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特許7256054ダクトおよびその製造方法、ダクト用の発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】ダクトおよびその製造方法、ダクト用の発泡体
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
B29C45/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019061902
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020157688
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】本澤 進一
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴史
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-285895(JP,A)
【文献】特開2011-012581(JP,A)
【文献】国際公開第2011/155437(WO,A1)
【文献】特開2003-080556(JP,A)
【文献】特開2002-106431(JP,A)
【文献】特開2020-101146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクトであって、
空気流通路を画成する合成樹脂成形品であるダクト壁部と、
弾性を有し、前記ダクト壁部を貫通するように形成された開口部を塞ぐように該ダクト壁部に接合された多孔質体と、を備え、
前記ダクト壁部は、前記開口部に架け渡すように形成された桟部を備え、
前記多孔質体は、前記開口部の開口縁に接合した接合部分に対して該開口部の開口領域側に隣接する隣接部分の少なくとも一部が、該開口部の開口領域中央部に対応する一般部分よりも薄く形成され
前記多孔質体は、前記桟部に接合した接合部分に対して該開口部の開口領域側に隣接する隣接部分の少なくとも一部が、前記一般部分よりも薄く形成され、
前記多孔質体は、前記一般部分が前記接合部分よりも前記ダクト壁部と反対側へ張り出すように形成されている
ことを特徴とするダクト。
【請求項2】
ダクトにおいて空気流通路を画成する合成樹脂成形品であるダクト壁部を貫通する開口部を塞ぐことに用いられ、弾性を有する発泡体であって、
前記ダクト壁部は、前記開口部に架け渡すように形成された桟部が備えられており、
前記発泡体は、
前記発泡体の外縁部に設けられ、前記開口部の開口縁に接合される部位となる外周接合部分と、
前記発泡体の外縁部間に設けられ、前記桟部に接合される部位となる桟部接合部分と、
前記外周接合部分及び前記桟部接合部分の内側に設けられ、前記開口部の開口領域を覆う部位となる一般部分と、
前記外周接合部分及び前記一般部分の間に設けられ、前記開口部の開口領域を覆う部位となる外周隣接部分と、
前記桟部接合部分及び前記一般部分の間に設けられ、前記開口部の開口領域を覆う部位となる桟部隣接部分と、を備え、
前記外周隣接部分及び前記桟部隣接部分の板厚が、前記一般部分よりも薄く形成されている
ことを特徴とするダクト用の発泡体。
【請求項3】
弾性を有する多孔質体の一部を、型開きした成形型のキャビティに配置した状態で、前記成形型に前記多孔質体を収め、
前記成形型を型閉じすることで、前記多孔質体において前記キャビティに配置された一部に隣接する隣接部分を前記成形型で圧縮し、
前記キャビティに、溶融状態にある合成樹脂を供給し、圧縮された前記隣接部分によって前記合成樹脂を封止しつつ前記キャビティにおいて開口部を有するダクト壁部を成形することで、前記ダクト壁部に貫通形成される開口部を塞いで前記多孔質体を前記ダクト壁部に接合するダクトの製造方法であって、
前記多孔質体を前記成形型に配置する前に、前記隣接部分における少なくとも一部の板厚を、前記多孔質体における前記開口部の開口領域中央部に対応する一般部分よりも薄く形成する
ことを特徴とするダクトの製造方法
【請求項4】
弾性を有する多孔質体の一部を、型開きした成形型のキャビティに配置した状態で、前記成形型に前記多孔質体を収め、
前記成形型を型閉じすることで、前記多孔質体において前記キャビティに配置された一部に隣接する隣接部分を前記成形型で圧縮し、
前記キャビティに、溶融状態にある合成樹脂を供給し、圧縮された前記隣接部分によって前記合成樹脂を封止しつつ前記キャビティにおいて開口部を有するダクト壁部を成形することで、前記ダクト壁部に貫通形成される開口部を塞いで前記多孔質体を前記ダクト壁部に接合するダクトの製造方法であって、
前記多孔質体における前記ダクト壁部側となる面と反対側を、前記多孔質体における前記開口部の開口領域中央部に対応する一般部分よりも凹むように形成して、前記一般部分よりも薄い前記隣接部分を設ける
