(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】接続状態検出方法、接続状態検出プログラムおよび設計支援装置
(51)【国際特許分類】
G06F 30/18 20200101AFI20230404BHJP
G06F 30/15 20200101ALI20230404BHJP
G01R 31/67 20200101ALI20230404BHJP
【FI】
G06F30/18
G06F30/15
G01R31/67
(21)【出願番号】P 2019056838
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 弘太
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-098632(JP,A)
【文献】特開2011-137800(JP,A)
【文献】特開2015-015002(JP,A)
【文献】特開2008-300246(JP,A)
【文献】特開2016-128996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/398
G01R 31/50 -31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の車載機器と第2の車載機器との間を接続する電線を含むワイヤハーネスまたはその構成部品における不具合の可能性を検出するための接続状態検出方法であって、
少なくとも前記第1の車載機器と接続される第1の電線末端と、前記第2の車載機器と接続される第2の電線末端とのそれぞれの回路について、仕様上必要であり且つ導通状態が確認された第1回路と、仕様上不要であり且つ存在が確認された第2回路との違いを区別する回路種別情報を取得し、
前記第1の電線末端と、前記第2の電線末端との間の接続経路のそれぞれについて、前記第1回路および前記第2回路の組合せに基づき不具合の可能性を検出する、
ことを特徴とする接続状態検出方法。
【請求項2】
前記第1の電線末端および前記第2の電線末端が、共に前記第2回路であり、且つ前記第1の電線末端と前記第2の電線末端との間が導通状態である場合に、該当する接続経路に対して第1の警報情報を割り当てる、
ことを特徴とする請求項1に記載の接続状態検出方法。
【請求項3】
前記第1の電線末端が前記第1回路または前記第2回路であり、且つ前記第2の電線末端の前記回路種別情報が前記第1の電線末端と異なる場合に、該当する接続経路に対して第2の警報情報を割り当てる、
ことを特徴とする請求項1に記載の接続状態検出方法。
【請求項4】
複数の電線を順番に、基点として前記第1の電線末端に割り当てる際に、前記基点が前記第1回路に該当する場合は、該当する接続経路を処理対象から除外する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の接続状態検出方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の接続状態検出方法の処理手順を含む、所定のコンピュータが実行可能な接続状態検出プログラム。
【請求項6】
第1の車載機器と第2の車載機器との間を接続する電線を含むワイヤハーネスまたはその構成部品における不具合の可能性を検出し前記ワイヤハーネスの設計を支援する設計支援装置であって、
少なくとも前記第1の車載機器と接続される第1の電線末端と、前記第2の車載機器と接続される第2の電線末端とのそれぞれの回路について、仕様上必要であり且つ導通状態が確認された第1回路と、仕様上不要であり且つ存在が確認された第2回路との違いを区別する回路種別情報を取得する取得手段と、
前記第1の電線末端と、前記第2の電線末端との間の接続経路のそれぞれについて、前記第1回路および前記第2回路の組合せに基づき不具合の可能性を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出結果を出力データとして出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする設計支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続状態検出方法、接続状態検出プログラムおよび設計支援装置に関し、特にワイヤハーネスを構成する各電線の接続状態を把握するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、例えばメインバッテリーやオルタネータ(発電機)などで構成される電源から車両上の様々な箇所に配置される多数の電装品の各々に対して、それぞれ個別に電源電力を供給する必要がある。また、複数の電子制御ユニット(ECU)の間で相互に通信ができるように、これらを相互に接続する必要がある。また、様々なスイッチやセンサが出力する信号を所定の電子制御ユニットに伝達する必要がある。また、電子制御ユニットの出力する信号により様々な負荷のオンオフ等を個別に制御する必要がある。
【0003】
したがって、一般的な車両においては、多数の電線の集合体であるワイヤハーネスの各部を車両上で所定の配索経路に沿って配置し、車両上の各部に配置された補機等の機器をワイヤハーネスを介して接続している。
【0004】
実際には、例えば数百本程度の電線や、端子、コネクタ、クランプ等の構成要素を、設計図面の内容に従って組み付けると共に、設計図面で定めた配索経路に沿って配置されるような形状に形成したワイヤハーネスの製品を部品メーカで製造する。そして、車両メーカでは、部品メーカから購入したワイヤハーネスを車体に組み付けて車両を製造する。
