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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】熱処理装置および熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/324 20060101AFI20230404BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H01L21/324 T
H01L21/30 567
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019038356
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020145216
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】林 恵
(72)【発明者】
【氏名】後藤 茂宏
(72)【発明者】
【氏名】古川 正晃
(72)【発明者】
【氏名】中島 徳市
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-031152(JP,A)
【文献】特表2001-522141(JP,A)
【文献】特開2010-093096(JP,A)
【文献】特開2002-297245(JP,A)
【文献】特開2016-183815(JP,A)
【文献】特表2007-521663(JP,A)
【文献】特開2004-193219(JP,A)
【文献】特開2004-164648(JP,A)
【文献】特開2018-207067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/324
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に熱処理を行う熱処理装置であって、
基板が載置されるプレート部材と、
前記プレート部材上に載置された基板に前記プレート部材を通して熱処理を行う熱処理部と、
前記プレート部材上に基板が載置されていない状態で前記プレート部材の温度を設定された第1の温度から設定された第2の温度へ変更する際の前記熱処理部の動作条件を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された動作条件に従って前記熱処理部を動作させる動作制御部と、
前記プレート部材の温度を検出する温度検出器と、
前記動作条件に従って前記熱処理部が動作する際に前記温度検出器により検出された前記プレート部材の温度の変化が予め定められた基準波形に近づくように、前記記憶部に記憶された動作条件を、前記プレート部材の温度を前記第1の温度から前記第2の温度に変化させた後前記プレート部材の温度を前記第1の温度から前記第2の温度に再度変化させる前に変更する条件変更部とを備える、熱処理装置。
【請求項2】
前記動作条件は、一または複数の制御パラメータの値を含み、
前記条件変更部は、前記検出された温度の変化が前記基準波形に近づくように、前記記憶部に記憶された前記一または複数の制御パラメータのうち少なくとも1つの値を変更する、請求項1記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記熱処理部は、前記プレート部材に対して加熱または冷却を行う第1の状態と前記プレート部材に対して加熱および冷却を行わない第2の状態とに切り替え可能に構成され、
前記一または複数の制御パラメータは、前記熱処理部の前記第1および第2の状態の切替タイミングを含む、請求項2記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記熱処理部は、PID制御が可能に構成され、
前記一または複数の制御パラメータは、前記プレート部材の温度を前記第1の温度から前記第2の温度へ変更するための前記PID制御の比例パラメータ、積分パラメータおよび微分パラメータのうち少なくとも1つを含む、請求項2または3記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記一または複数の制御パラメータは、前記熱処理部の出力の上限を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記条件変更部は、前記プレート部材の温度が前記第1の温度から前記第2の温度へ変化する期間のうち特定時点に前記温度検出器により検出された温度の変化率が、前記基準波形のうち前記特定時点に対応する部分の温度の変化率に近づくように前記動作条件の変更を行う、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記条件変更部は、前記プレート部材の温度が前記第1の温度から前記第2の温度へ変化する期間のうち特定時点に前記温度検出器により検出された温度の値が、前記基準波形のうち前記特定時点に対応する部分の温度の値に近づくように前記動作条件の変更を行う、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記条件変更部は、前記検出された温度の波形に発生する、前記第2の温度に対するオーバーシュート量またはアンダーシュート量が小さくなるように前記動作条件の変更を行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項9】
基板に熱処理を行う熱処理方法であって、
プレート部材上に基板を載置するステップと、
前記載置された基板に前記プレート部材を通して熱処理部による熱処理を行うステップと、
前記プレート部材上に基板が載置されていない状態で前記プレート部材の温度を設定された第1の温度から設定された第2の温度へ変更する際の前記熱処理部の動作条件を記憶部に記憶するステップと、
前記記憶部に記憶された動作条件に従って前記熱処理部を動作させるステップと、
前記プレート部材の温度を温度検出器により検出するステップと、
前記動作条件に従って前記熱処理部が動作する際に前記温度検出器により検出された前記プレート部材の温度の変化が予め定められた基準波形に近づくように、前記記憶部に記憶された動作条件を、前記プレート部材の温度を前記第1の温度から前記第2の温度に変化させた後前記プレート部材の温度を前記第1の温度から前記第2の温度に再度変化させる前に変更するステップとを含む、熱処理方法。
【請求項10】
前記動作条件は、一または複数の制御パラメータの値を含み、
前記動作条件を変更するステップは、前記検出された温度の変化が前記基準波形に近づくように、前記記憶部に記憶された前記一または複数の制御パラメータのうち少なくとも1つの値を変更することを含む、請求項9記載の熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に熱処理を行う熱処理装置および熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等に用いられるFPD(Flat Panel Display)用基板、半導体基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等の各種基板に熱処理を行うために、熱処理装置が用いられている。
【0003】
熱処理装置においては、例えば予め設定された熱処理温度に保持されたプレート部材上で基板が所定時間支持されることにより熱処理が行われる。複数の基板に対して順次熱処理が行われる場合、それらの複数の基板には、共通の熱処理温度が設定されるとは限らない。順次熱処理される2枚の基板について、互いに異なる熱処理温度が設定される場合には、一方の基板の熱処理後他方の基板の熱処理前にプレート部材の温度を変更する必要がある。
【0004】
