(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】織機における緯糸切断装置
(51)【国際特許分類】
D03D 49/70 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
D03D49/70 D
(21)【出願番号】P 2019027385
(22)【出願日】2019-02-19
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平野 大慈
(72)【発明者】
【氏名】田村 公一
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105803645(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105780272(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107932804(CN,A)
【文献】中国特許第100548599(CN,C)
【文献】独国特許出願公開第04020030(DE,A1)
【文献】実開平02-102172(JP,U)
【文献】実開平02-000387(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 49/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッタホルダに固定される固定刃と、前記カッタホルダに対し揺動可能に軸支される可動刃と、前記カッタホルダに対し揺動可能に軸支されると共に揺動されることで前記可動刃を揺動させるように前記可動刃に連結されるシフトレバーと、前記カッタホルダに設けられたシリンダ内に往復動可能に収容されると共に前記シフトレバーに係合するプランジャであって前記往復動によって前記シフトレバーを揺動させるプランジャと、該プランジャを往復動させるために前記シリンダ内に空気を供給する空気供給装置とを備える織機における緯糸切断装置において、
前記シリンダ内において前記シリンダの長手方向に延在するように設けられる案内部を備え、
前記プランジャは、前記シリンダ内に収容された状態で前記長手方向と平行を成すように形成された案内孔で前記案内部により摺動案内されるように設けられている
ことを特徴とする織機における緯糸切断装置。
【請求項2】
前記案内孔は、前記プランジャの一端側の端面である受圧面に開口すると共に底面を有する有底の孔であり、
前記案内部は、前記プランジャの前記受圧面と対向する前記シリンダにおける内端面から前記シリンダの内部へ向けて延在するように設けられており、
前記プランジャにおける前記案内孔の前記底面が前記案内部の端面に当接した状態、及び/又は前記シリンダの前記内端面と前記プランジャの前記受圧面とが当接した状態で、前記可動刃が所望の揺動範囲の一方の揺動限に位置するように構成されており、
前記往復動に伴って前記案内孔の前記底面と前記案内部の前記端面との間に生じる空間と前記プランジャの外部とを連通させるように形成された連通路を有し、
前記連通路は、前記往復動に伴う前記空間の容積変化と該容積変化によって前記空間に流入する空気の量との関係で前記空間が負圧状態となるように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の織機における緯糸切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッタホルダに固定される固定刃と、前記カッタホルダに対し揺動可能に軸支される可動刃と、前記カッタホルダに対し揺動可能に軸支されると共に揺動されることで前記可動刃を揺動させるように前記可動刃に連結されるシフトレバーと、前記カッタホルダに設けられたシリンダ内に往復動可能に収容されると共に前記シフトレバーに係合するプランジャであって前記往復動によって前記シフトレバーを揺動させるプランジャと、該プランジャを往復動させるために前記シリンダ内に空気を供給する空気供給装置とを備える織機における緯糸切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記のような緯糸切断装置として、例えば、特許文献1に開示された装置がある。なお、その特許文献1に開示された装置は、タックインヘッド(折り込みブロック)に付設されて、筬打された緯糸の端部を切断する緯糸切断装置である。
【0003】
その緯糸切断装置は、カッタホルダ(剪刀座)を主体として構成されており、そのカッタホルダに固定される固定刃(剪刀静片)と、カッタホルダに対し揺動可能に軸支される可動刃(剪刀動片)とを備えている。また、その緯糸切断装置において、カッタホルダは、シリンダとして機能する孔を有しており、そのシリンダ内にプランジャ(柱塞)を往復動可能に収容している。さらに、そのカッタホルダには、その外部とシリンダ内の空間とを連通する流路が形成されている。そして、その緯糸切断装置は、その流路を介してのシリンダ内への空気の供給、及びシリンダ内から空気の排出が行われることにより、プランジャがシリンダ内で往復動するように構成されている。
【0004】
なお、カッタホルダにおけるシリンダには、外部に向けて開口すると共に内部の空間に連通する開口部が形成されている。それにより、緯糸切断装置は、シリンダ内に収容されたプランジャがその一部において外部に露出するようになっている。
【0005】
また、その緯糸切断装置において、プランジャは、2つのプランジャ部材(第1プランジャ、第2プランジャ)で構成されている。さらに、その緯糸切断装置は、カッタホルダに対し揺動可能に軸支されると共に、自身の揺動によって可動刃が揺動されるように可動刃に連結されたシフトレバー(撥叉)を備えている。また、そのシフトレバーは、その一部が前記の開口部を通ってシリンダ内に位置するように設けられている。その上で、シフトレバーは、そのシリンダ内に位置する部分が前記した2つのプランジャ部材に挟まれるかたちで、プランジャと係合している。そして、そのように構成された緯糸切断装置によれば、シリンダ内でプランジャが往復動するのに伴い、そのプランジャと係合するシフトレバーが揺動し、それによって可動刃が揺動して切断動作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許出願公開第105803645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、織機において、一般的には、製織の1サイクル毎(織機主軸が1回転する毎)に緯入れされた緯糸の切断動作が行われる。また、織機においては、1分間に数百回転の割合で織機主軸が回転駆動されて製織が行われる。したがって、緯糸切断装置として特許文献1に開示されているような装置を採用した場合、その緯糸切断装置においては、プランジャが1分間に数百回の割合でシリンダ内を往復動するように駆動される。
