(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】電磁波検出装置、媒体処理装置及び電磁波検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3581 20140101AFI20230404BHJP
G01N 21/21 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
G01N21/3581
G01N21/21 Z
(21)【出願番号】P 2019056812
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】志水 勇人
(72)【発明者】
【氏名】牟田 啓太郎
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134039(JP,A)
【文献】国際公開第2011/077949(WO,A1)
【文献】特開2016-141065(JP,A)
【文献】特開2016-080452(JP,A)
【文献】特開2018-036190(JP,A)
【文献】特開2015-137913(JP,A)
【文献】特開2000-171416(JP,A)
【文献】特開2009-058310(JP,A)
【文献】国際公開第2013/046249(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/61
G01N 22/00-G01N 22/04
G07D 7/00-G07D 7/207
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テラヘルツ電磁波を媒体に照射して特性を検出する電磁波検出装置であって、
第1の特徴を有する第1テラヘルツ電磁波と、前記第1の特徴と異なる第2の特徴を有する第2テラヘルツ電磁波とを、
同一媒体の同一の検出領域に照射する送信部と、
前記検出領域を通過した前記第1テラヘルツ電磁波及び前記第2テラヘルツ電磁波を受信する受信部と、
を備え
、
前記送信部は、前記第1テラヘルツ電磁波を照射する第1送信部と、前記第2テラヘルツ電磁波を照射する第2送信部とを有し、
前記第1テラヘルツ電磁波は、第1偏光方向の偏光であり、
前記第2テラヘルツ電磁波は、前記第1偏光方向と異なる第2偏光方向の偏光であり、
前記第1送信部から照射された前記第1テラヘルツ電磁波と、前記第2送信部から照射された前記第2テラヘルツ電磁波とをそれぞれ反射させて、前記第1テラヘルツ電磁波の光軸と、前記第2テラヘルツ電磁波の光軸とを前記検出領域にて互いに交差させることを特徴とする電磁波検出装置。
【請求項2】
前記受信部は、前記検出領域を通過した前記第1テラヘルツ電磁波を受信する第1受信部と、前記検出領域を通過した前記第2テラヘルツ電磁波を受信する第2受信部とを有
する
ことを特徴とする請求項
1記載の電磁波検出装置。
【請求項3】
前記送信部は、前記第1テラヘルツ電磁波と、第2テラヘルツ電磁波とを、異なるタイミングにて前記検出領域に照射することを特徴とする請求項1
又は2記載の電磁波検出装置。
【請求項4】
前記送信部は、前記第1テラヘルツ電磁波及び前記第2テラヘルツ電磁波を前記検出領域に同時に照射することを特徴とする請求項1
又は2記載の電磁波検出装置。
【請求項5】
前記送信部は、前記第1テラヘルツ電磁波及び前記第2テラヘルツ電磁波を前記検出領域で集光させる集光部を有することを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載の電磁波検出装置。
【請求項6】
前記集光部は、前記第1テラヘルツ電磁波及び前記第2テラヘルツ電磁波を集光させる楕円面鏡であることを特徴とする請求項
5記載の電磁波検出装置。
【請求項7】
前記第1テラヘルツ電磁波は、第1周波数の電磁波であり、
前記第2テラヘルツ電磁波は、前記第1周波数と異なる第2周波数の電磁波であることを特徴とする請求項1~
6のいずれかに記載の電磁波検出装置。
【請求項8】
前記検出領域は、媒体に設けられた共振器を少なくとも1つ包含する大きさであることを特徴とする請求項1~
7のいずれかに記載の電磁波検出装置。
【請求項9】
搬送路に沿って媒体を搬送する搬送部を更に備え、
前記送信部は、搬送される媒体に前記第1テラヘルツ電磁波及び前記第2テラヘルツ電磁波を照射することを特徴とする請求項1~
8のいずれかに記載の電磁波検出装置。
【請求項10】
前記送信部及び前記受信部からなる一対の検出ユニットが、前記搬送路の幅方向に複数配置されることを特徴とする請求項
9記載の電磁波検出装置。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれかに記載の電磁波検出装置
と、
前記第1テラヘルツ電磁波の透過率及び前記第2テラヘルツ電磁波の透過率に基づいて、前記媒体の種類判別、真贋判別及び合否判定のうちの少なくとも1つを行う制御部と、を備えることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項12】
テラヘルツ電磁波を媒体に照射して特性を検出する電磁波検出方法であって、
第1の特徴を有する第1テラヘルツ電磁波と、前記第1の特徴と異なる第2の特徴を有する第2テラヘルツ電磁波とを、
同一媒体の同一の検出領域に照射し、前記検出領域を通過した前記第1テラヘルツ電磁波及び前記第2テラヘルツ電磁波を受信するステップを備え
、
前記第1テラヘルツ電磁波を第1送信部から照射し、
前記第2テラヘルツ電磁波を第2送信部から照射し、
前記第1テラヘルツ電磁波は、第1偏光方向の偏光であり、
前記第2テラヘルツ電磁波は、前記第1偏光方向と異なる第2偏光方向の偏光であり、
前記第1送信部から照射された前記第1テラヘルツ電磁波と、前記第2送信部から照射された前記第2テラヘルツ電磁波とをそれぞれ反射させて、前記第1テラヘルツ電磁波の光軸と、前記第2テラヘルツ電磁波の光軸とを前記検出領域にて互いに交差させることを特徴とする電磁波検出方法。
【請求項13】
テラヘルツ電磁波を媒体に照射して特性を検出する電磁波検出装置と、制御部と、を備える媒体処理装置であって、
前記電磁波検出装置は、第1の特徴を有する第1テラヘルツ電磁波と、前記第1の特徴と異なる第2の特徴を有する第2テラヘルツ電磁波とを、同一媒体の同一の検出領域に照射する送信部と、
前記検出領域を通過した前記第1テラヘルツ電磁波及び前記第2テラヘルツ電磁波を受信する受信部と、
を備え、
前記第1テラヘルツ電磁波は、第1偏光方向の偏光であり、
前記第2テラヘルツ電磁波は、前記第1偏光方向と異なる第2偏光方向の偏光であり、
前記制御部は、前記第1テラヘルツ電磁波の透過率及び前記第2テラヘルツ電磁波の透過率に基づいて、前記媒体の種類判別、真贋判別及び合否判定のうちの少なくとも1つを行うことを特徴とする媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波検出装置、媒体処理装置及び電磁波検出方法に関する。より詳しくは、媒体の特性を検出するためにテラヘルツ電磁波を送受信する電磁波検出装置、媒体処理装置及び電磁波検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な分野で、テラヘルツ電磁波等の光線を対象物に照射して、材質や構造等の特性を調べる技術が利用されている。例えば、特許文献1には、複数の光伝導素子をアレイ状に配置して、テラヘルツ電磁波の発生及び検出を行う検査装置が開示されている。発生側の光伝導素子で発生させたテラヘルツ電磁波を放物面鏡で集光して検査対象物に照射する。そして、検査対象物で反射されたテラヘルツ電磁波を別の放物面鏡で集光して、検出側の光伝導素子で検出する。また、特許文献2には、テラヘルツ電磁波を対象物に照射して、対象物を透過したテラヘルツ電磁波を検出する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5144175号公報
