においてはMがK、T、もしくはVに変化しており;および/または
- 位置10においてはAがG、S、もしくはTに変化している、
アミノ酸配列、
からなる群から選ばれる。
【0021】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、CDR2は、
(a)配列番号63;ならびに
(b)1、2、または3個のアミノ酸の違いを配列番号63に対して有し、
- 位置1においてはAがGに変化しており;
- 位置2においてはIがVに変化しており;
- 位置4においてはSがN、R、もしくはGに変化しており;
- 位置6においてはLがIに変化しており;
- 位置7においてはGがSもしくはDに変化しており;
- 位置8においてはSがG、I、もしくはFに変化しており;および/または
- 位置9においてはTがPもしくはSに変化している、
アミノ酸配列、
からなる群から選ばれる。
【0022】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、CDR3は、
(a)配列番号65;ならびに
(b)1、2、3、または4個のアミノ酸の違いを配列番号65に対して有し、
- 位置1においてはRがQもしくはLに変化しており;
- 位置2においてはEがDもしくはKに変化しており;
- 位置3においてはTがS、M、A、もしくはKに変化しており;
- 位置4においてはTがI、S、A、もしくはRに変化しており;
- 位置5においてはHがYもしくはNに変化しており;
- 位置6においてはYがI、H、もしくはNに変化しており;
- 位置7においてはSがT、G、N、もしくはIに変化しており;
- 位置8においてはTがIもしくはAに変化しており;
- 位置9においてはSがNもしくはRに変化しており;
- 位置10においてはDがAに変化しており;
- 位置11においてはRがSもしくはGに変化しており;
- 位置13においてはNがD、Y、もしくはSに変化しており;
- 位置14においてはEがV、A、D、もしくはNに変化しており;
- 位置15においてはMがI、V、K、もしくはTに変化しており;
- 位置16においてはRがK、S、W、M、G、もしくはTに変化しており;
- 位置17においてはHがN、L、Q、R、もしくはDに変化しており;
- 位置19においてはDがNに変化しており;および/または
- 位置20においてはYがH、F、もしくはNに変化している、
アミノ酸配列、
からなる群から選ばれる。
【0023】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、
- CDR1は配列番号33であり、CDR2は配列番号35であり、CDR3は配列番号37であるか;または
- CDR1は配列番号61であり、CDR2は配列番号63であり、CDR3は配列番号65である。
【0024】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ISVDは配列番号8または配列番号6である。
【0025】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、CDR1は、
(a)配列番号40;ならびに
(b)1、2、または3個のアミノ酸の違いを配列番号40に対して有し、
- 位置3においてはTがS、N、A、もしくはIに変化しており;
- 位置4においてはLがQ、S、M、もしくはGに変化しており;
- 位置8においてはAがNもしくはVに変化しており;
- 位置9においてはIがLもしくはVに変化しており;および/または
- 位置10においてはGがAに変化している、
アミノ酸配列、
からなる群から選ばれる。
【0026】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチド8に関し、CDR2は、
(a)配列番号42;ならびに
(b)1、2、または3個のアミノ酸の違いを配列番号42に対して有し、
- 位置2においてはIがVに変化しており;
- 位置3においてはSがGに変化しており;
- 位置5においてはEがGに変化しており;
- 位置6においてはGがSに変化しており;
- 位置7においてはSがG、N、T、もしくはIに変化しており;
- 位置8においてはTがA、P、I、もしくはSに変化しており;および/または
- 位置9においてはSがI、R、もしくはGに変化している、
アミノ酸配列、
からなる群から選ばれる。
【0027】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、CDR3は、
(a)配列番号44;ならびに
(b)1、2、3、または4個のアミノ酸の違いを配列番号44に対して有し、
- 位置4においてはRがSに変化しており;
- 位置7においてはLがF、M、もしくはWに変化しており;
- 位置8においてはGがD、A、もしくはSに変化しており;
- 位置9においてはSがG、N、もしくはRに変化しており;
- 位置10においてはSがG、N、T、もしくはRに変化しており;
- 位置12においてはDがG、N、E、もしくはVに変化しており;
- 位置13においてはTがNもしくはAに変化しており;
- 位置14においてはQがH、K、L、もしくはRに変化しており;
- 位置15においてはSがPもしくはTに変化しており;
- 位置16においてはHがNもしくはYに変化しており;
- 位置17においてはQがL、R、もしくはHに変化しており;
- 位置18においてはYがFに変化しており;
- 位置19においてはDがGに変化しており;および/または
- 位置20においてはYがFもしくはNに変化している、
アミノ酸配列、
からなる群から選ばれる。
【0028】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、CDR1は配列番号40であり、CDR2は配列番号42であり、CDR3は配列番号44である。
【0029】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ISVDは配列番号7または配列番号3である。
【0030】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドはCD40Lに結合し、1E-07Mおよび1E-13Mの間の、例えば1E-08Mおよび1E-12Mの間の、好ましくは多くても1E-07M、好ましくは1E-08Mもしくは1E-09Mよりも低い、またはさらには1E-10Mよりも低い、例えば5E-11M、4E-11M、3E-11M、2E-11M、1.7E-11M、1E-11、またはさらには5E-12M、4E-12M、3E-12M、1E-12MというKDを有し、例えばKinExAによって決定される。
【0031】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドはCD40Lに結合し、1E-07Mおよび1E-12Mの間の、例えば1E-08Mおよび1E-11Mの間のIC50を有し、例えばB細胞増殖アッセイによって決定またはB細胞シグナル伝達アッセイによって決定される。
【0032】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドはCD40Lに結合し、多くても1E-07M、好ましくは1E-08M、1E-09M、または5E-10M、4E-10M、3E-10M、2E-10M、例えば1E-10MというIC50を有する。
【0033】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドはCD40Lに結合し、5E-04(s-1)未満のoff-rateを有し、例えばSPRによって決定される。
【0034】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記CD40Lは好ましくはヒトCD40L、好ましくは配列番号18である。
【0035】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドはCD40Lの活性に拮抗する。
【0036】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは、少なくとも20%、例えば少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはさらにはより多くのCD40へのCD40Lの結合をブロックし、これは例えばリガンド競合、B細胞活性化アッセイ、AlphaScreen、または競合的結合アッセイ、例えば競合ELISAもしくは競合FACS)によって決定される。
【0037】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは、CD80およびCD86などのT細胞共刺激分子ならびに/またはIL12などの免疫刺激性分子のCD40によって媒介される誘導に拮抗する。
【0038】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドはB細胞活性化を阻害する。
【0039】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは、ジャーカットT細胞におけるJNKリン酸化を実質的に誘導しないか、または抗CD3抗体によって共刺激されたジャーカットT細胞によるIFNγ分泌を実質的に誘導しない。
【0040】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは、例えばTT-IgGアッセイによって決定されるB細胞活性化を阻害する。
【0041】
本発明は、さらに、血清アルブミンに結合するISVD(ALBナノボディ)を含む、本明細書に記載されるポリペプチドにもまた関する。
【0042】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、血清アルブミンに結合する前記ISVDは本質的に4つのフレームワーク領域(それぞれFR1からFR4)と3つの相補性決定領域(それぞれCDR1からCDR3)とからなり、CDR1は配列番号74であり、CDR2は配列番号75であり、CDR1は配列番号76である。
【0043】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、血清アルブミンに結合する前記ISVDは、ALB135(配列番号15)、ALB129(配列番号13)、ALB8(配列番号11)、ALB23(配列番号12)、およびALB132(配列番号14)からなる群から選ばれる。
【0044】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、CD40Lに特異的に結合する前記ISVDおよび血清アルブミンに結合する前記ISVDは、直接的に互いにリンクまたはリンカーを介してリンクされる。
【0045】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記リンカーは、配列番号18~29および77からなる群、好ましくは配列番号21から選ばれる。
【0046】
本発明は、さらにC末端延長を含む本明細書に記載されるポリペプチドにもまた関する。
【0047】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記C末端延長はC末端延長(X)nであり、式中、nは1から10、好ましくは1から5、例えば1、2、3、4、または5であり(好ましくは1または2、例えば1);各Xは独立して選ばれる(好ましくは天然に存在する)アミノ酸残基であり、好ましくは、アラニン(A)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、またはイソロイシン(I)からなる群から独立して選ばれる。
【0048】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは、さらに、本明細書に記載される血清アルブミンに結合するISVDと、本明細書に記載されるリンカーと、本明細書に記載されるC末端延長とを含む。
【0049】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは少なくとも80%、90%、95%、または100%の配列同一性をC010003318(配列番号9)またはC010003313(配列番号78)に対して有する。
【0050】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは初代内皮細胞の活性化を実質的に誘導しない。
【0051】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは、例えば血小板活性化アッセイまたは血小板凝集アッセイによって決定される血小板活性化または血小板凝集を実質的に誘導しない。
【0052】
本発明は、例えばCD40L/CD40によって媒介される経路の不適切な活性化が関わる個体の疾患または障害の処置すること、防止の方法にもまた関し、方法は、本発明のポリペプチドを前記疾患または障害の症状を処置または防止するために有効な量で前記個体に投与することを含む。
【0053】
また、本発明は本明細書に記載される方法に関し、前記疾患または障害は、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、移植拒絶、クローン病、シェーグレン症候群、炎症性腸疾患(IBD)、大腸炎、喘息/アレルギー、動脈硬化症、重症筋無力症、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、強直性脊椎炎、冠動脈性心疾患、1型糖尿病、および組換え医薬品、例えば血友病における第VII因子に対する免疫応答を含む。
【0054】
本発明は、医薬としての使用のための、本明細書に記載されるポリペプチドにもまた関する。
【0055】
本発明は、自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、移植拒絶、クローン病、シェーグレン症候群、炎症性腸疾患(IBD)、大腸炎、喘息/アレルギー、動脈硬化症、重症筋無力症、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、強直性脊椎炎、冠動脈性心疾患、1型糖尿病、および組換え医薬品、例えば血友病における第VII因子に対する免疫応答の症状を処置または防止することへの使用のための、本明細書に記載されるポリペプチドにもまた関する。
【0056】
また、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは、ポリペプチド46B03(配列番号6)、28B02(配列番号3)、C010003290(配列番号8)、およびC010003318(配列番号9)の少なくとも1つのCD40Lへの結合を交差ブロックし、ならびに/またはポリペプチド46B03(配列番号6)、28B02(配列番号3)、C010003290(配列番号8)、およびC010003318(配列番号9)の少なくとも1つによってCD40Lへの結合を交差ブロックされる。
【0057】
本発明は、46B03(配列番号6)、28B02(配列番号3)、C010003290(配列番号8)、およびC010003318(配列番号9)の少なくとも1つによるCD40Lへの結合を交差ブロックするポリペプチドにもまた関し、ならびに/または46B03(配列番号6)、28B02(配列番号3)、C010003290(配列番号8)、およびC010003318(配列番号9)の少なくとも1つによってCD40Lへの結合を交差ブロックされ、前記ポリペプチドは、CD40Lに特異的に結合する少なくとも1つのVH、V、dAb、免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含み、CD40Lへの結合はCD40Lの活性を調節する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】96個の血清サンプルが、S112K変異なしの参照ナノボディ(参照A、配列番号16。図1においては(1)として指示されている)と比較してS112K変異を有する代表的なナノボディ(参照A+S112K+C末端アラニン。図1においては(2)として指示されている)に結合することについて試験されたときの、例6.9.3で得られたデータ点を示すプロット。
図2】129個の血清サンプルが、V89T変異なしの参照ナノボディ(参照A、配列番号16。図2においては(1)として指示されている)と比較してV89T変異を有する代表的なナノボディ(参照A+L11V+V89T+C末端アラニン。図2においては(2)として指示されている)に結合することについて試験されたときの、例6.9.3で得られたデータ点を示すプロット;
図3】血小板活性化データHV
図4】血小板活性化データSLE
図5】血小板凝集データHV
図6】血小板凝集データSLE
図7】抗CD40LナノボディはTT-IgG応答を損なわせる
図8】指示されている濃度の異なる化合物によるヒトPBMC刺激による、IL-6誘導。
【発明を実施するための形態】
【0059】
安全で有効な抗CD40L医薬の必要がまだある。それらの医薬は、種々の頻繁に対立する要件に沿うべきである。フォーマットは広く適用可能であるべきである。特に、フォーマットは、好ましくは広範囲の患者に、および好ましくは広範囲のCD40Lによって媒介される障害に対してもまた有用であるべきである。フォーマットは好ましくは安全であるべきであり、いずれかの血栓塞栓事象を誘導するべきではない。加えて、フォーマットは好ましくは患者に優しくあるべきである。例えば、フォーマットは、フォーマットが腎クリアランスによって投与後即座に除去されないような延長した半減期を有するべきである。しかしながら、半減期を延長することは、好ましくはオフターゲット活性および副作用を導入、TEを誘導、または有効性を限定するべきではない。
【0060】
本発明はこれらの要件の少なくとも1つを実現する。
【0061】
非従来的なスクリーニング、キャラクタリゼーション、およびコンビナトリアル戦略に基づいて、本発明者は、驚くべきことに、スタンドインの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)がインビボの有効性研究およびインビトロの安全性実験において格別な性能であるということを観察した。
【0062】
その上に、本発明者は、ベンチマークCDP7657よりも高性能であるのみならず、この性能を半減期延長後にもまた保持するように、ISVDを作り替えることができた。他方で、本発明のISVDは従来技術の抗体よりも有意に安全であることもまた実証された。
【0063】
本発明は、従来技術のアミノ酸配列および抗体と比較して、より安全なプロファイルを包含する改善された予防、治療、および/または薬理学的特性を有するCD40Lに拮抗するポリペプチドを提供する。
【0064】
従って、本発明は、CD40Lを標的とするおよび/またはそれに特異的に結合(本明細書において定義される通り)およびその活性を調節し得るポリペプチド、具体的にはCD40Lに特異的に結合する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドに関し、CD40Lへの結合はCD40Lの活性を調節する。
【0065】
別様に指示または定義されない限り、用いられる全ての用語は当分野におけるそれらの通常の意味を有し、これは当業者には明瞭であろう。例えば、標準的なハンドブック、例えばSambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd. Ed.) Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)、F. Ausubel et al. (Current protocols in molecular biology, Green Publishing and Wiley Interscience, New York, 1987)、Lewin (Genes II, John Wiley & Sons, New York, N.Y., 1985)、Old et al. (Principles of Gene Manipulation: An Introduction to Genetic Engineering (2nd edition) University of California Press, Berkeley, CA, 1981);Roitt et al. (Immunology (6th. Ed.) Mosby/Elsevier, Edinburgh, 2001)、Roitt et al. (Roitt's Essential Immunology (10th Ed.) Blackwell Publishing, UK, 2001)、およびJaneway et al. (Immunobiology (6th Ed.) Garland Science Publishing/Churchill Livingstone, New York, 2005)、ならびに本明細書において引用される一般的な背景技術の参照がなされる。
【0066】
別様に指示されない限り、具体的に詳細に記載されない全ての方法、ステップ、技術、および操作は、当業者には明瞭であろう自体公知の様式で行われ得、行われた。再び、例えば、標準的なハンドブックおよび本明細書において挙げられる一般的な背景技術、ならびにそこに引用されているさらなる参照;ならびに例えば次の総説Presta (Adv. Drug Deliv. Rev. 58 (5-6): 640-56, 2006)、Levin and Weiss (Mol. Biosyst. 2(1): 49-57, 2006)、Irving et al. (J. Immunol. Methods 248(1-2): 31-45, 2001)、Schmitz et al. (Placenta 21 Suppl. A: S106-12, 2000)、Gonzales et al. (Tumour Biol. 26(1): 31-43, 2005)の参照がなされる。これらは、蛋白質工学の技術、例えば、免疫グロブリンなどの蛋白質の特異性および他の所望の特性を改善するための親和性成熟および他の技術を記載している。
【0067】
本明細書において用いられる単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明瞭に別様に指示しない限り複数の参照を包含するということに注意しなければならない。それゆえに、例えば、「試薬」の参照はかかる異なる試薬の1つ以上を包含し、「方法」の参照は当業者に公知の同等のステップおよび方法の参照を包含し、それらは改変または本明細書に記載される方法と置換され得る。
【0068】
別様に指示されない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、一連の中のあらゆる要素を言うと理解されるべきである。当業者は、本明細書に記載される本発明の具体的な態様の多くの均等物を認識するか、またはせいぜい通例の実験作業を用いて確かめることができるであろう。かかる均等物は本発明によって包摂されることを意図される。
【0069】
用語「および/または」は、本明細書においてどこで用いられても、「および」、「または」、および「前記用語によって繋がれている要素の全てまたはいずれかの他の組み合わせ」の意味を包含する。
【0070】
本明細書において用いられる用語「約」または「およそ」は、所与の値または範囲から20%以内、好ましくは15%以内、より好ましくは10%以内、最も好ましくは5%以内を意味する。
【0071】
本明細書および次の請求項においては、文脈が別様に要求しない限り、単語「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などのバリエーションは、記されている物もしくはステップまたは物もしくはステップの群の包含を含意するが、いずれかの他の物もしくはステップまたは物もしくはステップの群の排除を含意しないと理解される。本明細書において用いられるときに、用語「含む」は、用語「含有する」もしくは「包含する」によって、または本明細書において用いられるときに場合によっては用語「有する」によって置換され得る。
【0072】
本明細書において(例えば、「免疫グロブリン配列」、「抗体配列」、「可変ドメイン配列」、「VHH配列」、または「蛋白質配列」のような用語に)用いられる用語「配列」は、文脈がより限定された解釈を要求しない限り、該当するアミノ酸配列、およびそれをコードする核酸またはヌクレオチド配列両方を包含すると一般的に理解されるべきである。
【0073】
アミノ酸残基は、標準的な3文字または1文字アミノ酸コードに従って指示される。WO08/020079の48ページの表A-2の参照がなされる。
【0074】
核酸またはアミノ酸は、それがソースまたは媒体中において通常結びついている少なくとも1つの他の成分、例えば別の核酸、別の蛋白質/ポリペプチド、別の生物学的成分、もしくは高分子、または少なくとも1つのコンタミナント、不純物、もしくは副成分から分離されているときに、例えばそれが得られた反応媒体または培養媒体と比較して「(本質的に)単離された(形態)(で)」あると考えられる。具体的には、核酸またはアミノ酸は、それが少なくとも2倍、特に少なくとも10倍、より具体的には少なくとも100倍、最大1000倍以上精製されたときに、「(本質的に)単離されている」と考えられる。好ましくは、「(本質的に)単離された形態で」ある核酸またはアミノ酸は本質的に均質であり、これは好適な技術、例えば好適なクロマトグラフィー技術、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて決定される。