【0008】
なお、その緯糸切断装置は、プランジャがその外周面をシリンダの内周面に当接させるかたちでシリンダ内に配設される構成となっており、前記の往復動に伴ってプランジャがシリンダによって摺動案内されるものとなっている。そのため、前記のようにシリンダ内においてプランジャが1分間に数百回の割合で往復動するのに伴い、プランジャとシリンダ(カッタホルダ)との間に摩耗が生じる。そして、そのような摩耗が生じるとシリンダ内でのプランジャの往復動がスムースに行われなくなり、その結果として、緯糸の切断が所望のタイミングで行われなかったり、緯糸が切断されなかったりするといった問題が発生する場合がある。
【0009】
そこで、そのような問題の発生を抑えるべく、前記のような摩耗が生じた場合に、その摩耗した部分を交換する必要がある。但し、その摩耗は、シリンダ内を往復動するプランジャだけでなく、プランジャを摺動案内するシリンダ側の部分にも生じる。そして、そのシリンダ側の摩耗は、プランジャの材質にかかわらず発生することが本発明の発明者らによる実験で分かっている。したがって、そのような摩耗が発生した場合には、そのシリンダ側の部分を含むカッタホルダ全体を交換することとなる。すなわち、緯糸切断装置の主体的な部分であるカッタホルダが交換されることとなる。そのため、そのような緯糸切断装置の使用は、大きい保守コストを要することとなる。
【0010】
因みに、特許文献1に開示された緯糸切断装置は、シリンダ内に円筒状のスリーブ(套管)が嵌装されると共にプランジャがそのスリーブによって摺動案内される構成となっている。したがって、前記したシリンダ側の摩耗は、そのスリーブに生じる。なお、特許文献1には明記されていないが、高速で往復動するプランジャを案内する上で、そのスリーブは、シリンダ(カッタホルダ)に対し強固に固着されているはずである。したがって、前記のようにスリーブに摩耗が生じた場合には、やはりカッタホルダが交換されることとなる。
【0011】
以上のような実情を鑑み、本発明は、前記のような空気の供給及び排出によってプランジャを往復動させて可動刃を往復揺動させる織機における緯糸切断装置において、前記のような大きい保守コストを要する原因となるシリンダの摩耗が生じにくい構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記のようにシリンダ内に空気を供給してプランジャを往復動させることで可動刃を揺動させる織機における緯糸切断装置を前提とする。
【0013】
そして、本発明による緯糸切断装置は、前記シリンダ内において前記シリンダの長手方向に延在するように設けられる案内部を備える。その上で、前記プランジャを、前記シリンダ内に収容された状態で前記長手方向と平行を成すように形成された案内孔で前記案内部により摺動案内されるように設けたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明による緯糸切断装置において、前記案内孔を、前記プランジャの一端側の端面である受圧面に開口すると共に底面を有する有底の孔とし、前記案内部を、前記プランジャの前記受圧面と対向する前記シリンダにおける内端面から前記シリンダの内部へ向けて延在するように設けられたものとする。さらに、その緯糸切断装置を、前記プランジャにおける前記案内孔の前記底面が前記案内部の端面に当接した状態、及び/又は前記シリンダの前記内端面と前記プランジャの前記受圧面とが当接した状態で、前記可動刃が所望の揺動範囲の一方の揺動限に位置するように構成されたものとする。その上で、その緯糸切断装置が、前記往復動に伴って前記案内孔の前記底面と前記案内部の前記端面との間に生じる空間と前記プランジャの外部とを連通させるように形成された連通路を有するものとし、その連通路を、前記往復動に伴う前記空間の容積変化と該容積変化によって前記空間に流入する空気の量との関係で前記空間が負圧状態となるように形成されたものとしても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明による緯糸切断装置によれば、プランジャがその内部に形成された案内孔において案内部によって往復動を摺動案内されるため、プランジャが自身を収容するシリンダに対しその外周面で摺動案内されるようにプランジャ及びシリンダを構成する必要が無い。したがって、そのような緯糸切断装置によれば、プランジャを含むシリンダの部分の構成を、プランジャの外周面がシリンダの内周面に当接しないようなものとすることが可能である。そして、緯糸切断装置をそのように構成することで、プランジャの往復動に伴って発生する摩耗は、プランジャと案内部との間でのみ発生することとなる。それにより、その摩耗の発生に伴ってプランジャと共に交換される部品は、シリンダの内周面を含むカッタホルダではなく、その内周面とは別に設けられる案内部となるため、その緯糸切断装置を使用する上での保守コストを抑えることができる。
【0016】
また、本発明による緯糸切断装置を、プランジャの往復動に伴ってプランジャ内に前記のような空間が生じると共にその往復動に伴いその空間が負圧状態となるように前記のような連通路を有するものとすることにより、そのプランジャの長寿命化を図ることができる。詳しくは、可動刃が所望の揺動範囲の一方の揺動限に位置するときの位置からプランジャが変位するのに伴い、プランジャ内の空間の容積が変化する。そして、その容積変化に伴って連通路からその空間内へ空気が流入するが、連通路が前記のように形成されていることから、その空間内は負圧状態となる。その結果として、前記一方の揺動限から他方の揺動限に可動刃が達したときにプランジャにかかる衝撃が小さくなるため、プランジャの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明が前提とする緯糸切断装置を備える織機の一例を示す概略図。