【文献】国際公開第2013/046249号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、対象物の特性を調べるのに手間がかかる場合がある。例えば、照射するテラヘルツ電磁波の偏光方向によって透過率が異なるか否かを判定する場合、所定方向を偏光方向とするテラヘルツ電磁波の透過率を計測した後、さらに偏光方向が異なるテラヘルツ電磁波の透過率を計測する必要がある。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、特徴が異なる複数のテラヘルツ電磁波に対する対象物の特性を容易に検出することができる電磁波検出装置、媒体処理装置及び電磁波検出方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、テラヘルツ電磁波を媒体に照射して特性を検出する電磁波検出装置であって、第1の特徴を有する第1テラヘルツ電磁波と、前記第1の特徴と異なる第2の特徴を有する第2テラヘルツ電磁波とを、同一の検出領域に照射する送信部と、前記検出領域を通過した前記第1テラヘルツ電磁波及び前記第2テラヘルツ電磁波を受信する受信部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上記発明において、前記送信部は、前記第1テラヘルツ電磁波と、第2テラヘルツ電磁波とを、異なる方向から前記検出領域に照射することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記送信部は、前記第1テラヘルツ電磁波を照射する第1送信部と、前記第2テラヘルツ電磁波を照射する第2送信部とを有し、前記受信部は、前記検出領域を通過した前記第1テラヘルツ電磁波を受信する第1受信部と、前記検出領域を通過した前記第2テラヘルツ電磁波を受信する第2受信部とを有し、前記第1テラヘルツ電磁波の光軸と、前記第2テラヘルツ電磁波の光軸とは、前記検出領域にて互いに交差することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記送信部は、前記第1テラヘルツ電磁波と、第2テラヘルツ電磁波とを、異なるタイミングにて前記検出領域に照射することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記送信部は、前記第1テラヘルツ電磁波及び前記第2テラヘルツ電磁波を前記検出領域に同時に照射することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記送信部は、前記第1テラヘルツ電磁波及び前記第2テラヘルツ電磁波を前記検出領域で集光させる集光部を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記集光部は、前記第1テラヘルツ電磁波及び前記第2テラヘルツ電磁波を集光させる楕円面鏡であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記第1テラヘルツ電磁波は、第1偏光方向の偏光であり、前記第2テラヘルツ電磁波は、前記第1偏光方向と異なる第2偏光方向の偏光であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記第1テラヘルツ電磁波は、第1周波数の電磁波であり、前記第2テラヘルツ電磁波は、前記第1周波数と異なる第2周波数の電磁波であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記検出領域は、媒体に設けられた共振器を少なくとも1つ包含する大きさであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、搬送路に沿って媒体を搬送する搬送部を更に備え、前記送信部は、搬送される媒体に前記第1テラヘルツ電磁波及び前記第2テラヘルツ電磁波を照射することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記発明において、前記送信部及び前記受信部からなる一対の検出ユニットが、前記搬送路の幅方向に複数配置されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、媒体処理装置であって、前記電磁波検出装置を備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、テラヘルツ電磁波を媒体に照射して特性を検出する電磁波検出方法であって、第1の特徴を有する第1テラヘルツ電磁波と、前記第1の特徴と異なる第2の特徴を有する第2テラヘルツ電磁波とを、同一の検出領域に照射し、前記検出領域を通過した前記第1テラヘルツ電磁波及び前記第2テラヘルツ電磁波を受信するステップを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電磁波検出装置、媒体処理装置及び電磁波検出方法によれば、特徴が異なる複数のテラヘルツ電磁波に対する対象物の特性を容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】斜めから見た実施形態1に係る電磁波検出装置の模式図である。
【
図2】側方から見た実施形態1に係る電磁波検出装置を示す模式図である。
【
図3】正面から見た実施形態1に係る電磁波検出装置を示す模式図である。
【
図4】実施形態1に係る電磁波検出装置が備える第1及び第2の光学系を説明するための模式図であり、(a)は、第1及び第2の光学系の断面図であり、(b)は、第1及び第2の光学系の配置関係を示した図である。
【
図5】実施形態1に係る電磁波検出装置が備える各光学系の配置を説明するための断面模式図である。
【
図6】実施形態1に係る電磁波検出装置の機能ブロック図である。
【
図7】SRRが配置された領域にテラヘルツ電磁波を照射して得られる透過率の周波数特性の例を示す図である。
【
図8】テラヘルツ電磁波の透過特性を調べる例を説明するための図である。
【
図9】テラヘルツ電磁波の透過特性を調べる別の例を説明するための図である。
【
図10】実施形態1に係る媒体処理装置の機能ブロック図である。
【
図11】正面から見た変形形態に係る電磁波検出装置を示す模式図である。
【
図12】正面から見た別の変形形態に係る電磁波検出装置を示す模式図である。
【
図13】上方から見た更に別の変形形態に係る電磁波検出装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る電磁波検出装置、媒体処理装置及び電磁波検出方法について詳細を説明する。例えばフェムト秒レーザによるレーザ光を利用して光伝導素子によって行うテラヘルツ電磁波の発生方法及び検出方法は、背景技術として挙げた特許文献にもあるように、従来技術として知られている。このため、テラヘルツ電磁波の発生及び検出についての詳細な説明は省略する。電磁波検出装置については、送信側の素子から出射したテラヘルツ電磁波を媒体に照射して、受信側の素子で検出するまでの構成について主に説明する。
【0023】
本実施形態では、電磁波検出装置が、銀行券、小切手、商品券等のシート状の媒体を対象に、テラヘルツ電磁波を照射した際の特性を検出する場合を例に説明する。特性検出の対象とするシート状媒体は、テラヘルツ電磁波の共振器を多数並べた共振構造体を備えている。本実施形態では、電磁波検出装置は、テラヘルツ電磁波の偏光をシート状媒体に照射して、透過したテラヘルツ電磁波を検出する。シート状媒体にテラヘルツ電磁波を照射すると、共振構造体を備える領域で、共振構造体の構造に応じてテラヘルツ電磁波の透過率が変化する。この変化をシート状媒体の特性として検出し、シート状媒体の真贋を見分けるためのセキュリティ特徴として利用することができる。共振構造体は、シート状媒体に貼り付けたものであってもよいし、シート状媒体上に直接形成したものであってもよい。以下、テラヘルツ電磁波の透過率によって、シート状媒体(以下、単に「媒体」と記載する)の特性を検出する場合を例に詳細を説明する。
【0024】