【0005】
一方、ワイヤハーネスに必要とされる機能や仕様、例えば各部位に配置される電線の本数などは、それを搭載する車両の種類、すなわち車種、グレード、仕向地の違い、各種オプション装備の有無などに応じて様々に変化する。
【0006】
したがって、もしも車両の種類毎に必要最小限の部品だけを利用して最適なワイヤハーネスを構成する場合には、部品メーカが製造するワイヤハーネスの種類や品番も、車両の種類と同様に非常に多くなってしまう。その結果、ワイヤハーネスの製造コストや管理コストが増大する。
【0007】
そのため、ワイヤハーネスの種類や品番数を削減し、複数種類の車両に対して構成が共通のワイヤハーネスを搭載することが従来より行われている。例えば、リアワイパの有無が異なる2種類の車両に同じ構成のワイヤハーネスを搭載する場合には、リアワイパの機構部とそれを制御する電子制御ユニット(ECU)との間を接続する特定電線回路を組み込んだ共通ワイヤハーネスを製造する。ここで、この共通ワイヤハーネスをリアワイパのない車両に搭載した場合には、前記特定電線回路は使用されることがない余分な回路、つまり実際には付いているが、搭載される車両の種類によっては使わずに捨てられる「付捨て」の回路となる。
【0008】
このような「付捨て」の回路については、余分な部品コストや重量の増大よりも、種類や品番数の削減により得られる効果の方が大きいので、近年ますます採用される傾向にある。例えば、特許文献1の付捨て電線の判定方法においては、ワイヤハーネスを構成する電線群に含まれる付捨て電線を解析によって特定するための技術を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記のような「付捨て」回路は、例えば車両メーカが部品メーカに提供するワイヤハーネスの設計仕様書や実体配線図上には存在しない回路である。したがって、「付捨て」回路を含むワイヤハーネスを車両に搭載した場合に、設計時に予期していない余分な回路が形成されている場合がある。
【0011】
その結果、例えば、設計上は1番目の車載機器と2番目の車載機器との間は接続されていないはずなのに、これらの間が「付捨て」回路を介して接続され、電流が流れて車載機器の誤動作が発生する場合がある。
【0012】
「付捨て」回路の存在に起因する上記のような車載機器の誤動作を防止するために、ワイヤハーネスを製造する部品メーカにおいては、非常に手間のかかる作業を人間の判断により行っている。具体的には、製造対象のワイヤハーネスの実体配線図と、品番別の仕様一覧を表す情報とに基づき、オプション設定している回路のそれぞれを全て抽出する。そして、抽出した回路のそれぞれについて、その仕様と接続先機器の仕様とを照合し、システムの動作に異常をもたらす所定の導通条件に該当しないかどうかを人間が判断していた。したがって、確認を必要とする箇所が多く膨大な作業時間を必要とし、ヒューマンエラーによる品質低下の可能性も懸念される。
【0013】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤハーネスに含まれる「付捨て」回路に起因する問題発生の可能性について、状況の把握を容易にすることが可能な接続状態検出方法、接続状態検出プログラムおよび設計支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するために、本発明に係る接続状態検出方法、接続状態検出プログラムおよび設計支援装置は、下記(1)~(6)を特徴としている。
(1) 第1の車載機器と第2の車載機器との間を接続する電線を含むワイヤハーネスまたはその構成部品における不具合の可能性を検出するための接続状態検出方法であって、
少なくとも前記第1の車載機器と接続される第1の電線末端と、前記第2の車載機器と接続される第2の電線末端とのそれぞれの回路について、仕様上必要であり且つ導通状態が確認された第1回路と、仕様上不要であり且つ存在が確認された第2回路との違いを区別する回路種別情報を取得し、
前記第1の電線末端と、前記第2の電線末端との間の接続経路のそれぞれについて、前記第1回路および前記第2回路の組合せに基づき不具合の可能性を検出する、
ことを特徴とする接続状態検出方法。
【0015】
(2) 前記第1の電線末端および前記第2の電線末端が、共に前記第2回路であり、且つ前記第1の電線末端と前記第2の電線末端との間が導通状態である場合に、該当する接続経路に対して第1の警報情報を割り当てる、
ことを特徴とする上記(1)に記載の接続状態検出方法。
【0016】
(3) 前記第1の電線末端が前記第1回路または前記第2回路であり、且つ前記第2の電線末端の前記回路種別情報が前記第1の電線末端と異なる場合に、該当する接続経路に対して第2の警報情報を割り当てる、
ことを特徴とする上記(1)に記載の接続状態検出方法。
【0017】
(4) 複数の電線を順番に、基点として前記第1の電線末端に割り当てる際に、前記基点が前記第1回路に該当する場合は、該当する接続経路を処理対象から除外する、
ことを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の接続状態検出方法。
【0018】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の接続状態検出方法の処理手順を含む、所定のコンピュータが実行可能な接続状態検出プログラム。
【0019】
