(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】血圧関連情報表示装置、血圧関連情報表示方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
A61B5/022 500Z
A61B5/022 400Z
(21)【出願番号】P 2019056874
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2022-03-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業ICTを活用した診療支援技術研究開発プロジェクト」「ウェアラブルモニターで実現する循環器診断支援技術の開発」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505246789
【氏名又は名称】学校法人自治医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】小久保 綾子
(72)【発明者】
【氏名】桑原 光巨
(72)【発明者】
【氏名】山下 新吾
(72)【発明者】
【氏名】苅尾 七臣
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168301(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/168806(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/179701(WO,A1)
【文献】特開2016-064125(JP,A)
【文献】特開2015-029565(JP,A)
【文献】特開2006-212218(JP,A)
【文献】特開2018-153269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/1495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧サージに関連する情報を可視化して表示する血圧関連情報表示装置であって、
被験者の脈動に連動して変化する血圧の時系列データから、予め定められた判定基準に基づいて血圧サージを検出する血圧サージ検出部と、
上記血圧の時系列データに伴って、上記被験者の身体状態を表す身体状態情報を入力する身体状態入力部と、
前記血圧サージの特徴量を抽出する抽出部と、
抽出された前記血圧サージの特徴量の統計処理を行う統計処理部と、
入力された前記身体状態情報に基づいて、前記被験者の身体状態の特徴量を算出する算出部と、
表示画面上で、前記統計処理が行われた前記血圧サージの特徴量と、前記身体状態の特徴量との相関関係を表示する処理を行う表示処理部と
、
前記被験者への投薬に関する投薬情報を入力する投薬情報入力部と、を備え、
前記表示処理部は、前記相関関係を、入力された前記投薬情報と関連付けて表示する処理を行う、
ことを特徴とする血圧関連情報表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の血圧関連情報表示装置において、
前記表示処理部は、前記表示画面上に、前記血圧サージの特徴量を表す一方の軸と、前記身体状態の特徴量を表す他方の軸とで規定される座標系を設定し、前記血圧サージの特徴量と前記身体状態の特徴量とに対応する点をプロットした状態の画像として、前記相関関係を表示する、
ことを特徴とする血圧関連情報表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の血圧関連情報表示装置において、
前記血圧サージの特徴量は、前記血圧サージが開始してから前記血圧サージがピーク点に達するまで、または、前記血圧サージがピーク点に達してから前記血圧サージが終了するまでのサージ変動量である、
ことを特徴とする血圧関連情報表示装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の血圧関連情報表示装置において、
前記身体状態の特徴量は、無呼吸・低呼吸のサマリデータに基づく1時間当たりの無呼吸・低呼吸指数、無呼吸・低呼吸持続時間の平均値、経皮的動脈血酸素飽和度の低下量の平均値、経皮的動脈血酸素飽和度の低下時間の平均値、経皮的動脈血酸素飽和度のボトム値の平均値、覚醒反応指数、レム睡眠の割合、心拍数または脈拍数の変動量平均値、もしくは心拍数または脈拍数のピーク値の平均値または中央値等の統計量のいずれかである、
ことを特徴とする血圧関連情報表示装置。
【請求項5】
血圧サージに関連する情報を可視化して表示する血圧関連情報表示方法であって、
血圧サージ検出部により、被験者の脈動に連動して変化する血圧の時系列データから、予め定められた判定基準に基づいて血圧サージを検出し、
身体状態入力部により、上記血圧の時系列データに伴って、上記被験者の身体状態を表す身体状態情報を入力し、
抽出部により、前記血圧サージの特徴量を抽出し、
統計処理部により、抽出された前記血圧サージの特徴量の統計処理を行い、
算出部により、前記被験者の身体状態の特徴量を算出し、
投薬情報入力部により、前記被験者への投薬に関する投薬情報を入力し、
表示処理部により、表示画面上で、前記統計処理が行われた前記血圧サージの特徴量と、前記身体状態の特徴量との相関関係を、入力された前記投薬情報と関連付けて表示する処理を行う、
ことを特徴とする血圧関連情報表示方法。
【請求項6】
請求項5に記載の血圧関連情報表示方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は血圧関連情報表示装置および血圧関連情報表示方法に関し、より詳しくは、被験者の血圧サージに関連する情報を可視化して表示する装置および方法に関する。また、この発明は、そのような血圧関連情報表示方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸症候群(SAS;Sleep Apnea Syndrome)を罹患している患者においては、無呼吸後の呼吸再開時に血圧が急激に上昇し、その後に下降することが知られている。本明細書では、このような急激な血圧変動を「血圧サージ」(または単に「サージ」)と呼ぶ。患者に発生した血圧サージに関連する情報(例えば、血圧サージの特徴量)を可視化して表示することは、SASの診断や治療に役立つと考えられる。