【0075】
ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が、それぞれ別のヌクレオチド配列もしくはアミノ酸配列を「含む」または別のヌクレオチド配列もしくはアミノ酸配列「から本質的になる」と言われるときに、これは、後者のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列がそれぞれ第1の挙げられたヌクレオチド配列またはアミノ酸配列中に組み込まれているということを意味し得るが、より通常には、これは、第1の挙げられたヌクレオチド配列またはアミノ酸配列がその配列中にそれぞれ後者の配列と同じヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を有するそれぞれヌクレオチドまたはアミノ酸残基のストレッチを含むということを一般的に意味し、第1の挙げられた配列が実際にどのように生成されたかまたは得られたか(これは、例えば本明細書に記載されるいずれかの好適な方法によってであり得る)にはかかわらない。限定しない例として、本発明のポリペプチドが免疫グロブリン単一可変ドメインを含むと言われるときには、これは、前記免疫グロブリン単一可変ドメイン配列が本発明のポリペプチドの配列中に組み込まれているということを意味し得るが、より通常には、これは、本発明のポリペプチドがその配列中に免疫グロブリン単一可変ドメインの配列を含有するということを一般的に意味し、本発明の前記ポリペプチドがどのように生成されたかまたは得られたかにはかかわらない。また、核酸またはヌクレオチド配列が別のヌクレオチド配列を含むと言われるときには、第1の挙げられた核酸またはヌクレオチド配列は、好ましくは、それが発現産物(例えばポリペプチド)に発現されるときに、後者のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列が前記発現産物の一部を形成する(換言すると、後者のヌクレオチド配列が、第1の挙げられたより大きい核酸またはヌクレオチド配列と同じ読み枠である)ようなものである。
【0076】
「本質的になる」によって、本発明の方法に用いられる免疫グロブリン単一可変ドメインが、本発明のポリペプチドと厳密に同じであるか、または限定された数のアミノ酸残基、例えば1~20アミノ酸残基、例えば1~10アミノ酸残基、好ましくは1~6アミノ酸残基、例えば1、2、3、4、5、もしくは6アミノ酸残基が免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ末端、カルボキシ末端、またはアミノ末端およびカルボキシ末端両方に追加された本発明のポリペプチドに対応するかどちらかであるということが意味される。
【0077】
2つ以上のヌクレオチド配列を比較する目的のためには、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間の「配列同一性」のパーセンテージは、[第2のヌクレオチド配列中の対応する位置のヌクレオチドと同一である第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの数]を[第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの総数]によって除算することと、[100%]によって乗算することとによって計算され得、第1のヌクレオチド配列と比較して第2のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの各欠失、挿入、置換、または追加は、単一のヌクレオチド(位置)の違いとして考えられる。代替的には、2つ以上のヌクレオチド配列間の配列同一性の程度は、配列アラインメントのための公知のコンピュータアルゴリズム、例えばNCBI Blast v2.0を用いて、標準的な設定を用いて計算され得る。配列同一性の程度を決定するためのいくつかの他の技術、コンピュータアルゴリズム、および設定は、例えばWO04/037999、EP0967284、EP1085089、WO00/55318、WO00/78972、WO98/49185、およびGB2357768に記載されている。通常は、本明細書において上で概述した計算方法に従って2つのヌクレオチド配列間の「配列同一性」のパーセンテージを決定する目的のためには、最多数のヌクレオチドを有するヌクレオチド配列を「第1の」ヌクレオチド配列としてとり、別のヌクレオチド配列を「第2の」ヌクレオチド配列としてとる。
【0078】
2つ以上のアミノ酸配列を比較する目的のためには、第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列との間の「配列同一性」(本明細書においては「アミノ酸同一性」ともまた言われる)のパーセンテージは、[第2のアミノ酸配列中の対応する位置のアミノ酸残基と同一である第1のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の数]を[第1のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の総数]によって除算することと、[100%]によって乗算することとによって計算され得、第1のアミノ酸配列と比較して第2のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の各欠失、挿入、置換、または追加は、単一のアミノ酸残基(位置)の違いとして、すなわち本明細書において定義される「アミノ酸の違い」として考えられる。代替的には、2つのアミノ酸配列間の配列同一性の程度は、公知のコンピュータアルゴリズム、例えばヌクレオチド配列の配列同一性の程度を決定することについて上で挙げられたものを用いて、再び標準的な設定を用いて計算され得る。通常は、本明細書において上で概述した計算方法に従って2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」のパーセンテージを決定する目的のためには、最多数のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を「第1の」アミノ酸配列としてとり、別のアミノ酸配列を「第2の」アミノ酸配列としてとる。
【0079】
また、2つのアミノ酸配列間の配列同一性の程度を決定する際に、当業者はいわゆる「保存的」アミノ酸置換を考慮に入れ得、これは一般的にはアミノ酸残基が類似の化学構造の別のアミノ酸残基によって置き換えられたアミノ酸置換として記載され得、これはポリペプチドの機能、活性、または他の生物学的特性に本質的に影響を有さないかまたは僅かしか有さない。かかる保存的アミノ酸置換は当分野においては例えばWO04/037999、GB335768、WO98/49185、WO00/46383、およびWO01/09300から周知であり;かかる置換の(好ましい)型および/または組み合わせは、WO04/037999およびWO98/49185ならびにそこに引用されているさらなる参照からの対応する教示に基づいて選択され得る。
【0080】
好ましくは、かかる保存的置換は、次の群(a)~(e)の中の1つのアミノ酸が同じ群の中の別のアミノ酸残基によって置換された置換である:(a)小型の脂肪族の非極性または低極性残基:Ala、Ser、Thr、Pro、およびGly;(b)極性の負荷電残基およびそれらの(非荷電)アミド:Asp、Asn、Glu、およびGln;(c)極性の正荷電残基:His、Arg、およびLys;(d)大型の脂肪族の非極性残基:Met、Leu、Ile、Val、およびCys;ならびに(e)芳香族残基:Phe、Tyr、およびTrp。特に好ましい保存的置換は次の通りである:AlaからGlyもしくはSer;ArgからLys;AsnからGlnもしくはHis;AspからGlu;CysからSer;GlnからAsn;GluからAsp;GlyからAlaもしくはPro;HisからAsnもしくはGln;IleからLeuもしくはVal;LeuからIleもしくはVal;LysからArg、Gln、もしくはGlu;MetからLeu、Tyr、もしくはIle;PheからMet、Leu、もしくはTyr;SerからThr;ThrからSer;TrpからTyr;TyrからTrp;および/またはPheからVal、Ile、もしくはLeu。
【0081】
本明細書に記載されるポリペプチドに適用されるいずれかのアミノ酸置換は、Schulz et al. ("Principles of Protein Structure", Springer-Verlag, 1978)によって開発された異なる種の相同蛋白質間におけるアミノ酸バリエーションの頻度の分析、Chou and Fasman (Biochemistry 13: 211, 1974; Adv. Enzymol., 47: 45-149, 1978)によって開発された構造形成ポテンシャルの分析、ならびにEisenberg et al. (Proc. Natl. Acad Sci. USA 81: 140-144, 1984)、Kyte and Doolittle (J. Molec. Biol. 157: 105-132, 1981)およびGoldman et al. (Ann. Rev. Biophys. Chem. 15: 321-353, 1986)によって開発された蛋白質の疎水性パターンの分析にもまた基づき得、全て参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。ナノボディの一次、二次、および三次構造の情報は、本明細書における記載、および上で引用されている一般的な背景技術において与えられている。また、この目的のためには、ラマからのVHHドメインの結晶構造は、例えばDesmyter et al. (Nature Structural Biology, 3: 803, 1996)、Spinelli et al. (Natural Structural Biology, 3: 752-757, 1996)、およびDecanniere et al. (Structure, 7 (4): 361, 1999)によって与えられる。従来のVドメインにおいてV/V境界面を形成するアミノ酸残基のいくつかとそれらの位置における潜在的なラクダ化置換とについてのさらなる情報は、上で引用されている従来技術に見いだされ得る。
【0082】
アミノ酸配列同士および核酸配列同士は、それらが100%の配列同一性(本明細書において定義される通り)をそれらの全長に渡って有する場合には「厳密に同じ」と言われる。
【0083】
ある態様において、CD40Lに特異的に結合する本発明のポリペプチドは、少なくとも80%、90%、95%、または100%の配列同一性をC010003318(配列番号9)またはC010003313(配列番号78)に対して有し、CD40Lへの結合はCD40Lの活性を調節する。
【0084】
2つのアミノ酸配列を比較するときに、用語「アミノ酸の違い」は、第2の配列と比較して、第1の配列のある位置における単一のアミノ酸残基の挿入、欠失、または置換を言う;2つのアミノ酸配列は1つ、2つ、またはより多くのかかるアミノ酸の違いを含有し得るということが理解される。より具体的には、本発明のアミノ酸配列および/またはポリペプチドにおいて、用語「アミノ酸の違い」は、CDR1、CDR2、および/またはCDR3配列のある位置における単一のアミノ酸残基の挿入、欠失、または置換を言う;CDR1配列は、元々のCDR1配列、例えば、例えば配列番号33、61、40、および68などの具体的な配列識別子(配列番号)によって例示されるCDR1配列と比較して1、2、または最大3つのかかるアミノ酸の違いを含有し得;CDR2は、元々のCDR2配列、例えば、例えば配列番号35、63、42、および70などの具体的な配列識別子(配列番号)によって例示されるCDR2配列と比較して1、2、または最大3つのかかるアミノ酸の違いを含有し得、CDR3配列は、元々のCDR3配列、例えば、例えば配列番号37、65、44、および72などの具体的な配列識別子(配列番号)によって例示されるCDR3配列と比較して1、2、3、または最大4つのかかるアミノ酸の違いを含有し得るということが理解される。
【0085】
「アミノ酸の違い」は、1、2、3、もしくは最大4つの置換、欠失、もしくは挿入のいずれか、またはそのいずれかの組み合わせであり得る。それは本発明のISVDの特性を改善するか、あるいはそれは少なくとも本発明のISVDの所望の特性または所望の特性のバランスもしくは組み合わせをあまり害さないかどちらかである。これに関して、本発明のもたらされるポリペプチドは、1、2、3、または最大4つの置換、欠失、または挿入なしの1つ以上のCDR配列を含むCD40Lに結合するISVDを含むポリペプチドと比較して、少なくとも同じ、約同じ、または好ましくはより高い親和性または効力でCD40Lに結合するべきである。親和性は、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定され得、例えば、例において用いられているKoff速度によって表現される。例えば、IC50によって表現される効力は、例えば例において用いられているB細胞増殖アッセイまたはB細胞シグナル伝達アッセイによってなどの当分野において公知のいずれかの好適な方法によって測定され得る。
【0086】
これに関して、CDRのアミノ酸配列は、自体公知の親和性成熟の1つ以上の技術を用いる親和性成熟によって、例えば例の項において用いられているエラープローンPCRによって、元々のCDRアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列であり得る。例の項においては、本発明のISVDの親和性および/または効力が改良され、例えばCDRの単一アミノ酸の違いが1.8倍から5.2倍改善されたoff-rateをもたらすということが実証された。CDRのアミノ酸の違いの組み合わせ、例えば1、2、3、もしくは最大4つの置換、欠失、もしくは挿入、またはそのいずれかの組み合わせは、off-rateをさらに改善した。
【0087】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドはCD40Lに結合し、それぞれ28B02および46B03よりも良好な、例えば少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、またはさらにはより多く、例えば10倍良好なKoffを有し、例えばSPRによって決定される。
【0088】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドはCD40Lに結合し、多くても5E-04(s-1)、例えば多くても4E-04(s-1)、3E-04(s-1)、2E-04(s-1)、1E-04(s-1)、9E-05(s-1)、8E-05(s-1)、7E-05(s-1)、6E-05(s-1)、5E-05(s-1)、4E-05(s-1)、3E-05(s-1)、2E-05(s-1)、10E-06(s-1)というKoffを有し、例えばSPRによって決定される。
【0089】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドはCD40Lに結合し、1E-07Mおよび1E-12Mの間の、例えば1E-08Mおよび1E-11Mの間の、好ましくは多くても1E-07M、好ましくは1E-08Mもしくは1E-09Mよりも低い、またはさらには5E-10M、4E-10M、3E-10M、2E-10Mよりも低い、例えば1E-10MのIC50を有し、例えばB細胞増殖アッセイまたはB細胞シグナル伝達アッセイによって決定される。
【0090】
例えば、本発明のポリペプチドを発現するために用いられる宿主生物に依存して、かかる挿入、欠失、および/または置換は、翻訳後修飾の1つ以上の部位(例えば1つ以上のグリコシル化部位)が除去されるようなやり方で設計され得、これは当業者の能力内であろう。
【0091】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、CD40Lに特異的に結合する前記ISVDは、本質的に4つのフレームワーク領域(それぞれFR1からFR4)と3つの相補性決定領域(それぞれCDR1からCDR3)とからなり、
(i)CDR1は、
配列番号33、61、40、および68;ならびに
1、2、または3個のアミノ酸の違いを配列番号33、61、40、または68に対して有するアミノ酸配列、
からなる群から選ばれ;
(ii)CDR2は、
配列番号35、63、42、および70;ならびに
1、2、または3個のアミノ酸の違いを配列番号35、63、42、または70に対して有するアミノ酸配列、
からなる群から選ばれ;
(iii)CDR3は、
配列番号37、65、44、および72;ならびに
1、2、3、または4個のアミノ酸の違いを配列番号37、65、44、または72に対して有するアミノ酸配列、
からなる群から選ばれる。
【0092】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、CDR1は、
(a)配列番号40;ならびに
(b)1、2、または3個のアミノ酸の違いを配列番号40に対して有し、
- 位置3においてはTがS、N、A、もしくはIに変化しており;
- 位置4においてはLがQ、S、M、もしくはGに変化しており;
- 位置8においてはAがNもしくはVに変化しており;
- 位置9においてはIがLもしくはVに変化しており;および/または
- 位置10においてはGがAに変化している、
アミノ酸配列、
からなる群から選ばれる。
【0093】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、CDR2は、
(a)配列番号42;ならびに
(b)1、2、または3個のアミノ酸の違いを配列番号42に対して有し、
- 位置2においてはIがVに変化しており;
- 位置3においてはSがGに変化しており;
- 位置5においてはEがGに変化しており;
- 位置6においてはGがSに変化しており;
- 位置7においてはSがG、N、T、もしくはIに変化しており;
- 位置8においてはTがA、P、I、もしくはSに変化しており;および/または
- 位置9においてはSがI、R、もしくはGに変化している、
アミノ酸配列、
からなる群から選ばれる。
【0094】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、CDR3は、
(a)配列番号44;ならびに
(b)1、2、3、または4個のアミノ酸の違いを配列番号44に対して有し、
- 位置4においてはRがSに変化しており;
- 位置7においてはLがF、M、もしくはWに変化しており;
- 位置8においてはGがD、A、もしくはSに変化しており;
- 位置9においてはSがG、N、もしくはRに変化しており;
- 位置10においてはSがG、N、T、もしくはRに変化しており;
- 位置12においてはDがG、N、E、もしくはVに変化しており;
- 位置13においてはTがNもしくはAに変化しており;
- 位置14においてはQがH、K、L、もしくはRに変化しており;
- 位置15においてはSがPもしくはTに変化しており;
- 位置16においてはHがNもしくはYに変化しており;
- 位置17においてはQがL、R、もしくはHに変化しており;
- 位置18においてはYがFに変化しており;
- 位置19においてはDがGに変化しており;および/または
- 位置20においてはYがFもしくはNに変化している、
アミノ酸配列、
からなる群から選ばれる。
【0095】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、CDR1は、
(a)配列番号61;ならびに
(b)1、2、または3個のアミノ酸の違いを配列番号61に対して有し、
- 位置1においてはGがEもしくはRに変化しており;
- 位置2においてはRがHもしくはGに変化しており;
- 位置3においてはTがI、A、S、もしくはPに変化しており;
- 位置4においてはPがSに変化しており;
- 位置5においてはLがPに変化しており;
- 位置6においてはNがS、D、もしくはIに変化しており;
- 位置7においてはYがHに変化しており;
- 位置8においてはHがNに変化しており;
- 位置9においてはMがK、T、もしくはVに変化しており;および/または
- 位置10においてはAがG、S、もしくはTに変化している、
アミノ酸配列、
からなる群から選ばれる。
【0096】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、CDR2は、
(a)配列番号63;ならびに
(b)1、2、または3個のアミノ酸の違いを配列番号63に対して有し、
- 位置1においてはAがGに変化しており;
- 位置2においてはIがVに変化しており;
- 位置4においてはSがN、R、もしくはGに変化しており;
- 位置6においてはLがIに変化しており;
- 位置7においてはGがSもしくはDに変化しており;
- 位置8においてはSがG、I、もしくはFに変化しており;および/または
- 位置9においてはTがPもしくはSに変化している、
アミノ酸配列、
からなる群から選ばれる。
【0097】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、CDR3は、
(a)配列番号65:ならびに
(b)1、2、3、または4個のアミノ酸の違いを配列番号65に対して有し、
- 位置1においてはRがQもしくはLに変化しており;
- 位置2においてはEがDもしくはKに変化しており;
- 位置3においてはTがS、M、A、もしくはKに変化しており;
- 位置4においてはTがI、S、A、もしくはRに変化しており;
- 位置5においてはHがYもしくはNに変化しており;
- 位置6においてはYがI、H、もしくはNに変化しており;
- 位置7においてはSがT、G、N、もしくはIに変化しており;
- 位置8においてはTがIもしくはAに変化しており;
- 位置9においてはSがNもしくはRに変化しており;
- 位置10においてはDがAに変化しており;
- 位置11においてはRがSもしくはGに変化しており;
- 位置13においてはNがD、Y、もしくはSに変化しており;
- 位置14においてはEがV、A、D、もしくはNに変化しており;
- 位置15においてはMがI、V、K、もしくはTに変化しており;
- 位置16においてはRがK、S、W、M、G、もしくはTに変化しており;
- 位置17においてはHがN、L、Q、R、もしくはDに変化しており;
- 位置19においてはDがNに変化しており;および/または
- 位置20においてはYがH、F、もしくはNに変化している、
アミノ酸配列、
からなる群から選ばれる。
【0098】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、
- CDR1は配列番号33であり、CDR2は配列番号35であり、CDR3は配列番号37であるか;または
- CDR1は配列番号61であり、CDR2は配列番号63であり、CDR3は配列番号65である。
【0099】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ISVDは配列番号8または配列番号6である。
【0100】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、CDR1は配列番号40であり、CDR2は配列番号42であり、CDR3は配列番号44である。
【0101】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ISVDは配列番号7または配列番号3である。
【0102】
本明細書において用いられる「ナノボディファミリー」、「VHHファミリー」、または「ファミリー」は、同一の長さを有し(すなわち、それらの配列中に同数のアミノ酸を有する)、その位置8と位置106との間のアミノ酸配列(Kabat付番に従う)が例えば85%、90%、95%、またはさらにはより多く、例えば99%などの少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するナノボディおよび/またはVHH配列の群を言う。
【0103】
交換可能に用いられ得る用語「エピトープ」および「抗原決定基」は、本発明の免疫グロブリン、従来の抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、VHH、ナノボディ、および/またはポリペプチドなどの抗原結合分子によって、より具体的には前記分子の抗原結合部位によって認識される、ポリペプチドまたは蛋白質などの高分子の部分を言う。エピトープは免疫グロブリンにとっての最小結合部位を定義し、それゆえに免疫グロブリンの特異性の標的にあたる。
【0104】
エピトープを認識する抗原結合分子(例えば、本発明の免疫グロブリン、従来の抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、および/またはポリペプチド)の部分は、「パラトープ」と呼ばれる。
【0105】