(6) 第1の車載機器と第2の車載機器との間を接続する電線を含むワイヤハーネスまたはその構成部品における不具合の可能性を検出し前記ワイヤハーネスの設計を支援する設計支援装置であって、
少なくとも前記第1の車載機器と接続される第1の電線末端と、前記第2の車載機器と接続される第2の電線末端とのそれぞれの回路について、仕様上必要であり且つ導通状態が確認された第1回路と、仕様上不要であり且つ存在が確認された第2回路との違いを区別する回路種別情報を取得する取得手段と、
前記第1の電線末端と、前記第2の電線末端との間の接続経路のそれぞれについて、前記第1回路および前記第2回路の組合せに基づき不具合の可能性を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出結果を出力データとして出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする設計支援装置。
【0020】
上記(1)の構成の接続状態検出方法によれば、ワイヤハーネス上の「付捨て」回路を経由して第1の車載機器と第2の車載機器との間に、仕様上存在しないはずの新たな電流通路が形成されるかどうかを、容易に識別できる。例えば、第1の電線末端および第2の電線末端が共に第2回路であって、第1の電線末端と第2の電線末端との間が導通状態である場合には、仕様上存在しないはずの新たな電流通路を介して、第1の車載機器と第2の車載機器とが接続される異常な状態になる。また、このような検出方法は自動化が容易であるので、コンピュータを用いて検出の時間を大幅に短縮したり、ヒューマンエラーの発生を避けて品質を向上できる。
【0021】
上記(2)の構成の接続状態検出方法によれば、第1の電線末端と第2の電線末端との間に、仕様上存在しないはずの新たな電流通路が形成され、第1の車載機器と第2の車載機器とが接続される異常な状態が発生する場合に、第1の警報情報を出力して区別することができる。すなわち、「付捨て」回路が車載システムの機能に影響を及ぼす可能性のある箇所を容易に特定できる。
【0022】
上記(3)の構成の接続状態検出方法によれば、部分的に仕様上存在しない電流通路を介して、第1の電線末端と第2の電線末端との間が接続されるような状況において、第2の警報情報を出力して区別することができる。すなわち、「付捨て」回路がワイヤハーネス全体の機能に影響を及ぼす可能性のある箇所を容易に特定できる。
【0023】
上記(4)の構成の接続状態検出方法によれば、処理が不要な電線を除外するので、ワイヤハーネスやそれを構成するサブハーネスの電線の膨大な組合せのそれぞれについて、処理を繰り返す場合であっても、短時間で処理を完了できる。すなわち、基点に接続することが仕様上必要とされる電線については、それを基点とした異常の検出は不要である。
【0024】
上記(5)の構成の接続状態検出プログラムによれば、ワイヤハーネス上の「付捨て」回路を経由して第1の車載機器と第2の車載機器との間に、仕様上存在しないはずの新たな電流通路が形成されるかどうかを、容易に識別できる。
【0025】
上記(6)の構成の設計支援装置によれば、ワイヤハーネス上の「付捨て」回路を経由して第1の車載機器と第2の車載機器との間に、仕様上存在しないはずの新たな電流通路が形成されるかどうかを、容易に識別できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の接続状態検出方法、接続状態検出プログラムおよび設計支援装置によれば、ワイヤハーネスに含まれる「付捨て」回路に起因する問題発生の可能性について、状況の把握が容易になる。しかも、自動化が容易であるので、コンピュータを用いて検出の時間を大幅に短縮したり、ヒューマンエラーの発生を避けて品質を向上できる。
【0027】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、ワイヤハーネスの構成例を示す実体配線図である。
【
図2】
図2は、製造対象のワイヤハーネスにおける付捨てに関する接続状態を表すデータを生成する処理手順の例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、出力データの構成例-1を示す模式図である。
【
図4】
図4は、結線パターンの例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、複数の電線の組合せパターン毎の導通状態一覧を表す模式図である。
【
図6】
図6は、出力データの構成例-2を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0030】
<ワイヤハーネスの構成例>
図1は、ワイヤハーネス10の構成例を示す実体配線図である。
図1に示すように、ワイヤハーネス10は、複数の電線11、12、13、14、15、16、および17を主体とする様々な構成要素の集合体である。なお、一般的には、ワイヤハーネスは数百本程度の電線で構成される。
【0031】
図1の例では、電線11は、一端に接続部21を有し、他端に接続部22を有する。電線12は、一端に接続部21を有し、他端に接続部23を有する。電線13は、一端に接続部22を有し、他端に接続部24を有する。電線14は、一端に接続部22を有し、他端に接続部25を有する。電線15は、一端に接続部22を有し、他端に接続部26を有する。電線16は、一端に接続部27を有し、他端に接続部28を有する。電線17は、一端に接続部28を有し、他端に接続部29を有する。
【0032】