【0003】
従来、例えば特許文献1(WO 2017/082107 A1)の
図3では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者における血圧サージの特徴量の一つであるサージ変動量がグラフとして表示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、血圧サージの頻度とサージ変動量の可視化を行っているため、この可視化を服薬前と服薬後のそれぞれで作成することにより、服薬の効果を確認することは可能であると思われる。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、血圧サージの発生という結果を示す指標のみしか把握することができず、血圧サージを引き起こす原因となる指標がどのように変化したかを把握することができない。
【0007】
投薬前後で血圧サージの発生頻度等の血圧サージの傾向を把握できるだけでも、投薬の効果を確認することは可能であると思われるが、血圧サージを引き起こす原因となる指標、例えば、睡眠の質との相関関係が可視化されて把握できれば、さらに有効な情報を提供することができる。
【0008】
睡眠の質を例として挙げると、発生頻度などの血圧サージの傾向は、睡眠の質によって変わることが確認されているため、実際の治療においては睡眠剤が処方されることがある。睡眠の質を表す指標としては、レム睡眠の割合が挙げられるが、血圧サージの発生頻度と、レム睡眠の割合との相関関係が可視化されて明らかになれば、例えば、服薬の結果、レム睡眠の割合が減り、睡眠の質は向上したが、血圧サージの指標は変わっていない等の判断をすることが可能となる。その結果、血圧サージの要因は、睡眠の質とは別にあるとして投薬する薬の種類を変更することが可能となる。
【0009】
そこで、この発明の課題は、表示画面上で、血圧サージの特徴量と、血圧サージの検出時における身体状態の特徴量との相関関係を表示できる血圧関連情報表示装置および血圧関連情報表示方法を提供することにある。また、この発明の課題は、そのような血圧関連情報表示方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この開示の血圧関連情報表示装置は、
血圧サージに関連する情報を可視化して表示する血圧関連情報表示装置であって、
被験者の脈動に連動して変化する血圧の時系列データから、予め定められた判定基準に基づいて血圧サージを検出する血圧サージ検出部と、
上記血圧の時系列データに伴って、上記被験者の身体状態を表す身体状態情報を入力する入力部と、
前記血圧サージの特徴量を抽出する抽出部と、
抽出された前記血圧サージの特徴量の統計処理を行う統計処理部と、
入力された前記身体状態情報から、前記被験者の身体状態の特徴量を算出する算出部と、
表示画面上で、前記統計処理が行われた前記血圧サージの特徴量と、前記身体状態の特徴量との相関関係を表示する処理を行う表示処理部と、を備える、
ことを特徴とする。
【0011】
本明細書で、「予め定められた判定基準」とは、典型的には、睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者において血圧サージを検出するための基準を指す。例えば、特願2017-048946号、特願2017-050066号に開示されているような、ピーク検出区間(例えば、15拍分の期間)内にサージ開始点の時刻からサージピーク点の時刻までが含まれるとともに、サージ開始点の時刻における収縮期血圧値とピーク点の時刻における収縮期血圧値との差(血圧変動量)が20mmHg(または15mmHg)以上であること、サージ開始点の時刻とピーク点の時刻との間の期間が5拍分よりも大きいこと、かつ、ピーク点の時刻とサージ終了点の時刻との間の期間が7拍分よりも大きいことを指す。
【0012】
また、「血圧サージの特徴量」とは、血圧サージが開始してから血圧サージがピーク点に達するまでのサージ変動量[mmHg]、上昇サージ速度[mmHg/sec.]、または血圧サージがピーク点に達してから血圧サージが終了するまでのサージ変動量[mmHg]、下降サージ速度[mmHg/sec.]、もしくは、上昇時間または下降時間におけるサージ面積、あるいは、上昇時間と下降時間を合わせたサージ時間等を含む概念である。また、「血圧サージの特徴量」は、上述のような特徴量同士を四則演算で組み合わせたものを含む。
【0013】
また、「身体状態」とは、無呼吸・低呼吸状態、経皮的動脈血酸素飽和度、覚醒状態、レム睡眠状態といった睡眠段階、覚醒反応状態、心拍数、脈拍数などの状態を指す。「身体状態の特徴量」とは、無呼吸・低呼吸のサマリデータに基づく1時間当たりの無呼吸・低呼吸指数、無呼吸・低呼吸持続時間の平均値、あるいは、血圧サージ発生時における経皮的動脈血酸素飽和度の低下量の平均値、経皮的動脈血酸素飽和度の低下時間の平均値、経皮的動脈血酸素飽和度のボトム値の平均値、心拍数または脈拍数の変動量平均値、心拍数または脈拍数のピーク値の平均値、あるいは中央値等の統計量等を含む概念である。また、「身体状態の特徴量」とは、覚醒反応指数、レム睡眠の割合等を含む概念である。
【0014】
また、「表示画面」は、典型的には表示器の画面を指すが、例えば、プリンタによって出力される紙面であってもよい。前記血圧サージの特徴量と、前記身体状態の特徴量との「相関関係を表示」とは、例えば、前記血圧サージの特徴量を表す一方の軸と、前記身体状態の特徴量を表す他方の軸とで規定される平面を設定し、上記平面上に、前記血圧サージの特徴量と前記身体状態の特徴量とに対応する点をプロットして表示することを指す。
【0015】
