(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】剥離機能付き多層フィルム及びその包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20230404BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230404BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230404BHJP
B65D 83/04 20060101ALI20230404BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230404BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B27/00 H
B32B27/30 B
B65D83/04 D
B65D65/40 D
B65D77/20 L
(21)【出願番号】P 2019015340
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】浅野 真文
(72)【発明者】
【氏名】板田 光善
【審査官】青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-213387(JP,A)
【文献】国際公開第2012/063876(WO,A1)
【文献】特開平03-184843(JP,A)
【文献】特開2014-170721(JP,A)
【文献】特開2019-214418(JP,A)
【文献】特開2018-90326(JP,A)
【文献】特開昭56-123273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
B65D 67/00-79/02;
81/18-81/30;
81/38;
85/88
B65D 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基層と剥離可能な接着層が設けられた多層フィルムにおいて、
基層と接着層とバリア層がこの順に積層されており、
基層と接着層が接しており、
接着層とバリア層が接しており、
基層がスチレン系樹脂を含有し、
接着層が
オレフィン系樹脂と酸変性オレフィン系樹脂を含有
し、
接着層が2層構成であり、
接着層の2層のうち、基層と接着する側の層は、オレフィン系樹脂を50重量%以上とした組成の層であり、バリア層と接着する側の層は、酸変性オレフィン系樹脂を50重量%以上とした組成の層である多層フィルム。
【請求項2】
前記スチレン系樹脂が、スチレン-アクリル酸共重合樹脂、スチレン-メタクリル酸共重合樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合樹脂、及び、これら3種の共重合樹脂のいずれか1種を構成するモノマー成分に更にエステル成分を含む三元共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む樹脂である請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記スチレン系樹脂を構成するスチレンモノマー由来の構成成分が、前記スチレン系樹脂100質量%あたり、70質量%以上97質量%以下である請求項1または2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記基層の、JIS Z1707の突刺し強さ試験に準拠して測定される突刺し強さが1N以上5N以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記基層の厚さが3μm以上50μm以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記酸変性オレフィン系樹脂が、無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸で変性されたオレフィン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記酸変性オレフィン系樹脂における酸変性成分の含有量が、1質量%以上10質量%以下である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項8】
前記オレフィン系樹脂が、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、1-ブテン系重合体、1-ヘキセン系重合体、4-メチル-1-ペンテン系重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂である請求項
1ないし7のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項9】
前記バリア層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデンより選ばれる少なくとも1種を含むバリア樹脂である請求項1ないし
8のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項10】
バリア保護層が、バリア層の基層が積層されている側の面とは他方の面側に、積層されている請求項1ないし
9のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項11】
ヒートシール層が、基層のバリア層が積層されている側の面とは他方の面側に、積層されている請求項1ないし
10のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項12】
基層と接着層の密着強度が0.5N/15mm巾以上2.0N/15mm巾以下であることを特徴とする請求項1ないし
11のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項13】
請求項1ないし
12のいずれか1項に記載の多層フィルムからなるプレススルーパック包装体用蓋材
【請求項14】
請求項
13に記載のプレススルーパック包装体用蓋材と、内容物を収容する凹部を有する底材からなる、プレススルーパック包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に錠剤やカプセル等の医薬品の包装に好適に使用できる剥離機能付き多層フィルム及びその包装体、詳しくは、CRSF(child resistance senior friendly)機能を有するプレススルーパック(PTP)包装体用蓋材フィルム及びプレススルーパック(PTP)包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品等の包装形態の一つとして、底材と蓋材とを備えるプレススルーパック(以下、「PTP」ともいう。)包装体が知られている。PTP包装体は、まず、ポリ塩化ビニル系樹脂又はポリプロピレン系樹脂等からなるプラスチックシートを、真空成形又は圧空成形することによって、ポケット状の凹部を有する底材として成形し、そして、この凹部に内容物を充填し、その後、凹部以外の部分であるフランジ部をヒートシール性の蓋材でシールすることによって、形成される。
【0003】