ある種のエピトープ、抗原、または蛋白質(またはその少なくとも1つの部分、断片、またはエピトープ)に「結合」もしくは「特異的に結合」し得る、それに対して「親和性を有する」、および/またはそれに対して「特異性を有する」ポリペプチド(例えば、本発明の免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド、または一般的に抗原結合分子もしくはその断片)は、前記エピトープ、抗原、もしくは蛋白質「に対する」もしくは「を標的とする」と言われるか、またはかかるエピトープ、抗原、もしくは蛋白質に関して「結合」分子であるか、または「抗」エピトープ、「抗」抗原、もしくは「抗」蛋白質(例えば「抗」CD40L)であると言われる。
【0106】
親和性は、分子相互作用の強さまたは安定性を示す。普通は、親和性はKまたは解離定数として与えられ、これはmol/リットル(またはM)の単位を有する。親和性は会合定数Kとしてもまた表現され得、これは1/Kに等しく、(mol/リットル)-1(またはM-1)の単位を有する。本明細書において、2つの分子間の相互作用の安定性は、主にそれらの相互作用のK値に換算して表現される;関係K=1/Kに鑑みて、分子相互作用の強さをそのK値によって規定することが、対応するK値を計算するためにもまた用いられ得るということは当業者には明瞭である。K値は、熱力学的な意味でもまた分子相互作用の強さをキャラクタリゼーションする。なぜなら、それは周知の関係DG=RT.In(K)(同等にDG=-RT.In(K))によって結合の自由エネルギーの変化(DG)に関係づけられるからであり、式中、Rは気体定数に等しく、Tは絶対温度に等しく、lnは自然対数を示す。
【0107】
有意(例えば特異的)と考えられる生物学的相互作用のKは、典型的には10-10M(0.1nM)から10-5M(10000nM)の範囲である。相互作用が強いほど、そのKは低い。
【0108】
は、koffとして示される複合体の解離速度定数対konとして示されるその会合の速度の比としてもまた表現され得る(その結果、K=koff/konかつK=kon/koff)。off-rateのkoffは単位s-1を有する(式中、sは秒のSI単位表記である)。on-rateのkonは単位M-1-1を有する。on-rateは10-1-1から約10-1-1の間で変動し得、二分子相互作用では拡散律速の会合速度定数に近づく。off-rateは関係t1/2=ln(2)/koffによって所与の分子相互作用の半減期に関係づけられる。off-rateは10-6-1(複数日のt1/2を有するほぼ不可逆的な複合体)から1s-1(t1/2=0.69s)の間で変動し得る。
【0109】
測定されるKは、測定プロセスが、例えば1つの分子のバイオセンサー上のコーティングに関するアーティファクトによって、関与する分子の固有の結合親和性に何らかに影響する場合に、見かけ上のKに対応し得る。見かけ上のKは、1つの分子が別の分子に対して1つ超の認識部位を含有する場合にもまた測定され得る。かかる状況において、測定される親和性は2つの分子による相互作用のアビディティによって影響され得る。
【0110】
親和性を評価するために用いられ得る別のアプローチは、Friguet et al. (J. Immunol. Methods, 77, 305-19, 1985)の2ステップELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)手続きである。この方法は、溶液相結合平衡測定を確立し、プラスチックなどの支持体上への分子の1つの吸着に関するあり得るアーティファクトを回避する。
【0111】
しかしながら、Kの正確な測定は極めて労働集約的であり得、帰結として、多くの場合には、見かけ上のK値が決定されて、2つの分子の結合強さを評価する。全ての測定が一貫したやり方でなされる(例えば、アッセイ条件を不変に保つ)限り、見かけ上のK測定は真のKの近似として用いられ得るということに注意すべきであり、ゆえに、本文書において、Kおよび見かけ上のKは等しい重要性または妥当性で扱われるべきである。
【0112】
最後に、多くの状況において、経験がある科学者は、何らかの参照分子に対して相対的に結合親和性を決定することが便利であると判断し得るということに注意すべきである。例えば、分子AおよびBの間の結合強さを評価するためには、例えば、Bに結合することが既知であり、かつフルオロフォアもしくはクロモフォア基または他の化学的部分、例えばELISAもしくはFACS(蛍光活性化セルソーティング)における容易な検出のためのビオチンもしくは他のフォーマット(蛍光検出のためのフルオロフォア、吸光検出のためのクロモフォア、ストレプトアビジンによって媒介されるELISA検出のためのビオチン)によって好適に標識される参照分子Cを用い得る。典型的には、参照分子Cは一定濃度に保たれ、Aの濃度がBの所与の濃度または量に対して変動させられる。結果として、Aの不在下においてCについて測定されるシグナルが半減するAの濃度に対応するIC50値が得られる。参照分子のKであるKDrefおよび参照分子の総濃度crefが既知であるならば、相互作用A-Bの見かけ上のKは次式から得られ得る:K=IC50/(1+cref/KDref)。cref<<KDrefの場合には、K≒IC50ということに注意。IC50の測定が、比較される結合剤について(例えばcrefを一定に保つ)一貫したやり方で行われるならば、分子相互作用の強さまたは安定性はIC50によって評価され得、この測定は本書においてはKまたは見かけ上のKと同等と判断される。
【0113】
抗原または抗原決定基へのISVDなどの抗原結合蛋白質の特異的結合は、自体公知のいずれかの好適な様式で決定され得、例えば、スキャッチャード分析および/または競合的結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、およびサンドイッチ競合アッセイ、ならびに当分野において自体公知のその異なるバリアント;ならびに本明細書において挙げられる他の技術を包含する。
【0114】
2つの分子間の分子相互作用の親和性は、自体公知の異なる技術、例えば周知の表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサー技術によって測定され得(例えばOber et al., 2001, Intern. Immunology 13: 1551-1559を見よ)、そこでは1つの分子がバイオセンサーチップ上に固定化され、別の分子が、kon、koff測定、ゆえにK(またはK)値を与える流れ条件下において固定化された分子上を通過させられる。例えば、これは周知のBiacore装置を用いて行われ得る(Pharmacia Biosensor AB, Uppsala, Sweden)。速度論的排除法(KinExA)(Drake et al., 2004, Analytical Biochemistry 328: 35-43)は、結合パートナーの標識なしに溶液中の結合事象を測定し、複合体の解離を速度論的に排除することに基づく。
【0115】
本発明のポリペプチドは傑出した親和性を有するということが実証された。従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドはCD40Lに結合し、1E-07Mおよび1E-13Mの間の、例えば1E-08Mおよび1E-12Mの間の、好ましくは多くても1E-07M、好ましくは1E-08Mもしくは1E-09Mよりも低い、またはさらには1E-10Mよりも低い、例えば5E-11M、4E-11M、3E-11M、2E-11M、1.7E-11M、1E-11M、またはさらには5E-12M、4E-12M、3E-12M、1E-12MのKDを有し、例えばKinExAによって決定される。
【0116】
Gyrolab(商標)イムノアッセイシステムは、自動バイオ分析および迅速なサンプルターンアラウンドのためのプラットフォームを提供する(Fraley et al., 2013, Bioanalysis 5: 1765-74)。
【0117】
測定プロセスが、例えば1つの分子のバイオセンサー上のコーティングに関するアーティファクトによって、関与する分子の固有の結合親和性に何らかに影響する場合に、測定されるKが見かけ上のKに対応し得るということもまた当業者には明瞭であろう。また、見かけ上のKは、1つの分子が別の分子について1つ超の認識部位を含有する場合に測定され得る。かかる状況において、測定される親和性は2つの分子による相互作用のアビディティによって影響され得る。
【0118】
用語「特異性」は、WO08/020079の53~56ページのパラグラフn)においてそれに与えられている意味を有し;そこで挙げられているように、具体的な抗原結合分子または抗原結合蛋白質(例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよび/またはポリペプチド)が結合し得る抗原または抗原決定基の異なる型の数を言う。抗原結合蛋白質の特異性は、親和性および/またはアビディティに基づいて、WO08/020079の53~56ページ(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されているように決定され得、これは抗原結合分子(例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよび/またはポリペプチド)と対応する抗原との間の結合を測定するためのいくつかの好ましい技術をもまた記載している。典型的には、抗原結合蛋白質(例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよび/またはポリペプチド)はそれらの抗原に結合し、10-5から10-12モル/リットル以下、好ましくは10-7から10-12モル/リットル以下、より好ましくは10-8から10-12モル/リットルという解離定数(K)を有する(すなわち、10から1012リットル/モル以上、好ましくは10から1012リットル/モル以上、より好ましくは10から1012リットル/モルという会合定数(K)を有する)。10-4mol/リットルよりも大きいいずれかのK値(または10-1よりも低いいずれかのK値)リットル/molは、一般的には、非特異的結合を指示すると考えられる。好ましくは、本発明の一価のポリペプチドは所望の抗原に結合し、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは、例えば10および5nM以下の間などの10nM未満の親和性を有する。抗原または抗原決定基への抗原結合蛋白質の特異的結合は、自体公知のいずれかの好適な様式で決定され得、例えば、スキャッチャード分析および/または競合的結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、およびサンドイッチ競合アッセイ、ならびに当分野において自体公知のその異なるバリアント;ならびに本明細書において挙げられる他の技術を包含する。当業者には明瞭であろう通り、WO08/020079の53~56ページに記載されているように、解離定数は実際のまたは見かけ上の解離定数であり得る。解離定数を決定するための方法は当業者には明瞭であろう。例えば、WO08/020079の53~56ページに挙げられている技術を包含する。
【0119】
免疫グロブリン単一可変ドメインおよび/またはポリペプチドは、それが第1の抗原に結合し、免疫グロブリン単一可変ドメインおよび/またはポリペプチドが第2の標的または抗原(すなわち第1の標的または抗原とは異なり、例えばCD40Lのエピトープとは異なる)に結合する親和性よりも少なくとも10倍、例えば少なくとも100倍、好ましくは少なくとも1000倍、最大10000倍以上良好である親和性(上に記載されている通りであり、好適には、K値、K値、Koff速度および/またはKon速度として表現される)を有するときに、第2の標的または抗原と比較して第1の標的または抗原、例えばCD40Lのエピトープ「に特異的」であると言われる。例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインおよび/またはポリペプチドは、前記免疫グロブリン単一可変ドメインおよび/またはポリペプチドが第2の標的または抗原に結合するKよりも少なくとも10倍小さい、例えば少なくとも100倍小さい、好ましくは少なくとも1000倍小さい、例えば10000倍小さい、またはさらにはそれ未満のK値で、第1の標的または抗原に結合し得る。好ましくは、免疫グロブリン単一可変ドメインおよび/またはポリペプチドが第2の標的または抗原と比較して第1の標的または抗原「に特異的」であるときには、それは(本明細書において定義される通り)前記第1の標的または抗原を標的とするが、前記第2の標的または抗原を標的としない。
【0120】
CD40LはCD154、gp39、TNF関連活性化蛋白質(TRAP)、5c8抗原、またはT-BAMとしてもまた公知である。ヒトCD40Lの該当する構造情報は例えばUniProtアクセッション番号P29965に見いだされ得る。「ヒトCD40L」は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCD40Lを言う。ある側面において、本発明のポリペプチドは、これもまたシーケンシングされているHuman sapiens、Mus musculus、Canis familiaris、Bos taurus、Macaca mulatto、Macaca fascicularis、Macaca nemestrina、Aotus tivirgatus、Callithrix jacchus、Cercocebus torquatus atys、Rattus norvegicus、Gallus gallus、Felis catus、および/またはSus scrofaからのCD40L、好ましくはヒトCD40L、好ましくは配列番号1に特異的に結合する。
【0121】
用語「(交差)ブロックする((cross)-block)」、「(交差)ブロックされる((cross)-blocked)」、「(交差)ブロック((cross)-blocking)」、「競合的結合」、「(交差)競合する((cross)-compete)」、「(交差)競合する((cross)-competing)」、および「(交差)競合((cross)-competition)」は、本明細書においては交換可能に用いられて、免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド、または他の結合剤が所与の標的への他の免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド、または結合剤の結合に干渉する能力を意味する。免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド、または他の結合剤が標的への別のものの結合に干渉できる度合いと、よってそれが本発明に従って交差ブロックすると言われ得るかどうかとは、例えば、精製されたISVDを、例に記載されている競合ELISAにおいてファージ上に提示されたISVDに対してスクリーニングすることによってなどの競合結合アッセイを用いて決定され得る。CD40Lに結合するISVDがCD40Lに結合する別のISVD(例えば、競合ELISAにおける精製されたISVD)と完全に競合する場合には、前記ISVD同士は同じエピトープビンに属する。CD40Lに結合するISVDがCD40Lに結合する別のISVD(例えば、競合ELISAにおける精製されたISVD)と競合しないかまたは部分的にのみ競合する場合には、前記ISVD同士は異なるエピトープビンに属する。7つの異なるエピトープビンが、CD40Lに結合するISVDのリードパネルから同定された。
【0122】
従って、本発明は、本明細書に記載されるポリペプチド、例えば配列番号3、4、5、6、7、8、9、78、79、80、81、または82に関し、前記ポリペプチドはあるポリペプチドと競合し、これは例えば競合ELISAによって決定される。
【0123】
本発明は、本明細書に記載されるポリペプチド、例えば配列番号3、4、5、6、7、8、9、78、79、80、81、または82と競合する競合剤、例えばポリペプチドを決定する方法に関し、本明細書に記載されるポリペプチドは、例えばhCD40L(配列番号1)などのCD40Lへの結合について競合剤ポリペプチドと競合またはそれを交差ブロックし、競合剤のCD40Lへの結合は、本発明のポリペプチドの不在下における競合剤のCD40Lへの結合と比較して、本発明のポリペプチドの存在下においては少なくとも5%、例えば10%、20%、30%、40%、50%、またはさらにはより多く、例えば80%、90%、またはさらには100%縮減される(すなわち所与のアッセイにおいて実質的に検出不能)。競合および交差ブロックは、例えば競合ELISAまたはFACSアッセイなどの当分野において公知のいずれかの手段によって決定され得る。ある側面において、本発明は本発明のポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは、ポリペプチド46B03(配列番号6)、28B02(配列番号3)、C010003290(配列番号8)、およびC010003318(配列番号9)の少なくとも1つのCD40Lへの結合を交差ブロックし、ならびに/またはポリペプチド46B03(配列番号6)、28B02(配列番号3)、C010003290(配列番号8)、およびC010003318(配列番号9)の少なくとも1つによってCD40Lへの結合を交差ブロックされる。
【0124】
本発明は、本明細書に記載されるポリペプチド、例えば配列番号3、4、5、6、7、8、9、78、79、80、81、または82と競合する競合剤にもまた関し、競合剤は、CD40Lへの結合について本明細書に記載されるポリペプチドと競合またはそれを交差ブロックし、本発明のポリペプチドのCD40Lへの結合は、前記競合剤の不在下における本発明のポリペプチドによるCD40Lへの結合と比較して、前記競合剤の存在下においては少なくとも5%、例えば10%、20%、30%、40%、50%、またはさらにはより多く、例えば80%、またはさらにはより多く、例えば少なくとも90%、またはさらには100%縮減される(すなわち所与のアッセイにおいて実質的に検出不能)。ある側面において、本発明は、本発明のポリペプチド、例えば46B03(配列番号6)、28B02(配列番号3)、C010003290(配列番号8)、およびC010003318(配列番号9)によるCD40Lへの結合を交差ブロックするポリペプチドに関し、ならびに/または46B03(配列番号6)、28B02(配列番号3)、C010003290(配列番号8)、およびC010003318(配列番号9)の少なくとも1つによってCD40Lへの結合を交差ブロックされ、前記ポリペプチドは、CD40Lに特異的に結合する少なくとも1つのVH、VL、dAb、免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含み、CD40Lへの結合はCD40Lの活性を調節する。
【0125】
本発明に従って、免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド、または他の結合剤が交差ブロックするかまたは交差ブロックする能力があるかどうかを決定するための好適なFACSアッセイが下に記載される。アッセイが、本明細書に記載される免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド、または他の結合剤のいずれかに用いられ得るということは理解されるであろう。FACS装置(例えばFACS Canto;Becton Dickinson)は製造者の推奨に合わせて運転される。
【0126】
CD40Lに結合することについて(例えば、2つの免疫グロブリン単一可変ドメインおよび/またはナノボディなどの)2つの結合剤間の「(交差)ブロック」または「(交差)競合」を評価するためには、FACS競合実験が、(例えばCHO細胞またはHEK293H細胞などの)ヒトCD40Lを過剰発現する細胞とバックグラウンド細胞株としての親細胞とを用いて行われ得る。異なる検出試薬が用いられ得、例えばモノクローナル抗FLAG(登録商標)M2抗体(Sigma-Aldrich、cat#F1804)、モノクローナル抗C-myc抗体(Sigma-Aldrich、cat#WH0004609M2)、モノクローナル抗HISタグ抗体(Sigma-Aldrich、cat#SAB1305538)を包含し、それぞれは異なって標識される。
【0127】
広範囲のフルオロフォアがフローサイトメトリーの標識として用いられ得、当業者に公知である。フルオロフォアまたは単純に「fluor」は、典型的には、CD40Lを認識する抗体(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインおよび/またはナノボディ)に、または検出試薬として用いられる抗体に取り付けられる。(限定することなしに)例えばAlexa Fluor(登録商標)、DyLight(登録商標)、ローダミン、PE、FITC、およびCy3にコンジュゲーションされた抗体などの、種々のコンジュゲーション抗体が利用可能である。
【0128】
ある標的を標的とする免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド、または他の結合剤が、本明細書において定義されるように(交差)ブロックする、(交差)ブロックする能力がある、競合的に結合する、または(交差)競合性であるかどうかを決定するための他の方法は、例えばXiao-Chi Jia et al. (Journal of Immunological Methods 288: 91-98, 2004)、Miller et al. (Journal of Immunological Methods 365: 118-125, 2011)、および/または本明細書に記載される方法(例えば例7を見よ)に記載されている。
【0129】
アミノ酸配列は、2つの異なる抗原または抗原決定基(例えば、哺乳動物の2つの異なる種からの血清アルブミン等、例えばヒト血清アルブミンおよびカニクイ(「cyno」)血清アルブミン等、例えば哺乳動物の異なる種からのCD40L、例えばヒトCD40L、cynoCD40L、およびラットCD40L等)について、それがそれらの異なる抗原または抗原決定基に(本明細書において定義される通り)特異的である場合には「交差反応性」であると言われる。2つの異なる抗原に対する結合親和性は例えば係数2、5、10、50、100、またはさらにはより多くだけ異なり得るが、それがそれらの異なる抗原または抗原決定基に(本明細書において定義される通り)特異的であるならば、アミノ酸配列またはポリペプチドは交差反応性であると考えられ得るということは理解されるであろう。
【0130】
本発明の文脈において、「調節する(modulating)」または「調節する(to modulate)」は、一般的には、好適なインビトロ、細胞、またはインビボアッセイ(例えば本明細書において挙げられるもの)を用いて測定されるCD40Lの活性を変改することを意味する。特に、「調節する(modulating)」または「調節する(to modulate)」は、(例えば、本明細書において挙げられるものなどの)好適なインビトロ、細胞、またはインビボアッセイを用いて測定して、本発明の免疫グロブリンまたはポリペプチドの存在なしでの同じ条件下の同じアッセイにおけるCD40Lの活性と比較して少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、例えば少なくとも10%もしくは少なくとも25%、例えば少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または90%以上、CD40Lの活性を縮減もしくは阻害することまたは代替的には活性を増大させることどちらかを意味し得る。
【0131】
「調節する」は、CD40Lが関わる(あるいは、そのシグナル伝達経路または代謝経路およびそれらの関連する生物学的または生理学的効果などの、その基質(単数もしくは複数)、リガンド(単数もしくは複数)、または経路(単数もしくは複数)が関わる)1つ以上の生物学的または生理学的メカニズム、効果、応答、機能、経路、または活性に関して変化を奏することをもまた意味し得る。再び、当業者には明瞭であろう通り、かかる作用は、いずれかの好適な様式で、および/または自体公知のいずれかの好適な(インビトロおよび通常は細胞またはインビボアッセイ)アッセイ、例えば本明細書または本明細書において引用される従来技術に記載されるアッセイを用いて決定され得る。特に、作用は、意図される生物学的または生理学的活性が、本発明の免疫グロブリン、ISVD、またはポリペプチドの存在なしでの同じ条件下の同じアッセイにおける生物学的または生理学的活性と比較してそれぞれ少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、例えば少なくとも10%もしくは少なくとも25%、例えば少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または90%以上増大または減少するようなものであり得る。調節には、B細胞および/またはT細胞活性化および/または増殖の縮減および/または阻害が関わり得る。調節には、(望まれない)免疫応答の縮減、阻害、および/または抑制が関わり得る。
【0132】