この開示の血圧関連情報表示装置では、血圧サージ検出部は、被験者の脈動に連動して変化する血圧の時系列データから、予め定められた判定基準に基づいて血圧サージを検出する。身体状態入力部は、上記血圧の時系列データに伴って、上記被験者の身体状態を表す身体状態情報を入力する。抽出部は、血圧サージの特徴量を抽出する。統計処理部は、抽出された血圧サージの特徴量の統計処理を行う。算出部は、入力された前記身体状態情報から、被験者の身体状態の特徴量を算出する。表示処理部は、表示画面上で、統計処理が行われた血圧サージの特徴量と、上述した身体状態の特徴量との相関関係を表示する処理を行う。これにより、ユーザ(典型的には、医師、看護師などの医療関係者を指す。被験者であってもよい。以下同様。)は、前記表示画面を見ることによって、直感的に、前記被験者における血圧サージの変動量等の結果を示す指標と、睡眠の質等の血圧サージの発生の原因となる指標との相関関係を把握することができる。このことは、SASの診断や治療のほか、心血管の疾病リスクを評価する材料や、特定の臓器の疾病リスクを評価する材料として役立つと考えられる。
【0016】
一実施形態の血圧関連情報表示装置では、前記表示処理部は、前記表示画面上に、前記血圧サージの特徴量を表す一方の軸と、前記身体状態の特徴量を表す他方の軸とで規定される座標系を設定し、前記血圧サージの特徴量と前記身体状態の特徴量とに対応する点をプロットした状態の画像として、前記相関関係を表示する、ことを特徴とする。
【0017】
この一実施形態の血圧関連情報表示装置では、前記表示画面上に、前記血圧サージの特徴量を表す一方の軸と、前記身体状態の特徴量を表す他方の軸とで規定される座標系が設定され、前記血圧サージの特徴量と前記身体状態の特徴量とに対応する点がプロットされた状態の画像として、前記相関関係が表示される。したがって、ユーザは、前記表示画面を見ることによって、より直感的に、前記被験者における血圧サージの変動量等の結果を示す指標と、睡眠の質等の血圧サージの発生の原因となる指標との相関関係を把握することができる。
【0018】
一実施形態の血圧関連情報表示装置では、前記血圧サージの特徴量は、前記血圧サージが開始してから前記血圧サージがピーク点に達するまで、または、前記血圧サージがピーク点に達してから前記血圧サージが終了するまでのサージ変動量である、ことを特徴とする。
【0019】
この一実施形態の血圧関連情報表示装置では、サージ変動量という結果を示す指標と、睡眠の質等の血圧サージの発生の原因となる指標との相関関係を把握することができるので、投薬した薬の妥当性等を把握し易くなる。
【0020】
一実施形態の血圧関連情報表示装置では、前記身体状態の特徴量は、無呼吸・低呼吸のサマリデータに基づく1時間当たりの無呼吸・低呼吸指数、無呼吸・低呼吸持続時間の平均値、経皮的動脈血酸素飽和度の低下量の平均値、経皮的動脈血酸素飽和度の低下時間の平均値、経皮的動脈血酸素飽和度のボトム値の平均値、覚醒反応指数、レム睡眠の割合、心拍数または脈拍数の変動量平均値、もしくは心拍数または脈拍数のピーク値の平均値または中央値等の統計量のいずれかである、ことを特徴とする。
【0021】
この一実施形態の血圧関連情報表示装置では、血圧サージの発生という結果を示す指標と、血圧サージの発生の原因となる様々な種類の指標との相関関係を把握することができるので、投薬した薬の妥当性等を把握し易くなる。
【0022】
一実施形態の血圧関連情報表示装置では、
前記被験者への投薬に関する投薬情報を入力する投薬情報入力部を備え、
前記表示処理部は、前記相関関係を、入力された前記投薬情報と関連付けて表示する処理を行う、
ことを特徴とする。
【0023】
「投薬情報と関連付けて表示」するとは、例えば、投薬前または投薬後のような時期をパラメータとして、前記表示画面上に、前記血圧サージの特徴量と前記身体状態の特徴量とに対応する点をプロットすることを指す。
【0024】
この一実施形態の血圧関連情報表示装置では、血圧サージの発生に関する結果を示す指標と、血圧サージの発生の原因となる指標と、投薬との関係を把握し易くなる。
【0025】
別の局面では、この開示の血圧関連情報表示方法は、
血圧サージに関連する情報を可視化して表示する血圧関連情報表示方法であって、
血圧サージ検出部により、被験者の脈動に連動して変化する血圧の時系列データから、予め定められた判定基準に基づいて血圧サージを検出し、
抽出部により、前記血圧サージの特徴量を抽出し、
統計処理部により、抽出された前記血圧サージの特徴量の統計処理を行い、
算出部により、前記被験者の身体状態の特徴量を算出し、
表示処理部により、表示画面上で、前記統計処理が行われた前記血圧サージの特徴量と、前記身体状態の特徴量との相関関係を表示する処理を行う、
ことを特徴とする。
【0026】
この開示の血圧関連情報表示方法によれば、ユーザは、前記表示画面を見ることによって、直感的に、前記被験者における血圧サージの変動量等の結果を示す指標と、睡眠の質等の血圧サージの発生の原因となる指標との相関関係を把握することができる。このことは、SASの診断や治療のほか、心血管の疾病リスクを評価する材料や、特定の臓器の疾病リスクを評価する材料として役立つと考えられる。
【0027】
さらに別の局面では、この開示のプログラムは、上記血圧関連情報表示方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0028】
この開示のプログラムをコンピュータに実行させることによって、上記血圧関連情報表示方法を実施することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上より明らかなように、この開示の血圧関連情報表示装置および血圧関連情報表示方法によれば、表示画面上で、血圧サージの特徴量と、血圧サージの検出時における身体状態の特徴量との相関関係を表示できる。また、この開示のプログラムをコンピュータに実行させることによって、上記血圧関連情報表示方法を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】この発明の血圧関連情報表示装置をネットワーク上のシステムとして構成した一実施形態を示すブロック図である。