プレート部材の温度は、種々の方法で変更される。例えば、特許文献1に記載された温度変更システムにおいては、ベークプレート部(プレート部材)に含まれるヒータ層の駆動状態が調整されることにより、当該ベークプレート部の温度を上昇または下降させることが可能となっている。さらに、その温度変更システムにおいては、能動冷却プレートにより冷却された受動冷却プレートが、サーマルパッドを介してベークプレート部に接触することにより、当該ベークプレート部の温度を大きく下降させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5658083号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、熱処理装置においては、プレート部材の温度を変更するための動作条件が変更前後の2つの温度に応じて予め定められている。しかしながら、熱処理装置が設けられる空間の温度または熱処理装置の個体差等によっては、予め定められた動作条件に従って熱処理装置を動作させても、正確な温度変更が困難な場合がある。この場合、プレート部材の温度を正確に変更するために微調整を繰り返すと、温度変更に要する時間が長くなり、熱処理効率が低下する。
【0007】
本発明の目的は、熱処理温度の変更に伴なう熱処理効率の低下を抑制することを可能にする熱処理装置および熱処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)第1の発明に係る熱処理装置は、基板に熱処理を行う熱処理装置であって、基板が載置されるプレート部材と、プレート部材上に載置された基板にプレート部材を通して熱処理を行う熱処理部と、プレート部材上に基板が載置されていない状態でプレート部材の温度を設定された第1の温度から設定された第2の温度へ変更する際の熱処理部の動作条件を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された動作条件に従って熱処理部を動作させる動作制御部と、プレート部材の温度を検出する温度検出器と、動作条件に従って熱処理部が動作する際に温度検出器により検出されたプレート部材の温度の変化が予め定められた基準波形に近づくように、記憶部に記憶された動作条件を、プレート部材の温度を第1の温度から第2の温度に変化させた後プレート部材の温度を第1の温度から第2の温度に再度変化させる前に変更する条件変更部とを備える。
【0009】
その熱処理装置においては、第1の温度に調整されたプレート部材上に基板が載置されることにより、載置された基板に熱処理が行われる。または、第2の温度に調整されたプレート部材上に基板が載置されることにより、載置された基板に熱処理が行われる。複数の基板が順次熱処理されることにより第1の温度に対応する熱処理および第2の温度に対応する熱処理がこの順で行われる。この場合、第1の温度に対応する熱処理後第2の温度に対応する熱処理前にプレート部材の温度を第1の温度から第2の温度に変更する必要がある。
【0010】
第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変更時には、記憶部に記憶された動作条件に従って熱処理部が動作する。このとき、プレート部材の温度の変化が検出され、検出された温度の変化が基準波形に近づくように記憶部に記憶された動作条件が変更される。
【0011】
複数の基板が順次処理されることによりプレート部材の温度が再度第1の温度から第2の温度へ変更される際には、前回の温度変更時に変更された動作条件に従って熱処理部が動作する。それにより、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化が前回の温度変更時に比べて基準波形に近づく。
【0012】
このように、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変更が行われるごとに動作条件が変更されることにより、第1の温度から第2の温度への温度変更時におけるプレート部材の温度変化が漸次適切に修正される。したがって、基板の熱処理温度の変更に伴う熱処理装置の調整時間を適切に短縮することができる。その結果、熱処理温度の変更に伴なう熱処理効率の低下を抑制することが可能になる。
【0013】
(2)動作条件は、一または複数の制御パラメータの値を含み、条件変更部は、検出された温度の変化が基準波形に近づくように、記憶部に記憶された一または複数の制御パラメータのうち少なくとも1つの値を変更してもよい。
【0014】
この場合、一または複数の制御パラメータのうち少なくとも1つの値を変更する簡単な処理で、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化を調整することができる。
【0015】
(3)熱処理部は、プレート部材に対して加熱または冷却を行う第1の状態とプレート部材に対して加熱および冷却を行わない第2の状態とに切り替え可能に構成され、一または複数の制御パラメータは、熱処理部の第1および第2の状態の切替タイミングを含んでもよい。
【0016】
この場合、熱処理部の第1および第2の状態の切替タイミングを変更することにより、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化を大きく調整することができる。
【0017】
(4)熱処理部は、PID制御が可能に構成され、一または複数の制御パラメータは、プレート部材の温度を第1の温度から第2の温度へ変更するためのPID制御の比例パラメータ、積分パラメータおよび微分パラメータのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0018】
この場合、比例パラメータ、積分パラメータおよび微分パラメータの値のうち少なくとも1つを変更することにより、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化を調整することができる。
【0019】
(5)一または複数の制御パラメータは、熱処理部の出力の上限を含んでもよい。
【0020】
この場合、熱処理部の出力の上限を変更することにより、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化を微調整することができる。
【0021】
(6)条件変更部は、プレート部材の温度が第1の温度から第2の温度へ変化する期間のうち特定時点に温度検出器により検出された温度の変化率が、基準波形のうち特定時点に対応する部分の温度の変化率に近づくように動作条件の変更を行ってもよい。
【0022】
この場合、プレート部材の温度の変化率に基づいて、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化が適切に調整される。
【0023】
(7)条件変更部は、プレート部材の温度が第1の温度から第2の温度へ変化する期間のうち特定時点に温度検出器により検出された温度の値が、基準波形のうち特定時点に対応する部分の温度の値に近づくように動作条件の変更を行ってもよい。
【0024】
この場合、プレート部材の温度の値に基づいて、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化が適切に調整される。
【0025】
(8)条件変更部は、検出された温度の波形に発生する、第2の温度に対するオーバーシュート量またはアンダーシュート量が小さくなるように動作条件の変更を行ってもよい。
【0026】
この場合、第2の温度に対するオーバーシュート量またはアンダーシュート量に基づいて、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化が適切に調整される。
【0027】
(9)第2の発明に係る熱処理方法は、基板に熱処理を行う熱処理方法であって、プレート部材上に基板を載置するステップと、載置された基板にプレート部材を通して熱処理部による熱処理を行うステップと、プレート部材上に基板が載置されていない状態でプレート部材の温度を設定された第1の温度から設定された第2の温度へ変更する際の熱処理部の動作条件を記憶部に記憶するステップと、記憶部に記憶された動作条件に従って熱処理部を動作させるステップと、プレート部材の温度を温度検出器により検出するステップと、動作条件に従って熱処理部が動作する際に温度検出器により検出されたプレート部材の温度の変化が予め定められた基準波形に近づくように、記憶部に記憶された動作条件を、プレート部材の温度を第1の温度から第2の温度に変化させた後プレート部材の温度を第1の温度から第2の温度に再度変化させる前に変更するステップとを含む。