【
図2】本発明が前提とする緯糸切断装置の一例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、
図1~4に基づき、本発明による緯糸切断装置の一実施例を説明する。なお、本実施例において、その緯糸切断装置10は、タックインヘッド5に付設され、所定の長さの緯糸がタックインされるように緯入れされた緯糸を切断する緯糸切断装置10であるものとする。
【0019】
図1に示すように、本実施例において、織機1は、織幅方向に関し織布T(経糸列2)に隣接して配置されるタックインヘッド5を備えている。なお、そのタックインヘッド5は、緯入れされた緯糸の端部を経糸開口内へ空気噴射で折り返す形式のものである。また、本実施例において、そのタックインヘッド5を含むタックイン装置4は、揺動する筬3との干渉を回避するようにタックインヘッド5を織機1の前後方向に往復運動駆動する形式のものである。そこで、そのタックインヘッド5は、織機1上に備えられた支持軸6に一端側で揺動可能に支持された揺動アーム7の他端側に対し取り付けられている。その上で、そのタックイン装置4は、揺動アーム7が駆動機構(図示略)によって揺動駆動されることにより、タックインヘッド5が往復運動駆動される構成となっている。因みに、その揺動アーム7を支持している支持軸6は、織機1上で織幅方向に延在するように設けられたテンプルバー8上に立設された支持機構9によって支持されている。
【0020】
その上で、緯糸切断装置10は、その揺動アーム7の前記他端側に対しタックインヘッド5と共に支持されている。具体的には、緯糸切断装置10は、固定刃12及び可動刃13を支持する基体としてのカッタホルダ14を含み、そのカッタホルダ14において揺動アーム7に対し取り付けられている。そのカッタホルダ14について、より詳しくは、カッタホルダ14は、板状に形成されると共にその板厚方向に見て一方向に長い取付部14aと、その取付部14aの長手方向における一端側に設けられたシリンダ形成部14bとから成っている。
【0021】
また、そのシリンダ形成部14bは、外観的に略直方体形状に形成されると共に、プランジャ18を収容するシリンダ孔14cを有している。なお、そのシリンダ孔14cは、その中心線CLの方向(中心線方向)をシリンダ形成部14bの長手方向(側面の長辺方向/以下、単に「長辺方向」と言う。)に一致させると共に、シリンダ形成部14bの前記長辺方向における両側の端面のうちの一方の端面にのみ開口して前記長辺方向に延在するように形成されている。
【0022】
そして、そのカッタホルダ14において、取付部14aとシリンダ形成部14bとは、シリンダ形成部14bの前記長辺方向と取付部14aの板幅方向とを略一致させた状態で一体的に形成されている。但し、取付部14aとシリンダ形成部14bとは、取付部14aの一方の板面に対しシリンダ形成部14bの1つの側面を合わせたような位置関係となっている。すなわち、取付部14aは、シリンダ形成部14bの前記長辺方向に見て、シリンダ孔14cの中心よりもシリンダ形成部14bにおける1つの側面側に位置している。
【0023】
また、カッタホルダ14に支持される固定刃12及び可動刃13について、固定刃12は、板状の刃体であって、緯糸を切断するための刃先12a1が形成された刃部12aと、固定刃12をカッタホルダ14に取り付けるための基部12bであって刃部12aと一体的に形成された基部12bとで構成されている。なお、その固定刃12は、基部12bと刃部12aとで略L字形を成すように形成されている。また、その固定刃12において、刃部12aにおける刃先12a1は、L字形を成す固定刃12の内側となる端縁に形成されている。
【0024】
その上で、固定刃12は、その基部12bにおいて、取付部14aにおける前記一方の板面に対し固定されている。但し、その取付部14aに対する固定は、刃部12a(刃先12a1)の延在方向と取付部14aの長手方向とが略直交すると共に、刃先12a1が取付部14aの他端側を向くような向きで行われている。その結果として、その緯糸切断装置10においては、固定刃12の刃部12a(刃先12a1)の延在方向とシリンダ形成部14bの前記長辺方向とが略一致すると共に、固定刃12が刃部12aにおける刃先12a1側とは反対側の端縁でシリンダ形成部14bと対向する状態となっている。
【0025】
なお、その緯糸切断装置10においては、前記のようにカッタホルダ14に対し固定刃12が取り付けられた状態で、固定刃12における基部12bと刃部12aとの境界付近において固定刃12の板厚方向に突出するようなかたちで枢軸15が設けられている。
【0026】
また、可動刃13は、同じく板状の刃体であって、その略中央においてその板厚方向に貫通するように形成された貫通孔(第1の貫通孔/図示略)を有している。さらに、可動刃13は、その第1の貫通孔よりも一端側に延在する部分が刃先13a1を有する刃部13aとなるように形成されている。その上で、可動刃13は、第1の貫通孔に枢軸15が挿通されるかたちで、枢軸15によって揺動可能に支持されている。但し、その支持状態において、可動刃13は、その第1の貫通孔に対する刃部13aの延在方向を枢軸15に対する固定刃12における刃部12aの延在方向に合わせると共に、刃部13aにおける刃先13a1が固定刃12側を向く状態とされる。
【0027】
さらに、可動刃13は、その第1の貫通孔よりも他端側に延在する部分13bにも、その板厚方向に貫通するように形成された貫通孔(第2の貫通孔/図示略)を有している。なお、その第2の貫通孔は、その第1の貫通孔から離間した他端の端縁側に形成されている。
【0028】
また、緯糸切断装置10は、可動刃13を揺動させるためのシフトレバー16を有している。そのシフトレバー16は、円板状の部分16aに対し半径方向に突出するように形成された2つの突出部16b,16cを有するレバー状の部材である。すなわち、シフトレバー16は、その2つの突出部16b,16cのうちの一方の突出部16bがレバーの一端部に相当すると共に、他方の突出部16cがレバーの他端部に相当するように形成された部材である。さらに、そのシフトレバー16には、その円板状の部分16aの中央において板厚方向に貫通するように形成された貫通孔(第3の貫通孔)16a1を有している。また、その一端部16bにも、貫通孔(第4の貫通孔)16b1が形成されている。なお、そのシフトレバー16において、一端部16bと他端部16cとは、その延在方向(突出方向)が略直交するように形成されている。