接続部21は、例えば車両における電子燃料噴射装置(EFI)の電子制御ユニット(ECU)と接続するためのコネクタとして構成される。このコネクタは、電線11の一方の端部に装着された金属端子を収容するキャビティや、電線12の一方の端部に装着された金属端子を収容するキャビティを備えている。
【0033】
接続部22は、例えば複数の電線を連結可能なジョイントコネクタ(J/C)であり、電線11の他端に装着される金属端子と、電線13の一端に装着される金属端子、電線14の一端に装着される金属端子、および電線15の一端に装着される金属端子とを共通に電気的に接続できる構造を有する。
【0034】
接続部24は、電線13と、車両に搭載される様々な部品と接続するために用意されるサブハーネス30とを接続する(W/S)ためのコネクタとして構成される。このコネクタは、電線13の他方の端部に装着された金属端子を収容するキャビティを有している。
【0035】
接続部27は、例えば車両に搭載される何らかの機器と接続するためのコネクタとして構成される。このコネクタは、電線16の一方の端部に装着された金属端子を収容するキャビティを有している。接続部28は、電線16と電線17とを互いに接続する(W to W)ためのコネクタとして構成される。このコネクタは、電線16の他端に装着された金属端子を収容するキャビティと、電線17の一端に装着された金属端子を収容するキャビティとを有している。各接続部23、25、および29は、例えば車両に搭載されるスイッチなどの部品である。
【0036】
例えば、接続部22、24、28を配置することにより、1つの電線の経路を複数の経路に分岐することができるし、複数種類の電線の組合せを変更することも可能になる。また、例えばエンジンルーム内に配置された電線と、車室内空間に配置された電線との連結および分離が可能になる。
【0037】
図1に示したワイヤハーネス10は、例えば車両の車種、グレード、仕向地、各種オプション装備の有無などが異なる複数の車両に共通に搭載できるように構成される。例えばリアワイパを有する車両の場合は、リアワイパを制御する電子制御ユニットと、リアワイパの機構部との間を電気的に接続するための特定配線が必要になるが、リアワイパを有しない車両の場合はこの特定配線が不要になる。しかし、車両に搭載するワイヤハーネスの構成を共通化するために、リアワイパを有しない車両においても、この特定配線を装備したワイヤハーネスを搭載する。
【0038】
したがって、リアワイパを有しない車両においてはこの特定配線は装備されているが、使用されることはなくそのまま捨てられる「付捨て」の電線になる。
図1に示したワイヤハーネス10においては、破線で示してある各電線13、15、16、および17がそれぞれ「付捨て」の電線を表している。
【0039】
<「付捨て」の電線により発生する可能性のある不具合>
例えば、車両の仕様上、電線16および電線17を使わない場合であっても、
図1に示した共通の構成のワイヤハーネス10を車両に実際に搭載することになる。仕様上は、ワイヤハーネス10に電線16および電線17は存在しないこととされる。しかし、現実には電線16および電線17が存在している。
【0040】
また、車両を製造する際には、製造前のワイヤハーネス10の仕様から電線16および電線17が存在することは想定していないので、ワイヤハーネス10の接続部27の位置に何らかの第1の車載機器が接続され、接続部29の位置に第2の車載機器が接続される可能性がある。そして、実際にはワイヤハーネス10に電線16および電線17が存在しているので、電線16および電線17を通過する経路で、第1の車載機器と第2の車載機器との間に電流が流れる。
【0041】
つまり、車両の設計者が想定していないワイヤハーネス10上の経路、つまり接続部27-電線16-接続部28-電線17-接続部29を経由して、第1の車載機器と第2の車載機器との間が接続され、第1の車載機器または第2の車載機器の誤動作が発生する可能性がある。したがって、「付捨て」の電線に起因して車両の設計者が想定していない接続経路が形成される状況を、ワイヤハーネス10の設計時や製造後に容易に把握できることが望まれる。
【0042】
<データを生成する処理手順の例>
製造対象のワイヤハーネスにおける付捨てに関する接続状態を表すデータを生成する処理手順の例を
図2に示す。すなわち、前述の「付捨て」の電線に起因して車両の設計者が想定していない接続経路が製造対象のワイヤハーネス10に形成されるのかどうかを把握するのに役立つ接続状態のデータを、
図2に示した処理手順で生成できる。
【0043】
図2に示した処理手順に対応するプログラムについては、例えばパーソナルコンピュータのような一般的なコンピュータ上で、ワイヤハーネスの設計図面等のデータを扱うことが可能な設計支援(CAD)用アプリケーションソフトウェアと共に実行することが想定される。
【0044】
図2に示した処理手順を実行する前に、入力データファイルFi1として品番別の仕様情報やワイヤハーネスの実体配線図の情報が、車両メーカからワイヤハーネスを製造する部品メーカに提供される。また、これらの情報に基づき、部品メーカはステップS01として「導通チェック」を実施し、その結果のデータを入力データファイルFi2で管理する。
【0045】
「導通チェック」は、ワイヤハーネス10の末端の端子毎に、複数の端子間の導通有無を確認する処理である。なお、実際には例えば1番目の構成要素、2番目の構成要素、3番目の構成要素などを直列につなぎ合わせて1つのワイヤハーネス10を構成する。それぞれの構成要素として、構成が異なる複数種類の部品を用意することができる。したがって、例えば1番目の構成要素、2番目の構成要素、3番目の構成要素がそれぞれ2種類用意されている場合には、8種類(2×2×2)の組合せパターンで3つの構成要素をつなぎ合わせて1つのワイヤハーネス10を構成することができる。「導通チェック」を実施する場合には、全ての組合せパターンについてそれぞれ導通有無を確認する。このような「導通チェック」については、例えば特許文献1に示されている処理をそのまま採用することも可能である。