図1~3に示すように、本実施形態に係る電磁波検出装置100は、第1の特徴を有する第1テラヘルツ電磁波を検出領域1に照射する第1送信部11と、第1の特徴と異なる第2の特徴を有する第2テラヘルツ電磁波を検出領域1に照射する第2送信部12と、検出領域1を通過した第1テラヘルツ電磁波を受信する第1受信部21と、検出領域1を通過した第2テラヘルツ電磁波を受信する第2受信部22と、を備え、第1送信部11及び第2送信部12は、第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を互いに異なる方向から検出領域1に照射する。この構成によれば、特徴が異なる複数のテラヘルツ電磁波に対する媒体の透過特性を調べる場合、検出領域1に重畳するように搬送される媒体のほぼ同じ箇所に対して、第1送信部11及び第2送信部12から互いに特徴の異なる第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を照射することができる。したがって、特徴が異なる複数のテラヘルツ電磁波に対する媒体(共振構造体)の特性を容易に検出することができる。また、媒体のほぼ同じ箇所の特性を検出できることから、搬送ズレに起因して複数のテラヘルツ電磁波による検出対象がずれてしまうのを防止できるため、共振構造体の検出精度の向上が可能である。更に、複数のテラヘルツ電磁波を異なる検出領域に照射する場合に比べて、装置の小型化も可能である。
【0025】
また、本実施形態に係る電磁波検出方法は、上述の第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を同一の検出領域1に照射し、検出領域1を通過した第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を受信するステップを備えることから、上述の効果を同様に得ることができる。
【0026】
また、第1テラヘルツ電磁波の光軸と、第2テラヘルツ電磁波の光軸とは、検出領域1にて互いに交差している。この構成は、例えば、第1送信部11の上方(下方でもよい)に第2受信部22が配置され、第2送信部12の上方(下方でもよい)に第1受信部21が配置されることによって実現可能である。
【0027】
また、電磁波検出装置100は、第1送信部11及び第2送信部12からなる検出ユニット5と、第1受信部21及び第2受信部22からなる検出ユニット6とを備え、この一対の検出ユニット5及び6がそれぞれ媒体の一方及び他方の主面に対向するように配置されている。媒体は、XY平面と平行な状態で、一対の検出ユニット5及び6の間をX軸方向又はY軸方向に搬送される。
【0028】
第1送信部11及び第2送信部12は、それぞれ、所定周波数の第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を一定の強度で媒体に向けて送信する。各送信部11、12から送信されたテラヘルツ電磁波が、搬送される媒体と、その媒体が備える共振構造体とに照射される。
【0029】
第1受信部21及び第2受信部22は、それぞれ、搬送される媒体と、その媒体が備える共振構造体とを透過した第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を受信して、その強度を検出する。各受信部21、22は、媒体を透過したテラヘルツ電磁波の強度と、媒体がない状態で検出されるテラヘルツ電磁波の強度との比率から、受信したテラヘルツ電磁波の透過率を算出することもできる。透過率は、各受信部21、22で算出する態様であってもよいし、後述する制御部が算出する態様であってもよい。制御部が算出する場合は、各受信部21、22が、受信したテラヘルツ電磁波の強度を出力して、制御部が透過率を算出する。
【0030】
第1受信部21による第1テラヘルツ電磁波の照射のタイミングは、第2受信部22による第2テラヘルツ電磁波の照射のタイミングと異なっていてもよいが、第1送信部11及び第2送信部12は、それぞれ、第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を検出領域1に同時に照射することが好ましい。これにより、搬送される媒体の同じ箇所に第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を照射できるため、搬送される媒体が備える共振構造体の検出精度をより向上することが可能である。
【0031】
第1送信部11及び第2送信部12は、それぞれ、第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を検出領域1で集光させる第1集光部31及び第2集光部32を有している。これにより、媒体の狭い領域の特性を検出することができる。
【0032】
このように、第1テラヘルツ電磁波が送受信される第1の光学系の第1の焦点と、第2テラヘルツ電磁波が送受信される第2の光学系の第2の焦点とが、同一領域内、すなわち検出領域1内に存在している。なお、第1の焦点と第2の焦点とが同一領域内に存在するとは、互いに実質的に同じ位置に存在してもよいし、互いに近傍に存在してもよい。後者の場合、両焦点の中心間の距離は、例えば1mm以下である。
【0033】
図4(a)及び(b)に示すように、電磁波検出装置100では、第1の焦点と第2の焦点とが同一領域(検出領域1)内に存在するように、第1の光学系(第1の光軸71)と第2の光学系(第2の光軸72)とが互いに立体的に交差するように配置されている。また、2つの光学系が、一対の検出ユニット5及び6によって構成されていることから、装置の小型化を図ることができる。
【0034】
第1集光部31及び第2集光部32は、それぞれ、第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を集光させる第1楕円面鏡41及び第2楕円面鏡42であることが好ましい。これにより、第1送信部11及び第2送信部12は、それぞれ、第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を検出領域1に効果的に集光させることができる。
【0035】
検出領域1に集光される第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波は、検出領域1においてビーム状になっている。検出領域1における各ビーム径は、半値幅で1mm~5mm程度である。これらのビーム径は、検出対象に応じて任意に設定することができる。
【0036】
また、検出領域1の大きさは、検出対象に応じて任意に設定することができるが、媒体に設けられた共振構造体に含まれる共振器を少なくとも1つ包含する大きさであることが好ましく、当該共振器を10個以上包含する大きさであることがより好ましい。
【0037】
本実施形態では、第1の特徴及び第2の特徴は、偏光特性であり、第1テラヘルツ電磁波は、検出領域1において第1偏光方向の偏光であり、第2テラヘルツ電磁波は、検出領域1において第1偏光方向と異なる第2偏光方向の偏光である。具体的には、第1テラヘルツ電磁波は、検出領域1において、
図1~4に示したXY平面における偏光方向がX軸方向の偏光であり、第2テラヘルツ電磁波は、検出領域1において、
図1~4に示したXY平面における偏光方向がY軸方向の偏光である。
【0038】
第1送信部11は、第1送信素子51を有し、第2送信部12は、第2送信素子52を有している。第1送信素子51は、XZ平面において検出領域1の中心と第1送信素子51の発光点とを結ぶ直線に対し垂直方向を偏光方向とするテラヘルツ電磁波を送信する。第2送信素子52は、XZ平面において検出領域1の中心と第2送信素子52の発光点を結ぶ直線とに対し平行方向を偏光方向とするテラヘルツ電磁波を送信する。第1集光部31及び第2集光部32は、それぞれ、第1送信素子51及び第2送信素子52から水平方向(Y軸方向)に出射したテラヘルツ電磁波を、鉛直方向(Z軸方向)に対して斜めの方向に進むように反射して、検出領域1に集光する。
【0039】