【0028】
その熱処理方法においては、第1の温度に調整されたプレート部材上に基板が載置されることにより、載置された基板に熱処理が行われる。または、第2の温度に調整されたプレート部材上に基板が載置されることにより、載置された基板に熱処理が行われる。複数の基板が順次熱処理されることにより第1の温度に対応する熱処理および第2の温度に対応する熱処理がこの順で行われる。この場合、第1の温度に対応する熱処理後第2の温度に対応する熱処理前にプレート部材の温度を第1の温度から第2の温度に変更する必要がある。
【0029】
第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変更時には、記憶部に記憶された動作条件に従って熱処理部が動作する。このとき、プレート部材の温度の変化が検出され、検出された温度の変化が基準波形に近づくように記憶部に記憶された動作条件が変更される。
【0030】
複数の基板が順次処理されることによりプレート部材の温度が再度第1の温度から第2の温度へ変更される際には、前回の温度変更時に変更された動作条件に従って熱処理部が動作する。それにより、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化が前回の温度変更時に比べて基準波形に近づく。
【0031】
このように、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変更が行われるごとに動作条件が変更されることにより、第1の温度から第2の温度への温度変更時におけるプレート部材の温度変化が漸次適切に修正される。したがって、基板の熱処理温度の変更に伴う熱処理装置の調整時間を適切に短縮することができる。その結果、熱処理温度の変更に伴なう熱処理効率の低下を抑制することが可能になる。
【0032】
(10)動作条件は、一または複数の制御パラメータの値を含み、動作条件を変更するステップは、検出された温度の変化が基準波形に近づくように、記憶部に記憶された一または複数の制御パラメータのうち少なくとも1つの値を変更することを含んでもよい。
【0033】
この場合、一または複数の制御パラメータのうち少なくとも1つの値を変更する簡単な処理で、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化を調整することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、熱処理温度の変更に伴なう熱処理効率の低下を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は本発明の一実施の形態に係る熱処理装置の構成を示す模式的側面図である。
図2】複数の基板について順次加熱処理が行われる場合の熱処理プレートの温度変化の一例を示す図である。
図3】複数の設定温度のうち2つの設定温度の組み合わせごとに設定される変更動作条件の一例を示す図である。
図4】低い開始温度から高い目標温度にかけて熱処理プレートの温度を上昇させるための変更動作条件の変更例を説明するための図である。
図5】高い開始温度から低い目標温度にかけて熱処理プレートの温度を下降させるための変更動作条件の変更例を説明するための図である。
図6】設定温度の変更についての実験結果を説明するための図である。
図7図1の制御装置において実行される設定温度変更処理の一例を示すフローチャートである。
図8図1の熱処理装置を備える基板処理装置の一例を示す模式的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態に係る熱処理装置および熱処理方法について図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、基板とは、液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等に用いられるFPD(Flat Panel Display)用基板、半導体基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。以下の説明においては、熱処理装置の一例として基板に加熱処理を行う熱処理装置を説明する。
【0037】
(1)熱処理装置の構成
図1は本発明の一実施の形態に係る熱処理装置の構成を示す模式的側面図である。図1に示すように、熱処理装置100は、熱処理プレート10、能動冷却プレート20、受動冷却プレート30、昇降装置40および制御装置50を含む。
【0038】
熱処理プレート10は、扁平な円柱形状を有する金属製の伝熱プレートであり、平坦な上面および下面を有する。熱処理プレート10の上面は、加熱処理の対象となる基板Wの外径よりも大きい外径を有する。熱処理プレート10の上面には、基板Wの下面を支持する複数のプロキシミティボール等が設けられている。図1では、熱処理プレート10上に載置される基板Wが一点鎖線で示される。
【0039】
熱処理プレート10には、メインヒータ11、ブースターヒータ12および温度センサ19が設けられている。温度センサ19は、熱処理プレート10の上面の温度を検出し、検出した温度に対応する検出信号を後述する温度取得部55へ出力する。
【0040】
メインヒータ11およびブースターヒータ12の各々は、例えばマイカヒータまたはペルチェ素子等で構成される。メインヒータ11およびブースターヒータ12には、発熱駆動部13が接続されている。発熱駆動部13は、例えば熱処理プレート10の温度が予め設定された温度(設定温度)で保持されるようにメインヒータ11を駆動する。また、発熱駆動部13は、例えば熱処理プレート10の温度が短時間で上昇するようにブースターヒータ12を駆動する。
【0041】
能動冷却プレート20は、熱処理プレート10よりも下方の位置で、熱処理プレート10の下面から所定距離、離れるように配置されている。能動冷却プレート20は、熱処理プレート10に向く上面を有する。能動冷却プレート20の上面には、高い熱伝導率を有する熱伝導シート(図示せず)が設けられている。
【0042】
能動冷却プレート20には、冷却機構21が設けられている。冷却機構21は、例えば能動冷却プレート20内に形成される冷却水通路またはペルチェ素子等で構成される。冷却機構21には、冷却駆動部22が接続されている。冷却駆動部22は、能動冷却プレート20の上面の温度が熱処理プレート10の温度よりも低くなるように冷却機構21を駆動する。
【0043】
受動冷却プレート30は、熱処理プレート10と能動冷却プレート20との間の空間で、昇降装置40により昇降可能に支持されている(図1の白抜きの矢印参照)。受動冷却プレート30は、金属製の円板状部材であり、上面および下面を有する。受動冷却プレート30の上面は熱処理プレート10の下面に対向し、受動冷却プレート30の下面は能動冷却プレート20の上面に対向する。受動冷却プレート30の上面には、高い熱伝導率を有する熱伝導シート(図示せず)が設けられている。
【0044】
昇降装置40は、例えばエアシリンダで構成される。昇降装置40には、昇降駆動部41が接続されている。昇降駆動部41は、例えば受動冷却プレート30が能動冷却プレート20に接するように昇降装置40を駆動する。この場合、受動冷却プレート30が能動冷却プレート20により冷却される。また、昇降駆動部41は、例えば受動冷却プレート30が熱処理プレート10に接するように昇降装置40を駆動する。この場合、熱処理プレート10が受動冷却プレート30により冷却される。
【0045】