「CD40L活性」および「CD40Lによる活性」(これらの用語は本明細書において交換可能に用いられる)は、APC上のMHC分子によるT細胞受容体刺激と結びついたAPCの共刺激および活性化、サイトカインの存在下における全ての免疫グロブリンアイソタイプの分泌、B細胞増殖の刺激、B細胞活性化、サイトカイン産生、抗体クラススイッチ、および親和性成熟を包含するが、これに限定されない。例えば、X連鎖高IgM症候群の患者は機能的なCD40をそれらのB細胞上に発現するが、それらの活性化T細胞は不完全なCD40L蛋白質を有し、B細胞を活性化および免疫グロブリンアイソタイプスイッチを誘導するその不能をもたらす(Aruffo et al., 1993 Cell 72:291-300)。
【0133】
CD40L活性は他の分子との相互作用によって媒介され得る。「CD40L活性」は、CD40Lと次の分子との間の機能的な相互作用を包含する:CD40(CD40L受容体;例えばhCD40、配列番号2)、α5β1インテグリン、およびαI3/4β3。例えば、CD40Lはその受容体CD40に結合し、これは種々のAPC、例えばB細胞、マクロファージ、および樹状細胞、ならびに間質細胞、血管内皮細胞、および血小板上に発現されている。このように、CD40L活性は、CD80およびCD86などのT細胞共刺激分子ならびにIL12などの免疫刺激性分子のCD40によって媒介される誘導を包含する。
【0134】
本明細書において用いられる用語「活性化する(activate)」、「活性化する(activates)」、および「活性化される(activated)」は、参照に対して相対的に少なくとも10%、例えば少なくとも10%、25%、50%、75%、またはさらには100%以上の、所与の測定可能なCD40L活性の増大を言う。CD40L活性は、活性が、拮抗物質の不在に対して相対的に少なくとも10%、例示的な態様においては少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、またはさらには100%(すなわち、検出可能な活性なし)縮減される場合には、「拮抗される」。例えば、本発明のポリペプチドはいくらかのまたは全てのCD40L活性に拮抗し得る。1つの態様において、本発明のポリペプチドはB細胞増殖を活性化しない。別の態様において、本発明のポリペプチドは、T細胞または樹状細胞(DC)によるサイトカイン分泌を活性化せず、ここで、サイトカインは、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12、IL-13、IL-17、IL-23、TNF-α、およびIFN-γからなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインである。
【0135】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは、CD40Lの活性に拮抗することによってCD40Lの活性を調節する。
【0136】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは、CD40へのCD40Lの結合を好ましくは少なくとも70%、例えば80%、90%、95%、またはさらにはより多くブロックし、これはリガンド競合によって決定/(B細胞活性化FACS;AlphaScreenによって決定される。例の項をもまた見よ)によって決定される。
【0137】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは、CD80およびCD86などのT細胞共刺激分子ならびにIL12などの免疫刺激性分子のCD40によって媒介される誘導に拮抗する。
【0138】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドはB細胞活性化に拮抗する。
【0139】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは、ジャーカットT細胞におけるJNKリン酸化を実質的に誘導しないか、または抗CD3抗体によって共刺激されたジャーカットT細胞によるIFN-γ分泌を実質的に誘導しない。
【0140】
従って、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは、例えばマウスまたはサルにおいて、例えばTT-IgGアッセイによって決定されるB細胞活性化に拮抗する。
【0141】
ある態様において、本発明のポリペプチドは初代内皮細胞の活性化を実質的に誘導しない。
【0142】
ある態様において、本発明のポリペプチドは、例えば血小板活性化アッセイまたは血小板凝集アッセイによって決定される血小板活性化または血小板凝集を実質的に誘導しない。
【0143】
本発明のポリペプチドの本明細書において用いられる用語「効力」は、その特異的な効果が起こるために要求される本発明のポリペプチドの量の関数である。これは、単純にそのポリペプチドのIC50の逆数として測定される。これは、本発明の前記ポリペプチドがCD40Lの活性を調節および/または部分的にもしくは完全に阻害する能力を言う。より具体的には、これは、前記ポリペプチドが本明細書において定義されるCD40L活性の活性を縮減またはさらには全く阻害する能力を言い得る。このように、これは、前記ポリペプチドがT細胞の増殖を阻害および/またはT細胞の活性化を抑制し、インビボのある種の免疫応答の阻害をもたらす能力を言い得る。
【0144】
効力は、当分野において公知のまたは本明細書に記載されているいずれかの好適なアッセイによって測定され得る。
【0145】
本発明のポリペプチドの「有効性」は、飽和ポリペプチド濃度における効果そのものの最大の強さを測定する。有効性は、本発明のポリペプチドからの達成可能な最大の応答を指示する。これは、ポリペプチドが所望の(治療)効果を産生する能力を言う。
【0146】
アミノ酸配列は、文脈文脈に依存して、単一アミノ酸または2つ以上のアミノ酸の非分枝の配列を意味すると解釈される。ヌクレオチド配列は、3ヌクレオチド以上の非分枝の配列を意味すると解釈される。
【0147】
アミノ酸は、天然に存在する蛋白質中に普通に見いだされるL-アミノ酸であり、普通に当分野において公知である。D-アミノ酸を含有するアミノ酸配列は、この定義によって包摂されることを意図されない。連結部、クロスリンクおよびエンドキャップ、非ペプチジル結合などで改変された配列として発現され得るいずれかのペプチドまたは蛋白質はこの定義によって包摂される。
【0148】
用語「蛋白質」、「ペプチド」、「蛋白質/ペプチド」、および「ポリペプチド」は本開示においては交換可能に用いられ、それぞれは本開示の目的のためには同じ意味を有する。各用語は、2つ以上のアミノ酸の直鎖から作られた有機化合物を言う。化合物は、10アミノ酸以上;25アミノ酸以上;50アミノ酸以上;100アミノ酸以上、200アミノ酸以上、さらには300アミノ酸以上を有し得る。当業者は、ポリペプチと蛋白質とを区別するアミノ酸数の当分野において認識されるカットオフポイントはないが、ポリペプチドが一般的に蛋白質よりも少数のアミノ酸を含むということと;ポリペプチドは化学合成または組換え法によって作られ得るということと;蛋白質は一般的に当分野において公知の組換え法によってインビトロまたはインビボで作られるということとを理解するであろう。
【0149】
慣例的に、ポリペプチドの一次構造中のアミド結合はアミノ酸が書かれる順序であり、ポリペプチドのアミン末端(N末端)は常に左側であり、酸末端(C末端)は右側である。
【0150】
本発明のポリペプチドは、CD40Lに結合する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)、および好ましくは血清アルブミンに結合するISVDをもまた含む。本発明のポリペプチドにおいて、ISVD同士は直接的にリンクまたはリンカーを介してリンクされ得る。さらにはより好ましくは、本発明のポリペプチドはC末端延長を含む。下で詳述されるように、C末端延長は、ヒト対象/患者の大部分のサンプル中の既存抗体/因子の結合を本質的に防止/除去する。C末端延長は、最後の(最もC末端に在る)ISVDの最後のアミノ酸残基(通常はセリン残基)のC末端に存在する。
【0151】
相対的な親和性は、ポリペプチド中のISVDの在り処に依存し得る。本発明のポリペプチド中のISVDの順序(配置)が当業者の必要に従って選ばれ得るということは理解されるであろう。個々のISVDの順序、およびポリペプチドがリンカーを含むかどうかは、設計選択肢の問題である。リンカーありまたはなしのいくつかの配置は、他の配置と比較して好ましい結合性質を提供し得る。例えば、本発明のポリペプチド中の第1のISVD(例えばISVD1)および第2のISVD(例えばISVD2)の順序は(N末端からC末端に):(i)ISVD1(例えばナノボディ1)-[リンカー]-ISVD2(例えばナノボディ2)-[C末端延長];または(ii)ISVD2(例えばナノボディ2)-[リンカー]-ISVD1(例えばナノボディ1)-[C末端延長]であり得る;(式中、カギ括弧間の部分、すなわちリンカーおよびC末端延長は任意である)。全ての配置は本発明によって包摂される。所望の結合性質を提供するISVDの配置を含有するポリペプチドは、通例のスクリーニングによって、例えば例の項に例示されているように容易に同定され得る。好ましい順序はN末端からC末端に:CD40Lに結合するISVD-[リンカー]-血清アルブミンに結合するISVD-[C末端延長]であり、式中、カギ括弧間の部分は任意である。
【0152】
本発明のポリペプチドにおいて、2つ以上のISVD、例えばナノボディは、直接的に互いにリンクされ得(例えばWO99/23221に記載されている通り)、および/または互いに1つ以上の好適なリンカーもしくはそのいずれかの組み合わせを介してリンクされ得る。本発明のポリペプチドへの使用のための好適なリンカーは当業者には明瞭であろう。一般的には、アミノ酸配列をリンクするために当分野において用いられるいずれかのリンカーであり得る。好ましくは、前記リンカーは、医薬使用を意図される蛋白質またはポリペプチドを構築することへの使用に好適である。
【0153】
いくつかの特に好ましいリンカーは、抗体断片または抗体ドメインをリンクするために当分野において用いられるリンカーを包含する。それらは、上で引用されている公開に挙げられているリンカー、および例えば、diabodyまたはScFv断片を構築するために当分野において用いられるリンカーを包含する(しかしながら、これに関しては、diabodyおよびScFv断片においては、用いられるリンカー配列は、対応するVおよびVドメインが一緒になって完全な抗原結合部位を形成することを許す長さ、柔軟性の程度、および他の特性を有するべきであるが、本発明のポリペプチドに用いられるリンカーの長さまたは柔軟性には特に限定がないということに注意すべきである。なぜなら、ナノボディなどの各ISVDはそれ自体が完全な抗原結合部位を形成するからである)。
【0154】
例えば、リンカーは、好適なアミノ酸またはアミノ酸配列、特に、1および50、好ましくは1および30、例えば1および10アミノ酸残基の間のアミノ酸配列であり得る。かかるアミノ酸配列のいくつかの好ましい例は、例えばWO99/42077に記載されている(glyser型のgly-serリンカー、例えば(例えば(glyser)または(glyser、ならびに本明細書において挙げられるAblynxによる出願に記載されているGS30、GS15、GS9、およびGS7リンカー(例えばWO06/040153およびWO06/122825を見よ)、ならびにヒンジ様領域、例えば天然に存在する重鎖抗体のヒンジ領域または類似の配列(例えばWO94/04678に記載されている)を包含する。好ましいリンカーが表1に示されている。
【0155】
いくつかの他の特に好ましいリンカーは、ポリアラニン(例えばAAA)、ならびにリンカーGS30(WO06/122825の配列番号85)およびGS9(WO06/122825の配列番号84)である。好ましい側面において、リンカーは、配列番号18~29および77からなる群、好ましくは配列番号21から選ばれる。
【0156】
用いられるリンカーの長さ、柔軟性の程度、および/または他の特性(これは通常はScFv断片に用いられるリンカーのためであるので、重大ではないが)が、ケモカインまたは他の抗原の1つ以上に対する親和性、特異性、またはアビディティを包含するがこれに限定されない本発明の最終的なポリペプチドの特性に何らかの影響を有し得るということは本発明の範囲内に包摂される。本明細書における開示に基づいて、当業者は、任意にいくつかの限定された通例の実験後に、本発明の具体的なポリペプチドへの使用にとって最適なリンカーを決定できるであろう。
【0157】
2つ以上のリンカーが本発明のポリペプチドに用いられるときに、それらのリンカーは同じかまたは異なり得る。再び、本明細書における開示に基づいて、当業者は、任意にいくつかの限定された通例の実験後に、本発明の具体的なポリペプチドへの使用にとって最適なリンカーを決定できるであろう。
【0158】
本発明のポリペプチドにおいて、ISVDはN末端延長によって先行され得る。本発明の文脈において、N末端延長は、少なくとも1つのアミノ酸残基から最大40アミノ酸残基、好ましくは2および30アミノ酸残基の間、例えば、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸残基などの2および20アミノ酸残基の間のアミノ酸配列からなる。N末端延長は、本発明のポリペプチドの第1の(すなわち最もN末端に在る)ISVDの第1の(すなわち、最もN末端に在る、一般的にKabat付番に従ってアミノ酸1として指定される)アミノ酸残基のN末端に存在する。従って、本発明は、N末端延長を含む第1のポリペプチドおよび/または前記第2のポリペプチドに関する。
【0159】
後でさらに論じられるように、ISVDはVHH、V、またはVドメインに由来し得る。しかしながら、ISVDは、それらが本発明の本発明のポリペプチド中においてVおよびVドメインの相補的なペアを形成しないように選ばれる。ナノボディ、VHH、およびヒト化VHHは、それらが軽鎖を有さない天然のラクダ抗体に由来するという点で特別であり、実に、これらのドメインはラクダ軽鎖と結びついて相補的なVHHおよびVのペアを形成する能力がない。それゆえに、本発明のポリペプチドは相補的なISVDを含まず、および/または例えば相補的なV/Vペアなどの相補的なISVDペアを形成しない。
【0160】
本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、前記リンカーは配列番号18~29および77からなる群から選ばれる。
【0161】
本発明に従うポリペプチドはさらなる分子とコンジュゲーションされ得るということもまた企図される。さらなる分子は、直接的にまたは好適な長さのスペーサーを介してポリペプチドにコンジュゲーションされ得る。治療目的のためには、治療エフェクター基、例えば放射性基、すなわち放射性同位体もしくは放射性核種(例えば、H、14C、15N、33P、35S、90Y、99Tc、111In、123I、125I、131I、201Tl、213Bi)を含むかもしくはそれからなる基、毒素、または細胞傷害性基、例えば細胞生育阻害剤とのコンジュゲーションが好適であり得る。別の側面において、本発明のポリペプチドは標識基にカップリングされ得(標識されたポリペプチド)、これはそれから例えば診断目的に用いられ得る。好適な標識基は、放射性同位体(例えば、上で挙げられているもの)または放射性同位体を含有する基、放射性核種、蛍光基(例えば、蛍光蛋白質、例えばGFP、RFPなど、Alexa-Fluor(登録商標)色素、ローダミン、フルオレセイン、およびその誘導体、例えばFITC、シアニン色素、例えばCy3(登録商標)およびCy5(登録商標))、酵素基(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ)、化学発光基、ビオチニル基、金属粒子(例えば金粒子)、磁性粒子(例えば、マグネタイト(Fe)および/またはマグヘマイト(Fe)を含有するコアを有する)、所定のポリペプチド基などから選択され得る。
【0162】
別様に指示されない限り、用語「免疫グロブリン」および「免疫グロブリン配列」は、本明細書において重鎖抗体または従来の4鎖抗体を言うために用いられているかどうかにかかわらず、完全なサイズの抗体、その個々の鎖、ならびにその全ての部分、ドメイン、または断片(抗原結合ドメインまたは断片、例えばそれぞれVHHドメインまたはV/Vドメインを包含するが、これに限定されない)両方を包含する一般的用語として用いられる。
【0163】
(ポリペプチドまたは蛋白質の)本明細書において用いられる用語「ドメイン」は、蛋白質の残りからは独立してその三次構造を保持する能力を有するフォールディングした蛋白質構造を言う。一般的に、ドメインは蛋白質の各独特な機能的特性を担い、多くのケースにおいては、蛋白質および/またはドメインの残りの機能喪失なしに追加、除去、または他の蛋白質に移入され得る。
【0164】
本明細書において用いられる用語「免疫グロブリンドメイン」は、(例えば、従来の4鎖抗体のもしくは重鎖抗体の鎖などの)抗体鎖の球状領域、または本質的にかかる球状領域からなるポリペプチドを言う。免疫グロブリンドメインは、それらが抗体分子に特徴的な免疫グロブリンフォールドを保持することを特徴とし、これは2つのベータシートに配列した約7つの逆平行ベータストランドの2層のサンドイッチからなり、任意に、保存されたジスルフィド結合によって安定化される。
【0165】
本明細書において用いられる用語「免疫グロブリン可変ドメイン」は、本質的に4つの「フレームワーク領域」からなる免疫グロブリンドメインを意味し、それらは当分野および下の本明細書においてそれぞれ「フレームワーク領域1」または「FR1」;「フレームワーク領域2」または「FR2」;「フレームワーク領域3」または「FR3」;および「フレームワーク領域4」または「FR4」と言われる;これらのフレームワーク領域は3つの「相補性決定領域」または「CDR」によって分断され、それらは当分野および下の本明細書においてそれぞれ「相補性決定領域1」または「CDR1」;「相補性決定領域2」または「CDR2」;および「相補性決定領域3」または「CDR3」と言われる。それゆえに、免疫グロブリン可変ドメインの一般的な構造または配列は次のように指示され得る:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。抗原結合部位を保有することによって抗原について抗体に特異性を授けるのは、免疫グロブリン可変ドメインである。
【0166】
好ましいCDRが表A-2に示されており、すなわちCDR1は配列番号40、47、54、61、68、および33から選ばれ、CDR2は配列番号42、49、56、63、70、および35から選ばれ;CDR3は配列番号44、51、58、65、72、および37から選ばれる。好ましくは、CDR1、CDR2、およびCDR3は1つのクローンから選ばれ、例えば、
- CDR1は配列番号33であり、CDR2は配列番号35であり、CDR3は配列番号37であるか;
- CDR1は配列番号61であり、CDR2は配列番号63であり、CDR3は配列番号65であるか;
- CDR1は配列番号40であり、CDR2は配列番号42であり、CDR3は配列番号44であるか;
- CDR1は配列番号68であり、CDR2は配列番号70であり、CDR3は配列番号72であるか;
- CDR1は配列番号47であり、CDR2は配列番号49であり、CDR3は配列番号51であるか;または
- CDR1は配列番号54であり、CDR2は配列番号56であり、CDR3は配列番号58である。
【0167】
「単一可変ドメイン」と交換可能に用いられる用語「免疫グロブリン単一可変ドメイン」は、抗原結合部位が単一の免疫グロブリンドメイン上に存在しかつそれによって形成される分子を定義する。これは、2つの免疫グロブリンドメイン、特に2つの可変ドメインが相互作用して抗原結合部位を形成する「従来の」免疫グロブリンまたはそれらの断片から、免疫グロブリン単一可変ドメインを際立たせている。典型的には、従来の免疫グロブリンにおいては、重鎖可変ドメイン(V)と軽鎖可変ドメイン(V)とが相互作用して抗原結合部位を形成する。このケースにおいては、VおよびV両方の相補性決定領域(CDR)が抗原結合部位に寄与するであろう。すなわち、合計で6つのCDRが抗原結合部位形成に関わるであろう。
【0168】
好ましいISVDが表A-1に示されており、すなわち配列番号3、4、5、6、7、8、9、78、79、80、81、および82、最も好ましくは配列番号8、6、7、および3である。
【0169】
上の定義に鑑みて、従来の4鎖抗体(例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、もしくはIgE分子;当分野において公知)、またはFab断片、F(ab’)2断片、Fv断片、例えばジスルフィドによってリンクされたFvもしくはscFv断片、またはかかる従来の4鎖抗体に由来するdiabody(全て当分野において公知)の抗原結合ドメインは、通常は免疫グロブリン単一可変ドメインとは見なされないであろう。なぜなら、これらのケースにおいて、抗原のそれぞれのエピトープへの結合は、1つの(単一の)免疫グロブリンドメインによってではなく、軽および重鎖可変ドメインなどの(結びつく)免疫グロブリンドメインのペアによって、すなわち協同してそれぞれの抗原のエピトープに結合する免疫グロブリンドメインのV-Vペアによって通常は起こるからである。
【0170】
対照的に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、追加の免疫グロブリン可変ドメインとペアになることなしに抗原のエピトープに特異的に結合する能力がある。免疫グロブリン単一可変ドメインの結合部位は単一のVHH、V、またはVドメインによって形成される。ゆえに、免疫グロブリン単一可変ドメインの抗原結合部位はせいぜい3つのCDRによって形成される。
【0171】
このように、単一可変ドメインは、それが単一の抗原結合ユニット(すなわち、単一の抗原結合ドメインが、機能的な抗原結合ユニットを形成するために別の可変ドメインと相互作用することを必要としないような、本質的に単一可変ドメインからなる機能的な抗原結合ユニット)を形成する能力がある限り;軽鎖可変ドメイン配列(例えば、V配列)もしくはその好適な断片;または重鎖可変ドメイン配列(例えば、V配列もしくはVHH配列)もしくはその好適な断片であり得る。
【0172】
本発明の1つの態様において、免疫グロブリン単一可変ドメインは重鎖可変ドメイン配列(例えばV配列)である;より具体的には、免疫グロブリン単一可変ドメインは、従来の4鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列、または重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列であり得る。
【0173】
例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインは、(単一)ドメイン抗体(もしくは(単一)ドメイン抗体としての使用に好適であるアミノ酸)、「dAb」もしくはdAb(もしくはdAbとしての使用に好適であるアミノ酸)、またはナノボディ(本明細書において定義される通りであり、VHHを包含するがこれに限定されない);他の単一可変ドメイン、あるいはそのいずれか1つのいずれかの好適な断片であり得る。
【0174】
特に、免疫グロブリン単一可変ドメインはナノボディ(登録商標)(本明細書において定義される通り)またはその好適な断片であり得る。[注意:ナノボディ(登録商標)およびNanoclone(登録商標)はAblynx N.V.の登録商標である]ナノボディの一般的な説明については、下のさらなる記載、および例えばWO08/020079(16ページ)に記載されているなどの本明細書において引用される従来技術の参照がなされる。
【0175】