第1テラヘルツ電磁波は、第1送信素子51から、Y軸方向に、XZ平面において検出領域1の中心と第1送信素子51の発光点とを結ぶ直線に対し垂直方向を偏光方向(X軸方向が主成分)とするテラヘルツ電磁波として送信される。この第1テラヘルツ電磁波は、第1集光部31によって、斜め方向に反射されるが、反射された後も偏光方向は変化しない。これにより、媒体を透過する検出領域1では、XY平面においてX軸方向を偏光方向とする第1テラヘルツ電磁波を集光することができる。
【0040】
第2テラヘルツ電磁波は、第2送信素子52から、Y軸方向に、XZ平面において検出領域1の中心と第2送信素子52の発光点とを結ぶ直線に対し平行方向を偏光方向(Z軸方向が主成分)とするテラヘルツ電磁波として送信される。この第2テラヘルツ電磁波は、第2集光部32によって、斜め方向に反射される。反射された第2テラヘルツ電磁波は、偏光方向がY軸方向を主成分とするテラヘルツ電磁波となる。これにより、媒体を透過する検出領域1では、XY平面においてY軸方向を偏光方向とする第2テラヘルツ電磁波を集光することができる。
【0041】
第1受信部21及び第2受信部22は、それぞれ、第1集光部31及び第2集光部32に対応して第3集光部33及び第4集光部34を有している。また、第1受信部21及び第2受信部22は、それぞれ、Z軸方向を偏光方向とするテラヘルツ電磁波を受信する第1受信素子61、及び、Y軸方向を偏光方向とするテラヘルツ電磁波を受信する第2受信素子62を有している。
【0042】
第3集光部33は、第1送信部11から出射されて媒体を透過し、鉛直方向に対して斜め方向に進む第1テラヘルツ電磁波を、水平方向に進むように反射して、第1受信部21の第1受信素子61に集光する。この反射時、第1テラヘルツ電磁波の偏光方向は変化しない。すなわち、ワイヤーグリッド等の偏光方向は、XZ平面において検出領域1の中心と第1送信素子51の発光点を結ぶ直線とに対し垂直方向(X軸方向が主成分)のままである。こうして、第1テラヘルツ電磁波を、これと同じ偏光方向のテラヘルツ電磁波を受信する第1受信素子61で受信する。
【0043】
第4集光部34は、第2送信部12から出射されて媒体を透過し、鉛直方向に対して斜め方向に進む第2テラヘルツ電磁波を、水平方向に進むように反射して、第2受信部22の第2受信素子62に集光する。この反射時に、第2テラヘルツ電磁波の偏光方向は、第2送信部12で反射された際にずれた方向とは逆方向に変化する。すなわち、第2送信部12における反射時にYZ平面においてY軸方向が主成分となった偏光方向が、第2受信部22による反射時に再び元の偏光方向、すなわち、XZ平面において検出領域1の中心と第2送信素子52の発光点とを結ぶ直線に対し平行方向(Z軸方向が主成分)へ戻る。こうして、元の偏光方向となった第2テラヘルツ電磁波を、これと同じ偏光方向のテラヘルツ電磁波を受信する第2受信素子62で受信する。
【0044】
第3集光部33及び第4集光部34は、それぞれ、第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を集光させる第3楕円面鏡43及び第4楕円面鏡44であることが好ましい。これにより、第1受信部21及び第2受信部22は、それぞれ、第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を第1受信素子61及び第2受信素子62に効果的に集光させることができる。
【0045】
テラヘルツ電磁波を反射するため、各楕円面鏡41、42、43、44は、アルミ材等の導電性材料で形成されている。例えば、導電性の金属材料から成る部材を削って各楕円面鏡41、42、43、44を形成する。また例えば、樹脂等の非導電性材料から成る部材を削った後に導電性金属材料によるメッキを施すなどして各楕円面鏡41、42、43、44を形成することもできる。
【0046】
各楕円面鏡41、42、43、44の鏡面は、楕円(以下、基準楕円ともいう。)をその長軸を回転軸として得られる回転体(回転楕円体)の表面(回転楕円面)の一部を切り取った形状である。
図5に示すように、第1送信素子51の発光点(送信点)と第1の焦点とは、第1楕円面鏡41に対応する基準楕円の2つの焦点にそれぞれ位置しており、第2送信素子52の発光点(送信点)と第2の焦点とは、第2楕円面鏡42に対応する基準楕円の2つの焦点にそれぞれ位置しており、第1受信素子61の受光点(受信点)と第1の焦点とは、第3楕円面鏡43に対応する基準楕円の2つの焦点にそれぞれ位置しており、第2受信素子62の受光点(受信点)と第2の焦点とは、第4楕円面鏡44に対応する基準楕円の2つの焦点にそれぞれ位置している。
【0047】
各送信素子51、52及び各受信素子61、62の偏光特性が優れたものであれば、本実施形態の電磁波検出装置100は、偏光子は備えていなくてもよいが、そうでなければ、下記位置(1)~(4)全てに偏光子をそれぞれ配置することが好ましい。
(1)第1送信素子51と第1集光部31(第1楕円面鏡41)との間
(2)第2送信素子52と第2集光部32(第2楕円面鏡42)との間
(3)第1受信素子61と第3集光部33(第3楕円面鏡43)との間
(4)第2受信素子62と第4集光部34(第4楕円面鏡44)との間
【0048】
なお、偏光子とは、特定の方向に振動する光だけを透過し、それ以外の方向に振動する光は遮断(反射又は吸収)する性質を持つ光学素子であり、具体例としては、例えば、ワイヤーグリッドが挙げられる。
【0049】
図6に示すように、電磁波検出装置100は、装置内で媒体を搬送する搬送部2と、第1送信部11、第2送信部12、第1受信部21、第2受信部22及び搬送部2を制御する制御部3とを更に備えている。
【0050】
搬送部2は、複数のローラやベルトを回転駆動して、搬送路に沿ってX軸方向又はY軸方向に媒体を搬送する。第1送信部11及び第2送信部12は、それぞれ、搬送部2によって搬送される媒体に向けて第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を送信する。
【0051】
制御部3は、搬送部2を制御して、第1送信部11及び第2送信部12と第1受信部21及び第2受信部22との間を通過するように媒体を搬送する。制御部3は、各送信部11、12を制御して、所定周波数のテラヘルツ電磁波を媒体に向けて送信する。制御部3は、各受信部21、22を制御して、対応する送信部11又は12から照射されて媒体を透過したテラヘルツ電磁波を受信する。制御部3は、上述のように、各送信部11、12から送信したテラヘルツ電磁波と、対応する受信部21又は22で受信したテラヘルツ電磁波とに基づいて算出された透過率の値、透過率の変化等を検出することができる。制御部3は、例えば、媒体を判別する判別装置等の外部装置に、検出結果を出力する。また、例えば、
図1に示す電磁波検出装置100を含むよう媒体処理装置を構成して、該装置によって媒体の判別や媒体の検査を行うこともできるが詳細については後述する。
【0052】
次に、電磁波検出装置100を用いて、メタマテリアルで形成されている共振構造体の透過特性を調べる例を説明する。具体的には、共振構造体として機能するメタマテリアルが、導電性材料から成る薄膜を、開放部を有する分割リング共振器(SRR:Split Ring Resonator。以下「SRR」と記載する)の形状に周期的にくり抜いてSRRが多数形成された導電性層を含む場合について説明する。SRRは、リングの一部を切り欠いて開放部とした略C字形状を有する。SRRは、照射するテラヘルツ電磁波の周波数及び偏光方向によって、異なる透過率を示す。
【0053】
電磁波検出装置100は、SRRで構成された共振構造体に対して、SRRにより共振が発生する周波数(共振周波数)を有する、特定方向に偏光したテラヘルツ電磁波を、照射する。そして、電磁波検出装置100は、媒体を透過したテラヘルツ電磁波から透過率を検出する。
【0054】
ここで、共振周波数の次数について説明する。
図7は、SRRが配置された領域にテラヘルツ電磁波を照射して得られる透過率の周波数特性の例を示す図である。テラヘルツ電磁波を照射する照射範囲よりも充分広い範囲に、開放部を有する多数のSRRが等間隔で配置されている場合に、
図7に示す周波数特性が得られる。
【0055】
照射するテラヘルツ電磁波の偏光方向と、照射領域に形成されたSRRの開放部の方向とが同一である場合、すなわち平行である場合に、