【0029】
そして、そのシフトレバー16は、前記した第3の貫通孔16a1に枢軸15が挿通されるかたちで、枢軸15によって揺動可能に支持されている。さらに、シフトレバー16は、その一端部16bにおいて可動刃13と連結されている。より詳しくは、シフトレバー16の一端部16bに形成された第4の貫通孔16b1に対し連結軸17が嵌挿される。その上で、その連結軸17が可動刃13の前記他端側に形成された第2の貫通孔に嵌挿されると共にその嵌挿状態が固定される(抜け止め状態とされる)ことで、シフトレバー16の一端部16bと可動刃13の前記他端側とが連結され、シフトレバー16が可動刃13に対し連結された状態となっている。
【0030】
但し、前記したシフトレバー16の支持は、シフトレバー16が可動刃13に対し連結された状態でそのレバーの他端部16cがシリンダ形成部14b側に向けて延在するようなかたちで行われている。すなわち、前記のようにシフトレバー16が枢軸15に支持されると共に可動刃13に連結された状態で、シフトレバー16における他端部16cは、カッタホルダ14におけるシリンダ形成部14bに向けて延在している。また、その他端部16cは、その状態においてシリンダ形成部14bにおけるシリンダ孔14c内まで延在するような長さ寸法を有している。
【0031】
一方で、そのシリンダ形成部14bには、シリンダ孔14cと外部とを連通させる孔であって、前記した1つの側面とは反対側の側面及び固定刃12と対向する側面に開口する開口部14dが形成されている。したがって、前記のようにシフトレバー16が支持された状態では、緯糸切断装置10は、シフトレバー16における他端部16cが前記の開口部14dからシリンダ孔14c内へ侵出した状態となっている。
【0032】
なお、その緯糸切断装置10において、可動刃13及びシフトレバー16は前記のように板厚方向において固定刃12の位置から突出する枢軸15に支持されるが、その支持は、枢軸15の突出方向において可動刃13、シフトレバー16の順で行われている。その上で、シフトレバー16は、その板厚方向に関し、可動刃13と対向する板面の位置がシリンダ形成部14bにおけるシリンダ孔14cの中心の位置に略一致する配置となっている。さらに、そのシフトレバー16において、他端部16cは、その先端側の端縁がシリンダ孔14cの中心線CLを越えるように延在している。
【0033】
また、緯糸切断装置10は、シフトレバー16の他端部16cとシリンダ形成部14bのシリンダ孔14c内に設けられるプランジャ18とが係合するように構成されている。その構成について、詳しくは、以下の通りである。但し、本実施例では、プランジャ18は、単一の部材で構成されており、シフトレバー16の他端部16cに係合するための溝部18eを有しているものとする。
【0034】
プランジャ18は、略円柱状に形成された軸状の部材である。また、そのプランジャ18は、その外径がシリンダ孔14cの内径よりも若干小さくなるように形成されている。さらに、そのプランジャ18には、前記した係合するための部分である溝部18eが形成されている。なお、その溝部18eは、プランジャ18の外周面18cに開口し、その溝部18eの内側面18e1,18e1がプランジャ18の軸線方向と直交するように形成されている。
【0035】
その上で、プランジャ18は、その溝部18eの底面18e2がシフトレバー16の板面と平行を成す向きで、シリンダ孔14c内に収容されている。そして、そのプランジャ18とシフトレバー16とは、シフトレバー16の他端部16cがプランジャ18の溝部18eに挿入されていると共に、その他端部16cの両側面16c1,16c1が溝部18eの内側面18e1,18e1に当接するかたちで係合した状態とされる。したがって、その溝部18eの溝幅(内側面18e1,18e1間の間隔)は、シフトレバー16の他端部16cの板幅(両側面16c1,16c1の間隔)と略一致する大きさとなっている。
【0036】
さらに、その溝部18eは、溝部18eの底面18e2がプランジャ18の軸線付近に位置するような深さに形成されている。それにより、プランジャ18とシフトレバー16とは、前記のように係合した状態で、シフトレバー16の板厚方向に関し、溝部18eの底面18e2の位置とシフトレバー16における可動刃13側の板面の位置とを略一致させた状態となっている。但し、その溝部18eは、プランジャ18の軸線方向に関し、前記のようにプランジャ18とシフトレバー16とが係合した状態でもプランジャ18の往復動が許容される位置に形成されている。さらに、プランジャ18は、その軸線方向において、その両端面のうちの一方の端面18aがシリンダ孔14cの底面14c1に当接した状態で、その一方の端面18aとは反対側の他方の端面18bがシリンダ形成部14bの開口部14dよりもシリンダ孔14cの開口側に位置するような長さ寸法を有している。
【0037】
なお、カッタホルダ14のシリンダ形成部14bには、シリンダ孔14cを閉塞するようにして蓋部材19が取り付けられている。より詳しくは、その蓋部材19は、略円柱状の蓋部19aを有しており、その蓋部19aがシリンダ形成部14bに取り付けられることでシリンダ孔14cを閉塞している。なお、その蓋部19aは、その軸線方向における一端側の部分がシリンダ孔14cよりも大径のフランジ部19bとなっており、また、他端側の部分が外周面に雄ネジが形成された雄ネジ部19cとなるように形成されている。一方で、シリンダ孔14cには、その開口側の部分の内周面14c3に雌ネジが形成されている。その上で、蓋部材19は、蓋部19aの雄ネジ部19cにおいてシリンダ孔14cに螺挿され、フランジ部19bがシリンダ形成部14bに当接した状態となるまでねじ込まれた状態でシリンダ形成部14bに対し取り付けられている。因みに、蓋部材19にはフランジ部19bの端面19b1に開口するように六角穴19dが形成されており、その六角穴19dに工具を差し込んで前記のねじ込み操作が行われる。
【0038】
そして、その蓋部材19における蓋部19aとシリンダ形成部14bとで緯糸切断装置10におけるシリンダ20が形成されている。その上で、緯糸切断装置10は、プランジャ18を往復動させるためにそのシリンダ20内に圧縮空気を供給する空気供給装置21aを含む空気供給機構21を備えている。その空気供給機構21について、詳しくは、以下の通りである。