VHH、VHドメイン、VHH抗体断片、およびVHH抗体としてもまた公知の「VHHドメイン」は、元々は「重鎖抗体」(すなわち、「軽鎖が欠如した抗体」;Hamers-Casterman et al. 1993 Nature 363: 446-448)の抗原結合免疫グロブリン(可変)ドメインとして記載された。用語「VHHドメイン」は、これらの可変ドメインを、従来の4鎖抗体中に存在する重鎖可変ドメイン(これらは本明細書において「Vドメイン」または「VHドメイン」と言われる)および従来の4鎖抗体中に存在する軽鎖可変ドメイン(これらは本明細書において「Vドメイン」または「VLドメイン」と言われる)から区別するために選ばれた。VHHおよびナノボディのさらなる説明については、Muyldermans (Reviews in Molecular Biotechnology 74: 277-302, 2001)による総説記事、ならびに次の特許出願の参照がなされ、これらは一般的な背景技術として挙げられる:ブリュッセル自由大学のWO94/04678、WO95/04079、およびWO96/34103;UnileverのWO94/25591、WO99/37681、WO00/40968、WO00/43507、WO00/65057、WO01/40310、WO01/44301、EP1134231、およびWO02/48193;Vlaams Instituut voor Biotechnologie(VIB)のWO97/49805、WO01/21817、WO03/035694、WO03/054016、およびWO03/055527;Algonomics N.V.およびAblynx N.V.のWO03/050531;カナダ国立研究機構によるWO01/90190;Institute of AntibodiesによるWO03/025020(=EP1433793);およびAblynx N.V.によるWO04/041867、WO04/041862、WO04/041865、WO04/041863、WO04/062551、WO05/044858、WO06/40153、WO06/079372、WO06/122786、WO06/122787、およびWO06/122825、ならびにAblynx N.V.によるさらなる公開特許出願。これらの出願において挙げられているさらなる従来技術、および特に国際出願WO06/040153の41~43ページにおいて挙げられている参照の列記の参照もまたなされ、それらの列記および参照は参照によって本明細書に組み込まれる。これらの参照に記載されている通り、ナノボディ(特にVHH配列および部分的ヒト化ナノボディ)は、特に、フレームワーク配列の1つ以上における1つ以上の「ホールマーク残基」の存在を特徴とし得る。ナノボディのヒト化および/またはラクダ化、ならびに他の改変、部分もしくは断片、誘導体もしくは「ナノボディ融合体」、多価コンストラクト(リンカー配列のいくつかの限定しない例を包含する)、およびナノボディの半減期を増大させるための異なる改変、ならびにそれらの調製を包含するナノボディのさらなる説明は、例えばWO08/101985およびWO08/142164に見いだされ得る。ナノボディのさらなる一般的な説明については、例えばWO08/020079(16ページ)に記載されているものなどの本明細書において引用される従来技術の参照がなされる。
【0176】
「Dab」、「ドメイン抗体」、および「dAb」としてもまた公知の「ドメイン抗体」は(用語「ドメイン抗体」および「dAb」はGlaxoSmithKlineグループ企業によって商標として用いられている)、例えばEP0368684、Ward et al. (Nature 341: 544-546, 1989)、Holt et al. (Trends in Biotechnology 21: 484-490, 2003)、およびWO03/002609、ならびに例えばWO04/068820、WO06/030220、WO06/003388、およびDomantis Ltdの他の公開特許出願に記載されている。ドメイン抗体は、本質的には、非ラクダほ乳類、特にヒト4鎖抗体のVHまたはVLドメインに対応する。単一の抗原結合ドメインとして、すなわちそれぞれVLまたはVHドメインとペアになることなしにエピトープに結合するためには、例えばヒト単一VHまたはVLドメイン配列のライブラリーを用いることによって、かかる抗原結合特性の特異的選択が要求される。ドメイン抗体は、VHHのようにおよそ13からおよそ16kDaの分子量を有し、完全にヒト配列に由来する場合には、例えばヒトへの治療使用のためのヒト化を要求しない。
【0177】
それらがほ乳類起源ではないので本発明の文脈においてはより好ましくないが、単一可変ドメインはサメのある種の種に由来し得るということにもまた注意すべきである(例えば、いわゆる「IgNARドメイン」。例えばWO05/18629を見よ)。
【0178】
それゆえに、本発明の意味において、用語「免疫グロブリン単一可変ドメイン」または「単一可変ドメイン」は、非ヒトソース、好ましくはラクダに由来するポリペプチド、好ましくはラクダ重鎖抗体を含む。それらは以前に記載されたようにヒト化され得る。その上に、用語は、例えばDavies and Riechmann (FEBS 339: 285-290, 1994; Biotechnol. 13: 475-479, 1995; Prot. Eng. 9: 531-537, 1996)およびRiechmann and Muyldermans (J. Immunol. Methods 231: 25-38, 1999)に記載されているように「ラクダ化」された、非ラクダソース、例えばマウスまたはヒトに由来するポリペプチドを含む。
【0179】
VHHドメインのアミノ酸残基は、Kabat et al. ("Sequence of proteins of immunological interest", US Public Health Services, NIH Bethesda, MD, Publication No. 91)によって与えられるVドメインのための一般的な付番に従って、ラクダ科からのVHHドメインに適用されているように、例えばRiechmann and Muyldermans (J. Immunol. Methods 231: 25-38, 1999)の図2に示されているように付番される。Vドメインのアミノ酸残基に付番するための代替的な方法は当分野において公知であり、この方法は同様の様式でVHHドメインにもまた適用され得る。しかしながら、本明細書、請求項、および図においては、別様に指示されない限り、上に記載されているVHHドメインに適用されるKabatに従う付番が踏襲される。
【0180】
ドメインおよびVHHドメインについて当分野において周知である通り、CDRのそれぞれのアミノ酸残基の総数は変動し得、Kabat付番によって指示されるアミノ酸残基の総数には対応せずにあり得るということに注意すべきである(すなわち、Kabat付番に従う1つ以上の位置が実際の配列中においては占有されずにあり得る。または、実際の配列は、Kabat付番によって許される数よりも多くのアミノ酸残基を含有し得る)。これは、一般的に、Kabatに従う付番が、実際の配列中のアミノ酸残基の実際の付番に対応し得、または対応せずにあり得るということを意味する。VHドメインおよびVHHドメインのアミノ酸残基の総数は、通常は110から120の範囲内、多くの場合には112および115の間であろう。しかしながら、より小さい配列およびより長い配列もまた本明細書に記載される目的にとって好適であり得るということに注意すべきである。
【0181】
CDR領域の決定は異なる方法に従ってされ得る。Kabatに従うCDR決定において、VHHのFR1は位置1~30のアミノ酸残基を含み、VHHのCDR1は位置31~35のアミノ酸残基を含み、VHHのFR2は位置36~49のアミノ酸残基を含み、VHHのCDR2は位置50~65のアミノ酸残基を含み、VHHのFR3は位置66~94のアミノ酸残基を含み、VHHのCDR3は位置95~102のアミノ酸残基を含み、VHHのFR4は位置103~113のアミノ酸残基を含む。
【0182】
しかしながら、本願において、CDR配列はKontermann and Dubel (Eds., Antibody Engineering, vol 2, Springer Verlag Heidelberg Berlin, Martin, Chapter 3, pp. 33-51, 2010)に従って決定された。この方法に従うと、FR1は位置1~25のアミノ酸残基を含み、CDR1は位置26~35のアミノ酸残基を含み、FR2は位置36~49のアミノ酸残基を含み、CDR2は位置50~58のアミノ酸残基を含み、FR3は位置59~94のアミノ酸残基を含み、CDR3は位置95~102のアミノ酸残基を含み、FR4は位置103~113のアミノ酸残基を含む。
【0183】
免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばドメイン抗体およびナノボディ(VHHドメインを包含する)はヒト化に付され得る。特に、ヒト化免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばナノボディ(VHHドメインを包含する)は、以前のパラグラフにおいて一般的に定義されているが、その中にはヒト化置換(本明細書において定義される通り)であるおよび/またはそれに対応する少なくとも1つのアミノ酸残基が(特に、フレームワーク残基の少なくとも1つに)存在する免疫グロブリン単一可変ドメインであり得る。潜在的に有用なヒト化置換は、天然に存在するVHH配列のフレームワーク領域の配列を1つ以上のごく近縁のヒトV配列の対応するフレームワーク配列と比較することによって確かめられ得る。その後に、このように決定された潜在的に有用なヒト化置換の1つ以上(またはその組み合わせ)は前記VHH配列中に(自体公知のいずれかの様式で、本明細書にさらに記載されるように)導入され得、もたらされたヒト化VHH配列は、標的に対する親和性、安定性、発現の容易さおよびレベル、ならびに/または他の所望の特性について試験され得る。このやり方で、トライアル・アンド・エラーの限定された程度によって、他の好適なヒト化置換(またはその好適な組み合わせ)が、本明細書における開示に基づいて当業者によって決定され得る。また、前述に基づいて、ナノボディ(VHHドメインを包含する)などの免疫グロブリン単一可変ドメイン(のフレームワーク領域)が部分的ヒト化または完全ヒト化され得る。
【0184】
免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばドメイン抗体およびナノボディ(VHHドメインおよびヒト化VHHドメインを包含する)は、1つ以上のCDRのアミノ酸配列中に1つ以上の変改を導入することによる親和性成熟に付され得る。それらの変改は、それぞれの親分子と比較して、もたらされる免疫グロブリン単一可変ドメインの、そのそれぞれの抗原に対する改善された親和性をもたらす。本発明の親和性成熟した免疫グロブリン単一可変ドメイン分子は、当分野において公知の方法によって、例えばMarks et al. (Biotechnology 10:779-783, 1992)、Barbas, et al. (Proc. Nat. Acad. Sci, USA 91: 3809-3813, 1994)、Shier et al. (Gene 169: 147-155, 1995)、Yelton et al. (Immunol. 155: 1994-2004, 1995)、Jackson et al. (J. Immunol. 154: 3310-9, 1995)、Hawkins et al. (J. Mol. Biol. 226: 889 896, 1992)、Johnson and Hawkins (Affinity maturation of antibodies using phage display, Oxford University Press, 1996)によって記載されているように調製され得る。
【0185】
、V、VHH、ドメイン抗体、またはナノボディなどの免疫グロブリン単一可変ドメインから出発してポリペプチドを設計/選択および/または調製するプロセスは、本明細書においては前記免疫グロブリン単一可変ドメインを「フォーマットする」ともまた言われ;ポリペプチドの一部にされる免疫グロブリン単一可変ドメインは、「フォーマットされる」または前記ポリペプチド「のフォーマットである」と言われる。免疫グロブリン単一可変ドメインがフォーマットされ得るやり方の例、およびかかるフォーマットの例は、本明細書における開示から当業者には明瞭であろう;かかるフォーマットされた免疫グロブリン単一可変ドメインは本発明のさらなる側面を形成する。
【0186】
例えば、限定なしに、1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインが、ポリペプチドの調製のための「結合ユニット」、「結合ドメイン」、または「ビルディングブロック」(これらの用語は本明細書において交換可能に用いられる)として用いられ得、これは、結合ユニットとして働き得る(すなわち、CD40L上の同じかもしくは別のエピトープに対するおよび/またはCD40L以外の1つ以上の抗原、蛋白質、もしくは標的に対する)1つ以上のさらなる免疫グロブリン単一可変ドメインを任意に含有し得る。
【0187】
一価のポリペプチドは、(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインなどの)1つの結合ユニットのみを含むかまたは本質的にそれからなる。(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインなどの)2つ以上の結合ユニットを含むポリペプチドは、本明細書においては「多価」ポリペプチドともまた言われ、かかるポリペプチド中に存在する結合ユニット/免疫グロブリン単一可変ドメインは、本明細書においては「多価フォーマット」であるともまた言われる。例えば、「二価」ポリペプチドは、任意にリンカー配列を介してリンクされる2つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得、「三価」ポリペプチドは、任意に2つのリンカー配列を介してリンクされる3つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得;「四価」ポリペプチドは、任意に3つのリンカー配列を介してリンクされる4つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得るなどである。
【0188】
多価ポリペプチドにおいて、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインは同じかまたは異なり得、同じ抗原もしくは抗原決定基(例えば同じ部分(単数もしくは複数)もしくはエピトープ(単数もしくは複数)、または異なる部分もしくはエピトープ)を標的とし得、または代替的には異なる抗原もしくは抗原決定基を標的とし得;あるいはそのいずれかの好適な組み合わせである。少なくとも1つの結合ユニットが第1の抗原(すなわちCD40L)を標的とし、少なくとも1つの結合ユニットが第2の抗原(すなわち、CD40Lとは異なる)を標的とする(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインなどの)少なくとも2つの結合ユニットを含有するポリペプチドは、「多重特異性」ポリペプチドともまた言われ、かかるポリペプチド中に存在する(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインなどの)結合ユニットは、本明細書においては「多重特異性フォーマット」であるともまた言われる。それゆえに、例えば、本発明の「二重特異性」ポリペプチドは、第1の抗原(すなわちCD40L)を標的とする少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインと第2の抗原(すなわち、CD40Lとは異なる)を標的とする少なくとも1つのさらなる免疫グロブリン単一可変ドメインとを含むポリペプチドであり、本発明の「三重特異性」ポリペプチドは、第1の抗原(すなわちCD40L)を標的とする少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインと、第2の抗原(すなわち、CD40Lとは異なる)を標的とする少なくとも1つのさらなる免疫グロブリン単一可変ドメインと、第3の抗原(すなわち、CD40Lおよび第2の抗原両方とは異なる)を標的とする少なくとも1つのさらなる免疫グロブリン単一可変ドメインとを含むポリペプチドである;などである。
【0189】
例えば「二重パラトープポリペプチド」または「三重パラトープポリペプチド」などの「多重パラトープポリペプチド」は、それぞれが異なるパラトープを有する2つ以上の結合ユニットを含むかまたは本質的にそれからなる。
【0190】
好ましくは、本発明のポリペプチドは、第1のISVD(例えば、CD40Lに結合するISVD)と第2のISVD(例えば、血清アルブミンに結合するISVD)とを含む二重特異性ポリペプチドである。
【0191】
治療医薬抗体の有効性を改善するための手段は、その血清中残存性を増大させ、それによってより高い循環レベル、より頻繁でない投与、および縮減された用量を許すことである。
【0192】
当分野においては、インビボの分子の半減期を延長する基または部分、例えばFc領域のPEG基が記載されている。
【0193】
しかしながら、抗体のFc領域は、その血清中半減期のみならず、エフェクター機能、例えば補体依存性細胞傷害性(CDC)、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、および抗体依存性細胞貪食(ADCP)をもまた媒介し、これは安全性に負の影響を有する。
【0194】
しかしながら、前に挙げられた通り、最近の知見は、健康な血液ドナーにおける抗PEG抗体の22~25%の発生率を実証している。抗PEG抗体のこの発生は、いくつかの患者においては有効性を限定し得、PEGが非免疫原性であるという一般的な想定に反する。ゆえに、PEG化された治療薬は、特に免疫低下した疾患設定において臨床使用にとっての潜在的重大性を有する。その上に、抗CD40LのFab’分子のPEG化がその活性を4~5倍減少させるということが報告されている(US2010/0104573)。
【0195】
本発明者は、ベンチマークCDP7657よりも高性能であるのみならず、この性能を半減期延長後にもまた保持するようにISVDを作り替えることができた。本明細書にさらに記載される本発明の具体的な限定しない側面において、本発明のポリペプチドは、CD40Lに結合する免疫グロブリン単一可変ドメインと比較して増大した血清中半減期(本明細書にさらに記載される通り)を有する。
【0196】
本発明のポリペプチドの「半減期」は、一般的には、WO08/020079の57ページのパラグラフo)に記載されているように定義され得、そこに挙げられているように、例えばポリペプチドの分解および/または天然のメカニズムによるポリペプチドのクリアランスもしくは隔離が原因で、ポリペプチドの血清中濃度がインビボで50%縮減されるためにとられる時間を言う。本発明のポリペプチドのインビボ半減期は、自体公知のいずれかの様式で、例えば薬物動態分析によって決定され得る。好適な技術は当業者には明瞭であろう。例えば一般的にはWO08/020079の57ページのパラグラフo)に記載されている通りであり得る。また、WO08/020079の57ページのパラグラフo)に挙げられている通り、半減期は、t1/2-α、t1/2-β、および曲線下面積(AUC)などのパラメータを用いて表現され得る。例えば、標準的なハンドブック、例えばKenneth et al. (Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacists, John Wiley & Sons Inc, 1986)およびGibaldi & Perron ("Pharmacokinetics", Marcel Dekker, 2nd Rev. Edition, 1982)の参照がなされる。用語「半減期の増大」または「増大した半減期」もまたWO08/020079の57ページのパラグラフo)において定義されている通りであり、特に、t1/2-αおよび/もしくはAUCの増大ありもしくはなしどちらかの、または両方のt1/2-βの増大を言う。
【0197】
本発明の具体的な側面において、本発明のポリペプチドは、血清蛋白質に結合するISVDを欠く対応するポリペプチドと比較して増大した半減期を有する。かかるポリペプチドのいくつかの好ましい限定しない例は、本明細書におけるさらなる開示に基づいて当業者には明瞭になるであろう。例えば、血清蛋白質(例えば血清アルブミン)に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含む本発明のポリペプチド;または本発明のアミノ酸配列の半減期を増大させる少なくとも1つの部分(特に、少なくとも1つのアミノ酸配列)にリンクされた本発明の少なくとも1つのアミノ酸配列を含む本発明のポリペプチドを含む。かかる半減期延長性部分または免疫グロブリン単一可変ドメインを含む本発明のポリペプチドの例は、本明細書におけるさらなる開示に基づいて当業者には明瞭になるであろう;例えば、限定なしに、本発明の1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインが、1つ以上の血清蛋白質もしくはその断片(例えば、(ヒト)血清アルブミンもしくはその好適な断片)に、または血清蛋白質に結合し得る1つ以上の結合ユニット(例えば、血清蛋白質、例えば血清アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)、IgGなどの血清免疫グロブリン、またはトランスフェリンに結合し得るISVD、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体、「dAb」、またはナノボディなどの;本明細書において挙げられているさらなる記載および参照の参照がなされる)に好適にリンクされたポリペプチド;血清蛋白質に結合し得る1つ以上の小型蛋白質またはペプチド、例えば、限定なしに、WO91/01743、WO01/45746、WO02/076489、WO2008/068280、WO2009/127691、およびPCT/EP2011/051559に記載されている蛋白質およびペプチドを含む本発明のポリペプチドを包含する。
【0198】
一般的に、増大した半減期を有する本発明の化合物またはポリペプチドは、好ましくは、本発明の対応するアミノ酸配列、例えばCD40Lに結合するISVD自体(血清アルブミンに結合するISVDなし)の半減期よりも少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、例えば少なくとも10倍または20倍超長い半減期を有する。例えば、増大した半減期を有する本発明の化合物またはポリペプチドは、例えばヒトにおいて、本発明の対応するアミノ酸配列、例えばCD40Lに結合するISVD自体と比較して1時間超、好ましくは2時間超、より好ましくは6時間超、例えば12時間超、またはさらには24、48、もしくは72時間超増大した半減期を有し得る。
【0199】
本発明の好ましい限定しない側面において、本発明のかかる化合物またはポリペプチドは、例えばヒトにおいて、本発明の対応するアミノ酸配列、例えばCD40Lに結合するISVD自体と比較して1時間超、好ましくは2時間超、より好ましくは6時間超、例えば12時間超、またはさらには24、48、もしくは72時間超増大した血清中半減期を有する。
【0200】
本発明の別の好ましい限定しない側面において、本発明のかかる化合物またはポリペプチドは、少なくとも約12時間、好ましくは少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも48時間、さらにはより好ましくは少なくとも72時間以上というヒトにおける血清中半減期を見せる。例えば、本発明の化合物またはポリペプチドは、少なくとも5日(例えば約5から10日)、好ましくは少なくとも9日(例えば約9から14日)、より好ましくは少なくとも約10日(例えば約10から15日)、または少なくとも約11日(例えば約11から16日)、より好ましくは少なくとも約12日(例えば約12から18日以上)、または14日超(例えば約14から19日)という半減期を有し得る。
【0201】
また、好ましい側面において、本発明は本明細書に記載されるポリペプチドに関し、血清アルブミンに結合する前記ISVDは、本質的に4つのフレームワーク領域(それぞれF1からFR4)と3つの相補性決定領域(それぞれCDR1からCDR3)とからなり、CDR1は配列番号74であり、CDR2は配列番号75であり、CDR1は配列番号76である(表A-3を見よ)。
【0202】
本発明の特に好ましい限定しない側面において、本発明は、CD40Lに特異的に結合する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)と血清アルブミンに結合する少なくとも1つのISVDとを含む本発明のポリペプチドを提供し、例えば、血清アルブミンに結合するISVDは、ALB135(配列番号15)、ALB129(配列番号13)、ALB8(配列番号11)、ALB23(配列番号12)、およびALB132(配列番号14)からなる群、好ましくは配列番号15から選ばれる。
【0203】
治療蛋白質産物に対する免疫応答は、患者の安全性および産物の有効性両方について問題を呈し得る。血栓塞栓事象は、蛋白質治療医薬に対する既存抗体(PEA)および/または抗薬物抗体(ADA)が原因でもまたあり得る。この点で、免疫原性とは、治療蛋白質産物がそれ自体および関連蛋白質に対する免疫応答を生成または免疫学的に関連する臨床的な有害事象を誘導する性向である。
【0204】
本発明者は、従来技術の抗体よりも有意に安全であるポリペプチドを作り出すことができた。
【0205】
本発明に至る研究において、C末端延長(これは単一のC末端アラニン残基ほども単純であり得る。再びWO12/175741、例3を見よ)をISVDのC末端領域または末端に追加することが、ヒト対象/患者の大部分のサンプル中の既存抗体/因子の結合を本質的に防止/除去するということを確立した後に、ヒト対象(健康なボランティア、および/または疾患もしくは障害を患う対象)から得られたサンプルが、C末端延長が存在するときでさえもナノボディ(または他のISVD)の暴露されたC末端領域に結合し得る(他の)既存抗体または因子を可能性として含有するかどうかが検討された。そうする中で、本発明者は、本質的に、C末端延長したISVDに結合するかかる既存抗体は、健康なボランティアの血液もしくは血清中またはいくつもの異なる疾患の1つを患うヒト患者から得られた血液もしくは血清中(いくつかの炎症性疾患または自己免疫障害を包含する。データは示さない)には見いだされ得ないが、ある種の深刻な(自己)免疫障害(例えばSLE)を患う(全てではないが)ある種のヒト対象から得られたいくつかの血液または血清サンプルは、ISVDがC末端延長を含むときでさえもISVDに結合し得るいくつかの既存抗体/因子を含有するように見えるということを見いだした。