【0046】
図2に示した「付捨て判定」について以下に説明する。最初に、コンピュータが処理対象のワイヤハーネス10の構成の中から基点となるコネクタをS11で特定する。この基点は、何らかの機器が接続されるワイヤハーネス10の末端に限定される。ワイヤハーネス10の上流側、下流側のどちらの末端も基点にすることができる。例えば、
図1に示したワイヤハーネス10の場合、接続部21、27、23、24、25、26、および29のコネクタが順番に基点のコネクタとして選択される。
【0047】
次に、コンピュータが検査対象となる基点の端子をS12で特定する。例えば、
図1に示したワイヤハーネス10において、基点のコネクタが接続部21である場合に、電線11の端子と、電線12の端子との2つ以上が接続部21に存在している。したがって、電線11の端子、または電線12の端子を基点の端子として順番に選択する。
【0048】
次に、コンピュータが、基点のコネクタおよび端子と接続される最終接続先のコネクタおよび端子をS13で特定する。例えば、
図1に示したワイヤハーネス10において、基点のコネクタとして接続部21を選択し、基点の端子として電線11の端子を選択した場合には、電線を介してそれと接続される反対側の末端にある接続部24(またはサブハーネス30)、接続部25、26の各コネクタおよび各端子が最終接続先として順番に選択される。
【0049】
次に、コンピュータは、S11~S13で特定した基点と最終接続先との間の各電線の経路について、入力データファイルFi2の内容から接続種別の情報を取得する。つまり、基点の端子と、最終接続先の端子との間に導通があるか否かを表す情報を取得する。また、基点の端子と、最終接続先の端子のそれぞれについて、車両側の仕様上で導通が必要とされているものと、それ以外、つまり「付捨て」とを区別するための情報も取得する。
【0050】
また、S14において、基点の端子と、最終接続先の端子のいずれにも「付捨て」が存在しない場合には、当該経路についてはS15以降の処理対象から除外し、S11~S13のいずれかに戻って別の端子を選択する。つまり、末端に「付捨て」が存在しない経路については、「付捨て」の電線の影響を考慮する必要がないので、その処理は省略する。これにより、繰り返し回数が多くなっても処理全体の所要時間を大幅に短縮できる。
【0051】
次に、コンピュータは、S11~S13で特定した基点と最終接続先との間の各電線の経路について、基点側の電線と最終接続先側の電線が、共に「付捨て」であるか否かを識別する。共に「付捨て」である場合はS15からS16に進み、違う場合はS19の処理に進む。
【0052】
コンピュータは、基点側に繋がった電線と最終接続先側に繋がった電線との間の途中経路に存在する各電線の接続状態をS16で把握する。すなわち、基点側に繋がった電線の位置から最終接続先に向かって順番に接続経路を辿り、それぞれの電線が車両の仕様上必要な導通回路か、「付捨て」の電線かを区別する。
【0053】
コンピュータは、S17でS16の結果に基づいて、当該経路の基点から最終接続先までの間が、「付捨て」の電線だけで繋がっている状態か否かを識別する。そして、「付捨て」の電線だけで繋がっている場合には、次のS18で当該経路について警告情報Wi1を生成する。
【0054】
一方、S11~S13で特定した基点と最終接続先との間の各電線の経路において、基点側の電線と最終接続先側の電線が、共に「付捨て」ではない場合は、コンピュータの処理はS15からS19に進む。そして、基点側の電線と最終接続先側の電線が、共に車両の仕様上必要な導通回路であるか否かをS19で識別する。共に必要な導通回路である場合は、S20で「異常なし」を判定する。
【0055】
また、基点側の電線と最終接続先側の電線のいずれか一方が仕様上不要な「付捨て」である場合は、コンピュータはS21の処理に進む。そして、基点側に繋がった電線の位置から最終接続先に向かって順番に接続経路を辿り、基点から最終接続先まで何らかの電線により繋がっている(導通している)か否かをS21で識別する。基点から最終接続先まで繋がっている場合は、次のS22で当該経路について注意情報Wi2を生成する。
【0056】
コンピュータは、S11で選択した基点コネクタに存在する全ての端子について、S12~S23の処理を繰り返し実施する。また、1つの基点コネクタに存在する全ての端子についてS12~S23の処理が終了した場合は、S24からS11に戻って選択する基点コネクタを更新する。
【0057】
コンピュータは、全ての基点コネクタのそれぞれに対する全ての基点端子の処理が終了したら、S24からS25に進み、生成した出力データを出力データファイルFoに書き込む。この出力データの中には、S18で生成される警告情報Wi1、およびS22で生成される注意情報Wi2を含めることができる。
【0058】
<出力データの構成例-1>
出力データの構成例-1を
図3に示す。
図3に示した出力データ40は、
図2に示した入力データファイルFi1およびFi2の内容に基づいて
図2の処理を実施することにより作成できる。また、この出力データ40は
図2のS18で生成される警告情報Wi1および注意情報Wi2を含んでいる。