【
図2】上記システムに含まれた病院端末の構成を示すブロック図である。
【
図3】上記システムに含まれたサーバの構成を示すブロック図である。
【
図4】上記システムによって、被験者の一晩の血圧の時系列データと血圧サージの要因となり得る身体状態とを併せて測定する際の態様を示す図である。
【
図5】血圧関連情報表示方法を実行する際の上記サーバの動作フローを示す図である。
【
図6】
図6(A)は被験者の一晩の血圧の時系列データを示す図である。
図6(B)は、
図6(A)の一部を拡大して、その時系列データ上で検出された血圧サージと、PSG装置で計測された無呼吸・低呼吸イベントを示す図である。
【
図7】血圧サージの波形(個別波形)を例示して、血圧サージを検出するための判定基準と、特徴量とを説明する図である。
【
図8】1回の測定機会において算出される血圧サージの特徴量を示す図である。
【
図9】観測された無呼吸・低呼吸イベントについての測定サマリデータの一例を示す図である。
【
図10】1回の測定機会における身体状態情報をエポック毎に区切った例を示す図である。
【
図11】それぞれの測定機会における血圧サージの特徴量の統計量および身体状態の特徴量のデータの一例を示す図である。
【
図12】病院端末の表示器に表示される血圧サージの特徴量と身体状態の特徴量との相関関係を表示する画像の一例を示す図である。
【
図14】病院端末の表示器表示される血圧サージの特徴量と身体状態の特徴量との相関関係に、投薬情報をパラメータとして関連付けて表示する画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
(システムの構成)
図1は、この発明の血圧関連情報表示装置をネットワーク上の一実施形態のシステム(全体を符号100で示す。)として構成した例を示している。このシステム100は、表示画面としての表示器240を有する病院端末200A,200Bと、サーバ300と、トノメトリ方式の血圧計400と、PSG(polysomnography;睡眠ポリグラフ検査)装置500とを含んでいる。これらの病院端末200A,200B、サーバ300、血圧計400およびPSG装置500は、病院内LAN(Local Area Network)であるネットワーク900を介して互いに通信可能になっている。このネットワーク900を介した通信は、無線、有線のいずれでも良い。この実施の形態において、ネットワーク900は、病院内LAN(Local Area Network)であるが、これに限定されず、インターネットのような他の種類のネットワークであってもよいし、USBケーブルなどを用いた1対1の通信であってもよい。なお、病院端末200A,200Bは、この例では2台のみを示しているが、3台以上設けられていてもよい。
【0033】
図2に示すように、病院端末200Aは、本体200Mと、この本体200Mに搭載された、制御部210と、メモリ220と、操作部230と、表示画面としての表示器240と、通信部290とを含む。この病院端末200Aは、市販のノート型パーソナルコンピュータからなり、後述の処理を行わせるようにアプリケーションソフトウェア(コンピュータプログラム)をインストールしたものであり、サーバ300にアクセスできるようになっている。
【0034】
制御部210は、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)およびその補助回路を含み、病院端末200Aの各部を制御し、メモリ220に記憶されたプログラムおよびデータに従って後述の処理を実行する。すなわち、操作部230、および、通信部290から入力されたデータを処理し、処理したデータを、メモリ220に記憶させたり、表示器240で表示させたり、通信部290から出力させたりする。
【0035】
メモリ220は、制御部210でプログラムを実行するために必要な作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)と、制御部210で実行するための基本的なプログラムを記憶するためのROM(Read Only Memory)とを含む。また、メモリ220の記憶領域を補助するための補助記憶装置の記憶媒体として、半導体メモリ(メモリカード、SSD(Solid State Drive))などが用いられてもよい。
【0036】
操作部230は、この例では、キーボードおよびマウスで構成され、典型的にはユーザとしての医師による操作を示す操作信号を制御部210に入力する。また、操作部230は、キーボードおよびマウスに替えて、または、加えて、タッチパネルなどの他の操作デバイスで構成されるようにしてもよい。
【0037】
表示器240は、表示画面(例えば、LCD(Liquid Crystal Display)またはEL(Electroluminescence)ディスプレイなど)を含む。表示器240は、制御部210によって制御されて、所定の映像を表示画面に表示させる。
【0038】
通信部290は、制御部210からの情報をネットワーク900を介してサーバ300へ送信する。
【0039】
簡単のため図示を省略するが、他の病院端末200B,…も病院端末200Aと同様の構成になっている。
【0040】
図3に示すように、サーバ300は、制御部310と、記憶部320と、操作部330と、表示器340と、通信部390とを含む。このサーバ300は、汎用のコンピュータ装置に、後述の処理を行わせるようにプログラム(ソフトウェア)をインストールしたものである。
【0041】
制御部310は、CPUおよびその補助回路を含み、サーバ300の各部を制御し、記憶部320に記憶されたプログラムおよびデータに従って所定の処理を実行し、操作部330、および、通信部390から入力されたデータを処理し、処理したデータを、記憶部320に記憶させたり、表示器340で表示させたり、通信部390から出力させたりする。
【0042】