【0039】
先ず、カッタホルダ14における取付部14aは、その前記一端側の部分の前記板幅方向における寸法が前記他端側の部分の前記板幅方向における寸法よりも大きくなるように構成されている。なお、前記一端側の部分は、前記のように取付部14aとシリンダ形成部14bとが一体的に形成されたカッタホルダ14において、前記板幅方向に関し、シリンダ形成部14bにおけるシリンダ孔14cの存在範囲を包含する範囲に亘って存在する大きさとなっている。また、前記他端側の部分は、前記板幅方向に関し前記一端側の部分の中央寄りに形成されている。したがって、その取付部14aは、前記一端側の部分において、前記板幅方向において前記他端側の部分に対し両側に膨出するように形成されてる。
【0040】
その上で、カッタホルダ14は、取付部14aにおける前記した両側の膨出する部分(膨出部)の端面に開口すると共にシリンダ孔14cに連通するように形成された2つの空気流路14e,14fを有している。なお、その2つの空気流路14e,14fのうちの一方の空気流路14eは、シリンダ孔14cの底面14c1に開口するように形成されている。それに対し、他方の空気流路14fは、蓋部材19における蓋部19a(蓋部19aによって形成されるシリンダ20の内端面19c1)の近傍においてシリンダ孔14cに連通するように形成されている。
【0041】
また、空気供給装置21aは、織機1のフレーム(図示略)に対し固定されるかたちで織機1上に設けられている。その上で、その空気供給装置21aとカッタホルダ14(シリンダ20)とが、チューブ等の可撓性を有する供給管21b,21bを介して接続されている。なお、供給管21b,21bとカッタホルダ14との接続は、取付部14aにおける前記膨出部に取り付けられたニップル等の管継手21c,21cを介して行われている。そして、そのようにカッタホルダ14に接続される供給管21b,21b、空気供給装置21a等で空気供給機構21が構成されている。
【0042】
その上で、以上のように構成された緯糸切断装置10によれば、その空気供給機構21によって各空気流路14e,14fからシリンダ20内に圧縮空気を供給することで、プランジャ18がシリンダ20内を往復動する。より詳しくは、前記一方の空気流路14eからシリンダ20内へ圧縮空気が供給されることで、プランジャ18における前記一方の端面18aが受圧面(一方の受圧面)としてその圧力を受け、それによってプランジャ18が蓋部19a側へ向けて往動する。また、前記他方の空気流路14fからシリンダ20内へ圧縮空気が供給されることで、プランジャ18における前記他方の端面18bが受圧面(他方の受圧面)としてその圧力を受け、それによってプランジャ18がシリンダ孔14cの底面14c1側へ向けて複動する。そして、そのプランジャ18の往復動に伴い、プランジャ18と係合しているシフトレバー16が揺動駆動される。それにより、そのシフトレバー16と連結している可動刃13が、所望の揺動範囲に亘って揺動駆動される。
【0043】
以上のような緯糸切断装置10において、本発明では、その緯糸切断装置は、プランジャを摺動案内する案内部を備えている。なお、本実施例では、その案内部19eは、蓋部材19の一部として蓋部材19に備えられたものとする。その案内部19eについて、詳しくは、以下の通りである。
【0044】
先ず、蓋部材19は、その蓋部19aにおける雄ネジ部19cの端面(シリンダ20の内端面となる面)19c1から蓋部19aの軸線方向に延出するように形成された棒状の延出部19eを有している。なお、その延出部19eは、円柱状(丸棒状)に形成されると共に、その軸線方向に見てその軸心が蓋部19aの軸心と一致する位置に形成されている。さらに、延出部19eは、前記のように蓋部材19がシリンダ形成部14bに対し取り付けられた状態において、その端面19e1がシリンダ20の内端面19c1とシリンダ孔14cの底面14c1との略中間に位置するような長さ寸法を有している。
【0045】
一方、プランジャ18には、前記他方の受圧面18bにのみ開口する孔であって延出部19eが挿入される挿入孔18fが形成されている。なお、その挿入孔18fは、その中心線の方向に見てその中心がプランジャ18の軸心と一致する位置に形成されている。さらに、その挿入孔18fは、延出部19eが挿入された状態で、その内周面18f2と延出部19eの外周面19e2とが摺接するような孔径に形成されている。
【0046】
その上で、緯糸切断装置10においては、プランジャ18は、前記のようにシリンダ20内に収容された状態で、蓋部材19における延出部19eが挿入孔18fに挿入され、その延出部19eにおいて支持されている。なお、その状態において、プランジャ18の外周面18cとシリンダ孔14cの内周面14c2との間には若干の隙間が形成されている。また、その状態において、挿入孔18fは、シリンダ孔14cの中心線方向(シリンダ20の長手方向)と平行を成した状態となっている。さらに、挿入孔18fは、前記したシリンダ20内でのプランジャ18の往復動を阻害しないように、プランジャ18がシリンダ孔14cの底面14c1に当接した状態において、その挿入孔18fの底面18f1と延出部19eの端面19e1とが離間した状態となるような深さ(プランジャ18の軸線方向における寸法)に形成されている。
【0047】
そして、そのように構成された緯糸切断装置10においては、そのプランジャ18は、前記のように挿入孔18fにおいて蓋部材19における延出部19eに支持された状態でシリンダ20の長手方向に往復動可能となっており、その往復動が延出部19eによって摺動案内されるようになっている。したがって、その緯糸切断装置10においては、蓋部材19における延出部19eが本発明で言う「案内部」に相当し、プランジャ18における挿入孔18fが「案内孔」に相当する。
【0048】
なお、前記した挿入孔(案内孔)18fの深さは、その案内孔18fの底面18f1と案内部19eの端面19e1とが当接した状態で、プランジャ18における前記他方の受圧面18bが前記他方の空気流路14fよりもシリンダ形成部14bの開口部14d側に位置するようなものとなっている。それにより、緯糸切断装置10は、プランジャ18によって前記他方の空気流路14fが塞がれないように、蓋部19a側へ向けたプランジャ18の変位が所定の位置において案内部19eにより規制される構成となっている。
【0049】