制御装置50は、発熱駆動部13、冷却駆動部22および昇降駆動部41を含む熱処理装置100の各構成要素の動作を制御する。制御装置50の詳細は後述する。なお、上記の熱処理装置100には、熱処理プレート10と熱処理装置100の外部装置(例えば搬送ロボット)との間で基板Wの受渡を行うための受け渡し機構(図示せず)がさらに設けられている。
【0046】
(2)熱処理装置100における複数の基板Wの熱処理
図1の熱処理装置100においては、複数の基板Wがそれぞれの熱処理の内容に応じた設定温度で順次加熱処理される。図2は、複数の基板Wについて順次加熱処理が行われる場合の熱処理プレート10の温度変化の一例を示す図である。
【0047】
図2に示すグラフにおいては、縦軸が熱処理プレート10の温度を表し、横軸が時間を表す。また、熱処理プレート10の温度変化が太い実線で示される。本例では、28枚の基板Wについて、4枚の基板Wごとに熱処理の内容が変更される。そのため、熱処理プレート10の設定温度は4枚の基板Wごとに変更されている。
【0048】
具体的には、時点t1~t2の期間、時点t5~t6の期間および時点t13~t14の期間の各々において、熱処理プレート10の温度が設定温度90℃に保持された状態で基板Wの加熱処理が行われる。また、時点t3~t4の期間、時点t7~t8の期間および時点t11~t12の期間において、熱処理プレート10の温度が設定温度115℃に保持された状態で基板Wの加熱処理が行われる。さらに、時点t9~t10の期間において、熱処理プレート10の温度が設定温度140℃に保持された状態で基板Wの加熱処理が行われる。
【0049】
設定温度に保持された熱処理プレート10上に未処理の基板Wが載置される際には、例えば図2に白抜きの矢印で示すように、熱処理プレート10の温度はわずかに低下する。その後、熱処理プレート10の温度は、図1のメインヒータ11が継続して駆動されることにより設定温度まで比較的微小時間で復帰する。
【0050】
図2に一点鎖線で取り囲むように設定温度の変更に伴って熱処理プレート10の温度を大きく変化させる場合には、メインヒータ11の出力を調整するのみでは、温度変更を短時間で行うことが難しい場合がある。そのため、本例では、設定温度の上昇時に、変更開始直後からブースターヒータ12が駆動される。また、温度センサ19の検出信号に基づいてメインヒータ11についてのPID(比例積分微分)制御が行われる。さらに、メインヒータ11の出力の上限が調整される。一方、設定温度の下降時に、変更開始直後から熱処理プレート10が受動冷却プレート30により冷却される。また、温度センサ19の検出信号に基づいてメインヒータ11についてのPID制御が行われる。
【0051】
予め定められた複数の設定温度が存在する場合、一の設定温度から他の設定温度まで熱処理プレート10の温度を変更するための熱処理装置100の動作条件はシミュレーションまたは実験等により求めることができる。そこで、熱処理プレート10においては、複数の設定温度のうち2つの設定温度の組み合わせごとに、設定温度の変更時における動作条件(以下、変更動作条件と呼ぶ。)が予め設定されている。
【0052】
図3は、複数の設定温度のうち2つの設定温度の組み合わせごとに設定される変更動作条件の一例を示す図である。以下の説明では、変更前の設定温度を適宜開始温度と呼び、変更後の設定温度を適宜目標温度と呼ぶ。
【0053】
変更動作条件には、加熱停止パラメータの値が含まれる。加熱停止パラメータは、ブースターヒータ12についての制御パラメータであって、加熱を停止すべき熱処理プレート10の温度を示す。換言すれば、加熱停止パラメータの値は、設定温度の変更時(上昇時)にブースターヒータ12が発熱するオン状態からブースターヒータ12が発熱しないオフ状態に切り替わるべきタイミングを示す。図3では加熱停止パラメータが「加熱停止」と表記されている。図3の加熱停止パラメータの値は、目標温度から加熱を停止すべき温度を減算した値で示される。
【0054】
また、変更動作条件には、メインヒータ11についてのPID制御のパラメータの値が含まれる。また、変更動作条件には、メインヒータ11の出力の上限を示す上限パラメータの値が含まれる。図3では上限パラメータが「ヒータ上限」と表記されている。上限パラメータの値は、例えばメインヒータ11の定格出力に対して許容される出力の上限の比率(%)で表される。
【0055】
さらに、変更動作条件には、冷却停止パラメータの値が含まれる。冷却停止パラメータは、昇降装置40についての制御パラメータであって、冷却を停止すべき熱処理プレート10の温度を示す。換言すれば、冷却停止パラメータの値は、設定温度の変更時(下降時)に受動冷却プレート30が熱処理プレート10に接触する接触状態から受動冷却プレート30が熱処理プレート10から離間する非接触状態に切り替わるべきタイミングを示す。図3では冷却停止パラメータが「冷却停止」と表記されている。図3の冷却停止パラメータの値は、冷却を停止すべき熱処理プレート10の温度から目標温度を減算した値で示される。
【0056】
図3の例によれば、開始温度90℃から目標温度115℃への変更に対応する変更動作条件は、加熱停止パラメータ「5」、比例パラメータ「0.2」、積分パラメータ「15」、微分パラメータ「3」および上限パラメータ「80」(%)を含む。また、開始温度115℃から目標温度90℃への変更に対応する変更動作条件は、冷却停止パラメータ「5」、比例パラメータ「0.2」、積分パラメータ「15」、微分パラメータ「3」および上限パラメータ「80」(%)を含む。
【0057】
ところで、熱処理装置100が設けられる空間の温度または熱処理装置100の個体差等によっては、予め設定された変更動作条件が適切であるとは限らない。そこで、本実施の形態では、熱処理プレート10の設定温度が変更されるごとに、その変更時の熱処理プレート10の温度変化が理想的な基準波形に近づくように変更動作条件が変更される。理想的な基準波形は、例えば熱処理プレート10の構成、メインヒータ11およびブースターヒータ12の発熱能力および能動冷却プレート20および受動冷却プレート30の冷却能力に基づいて定められる。
【0058】
図2の例では、例えば時点t2~t3の期間における設定温度の変更時に熱処理プレート10の温度変化に大きなオーバーシュートが発生した場合、当該オーバーシュートが小さくなるように変更動作条件が変更される。その後、時点t6~t7の期間における設定温度の変更時には、変更後の変更動作条件に従って熱処理装置100が動作する。それにより、設定温度の変更に要する時間が、時点t2~t3の期間における設定温度の変更時に比べて短縮される。さらに、時点t6~t7の期間における設定温度の変更時においても、時点t2~t3の期間における設定温度の変更時と同様に、変更動作条件が変更される。それにより、時点t7よりも後の時点で、設定温度90℃から設定温度115℃への変更が生じる場合には、その変更に要する時間がさらに短縮される。
【0059】
また、図2の例では、例えば時点t4~t5の期間における設定温度の変更時に熱処理プレート10の温度変化に大きなアンダーシュートが発生した場合、当該アンダーシュートが小さくなるように変更動作条件が変更される。その後、時点t12~t13の期間における設定温度の変更時には、変更後の変更動作条件に従って熱処理装置100が動作する。それにより、設定温度の変更に要する時間が、時点t4~t5の期間における設定温度の変更時に比べて短縮される。さらに、時点t12~t13の期間における設定温度の変更時においても、時点t4~t5の期間における設定温度の変更時と同様に、変更動作条件が変更される。それにより、時点t13よりも後の時点で、開始温度115℃から目標温度90℃への変更が生じる場合には、その変更に要する時間がさらに短縮される。
【0060】
上記のように、熱処理装置100においては、熱処理プレート10の設定温度が変更されるごとに変更動作条件が変更される。それにより、設定温度の変更に要する時間が順次短縮される。その結果、熱処理温度の変更に伴なう熱処理効率の低下が抑制される。
【0061】
(3)変更動作条件の具体的な変更例