記憶部320は、制御部310でプログラムを実行するために必要な作業領域として用いられるRAMと、制御部310で実行するための基本的なプログラムを記憶するためのROMとを含む。記憶部320には、多くの被験者から送られてきた血圧測定データを含むデータベース321が設けられている。また、記憶部320の記憶領域を補助するための補助記憶装置の記憶媒体として、磁気ディスク(HD(Hard Disk)、FD(Flexible Disk))、光ディスク(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、BD(Blu-ray Disc (登録商標)))、光磁気ディスク(MO(Magneto-Optical disk))、または、半導体メモリ(メモリカード、SSD)などが用いられてもよい。
【0043】
操作部330は、この例では、キーボードおよびマウスで構成され、ユーザによる操作を示す操作信号を制御部310に入力する。また、操作部330は、キーボードおよびマウスに替えて、または、加えて、タッチパネルなどの他の操作デバイスで構成されるようにしてもよい。
【0044】
表示器340は、表示画面(例えば、LCDまたはELディスプレイなど)を含む。表示器340は、制御部310によって制御されて、所定の映像を表示画面に表示させる。
【0045】
通信部390は、制御部310からの情報をネットワーク900を介して他の装置(この例では病院端末200A)へ送信するとともに、他の装置からネットワーク900を介して送信されてきた情報を受信して制御部310に受け渡す。
【0046】
図1中に示す血圧計400は、この例では、特願2017-050066号に開示されているようなトノメトリ方式の血圧計からなっている。この血圧計400は、
図4中に示すように、トノメトリ方式で被験者90の被測定部位(例えば、左手首)を通る橈骨動脈の圧脈波を一拍毎に連続的に検出する圧力センサ部402と、この圧力センサ部402が検出した圧力の変化を血圧の時系列データとして出力する本体ユニット401とを備えている。圧力センサ部402と本体ユニット401との間は、信号ケーブル403によって接続されている。トノメトリ法は血管を圧力センサ部402(例えば、圧脈波センサ)で圧扁することにより圧脈波を計測し血圧を決定する手法である。血管の厚さが一様な円管と見なすと、血管内の血液の流れ、拍動の有無に関係なく血管壁を考慮してラプラスの法則に従い、血管の内圧(血圧)と血管の外圧(圧脈波の圧力)との関係式を導くことができる。この関係式で押圧面において血管が圧扁されている条件下では、血管の外壁及び内壁の半径を近似することにより、圧脈波の圧力と血圧とが等しいと近似できる。従って以降は、圧脈波の圧力は血圧と同一値になる。この結果、血圧計400は、被測定部位(例えば、左手首)の血圧値を一心拍ごとに測定して、例えば
図6(A)に示すような態様で、測定時刻(時間)と血圧とを対応付けた血圧の時系列データ801を出力するようになっている。一晩の時系列データ801は、約3万拍分の拍対応ピーク(収縮期血圧(SBP)または拡張期血圧(DBP)に相当するピーク)を含んでいる。
【0047】
また、
図1中に示すPSG装置500は、この例では、市販のPSG装置(例えば、日本光電工業株式会社製のNeurofax(登録商標)EEG-9200)からなる。このPSG装置500は、
図4中に示すように、センサ群502と、このセンサ群502からの信号を処理して被験者90の身体状態を特定する情報を出力する本体ユニット501とを備えている。この例では、センサ群502は、脳波を検出する脳波検出電極502Aと、眼球運動を検出する眼球運動検出電極502Bと、呼吸に伴う気流を検出する気流センサ502Cと、心電図を得るための心電図電極502Dと、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO
2)を検出するパルスオキシメータ502Eと、筋電図を得るための筋電図電極502Fとを含んでいる。センサ群502と本体ユニット501との間は、図示しないケーブルボックスを介して図示しない信号ケーブルによって接続されている。この例では、PSG装置500は、被験者90の身体状態を表す身体状態情報として、無呼吸期間(若しくは低呼吸期間)、睡眠段階(覚醒、レム睡眠、ノンレム睡眠)、覚醒反応、および/または、SpO
2が低い期間(これらを「身体状態特定期間」と総称する。)を表す情報を出力することができる。ここで、睡眠中の「無呼吸」とは、「呼吸が10秒以上止まる状態」を指す。また、「低呼吸」とは、呼吸による換気が10秒以上50%以下に低下することを指す。また、「レム睡眠」とは急速眼球運動を伴う睡眠を指し、「ノンレム睡眠」とは急速眼球運動を伴わない睡眠を指し、「覚醒」とは目覚めている状態を指す。SpO
2とは、動脈血の中を流れている赤血球に含まれるヘモグロビンの何%に酸素が結合しているかを、皮膚を通して(経皮的に)測定した値を指す。SpO
2が「低い」期間とは、この例ではSpO
2が90%未満となった期間を指す。覚醒反応とは、睡眠中に一瞬、覚醒状態を示すように変化することを指す。
【0048】
例えば
図6(A)の一部を拡大して示す
図6(B)中に、「無呼吸」期間が、斜線付きのバー805,805,…で示されている。また、「低呼吸」期間が、白抜きのバー804,804,…で示されている。このような態様で、PSG装置500は、被験者90についての身体状態特定期間を表す情報を複数種類出力することができる。
【0049】
(血圧関連情報表示方法)
このシステム100は、サーバ300で画像データを作成し、病院端末(例えば200A)で画像データの表示を行う。画像データの作成と表示には、血圧計400が出力する測定時刻(時間)と血圧とを対応付けた血圧の時系列データと、PSG装置500が出力する身体状態特定期間を表す情報とを用いて、次のように画像データの作成・表示を行う。
【0050】
(サーバ300での画像データの作成)
i) 本実施形態では、
図4に示した態様で、被験者90について、一晩(睡眠期間を含む。)にわたって、血圧計400を用いた連続的な血圧測定と、PSG装置500を用いた身体状態の測定を行い、これを1回の測定機会とする。そして、被験者90に対して診察と投薬を行った後に、さらに複数回にわたって測定機会を設け、測定機会ごとに測定データについての統計処理を行い、測定機会ごとの結果をグラフにプロットした画像データの作成・表示を行う。