また、蓋部材19には、案内部19eの軸線方向に貫通すると共にその軸線方向に見て中心を案内部19eの軸心に一致させた貫通孔19fが形成されている。したがって、プランジャ18の往復動に伴って案内孔18fの底面18f1と案内部19eの端面19e1との間に生じる空間(プランジャ18内の空間)22は、その貫通孔19fを介してシリンダ20の外部(プランジャ18の外部)と連通している。よって、その貫通孔19fは、「連通路」として機能している。それにより、シリンダ20内でプランジャ18が往復動する際の空間22の容積変化に伴い、その連通路19fを通しての空間22への空気の流入及び空間22からの空気の流出が行われる。因みに、その容積変化を生じるプランジャ18の往復動は、織機1の1サイクル毎に1回の割合で行われる。
【0050】
但し、その連通路19fの径は、プランジャ18内における空間22の前記した容積変化の変化率(単位時間当りの変化量)との関係で、シリンダ孔14cの底面14c1側へのプランジャ18の変位に伴ってその連通路19fから流入する空気量が、空間22を負圧状態とする程度の量である大きさとなっている。それにより、前記複動時には、プランジャ18内の空間22が負圧状態となる。なお、その構成によれば、前記往動時には、プランジャ18内の空間22は正圧状態となる。
【0051】
以上のように構成された緯糸切断装置10において、プランジャ18が前記一方の受圧面18aでシリンダ孔14cの底面14c1に当接した状態では、可動刃13が前記した所望の揺動範囲における一方の揺動限に位置し、可動刃13と固定刃12とから成るカッタ11が最も開いた状態となっている。その状態で空気供給機構21によって前記一方の空気流路14eからシリンダ20内への圧縮空気の供給が開始されると、プランジャ18の前記一方の受圧面18aに対しその圧縮空気の圧力が作用し、それによってプランジャ18の前記往動が開始される。因みに、その圧縮空気の圧力を受けるプランジャ18の前記一方の受圧面18aには凹部18dが形成されており、前記往動の開始時においては、プランジャ18は、その凹部18dで圧縮空気の圧力を受ける。
【0052】
その後、プランジャ18は、その案内孔18fで案内部19eにより案内されつつ蓋部19a側へ向けて変位し、その案内孔18fの底面18f1が案内部19eの端面19e1に当接することで、その変位が停止する。そして、その蓋部19a側へのプランジャ18の変位に伴い、可動刃13が前記した揺動範囲における他方の揺動限に向けて揺動し、それにより、カッタ11による緯糸の切断動作が行われる。
【0053】
次いで、空気供給機構21による前記一方の空気流路14eからの圧縮空気の供給が停止されると共に、前記他方の空気流路14fからシリンダ20内への圧縮空気の供給が開始される。それにより、プランジャ18が前記他方の受圧面18bにおいて圧縮空気の圧力を受けた状態となり、前記のように停止した位置からのプランジャ18の前記複動が開始される。そして、プランジャ18は、前記のように案内部19eに案内されつつシリンダ孔14cの底面14c1側へ向けて変位し、前記一方の受圧面18aがその底面14c1に当接することでその変位が停止する。そして、その結果として、カッタ11が再び最も開いた状態となる。
【0054】
このように、その緯糸切断装置10によれば、シリンダ20内でのプランジャ18の往復動時における摺動案内が、一般的なエアシリンダ等のようにプランジャ18の外周面18cではなく、そのプランジャ18の内側(案内孔18f)でプランジャ18を支持する案内部19eのみによって行われる。それにより、カッタホルダ14におけるシリンダ孔14cの内周面14c2(シリンダ形成部14b)には、その摺動案内に伴って摩耗が発生しない。また、その摺動案内に伴って案内部19eには摩耗が発生するが、前記のようにその案内部19eはシリンダ形成部14b(カッタホルダ14)に対し着脱可能な蓋部材19に備えられている。したがって、摩耗部分の交換にあたっては、カッタホルダ14はそのままで蓋部材19の交換のみで済むため、緯糸切断装置10の保守コストを抑えることができる。
【0055】
また、プランジャ18の前記往動時においては、前記他方の受圧面18bと蓋部19aの端面(シリンダ20の内端面)19c1との間に存在していた空気はプランジャ18とシリンダ孔14cとの間の前記隙間を通って外部へ放出され、プランジャ18内の空間22の空気は連通路19fを通って外部へ放出されるが、前述のようにプランジャ18内の空間22は前記往動に伴って正圧状態となる。また、前記複動時においては、前記一方の受圧面18aとシリンダ孔14cの底面14c1との間に存在していた空気は前記隙間を通って外部へ放出され、外部の空気が連通路19fを通ってプランジャ18内の空間22へ流入するが、前述のようにプランジャ18内の空間22は前記複動に伴って負圧状態となる。それにより、プランジャ18の前記往動時における案内部19eの端面19e1に対するプランジャ18の衝突時や前記複動時におけるシリンダ孔14cの底面14c1に対するプランジャ18の衝突時の衝撃が緩和されるため、プランジャ18の長寿命化を実現することができる。
【0056】
なお、本発明は、以上で説明した実施例に限定されるものではなく、以下(1)~(6)のように変形させた態様でも実施することができる。
【0057】
(1)プランジャの往復動を案内するための案内部及びプランジャにおける案内孔について、前記実施例では、案内部19eは、円柱状に形成されており、案内孔18fは、その内周面18f2と案内部19eの外周面19e2とが摺接するような孔径に形成されている。すなわち、前記実施例では、案内部19eの断面形状及び案内孔18fの孔形状は、いずれも円形状(略真円形状)に形成されている。しかし、本発明では、案内部の断面形状及び案内孔の孔形状は、そのような円形状に限らず、少なくとも一方の形状が非真円形状であっても良い。
【0058】
例えば、案内部の断面形状及び案内孔の孔形状は、その両方共が同形の楕円形状もしくは多角形状(四角形、正六角形等)としても良い。また、そのように両方が同形状であるものにも限らず、例えば、案内孔の孔形状を前記実施例と同様に略真円形状とした上で、案内部の断面形状を、外周の2以上の点で案内孔の内周面と接する楕円形状もしくは多角形状としても良い。なお、その場合、接触面積をより大きくするために、案内部の外周面における案内孔の内周面と接触する部分を、案内孔の内周面と同じ曲率の円弧面とする方が好ましい。さらには、そのように両方の形状が異なる場合であっても、一方が略真円形状に形成されているものにも限られず、例えば、案内孔の孔形状を楕円形状とした上で、案内部の断面形状を外周の2以上の角で案内孔の内周面と接する多角形状としても良い。