ことを特徴とするダクトの製造方法。
【請求項5】
弾性を有する多孔質体の一部を、型開きした成形型のキャビティに配置した状態で、前記成形型に前記多孔質体を収め、
前記成形型を型閉じすることで、前記多孔質体において前記キャビティに配置された一部に隣接する隣接部分を前記成形型で圧縮し、
前記キャビティに、溶融状態にある合成樹脂を供給し、圧縮された前記隣接部分によって前記合成樹脂を封止しつつ前記キャビティにおいて開口部を有するダクト壁部を成形することで、前記ダクト壁部に貫通形成される開口部を塞いで前記多孔質体を前記ダクト壁部に接合するダクトの製造方法であって、
前記多孔質体における前記ダクト壁部に接合されることになる接合部分から前記隣接部分にかけて、前記多孔質体における前記開口部の開口領域中央部に対応する一般部分の板厚よりも薄く形成する
ことを特徴とするダクトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両などに用いられるダクトおよびこのダクトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の吸気ダクトのように、吸気ダクトを構成する分割体の壁面に形成された開口部を覆うように、多孔質シートを分割体に接合することで、騒音を防止することが提案されている。特許文献1の吸気ダクトは、多孔質シートをセットした成形型において分割体を成形するインサート成形により、多孔質シートを分割体に接合している。具体的には、成形型の凹型に多孔質シートをセットし、凹型と凸型とを型閉じすることで、凸型から突出する固定部によって多孔質シートの外縁部の内周側の部分を圧迫して凹型に押さえ付ける。次に、多孔質シートを配置した成形型のキャビティに溶融樹脂を注入する。このとき、多孔質シートには、溶融樹脂が多孔質シートの外縁部から徐々に含浸するが、外縁部の内周側が固定部と凹型とにより挟持されているので、内周側へ溶融樹脂が含浸することが防止される。そして、多孔質シートの外縁部に溶融樹脂を含浸させた状態で冷却すると、多孔質シートに侵入した樹脂による接合部が形成される。こうして、多孔質シートは、固化した樹脂からなる分割体と接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-106431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多孔質シートとして、弾性を有する素材を用いると、成形型において凸型の固定部と凹型との間で挟持されていた多孔質シートの内周側が、その弾性により成形型から脱型した際に元の形状に復元する。このとき、多孔質シートが、開口部から吸気ダクトの内側に大きく入り込むように復元することがある。多孔質シートがダクトの内側へ入り込んでしまうと、空気流通路の断面積が減少することになり、圧力損失が大きくなるなどの問題が生じる。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、開口部を覆う多孔質体が、開口部からダクト内に大きく膨らむことが抑えられたダクトおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係るダクトは、
ダクトにおいて空気流通路を画成する合成樹脂成形品であるダクト壁部と、
弾性を有し、前記ダクト壁部を貫通するように形成された開口部を塞ぐように該ダクト壁部の外面に接合された多孔質体と、を備え、
前記多孔質体は、前記開口部の開口縁に接合される接合部分に対して該開口部の開口領域側に隣接する隣接部分の少なくとも一部が、前記ダクト壁部に接合する前の状態において、該開口部の開口領域中央部に対応する一般部分よりも薄く形成されていることを要旨とする。
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係るダクトの製造方法は、
合成樹脂からなるダクト壁部を成形型で成形する際に、弾性を有する多孔質体を、該ダクト壁部に貫通形成される開口部を塞ぐように該ダクト壁部の一面に接合するダクトの製造方法であって、
前記多孔質体において前記ダクト壁部に接合させる接合部分に隣接する隣接部分の少なくとも一部を、その板厚が、前記開口部の開口領域中央部に対応する一般部分よりも薄くなるように形成し、
前記隣接部分を前記成形型で板厚方向に挟んで圧縮した状態で、前記多孔質体を該成形型に収め、
前記接合部分が臨む前記成形型のキャビティに、溶融状態にある前記合成樹脂を供給し、圧縮された前記隣接部分によって該合成樹脂を封止しつつ該キャビティにおいて前記開口部を有する前記ダクト壁部を成形することで、前記多孔質体の接合部分と該ダクト壁部とを接合することを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るダクトによれば、開口部を覆う多孔質体が、開口部からダクト内に大きく膨らむことが抑えられている。