図7に実線で示す周波数特性が得られる。一方、照射するテラヘルツ電磁波の偏光方向と、照射領域に形成されたSRRの開放部の方向とが垂直である場合に、
図7に破線で示す周波数特性が得られる。具体的には、例えばSRRの開放部の方向がX軸方向である場合に、テラヘルツ電磁波の偏光方向が、X軸方向であれば実線で示す周波数特性が得られ、Y軸方向であれば破線で示す周波数特性が得られる。なお、SRR開放部の方向とはSRRの中心から見て開放部のある方向を言う。
【0056】
SRRの開放部の方向と、テラヘルツ電磁波の偏光方向とが同一方向(平行)である場合、
図7に実線で示すように、周波数P1及びP2にそれぞれ明確な2つのピークが観察される。一方、SRRの開放部の方向と、テラヘルツ電磁波の偏光方向とが垂直である場合、
図7に破線で示すように、周波数V1に明確な1つのピークが観察される。各ピークが得られる周波数は、小さい方から順にP1、V1、P2となっている。以降、周波数P1、V1、P2における透過率のピークをそれぞれピークP1、V1、P2とも言う。
【0057】
照射するテラヘルツ電磁波の周波数(所定周波数)は、照射するテラヘルツ電磁波の偏光方向(所定方向)に対してSRRの開放部の方向を変化させたときに、透過率が大きく変化する周波数であることが好ましい。各ピークP1、V1、P2における平行な偏光に対する透過率(実線)と垂直な偏光に対する透過率(破線)との比に着目すると、比が大きいピークはP1及びV1であり、比が最も大きいピークはV1である。したがって、所定の偏光方向のテラヘルツ電磁波をSRRに照射した際の透過率の違いを比較するにはピークV1を採用することが好ましい。また、比が大きいピークはP1及びV1であることから、本実施形態では、ピークP1の周波数を1次の共振周波数とし、ピークV1の周波数を後述する2次の共振周波数として説明する。なお、1次の共振周波数はピークP1の周波数と周辺を含む周波数帯とし、2次の共振周波数はピークV1の周波数と周辺を含む周波数帯としてもよい。また、透過率の違いの比較にはピークV1の代わりにピークP1を採用してもよい。
【0058】
まず、
図8を用いて、共振構造体の透過特性を調べる例を説明する。ここでは、第1送信部11、第2送信部12、第1受信部21及び第2受信部22を利用して、
図8に示す共振構造体110のテラヘルツ電磁波の透過特性を調べる。共振構造体110は、縦横約20mmの正方形のシート形状を有し、X軸方向に等間隔で4分割した領域から形成されている。
【0059】
図8に示す黒色領域及び白色領域は、それぞれがメタマテリアルで形成されている共振構造体である。
図8の部分拡大図に示したように、各領域にはSRR111、112が並んでいる。黒色領域のSRR111と、白色領域のSRR112は、開放部の方向が異なっている。このため、黒色領域と白色領域は、テラヘルツ電磁波の偏光方向によって異なる透過率を示す。
【0060】
図8は、2次の共振周波数V1のテラヘルツ電磁波を照射する場合を示している。白色領域のSRR112は、Y軸方向と平行な方向に開放部を有する。偏光方向をY軸方向とするテラヘルツ電磁波を照射した際には、白色領域の透過率は略0(ゼロ)になる。一方、偏光方向をX軸方向とするテラヘルツ電磁波を照射した際には、白色領域の透過率は高い値を示す。黒色領域のSRR111は、X軸方向と平行な方向に開放部を有する。このため、偏光方向をX軸方向とするテラヘルツ電磁波を照射した際には、黒色領域の透過率は略0(ゼロ)になる。一方、偏光方向をY軸方向とするテラヘルツ電磁波を照射した際には、黒色領域の透過率は高い値を示す。なお、便宜上、透過率が略0になると説明しているが、透過率が略0になるとは、透過率が高い値と比較して充分に小さい値(例えば、高い値の10%以下)を示すことを意味し、透過率が高い値に対して絶対的に低い値(例えば、6%以下)を示してもよい。
【0061】
共振構造体110を設けた媒体が、
図8に示すように、搬送部2によって矢印200で示す搬送方向に搬送され、共振構造体110が検出領域1を通過する。第1送信部11及び第1受信部21から構成される第1の光学系は、検出領域1でXY平面における偏光方向をX軸方向とする第1テラヘルツ電磁波を送受信する。第1の光学系では、
図8に矢印300で示すように共振構造体110を走査して、X軸方向を偏光方向とする第1テラヘルツ電磁波の透過率が得られる。一方、第2送信部12及び第2受信部22から構成される第2の光学系は、検出領域1でXY平面における偏光方向をY軸方向とする第2テラヘルツ電磁波を送受信する。第2の光学系では、
図8に矢印300で示すように共振構造体110を走査して、Y軸方向を偏光方向とする第2テラヘルツ電磁波の透過率が得られる。
【0062】
この結果、検出領域1でXY平面における偏光方向をX軸方向とする第1テラヘルツ電磁波を送受信する第1の光学系では、
図8下側に示すように、白色領域で透過率が所定の数値T11を示し、黒色領域では透過率が略0(ゼロ)を示す透過率波形91aが得られる。一方、検出領域1でXY平面における偏光方向をY軸方向とする第2テラヘルツ電磁波を送受信する第2の光学系では、
図8上側に示すように、白色領域で透過率が略0(ゼロ)を示し、黒色領域では透過率が所定の数値T12を示す透過率波形91bが得られる。
【0063】
このように、黒色領域を走査した際に、XY平面でX軸方向を偏光方向とするテラヘルツ電磁波を送受信する光学系と、XY平面でY軸方向を偏光方向とするテラヘルツ電磁波を送受信する光学系とで異なる透過率が得られる。同様に、白色領域を走査した際に、XY平面でX軸方向を偏光方向とするテラヘルツ電磁波を送受信する光学系と、XY平面でY軸方向を偏光方向とするテラヘルツ電磁波を送受信する光学系とで異なる透過率が得られる。
【0064】
例えば、X軸方向を偏光方向とするテラヘルツ電磁波のみを送受信する従来装置で、同様に共振構造体110の測定を行った場合は、透過率波形91aのみが得られる。このため、透過率の異なる2種類の領域があることは検出できるが、各領域が、偏光方向によって異なる透過率を示すことは検出できない。本実施形態に係る電磁波検出装置100では、1回の測定で、
図8に示す2種類の透過率波形91a及び91bを得て、所定の偏光方向を有するテラヘルツ電磁波を照射した際に透過率が異なる黒色領域と白色領域の2種類の領域が存在することに加えて、テラヘルツ電磁波の偏光方向を90度変更することにより各領域の透過率の大小が逆転する特徴的な透過特性を有することを検出できる。
【0065】
次に、
図9を用いて、共振構造体の透過特性を調べる別の例を説明する。
図9に示す共振構造体110は、白色領域の構造のみが
図8と異なっている。
図9の部分拡大図に示したように、白色領域は、導電性材料から成る薄膜に、開放部を有さない閉リング共振器(CRR:Closed Ring Resonator。以下「CRR」と記載する)121を等間隔で多数形成した構造を有する。CRR121は、SRRから開放部を除いた、開放部の無いリング形状を有する。CRR121は、SRRと同様に、照射するテラヘルツ電磁波の周波数によって異なる透過率を示す。具体的には、CRR121は、リング部分が同形状を有するSRR112の2次の共振周波数V1で、共振して高い透過率を示す。ただし、CRR121の場合、テラヘルツ電磁波の偏光方向がX軸方向であってもY軸方向であっても、2次の共振周波数V1で透過率が高い値を示す。
【0066】
黒色領域に2次の共振周波数V1のテラヘルツ電磁波を照射する場合、
図8と同様に、テラヘルツ電磁波の偏光方向がY軸方向であれば透過率は高い値を示し、偏光方向がX軸方向であれば透過率は略0(ゼロ)になる。一方、CRR121を含む白色領域に2次の共振周波数V1のテラヘルツ電磁波を照射する場合、テラヘルツ電磁波の偏光方向がX軸方向であっても、Y軸方向であっても高い値を示す。
【0067】
黒色領域のSRR111と、白色領域のCRR121は、開放部の有無のみが異なり、リング部分は同一形状を有する。このため、2次の共振周波数V1においては、白色領域と黒色領域で透過率の値が略同じ値を示す。この結果、検出領域1でXY平面における偏光方向をY軸方向とする第2テラヘルツ電磁波を送受信する第2の光学系では、