PTP包装体は、収納された内容物に対して底材の外側から蓋材の方向に力を加えて、蓋材を破ることによって、内容物を取り出すことができるように構成されたものである。このため、PTP包装体の蓋材は、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)が求められる。現在、プレススルー性に優れたアルミ箔が蓋材として幅広く用いられている。
【0004】
しかし、アルミ箔製蓋材を使用したPTP包装体は、以下のような問題がある。
【0005】
即ち、内容物を取り出した後に包装体を廃棄する場合、昨今の資源のリサイクル利用の観点から、プラスチック製の底材とアルミ箔製蓋材を分別回収することが望ましいが、これには多大な労力を要し、物理的に困難であるという問題がある。また、焼却処理する場合にも、アルミ箔の発熱量が多いために焼却炉が傷んだり、溶融一体化して焼却効率が低下したりする問題がある。また、アルミニウムの製造には多大な電気エネルギーを要し、コスト的にもアルミ箔は不利になりつつある。
【0006】
このような状況の中、アルミ箔を使用しないPTP用蓋材として、各種のプラスチック製蓋材フィルムが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0007】
一方、PTP包装体には、従来から、子供がPTP包装体を開封し、PTP包装体の内容物を誤って飲み込んでしまう誤飲の問題、お年寄り又は手先の不自由な患者が、力不足によってPTP包装体を開封できない開封性の問題などがあった。
【0008】
これらの誤飲の問題や開封性の問題を解決するために、CRSF(child resistance senior friendly)機能を有するPTP包装体が求められている。そこで、PTP包装体の底材にヒートシールされた蓋材(基層部分)と剥離可能な被覆層が設けられた構成のPTP包装体を用いることが知られている(例えば、特許文献3、4参照)。使用者は、蓋材の被覆層を剥離した後、蓋材の基層のみ残ったPTP包装体から内容物を押出す。被覆層が剥離されていない状態(基層+被覆層)では、被覆層によって蓋材は強い突刺し強度に設計されている。このため、蓋材は破れにくいので、子供はPTP包装体を開封しにくい。また、被覆層が剥離されている状態(基層のみ)では、被覆層が剥離されていない状態や従来のPTP包装体と比べて、蓋材(基層のみ)の突刺し強度は低く設計されている。このため、蓋材は破れやすくなるので、お年寄り又は手先の不自由な患者はPTP包装体を開封しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平10-101133号公報
【文献】国際公開WO2012/063876A1号公報
【文献】実開H1-156031号公報
【文献】特開2005-82179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、2に記載されたPTP包装用蓋材フィルムにおいて、カプセル製剤、非ピリン系鎮痛剤、抗生物質等、ガスバリア性を要求される医薬品包装材料として用いる場合、ガスバリア性に優れるアルミ箔とは異なり、一般に用いられる樹脂製の蓋材フィルムでは内容物の保存性に劣る問題がある。一方、特許文献3,4に記載されたCRSF機能を有するPTP包装用蓋材において、被覆層が剥離された基層にアルミ箔が用いられる場合、内容物や被覆層の剥離位置の視認性に関わる透明性に劣る問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、錠剤やカプセル等の医薬品の包装に好適に使用できる樹脂製の剥離機能付き多層フィルム、内容物の保存に関わるガスバリア性に優れ、内容物や被覆層の剥離位置の視認性に優れたCRSF機能を有する、CRSFプレススルーパック包装体用蓋材フィルム及びその包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定のガスバリア性樹脂を含有するバリア層と特定のオレフィン系樹脂と酸変性物を含有する接着層を含む被覆層と、透明性と特定の錠剤押出性を有するスチレン系樹脂を含有する基層とを一体と成した、前記基層と剥離可能な接着層が設けられた多層フィルムを蓋材に用いることで、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明は、以下の剥離機能付き多層フィルム及びその包装体、詳しくは、CRSFプレススルーパック包装体用蓋材フィルム及びその包装体を提供するものである。
(1)基層と剥離可能な接着層が設けられた多層フィルムにおいて、
基層と接着層とバリア層がこの順に積層されており、
基層と接着層が接しており、接着層とバリア層が接しており、
基層がスチレン系樹脂を含有し、
接着層がオレフィン系樹脂と酸変性オレフィン系樹脂を含有し、
接着層が2層構成であり、
接着層の2層のうち、基層と接着する側の層は、オレフィン系樹脂を50重量%以上とした組成の層であり、バリア層と接着する側の層は、酸変性オレフィン系樹脂を50重量%以上とした組成の層である多層フィルム。
(2)前記スチレン系樹脂が、スチレン-アクリル酸共重合樹脂、スチレン-メタクリル酸共重合樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合樹脂、及び、これら3種の共重合樹脂のいずれか1種を構成するモノマー成分に更にエステル成分を含む三元共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む樹脂である(1)に記載の多層フィルム。
(3)前記スチレン系樹脂を構成するスチレンモノマー由来の構成成分が、前記スチレン系樹脂100質量%あたり、70質量%以上97質量%以下である(1)または(2)に記載の多層フィルム。
(4)前記基層の、JIS Z1707の突刺し強さ試験に準拠して測定される突刺し強さが1N以上5N以下である(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の多層フィルム。
(5)前記基層の厚さが3μm以上50μm以下である(1)ないし(4)のいずれか1
項に記載の多層フィルム。
(6)前記酸変性オレフィン系樹脂が、無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸で変性されたオレフィン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂である(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の多層フィルム。
(7)前記酸変性オレフィン系樹脂における酸変性成分の含有量が、1質量%以上10質量%以下である(1)ないし(6)のいずれか1項に記載の多層フィルム。
(8)前記オレフィン系樹脂が、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、1-ブテン系重合体、1-ヘキセン系重合体、4-メチル-1-ペンテン系重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂である(1)ないし(7)のいずれか1項に記載の多層フィルム。
(9)前記バリア層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデンより選ばれる少なくとも1種を含むバリア樹脂である(1)ないし(8)のいずれか1項に記載の多層フィルム。
(10)バリア保護層が、バリア層の基層が積層されている側の面とは他方の面側に、積層されている(1)ないし(9)のいずれか1項に記載の多層フィルム。