【0059】
この出力データ40は、基点側情報41、基点端子42、接続先端子43、接続先コネクタ番号44、接続先コネクタ名45、導通種別46、結線状態47、ハーネス品番48、接続元端子49、接続元コネクタ50、接続先端子51、接続先コネクタ52、コネクタ名53、および判定結果54の各項目を含んでいる。
【0060】
また、基点側情報41、基点端子42、接続先端子43、接続先コネクタ番号44、接続先コネクタ名45、および導通種別46は基点側に属するデータである。また、ハーネス品番48、接続元端子49、接続元コネクタ50、接続先端子51、接続先コネクタ52、コネクタ名53、および判定結果54は最終接続先に属するデータである。
【0061】
結線状態47は、基点から最終接続先までの経路における各電線の結線状態を表している。この結線状態47の中で、破線で示された箇所は「付捨て」の電線を表し、実線で示された箇所は車両の仕様上導通が必要な電線を表している。結線状態47の箇所の詳細は後述する。
【0062】
基点側情報41および基点端子42は、基点として割り当てられた各コネクタの番号、コネクタ名、部品番号、当該コネクタ内の各キャビティ番号、各キャビティに配置する端子の端子コード等を含んでいる。接続先端子43、接続先コネクタ番号44、および接続先コネクタ名45は、電線毎に基点からの接続先を表す情報である。
導通種別46は、基点側の電線毎の導通状態を表している。導通種別46の内容には、「導通回路」、「付捨てA」、「付捨てB」の3種類がある。
【0063】
導通種別46における「導通回路」は、基点から最終接続先までの経路の電線中に「付捨ての電線」が含まれていない、つまり車両の仕様上必要な電線だけで構成されることを意味している。また、基点側の電線の下流側が複数の経路に分岐して複数の最終接続先とそれぞれ接続される場合には、それぞれの最終接続先と接続する電線全てが、車両の仕様上必要な電線である場合に導通種別46が「導通回路」となる。
【0064】
導通種別46における「付捨てA」は、基点から最終接続先までの間の経路が、「付捨て」の電線だけで形成されることを表している。また、基点側の電線の下流側が複数の経路に分岐して複数の最終接続先とそれぞれ接続される場合には、それぞれの最終接続先と接続する電線の少なくとも1つの経路について、基点から最終接続先まで「付捨て」の電線だけで形成される場合に、導通種別46が「付捨てA」になる。つまり、いずれかの最終接続先の電線に警告情報Wi1が割り当てられている場合に「付捨てA」になる。
【0065】
導通種別46における「付捨てB」は、基点側に接続された電線が「付捨て」の電線であるが、「付捨て」の電線だけでは最終接続先までの導通経路は1つも形成されていない状態を表している。つまり、注意情報Wi2が割り当てられている場合に「付捨てB」になる。
【0066】
ハーネス品番48、接続元端子49、接続元コネクタ50、接続先端子51、接続先コネクタ52、コネクタ名53、および判定結果54は、最終接続先と接続される電線毎の情報を表している。また、判定結果54は、警告情報Wi1に相当する内容を表している。すなわち、
図3において、判定結果54の上から1番目、10番目、11番目、12番目の各欄に示されている「WARNING」が、電線毎の当該経路における警告情報Wi1を表している。
【0067】
<結線パターンの例>
図3の出力データ40における結線状態47の箇所に含まれている結線パターンの一部分を抽出した状態を
図4に示す。すなわち、結線パターン60A、60B、60C、および60Dが
図4に示されている。
【0068】
図4に示した結線パターン60Aは、基点側に配置された1つの電線61と、最終接続先側に配置された1つの電線62とを連結したパターンとして構成されている。ここで、電線61および62は、共に破線で表された「付捨て」の電線である。したがって、この結線パターン60Aは導通種別46の「付捨てA」に相当する。
【0069】
結線パターン60Bは、基点側に配置された1つの電線63の下流側が3つに分岐され、電線64A、64B、64Cのそれぞれを経由して3つの最終接続先と接続されるパターンとして構成されている。ここで、実線で示されている電線63、64A、64B、および64Cはいずれも「付捨て」ではない必要な導通経路を表している。したがって、この結線パターン60Bは導通種別46の「導通回路」に相当する。
【0070】
結線パターン60Cは、基点側に配置された1つの電線65の下流側が6つに分岐され、電線66A、66B、66C、66D、66E、および66Fのそれぞれを経由して6つの最終接続先と接続されるパターンとして構成されている。ここで、実線で示されている電線66A、66B、66C、および66Dは車両の仕様上必要な導通経路であり、破線で示されている電線65、66E、および66Fは「付捨て」の電線である。したがって、電線65および電線66Eを経由する経路と、電線65および電線66Fを経由する経路とのそれぞれが、警告情報Wi1の条件に該当する。そのため、この結線パターン60Cは、導通種別46の「付捨てA」に相当する。
【0071】
結線パターン60Dは、基点側に配置された1つの電線67と、最終接続先側に配置された1つの電線68とを連結したパターンとして構成されている。ここで、電線67は「付捨て」の電線であり、電線68は車両の仕様上必要な導通経路である。したがって、この結線パターン60Dは導通種別46の「付捨てB」に相当する。
【0072】
<導通状態の一覧>
複数の電線の組合せパターン毎の導通状態一覧を
図5に示す。
図5に示した導通状態一覧は、