【0206】
本発明者は、改善されたISVDを提供することに取りかかった。それらは、それらが暴露されたC末端領域または末端を有するときに、免疫系に深刻に影響/活性化するある種の(自己)免疫疾患または障害(例えばSLE)を患うヒト対象から得られた血液または血清サンプル中に見いだされるものなどの既存抗体/因子による結合をより被りにくい。
【0207】
暴露されたC末端を有するISVDへの既存抗体/因子の結合が、位置112のセリン(Kabat付番)からリジン(K)またはグルタミン(Q)どちらかへの変異によって(さらに)縮減され得るということが見いだされた。特に、かかるS112KまたはS112Q変異は、SLEなどの深刻な自己免疫障害を患うヒト対象の血液または血清中に見いだされる既存抗体/因子などの、C末端延長を含むISVD(ただしS112KまたはS112Q変異なし)に結合し得る既存抗体/因子の結合を(さらに)縮減または本質的に防止/除去し得るということが見いだされた。
【0208】
この知見は広く適用可能である。
【0209】
本発明の免疫グロブリン(および特に免疫グロブリン単一可変ドメイン)は、全て「Improved immunoglobulin variable domains」と題する次の同時係属のUS仮出願に記載されている具体的な変異/アミノ酸残基をもまた含有し得る:2014年5月16日出願のUS61/994552;2014年6月18日出願のUS61/014,015;2014年8月21日出願のUS62/040,167;および2014年9月8日出願のUS62/047,560(全てAblynx N.V.に譲渡し)。
【0210】
特に、本発明は、ISVD、好ましくはC末端に在るISVDを含む本明細書に記載されるポリペプチドに関し、さらにはより好ましくは、前記C末端に在るISVDは血清アルブミンに結合するISVDであり:(i)位置112のアミノ酸残基はKもしくはQの1つであり;および/または(ii)位置89のアミノ酸残基はTであり;および/または(iii)位置89のアミノ酸残基はLであり、位置110のアミノ酸残基はKもしくはQの1つであり;かつ(iv)ケース(i)から(iii)のそれぞれにおいて、位置11のアミノ酸は好ましくはVであり;前記VHドメインはC末端延長(X)nを含有し、式中、nは1から10、好ましくは1から5、例えば1、2、3、4、または5であり(好ましくは1または2、例えば1);各Xは独立して選ばれる(好ましくは天然に存在する)アミノ酸残基であり、好ましくは、アラニン(A)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、またはイソロイシン(I)からなる群から独立して選ばれる。
【0211】
従って、本発明は、ISVD、好ましくはC末端に在るISVDを含む本明細書に記載されるポリペプチドに関し、さらにはより好ましくは、前記C末端に在るISVDは血清アルブミンに結合するISVDであり、:
- 位置11のアミノ酸残基はL、V、またはKの1つであり;かつ
- 位置14のアミノ酸残基はAまたはPの1つであり;かつ
- 位置41のアミノ酸残基はAまたはPの1つであり;かつ
- 位置89のアミノ酸残基はT、V、またはLの1つであり;かつ
- 位置108のアミノ酸残基はQ、またはLの1つであり;かつ
- 位置110のアミノ酸残基はT、K、またはQの1つであり;かつ
- 位置112のアミノ酸残基はS、K、またはQの1つであり;
(i)位置112のアミノ酸残基はKもしくはQの1つであり;および/または(ii)位置89のアミノ酸残基はTであり;および/または(iii)位置89のアミノ酸残基はLであり、位置110のアミノ酸残基はKもしくはQの1つであり;かつ(iv)ケース(i)から(iii)のそれぞれにおいて、位置11のアミノ酸は好ましくはVである。
【0212】
前記同時係属のUS仮出願において挙げられている通り、前記変異は、本発明の免疫グロブリンおよび化合物へのいわゆる「既存抗体」の結合を防止または縮減することに有効である。この目的のために、本発明の免疫グロブリンは、(任意に前記変異との組み合わせとして)C末端延長(X)nをもまた含有し得る(式中、nは1から10、好ましくは1から5、例えば1、2、3、4、または5であり(好ましくは1または2、例えば1);各Xは独立して選ばれる(好ましくは天然に存在する)アミノ酸残基であり、好ましくは、アラニン(A)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、またはイソロイシン(I)からなる群から独立して選ばれ、これについては再び前記US仮出願およびWO12/175741の参照がなされる。特に、本発明の免疫グロブリンは、それが蛋白質、ポリペプチド、もしくは他の化合物、またはそれを含むコンストラクトのC末端を形成するときに、かかるC末端延長を含有し得る(再び、前記US仮出願およびWO12/175741にさらに記載されている通り)。
【0213】
従って、本発明は、CD40Lに特異的に結合する少なくとも1つのISVDを含むポリペプチドに関し、さらに血清アルブミンに結合するISVDを含み、血清アルブミンに結合する前記ISVDはAlb00129(Alb11(L11V,V89T)-A)(配列番号13)およびAlb00132(Alb23(L5V,L11V,V89T)-A)(配列番号14)およびALB11(S112K)-A(配列番号15)から選ばれる。好ましくは、本発明のポリペプチドは配列番号9である。
【0214】
さらに、本発明は本発明のポリペプチドを含む医薬組成物に関する。医薬組成物が、本発明の前記ポリペプチドを含む核酸、前記核酸を含有するベクターもしくはベクター系、および/または本発明の前記ポリペプチドを産生する好ましくはヒト細胞を含むということもまたあり得る。任意に、医薬組成物は、医薬的に許容される添加剤、アジュバント、および/または担体を含む。
【0215】
例示的な添加剤としては、崩壊剤、結合剤、フィラー、および滑剤が挙げられ得る。崩壊剤の例は、アガー・アガー、アルギン、炭酸カルシウム、セルロース、コロイド状二酸化珪素、ガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メチルセルロース、および澱粉を包含する。結合剤の例は、微結晶セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース、およびポリビニルピロリドンを包含する。フィラーの例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、三塩基性硫酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、セルロース、デキストリン、デキストロース、フルクトース、ラクチトール、ラクトース、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルチトール、マルトデキストリン、マルトース、ソルビトール、澱粉、スクロース、糖、およびキシリトールを包含する。滑剤の例は、寒天、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、グリセリン、グリセリルパルミトステアラート、水添植物油、酸化マグネシウム、ステアリン酸塩、マンニトール、ポロキサマー、グリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルナトリウム、ソルビトール、およびタルクを包含する。通常の安定化剤、保存料、湿潤および乳化剤、粘度改善剤、香味改善剤、浸透圧を変動させるための塩、緩衝剤物質、可溶化剤、希釈剤、軟化剤、着色料、およびマスキング剤、および抗酸化剤が医薬アジュバントとして考えられる。
【0216】
好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバター、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油、および同類を包含するが、これに限定されない。
【0217】
医薬組成物は、少なくとも1つのさらなる活性物質、例えば1つ以上のさらなる抗体またはその抗原結合断片、ペプチド、蛋白質、核酸、有機および無機分子をもまた含み得る。
【0218】
本発明の好ましい態様において、本発明のポリペプチドを含む医薬組成物は医療または診断法への使用のためである。好ましくは、医薬組成物はヒト医療への使用のためであるが、それらは獣医学目的にもまた用いられ得る。
【0219】
特に、本発明のポリペプチド、本発明のポリペプチドを含む本発明の核酸、ベクターもしくはベクター系、宿主もしくは宿主細胞、または医薬組成物は、CD40Lの上昇したレベルおよび/または活性に関連する、それによって引き起こされる、またはそれを伴う障害と、上に記載されている本発明のポリペプチドの投与によってCD40L活性を阻害および/または中和することによって有益には診断、防止、または処置され得る他の疾患または状態との診断、防止、または処置への使用のためである。さらなる態様において、本発明は、CD40Lの上昇したレベルおよび/または活性に関連する、それによって引き起こされる、またはそれを伴う障害と、CD40L活性を阻害および/または中和することによって有益には診断、防止、または処置され得る他の疾患または状態との診断、防止、または処置のための方法に関する。
【0220】
ある態様において、本発明は、医薬としての使用のための、本発明のポリペプチドに関する。
【0221】
さらなる態様において、本発明は、自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、移植拒絶、クローン病、シェーグレン症候群、炎症性腸疾患(IBD)、大腸炎、喘息/アレルギー、動脈硬化症、重症筋無力症、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、強直性脊椎炎、冠動脈性心疾患、1型糖尿病、および/または組換え医薬品、例えば血友病における第VII因子に対する免疫応答の症状を処置または防止することへの使用のための、本発明のポリペプチドに関する。
【0222】
ある態様において、本発明は、例えばCD40L/CD40によって媒介される経路の不適切な活性化が関わる個体の疾患または障害の処置すること、防止の方法に関し、方法は、本発明のポリペプチドを前記疾患または障害の症状を処置または防止するために有効な量で前記個体に投与することを含む。好ましい医学的適応症は、CD40Lの上昇したレベルおよび/または活性に関連する自己免疫または炎症性疾患または状態である。疾患または状態は、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、移植拒絶、クローン病、炎症性腸疾患(IBD)、大腸炎、喘息/アレルギー、動脈硬化症、重症筋無力症、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、冠動脈性心疾患、1型糖尿病、筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリッグ病およびシャルコー病としてもまた公知)、および組換え医薬品、例えば血友病における第VII因子に対する免疫応答から選択され得る。特に好ましい適応症はITP、SLE、およびループス腎炎である。
【0223】
本発明のポリペプチドまたは本発明に従う医薬組成物は、所望の治療または予防効果を得るために有効な量で、その必要がある対象に投与され得る。例えば、前記投与によって達成されるべき1つの所望の効果は、CD40Lの1つ以上の生物学的機能をブロック、阻害、および/または中和することであり得る。この文脈において、投与は、ポリペプチドがCD40L機能をブロック、阻害、および/または中和する能力がある条件下において、好ましくは高いおよび/または異常なレベルでCD40Lを発現することが疑われる細胞または組織と本発明のポリペプチドを接触させることを含み得る。接触はインビトロまたはインビボであり得る。
【0224】
好適な組成物の投与は、異なるやり方で、例えば静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、経口、皮内、鼻腔内、または気管支内投与によって奏され得る。投与は直接的に標的部位においてもまた実施され得る。
【0225】
投薬レジメンは担当医および臨床的因子によって決定されるであろう。医学分野において周知である通り、いずれか一人の患者のための投薬量は多くの因子に依存し、患者のサイズ、重量、体表面積、年齢、投与されるべき具体的な化合物、使用されるポリペプチドの活性(抗体を包含する)、投与の時間および経路、一般的な健康、および他の治療または処置との組み合わせを包含する。蛋白質性の医薬活性物質は、用量あたり1gおよび100mg/kg体重の間の量で存在し得る;しかしながら、この例示的な範囲よりも下または上の用量もまた想定される。レジメンが連続輸注である場合には、それは分あたり体重のキログラムあたり1pgから100mgの範囲内であり得る。
【0226】
本発明の中和ポリペプチドは、当分野において周知の方法によってアッセイされるCD40Lの生物学的機能を少なくとも約50%、好ましくは75%、より好ましくは90%、95%、または最大99%、最も好ましくはおよそ100%(本質的に完全に)阻害および/または中和するために、例えば0.01、0.1、0.5、1、2、5、10、20、または50pg/mlの濃度で使用され得る。
【0227】
本発明のさらなる側面に従うと、本発明のポリペプチドはインビボおよびインビトロの追加の用途に用いられ得る。例えば、本発明のポリペプチドは、診断目的のために、例えばCD40Lの存在を検出および/もしくは定量ならびに/またはCD40Lを精製するように設計されたアッセイに使用され得る。また、ポリペプチドは、具体的な疾患の動物モデルにおいて、毒物学、安全性、および投薬量研究を実施するために試験され得る。
【0228】
最後に、本発明は、本発明に従う少なくとも1つのポリペプチド、前記成分をコードする少なくとも1つの核酸配列、本発明のベクターもしくはベクター系、および/または本発明に従う宿主細胞を含むキットに関する。キットは、異なる形態で、例えば診断キットとして提供され得るということが企図される。
【0229】
本発明は、次の例に基づいてより良好に理解され得る。しかしながら、当業者は、論じられている具体的な方法および結果が単に本明細書に記載されている本発明を例解するためであるということを直ちに理解するであろう。
6.例
【0230】
次の例は、本発明の方法および産物を例解している。当業者に明らかである、分子および細胞生物学の分野において通常遭遇される記載されている条件およびパラメータの好適な改変および適合は、本発明の趣旨および範囲内である。
6.1.材料と方法
6.1.1.フローサイトメトリー(結合)
【0231】
ペリプラズム抽出物をFACSによってヒトCD40Lへの結合について分析した。2×10細胞(安定なCHO-K1/ヒトCD40Lトランスフェクション細胞)を、FACS緩衝液(PBS、10%ウシ胎児血清(Sigma、F7524)、0.05%アジ化Na)中のペリプラズム抽出物の1/10希釈物と4℃で30分間インキュベーションした。それから、細胞をFACS緩衝液によって3回洗浄し、最後に、Phycolinkα-FLAG-RPE(Prozyme、PJ315)を含有するFACS緩衝液中に再懸濁した。この混合物を4℃で30分間インキュベーションした。細胞を再びFACS緩衝液によって3回洗浄し、死細胞をTOPRO3(Molecular probes、T3605)によって染色した。サンプルをFACSarray(BD Biosciences)によって分析した。
6.1.2.AlphaScreen(ブロック)
【0232】
ナノボディのCD40L/CD40相互作用ブロック能力を決定するために、ペリプラズム抽出物を、AlphaScreenテクノロジーを用いて蛋白質に基づく競合アッセイによってスクリーニングした。手短には、ビオチニル化ヒトCD40L(HEK、R&D)をドナービーズ上に捕捉し、ヒトCD40-Fcキメラを抗ヒトFcナノボディコーティングしたアクセプタービーズ上に捕捉した。抗CD40Lナノボディのブロック能力を評価するために、ペリプラズム抽出物の希釈物をビオチニル化CD40Lとプレインキュベーションした。この混合物に、CD40-Fc、アクセプタービーズ、およびストレプトアビジンをカップリングしたドナービーズを追加し、さらに室温で1時間インキュベーションした。蛍光を、EnVision多重標識プレートリーダーを用い、680nmの励起波長および520nmの放出波長を用いて測定した。AlphaScreenシグナルの減少は、CD40受容体へのビオチニル化CD40Lの結合がペリプラズム抽出物中に存在するナノボディによってブロックされるということを指示する。
6.1.3 SPR(off-rate)
【0233】
全てのoff-rateはProteOn XPR36装置(Bio-Rad Laboratories, Inc.)によって決定した。ProteOnのGLCセンサーチップを、EDC(1-エチル-3-[3-ジメチル-アミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)およびスルホ-NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)を用いるアミンカップリングによって、10mM酢酸緩衝液pH5.5中の組換えヒトCD40L(R&D、HEK)の1200~1800RUによってコーティングした。ランニング緩衝液ProteOnPBS/Tween(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4、0.005%Tween20入り)中の抗CD40Lナノボディ発現大腸菌クローンの10倍希釈されたペリプラズム抽出物を、センサーチップ上に流した。精製された一価の抗CD40Lナノボディを、100nMでセンサーチップ上に流した。親和性成熟(例6.8.を見よ)については実験を37℃で実施し、全ての他の実験は25℃で実施した。得られたデータは、スポット間の差し引きとブランク緩衝液注入の差し引きとによって二重参照した。処理後の曲線を、ラングミュア解離モデルに基づくoff-rate分析に用いた。
6.1.4 レポーターアッセイ
【0234】
このアッセイにおいて、CD40Lによって誘導されるCD40シグナル伝達の阻害に及ぼすナノボディの効果は、NF-κB-SEAPレポーターシステムによって定量される。HEK293T細胞の安定なトランスフェクションによるNF-κB誘導性のSEAPコンストラクトの導入によって、リガンド誘導は、胚性アルカリホスファターゼの分泌を誘起する。SEAPコンストラクトは、5つのNF-κB結合部位に融合されたIFN-β最小プロモーターのコントロール下のSEAPレポーター遺伝子からなる(InvivoGen、TDS HEK-Blue(商標)CD40L細胞、cat.Hkb-cd40)。
【0235】
ナノボディの希釈系列を、ウェットチャンバー内で、CHO hCD40L 4B11細胞の膜抽出物および5×10個のHEK-Blue細胞とアッセイ媒体(DMEM(Invitrogen、Cat31966-021)+10%FBS(Sigma、CatF7524)+1%Pen/Step(Invitrogen、Cat15140-122))中において37℃および5%COで16hインキュベーションした。爾後に、懸濁液の一部を基質に追加し、室温で1hインキュベーションした。SEAPレベルをEnvision(620nm)(Perkin Elmer)を用いて決定した。
6.1.5 B細胞活性化アッセイ
【0236】
ナノボディの希釈系列を、ウェットチャンバー内で、照射された1×10のCHO hCD40L 4B11細胞および5×10のB細胞とアッセイ媒体(PMI-1640(Invitrogen、Cat72400-054)+10%FBS(Sigma、CatF7524)+1%Pen/Step(Invitrogen、Cat15140-122))中において37℃および5%CO2で5日間インキュベーションした。第5日に、プレートを4℃で5分間250g遠心した。それから、細胞を抗体希釈物(マウス抗ヒトCD19-FITC(BD Pharmingen、cat.:555412)+マウス抗ヒトCD86-PE(BD Pharmingen、cat.:555658))中に再懸濁し、4℃に30分間置いた。その後、細胞をMACS緩衝液によって3回洗浄し、それから、1/1000希釈したTOPRO3(Molecular Probes、T3605)を含有するMACS緩衝液中に再懸濁した。サンプルをFACSCanto IIによって分析した。
6.1.6 B細胞増殖アッセイ
【0237】
ナノボディの希釈系列を、ウェットチャンバー内で、CHO hCD40L 4B11細胞の膜抽出物および5×10個のB細胞とアッセイ媒体(RPMI-1640(Invitrogen、Cat72400-054)+10%FBS(Sigma、CatF7524)+1%Pen/Step(Invitrogen、Cat15140-122))中において37℃および5%COで4日間インキュベーションした。第4日に、トリチウム-チミジン(Perkin Elmer、ref:NET027X001MC)をプレートに追加した。プレートはトリチウム-チミジンとの24hのインキュベーション期間後に凍結した。次の日にプレートを収穫し、トップカウント(Perkin Elmer)によって分析した(Hチミジン取り込みアッセイ)。
6.1.7 競合ELISA
【0238】
ナノボディがCD40L蛋白質上の異なるエピトープを認識するかどうかを評価するために、精製されたナノボディを、競合ELISAにおいてファージ上に提示されたナノボディのより小さいセットに対してビニングした。96ウェルF底プレートNunc-lmmuno(商標)(NUNC)の各ウェルを、PBS中のhCD40L(HEK細胞によって産生、R&D、cat#:6420-CL/CF)蛋白質の50ngと4℃で一晩インキュベーションした。RTにおける1hの4%(w/v)スキムミルクによるブロッキング後に、ナノボディ-ファージを、0.5μMの精製されたナノボディの存在または不在下において追加した。結合したナノボディ-ファージを抗M13-HRPMAb(GE Healthcare;cat#27-9421-01)によって検出し、450nmにおける比色検出を、可溶性(高感度)テトラメチルベンジジン基質(es(HS)TMB)(SDT)をHRP基質として用いて行った。精製されたナノボディの存在および不在下における450nmの吸光度間の比を用いて、ビニングされたナノボディがCD40L分子上の同じかまたはオーバーラップする(しない)エピトープを認識するかどうかを決定した。
6.2 ナノボディ同定
【0239】
ラマにおいてCD40Lに対する免疫応答を誘起することに鑑みて、異なる種間の相同性を、異なる種のCD40Lのアラインメントされた配列の同一性のパーセンテージと異なる残基の数とを計算するが、細胞外ドメインのみを考えることによって評価した。ヒトCD40Lに対するパーセンテージ同一性は、アカゲザルの99.5%からラマの88%ならびにマウスおよびラットの75%未満までに及ぶ。ラマCD40Lに対するヒトCD40L(hCD40L)の高い相同性は、抗体生成を惑乱させる。ラットおよびマウスCD40Lに対するヒトCD40Lの低い相同性は、交差反応性のナノボディの知見を難しくする。
【0240】
5頭の非近交ラマを免疫した。2頭のラマを組換えヒトCD40Lによって免疫した(PeproTech、310-02)。3頭のラマを、hCD40Lを発現するLlana細胞によって免疫した。hCD40LとラマCD40Lとの間の高い相同性にもかかわらず、全てのラマはhCD40Lに対して強い免疫応答を示した。
【0241】
免疫ナノボディファージディスプレイライブラリーを、全てのラマの血液サンプルから抽出されたトータルRNAを用いて調製されたcDNAから生成した。ファージディスプレイライブラリーを、組換えヒトCD40L、ヒト細胞上に発現されたヒトCD40L、または選択ラウンド間で交替する両方の抗原フォーマットどちらかを用いて探索した。
【0242】
選択アウトプットを、ナノボディ結合についてはFACSによって、ブロッキングについてはAlphaScreen競合アッセイによって、上の例6.1.1および6.1.2に従ってスクリーニングした。
【0243】
1回の選択ラウンド後に、結合ナノボディの約50%はCD40L/CD40相互作用をもまたブロックした。大腸菌によって産生された組換えhCD40Lによって選択されたナノボディを例外として、FACS結合剤の数およびブロックナノボディの割合は選択ラウンドにつれて増大した。より高いヒット率が、CHO-CD40L細胞によって免疫された動物に由来するクローンについて観察された。
【0244】
FACSおよびAlphaScreenにおけるカットオフ基準を満たす1500個超のナノボディヒットを爾後にシーケンシングし、210個の異なるナノボディファミリーに属する689個のユニークなクローンをもたらした。これらのクローンのoff-rateを、例6.1.3に述べられているように決定した。