(11)ヒートシール層が、基層のバリア層が積層されている側の面とは他方の面側に、積層されている(1)ないし(10)のいずれか1項に記載の多層フィルム。
(12)基層と接着層の密着強度が0.5N/15mm巾以上2.0N/15mm巾以下である(1)ないし(11)のいずれか1項に記載の多層フィルム。
(13)(1)ないし(12)のいずれか1項に記載の多層フィルムからなるプレススルーパック包装体用蓋材
(14)(13)に記載のプレススルーパック包装体用蓋材と、内容物を収容する凹部を有する底材からなる、プレススルーパック包装体。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ガスバリア性を要求される錠剤やカプセル等の医薬品の保存に関わるガスバリア性に優れ、内容物や被覆層の剥離位置の視認性に優れたCRSF機能を有する、樹脂製のPTP包装体用蓋材フィルム及びその包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係るPTP包装体用蓋材を備えた本発明に係るPTP包装体の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るPTP包装体用蓋材フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るバリア層の保護層を備えたPTP包装体用蓋材フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態の蓋材は、内容物として、主に錠剤やカプセル等の医薬品、又はキャンディーやチョコレート等の食品を充填するためのPTP包装体に用いられるものである(ここでは、錠剤を充填する場合を例示する)。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
<プレススルーパック(PTP)包装体用蓋材>
図1に示す本実施形態のPTP包装体10は、底材1と本実施形態のPTP包装体用蓋材8とを備える。底材1には、成型されたポケット状の凹部1aとフランジ部1bとが成型されており、凹部1aに内容物(錠剤)2が充填されている。蓋材8は、ヒートシール層3と表面保護層6とにその両面を挟まれた蓋材フィルム4を備える。ここで、凹部1aは内容物を収容し、また、フランジ部1bは蓋材8に貼り合わせられる。
【0017】
蓋材8のうち、ヒートシール層3は底材1のフランジ部1bの表面と蓋材フィルム4の表面F1とを接着している。ヒートシール層3は、底材1のフランジ部1bと融着される側の面を形成している。
【0018】
また、蓋材フィルム4の底材1と反対側の表面F2上には、製品名称ロゴ等の印刷部分5が、着色されたウレタン系樹脂やアクリル系樹脂等のインキにより形成される場合があり、この場合、印刷部分5を保護するための表面保護層(OP(オーバープリント)ニス層)6が表面F2の全面を覆うように形成される(
図1参照)。更に、内容物が医薬品である場合には、医療過誤防止を目的に表面F1にも印刷やアルミ等の蒸着処理がなされる場合がある。
<蓋材フィルム>
本実施形態の蓋材フィルム4は、
図2に示す様に、基層4-Aと接着層4-Cとバリア層4-Bが順に積層された層構成である。
<基層>
蓋材フィルム4の基層4-Aは、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)を持つ素材であり、剛性と脆性の観点から、好ましくはスチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂からなるフィルムが好ましい。
【0019】
スチレン系樹脂とは、スチレン系単量体の単独重合体又は共重合体及びこれらの混合組成物であり、スチレン系単量体とは、スチレン(例えば、GPPS)、α-メチルスチレン等のアルキルスチレン等が挙げられる。
【0020】
また、スチレン系単量体の共重合体とは、スチレン成分が50質量%(wt%)以上である、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-酸無水物共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、耐衝撃性ポリスチレン(例えば、HIPS)、スチレン-α-メチルスチレン共重合体等が挙げられる。
【0021】
また、スチレン系樹脂には、ポリスチレンとポリフェニレンエーテル樹脂のポリマーアロイ(m-PPE)等も用いられる。
【0022】
これらの中でも、より好ましくは、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、及び、これら3種の共重合体のいずれか1種を構成する2種のモノマー成分に更なるモノマー成分であるエステル成分を含む三元共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種が用いられる。
【0023】
上記三元共重合樹脂のエステル成分としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等が挙げられる。これらエステル成分は、例えば押出機での溶融加工時等の、連続して熱が加わるような場合に、樹脂の熱安定性を向上させる点で有効である。
【0024】
なお、上記スチレン系単量体の共重合体は、共重合する成分の種類数に関わらず、「スチレン系共重合樹脂」とも呼ばれる。
【0025】
上記のスチレン系共重合樹脂におけるスチレンモノマー由来の構成成分は、スチレン系共重合樹脂を構成する樹脂成分の合計を基準(100質量%)として70質量%以上、97質量%以下であることが好ましく、75質量%以上95質量%以下がより好ましい。スチレンモノマー由来の構成成分が97質量%以下であると、プレススルー性が向上するとともに、樹脂の耐熱性が向上し、PTP包装体の製造工程において底材とのヒートシール時に蓋材フィルムが変形せずに安定した製造が可能となる。また、スチレンモノマー由来の構成成分が70質量%以上であると蓋材フィルムを作る際に押出製膜しやすく、剛性とプレススルー性の両立が可能となる。
【0026】
上記のうち、スチレン-メタクリル酸共重合体及びこれにエステル成分を含む三元共重合樹脂が押出製膜のしやすさといった点でより好ましい。更には、これらの共重合体を用いることで、基層4-Aと、後述する接着層4-Caとの密着力を適当なものとすることができる。これは、共重合体中の極性基が、接着層4-Caの樹脂成分と化学的に相互作用するためと考えられる。
【0027】
本実施形態において好適に用いられる上記スチレン系樹脂に対し、押出製膜する際の安定性(ネッキングがなく、延伸開始位置が安定しており、実用上問題がない程度に厚さ斑が小さい(一般的にRとして10μm以下))を向上させ、また、その後のPTP包装にいたる種々の工程において、一時停止後の再起動時や包装工程の打ち抜き時等の衝撃に対する耐衝撃性が必要とされる場合がある。これらの特性を改善する目的で、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン-共役ジエン系共重合体、及びスチレン-共役ジエン系共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種を、スチレン系樹脂を構成する樹脂成分の合計を基準(100質量%)として0質量%以上80質量%以下配合するのが好ましい。より好ましい配合量は、0.5質量%以上45質量%以下である。0.5質量%以上配合した場合、延伸の安定性や耐衝撃性が改善され、80質量%以下の場合は、プレススルー性が保たれる。