図4は、低い開始温度STから高い目標温度TTにかけて熱処理プレート10の温度を上昇させるための変更動作条件の変更例を説明するための図である。図4の上段のグラフには、設定温度の変更時に検出される熱処理プレート10の温度の変化が太い実線で示される。また、当該設定温度の変更に対応して予め定められた基準波形が一点鎖線で示される。本例では、基準波形に示されるように、時点t20から時点t22にかけて設定温度の変更が行われることが望まれる。
【0062】
変更動作条件を変更するために、時点t20から時点t22までの期間のうち予め定められた特定時点(本例では、時点t20,t22の中間時点)t21における熱処理プレート10の温度の変化率(本例では、上昇速度)が取得される。取得された変化率が、特定時点t21における基準波形の変化率と対比される。また、特定時点t21における熱処理プレート10の温度値が取得され、取得された温度値が、特定時点t21における基準波形の温度値と対比される。さらに、熱処理プレート10の温度のオーバーシュート量OSが取得される。
【0063】
変化率の対比の結果、取得された変化率と基準波形の変化率との差分が、その変化率について予め定められた許容範囲外にある場合には変更動作条件を変更することが望ましい。そこで、変化率の差分が許容範囲外にありかつ取得された変化率の絶対値が基準波形の変化率の絶対値よりも低い場合には、熱処理プレート10に供給される熱量が大きくなるように変更動作条件を変更する必要がある。一方、変化率の差分が許容範囲外にありかつ取得された変化率の絶対値が基準波形の変化率の絶対値よりも高い場合には、熱処理プレート10に供給される熱量が小さくなるように変更動作条件を変更する必要がある。
【0064】
また、温度値の対比の結果、取得された温度値と基準波形の温度値との差分が、その温度値について予め定められた許容範囲外にある場合には変更動作条件を変更することが望ましい。そこで、温度値の差分が許容範囲外にありかつ取得された温度値が基準波形の温度値よりも低い場合には、熱処理プレート10に供給される熱量が大きくなるように変更動作条件を変更する必要がある。一方、温度値の差分が許容範囲外にありかつ取得された温度値が基準波形の温度値よりも高い場合には、熱処理プレート10に供給される熱量が小さくなるように変更動作条件を変更する必要がある。
【0065】
さらに、取得されたオーバーシュート量OSが、オーバーシュート量について予め定められた許容範囲を超える場合には変更動作条件を変更することが望ましい。そこで、オーバーシュート量OSが許容範囲を超える場合には、熱処理プレート10に供給される熱量が小さくなるように変更動作条件を変更する必要がある。
【0066】
図4の中段に、予め設定された変更動作条件に従うブースターヒータ12の状態が示される。本例では、ブースターヒータ12は、時点t20から時点t22にかけてオン状態で維持される。熱処理プレート10に供給される熱量を小さくする場合には、図4に白抜きの矢印a11で示すように、加熱停止パラメータの値を変更することによりブースターヒータ12をオフ状態に切り替えるタイミングを早めればよい。一方、熱処理プレート10に供給される熱量を大きくする場合には、図4に白抜きの矢印a12で示すように、加熱停止パラメータの値を変更することによりブースターヒータ12をオフ状態に切り替えるタイミングを遅くすればよい。
【0067】
図4の下段に、予め設定された変更動作条件に従うメインヒータ11の出力波形が示される。本例では、メインヒータ11は、時点t20から熱処理プレート10の温度を上昇させるために出力を増大させる。その後、変更動作条件に従うPID制御により熱処理プレート10の温度に応じて出力が調整される。熱処理プレート10に供給される熱量を小さくする場合には、図4に白抜きの矢印a13で示すように、例えばPID制御の比例パラメータを大きく変更することによりメインヒータ11の出力波形を全体的に低くすればよい。あるいは、図4に白抜きの矢印a14で示すように、例えば上限パラメータを小さく変更することにより、メインヒータ11の出力の上限を低くすればよい。
【0068】
一方、熱処理プレート10に供給される熱量を大きくする場合には、図4に白抜きの矢印a15で示すように、例えばPID制御の比例パラメータを小さく変更することによりメインヒータ11の出力波形を全体的に高くすればよい。あるいは、図4に白抜きの矢印a16で示すように、例えば上限パラメータを大きく変更することにより、メインヒータ11の出力の上限を高くすればよい。
【0069】
図5は、高い開始温度STから低い目標温度TTにかけて熱処理プレート10の温度を下降させるための変更動作条件の変更例を説明するための図である。図5の上段のグラフには、図4の例と同様に、設定温度の変更時に検出される熱処理プレート10の温度の変化が太い実線で示される。また、当該設定温度の変更に対応して予め定められた基準波形が一点鎖線で示される。本例では、基準波形に示されるように、時点t30から時点t32にかけて熱処理プレート10の温度の変更が行われることが望まれる。
【0070】
変更動作条件を変更するために、時点t30から時点t32までの期間のうち予め定められた特定時点(本例では、時点t30,t32の中間時点)t31における熱処理プレート10の温度の変化率(本例では、下降速度)が取得される。取得された変化率が、特定時点t31における基準波形の変化率と対比される。また、特定時点t31における熱処理プレート10の温度値が取得され、取得された温度値が、特定時点t31における基準波形の温度値と対比される。さらに、熱処理プレート10の温度のアンダーシュート量USが取得される。
【0071】
変化率の対比の結果、変化率の差分が許容範囲外にありかつ取得された変化率の絶対値が基準波形の変化率の絶対値よりも低い場合には、熱処理プレート10から除去される熱量が大きくなるように変更動作条件を変更する必要がある。一方、変化率の差分が許容範囲外にありかつ取得された変化率の絶対値が基準波形の変化率の絶対値よりも高い場合には、熱処理プレート10から除去される熱量が小さくなるように変更動作条件を変更する必要がある。
【0072】
また、温度値の対比の結果、温度値の差分が許容範囲外にありかつ取得された温度値が基準波形の温度値よりも低い場合には、熱処理プレート10から除去される熱量が小さくなるように変更動作条件を変更する必要がある。一方、温度値の差分が許容範囲外にありかつ取得された温度値が基準波形の温度値よりも高い場合には、熱処理プレート10から除去される熱量が大きくなるように変更動作条件を変更する必要がある。
【0073】
さらに、取得されたアンダーシュート量USが、アンダーシュート量について予め定められた許容範囲を超える場合には変更動作条件を変更することが望ましい。そこで、アンダーシュート量USが許容範囲を超える場合には、熱処理プレート10から除去される熱量が小さくなるように変更動作条件を変更する必要がある。
【0074】
図5の中段に、予め設定された変更動作条件に従う受動冷却プレート30の状態が示される。本例では、受動冷却プレート30は、時点t30から時点t32にかけて接触状態で維持される。熱処理プレート10から除去される熱量を小さくする場合には、図5に白抜きの矢印a21で示すように、冷却停止パラメータの値を変更することにより受動冷却プレート30を非接触状態に切り替えるタイミングを早めればよい。一方、熱処理プレート10から除去される熱量を大きくする場合には、図5に白抜きの矢印a22で示すように、冷却停止パラメータの値を変更することにより受動冷却プレート30を非接触状態に切り替えるタイミングを遅くすればよい。
【0075】
図5の下段に、予め設定された変更動作条件に従うメインヒータ11の出力波形が示される。本例では、メインヒータ11は、時点t30から熱処理プレート10の温度を下降させるために出力を低下させる。その後、変更動作条件に従うPID制御により熱処理プレート10の温度に応じて出力が調整される。熱処理プレート10に供給される熱量を小さくする場合には、図5に白抜きの矢印a23で示すように、例えばPID制御の比例パラメータを大きく変更することによりメインヒータ11の出力波形を全体的に低くすればよい。