図3に示した出力データ40の一部分40aの箇所の詳細を表している。
【0073】
また、本実施形態では1つのワイヤハーネスを複数の構成要素(サブハーネスなどの中間部品)を連結して構成すると共に、構成要素毎に複数種類の部品が用意されている場合を想定している。したがって、ワイヤハーネスを構成する複数の構成要素の組合せパターンが多数存在する。多数の組合せパターンのそれぞれのデータが
図5に示されている。
【0074】
図5に示した導通情報70は、端子番号71、付け捨て情報72、73、基点側の端子状態74、接続先の端子状態75A、75B、75C、75D、75E、および75Fを含んでいる。
図2に示した入力データファイルFi1、Fi2のデータに基づき、
図5のような導通情報70を得ることができる。
【0075】
図5中に示した各記号「○」、「●」、「-」の意味は以下の通りである。
「○」:車両の仕様上は存在しない「付捨て」電線により導通がある
「●」:車両の仕様上必要な「導通回路」
「-」:接続なし(導通がない)
【0076】
図5に示した導通情報70のうち、グループ77Aの範囲、つまり端子番号71が「1」~「11」のそれぞれの導通経路では、基点側の端子状態74と、接続先の端子状態75Eが共に「付捨て」電線である。つまり、基点側の車載機器と、最終接続先の車載機器との間に、仕様外の予期しない導通回路が形成されている問題のある箇所である。したがって、グループ77Aの各導通経路については、付け捨て情報72の欄に、警告情報Wi1が存在することを表す「有」が
図2のS18で記録される。
【0077】
また、
図5に示した導通情報70のうち、グループ77Bの範囲、つまり端子番号71が「12」~「15」のそれぞれの導通経路では、基点側の端子状態74と、接続先の端子状態75A~75Dの中に、「付捨て」電線による導通経路が存在しない。つまり、仕様通りの導通状態になっている。
【0078】
また、
図5に示した導通情報70のうち、グループ77Cの範囲、つまり端子番号71が「16」~「23」のそれぞれの導通経路では、基点側の端子状態74が必要な「導通回路」であるが、接続先の端子状態75A~75Fの中に、「付捨て」電線による導通経路(75F:○)が含まれている。つまり、仕様上必要な導通回路と、「付捨て」電線による導通経路とが混在する状態で、基点側の車載機器と、最終接続先の車載機器との間を接続する予期しない回路が形成されている。したがって、グループ77Cの各導通経路については、付け捨て情報73の欄に、注意情報Wi2が存在することを表す「有」が
図2のS22で記録される。グループ77Dの各導通回路もグループ77Cと同様である。
【0079】
<出力データの構成例-2>
出力データの構成例-2を
図6に示す。
図6に示した出力データは、
図3に示した出力データ40の変形例である。
図6に示した出力データについても、
図2と同様の処理により作成できる。
【0080】
図6の出力データは、補機コネクタ情報81と最終接続先端末情報82とを含んでいる。また、補機コネクタ情報81の中には、基点側のコネクタに関する図面番号81Aと、コネクタ番号81Bと、コネクタ名称81Cと、コネクタ品番81Dと、基点側導通種別81Eと、端子記号81Fと、コネクタ番号81Gとが含まれている。
【0081】
また、最終接続先端末情報82の中には、図面番号82Aと、接続先導通種別82Bと、コネクタ番号82Cと、コネクタ名称82Dと、コネクタ品番82Eと、端子記号82Fと、コネクタ番号82Gとが含まれている。
【0082】
基点側導通種別81Eの内容は、「付捨て」、「必要」、それ以外の3種類のいずれかの情報を表す。基点側導通種別81Eの「付捨て」は、車両の仕様上は存在しないが導通状態が確認されている付捨て電線が基点側に実在することを表す。基点側導通種別81Eの「必要」は、車両の仕様により導通することが必要であって、且つ導通状態が確認されている基点側の電線を表す。
【0083】
接続先導通種別82Bの内容は、「付捨て」、「必要」のいずれかの情報を表す。接続先導通種別82Bの「付捨て」は、車両の仕様上は存在しないが導通状態が確認されている付捨て電線が最終接続先側に実在することを表す。接続先導通種別82Bの「必要」は、車両の仕様により導通することが必要であって、且つ導通状態が確認されている最終接続先側の電線を表す。
【0084】
<接続状態検出方法の利点>
図2に示したような処理を実施することにより、
図3、
図5に示した出力データ40や、
図6に示した出力データを生成できる。つまり、ワイヤハーネス10に含まれる「付捨て」の電線に起因して、車両上のシステムを設計する際に想定されていない異常な導通経路が実際に製造するワイヤハーネス10の中に形成されるかどうかを把握するのが容易になる。すなわち、この異常な導通経路によって複数の車載機器の間が電気的に接続されて誤動作が発生するのを回避することが可能になる。
【0085】
例えば、
図1に示したワイヤハーネス10においては、共に「付捨て」の電線16および17を通る経路で接続部27と接続部29の間が導通する。したがって、このワイヤハーネス10を製造して車両に搭載し、左側末端の接続部27に第1の車載機器を接続し、右側末端の接続部29に第2の車載機器を接続した場合には、第1の車載機器と第2の車載機器の間が想定外の経路で接続され、誤動作する可能性がある。
【0086】
しかし、
図2に示した処理を実行して
図3の出力データ40を生成した場合には、この出力データ40の内容から問題の可能性を容易に把握できる。例えば、