【0028】
蓋材フィルム4の基層4-Aをスチレン系樹脂で形成する場合、当該樹脂に無機フィラーを配合してもよい。無機フィラーを配合しなくとも、良好なプレススルー性の発現は可能であるが、PTP包装体の使用者が常に健常者とは限らず、力が弱い高齢者や子供も使用者となり得る点も考慮して、内容物を押し出す際の使用感の好みに応じて、無機フィラーの配合により突刺し強さを低下させ、プレススルー性を調節することが可能である。無機フィラーとしては、非晶質アルミナ珪酸塩、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、マイカ、ワラストナイト、クレー、炭酸カルシウム、ガラス繊維、硫酸アルミニウム等を使用することができる。
【0029】
また、蓋材フィルム4の基層4-Aには、当該技術分野において通常用いられる添加剤、例えば、上記無機フィラーの分散を補助する金属石鹸、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等の配合や、印刷や蒸着処理の特性改善を目的としたコロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、AC(アンカーコート)処理等の処理を行ってもよい。
【0030】
蓋材フィルム4の基層4-A、接着層を剥離した後の基層4-A(後述のヒートシール層3と積層された状態の基層4-A)は、錠剤押出性の観点より、JIS Z1707の突刺し強さ試験に準拠して測定される突刺し強さが1N以上5N以下であることが好ましい。突刺し強さが1N以上であると強度が適度でPTP包装体として使用したときに意図せずに蓋材が破れてしまうことが少ない。突刺し強さが5N以下であるとフィルムが破れやすく適度なプレススルー性が発現する。PTP包装体の使用者が力の弱い高齢者や子供である場合を考慮すると、突刺し強さは1N以上3N以下であることがより好ましい。なお、突刺し強さは、JIS Z1707に準拠し、直径1mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を毎分50mmの速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大応力のことをいう。
【0031】
基層4-Aの厚さは、3μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上30μm以下である。厚さが5μm以上であるとフィルムの強度が適度で加工工程に耐える引張り強度が発現しやすく、50μm以下であると適度なプレススルー性が発現しやすい。
【0032】
<バリア層>
蓋材フィルム4のバリア層4-Bは、ガスバリア性を有する素材、バリア樹脂である。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体等の樹脂からなる樹脂を使用することができるが、これらに限定されない。上記樹脂の中でも、特に、エチレン・ビニルアルコール共重合体もしくはポリ塩化ビニリデンからなる樹脂等を用いることが望ましい。
【0033】
バリア層4-Bは、JIS K7126-2の酸素透過度試験に準拠して測定される酸素透過度が5cc/m2・24hr・atm以下であることが好ましい。又、JIS K7129Bの透湿度試験に準拠して測定される透湿度が5g/m2・24hr以下であることが好ましい。酸素透過度が5cc/m2・24hr・atm以下、また、透湿度が5g/m2・24hr以下であると、ガスバリア性を要求される医薬品包装の場合に内容物の保存性が優れ好ましい。
【0034】
バリア層4-Bの厚さは、3μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上30μm以下である。厚さが3μm以上であると保存性に優れ、50μm以下であると生産性の面から好ましい。
【0035】
<接着層>
蓋材フィルムの接着層4-Cは、基層4-Aと接着層4-Cが剥離可能且つバリア層4-Bと接着層4-Cが剥離しない様に、設けられた層である。
【0036】
蓋材フィルム4の層間の密着強度(剥離強度)は、PTP包装体の用途、使用条件等に応じて適宜設定できるが、基層4-Aと接着する接着層4-Cとの密着強度が0.5N/15mm巾以上2.0N/15mm巾以下であり、バリア層4-Bと接着する接着層4-Cとの密着強度が2.0(N/15mm巾)以上とすることが好ましい。
【0037】
接着層4-Cは、酸変性オレフィン系樹脂を含有する。これにより、前述した基層4-Aとバリア層4―Bの密着を適当なものとすることができる。
【0038】
接着層4-Cを構成する酸変性オレフィン系樹脂とは、カルボン酸で変性されたポリオレフィンである。なお本発明においては、カルボン酸とは無水カルボン酸も含むものとする。酸変性オレフィン系樹脂は単独重合体、共重合体のいずれであってもよく、エチレン及び/又はα-オレフィンから形成される繰り返し単位を有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテンおよび1-オクテンからなる群から選択される1種が挙げられる。
【0039】
上記酸変性オレフィン系樹脂を構成するオレフィン構造としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリオクテン等の単独重合体(ホモポリマー)、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ヘキセン共重合体、プロピレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン・1-オクテン共重合体、プロピレン・1-デセン共重合体、プロピレン・1,4-ヘキサジエン共重合体、プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、プロピレン・2、5-ノルボルナジエン共重合体、プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、1-オクテン・エチレン共重合体、1-ブテン・プロピレン共重合体、1-ブテン・1-ヘキセン共重合体、1-ブテン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、1-ブテン・1-オクテン共重合体、1-ブテン・1-デセン共重合体、1-ブテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、1-ブテン・ジシクロペンタジエン共重合体、1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、1-ブテン・2、5-ノルボルナジエン共重合体、1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体等の2成分系の共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・プロピレン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・2、5-ノルボルナジエン共重合体、エチレン・プロピレン・2、5-ノルボルナジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、1-ブテン・エチレン・プロピレン共重合体、1-ブテン・エチレン・1-ヘキセン共重合体、1-ブテン・エチレン・1-オクテン共重合体、1-ブテン・プロピレン・1-オクテン共重合体、1-ブテン・エチレン・1,4-ヘキサジエン共重合体、1-ブテン・プロピレン・1,4-ヘキサジエン共重合体、1-ブテン・エチレン・ジシクロペンタジエン共重合体、1-ブテン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、1-ブテン・エチレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、1-ブテン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、1-ブテン・エチレン・2、5-ノルボルナジエン共重合体、1-ブテン・プロピレン・2、5-ノルボルナジエン共重合体、1-ブテン・エチレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、1-ブテン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体のような多成分系の共重合体等が挙げられる。