【0051】
それぞれの測定機会においては、血圧計400からの血圧の時系列データと、PSG装置500からの身体状態特定期間を表す情報とが、病院端末200Aによって受信され、メモリ220に一旦記憶される。続いて、例えばユーザとしての医師が病院端末200Aの操作部230を操作して、被験者90について測定された血圧の時系列データと身体状態特定期間を表す情報とを併せて、ネットワーク900を介してサーバ300に送信する。
【0052】
ii)
図5はサーバ300の動作を示すフローチャートである。サーバ300は、この例では常時動作状態にあり(ただし、メンテナンス期間等を除く。)、サーバ300の制御部310は、所定期間ごとに病院端末200Aからの受信データの有無を判断する(
図5:S101)。サーバ300の制御部310は、ネットワーク900および通信部390を介して、病院端末200Aから上述の血圧の時系列データと身体状態特定期間を表す情報を受信したと判断すると(
図5:S101;YES)、受信した血圧の時系列データと身体状態特定期間を表す情報を記憶部320のデータベース321に記憶する。この場合、制御部310および通信部390は、身体状態入力部として働くことになる。そして、制御部310は、次に述べるステップS102~S107の処理を実行する。
【0053】
iii) まず、制御部310は、血圧の時系列データに公知の移動平均などなどを用いた平滑化、ノイズ除去、ローパスフィルタを用いた高周波成分除去等の前処理を施す(
図5:S102)。
【0054】
iv) 次に、制御部310は血圧サージ検出部として働いて、被験者90の血圧の時系列データから、例えば特願2017-048946号、特願2017-050066号に開示されているように、予め定められた判定基準に基づいて血圧サージを検出する(
図5:S103)。これにより、例えば
図6(B)中に、破線の矩形枠803,803,…で示すように、複数の血圧サージを検出する。血圧サージは一晩に数百個も発生することがあると言われている。この例では、収縮期血圧(SBP)に相当するピークがプロットされ(
図6(B)中に、一例として、SBPに相当するピークの一つをP10として示す)、それらが包絡線で結ばれている。また、拡張期血圧(DBP)に相当するピークがプロットされ(
図6(B)中に、一例として、DBPに相当するピークの一つをP11として示す)、それらが包絡線で結ばれている。
【0055】
図7に血圧サージの個別波形の一例を曲線Cで示す。本実施形態における血圧サージを検出するための「予め定められた判定基準」とは、以下の基準を指す。
(a)
図7に示すように、ピーク検出区間(例えば、15拍分の期間)内にサージ開始点P1の時刻からサージピーク点P2の時刻までが含まれるとともに、サージ開始点P1の時刻における収縮期血圧値(SBP)とピーク点P2の時刻における収縮期血圧値(SBP)との差(血圧変動量)L1が20mmHg(または15mmHg)以上であること。
(b)サージ開始点P1の時刻とピーク点P2の時刻との間の期間T1が5拍分よりも大きいこと、かつ、ピーク点P2の時刻とサージ終了点P4の時刻との間の期間T3が7拍分よりも大きいこと。
【0056】
図7に示す例では、サージ開始点P1は、ピーク点P2よりも前で、収縮期血圧値(SBP)の極小を与える点として規定されている。また、サージ終了点P4は、ピーク点P2よりも後で、ピーク点P2からL1×0.75(=L3)の分だけ血圧が降下した点として規定されている。
【0057】
v) 次に、制御部310は、抽出部として働いて、検出された血圧サージの特徴量を抽出する。血圧サージの特徴量としては
図7に示すピーク点P2、サージ開始点P1、およびサージ終了点P4の血圧値と時刻に関連する量が該当する。
図7に示した例では、L1、L3、T1、およびT3をサージの特徴量とすることができる。T1は、ピーク点P2での時刻とサージ開始点P1での時刻との差であり、上昇時間と称す。T3は、ピーク点P2での時刻とサージ終了点P4での時刻との差であり、下降時間と称す。L1は、ピーク点P2での血圧値とサージ開始点P1での血圧値との差であり、上昇時間におけるサージ変動量と称す。L2は、血圧サージのピーク点P2での血圧値と、サージ終了点P4での血圧値との差であり、下降時間におけるサージ変動量と称す。また、
図7に斜線で示すサージ面積S1またはS2を血圧サージの特徴量としてもよい。また、上昇時間T1と下降時間T3とを加えたサージ時間を血圧サージの特徴量としてもよい。さらに、上昇時間のサージ変動量L1を上昇時間で除算した上昇サージ速度、あるいは、下降時間のサージ変動量L3を下降時間で除算した下降サージ速度を血圧サージの特徴量としてもよい。さらに、以上のような血圧サージの特徴量同士を四則演算で組み合わせたものを血圧サージの特徴量としてもよい。上述した特徴量は、
図8に記載した具体的な特徴量に対応している。
【0058】
本実施形態では、制御部310は、一例として、血圧サージの特徴量として上昇時間T1におけるサージ変動量L1を血圧サージごとに抽出する。
【0059】
vi) 次に、制御部310は、統計処理部として働いて、血圧サージの特徴量の統計処理を行う(
図5:S105)。統計処理としては、1回の測定機会ごとに抽出した複数の血圧サージの特徴量の平均、標準偏差、最大値、最小値、四分位数等を算出する処理が挙げられる。
【0060】
一例として、サージ変動量の平均を算出する例を
図6(B)に基づいて説明する。
図6(B)においては、時刻t2、t5、t8、t11、t14、t17においてピーク点P2が検出されている。
図6(B)においては、実線の長方形の内部にピーク点P2が含まれている。また、サージ開始点P1は、時刻t1、t4、t7、t10、t13、t16において検出されている。
【0061】