【0076】
一方、熱処理プレート10に供給される熱量を大きくする場合には、図5に白抜きの矢印a24で示すように、例えばPID制御の比例パラメータを小さく変更することによりメインヒータ11の出力波形を全体的に高くすればよい。
【0077】
図6は、設定温度の変更についての実験結果を説明するための図である。本発明者は、図3の変更動作条件に基づいて熱処理装置100を動作させることにより熱処理プレート10の設定温度を90℃から140℃に変更させた。その結果、図6の上段に太い実線で示すように、熱処理プレート10の温度は、一点鎖線で示される基準波形に沿って時点t40から時点t41までの間ほぼ一定速度で上昇した。しかしながら、時点t41以降に比較的大きなオーバーシュートが発生した。
【0078】
そこで、本発明者は、図6の中段に示すように、図3の開始温度90℃から目標温度140℃への変更に対応する変更動作条件のうち、加熱停止パラメータの値を「1」から「5」に変更した。この変更は、熱処理プレート10の温度を上昇させるためにブースターヒータ12をオン状態にした後、ブースターヒータ12をオフ状態に切り替えるタイミングを早めることを意味する。
【0079】
その後、変更後の変更動作条件に基づいて熱処理装置100を再度動作させることにより熱処理プレート10の設定温度を90℃から140℃に変更させた。その結果、図6の下段に示すように、熱処理プレート10の温度は、基準波形に沿って変化し、オーバーシュート量が低減された。
【0080】
(4)制御装置50
図1に示すように、制御装置50は、機能部として、記憶部51、発熱制御部52、冷却制御部53、昇降制御部54、温度取得部55および条件変更部56を有する。制御装置50は、CPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)およびROM(リードオンリメモリ)により構成される。CPUがROMまたは他の記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、上記の各機能部が実現される。なお、制御装置50の機能的な構成要素の一部または全てが電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0081】
記憶部51は、複数の設定温度のうち2つの設定温度の組み合わせごとに設定された複数の変更動作条件を記憶する。発熱制御部52は、熱処理プレート10の設定温度を上昇させる際の変更時に、記憶部51に記憶された変更動作条件に従って動作するように発熱駆動部13を制御する。冷却制御部53は、熱処理装置100の電源がオンされている間、能動冷却プレート20が冷却されるように冷却駆動部22を制御する。昇降制御部54は、熱処理プレート10の設定温度を下降させる際の変更時に、記憶部51に記憶された変更動作条件に従って動作するように昇降装置40を制御する。
【0082】
温度取得部55は、温度センサ19から出力される検出信号に基づいて、設定温度の変更時における熱処理プレート10の温度を取得する。より具体的には、温度取得部55は、温度センサ19から出力される検出信号を一定周期でサンプリングすることにより温度の変化を取得する。
【0083】
条件変更部56は、熱処理プレート10の設定温度が変更される際に温度センサ19により検出されて取得された温度の変化が予め定められた基準波形に近づくように、記憶部51に記憶された変更動作条件を変更する。
【0084】
なお、熱処理装置100は、図示しない操作部を備える。使用者は、操作部を操作することにより、記憶部51に初期の変更動作条件を記憶させることができる。すなわち、使用者は、初期の変更動作条件の設定を行うことができる。
【0085】
(5)設定温度変更処理
変更動作条件の変更を伴う熱処理装置100の動作は、図1の制御装置50が下記の設定温度変更処理を実行することにより行われる。図7は、図1の制御装置50において実行される設定温度変更処理の一例を示すフローチャートである。以下の説明では、オーバーシュート量およびアンダーシュート量をシュート量と総称する。設定温度変更処理は、熱処理装置100の電源がオンされることにより開始される。
【0086】
まず、図1の発熱制御部52および昇降制御部54は、熱処理プレート10の設定温度を変更すべきか否かを判定する(ステップS11)。この判定は、例えば、発熱制御部52および昇降制御部54のいずれかが、熱処理装置100の外部から設定温度の変更を指令する信号を受けたか否かに基づいて行われる。
【0087】
設定温度を変更すべきでない場合、発熱制御部52および昇降制御部54は、ステップS11の処理に戻る。一方、設定温度を変更すべきである場合、発熱制御部52または昇降制御部54は、当該設定温度の変更に対応する変更動作条件を図1の記憶部51から読込む(ステップS12)。
【0088】
次に、発熱制御部52または昇降制御部54は、その変更動作条件に基づいて発熱駆動部13または昇降駆動部41を制御することにより熱処理プレート10の温度を調整する(ステップS13)。温度取得部55は、熱処理プレート10の設定温度が変更される際の熱処理プレート10の温度の変化を取得する(ステップS14)。
【0089】
熱処理プレート10の設定温度の変更が完了すると、条件変更部56は、取得された温度の変化に基づいて、設定温度変更中の特定時点における温度の変化率が予め定められた許容範囲外であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0090】
温度の変化率が許容範囲から外れている場合、条件変更部56は、取得された温度変化に基づいて、特定時点における取得された温度の変化率と基準波形の変化率との差分を算出する(ステップS16)。一方、温度の変化率が許容範囲内にある場合、条件変更部56は、取得された温度変化に基づいて、設定温度変更中の特定時点における温度値が予め定められた許容範囲外であるか否かを判定する(ステップS17)。
【0091】
温度値が許容範囲から外れている場合、条件変更部56は、取得された温度変化に基づいて、特定時点における取得された温度値と基準波形の温度値との差分を算出する(ステップS18)。一方、温度値が許容範囲内にある場合、条件変更部56は、取得された温度変化に基づいて、設定温度の変更中に発生したシュート量が予め定められた許容範囲外であるか否かを判定する(ステップS19)。
【0092】
シュート量が許容範囲から外れている場合、条件変更部56は、取得された温度変化に基づいて、取得されたシュート量と基準波形のシュート量との差分を算出する(ステップS20)。一方、シュート量が許容範囲内にある場合、発熱制御部52および昇降制御部54は、ステップS11の処理に戻る。
【0093】
上記のステップS16,S18,S20の処理後、条件変更部56は、算出された変化率、温度値またはシュート量の差分に基づいて、変更動作条件のうち変更すべきパラメータを決定する(ステップS21)。例えば、条件変更部56は、算出された差分のレベルに応じて変更すべきパラメータを決定する。具体的には、条件変更部56は、差分のレベルが高い場合に加熱停止パラメータまたは冷却停止パラメータを変更すべきパラメータとして決定する。また、条件変更部56は、差分のレベルが中程度である場合にPID制御の比例パラメータを変更すべきパラメータとして決定する。さらに、条件変更部56は、差分のレベルが低い場合に上限パラメータを変更すべきパラメータとして決定する。
【0094】
次に、条件変更部56は、決定されたパラメータについて、予め定められた方法に従って当該パラメータを変更する(ステップS22)。例えば、条件変更部56は、決定されたパラメータについて、予め定められた値分パラメータを変更する。その後、発熱制御部52および昇降制御部54は、ステップS11の処理に戻る。
【0095】
上記の設定温度変更処理において、ステップS15,S17,S19のうち一部の処理は省略されてもよい。この場合、省略される処理に付随する差分の算出処理も省略される。