図9上側に示すように、白色領域及び黒色領域の両方で略一定の数値T21を示す透過率波形92bが得られる。一方、検出領域1でXY平面における偏光方向をX軸方向とする第1テラヘルツ電磁波を送受信する第1の光学系では、
図9下側に示すように、白色領域では、
図9上側と同様に透過率の数値がT21となり、黒色領域では透過率が略0(ゼロ)を示す透過率波形92aが得られる。
【0068】
このように、CRR121を含む領域を利用する場合も、1回の測定で、
図9に示す2種類の透過率波形92a及び92bを得て、所定の偏光方向を有するテラヘルツ電磁波を照射した際に透過率が異なる黒色領域と白色領域の2種類の領域が存在することに加えて、テラヘルツ電磁波の偏光方向を90度変更することにより各領域の透過率波形が変化する特徴的な透過特性を有することを検出できる。
【0069】
メタマテリアルによって形成した共振構造体は、例えば、銀行券、小切手、商品券等の媒体の偽造を防止する偽造防止構造体として利用される。媒体の表面又は内部に、偽造防止構造体として共振構造体を設けることにより、媒体の偽造を防止することができる。媒体に設けられた偽造防止構造体を検出することにより媒体の種類判別及び真贋判別を行うことができる。
【0070】
本実施形態に係る媒体処理装置は、電磁波検出装置100を含み、電磁波検出装置100を利用してテラヘルツ電磁波を媒体に照射し、得られた特性に基づいて媒体の種類判別及び真贋判別を行うことができる。
【0071】
図10に示すように、本実施形態に係る媒体処理装置101は、は、
図6に示した電磁波検出装置100の構成に加えて、記憶部4を備えている。記憶部4は、半導体メモリ等からなる不揮発性の記憶装置である。記憶部4には、偽造防止構造体に所定のテラヘルツ電磁波を照射して得られる透過率の値、透過率の波形、該波形の特徴等のデータが、予め基準データとして準備されている。
【0072】
制御部3は、上述のように、搬送部2による媒体の搬送、第1送信部11、第2送信部12、第1受信部21及び第2受信部22によるテラヘルツ電磁波の送受信等の制御に加えて、偽造防止構造体を透過したテラヘルツ電磁波の透過率の値、透過率の波形等を取得する。制御部3は、透過率の値、透過率の波形、該波形の特徴等のうち少なくともいずれか1つを、記憶部4に予め準備されている基準データと比較して媒体の真贋を判別する。制御部3は、真贋の判別結果を図示しない外部装置に出力する。例えば、表示装置に出力して真贋の判別結果を表示して報知する。
【0073】
媒体処理装置101は、偽造防止構造体を有する媒体の真贋判別に利用する他、例えば、媒体上に製作した偽造防止構造体の検査に利用することもできる。媒体処理装置101は、真贋の判別結果を出力する他、偽造防止構造体を透過したテラヘルツ電磁波の強度又は透過率を出力することもできる。これを利用して、媒体処理装置101で偽造防止構造体を検査する。具体的には、予め、正しく製作された偽造防止構造体を用いて、検査時に検出されるテラヘルツ電磁波の強度又は透過率を、基準データとして記憶部4に記憶しておく。そして、偽造防止構造体の製作工程で、各送信部11、12からテラヘルツ電磁波を送信して、検査対象の偽造防止構造体に照射し、偽造防止構造体を透過したテラヘルツ電磁波を対応する受信部21又は22で受信する。こうして検査対象の偽造防止構造体から検出したテラヘルツ電磁波の強度又は透過率を、基準データと比較して、基準データに適合するか否かの判定、すなわち製作された偽造防止構造体の合否判定を行う。このように、媒体処理装置101が偽造防止構造体から検出したデータと基準データとの比較が、真贋判別として行われる態様の他、合否判定として行われる態様であってもよい。
【0074】
媒体処理装置101が行う処理について、更に詳細に説明する。記憶部4には、制御部3が媒体を判別するために必要なソフトウェアプログラムやデータが予め保存されている。所定のテラヘルツ電磁波を真の媒体に照射した際に得られる透過率波形を示すデータや、透過率波形の特徴を示すデータが、基準データとして予め記憶部4に保存されている。具体的には、例えば、透過率波形、透過率波形を形成する透過率の値、透過率波形に表れる特徴のうち少なくともいずれか1つが、媒体の判別に利用される。判別に利用される特徴が基準データとして予め記憶部4に保存される。制御部3は、基準データを利用して媒体を判別する判別部として機能する。
【0075】
制御部3は、搬送部2を制御して、判別する媒体を搬送する。制御部3は、各送信部11、12を制御して、搬送部2が搬送する媒体にテラヘルツ電磁波を照射する。制御部3は、各受信部21、22を制御して、媒体を透過したテラヘルツ電磁波を受信する。媒体が真の媒体であれば、共振構造体(偽造防止構造体)を透過したテラヘルツ電磁波の透過率波形が、
図8及び9を参照しながら説明したように、共振構造体の構造に応じた波形となる。制御部3は、得られた透過率波形と記憶部4に保存されている基準データとを比較する。
【0076】
基準データは、真の媒体に設けられた共振構造体にテラヘルツ電磁波を照射して得られる透過率波形の特徴を示すデータである。制御部3は、判別する媒体から得られた透過率波形の特徴が、基準データとして準備されている特徴と一致した場合に、共振構造体は真の媒体に設けられたものである、すなわち判別対象の媒体は真の媒体であると判定する。
【0077】
例えば、記憶部4には、真の媒体の共振構造体を対象として得られる第1の光学系の基準データと、真の媒体の共振構造体を対象として得られる第2の光学系の基準データとが保存されている。制御部3は、判別する媒体の共振構造体を対象として第1の光学系で得られた透過率波形の特徴を、第1の光学系の基準データと比較する。また、制御部3は、判別する媒体の共振構造体を対象として第2の光学系で得られた透過率波形の特徴を第2の光学系の基準データと比較する。
【0078】
第1及び第2の光学系の両方で、共振構造体から得られた透過率波形の特徴が基準データと一致した場合に、制御部3は、共振構造体は真の共振構造体である、すなわち判別対象の媒体は真の媒体であると判定する。
【0079】
このように、媒体処理装置101は、偏光方向が異なる2種類のテラヘルツ電磁波を媒体に照射して、媒体に設けられた共振構造体によって得られた2種類の透過率波形に基づいて媒体の真贋を判別することができる。
【0080】
媒体の真贋を判別することができれば、判別に利用する透過率波形の特徴は特に限定されない。例えば、共振構造体を走査して得られる透過率波形の波形全体を利用して判別を行う態様であってもよい。また、透過率波形を形成する一部の透過率の値を利用して判別を行う態様であってもよいし、透過率波形に表れる傾きや傾きの変化等の値を利用して判別を行う態様であってもよい。
【0081】
第1及び第2の光学系で得られた2種類の透過率波形を別々に判別に利用する態様に限定されず、得られた2種類の透過率波形から透過率の比の値を求め、得られた比の値と基準データとの比較結果に基づいて判別を行う態様であってもよい。
【0082】
また、媒体の真贋判別に利用する特徴は、透過率の比の値に限定されない。例えば、真贋判別に利用する特徴が透過率の差の値であってもよい。具体的には、媒体処理装置101が、第1及び第2の光学系で得られた2種類の透過率波形から透過率の差の値を求め、得られた値を、透過率の差の値について予め準備された基準データと比較する態様であってもよい。
【0083】
種類の異なる媒体に、構造の異なる共振構造体が設けられている場合、媒体処理装置101は、媒体の種類を判別することもできる。具体的には、例えば、種類A、Bの2種類の媒体があって、種類Aの媒体に
図8に示す共振構造体が設けられ、種類Bの媒体に
図9に示す共振構造体が設けられているとする。この場合、媒体処理装置101は、判別する媒体から
図8に示す2種類の透過率波形91a及び91bが得られたことに基づいて、この媒体が真の媒体であり、かつ、種類Aの媒体であると判別することができる。同様に、媒体処理装置101は、判別する媒体から
図9に示す2種類の透過率波形92a及び92bが得られたことに基づいて、この媒体が真の媒体であり、かつ、種類Bの媒体であると判別することができる。