【0040】
これらのうち、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリオクテン、プロピレン・エチレン共重合体、1-ブテン・エチレン共重合体、1-ブテン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体、1-オクテン・エチレン共重合体を用いることが好ましい。
【0041】
酸変性オレフィン系樹脂における酸変性成分の含有量は、接着層と基層又はバリア層との密着性又は接着性の点から、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上8質量%以下であることが好ましく、2質量%以上7質量%以下であることがより好ましい。酸変性成分としては、例えば、不飽和カルボン酸が挙げられる。具体的には、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、クロトン酸、メタアクリル酸、イタコン酸、または、これらの各酸の酸無水物等が挙げられる。これらのうち、無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸を用いることが好ましい。
【0042】
酸変性オレフィン系樹脂は無水マレイン酸で変性されたポリオレフィンが好ましく、特に無水マレイン酸変性ポリエチレンが好ましい。
【0043】
酸変性オレフィン系樹脂は、通常行われる方法、例えば、上記ポリオレフィンに、通常行われる条件、例えば、加熱下での撹拌等により不飽和カルボン酸をグラフト重合させる方法で製造してもよく、また市販品を用いてもよい。例えば、LDPE、HDPE、LLDPE、PS、又はPPに無水マレイン酸をグラフトしたポリマーが例示される。市販品としては、例えば、アルケマ株式会社製のOREVACシリーズ、三井化学社製のタフマー/アドマーシリーズ(マレイン酸変性ポリオレフィン)、住友化学工業社製のボンダイン/ロタダーシリーズ、エボニック ジャパン社製のベストプラストシリーズ、ダウ・ケミカル社製のプリマコールシリーズ(アクリル酸変性ポリオレフィン)、三洋化成社製のユーメックス(無水マレイン酸変性ポリオレフィン)、東洋紡社製のトーヨータックシリーズ等が挙げられる。
【0044】
接着層4-Cはオレフィン系樹脂を含んでもよい。オレフィン系樹脂とは、オレフィンの単独重合体、及び/又は、オレフィンを単量体として用いた共重合体である。
【0045】
オレフィン系樹脂を構成するオレフィン(オレフィン単量体)としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等が挙げられる。従って、オレフィン系樹脂(B)としては、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、1-ブテン系重合体、1-ヘキセン系重合体、4-メチル-1-ペンテン系重合体等が挙げられる。これら重合体は1種のみで用いてもよく、2種以上を併用してもよい。即ち、オレフィン系樹脂は各種の重合体の混合物であってもよい。
【0046】
エチレン系重合体としては、例えば、エチレン単独重合体(ポチエチレン)、及び、エチレンと他の単量体との共重合体(エチレン共重合体)が挙げられる。エチレン共重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ペンテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体等が挙げられる。
【0047】
尚、エチレン共重合体に含まれるエチレン単位(エチレンに由来する構成単位)は、全構成単位数のうち50%以上(通常99.999%以下)であればよいが、例えば、全構成単位数のうち80%以上99.999%以下とすることができる。
【0048】
また、プロピレン系重合体としては、例えば、プロピレン単独重合体(ポリプロピレン)、及び、プロピレンと他の単量体との共重合体(プロピレン共重合体)が挙げられる。プロピレン共重合体としては、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ペンテン共重合体、プロピレン・1-オクテン共重合体等が挙げられる。
【0049】
尚、プロピレン共重合体に含まれるプロピレン単位(プロピレンに由来する構成単位)は、全構成単位数のうち50%以上(通常99.999%以下)であればよいが、例えば、全構成単位数のうち80%以上99.999%以下とすることができる。
【0050】
更に上記のうち、1-ブテン重合体としては1-ブテン単独重合体(ポリ1-ブテン)、1-ヘキセン重合体としては1-ヘキセン単独重合体(ポリ1-ヘキセン)、4-メチル-1-ペンテン重合体としては4-メチル-1-ペンテン単独重合体(ポリ4-メチル-1-ペンテン)等が挙げられる。
【0051】
また、オレフィン系樹脂には、本発明の目的を害しない範囲で、オレフィンを除く単量体に由来する構成単位を含んでもよい。オレフィン以外の単量体としては、不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸等)、不飽和カルボン酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等)、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル等)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0052】
尚、オレフィン系樹脂に含まれるオレフィン以外の単量体に由来する構成単位は、含まれるとしても全構成単位数のうち1%以下(通常0.001%以上)が好ましい。
【0053】
接着層4-Cは単層であっても複数層であってもよい。
【0054】
単層であれば、例えば、基層4-Aと接着する接着層4-Ca側と、バリア層4-Bと接着する接着層4-Cb側のオレフィン系樹脂と酸変性オレフィン系樹脂の質量比について傾斜をつけることができる。
【0055】
また、接着層4―Cが2層構成の場合、基層4-Aと接着する接着層4-Ca側はオレフィン系樹脂を主体(50%以上)とした組成の層、バリア層4-Bと接着する接着層4-Cb側はその酸変性物を主体(50%以上)とした組成の層とすることができる。
【0056】