この場合、制御部310は、まず、1個目から6個目までのそれぞれの上昇時間のサージ変動量(1)~(6)を算出する。例えば、サージ変動量(1)=L1-1、サージ変動量(2)=L1-2、サージ変動量(3)=L1-3、サージ変動量(4)=L1-4、サージ変動量(5)=L1-5、サージ変動量(6)=L1-6であったものとする。
【0062】
すると、サージ変動量(1)~(6)の平均は、{(L1-1)+(L1-2)+(L1-3)+(L1-4)+(L1-5)+(L1-6)}/6によって算出される。
【0063】
制御部310は、このようにして、1回の測定機会においてn個のサージ変動量を算出し、サージ変動量(1)からサージ変動量(n)までの合計をn個で除算することにより、1回の測定機会におけるサージ変動量の平均を算出する。また、制御部310は、算出したサージ変動量の平均を記憶部320に記憶させる。
【0064】
なお、サージ変動量の平均を1時間ごとに算出して記憶部320に記憶させ、その後に1回の測定機会におけるサージ変動量の平均を算出するようにしてもよい。また、サージ変動量の平均だけでなく、上昇サージ速度の平均、および下降時間の平均も併せて算出するようにしてもよい。
【0065】
vii) 次に、制御部310は、算出部として働いて、身体状態特定期間を表す情報に基づいて、身体状態の特徴量を算出する(
図5:S106)。被験者90の身体状態特定期間を表す情報としては、無呼吸期間、低呼吸期間、レム睡眠期間、ノンレム睡眠期間、覚醒期間、SpO
2が低い期間等が挙げられる。
【0066】
本実施形態では、制御部310は、一例として、睡眠1時間当たりの無呼吸期間と低呼吸期間の合計回数であるAHI(Apnea Hypopnea Index,無呼吸低呼吸指数)を、身体状態の特徴量として算出する。
【0067】
PSG装置500は、例えば、
図9に示すように、観測された無呼吸・低呼吸イベントについての測定サマリデータをサーバ300に送信する。制御部310は、PSG装置500から送信された測定サマリデータを記憶部320に記憶させる。
【0068】
図9において、OSAとは、閉塞性睡眠時無呼吸のことであり、睡眠中に繰り返し起こる上気道虚脱による無呼吸 (気流の停止)や低呼吸(気流の低減)を特徴としている。また、CSAとは、中枢性睡眠時無呼吸のことであり、睡眠中の呼吸ドライブの欠如により反復性換気不全が引き起こされ、ガス交換が損なわれる状態である。
【0069】
制御部310は、
図9に示すような測定サマリデータに基づいて、1回の測定機会における睡眠1時間当たりの無呼吸期間と低呼吸期間の合計回数であるAHIを算出する。
【0070】
PSG装置500から送信される測定サマリデータは、
図10に示すように、1回の測定機会における身体状態情報をエポック毎(例えば、30秒毎)に区切ったデータでもよい。
図10に示すデータにおいては、睡眠段階情報が含まれている。
図9において、REMとは、レム睡眠を表し、N1は、ノンレム睡眠のステージ1を表している。PSG装置500から送信される測定サマリデータがこのようなデータである場合には、制御部310は、レム睡眠の割合を身体状態の特徴量として算出してもよい。
【0071】
また、身体状態の特徴量としては、上述したような特徴量の他にも、無呼吸・低呼吸持続時間の平均値、SpO2の低下量の平均値、SpO2の低下時間の平均値、SpO2のボトム値の平均値、覚醒反応指数、心拍数の変動量平均値、心拍数のピーク値の平均値または中央値等であってもよい。また、本実施形態ではPSG装置500を用いることを想定しているが、必ずしも用いる必要はない。PSG装置500を用いない場合、トノメトリ方式の血圧計内で算出された拍動ごとの瞬時脈拍数を使用し、これを用いた脈拍数の変動量平均値、脈拍数のピーク値の平均値または中央値を身体状態の特徴量として算出してもよい。
【0072】
制御部301は、以上のようにして算出した血圧サージの特徴量の統計量、および身体状態の特徴量を、測定機会ごとに記憶装置320に記憶させる。
図11は、2018年7月31日、2018年8月15日、2018年9月2日の3回の測定機会におけるそれぞれの特徴量を記憶装置320に記憶させた例を示している。
【0073】
viii)次に、制御部310は表示処理部の一部として働いて、測定機会ごとに、血圧サージの特徴量と、身体状態の特徴量との相関関係を表示する画像データを作成する(
図5:S107)。そして、制御部310は、ネットワーク900および通信部390を介して、病院端末200Aまたは病院端末200Bに画像データを送信する(
図5:S108)。
【0074】
図12は、病院端末200Aまたは病院端末200Bの表示器240に表示される血圧サージの特徴量と、身体状態の特徴量との相関関係を表示する画像の一例を示している。制御部310は、
図12に示すように、血圧サージの特徴量を表す一方の軸(
図12に示す例では縦軸)と、身体状態の特徴量を表す他方の軸(
図12に示す例では横軸)とで規定される座標系を設定し、血圧サージの特徴量と身体状態の特徴量とに対応する点をプロットした状態の画像として、前記相関関係を表示する処理を行う。
【0075】
また、制御部310は、画像データを作成する際に、投薬情報と上述したそれぞれの特徴量とを関連付けてもよい。
【0076】
投薬情報と上述したそれぞれの特徴量とが関連付けられている場合、サーバ300の制御部310は、投薬情報入力部として働いて、病院端末200Aまたは病院端末200Bから投薬情報を入力する。
図13は、投薬情報の一例を示す図である。
図13に示す例では、2018年8月1日に、睡眠剤としてA薬が50mg処方され、2018年9月3日に、睡眠剤としてB薬が30mg処方されたという投薬情報がサーバ300に送信される。制御部310は、投薬情報入力部として働いて、この投薬情報を入力して、画像データを作成し、病院端末200Aまたは病院端末200Bに画像データを送信する。
【0077】
図14は、病院端末200Aまたは病院端末200Bの表示器240に表示される血圧サージの特徴量と、身体状態の特徴量との相関関係に、投薬情報を関連付けて表示する画像の一例を示している。
【0078】
図14に示す例では、2018年7月31日、2018年8月15日、2018年9月2日の3回にわたって測定機会が設けられ、2018年9月3日に画像を閲覧した場合を示している。