【0096】
(6)効果
上記のように、熱処理装置100は、熱処理プレート10について一の設定温度から他の設定温度に変更する際に、記憶部51に記憶された変更動作条件に従って動作する。このとき、熱処理プレート10の温度の変化が検出され、検出された温度の変化が当該一の設定温度から他の設定温度への変更に対応する基準波形に近づくように変更動作条件が変更される。
【0097】
それにより、熱処理プレート10の温度が一の設定温度から他の設定温度へ再度変更される際には、前回の温度変更時に変更された変更動作条件に従って熱処理装置100が動作する。それにより、熱処理プレート10の温度変化が前回の設定温度の変更時に比べて基準波形に近づく。
【0098】
このように、熱処理プレート10の設定温度の変更が行われるごとに、設定温度の変更時における熱処理プレート10の温度変化が漸次適切に修正される。したがって、基板Wの熱処理温度の変更に伴う熱処理装置100の調整時間を適切に短縮することができる。これらの結果、熱処理温度の変更に伴なう熱処理効率の低下を抑制することが可能になる。
【0099】
(7)図1の熱処理装置100を備える基板処理装置
図8は、図1の熱処理装置100を備える基板処理装置の一例を示す模式的ブロック図である。図8に示すように、基板処理装置400は、露光装置500に隣接して設けられ、制御部410、塗布処理部420、現像処理部430、熱処理部440および基板搬送装置450を備える。熱処理部440は、基板Wに加熱処理を行う複数の図1の熱処理装置100と、基板Wに冷却処理のみを行う複数のクーリングプレート(図示せず)とを含む。
【0100】
制御部410は、例えばCPUおよびメモリ、またはマイクロコンピュータを含み、塗布処理部420、現像処理部430、熱処理部440および基板搬送装置450の動作を制御する。
【0101】
基板搬送装置450は、基板処理装置400による基板Wの処理時に、基板Wを塗布処理部420、現像処理部430、熱処理部440および露光装置500の間で搬送する。
【0102】
塗布処理部420は、未処理の基板Wの一面上にレジスト膜を形成する(塗布処理)。レジスト膜が形成された塗布処理後の基板Wには、露光装置500において露光処理が行われる。現像処理部430は、露光装置500による露光処理後の基板Wに現像液を供給することにより、基板Wの現像処理を行う。熱処理部440は、塗布処理部420による塗布処理、現像処理部430による現像処理、および露光装置500による露光処理の前後に基板Wの熱処理を行う。
【0103】
なお、塗布処理部420は、基板Wに反射防止膜を形成してもよい。この場合、熱処理部440には、基板Wと反射防止膜との密着性を向上させるための密着強化処理を行うための処理ユニットが設けられてもよい。また、塗布処理部420は、基板W上に形成されたレジスト膜を保護するためのレジストカバー膜を基板Wに形成してもよい。
【0104】
上記のように、熱処理部440の複数の熱処理装置100においては、上記の設定温度変更処理が行われる。それにより、複数の基板Wに異なる設定温度で順次熱処理が行われる際に、熱処理プレート10の温度を短時間で適切に調整することができる。その結果、基板Wの製造効率が向上する。
【0105】
(8)他の実施の形態
(a)上記実施の形態においては、熱処理プレート10を加熱する構成および冷却する構成を有する熱処理装置100について説明したが、本発明はこれに限定されない。熱処理装置100は、熱処理プレート10を冷却する構成(上記の例では、能動冷却プレート20、受動冷却プレート30および昇降装置40)を有さなくてもよい。あるいは、熱処理装置100は、熱処理プレート10を加熱する構成(上記の例では、メインヒータ11およびブースターヒータ12)を有さなくてもよい。この場合においても、熱処理装置100の設定温度を上昇または下降させるときの調整に要する時間が短縮される。
【0106】
(b)熱処理装置100においては、熱処理プレート10の上面が複数の領域にそれぞれ分割されるとともに、各領域に対応するように当該部分を加熱するための構成が設けられてもよい。すなわち、熱処理プレート10の複数の領域の各々についてメインヒータ11、ブースターヒータ12および発熱駆動部13が設けられてもよい。または、熱処理プレート10の複数の領域の各々についてメインヒータ11およびブースターヒータ12が設けられかつ発熱駆動部13が複数のメインヒータ11およびブースターヒータ12を独立して駆動可能に構成されてもよい。
【0107】
この場合、記憶部51には、熱処理プレート10の複数の領域の各々について変更動作条件が記憶されてもよい。また、条件変更部56は、例えば設定温度の変更時における熱処理プレート10の複数の領域の温度の変化が基準波形に近づくように、全ての領域にそれぞれ対応する変更動作条件の複数のパラメータを変更してもよい。このような構成によれば、熱処理プレート10の上面の複数の領域についてより詳細な温度調整を行うことが可能になる。なお、本例では、複数の領域のうち一の領域について設定温度の変更時に取得される温度の変化を基準波形としてもよい。
【0108】
(c)上記実施の形態においては、熱処理プレート10にメインヒータ11およびブースターヒータ12が設けられるが、本発明はこれに限定されない。メインヒータ11が熱処理プレート10の温度を短時間で上昇させることが可能に構成される場合、ブースターヒータ12は設けられなくてもよい。
【0109】
(9)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記実施の形態では、熱処理装置100が熱処理装置の例であり、熱処理プレート10がプレート部材の例であり、メインヒータ11、ブースターヒータ12、発熱駆動部13、能動冷却プレート20、受動冷却プレート30および昇降装置40が熱処理部の例であり、記憶部51が記憶部の例であり、発熱制御部52、冷却制御部53および昇降制御部54が動作制御部の例であり、温度センサ19が温度検出器の例であり、温度取得部55および条件変更部56が条件変更部の例である。
【0110】
また、上記実施の形態においては、ブースターヒータ12がオン状態にあることまたは受動冷却プレート30が接触状態にあることが、熱処理部が第1の状態にあることの例である。また、ブースターヒータ12がオフ状態にありかつ受動冷却プレート30が非接触状態にあることが、熱処理部が第2の状態にあることの例である。
【0111】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
(10)参考形態
(10-1)第1の参考形態に係る熱処理装置は、基板に熱処理を行う熱処理装置であって、基板が載置されるプレート部材と、プレート部材上に載置された基板にプレート部材を通して熱処理を行う熱処理部と、プレート部材の温度を設定された第1の温度から設定された第2の温度へ変更する際の熱処理部の動作条件を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された動作条件に従って熱処理部を動作させる動作制御部と、プレート部材の温度を検出する温度検出器と、動作条件に従って熱処理部が動作する際に温度検出器により検出された温度の変化が予め定められた基準波形に近づくように、記憶部に記憶された動作条件を変更する条件変更部とを備える。
その熱処理装置においては、第1の温度に調整されたプレート部材上に基板が載置されることにより、載置された基板に熱処理が行われる。または、第2の温度に調整されたプレート部材上に基板が載置されることにより、載置された基板に熱処理が行われる。複数の基板が順次熱処理されることにより第1の温度に対応する熱処理および第2の温度に対応する熱処理がこの順で行われる。この場合、第1の温度に対応する熱処理後第2の温度に対応する熱処理前にプレート部材の温度を第1の温度から第2の温度に変更する必要がある。