接着層4-Cを構成する接着層4-Cの厚さは、1μm以上60μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以上30μm以下である。厚さが1μm以上であると接着力の発現性に優れ、60μm以下であると生産性の観点から好ましい。
【0057】
<蓋材フィルムの製造方法>
本実施形態の蓋材フィルム4を製造する方法の代表的な例として、基層4-A、接着層4-C(4-Caと4-Cb)、バリア層4-Bを構成する熱可塑性樹脂を、各々スクリュー押出機等により溶融混錬し、単層又は多層のTダイによりフィルム状にキャスト製膜する方法、単層又は多層のTダイによりシート状にした後、ロール延伸又はテンター延伸により一軸延伸する方法、ロール延伸に続いてテンター延伸することにより二軸延伸する方法、単層又は多層の円形ダイによりインフレーション法により延伸する方法、得られた単層フィルム又は多層フィルムをラミネート法により積層する方法等が挙げられる。蓋材フィルム4を製造する方法として、単層ではフィルム化の困難な数μmの薄膜層(接着層4-Caと接着層4-Cbに相当)を積層可能な多層のTダイ又は円形ダイを用いる方法が好ましく、更には、押出-積層-製膜の工程が一体化された多層の円形ダイよる共押出インフレーション法により延伸する方法が、より好ましい。
【0058】
蓋材フィルム4は、延伸フィルムであることが好ましく、この時の延伸倍率は縦及び横の少なくとも一方向で2倍以上20倍以下が好ましく、5倍以上10倍以下がより好ましい。蓋材フィルム4は、使用に供されるまでの各加工工程でフィルムに強い張力が負荷される場合が多いため、各加工に耐え得る引張り強度が必要となる。熱可塑性樹脂フィルムは延伸配向されることにより延伸方向の引張り強度が大きく向上する一方、突刺し強さの向上は比較的小さい傾向にある。このため、熱可塑性樹脂フィルムを薄くしたり、無機フィラーを添加したりすることで突刺し強度が低下した場合でも、延伸フィルムとすることで、加工に耐え得る引張り強度を付与することができる。
【0059】
<バリア保護層>
バリア層4-Bは、
図1に示す本実施形態のPTP包装体10の様に、接着層4-C(4-Caと4-Cb)を介してプレススルー性を有する基層4-A側のF1面とは反対側のF2面にてバリア層4-B表面に印刷5や表面保護層6が形成される場合、
図3に示す様に、バリア層4-Bを表面保護する目的で、接着層4-Cbを介してバリア保護層4-Dを設けても良い。
【0060】
バリア保護層4-Dは、熱可塑性樹脂からなるフィルムが好ましく、熱可塑性樹脂としては、フィルム状に製膜できるものであれば特に制限されず、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂、エステル系樹脂(ポリ乳酸を含む)、アミド系樹脂等が挙げられる。このうち1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。熱可塑性樹脂の中でも、PTP包装体と成すヒートシール時の耐熱性の観点から、好ましくはアミド系樹脂が用いられる。ポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66、及び、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン6/66/12、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン9T等の共重合体などが挙げられる。
【0061】
バリア保護層4-Dの厚さは、5μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上30μm以下である。厚さが5μm以上であると耐熱性に優れ、50μm以下であると生産性の観点から好ましい。
【0062】
<ヒートシール層>
蓋材8を構成するヒートシール層3は、
図1に示す本実施形態のPTP包装体10の様に、基層4-A側のF1面に形成されるが、後述するヒートシール剤を原料とするものである。
【0063】
本実施形態で使用されるヒートシール剤は、ヒートシール層3が熱によって底材1と共に溶融し、相互に融着(ヒートシール)し得るものとして、蓋材や底材の種類に応じて、熱可塑性樹脂を適宜選択して用いることができる。例えば、オレフィン系モノマー、ビニルエステル類、(メタ)アクリル系モノマーの単独重合体や共重合体等を挙げることができる。
【0064】
上記オレフィン系モノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等のα-オレフィンがあげられる。また、上記ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル等があげられる。又、上記(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸及びそのアルキルエステル類、(メタ)アクリル酸2-メトキシメチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル類、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の重合性二塩基酸、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアルキルアミノ(メタ)アクリルエステル類等があげられる。
【0065】
更には、本実施形態で使用されるヒートシール剤は、アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂の他に、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル-ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を、50質量%未満の範囲で含んでいてよい。
【0066】
蓋材フィルム4-A上にヒートシール層3を設ける方法の代表的な例として、蓋材フィルム4-Aの上にヒートシール剤を塗工して乾燥させる方法、蓋材フィルム4-Aと共にヒートシール性を有する樹脂を共押出する方法、蓋材フィルム4-Aの上にヒートシール性を有する樹脂を押出ラミする方法、蓋材フィルム4-Aの上にヒートシール性を有するフィルムをラミネートする方法、等が挙げられ、中でも、工程が簡略であり生産性に優れる観点から、蓋材フィルム4-Aの上にヒートシール剤を塗工して乾燥する方法、及び、蓋材フィルム4-Aと共にヒートシール性を有する樹脂を共押出する方法が好ましい。
【0067】
ヒートシール剤を塗工して乾燥する方法の場合、ヒートシール剤を水中にポリマー粒子を分散させた水性エマルジョンの状態で用いることが、環境性の観点や耐溶剤性に劣る樹脂フィルムにも塗工できる観点から、好ましい。
【0068】
又、本実施形態の様に、上記ヒートシール剤をヒートシール層3として、
図2の様に基層4-A/接着層4-C/バリア層4-Bの蓋材フィルム4、及び、
図3の様に更に接着層4-Cbを介してバリア保護層4-Dを有する蓋材フィルム4と共に共押出する方法の場合、塗工工程を簡素化できる観点から、より好ましい。
【0069】
ヒートシール層3の厚さは、ヒートシール性及びPTP包装体の突き破り性の観点から、3μm以上30μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であることがより好ましい。3μm以上であると、十分なヒートシール性を有し、30μm以下であると、内容物2が蓋材フィルム4を突き破りやすくなるので好ましい。
【0070】
<表面保護層(OP(オーバープリント)ニス層)>