【0245】
40個の異なるナノボディクローン、すなわちリードパネルを、さらなるキャラクタリゼーションのために選択した。AlphaScreen(登録商標)においてCD40/CD40L相互作用をブロックし、CD40L(FACS)の本来の立体配座に結合し、off-rate<4×10-3を有したクローンのみをさらに考えた。
6.3 40個のナノボディのリードパネルのインビトロキャラクタリゼーション
【0246】
リードパネルの40個のナノボディをpAX205にクローニングし、P. pastorisによって産生し、さらなるキャラクタリゼーションのために精製した。それらの効力を、AlphaScreen、ならびにレポーターおよびB細胞活性化アッセイによって決定した(例6.1.4および6.1.5を見よ)。加えて、off-rateを確認した。競合ELISAにおいてファージ上に提示されたナノボディに対して精製されたナノボディをスクリーニングすることによって、エピトープビンを決定した(例6.1.7を見よ)。
【0247】
7つの異なるエピトープビンが40個のナノボディのリードパネルから同定された。ナノボディC0100028B02(ビン6.2)およびC0100046B03(ビン2.1)はCDP7657(ビン1.1)とは異なるエピトープビンである。最も効力の高いのクローンはエピトープビン6.2に属した。
【0248】
ヒトおよびラマCD40Lの間の配列保存に鑑みて、7つの異なるエピトープビンに属するナノボディが同定されることは予想されなかった。
6.4 15個のナノボディのリードパネルのさらなるインビトロ選択
【0249】
CD40L-CD40相互作用によって誘導される重要な表現型は、B細胞活性化および増殖である。B細胞は抗原をヘルパーT細胞に提示し得る。活性化T細胞がB細胞によって提示されたペプチドを認識する場合には、T細胞上のCD40LはB細胞のそのCD40受容体に結合し、休止期B細胞の活性化を引き起こす。T細胞はIL-4をもまた産生し、これはB細胞に直接的に影響する。これらの刺激の結果として、B細胞は分裂を行い得る。
【0250】
配列多様性とB細胞活性化アッセイにおけるそれらの性能とに基づいて選択された15個のナノボディを、B細胞増殖アッセイによって例6.1.6に従って試験した。B細胞活性化および増殖アッセイの間の主な違いは、読み出し(それぞれCD86レベルおよびHチミジン取り込みの決定である)およびB細胞を活性化するために用いられるCD40Lソース(それぞれ、UV照射したhCD40L発現CHO細胞、およびhCD40L細胞からの膜抽出物)である。両方のアッセイについて、B細胞は健康なドナーに由来した。Hチミジン取り込みは、CD86発現よりもB細胞活性化のさらに下流の指標であり、それゆえに、より妥当な機能的読み出しと考えられる。B細胞増殖アッセイにおいて、15クローンのうち6つはCDP7657Fabに匹敵する効力を有することが見いだされた。
6.5 4つのリード候補の選択
【0251】
上に述べられているAlphaScreen、レポーターアッセイ、B細胞活性化アッセイ、およびB細胞増殖アッセイ、および物理化学的安定性データ(データは示さない)に基づいて、リードパネルを、最終的なキャラクタリゼーションステージのための4つのリード候補にまで縮減した。最も高い効力のエピトープビン(ビン6.2;上を見よ)から、異なるファミリーからの2つのリード候補を選択した:C0100028B02(「28B02」)およびC0100044B07(「44B07」)。C0100028B02はB細胞増殖アッセイにおける最良のクローンの1つであったが、C0100044B07はB細胞活性化アッセイにおける最も高い効力のクローンかつB細胞増殖アッセイにおける非常に高い効力のクローンであった。2つの追加のリード候補を選択した。エピトープビン4.2のC0100029C10(「29C10」)、これはB細胞増殖アッセイにおける高い効力のクローンであった。少なくとも9クローンが種々のアッセイにおいてより良好な性能であるということを指示する上の基準にもかかわらず、本発明者はエピトープビン2.1のC0100046B03(「46B03」)も選択することに決めた。なぜなら、これは異なる生殖細胞系列にあたったからである。
6.6 フォーマット:半減期延長(HLE)の効果
【0252】
典型的には、自己免疫疾患の処置は薬物が患者において持続的な利用能を有することを要求する。すなわち薬物は長い半減期を有するべきである。薬物の半減期延長の種々の手段が利用可能であり、Fc融合、PEG化、ならびに血清アルブミンおよびアルブミン結合剤への融合を包含する。
【0253】
Fc融合体は最も好ましくないオプションであるという仮説をたてた。なぜなら、これはヒト血小板上のFc受容体への結合を可能にし、潜在的に血小板活性化および凝集をもたらすであろうからである。その上に、PEG部分は別個の産生ステップにおいてナノボディにコンジュゲーションされ、増大したコストおよび減少した収量をもたらすので、PEG化は好ましくない。また、PEG化は、多くの場合には、薬物-標的結合相互作用との立体干渉が原因の縮減された結合親和性に至り、高いPEAを患う。これに鑑みて、血清アルブミンに結合するISVDへの融合による半減期延長が選好された。
【0254】
リード候補に及ぼすアルブミン結合の影響を評価するために、半減期延長型の(HLE)(NB-35GS-Alb11-FLAG3-HIS6)および非HLEの一価のISVDを構築し、IC50によって指示されるヒト血清アルブミン(HSA)の不在および存在下におけるB細胞増殖アッセイによって試験した:
- C010000006はC01000028B02-Alb11-FLAG3-HIS6であり;
- C010000008はC01000029C10-Alb11-FLAG3-HIS6であり;
- C010000004はC01000044B07-Alb11-FLAG3-HIS6であり;
- CO10000010はC01000046B03-Alb11-FLAG3-HIS6である。
【0255】
結果は表6.6に示されている。
【表1】
【0256】
効力の小さい違いのみが観察され、分子の効力に及ぼす半減期延長の限定された影響を指示した。PEG化によるFab’部分の半減期延長が活性を4~5倍減少させたCDP7657とは対照的である(US2010/0104573を参照せよ)。
6.7 種間交差反応性および選択性
6.7.1 種間交差反応性
【0257】
アカゲザルの99.5%からマウスおよびラットの75%未満までに及ぶヒトCD40Lに対するCD40L配列相同性の異なる程度を考えて、マウス、ラット、カニクイ、およびアカゲザルCD40Lに対する種間交差反応性を評価した。
【0258】
マウスCD40L(UniProtアクセッション番号:P27548)への結合を評価するために、ProteOnのGLCセンサーチップを、10mM酢酸緩衝液pH5.5中の組換えマウスCD40L(R&D、NS0)の3000~4000Uによってコーティングした。精製された一価の抗CD40Lナノボディを、ProteOnランニング緩衝液:PBS/Tween(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4、0.005%Tween20入り)中において、100nMでセンサーチップ上に流した。処理後の曲線を、ラングミュア解離モデルに基づくoff-rate分析に用いた。全ての40個のリードパネルクローンを試験した。しかしながら、それらのいずれもマウスCD40Lへの結合を示さなかった。
【0259】
ラットCD40L(UniProtアクセッション番号:Q9Z2V2およびQ9R254(二次))に対する交差反応性をFACSによって試験した。精製されたナノボディを、ラットCD40Lへの結合についてFACSによって分析した。2×10細胞(一過的にトランスフェクションされたラットCD40LHEK細胞)を、FACS緩衝液中の精製されたナノボディと4℃で30分間インキュベーションした。細胞を3×洗浄し、再懸濁し、4℃で30分間インキュベーションした。細胞を再び3×洗浄し、死細胞をTOPRO3(Molecular probes、T3605)によって染色した。サンプルをFACSarray(商標)(BD Biosciences)によって分析した。最終的な4つのリード候補(C0100028B02、C0100029C10、C0100044B07、およびC0100046B03)のみを試験した。結合はナノボディのいずれかについては観察されなかった。
【0260】
カニクイCD40L(UniProtアクセッション番号:G7PG38)およびアカゲCD40L(UniProtアクセッション番号:G7N4M5)に対する交差反応性をリガンド競合アッセイによって試験した。精製されたナノボディを、ヒト/アカゲザル/カニクイザルCD40発現細胞へのビオチニル化ヒトCD40L結合との競合についてFACSによって分析した。ヒト、アカゲザル、およびカニクイザル(cyno)CD40Lの可溶性形態は配列が同一であるので、ヒトCD40Lを用いた。2×10細胞(一過的にトランスフェクションされたHEK細胞)を、FACS緩衝液中の精製されたナノボディの希釈系列と4℃で30分間インキュベーションした。それから、細胞を3×洗浄し、最後に、ストレプトアビジン-PE(BD Pharmingen、#554061)を含有するFACS緩衝液中に再懸濁した。この混合物を4℃で30分間インキュベーションした。細胞は上に述べられているようにさらに取り扱った。結果は表6.7に示されている。
【表2】
【0261】
ナノボディのそれぞれについて、IC50値は、異なるCD40L種について実験誤差内で同一であった。
6.7.2 選択性
【0262】
Basic Local Alignment Search Tool(Blast)を用いて、ヒト蛋白質データベース中の最も近縁の蛋白質を同定した。最も近縁の蛋白質(非CD40Lバリアント)はTNFα、HVEM-L(TNF14)、およびRANKL(TNF11)であり、それぞれ27.9%、27.9%、および25.4%の配列同一性を有した。CD40Lについて選択性を評価するために、MaxiSorpプレート(Nunc、430341)をヒトCD40Lによって一晩コーティングし(4℃)、次にRTにおける1時間のブロッキングであった(PBS、1%カゼイン)。ナノボディの一定濃度を、100倍過剰から出発する競合剤(TNFα、HVEM-L(TNF14)、およびhRANKL(TNF11);CD40Lを正のコントロールとして用いた)の希釈系列と一緒に用いた。ナノボディは抗FLAG-HRP(Sigma(A8592))によって検出した。
【0263】
ヒトTNFα、HVEM-L(TNF14)、およびhRANKL(TNF11)に対する結合は、C0100028B02、C0100029C10、C0100044B07、およびC0100046B03のいずれかについて観察されなかった。
6.8 親和性成熟
【0264】
4つの選択されたナノボディ(C0100028B02、C0100029C10、C0100044B07、およびC0100046B03)は、B細胞増殖アッセイにおいてナノモル範囲の効力を有した。これはIC50によって指示される(表6.8を見よ)。
【表3】
【0265】
さらに効力を増大させるために、ナノボディを親和性成熟した。親のナノボディの親和性成熟バリアントのスクリーニングのために、off-rateを決定した。
【0266】
親和性成熟は、各親のナノボディクローンから生成したエラープローンライブラリーをスクリーニングすることによって行った。このアプローチでは、アミノ酸置換は、エラープローンPCRによって、ナノボディをコードするDNA中への変異のランダムな導入からもたらされる。帰結として、アミノ酸置換がCDRおよびフレームワーク領域(FR)両方に見いだされる。5ラウンドのファージディスプレイ選択を、組換えCD40Lの(50nMから0.05pMに)減少して行く濃度を用いて溶液中で行った。ファージディスプレイ後に、個々のナノボディをシーケンシングし、off-rateをSPR分析によって決定した(例6.1.3を参照せよ)。off-rateデータに基づいて、有益な効果を有する変異をさらに検討した。
6.8.1 C0100028B02(28B02)
【0267】
413個の配列が選択後に得られ、そのうち294クローンがシーケンシングに基づいて非冗長的であった。これらのユニークなクローンのうち、271クローンのoff-rateをProteOnによって試験した。
【0268】
本質的に、ナノボディ上のそこここに散在するフレームワーク変異(1クローンに最大6つ)は、off-rateに影響しないか、または最小限にのみ影響した(データは示さない)。FR変異のいずれも保持されなかった。CDR変異は下の表に示されている。
【0269】
クローンのおよそ25%は親のナノボディと比べて最大2倍改善されたoff-rateを提示した。
【表4】

【表5】

【表6】
【0270】
CDR3中の3つの変異を、このデータセットに基づくさらなる検討のために選択した:
L100aF:この変異は1.3倍改善されたoff-rateを(好ましくはK43Rとの組み合わせによって)もたらした;
D101G:この変異は、off-rateの1.3倍の改善をもたらした;および
Y102F:この変異は、off-rateの1.8倍の改善をもたらした。
最終的なバリアントはC010002366(配列番号7)であった。
6.8.2 C0100046B03(46B03)
【0271】
731個の配列が得られ、そのうち229クローンが非冗長的であった。全ての229クローンをProteOnによって試験した。
【0272】
本質的に、ナノボディ上のそこここに散在するフレームワーク変異(1クローンに最大6つ)は、off-rateに影響しないか、または最小限にのみ影響した(データは示さない)。FR変異のいずれも保持されなかった。CDR変異は下の表に示されている。
【表7】

【表8】

【表9】
【0273】
クローンのおよそ25%は親のナノボディと比べて最大5.2倍改善されたoff-rateを提示した。6つの位置を、このデータセットに基づくさらなる検討のために選択した:
・ Y100H:off-rateに及ぼす効果なし
・ Y100I:1.5倍改善されたoff-rate
・ S100aT:off-rateに及ぼす効果なし
・ N100gD:効果は目立たない
・ E100hV:off-rateに及ぼす効果なし
・ M100iI:off-rateに及ぼす効果なし
・ H100kN:単一の変異、2.6倍改善されたoff-rate
・ H100kA:約2倍改善されたoff-rate
・ H100kS:約2倍改善されたoff-rate
【0274】
最終的なバリアントはC010003290(配列番号8)であった。
6.9 Albバリアント
【0275】
本発明に至る研究において、C末端延長をナノボディのC末端領域に追加することは、健康なヒト対象の血漿/血清サンプルの大多数において既存抗体の結合を本質的に防止するということが発見された(下を見よ)。しかしながら、SLEを包含するある種の深刻な(自己)免疫障害を患ういくつものヒト対象からの血液および血清は、ナノボディがC末端延長を含むときでさえもナノボディに結合し得るいくつかの既存抗体/因子を含有するように見える。
【0276】
下の例においては、用いられた(すなわち、健康なボランティアおよびSLE患者からの)サンプル中に存在する既存抗体の、試験されたナノボディへの結合を、次のようにProteOnを用いて決定した:ヒト血清アルブミン(HSA)上に捕捉されたナノボディへの既存抗体の結合を、ProteOn XP 36 (Bio-Rad Laboratories, Inc.)を用いて評価した。PBS/Tween(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4、0.005%Tween20)をランニング緩衝液として用い、実験は25℃で行った。ProteOnのGLCセンサーチップのリガンドレーンをEDC/NHS(流量30μl/min)によって活性化し、HSAをProteOn酢酸緩衝液pH4.5中の10μg/mlで注入して(流量100μl/min)、固定化レベルをおよそ3200RUにした。固定化後に、表面をエタノールアミンHClによって不活性化した(流量30μl/min)。ナノボディをHSA表面に45μl/minで2分間注入し、ナノボディ捕捉レベルをおよそ200RUにした。既存抗体を含有するサンプルを14,000rpmで2分間遠心し、上清をPBS-Tween20(0.005%)によって1:10希釈した後に、45μl/minで2分間注入し、次に爾後の400秒の解離ステップであった。各サイクル後に(すなわち、新たなナノボディ捕捉および血液サンプル注入ステップ前に)、HSA表面を45μl/minのHCl(100mM)の2分の注入によって再生した。センサーグラム処理およびデータ分析をProteOn Manager 3.1.0(Bio-Rad Laboratories, Inc.)によって行った。既存抗体の結合を示すセンサーグラムは、1)ナノボディ-HSA解離および2)参照リガンドレーンへの非特異的結合を差し引くことによる二重参照後に得られた。既存抗体の結合レベルは、報告時点を125秒に(会合の終わりの5秒後に)設定することによって決定した。既存抗体結合のパーセンテージ縮減は、参照ナノボディの125秒における結合レベルに対して相対的に計算した。参照A=Alb8(配列番号16);参照B=Alb8+A(配列番号17)(表2を見よ)。
6.9.1:ヒトSLEサンプル中に存在する既存抗体の結合に及ぼすS112K変異の影響
【0277】
参照Aおよび参照Bを、SLEについて陽性と確認された患者から得られた7つの血清サンプルからの既存抗体による結合について試験した。比較のために、2人の健康なヒトボランティアからの血漿サンプルを包含した。
【0278】
試験されたサンプル中の既存抗体のナノボディへの結合を、上で概述した一般的なプロトコールに従ってProteOnによって測定した。結果は下の表6.9.1に示されている。
【0279】
参照Aおよび参照Bならびに本発明のナノボディの結合データの比較から分かるように、SLE患者のいくつかから得られたサンプルは、C末端アラニン残基の存在下においてさえもナノボディに尚結合し得るある種の既存抗体を含有するように見える(C末端アラニン残基は、健康なボランティアからの血漿サンプル中に存在する既存抗体の全ての結合を(部分的にまたは本質的に完全に)本質的に防止/除去はしなかった)。
【0280】
SLEサンプルからのそれらの既存抗体の結合が、位置11および112の変異によって(位置112のケースにおいては、特にS112Kによって)大いに縮減され得たということもさらに分かる。
6.9.2:ヒトSLEサンプル中に存在する既存抗体の結合に、組み合わせられたフレームワーク変異およびC末端延長が及ぼす影響
【0281】
4つの異なるナノボディ(具体的なフレームワーク変異を有し、C末端アラニン延長ありまたはなし)を、SLEについて陽性と確認された患者から得られた5つの血清サンプルからの既存抗体の結合について試験した。比較のために、健康なヒトボランティアからの1つの血漿サンプルを包含した。
【0282】
試験されたナノボディへのサンプル中の既存抗体の結合を、上で概述した一般的なプロトコールに従ってProteOnによって測定した。結果は下の表6.9.2(a)および6.9.2(b)に示されている。
【0283】
参照Aおよび参照Bの結合データの比較から分かるように、SLE患者から得られたサンプルは、C末端アラニン残基の存在下においてさえもナノボディに尚結合し得るある種の既存抗体を含有するように見える。C末端アラニン残基は、健康なボランティアからの血漿サンプル中に存在する既存抗体の全ての結合を本質的に防止/除去はしなかった。
【0284】
SLEサンプルからのそれらの既存抗体の結合が、位置11および112の変異によって(位置112のケースにおいては、特にS112Kによって)大いに縮減され得たということもさらに分かる。
6.9.3:SLE患者からのサンプル中の既存抗体の結合にV89T変異が及ぼす影響.
【0285】
本明細書に記載される通り、ある種のSLE患者から得られたサンプルは、C末端延長が存在するときでさえもVHドメインの暴露されたC末端に結合し得るある種の既存抗体/因子を含有するように見える。V89T変異が、C末端延長の存在ありまたはなしで、かかる結合を縮減または防止/除去し得るかどうかを検討した。結果は下の表6.9.2(b)および6.9.3(a)にもまた示されている。
【0286】
分かる通り、V89T変異は、SLE患者から得られたサンプル中に存在する既存抗体の結合を、S112K変異と類似の程度まで本質的に防止/除去し得た。しかしながら、C末端延長なしのV89T変異を有するナノボディおよびC末端延長なしのS112K変異を有する類似のナノボディについて表6.9.2(b)および6.9.3(a)に与えられているデータを比較することから分かるように、C末端延長なしのナノボディの位置112に変異を有することは、一般的には、健康なボランティアからのサンプル中の既存抗体の結合をV89T変異よりも大きい程度まで縮減する(すなわち、それぞれS112Kナノボディの100%、85%、および64%対V89Tナノボディの9%、11%、および16%)。この理由で、位置112の変異(具体的にはS112KまたはS112Q)の使用は、位置89の変異(例えばV89T)の使用と比べて多くの場合には好ましいであろう。
【0287】
しかしながら、表6.9.2(b)および6.9.3(a)のデータからもまた分かる通り、C末端アラニンをV89Tナノボディに追加することは、健康なボランティアから得られたサンプル中の既存抗体の結合を完全に防止/除去した。この理由から、V89TナノボディまたはVHドメインが、その中にそれが存在する蛋白質またはポリペプチドにおいて(例えば、それのC末端を形成するので)暴露されたC末端領域を有するか、または有することを意図される場合には、本明細書に記載されるV89T変異とC末端延長との組み合わせが通常は好ましいであろう(すなわち、C末端延長なしのV89Tの使用と比べて)。
【0288】
上の表からの結果/知見が広く適用可能であるということを確認するために、S112Kおよび/またはV89T変異を有する代表的なナノボディを、96個(S112K)および129個(V89T)のヒト血清サンプルの試験パネルに対して試験した。結合は上に述べられているプロトコールを用いてProteOnによって決定された。
【0289】
結果は図1および表6.9.3(b)にまとめられている(S112K変異を有する代表的なナノボディ)。図1においては、S112K変異を有するナノボディ(参照A+S112K+C末端アラニン。上の表6.9.2(b)を見よ)を参照ナノボディ(参照A;配列番号16)と比較した。S112K変異を有するナノボディおよび参照Aを、両方とも血清サンプルのそれぞれに対して試験し、125秒における結合レベル(RU)を決定した。それから、データを図1にプロットした。各点は、参照A(図1においては(1)として指示されている)またはS112K変異体(図1においては(2)として指示されている)どちらかについて1つのサンプルによって測定された結合を提示している。点線は、20RUという測定された結合レベルを指示している。
【0290】
同じデータは、表6.9.3(b)において数値的にもまた表されている。これは、それぞれ参照AおよびS112K変異体について、20RU超、20RU未満(すなわち0および20RUの間)、および10RU未満という125秒における結合レベルを与えた試験されたサンプルの総数を挙げている。
【0291】
図1にプロットされ、表6.9.3(b)に示されているデータから分かる通り、参照Aでは、試験された96サンプルの半分超が20RU超の結合レベルを与え(いくつかのケースにおいては、150~200RUほども高い)、サンプル中に存在する既存抗体が参照Aに結合しているということを指示した。比較として、S112K変異体では、いずれのサンプルも20RU超の結合レベルを与えず(大部分は10RU未満)、S122K変異が試験された96サンプルの全てにおいて本質的に既存抗体の結合を縮減/防止する能力があるということを指示した。
【0292】
類似のプロットおよび類似のデータが、129個の血清サンプルに対して試験されたV89T変異を有する代表的なナノボディ(参照A+L11V+V89T+C末端アラニン;上の表6.9.3(a)を見よ)についてそれぞれ図2および表6.9.3(c)に示されており、再び参照A(図2においては(1)によって指示されている;V89T変異体は図2においては(2)によって指示されている)と比較されている。
【0293】
再び、図2のプロットおよび表6.9.3(c)のデータから、少数の例外(すなわち試験されたサンプルの10%未満。それから、これらはそれぞれが約100RU以下という125秒後の絶対結合値を与えた)を除いて、V89T変異は、試験された129サンプルの大部分において既存抗体の結合を縮減/防止する能力があったが、V89T変異なしの参照は、試験されたサンプルの大部分において既存抗体によって結合されたということが分かる。
【表10】

【表11】

6.10 最終的なフォーマット
【0294】
既存抗体の結合を縮減するためにAlbバリアントを最適化するデータに基づいて(例6.9を見よ)、CD40Lに結合するISVDを最適化されたAlbバリアントに融合し、さらに試験した。
6.10.1 最終的なフォーマットの既存抗体の結合.