【0084】
例えば、媒体処理装置101は、上述したように表示装置と接続して利用される。表示装置は、媒体処理装置101を利用して得られた判別結果を画面上に表示する。媒体処理装置101の利用者は、表示装置の画面に表示された判別結果を確認して、判別結果に基づいて媒体を処理することができる。
【0085】
また、例えば、媒体処理装置101は、上述したように媒体上に設けた共振構造体を検査する媒体検査装置として利用される。この場合、正常な媒体の特徴を示すデータが基準データとして記憶部4に保存される。制御部3は、検査対象の媒体から得られた特徴と基準データとを比較することにより、媒体の検査結果(合否)を判定する判定部として機能する。媒体に共振構造体を設けた後、制御部3が、上述したように2種類のテラヘルツ電磁波を媒体に照射する。制御部3は、得られた透過率波形等の特徴を基準データと比較することにより、媒体上に設けた共振構造体が所定の特徴を示すか否かを検査する。
【0086】
また、例えば、媒体処理装置101は、電磁波検出装置100を利用して得られた判別結果に基づいて、媒体の計数、収納、分類等の処理を実行する。このとき、電磁波検出装置100を利用して得られた判別結果に基づいて媒体の真贋判別のみが行われる態様であってもよいし、媒体の種類判別及び真贋判別の両方が行われる態様であってもよい。
【0087】
具体的には、例えば、媒体処理装置101は、紙幣処理装置として利用される。紙幣処理装置は、例えば、複数枚の紙幣を1枚ずつ連続して装置内に取り込み、各紙幣の種類判別及び真贋判別を行って、複数の収納部に紙幣を種類別に分けて収納する。紙幣処理装置は、電磁波検出装置100を利用して、上述したように紙幣の種類(金種)及び真贋を判別する。紙幣処理装置は、判別結果に基づいて、紙幣の枚数や金額を計数し、紙幣を種類別に分類して収納部に収納する。
【0088】
従来の紙幣処理装置は、ラインセンサ、厚みセンサ、磁気センサ等の各種センサによって紙幣の光学特徴、厚み、磁気特徴等を調べて、紙幣の種類及び真偽を判別している。電磁波検出装置100を内蔵する紙幣処理装置は、従来のセンサによる判別結果と、電磁波検出装置100を利用した判別結果との両方に基づいて紙幣を判別する態様であってもよい。例えば、紙幣処理装置が、従来のセンサを利用して紙幣の種類を判別した後、電磁波検出装置100を利用して、この紙幣の真贋を判別する態様であってもよい。また、例えば、紙幣処理装置が、従来センサによる種類判別及び真贋判別の結果と、電磁波検出装置100を利用した種類判別及び真贋判別の結果とを得た後、得られた判別結果を総合的に判断して紙幣の種類及び真贋を判別する態様であってもよい。このとき、電磁波検出装置100を利用して真贋判別のみを行い、従来センサによる種類判別結果及び真贋判別結果と、電磁波検出装置100を利用した真贋判別結果とに基づいて総合判断する態様であってもよい。
【0089】
以上説明したように、本実施形態では、電磁波検出装置100が、第1の特徴を有する第1テラヘルツ電磁波を検出領域1に照射する第1送信部11と、第1の特徴と異なる第2の特徴を有する第2テラヘルツ電磁波を検出領域1に照射する第2送信部12と、検出領域1を通過した第1テラヘルツ電磁波を受信する第1受信部21と、検出領域1を通過した第2テラヘルツ電磁波を受信する第2受信部22と、を備えることから、特徴が異なる複数のテラヘルツ電磁波に対する媒体(共振構造体)の特性を容易に検出することができる。
【0090】
また、電磁波検出方法は、第1の特徴を有する第1テラヘルツ電磁波と、第1の特徴と異なる第2の特徴を有する第2テラヘルツ電磁波とを、同一の検出領域1に照射し、検出領域1を通過した第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を受信するステップを備えることから、特徴が異なる複数のテラヘルツ電磁波に対する媒体(共振構造体)の特性を容易に検出することができる。
【0091】
<変形形態>
上記実施形態では、各光学系が送信部及び受信部を備える場合について説明したが、第1及び第2の光学系は、共通の送信部又は受信部を備えていてもよい。
【0092】
具体的には、
図11に示すように、1つの受信部20を設け、第1送信部11の第1送信素子51から送信された第1テラヘルツ電磁と、第2送信部12の第1送信素子52から送信された第2テラヘルツ電磁とを受信部20の受信素子60で受信してもよい。
【0093】
この場合、受信素子60を囲むように集光部として楕円面鏡40aを配置し、受信素子60の受光点(受信点)を楕円面鏡40aに対応する基準楕円の一方の焦点に配置する。また、第1送信素子51を囲むように第1楕円面鏡41を配置し、第1送信素子51の発光点(送信点)を第1楕円面鏡41に対応する基準楕円の一方の焦点に配置する。更に、第2送信素子52を囲むように第2楕円面鏡42を配置し、第2送信素子52の発光点(送信点)を第2楕円面鏡42に対応する基準楕円の一方の焦点に配置する。そして、各基準楕円の他方の焦点を検出領域1内に配置する。
【0094】
これにより、第1送信部11から第1楕円面鏡41に向けて送信された第1テラヘルツ電磁波は、第1楕円面鏡41で検出領域1に向けて斜め方向に反射され、反射された第1テラヘルツ電磁波は、検出領域1で集光される。検出領域1において媒体を透過した第1テラヘルツ電磁波は、楕円面鏡40aの一方の面で反射され、受信素子60に集光される。また、第2送信部12から第2楕円面鏡42に向けて送信された第2テラヘルツ電磁波は、第2楕円面鏡42で検出領域1に向けて斜め方向に反射され、反射された第2テラヘルツ電磁波は、検出領域1で集光される。検出領域1において媒体を透過した第2テラヘルツ電磁波は、楕円面鏡40aの他方の面で反射され、受信素子60に集光される。このようにして、第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を1つの受信部20で受信することができる。
【0095】
図11に示す場合、上記実施形態と同様に、第1送信部11による第1テラヘルツ電磁波の照射のタイミングは、第2送信部12による第2テラヘルツ電磁波の照射のタイミングと異なっていてもよいが、第1送信部11及び第2送信部12は、それぞれ、第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を検出領域1に同時に照射することが好ましい。この場合、受信部20の受信素子60は、偏光方向が互いに異なる少なくと2種類のテラヘルツ電磁波を受信できる素子であることが好ましい。
【0096】
また、
図12に示すように、1つの送信部10を設け、送信部10の送信素子50から第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を送信し、第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波をそれぞれ第1受信部21及び第2受信部22で受信してもよい。
【0097】
この場合、送信素子50を囲むように集光部として楕円面鏡40bを配置し、送信素子50の発光点(送信点)を楕円面鏡40bに対応する基準楕円の一方の焦点に配置する。また、第1受信素子61を囲むように第3楕円面鏡43を配置し、第1受信素子61の受光点(受信点)を第3楕円面鏡43に対応する基準楕円の一方の焦点に配置する。更に、第2受信素子62を囲むように第4楕円面鏡44を配置し、第2受信素子62の受光点(受信点)を第4楕円面鏡44に対応する基準楕円の一方の焦点に配置する。そして、各基準楕円の他方の焦点を検出領域1内に配置する。
【0098】
これにより、送信素子50から楕円面鏡40bの一方の面に向けて送信された第1テラヘルツ電磁波は、楕円面鏡40bで検出領域1に向けて斜め方向に反射され、反射された第1テラヘルツ電磁波は、検出領域1で集光される。検出領域1において媒体を透過した第1テラヘルツ電磁波は、第3楕円面鏡43で反射され、第1受信素子61に集光される。また、送信素子50から楕円面鏡40bの他方の面に向けて送信された第2テラヘルツ電磁波は、楕円面鏡40bで検出領域1に向けて斜め方向に反射され、反射された第2テラヘルツ電磁波は、検出領域1で集光される。検出領域2において媒体を透過した第2テラヘルツ電磁波は、第4楕円面鏡44で反射され、第2受信素子62に集光される。このようにして、第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を1つの送信部10から送信することができる。