蓋材8を構成する表面保護層6は、
図1に示す本実施形態のPTP包装体10の様に、蓋材フィルム4のF2面に形成されるが、後述するOPニスを原料とするものであり、蓋材フィルム4Aの底材1と反対側の表面F2上に製品名称ロゴ等の印刷部分5がある場合に印刷部の保護用として有用である。OP剤は、高温雰囲気下での保管にも適応可能な優れた耐ブロッキング性やヒートシール時の耐熱性を得やすくする観点から、例えば、アクリル系樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
【0071】
<プレススルーパック包装体用蓋材フィルムの製造方法>
本実施形態のプレススルーパック包装体用蓋材8は、前述の通り、ヒートシール層3の原料である前述のヒートシール剤、及び表面保護層6の原料である前述のOP剤を、それぞれ蓋材フィルム4の両表面に対して適用することによって、製造することができる。以下、蓋材フィルム4にヒートシール剤や酸変性ポリオレフィン系樹脂を塗工して乾燥する方法を用いた例について、その詳細を説明する。
【0072】
塗工法としては、例えば、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他等の方法が挙げられ、塗工量の調整、操作性、塗工速度等の観点から、グラビアコート法が好ましい。
【0073】
ヒートシール層3のヒートシール剤の塗工量としては、PTP包装機のヒートシール性、及びPTP包装体の突き破り性を高める観点から、3g/m2以上30g/m2以下(厚さに換算して約3~約30μmに相当)であることが好ましく、更に5g/m2以上20g/m2以下であることがより好ましい。3g/m2以上であると、十分なヒートシール性を備えることができ、30g/m2以下であれば、内容物2が蓋材を突き破りやすくなる。
【0074】
表面保護層6のOP剤の塗工量としては、高温雰囲気下での保管にも適応可能な優れた耐ブロッキング性、及び蓋材8をヒートシールする際に要求される耐熱性を高める観点から、0.3g/m2以上5g/m2以下(厚さに換算して約0.3~約5μmに相当)であることが好ましく、0.5g/m2以上2g/m2以下であることがより好ましい。0.3g/m2以上であると、十分な耐ブロッキング性と耐熱性を備えることができ、5g/m2以下であれば、透明感があり印刷がはっきり見えるようになる。
【0075】
塗工の速度は、好ましくは10m/分以上300m/分以下であり、より好ましくは、20m/分以上200m/分以下である。10m/分以上であると、乾燥時の過加熱がなく塗工後に熱シワが生じにくく、生産性が良好である。300m/分以下であると、乾燥不足による巻きジワやブロッキングの発生が起こりにくく、蓋材フィルム4が破断しにくい。
【0076】
塗工後の乾燥方法は、熱風噴射式(トンネル式、エアフローティング、丸孔ノズル、高速エアキャップ、カウンターフロー)、ドラム式、赤外線、マイクロ波(誘導加熱)、電磁誘導加熱、紫外線、電子線、その他の方法が挙げられ、操作性、塗工速度、塗工後のシワ等の観点から、熱風噴射式(トンネル式、エアフローティング、丸孔ノズル)が好ましく、中でも熱風噴射式(エアフローティング)がより好ましい。
【0077】
乾燥の温度及び時間としては、ヒートシール剤の種類、希釈溶剤の種類、固形分、液の粘度、塗工速度、乾燥機の種類によっても異なるが、下記の通りとしてよい。
【0078】
乾燥温度は、好ましくは50℃以上115℃以下、より好ましくは60℃以上100℃以下である。50℃以上だと、乾燥不足による巻きジワやブロッキングが発生しにくく、115℃以下だと、乾燥時の過加熱がなく、塗工後にシワが生じにくい。
【0079】
乾燥時間は、好ましくは1秒以上200秒以下、より好ましくは2秒以上100秒以下、更に好ましくは3秒以上30秒以下である。1秒以上であれば、乾燥不足による巻きジワやブロッキングの発生が起こりにくく、200秒以下であれば、乾燥時の過加熱がなく、塗工後にシワが生じにくく、生産性が向上する。
【0080】
なお、上記製造工程において、蓋材フィルム4に対し、グラビア印刷機等を用いて文字やバーコードを印刷することができる。更に、文字やバーコードを印刷した表面に対し、ニス層を設けることもできる。
【0081】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜他の層を含んでもよく、機能層や他の密着層などを積層してもよい。
たとえば、バリア層とバリア保護層の間に接着層を配置してもよい。
【0082】
また、上記実施形態においては、蓋材フィルム4の表面F1上にヒートシール層3を直接設けた場合を例示したが、蓋材フィルム4とヒートシール層3との間(F1の位置)や反対側(F2の位置)に他の層を介在させてもよい。
【0083】
例えば、蓋材フィルム4とヒートシール層3との間(F1の位置)に他の層として近赤外反射層を設ける場合、近赤外線を利用した異物検査の適性が向上する観点から、好ましい。
【実施例】
【0084】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである。
(1)蓋材フィルム
(i)基層
SMAA:スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸アルキルエステル共重合体(PSジャパン製PSJ-ポリスチレン MM290、スチレン構造含有率85%、メチルメタクリルレート含量5質量%、メタクリル酸含量10質量%)
アルミ箔:アルミニウム箔(東洋アルミニウム製 厚み17μ)
(ii)バリア層
EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂(日本合成化学製ソアノール(登録商標) DC3203)
PVDC:塩化ビニリデン/アクリル酸メチル共重合樹脂(旭化成製サラン(登録商標)UB)
(iii)接着層
PE-1:直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(宇部丸善ポリエチレン製ユメリット(登録商標)20B)
PE-2:低密度ポリエチレン(旭化成社製サンテックLD F1920)
酸変性PE:無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂(三井化学製アドマー(登録商標) NF587)
(iv)バリア保護層
Ny:ナイロン6/66(宇部興産製UBEナイロン5023B)
(2)ヒートシール剤
(i)HS剤-1:アクリル系樹脂エマルジョン型ヒートシール剤(BASF株式会社製、ジョンクリル、スチレン-アクリル酸エステル共重合体のアンモニウム塩の水分散体の固形分100重量部に対して、ポリメチルメタクリレート架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーMBX、SSXシリーズ、平均粒子径:8~30μm)8重量部配合した水分散体
(ii)HS剤-2: エチレン-酢酸ビニル共重合体(宇部丸善ポリエチレン製UBEポリエチレン(EVA)VF215C)
不揮発分:43重量%、ガラス転移温度:-4℃)
(3)OPニス剤
アクリル系樹脂エマルジョン(株式会社T&K TOKA製、アクアパックワニスCL-1JST、スチレンアクリル樹脂の水分散体、不揮発分:38~42重量%、融解ピーク温度:107℃、121℃)
(4)印刷インキ
アクリル系樹脂エマルジョン(DICグラフィックス株式会社製、マリーングロスPEメジューム、アクリル樹脂の水分散体、不揮発分:10~20重量%、融解ピーク温度:なし)にカーボンブラック5~15重量%を配合したインキ。