【0295】
C0100028B02およびC0100046B03を、それぞれAlb11およびAlb23バリアント、すなわちAlb00129(Alb11(LllV,V89T)-A)およびAlb00132(Alb23(L5V,LllV,V89T)-A)に融合した(表6.10を見よ)。
【表12】
【0296】
既存抗体への結合の不在を、本質的に上において6.9に述べられている最終的なフォーマットについて評価した。
【0297】
C末端アラニンを追加することとL11VおよびV89TをAlb8ビルディングブロック中に作り出すこととによって、HLE延長型リードへの既存抗体の結合の有意な縮減/防止があった。類似の既存抗体結合プロファイルがC010003313(「3313」)およびC010003320(「3320」)で見られた。これは、既存抗体の結合プロファイルがリンカーに非依存的であるように見えるということをもまた実証している。
【0298】
C末端Alaを追加することとS112KをAlb8ビルディングブロック中に作り出すこととによって、HLE延長型リードへの既存抗体の有意な縮減/防止があった。
【0299】
類似の既存抗体結合プロファイルが、C010003326(「3326」)と比較してC010003318(「3318」)で見られた。再び、これは、最適化されたAlbバリアントを追加することによる既存抗体の縮減または防止が、最適化されたAlbバリアントにリードナノボディをリンクするために用いられるリンカーに非依存的であるように見えるということを実証している。
【0300】
その上に、これは、このケースにおいては、コンストラクト全体への既存抗体の結合の有意な縮減/防止を獲得するためには、C末端ビルディングブロック(このケースにおいては、最適化されたAlbバリアント)のみが改変されることを必要とするということをもまた実証している。
6.11 B細胞活性化および増殖アッセイにおける効力
【0301】
リード候補C010003318の効力をB細胞活性化およびB細胞増殖アッセイによって評価した(例6.1.6および6.4を参照せよ)。効力を5C8および非PEG化CDP7657と比較した。結果は表6.11にまとめられている。
【表13】
【0302】
B細胞増殖データに基づいて、C010003318は5C8と比較して10から6倍低い効力を有するが、C010003318は非PEG化CDP7657よりも高い効力を有するということが実証された。
【0303】
B細胞活性化データに基づいて、非PEG化CDP7657および5C8は、C010003318よりも約係数2だけ高い効力であるように見えるということが分かる。
【0304】
結論として、5C8は、これらのインビトロアッセイにおいてC010003318よりも約2~10倍高い効力である。より妥当なB細胞増殖アッセイにおいて(例6.4を参照せよ)、C010003318はCDP7657よりも明らかに高い効力である。B細胞活性化アッセイにおいては、CDP7657はC010003318よりも約係数2だけ高い効力であるように見える。しかしながら、例6.6において指示されたように、CDP7657のPEG化は活性を4~5倍減少させた(US2010/0104573を参照せよ)。
【0305】
ゆえに、C010003318は全てのアッセイにおいてCDP7657よりも高い効力であるように見える。
6.12 CD40Lに対する親和性
【0306】
hCD40Lに対する最終的な二重特異性HLEリードナノボディの親和性を定義するために、速度論的排除法(KinExA)をKinExA 3200(Sapidyne Inc.)によって実行した。
【0307】
それから、応答をKinExA Proソフトウェアv3.2.6に入力し、遊離ナノボディのパーセンテージをhCD40L濃度に対してプロットした。外れ値はフィッティングから排除されなかった。ドリフトまたはリガンドに関係づけられる非特異的結合の補正は必要ではなかった。低い変動が観察された。プロットされた値は「Affinity, Standard」分析法を用いてフィッティングした。KDの結果は表6.12に示されている。
【表14】

6.13 マウスおよびカニクイにおけるTT研究は、ナノボディがインビボのCD40L活性を中和することに有効であるということを実証する
【0308】
リードナノボディのCD40L中和能力をインビボで評価するために、破傷風トキソイド(TT)負荷研究をヒト化マウスおよびカニクイザルにおいて行った。
6.13.1 ナノボディはヒト化マウスのTT研究においてCD40L活性を中和する.
【0309】
ナノボディはマウスCD40Lと交差反応性ではなかったので(例6.7.1を見よ)、ヒト化マウスを破傷風毒素(TT)によって免疫し、TT特異的なIgG抗体応答にCD40L中和が及ぼす効果を異なる時点において評価した。ナノボディを、TT負荷に先立って、3日毎に、個体あたり合計で10回の投与になるように投与した。TTを第1日および第31日に投与した。抗CD40L3318ナノボディこれらのマウスにおけるTT-IgG応答を損なわせ、この効果は有意であった(データは示さない)。免疫抑制効果は用量依存的であったが、試験された全ての用量はコントロールよりも良好にIgG応答を縮減した。ナノボディの免疫抑制効果は、これらのナノボディ処置されたマウスの脾臓における成熟ヒトB細胞の不在によって確認された。類似に、マウスTT研究において、ナノボディ3313および3320は、基剤群と比較されたときにTT-IgG応答を有意に縮減することに有効であることが判明した。加えて、これらのナノボディは、TT免疫されたヒトPBMCグラフト免疫不全マウスの脾臓におけるhuPBLの定着および生育をも損なわせる(データは示さない)。
【0310】
ゆえに、試験された全てのナノボディはインビボのCD40L活性を中和することに有効である。
6.13.2 ナノボディは、カニクイザルのTT研究においてCD40L活性を中和する.
【0311】
カニクイザルTT研究を例6.13.1と類似に行った。手短には、カニクイザルを破傷風毒素によって毎日免疫し、TT特異的なIgG抗体応答に及ぼすCD40L中和の効果を異なる時点において評価した。ナノボディ、5C8、および基剤を第0日および第31日に投与した。第1日+4hおよび第31日に、TTを投与した。図7に示されているように、抗CD40LのC010003318ナノボディはこれらのサルにおけるTT-IgG応答を損なわせ、この効果は有意であった。免疫抑制効果は用量依存的であったが、試験された全ての用量は、IgG応答をコントロールよりも良好に縮減した。データは、全てのナノボディ用量における可溶性標的の飽和を指示している。
【0312】
ゆえに、試験された全てのナノボディはインビボのCD40L活性を中和することに有効である。カニクイザルのデータは、マウスにおけるデータを確認しており、機能的なFc領域なしでさえもナノボディの広い適用可能性を証明している。とりわけ、抗CD40LのFcエフェクター機能は、TTに対する液性応答に影響することが示された(Shock et al. 2015 Arthritis Research & Therapy 17:234)。
6.14 TE/血栓症のリスクのインビトロ評価
【0313】
前に挙げたように、臨床的効果の有望な証拠にもかかわらず、hu5C8のさらなる開発は、処置中に現れる心血管血栓症事象(TE)の増大した発生率ゆえに中止された。また、アカゲザルにおける5C8の研究において、肺血管血栓および血管症を包含する様々なTEが5C8の投与後に見いだされた(Wakefield et al. 2010 Arthritis Rheum. 62:1243)。
【0314】
ゆえに、抗CD40Lナノボディが臨床的に用いられ得る前に、その安全性の評価は最大限の重要性がある。安全性をインビボおよびインビトロの種々のシステムによって評価した。次の方法およびアプローチを、インビボのTEおよび/または血栓症のリスクを評価するために設計した。
6.14.1 インビトロの安全性 - 血小板アッセイ.
【0315】
抗CD40LmAbは、FcgRIIaを血小板上にクラスター化する免疫複合体によって血小板活性化および凝集を誘導し得るということがRoth et al.によって記載されているので、抗CD40Lナノボディを血小板活性化および凝集アッセイによって試験して、血小板を刺激するそれらの固有のポテンシャルを検討した(Roth et al., 2004 Transplantation 78:1238-9)。
【0316】
C010003313およびC010003318を、前に述べられた血小板活性化アッセイおよび血小板凝集アッセイによってアッセイした。5C8およびADPをこれらのアッセイにおける正のコントロールとしてとり上げた。健康なボランティアおよびSLE患者両方について、血小板活性化が5C8で観察された。対照的に、C010003313およびC010003318は健康なボランティアおよびSLE患者において非活性化プロファイルを実証した(それぞれ図3および図4)。加えて、これらのナノボディは健康なボランティアおよびSLE患者の血液による血小板凝集アッセイによって試験され、血小板凝集を誘導しないと結論づけられたが、5C8はした。血小板凝集アッセイの結果は図5(健康なボランティア)および図6(SLE患者)に示されている。
【0317】
ゆえに、インビトロの血小板活性化および凝集アッセイにおいて、ナノボディは血小板を誘導しないが、5C8はするということが実証された。
6.14.2 インビトロの安全性 - 内皮細胞活性化システム
【0318】
膜CD40Lは、主としてCD4T細胞に限られる活性化した成熟T細胞上に一過的に発現されるが、休止期T細胞上にはされない。膜CD40Lの発現は、Tリンパ球以外の細胞、すなわち活性化血小板、初代細胞、肥満細胞、好塩基球、および好酸球上にもまた検出されているが、CD40発現は、ある種の条件下においてB細胞、ナチュラルキラー細胞、単球/マクロファージ、樹状細胞上に、幅広く内皮細胞、線維芽細胞、および表皮細胞を包含する非造血細胞上に実証されている。内皮細胞は血小板の次に止血の鍵となるプレーヤーであるので、抗CD40L剤が内皮細胞に及ぼす影響を、初代HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)を含有する2つのシステムにおいて評価した:刺激ありの3Cシステム(心血管疾患/慢性炎症を模倣するため)および未刺激のHNoシステム(健康な血管内皮を模倣するため)(Bioseek)。抗CD40Lナノボディ、無関係なコントロールナノボディ、5C8、および正のコントロールとしてのpiclamilastを、このシステムにおいて4つの異なる濃度で試験した。
【0319】
結果は、ナノボディプロファイルが、内皮細胞に及ぼすいずれかの効果を指示しないと考えられたということを実証している(データは示さない)。他方で、piclamilastは炎症状態に関連したが、最も著しい結果は5C8によって得られた。今のところ、内皮細胞に及ぼす5C8からの影響は報告されていないが、両方の細胞系において、明瞭な用量依存的応答が観察された。具体的には、モニターされた全てのマーカー(炎症性、免疫調節、組織リモデリング、および止血)は1つのまたは両方の細胞系において5C8が原因で増大した。
【0320】
結論として、試験されたナノボディは初代内皮細胞の活性化を誘導しなかったが、5C8はした。ゆえに、抗CD40Lナノボディは安全であるように見える。
6.14.3.インビトロの安全性 - 抗CD40Lナノボディは逆行性シグナル伝達を開始しない
【0321】
その受容体CD40へのCD40Lの結合は、細胞の活性化状態および細胞上の受容体の発現レベルに依存して順行性シグナルを誘導する。加えて、TNFRファミリーメンバー(例えばCD40)へのリガンドの結合は逆行性シグナル伝達を開始し得、細胞増殖、サイトカイン分泌、酸化バースト、クラススイッチ、およびT細胞成熟を制御するということが公知である。しかしながら、TNFαファミリーのメンバーによる無制御なまたは不均衡な逆行性シグナル伝達はサイトカインストームをもたらし得、これは一般的に炎症性サイトカインの過剰なまたはコントロールされない放出として公知である(Eissner et al., 2004 Cytokine & Growth Factor Reviews 15:353-366)。
【0322】
安全性をさらに評価するために、逆行性シグナル伝達が原因のサイトカインストームを開始するナノボディのポテンシャルを評価した。
【0323】
10人の健康なドナーからのヒトPBMCを、異なる濃度の異なる化合物によって刺激した:アバスチン、モノクローナル抗CD3抗体、CDP7657、および抗CD40LナノボディC010003318。また、PBMCの応答性を評価するためにSEBおよびLPSをとり上げた。アバスチンは負のコントロールとして(Min & Kawabata, 2009 in EMA Workshop "in vitro cytokine release assays")、抗CD3抗体は正のコントロールとして用いた。
【0324】
ヒトPBMCを用いてインビトロのサイトカイン放出を評価するための方法は、3つの連続したステップからなる:バフィーコートからのヒトPBMCの単離および凍結、ヒトPBMCの融解および異なる化合物による刺激、ならびに最後にアッセイ上清中のサイトカインの定量。サンプル分析はEurofins Panlabs Inc.においてLuminexプラットフォーム(Life Technologies)を用いて行われた。測定されたサイトカインはIL-1β、IL-2、IL-6、IL-10、TNF-α、およびIFN-γであった。サイトカインは2つの異なるLuminexアッセイによって分析した。第1のアッセイはIL-1β、IL-2、IL-6、およびIL-10を測定し、第2のアッセイはTNF-αおよびIFN-γを測定した。提供者によって決定されたキットの検出限界と各サイトカインの刺激グレードを見積もったAblynxにおいて行われた実験とに基づいて、サンプルの希釈を両方のアッセイについて調整した。アッセイはキットインサートに指示されている通りに行われ、各サンプルは二重で分析された。得られた結果について統計データ分析を行って、全ての化合物をブランク(未刺激のPBMC)と比較した。
【0325】
結果は、ヒトPBMCにおいてアバスチンおよびモノクローナル抗CD3抗体によって誘導されたサイトカイン産生が未刺激のPBMCのものよりも高かったということを実証している。また、正のコントロール化合物SEBおよびLPSによって誘導されたサイトカインのレベルはブランクのものよりも高かった。化合物CDP7657では、サイトカインIL-2、TNF-α、およびIFN-γのレベルはブランクのものに匹敵したが、IL-1β、IL-6、およびIL-10については、試験された濃度に依存していくつかの違いが観察された。PBMC刺激によるIL-6誘導からの例解的な結果が図8に示されている。特に、抗CD3化合物およびアバスチンによる総体的なサイトカイン誘導は、未刺激のサンプルと比較して陽性であることが実証された。CDP7657化合物による誘導は、ブランクサンプルのものよりも高いIL-6レベルをもたらした。ナノボディC010003318によって誘導されたIL-6レベルは、未刺激のサンプルにおいて測定されたIL-6レベルに総体的に類似していた。20nM濃度は例外であり、測定されたIL-6レベルは最小限にではあるがブランクよりも高かった(これは外れ値であると思われる)。正のコントロール化合物SEBおよびLPSはブランクと比較して陽性であることが示された。
【0326】
総体的に、例示的なナノボディC010003318によるサイトカイン誘導は未刺激のPBMCのものに匹敵した。
【0327】
結論として、抗CD40Lナノボディは、インビトロ設定においては、逆行性シグナル伝達が原因のサイトカインストームを開始しない。これは再びナノボディの安全性を確認している。
6.15 インビボの安全性 - 抗CD40Lナノボディはアカゲザルでは安全である
【0328】
さらなる研究をセットアップして、インビボの抗CD40Lナノボディの安全性を評価した。具体的には、抗CD40Lナノボディの皮下投与がアカゲザルにおけるインビボのTEの欠如に至るかどうかをもまた決定した。
【0329】
例示的なナノボディC010003318を、30mg/kg、100mg/kg、および300mg/kgの用量でそれぞれ3匹の雌アカゲザルに4週間に渡って毎週1回投与した。
【0330】
次のパラメータおよびエンドポイントを本研究においては評価した:臨床兆候、体重、体重変化、体温、臨床的な病理パラメータ(血液学、凝固、臨床化学、検尿、およびリンパ球表現型検査)、免疫原性(抗薬物抗体(ADA))、毒物動態、薬力学、肉眼的剖検所見、臓器重量、および病理組織学的検査。検査は次を包含した。
【0331】
下に列記されているin-life手続き、観察、および測定を全ての動物について行った。動物は、一般的な健康、死亡、および異常について各日の午前に1回および午後に1回チェックした。その上に、動物は第-2週から毎日観察された。第1日から(投薬日に)、動物を投薬前、および投薬後に少なくとも3回観察した。非投薬日に、動物を午前および午後にチェックした。第-2週に始まり少なくとも週1回、全ての動物は詳細な臨床的観察を受けた。各投薬日には、日中に定期的に、全ての動物を処置に対する反応について検査した。兆候の発症、強度、および持続時間を記録した;投薬の間および投薬後の最初の1時間は動物に特に注意を払った。
【0332】
注射部位は、処置に対する反応についてモニターした。第-2週から始めて毎週体重を記録した。剖検の予定日に重量を記録した。全ての動物は、前処置の間に1回(午後に、投薬前測定の所期時に)体温を記録された。投薬期間の間に、全ての動物は、各投薬日の投薬のおよそ8h後に、および剖検前に毎週体温を記録された。
【0333】
血液サンプル(0.5mL)をKEDTAチューブに収集し、表6.15Aに規定されているパラメータについて分析した。
【表15】
【0334】
血液サンプル(1mL)を、3.8%(w/v)クエン酸三ナトリウムを含有するチューブにとり、血漿に処理し、これをパラメータの活性化部分トロンボプラスチン時間、フィブリノゲンおよびプロトロンビン時間について分析した。
【0335】
血液サンプル(1.5mL)を、リチウムヘパリンを含有するチューブにとり、血漿に処理し、これを表6.15Bに規定されているパラメータについて分析した。
【表16】
【0336】
表6.15Cに同定されている組織の代表的なサンプルを全ての動物から収集し、別様に指示されない限り10%中性緩衝ホルマリン中で保管した。
【表17】
【0337】
表6.15Cに同定されている組織をパラフィン包埋し、切片化し(4~6μm)、スライドガラスにマウントし、ヘマトキシリンおよびエオシンによって染色した。実験動物病理の訓練および経験を有する獣医学病理学者によって病理組織学的評価が行われた。病理ピアレビューが試験施設の第2の病理学者によって実施された。
【0338】
30、100、または300mg/kg、毎週1回の4週間のアカゲザルへのC010003318の皮下投与は、脾臓および全ての用量レベルにおけるリンパ節(腋窩、鼠径、下顎、および腸間膜)の胚中心のリンパ球減少、ならびに30および100mg/kgにおける脾臓の胚中心のヒアリン化という顕微鏡的所見に関連した。これらの知見は試験品の予想された薬理学的効果であり、よって有害ではないと考えられた。臓器重量または肉眼的病理に及ぼす試験品に関係づけられる効果はなかった。観察された臨床兆候の試験品に関係づけられる変化、または体重の変化はなかった。臨床的な病理パラメータについて、試験品に関係づけられる効果はなかった。
【0339】
結論として、4週間の毎週1回の皮下の例示的なナノボディC010003318の投与は、雌アカゲザルにおいては最大300mg/kg/週のレベルで良好に忍容された。標的臓器効果(リンパ組織)が30から300mg/kg/週のレベルで観察されたが、試験品の薬理学的活性の結果であり、よって有害ではないと考えられた。
【0340】
これらの結果に基づいて、無毒性量(NOAEL)は(試験された)最も高い投薬量として300mg/kg/週であると考えられた。
【0341】
引き延ばされた高用量暴露後でさえも、抗CD40LナノボディがインビボでTEを誘導するという証拠はない。
6.16 免疫原性(ADA)評価
【0342】
免疫原性の評価のために、血液サンプルを全ての動物から収集して(例6.15を見よ)、既存抗体(PEA)(例6.9を参照せよ)または現れた抗薬物抗体(ADA)の存在を決定した。
【0343】
毒物動態評価および/または安全性評価を支持するために、ADAサンプル分析を行った。(MSDプラットフォームによって)ADAサンプル分析のための認証された電気化学発光(ECL)に基づくブリッジングフォーマットを用いて、血漿サンプルを抗薬物抗体(ADA)の存在について評価した。基剤によって処置(n=3)または30、100、もしくは300mg/kgナノボディによって処置されたどちらかの全ての4動物群から、サンプルを収集した。研究の始まり前に(研究前の第-7日)、および第15日および第29日にその日の投与に先立って、血液サンプルを全ての動物から収集した。
【0344】
全てのサンプルからの応答はスクリーニングカットポイントよりも下であった。そのため、研究前の第-7日サンプルにおいてpreAbは検出されず、基剤によって処置またはナノボディを投薬された動物からのサンプルのいずれかにおいて処置中に現れるADAは検出されなかったということが結論づけられた。また、これらの結果は例6.9の知見を裏付けている。
【0345】
ゆえに、既存のまたは処置中に現れるADAは、研究中には、十分に高感度の薬物忍容性のADAアッセイによって検出されなかった。
【0346】
本願に引用される参照の全て(文献参照、交付済み特許、公開特許出願、および同時係属の特許出願を包含する)の内容全体は、特に本明細書において上で参照されている教示について、参照によって明示的にここで組み込まれる。
【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【表25】

【表26】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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