第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変更時には、記憶部に記憶された動作条件に従って熱処理部が動作する。このとき、プレート部材の温度の変化が検出され、検出された温度の変化が基準波形に近づくように記憶部に記憶された動作条件が変更される。
複数の基板が順次処理されることによりプレート部材の温度が再度第1の温度から第2の温度へ変更される際には、前回の温度変更時に変更された動作条件に従って熱処理部が動作する。それにより、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化が前回の温度変更時に比べて基準波形に近づく。
このように、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変更が行われるごとに動作条件が変更されることにより、第1の温度から第2の温度への温度変更時におけるプレート部材の温度変化が漸次適切に修正される。したがって、基板の熱処理温度の変更に伴う熱処理装置の調整時間を適切に短縮することができる。その結果、熱処理温度の変更に伴なう熱処理効率の低下を抑制することが可能になる。
(10-2)動作条件は、一または複数の制御パラメータの値を含み、条件変更部は、検出された温度の変化が基準波形に近づくように、記憶部に記憶された一または複数の制御パラメータのうち少なくとも1つの値を変更してもよい。
この場合、一または複数の制御パラメータのうち少なくとも1つの値を変更する簡単な処理で、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化を調整することができる。
(10-3)熱処理部は、プレート部材に対して加熱または冷却を行う第1の状態とプレート部材に対して加熱および冷却を行わない第2の状態とに切り替え可能に構成され、一または複数の制御パラメータは、熱処理部の第1および第2の状態の切替タイミングを含んでもよい。
この場合、熱処理部の第1および第2の状態の切替タイミングを変更することにより、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化を大きく調整することができる。
(10-4)熱処理部は、PID制御が可能に構成され、一または複数の制御パラメータは、プレート部材の温度を第1の温度から第2の温度へ変更するためのPID制御の比例パラメータ、積分パラメータおよび微分パラメータのうち少なくとも1つを含んでもよい。
この場合、比例パラメータ、積分パラメータおよび微分パラメータの値のうち少なくとも1つを変更することにより、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化を調整することができる。
(10-5)一または複数の制御パラメータは、熱処理部の出力の上限を含んでもよい。
この場合、熱処理部の出力の上限を変更することにより、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化を微調整することができる。
(10-6)条件変更部は、プレート部材の温度が第1の温度から第2の温度へ変化する期間のうち特定時点に温度検出器により検出された温度の変化率が、基準波形のうち特定時点に対応する部分の温度の変化率に近づくように動作条件の変更を行ってもよい。
この場合、プレート部材の温度の変化率に基づいて、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化が適切に調整される。
(10-7)条件変更部は、プレート部材の温度が第1の温度から第2の温度へ変化する期間のうち特定時点に温度検出器により検出された温度の値が、基準波形のうち特定時点に対応する部分の温度の値に近づくように動作条件の変更を行ってもよい。
この場合、プレート部材の温度の値に基づいて、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化が適切に調整される。
(10-8)条件変更部は、検出された温度の波形に発生する、第2の温度に対するオーバーシュート量またはアンダーシュート量が小さくなるように動作条件の変更を行ってもよい。
この場合、第2の温度に対するオーバーシュート量またはアンダーシュート量に基づいて、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化が適切に調整される。
(10-9)第2の参考形態に係る熱処理方法は、基板に熱処理を行う熱処理方法であって、プレート部材上に基板を載置するステップと、載置された基板にプレート部材を通して熱処理部による熱処理を行うステップと、プレート部材の温度を設定された第1の温度から設定された第2の温度へ変更する際の熱処理部の動作条件を記憶部に記憶するステップと、記憶部に記憶された動作条件に従って熱処理部を動作させるステップと、プレート部材の温度を温度検出器により検出するステップと、動作条件に従って熱処理部が動作する際に温度検出器により検出された温度の変化が予め定められた基準波形に近づくように、記憶部に記憶された動作条件を変更するステップとを含む。
その熱処理方法においては、第1の温度に調整されたプレート部材上に基板が載置されることにより、載置された基板に熱処理が行われる。または、第2の温度に調整されたプレート部材上に基板が載置されることにより、載置された基板に熱処理が行われる。複数の基板が順次熱処理されることにより第1の温度に対応する熱処理および第2の温度に対応する熱処理がこの順で行われる。この場合、第1の温度に対応する熱処理後第2の温度に対応する熱処理前にプレート部材の温度を第1の温度から第2の温度に変更する必要がある。
第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変更時には、記憶部に記憶された動作条件に従って熱処理部が動作する。このとき、プレート部材の温度の変化が検出され、検出された温度の変化が基準波形に近づくように記憶部に記憶された動作条件が変更される。
複数の基板が順次処理されることによりプレート部材の温度が再度第1の温度から第2の温度へ変更される際には、前回の温度変更時に変更された動作条件に従って熱処理部が動作する。それにより、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化が前回の温度変更時に比べて基準波形に近づく。
このように、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変更が行われるごとに動作条件が変更されることにより、第1の温度から第2の温度への温度変更時におけるプレート部材の温度変化が漸次適切に修正される。したがって、基板の熱処理温度の変更に伴う熱処理装置の調整時間を適切に短縮することができる。その結果、熱処理温度の変更に伴なう熱処理効率の低下を抑制することが可能になる。
(10-10)動作条件は、一または複数の制御パラメータの値を含み、動作条件を変更するステップは、検出された温度の変化が基準波形に近づくように、記憶部に記憶された一または複数の制御パラメータのうち少なくとも1つの値を変更することを含んでもよい。
この場合、一または複数の制御パラメータのうち少なくとも1つの値を変更する簡単な処理で、第1の温度から第2の温度へのプレート部材の温度変化を調整することができる。
【符号の説明】
【0112】
10…熱処理プレート,11…メインヒータ,12…ブースターヒータ,13…発熱駆動部,19…温度センサ,20…能動冷却プレート,21…冷却機構,22…冷却駆動部,30…受動冷却プレート,40…昇降装置,41…昇降駆動部,50…制御装置,51…記憶部,52…発熱制御部,53…冷却制御部,54…昇降制御部,55…温度取得部,56…条件変更部,100…熱処理装置,400…基板処理装置,410…制御部,420…塗布処理部,430…現像処理部,440…熱処理部,450…基板搬送装置,500…露光装置,OS…オーバーシュート量,ST…開始温度,TT…目標温度,US…アンダーシュート量,W…基板
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