【0099】
図12に示す場合、送信部10は、第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を検出領域1に同時に照射してもよいが、送信部10による第1テラヘルツ電磁波の照射のタイミングは、送信部10による第2テラヘルツ電磁波の照射のタイミングと異なっていることが好ましい。
【0100】
また、
図12に示す場合、送信部10は、所定の偏光方向の1種類のテラヘルツ電磁波(例えば、検出領域1でXY平面における偏光方向をX軸方向及びY軸方向に対して45°方向とするテラヘルツ電磁波)を照射し、検出領域1において媒体を透過したテラヘルツ電磁波を、偏光軸方向が互いに異なる2つの偏光子によって互いに特徴が異なる(偏光方向が異なる)第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波にそれぞれ変換し、変換された第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波をそれぞれ第1受信部21及び第2受信部22で受信してもよい。
【0101】
上記実施形態では、一対の検出ユニット5及び6が1つ設けられた場合について説明したが、一対の検出ユニット5及び6は、複数設けられてもよい。
【0102】
具体的には、
図13に示すように、媒体Mが搬送される搬送路7の幅方向(例えばY軸方向)に一対の検出ユニット5及び6を複数配置してもよい。これにより、媒体Mの複数箇所の特性を同時に検出することが可能となる。
【0103】
一対の検出ユニット5及び6は、Y軸方向にアレイ状に1列に配置されてもよく、媒体Mは、搬送部2によって搬送路7を矢印200で示す搬送方向(X軸方向)に搬送されてもよい。なお、搬送部2に含まれるローラやベルト等の搬送手段は、搬送路7を挟んで、対向配置されている。
【0104】
一対の検出ユニット5及び6は、媒体Mの搬送方向(例えばX軸方向)にアレイ状に1列に配置されてもよい。
【0105】
上記実施形態では、第1の特徴及び第2の特徴が偏光特性である場合について説明したが、第1の特徴及び第2の特徴は、周波数であってもよい。すわなち、第1テラヘルツ電磁波が、第1周波数(所定周波数)の電磁波であり、第2テラヘルツ電磁波が、第1周波数と異なる第2周波数(所定周波数)の電磁波であってもよい。この場合であっても、特徴が異なる複数のテラヘルツ電磁波に対する媒体(共振構造体)の特性を容易に検出することができる。この形態は、例えば、共振構造体として機能するメタマテリアルが1種類のSRR(開放部の方向は同一)から構成される場合に利用することができる。より具体的には、例えば、
図7の実線の特徴を持つメタマテリアルの場合、偏光方向が開放部の方向と同一(平行)であり、かつ第1周波数がピーク周波数P1である第1テラヘルツ電磁波を照射して、ピーク周波数P1での透過率を検出するとともに、偏光方向が開放部の方向と同一(平行)であり、かつ第2周波数がピーク周波数V1付近の透過率が0付近となるボトム周波数である第2テラヘルツ電磁波を照射して、ボトム周波数での透過率を検出する。この場合、第1テラヘルツ電磁波を送受信する第1の光学系では、透過率は略一定の値を示し、第2テラヘルツ電磁波を送受信する第2の光学系では、透過率は0付近となる。また、この形態は、例えば、共振構造体として機能するメタマテリアルが、複数の共振周波数を有する場合(具体的には、大きさの異なる大小2種類のSRR(ただし開放部の方向は同一)を含む場合)にも利用することができる。
【0106】
また、第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波は、互いに、偏光特性及び周波数がともに異なっていてもよい。すわなち、第1テラヘルツ電磁波が、検出領域1において第1偏光方向(例えばXY平面における偏光方向がX軸方向)の偏光、かつ第1周波数(所定周波数)の電磁波であり、第2テラヘルツ電磁波が、検出領域1において第1偏光方向と異なる第2偏光方向(例えばXY平面における偏光方向がY軸方向)の偏光、かつ第1周波数と異なる第2周波数(所定周波数)の電磁波であってもよい。この場合であっても、特徴が異なる複数のテラヘルツ電磁波に対する媒体(共振構造体)の特性を容易に検出することができる。この形態は、例えば、共振構造体として機能するメタマテリアルが1種類のSRR(開放部の方向は同一)から構成される場合に利用することができる。より具体的には、例えば、
図7の実線及び破線の特徴を持つメタマテリアルの場合、偏光方向が開放部の方向と同一(平行)であり、かつ第1周波数がピーク周波数P1である第1テラヘルツ電磁波を照射して、ピーク周波数P1での透過率を検出するとともに、偏光方向が開放部の方向と垂直であり、かつ第2周波数がピーク周波数V1である第2テラヘルツ電磁波を照射して、ピーク周波数V1での透過率を検出する。この場合、第1テラヘルツ電磁波を送受信する第1の光学系では、透過率は相対的に低い略一定の値を示し、第2テラヘルツ電磁波を送受信する第2の光学系では、透過率は相対的に高い略一定の値を示す。
【0107】
上記実施形態では、第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波をともに検出領域1にて集光させる場合について説明したが、第1テラヘルツ電磁波及び第2テラヘルツ電磁波を平行光として検出領域1に照射してもよい。
【0108】
上記実施形態では、第1及び第2の光学系が鉛直方向(Z軸方向)から傾いている場合について説明したが、各光学系の配置方向は特に限定されず、例えば、一方の光学系が鉛直方向に直立し、他方の光学系が鉛直方向から傾いていてもよい。
【0109】
上記実施形態では、第1及び第2の2つの光学系を組み合わせた場合について説明したが、検出領域1に互いに異なる特徴を有する複数のテラヘルツ電磁波を照射する光学系の数は、特に限定されず、例えば3つの光学系を組み合わせてもよい。
【0110】
上記実施形態では、搬送される媒体(共振構造体)の特性を検出する場合について説明したが、静止した媒体(共振構造体)の特性を検出してもよい。この場合、電磁波検出装置100は、搬送部2を備えていなくてもよいし、搬送部2が媒体を検出領域1まで搬送して静止させ、その状態で媒体(共振構造体)の特性を検出し、その後、搬送部2が媒体を検出領域1から搬出してもよい。
【0111】
上記実施形態では、媒体がXY平面と平行な状態でX軸方向又はY軸方向に搬送される場合について説明したが、媒体は、XY平面から傾いた状態でX軸方向又はY軸方向に搬送されてもよい。すなわち、媒体は、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方に対して傾斜した状態でX軸方向又はY軸方向に搬送されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上のように、本発明は、特徴が異なる複数のテラヘルツ電磁波に対する対象物の特性を容易に検出するのに有用な技術である。
【符号の説明】
【0113】
1:検出領域
2:搬送部
3:制御部
4:記憶部
5、6:検出ユニット
7:搬送路
10:送信部
11:第1送信部
12:第2送信部
20:受信部
21:第1受信部
22:第2受信部
31~34:第1~第4集光部
40a、40b:楕円面鏡
41~44:第1~第4楕円面鏡
50:送信素子
51:第1送信素子
52:第2送信素子
60:受信素子
61:第1受信素子
62:第2受信素子
71:第1の光軸
72:第2の光軸
91a、91b、92a、92b:透過率波形
100:電磁波検出装置
101:媒体処理装置
110:共振構造体
111、112:SRR
121:CRR
M:媒体