図3の最上部に示したように、基点端子42が「JB6」の経路については、導通種別46が「付捨てA」であり、判定結果54に「WARNING」が現れているので、基点端子42と最終接続先の端子との間が「付捨て」の電線だけで導通状態になる異常な導通経路を形成していることを確認できる。
【0087】
また、基点端子42が「YH8」、接続先コネクタ52の「620」、「610」の2つの経路についても、判定結果54に「WARNING」が現れているので、基点端子42と最終接続先の端子との間が「付捨て」の電線だけで導通状態になる異常な導通経路を形成していることを確認できる。
【0088】
また、基点端子42が「YW7」、「MLW」、「JF3」、「JF4」の4つのそれぞれの経路については、導通種別46が「付捨てB」であるので、少なくとも基点側に「付捨て」の電線の導通経路が含まれていることを確認できる。
【0089】
また、様々な組合せパターンの多数の電線の経路のそれぞれについてS11~S24の処理を繰り返す場合であっても、基点側の電線が仕様上必要な導通経路であるものはS14でそれ以降の処理の対象から除外することにより、全体の処理の所要時間を大幅に短縮できる。
【0090】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る接続状態検出方法、接続状態検出プログラムおよび設計支援装置の特徴をそれぞれ以下[1]~[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 第1の車載機器と第2の車載機器との間を接続する電線を含むワイヤハーネス(10)またはその構成部品における不具合の可能性を検出するための接続状態検出方法であって、
少なくとも前記第1の車載機器と接続される第1の電線末端と、前記第2の車載機器と接続される第2の電線末端とのそれぞれの回路について、仕様上必要であり且つ導通状態が確認された第1回路(
図5中の「●」)と、仕様上不要であり且つ存在が確認された第2回路(
図5中の「○」)との違いを区別する回路種別情報を取得し(S14)、
前記第1の電線末端と、前記第2の電線末端との間の接続経路のそれぞれについて、前記第1回路および前記第2回路の組合せに基づき不具合の可能性を検出する(S18、S22)、
ことを特徴とする接続状態検出方法。
【0091】
[2] 前記第1の電線末端および前記第2の電線末端が、共に前記第2回路であり、且つ前記第1の電線末端と前記第2の電線末端との間が導通状態である場合に、該当する接続経路に対して第1の警報情報(警告情報Wi1)を割り当てる(S15~S18)、
ことを特徴とする上記[1]に記載の接続状態検出方法。
【0092】
[3] 前記第1の電線末端が前記第1回路または前記第2回路であり、且つ前記第2の電線末端の前記回路種別情報が前記第1の電線末端と異なる場合に、該当する接続経路に対して第2の警報情報(注意情報Wi2)を割り当てる(S19~S22)、
ことを特徴とする上記[1]に記載の接続状態検出方法。
【0093】
[4] 複数の電線を順番に、基点として前記第1の電線末端に割り当てる際に、前記基点が前記第1回路に該当する場合は、該当する接続経路を処理対象から除外する(S14)、
ことを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の接続状態検出方法。
【0094】
[5] 上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の接続状態検出方法の処理手順(
図2参照)を含む、所定のコンピュータが実行可能な接続状態検出プログラム。
【0095】
[6] 第1の車載機器と第2の車載機器との間を接続する電線を含むワイヤハーネス(10)またはその構成部品における不具合の可能性を検出し前記ワイヤハーネスの設計を支援する設計支援装置であって、
少なくとも前記第1の車載機器と接続される第1の電線末端と、前記第2の車載機器と接続される第2の電線末端とのそれぞれの回路について、仕様上必要であり且つ導通状態が確認された第1回路(
図5中の「●」)と、仕様上不要であり且つ存在が確認された第2回路(
図5中の「○」)との違いを区別する回路種別情報を取得する取得手段(S14)と、
前記第1の電線末端と、前記第2の電線末端との間の接続経路のそれぞれについて、前記第1回路および前記第2回路の組合せに基づき不具合の可能性を検出する検出手段(S18、S22)と、
前記検出手段による検出結果を出力データとして出力する出力手段(S25)と、
を備えることを特徴とする設計支援装置。
【符号の説明】
【0096】
10 ワイヤハーネス
11,12,13,14,15,16,17 電線
21,22,23,24,25,26,27,28,29 接続部
30 サブハーネス
40 出力データ
41 基点側情報
42 基点端子
43 接続先端子
44 接続先コネクタ番号
45 接続先コネクタ名
46 導通種別
47 結線状態
48 ハーネス品番
49 接続元端子
50 接続元コネクタ
51 接続先端子
52 接続先コネクタ
53 コネクタ名
54 判定結果
60A,60B,60C,60D 結線パターン
61,62,63,64,65,66,67,68 電線
70 導通情報
71 端子番号
72,73 付け捨て情報
74 基点側の端子状態
75A,75B,75C,75D,75E,75F 接続先の端子状態
77A,77B,77C,77D グループ
81 補機コネクタ情報
82 最終接続先端末情報
Wi1 警告情報
Wi2 注意情報
Fi1,Fi2 入力データファイル
Fo 出力データファイル