【0079】
最新の測定結果である2018年9月2日の測定結果は黒丸で示され、それ以前の測定結果は白丸で示されている。また、最新の測定結果である2018年9月2日の測定結果には、2018年8月1日に処方された投薬情報が、パラメータとして測定結果に関連付けられて表示される。
【0080】
図14中の白抜き矢印は、病院端末200A,200Bをパーソナルコンピュータで実現したときのマウスカーソルをイメージしたものである。ユーザがプロットされた点に対してマウスオーバーすると、直近の診察時に処方された投薬情報が表示される。ここでは「前回の投薬の結果、今回の値が観測された」ということを表すことを想定している。
【0081】
この例においては、睡眠剤であるA薬の投薬の結果、血圧サージの原因となる指標であるAHIの値、および結果として発生した血圧サージの指標である血圧サージの特徴量が、共に改善していることがわかる。
【0082】
図14に示す例のように、血圧サージの原因となる指標であるAHIと、結果として発生した血圧サージの指標である血圧サージの特徴量との相関関係を表示する画像には、AHIおよび血圧サージの特徴量の基準となる値を、
図14に点線で示す補助線として表示してもよい。
【0083】
また、
図14においては、2018年7月31日の初回の測定結果を、マーカーでプロットして、2回目、3回目の測定結果と区別して表示してもよい。
【0084】
上述のように、本実施形態によれば、病院端末200A,200Bの表示画面上で、血圧サージの特徴量と、血圧サージの検出時における身体状態の特徴量との相関関係を表示することができる。したがって、ユーザは、より直感的に、被験者における血圧サージの変動量等の結果を示す指標と、睡眠の質等の血圧サージの発生の原因となる指標との相関関係を把握することができる。このことは、SASの診断や治療のほか、心血管の疾病リスクを評価する材料や、特定の臓器の疾病リスクを評価する材料として役立つと考えられる。
【0085】
また、本実施形態によれば、上記相関関係に投薬情報を関連付けて表示する場合には、ユーザは、血圧サージの発生に関する結果を示す指標と、血圧サージの発生の原因となる指標と、投薬との関係を把握し易くなる。したがって、ユーザは、投薬の前後における血圧サージの発生に関する結果を示す指標、および血圧サージの発生の原因となる指標の変化の有無を容易に把握することができる。
【0086】
(変形例1)
上述の実施形態では、サーバ300が前記相関関係を表す画像データを作成し、病院端末200A,200B,…の表示器240が画像を表示したが、これに限られるものではない。サーバ300の制御部310は、前記相関関係を表す画像データを病院端末200A,200B,…へ送信する代わりに、画像作成のためのデータのみを送信し、病院端末200A,200B,…の制御部210が専ら前記相関関係を表す画像データを作成しても良い。
【0087】
(変形例2)
また、上述の実施形態では、本発明の血圧関連情報表示装置を、病院端末200A,200B,…とサーバ300とを含むネットワーク上のシステム100として構成したが、これに限られるものではない。
【0088】
例えば、本発明の血圧関連情報表示装置を、病院端末200A,200B,…のいずれかのみで構成しても良い。つまり、病院端末(例えば200A)に上述の血圧関連情報表示方法の全部(血圧計400からの血圧の時系列データおよびPSG装置500からの身体状態特定期間を表す情報の受信から、表示器240の表示画面上への画像データIm等の表示までを含む。)を実行させてもよい。
【0089】
その場合、病院端末200Aのメモリ220には、制御部210に、上述の血圧関連情報表示方法を実行させるプログラムをインストールしておく。これにより、本発明の血圧関連情報表示装置を小型かつコンパクトに構成することができる。
【0090】
また、上述の血圧関連情報表示方法を、ソフトウェア(コンピュータプログラム)として、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル万能ディスク)、フラッシュメモリなどの非一時的(non-transitory)にデータを記憶可能な記録媒体に記録してもよい。このような記録媒体に記録されたソフトウェアを、パーソナルコンピュータ、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタンツ)、スマートフォンなどの実質的なコンピュータ装置にインストールすることによって、それらのコンピュータ装置に、上述の血圧関連情報表示方法を実行させることができる。
【0091】
(変形例3)
また、上述の実施形態では、血圧計400はトノメトリ方式の血圧計であるものとしたが、これに限られるものではない。血圧計400は、被測定部位のうち対応する部分を通る動脈へ向けて光を照射する発光素子と、その光の反射光(または透過光)を受光する受光素子とを備えて、動脈の脈波を容積の変化に基づいて連続的に血圧を検出してもよい(光電方式)。また、血圧計400は、被測定部位に当接された圧電センサを備えて、被測定部位のうち対応する部分を通る動脈の圧力による歪みを電気抵抗の変化として検出し、この電気抵抗の変化に基づいて連続的に血圧を検出してもよい(圧電方式)。さらに、血圧計400は、被測定部位のうち対応する部分を通る動脈へ向けて電波(送信波)を送る送信素子と、その電波の反射波を受信する受信素子とを備えて、動脈の脈波による動脈とセンサとの間の距離の変化を送信波と反射波との間の位相のずれとして検出し、この位相のずれに基づいて連続的に血圧を検出してもよい(電波照射方式)。また、血圧を算出することができる物理量を観測することができれば、これらの以外の方式を適用してもよい。
【0092】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。
【符号の説明】
【0093】
100 システム
200A,200B,… 病院端末
240 表示器
300 サーバ
400 血圧計
500 PSG装置