【0059】
なお、前記のように案内部の断面形状と案内孔の孔形状とを異ならせている構成の場合には、案内部の外周面周りにおいて案内孔の内周面との間に複数の空間が存在することとなる。そして、その空間は、プランジャの往復動に伴って案内部の端面と案内孔の底面との間に生じる空間に連通すると共に、プランジャと蓋部との間の空間(プランジャの外部)に連通している。したがって、その案内部周りの複数の空間が、連通路として機能し得るため、その構成の場合には、前記実施例のように案内部(蓋部材)に対し連通路として機能する貫通孔を設けなくても良い。
【0060】
一方で、前記のように案内部の断面形状と案内孔の孔形状とが同形状である構成の場合には、前記実施例のように案内部に貫通孔を形成し、その貫通孔が連通路として機能するようにしても良い。しかし、前記実施例やこの構成の場合のように、案内部の断面形状と案内孔の孔形状とが同形状である場合において、連通路は、そのような案内部に形成された貫通孔に限らず、軸線方向に延在すると共に外周面に開口するようにして案内部に形成された溝、及び案内孔の中心線の方向に延在すると共に案内孔の内周面に開口するようにしてプランジャに形成された溝の少なくとも一方であっても良い。また、そのように両方が同形状である場合において、連通路は、案内孔の中心線の方向における最も案内孔の底面寄りの位置において案内孔の内周面に開口するようにしてプランジャに形成された貫通孔であっても良い。
【0061】
その上で、以上で説明した連通路について、その連通路は、前記実施例と同様にプランジャの前記複動に伴ってその連通路からプランジャ内の空間へ流入する空気量がその空間を負圧状態とする程度の量となるように形成されたものとするのが好ましい。但し、本発明においては、連通路は、前記複動に伴ってプランジャ内の空間が負圧状態となるように形成されたものに限らず、前記複動に伴うプランジャ内における空間の容積変化分の空気が抵抗無くその空間に流入するように形成されたものであっても良い。
【0062】
(2)シフトレバーを揺動させる構成要素としてのプランジャについて、前記実施例では、プランジャ18は、単一の部材で構成されると共に溝部18eを有しており、その溝部18eにおいてシフトレバー16と係合している。しかし、本発明においては、プランジャは、そのような単一の部材で成るものに限らず、シリンダ孔の中心線方向におけるシフトレバーの他端部の両側に配置された2つの部材(プランジャ構成部材)によって構成されるものであっても良い。
【0063】
具体的には、プランジャをそれぞれが単一の円柱状の部材から成る2つのプランジャ構成部材で構成した上で、その2つのプランジャ構成部材を、シリンダ内において、シフトレバーの他端部の両側に配置する。そして、その2つのプランジャ構成部材によってシフトレバーの他端部を挟んだ状態とすることで、そのプランジャがシフトレバーと係合した状態とする。
【0064】
なお、そのように2つのプランジャ構成部材でプランジャを構成する場合、その両プランジャ構成部材のそれぞれが案内部によって往復動を摺動案内されるようにする必要がある。そこで、例えば、両プランジャ構成部材を、前記実施例のプランジャ18と同様に、有底の案内孔が形成されたものとする。その上で、その一方のプランジャ構成部材の往復動を摺動案内する構成は前記実施例と同じ構成とし、他方のプランジャ構成部材の往復動を摺動案内する構成については、その一方のプランジャ構成部材の往復動を摺動案内する構成と同様の構成が採用されるものとすれば良い。
【0065】
その他方のプランジャ構成部材の往復動を摺動案内する構成について、具体的には、シリンダ形成部において、シリンダ孔を、シリンダ形成部の前記長辺方向に貫通するように形成されたものとする。また、前記実施例の蓋部材19と同様に構成された蓋部材を、シリンダ形成部の前記長辺方向において、前記一方のプランジャ構成部材の往復動を摺動案内する蓋部材とは反対側でそのシリンダ孔を閉塞するようにシリンダ形成部に取り付ける。その上で、そのようにシリンダ形成部に取り付けられた蓋部材における案内部により、前記他方のプランジャ構成部材が、その案内孔において案内されるものとする。なお、その構成においては、前記一方の空気流路は、前記他方の空気流路と同様にその蓋部材における蓋部の近傍においてシリンダ孔に連通するように形成すれば良い。
【0066】
また、プランジャが2つのプランジャ構成部材で構成される場合においては、その両プランジャ構成部材が共通の案内部によって案内される構成としても良い。具体的には、シリンダ孔を前記実施例と同じく有底の孔とした上で、そのシリンダ孔を前記実施例と同様に蓋部材で閉塞する。但し、その蓋部材における案内部は、シリンダ内において、シフトレバーの他端部が存在する位置よりもシリンダ孔の底面側まで延在するような長さ寸法を有しているものとする。
【0067】
また、2つのプランジャ構成部材について、シフトレバーの他端部に対し蓋部側に配置されるプランジャ構成部材を、その案内孔が軸線方向に貫通するように形成されたものとする。一方、シリンダ孔の底面側に配置されるプランジャ構成部材については、その案内孔は、例えば、前記と同様に有底の孔とする。その上で、蓋部側のシリンダ構成部材をその案内孔に案内部が挿通された状態で配置すると共に、底面側のシリンダ構成部材をその案内孔に案内部が挿入された状態で配置し、両プランジャ構成部材間にシフトレバーの他端部を位置させる、といった構成が考えられる。なお、案内部について、前記したその長さ寸法は、その端面が底面側のプランジャ構成部材の案内孔の底面に当接した状態で、可動刃が前記他方の揺動限に位置するような長さ寸法とされる。
【0068】
また、そのように2つのプランジャ構成部材が単一の案内部により案内される構成において、底面側のプランジャ構成部材は、蓋部側のプランジャ構成部材と同様に、その案内孔が貫通孔として形成されたものであっても良い。
【0069】
なお、それらの構成の場合、シリンダ内でのシフトレバーの存在範囲を案内部が通る構成となるため、案内部及び/又はシフトレバーを両者が干渉しないように構成されたものとする必要がある。その構成としては、例えば、案内部におけるシフトレバーと重複する位置にシフトレバーの揺動を許容する溝を形成する等が考えられる。