【0086】
[実施例1]
基層にSMAA、接着層(1)にPE-1を90重量%と酸変性PEを10重量%の配合原料、接着層(2)に酸変性PEを80重量%とPE-2を10重量%の配合原料、バリア層にEVOHを4台の押出機により溶融押出して、この順になる様、共押出インフレーション法により延伸し、その後、フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施して作製した蓋材フィルム-1(厚み25μm、基層/接着層(1)/接着層(2)/バリア層の各層厚み=12μm/3μm/3μm/7μm)を得た。
ロール状に巻かれた蓋材フィルム-1(基層/接着層/バリア層からなるフィルム)のバリア層側の面に、グラビア印刷機にて、黒色文字を印刷インキにて印刷し、その上にOPニス剤を塗工・乾燥(厚み1μm)した後、その反対側の基層側の面に上記と同様の印刷インキにて印刷を行い、その上にHS剤-1を塗工・乾燥(ヒートシール剤の厚み8μm)して、PTP包装体用蓋材-1を得た。
【0087】
[実施例2]
ヒートシール層にHS剤―2、基層にSMAA、接着層(1)にPE-1を90重量%と酸変性PEを10重量%の配合原料、接着層(2)に酸変性PEを80重量%とPE-2を10重量%の配合原料、バリア層にEVOH、接着層(3)に接着層(2)と同じ配合原料、バリア保護層にNyを7台の押出機により溶融押出して、この順になる様、共押出インフレーション法により延伸し、その後、フィルムのバリア保護層側片面のみに50mN/mのコロナ処理を施して作製した蓋材フィルム-2(厚み45μm、ヒートシール層/基層/接着層(1)/接着層(2)/バリア層/接着層(3)/バリア保護層の各層厚み=7μm/12μm/3μm/3μm/7μm/3μm/10μm)を得た。
ロール状に巻かれた蓋材フィルム-2(ヒートシール層/基層/接着層(1)/接着層(2)/バリア層/接着層(3)/バリア保護層からなるフィルム)のバリア保護層側の面に、グラビア印刷機にて、黒色文字を印刷インキにて印刷し、その上にOPニス剤を塗工・乾燥して、PTP包装体用蓋材-2を得た。
【0088】
得られた蓋材について、底材シートに厚さ250μmの硬質塩化ビニル単層シート(PVC:住友ベークライト製スミライトVSSシリーズ)を用いたPTP成形機(CKD社製FBP-M1)により、凹み部を成形した底材に錠剤を充填し、前記蓋材を接着して、PTP包装体を得た。このときの底材シートのポケットサイズは、直径10mm、高さ4mmの円形であり、錠剤のサイズは錠径8.6mm、錠高3.8mmの円形であった。ヒートシールの条件は、特に記載のない場合は、温度150℃、シール圧力0.4MPa、充填速度5m/分(120ショット/分、シール時間0.1秒相当)を標準条件として実施した。また、その他の条件は、底材シート成形温度130℃、スリット温度130℃、作業室環境23℃、50%RHであった。
【0089】
得られた実施例1及び実施例2のPTP包装体について、PTP包装体用蓋材-1及びPTP包装体用蓋材-2の外観は、ヒートシール前と変わらず、蓋材の層間で剥離はなく、良好な外観であり、底材側から錠剤を親指で押し出しても錠剤を押し出すことが困難なレベルであった。
【0090】
一方、PTP包装体の端部より指で蓋材を剥離することが可能で、PTP包装体の底材側に透明なフィルム(ヒートシール層/基層のみ)が残った状態で、底材に入っている錠剤の位置に合わせて綺麗にはがすことができ、内容物や被覆層の剥離位置の視認性が良く、剥離性が良好であった。更に剥離後に底材側から錠剤を親指で押し出すことで、特に問題なく錠剤を押出すことが可能で、CRSF機能として実用上問題ないレベルであった。このとき、PTP包装体用蓋材-1及びPTP包装体用蓋材-2の基層と接着層の層間の密着強度は、いずれも1.5N/15mmであった。JIS Z1707の突刺し強さ試験に準拠して測定される突刺し強さがいずれも2.0Nであった。
【0091】
又、PTP包装体と成した後のJIS K7126-2の酸素透過度試験に準拠して測定される酸素透過度がPTP包装体用蓋材-1は2cc/m2・24hr・atm、PTP包装体用蓋材-2のJIS K7126-2は1cc/m2・24hr・atmといずれも良好なガスバリア性を示した。殊に、PTP包装体用蓋材-2はバリア保護層の寄与により、PTP包装体に於いて、PTP包装体用蓋材-1より良好なバリア性を示した。
【0092】
[実施例3]
実施例3は、バリア層にPVDCを用いた以外は、実施例2と同様に、蓋材を作製し、PTP包装体用蓋材-3を得た後、実施例1及び実施例2と同様に、PTP成形機によりPTP包装体を得た。得られたPTP包装体の外観及び蓋材の剥離性は実施例2と同様に良好で、CRSF機能として実用上問題ないレベルであった。PTP包装体用蓋材-3の基層と接着層の層間の密着強度は、1.5N/15mmであった。JIS Z1707の突刺し強さ試験に準拠して測定される突刺し強さが2.0Nであった。又、PTP包装体と成した後のJIS K7126-2の酸素透過度試験に準拠して測定される酸素透過度が1cc/m2・24hr・atmに加え、JIS K7129Bの透湿度試験に準拠して測定される透湿度が1g/m2・24hrとなり、更に良好なバリア性を示した。
【0093】
[比較例1]
比較例1では、接着層(1)~(3)に酸変性PEを使用しないこと以外は、実施例2と同様に、蓋材を作製し、PTP包装体用蓋材-4を得た後、実施例1及び実施例2と同様に、PTP成形機によりPTP包装体を得た。得られたPTP包装体の蓋材層間で剥離が見られ、CRSF機能として実用上使用できないものと判断された。
【0094】
[比較例2]
比較例2では、基層にアルミ箔を使用した構成とするため、接着層(1)にPE-1、接着層(2)に酸変性PEを80重量%とPE-2を10重量%の配合原料、バリア層にEVOHを3台の押出機により、この順になる様、Tダイ法で共押出したものを、押出ラミネーション法により、キャストロール上の基層アルミ箔と接着層(1)との面で積層一体化し、フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施して作製した蓋材フィルム-5(厚み30μm、基層/接着層(1)/接着層(2)/バリア層の各層厚み=17μm/3μm/3μm/7μm)を得た後、実施例1と同様に、蓋材を作製してPTP包装体用蓋材-5となし、PTP成形機によりPTP包装体を得た。得られたPTP包装体の端部より指で蓋材を剥離する際に、基層のアルミ箔側から底材に入っている錠剤が見えないことにより、錠剤の位置に合わせて剥がすことができない為、必要個数以上に錠剤を底材側から錠剤を親指で押し出すことが可能となり、CRSF機能として実用上使用できないものと判断された。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のPTP包装体用蓋材は、錠剤やカプセル等の医薬品、又はキャンディーやチョコレート等の食品の包装に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1…底材、1a…底材の凹部、1b…底材のフランジ部、2…内容物(錠剤)、3…ヒートシール層、4…蓋材フィルム、4-A…蓋材フィルムの基層、4-B…蓋材フィルムのバリア層、4-C…蓋材フィルムの接着層、4-D…蓋材フィルムのバリア保護層、5…印刷部分、6…表面保護層(OPニス層)、8…蓋材、9…錠剤と蓋材のクリアランス、10…包装体、F1、F2…表面