【0070】
また、それらの構成の場合、前記往動時における蓋部側のプランジャ構成部材の変位の停止は、シリンダの内端面(蓋部の端面)とそのプランジャ構成部材の受圧面との当接によって為される。その場合、前記他方の空気流路が前記実施例のような位置に形成されていると、その空気流路からの圧縮空気がそのプランジャ構成部材の外周面に向けて供給されてしまうため、前記他方の空気流路は、例えば、蓋部の端面に開口するように形成すれば良い。また、前記のように底面側のプランジャ構成部材における案内孔を貫通孔とする構成の場合には、前記一方の空気流路は、例えば、シリンダ孔の底面においてその底面側のプランジャ構成部材が当接する部分に開口するように形成すれば良い。
【0071】
(3)プランジャを摺動案内する案内部について、前記実施例では、その案内部19eは、蓋部において軸線方向に延出するように形成された延出部であって単一の棒状に形成された延出部から成っている。しかし、本発明では、案内部は、そのように単一の延出部から成るものに限らず、蓋部材におけるシリンダ形成部に取り付けられる部分(蓋部)から軸線方向に延出する複数本の延出部によって構成されるものであっても良い。すなわち、その構成の場合には、その複数本の延出部によって案内部が構成されることとなる。
【0072】
また、そのように複数本の延出部によって案内部が構成される場合、それによって摺動案内されるプランジャにおける案内孔は、その延出部の数と同数の孔によって構成されていても良いし、前記実施例と同じく単一の孔で構成されていても良い。但し、そのように案内孔が単一の孔で構成される場合には、複数本の延出部の配置は、その案内孔の内周面に対し全ての延出部が同時に当接するような配置とされる。
【0073】
(4)プランジャを摺動案内する案内部について、前記実施例では、その案内部19eは、シリンダ形成部14bに対し着脱可能な蓋部19aと一体的に形成されている。すなわち、前記実施例では、案内部19eは、蓋部19aを含むと共にシリンダ20の一部を成す蓋部材19の一部として形成されている。しかし、本発明では、案内部は、そのように蓋部材の一部として形成されたものに限らず、蓋部材とは別部材に形成されてシリンダに取り付けられるものであっても良い。
【0074】
より詳しくは、蓋部材は、蓋部のみで構成されたものとする。その上で、案内部に関しては、案内部として機能する棒状の部分(棒状部)を有する部材(案内部形成部材)を蓋部材とは別に設け、その案内部形成部材がシリンダ(蓋部材)に取り付けられる構成が用いられたものであっても良い。
【0075】
そのような構成としては、例えば、蓋部材は、前記のように蓋部のみで構成されると共に、その軸線方向に貫通する孔であって案内部形成部材における前記棒状部が嵌挿される貫通孔が形成されたものとする。また、案内部形成部材は、前記棒状部の一端側に形成されたフランジ部を有しているものとする。その上で、シリンダ形成部に取り付けられた蓋部材の貫通孔に対し案内部形成部材の前記棒状部を外側から嵌挿し、その案内部形成部材をフランジ部において蓋部材に固定することで、案内部形成部材における前記棒状部の蓋部よりも先端側の部分がシリンダ内においてシリンダの長手方向に延在した状態とする。それにより、その前記棒状部におけるシリンダ内で延在する部分が案内部となる。
【0076】
(5)プランジャを往復動させるための構成について、前記実施例では、プランジャ18の前記往動及び前記複動の両方を、プランジャ18の前記一方の受圧面18a及び前記他方の受圧面18bに圧縮空気の圧力を作用させることによって行っている。しかし、本発明では、プランジャの往復動は、そのように行われるものに限らず、シリンダ内において前記一方の受圧面とシリンダ孔の底面との間又は前記他方の受圧面とシリンダの内端面との間にバネ部材を介装し、前記往動及び前記複動の一方をそのバネ部材の付勢力によって行うようにしても良い。
【0077】
(6)本発明が適用される緯糸切断装置について、前記実施例は、織機1の前後方向に往復運動駆動されるタックインヘッド5に付設されてそのタックインヘッド5と共に揺動する緯糸切断装置10に対し、本発明を適用する例となっている。しかし、本発明が適用される緯糸切断装置は、そのような緯糸切断装置に限らず、例えば、織機上において固定配置される一般的なタックインヘッドに付設されるかたちで織機上において固定配置される緯糸切断装置であっても良い。さらに、本発明は、同様に織機上に固定配置される給糸カッタや捨耳カッタに適用することも可能である。
【0078】
また、本発明は、以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 織機
2 経糸列
3 筬
4 タックイン装置
5 タックインヘッド
6 支持軸
7 揺動アーム
8 テンプルバー
9 支持機構
10 緯糸切断装置
11 カッタ
12 固定刃
12a 刃部
12a1 刃先
12b 基部
13 可動刃
13a 刃部
13a1 刃先
13b 他端側に延在する部分
14 カッタホルダ
14a 取付部
14b シリンダ形成部
14c シリンダ孔
14c1 シリンダ孔の底面
14c2 シリンダ孔の内周面
14c3 開口側の部分の内周面
14d 開口部
14e 一方の空気流路
14f 他方の空気流路
15 枢軸
16 シフトレバー
16a 円板状の部分
16a1 第3の貫通孔
16b 一方の突出部(一端部)
16b1 第4の貫通孔
16c 他方の突出部(他端部)
16c1 他端部の側面
17 連結軸
18 プランジャ
18a 一方の端面(一方の受圧面)
18b 他方の端面(他方の受圧面)
18c プランジャの外周面
18d 凹部
18e 溝部
18e1 溝部の内側面
18e2 溝部の底面
18f 挿入孔(案内孔)
18f1 挿入孔(案内孔)の底面
18f2 挿入孔(案内孔)の内周面
19 蓋部材
19a 蓋部
19b フランジ部
19b1 フランジ部の端面
19c 雄ネジ部
19c1 シリンダの内端面(雄ネジ部の端面)
19d 六角穴
19e 延出部(案内部)
19e1 延出部(案内部)の端面
19e2 延出部(案内部)の外周面
19f 貫通孔(連通路)
20 シリンダ
21 空気供給機構
21a 空気供給装置
21b 供給管
21c 管継手
22 プランジャ内の空間
T 織布
CL シリンダ孔の中心線