本発明に係るダクトの製造方法によれば、開口部を覆う多孔質体が、開口部からダクト内に大きく膨らむことが抑えられたダクトを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係るダクトを示す概略斜視図である。
図2】実施例に係るダクトの要部を示す概略斜視図である。なお、多孔質体を取り外してある。
図3図1のA-A線断面図である。
図4図1のB-B線断面図である。
図5】実施例のダクトの製造工程を示す説明図である。
図6】実施例のダクトの製造工程を示す説明図である。
図7】変更例の多孔質体によるダクトの製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係るダクトおよびこのダクトの製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例
【0011】
図1に示すように、実施例に係るダクト10は、空気が流通する空気流通路12が内側に設けられた筒状体である。実施例のダクト10は、複数(実施例は2個)の分体14,16を組み合わせて筒状に構成されており、互いの端縁を突き合わせた分体14,16同士が、図示しない爪嵌合構造や接着などによって組み付けられている。各分体14,16は、ポリプロピレン(PP)または高密度ポリエチレン(HDPE)などのソリッド樹脂(ソリッドの合成樹脂)を材質とし、インジェクション成形等によって得られる合成樹脂成形品である。ダクト10は、空気流通路12に向く側を内といい、その反対側を外という。
【0012】
図2図4に示すように、ダクト10は、空気流通路12を画成するダクト壁部10aを貫通するように形成された開口部18と、この開口部18を塞ぐようにダクト壁部10aの外面に接合された多孔質体20とを備えている。ダクト10は、開口部18を塞ぐ多孔質体20が、その特性により、吸音や断熱や軽量化などの機能を有する機能部となり、実施例の多孔質体20は、バッテリを冷却する空気を案内する冷却ダクトにおいて、空気を吸い込むブロアなどによる騒音が、空気取入口側から漏れないように防止する吸音部として設定されている。実施例のダクト10は、開口部18および多孔質体20が第1分体14に設けられており、合成樹脂からなる第1分体14の成形時に、開口部18が形成されると共に、多孔質体20がダクト壁部10aに接合される。
【0013】
多孔質体20は、圧縮して変形させた状態を解除すると元の形状に戻る弾性を有している。また、前述した吸音用途であるならば、通気性を有しているとよい。多孔質体20は、例えば、ポリウレタンフォームや、ポリプロピレンフォーム等のオレフィン系フォームなどの発泡体、あるいはセルとなる核剤を抽出する抽出法によって製造されるものなどを用いることができる。この中でも、連続気泡構造のポリウレタンフォームを用いることが好ましい。なお、実施例では、多孔質体20として、50%圧縮後の復元率が92%以上の連続気泡構造のポリウレタンフォームを用いている。
【0014】
図2に示すように、ダクト壁部10aは、開口部18に架け渡すように形成された桟部22を備え、桟部22によって開口部18が複数(実施例は2つ)の開口領域18aに区分されている。多孔質体20は、ダクト壁部10aにおける開口部18の開口縁および桟部22に接合されており、開口縁に接合する外周接合部分24aおよび桟部22に接合する桟部接合部分24bが、開口領域18aの中央部に対応する一般部分26よりも薄くなっている。なお、外周接合部分24aおよび桟部接合部分24bを区別しない場合、単に接合部分という。多孔質体20は、一般部分26が、接合部分24a,24bよりもダクト壁部10aと反対側へ張り出すように形成されている(図3および図4参照)。また、多孔質体20は、開口部18を塞ぐダクト壁部10a側の内面が、空気取入口から空気送出口に向かう空気流通方向において、周辺のダクト壁部10aに倣うように延在し、開口部18を塞ぐ面によって周辺と連続する空気案内面を構成している。多孔質体20の接合部分24a,24bは、ダクト壁部10aの成形時に接合される。このため、ダクト壁部10aとなる溶融状態の合成樹脂R(図6(a))との接触により接合部分24a,24bが融解して、ダクト壁部10aとこのダクト壁部10aに接合した接合部分24a,24bとは融合した状態にある。なお、図中では、多孔質体20の接合部分24a,24bとダクト壁部10aとの境界を便宜的に示しているが、互いの境界が曖昧になっていると考えられる。
【0015】
図5(a)に示すように、多孔質体20は、開口部18の開口縁に接合される外周接合部分24aに対して該開口部18の開口領域18a側に隣接する隣接部分28の少なくとも一部が、ダクト壁部10aに接合する前の状態において、一般部分26よりも薄く形成される。実施例の多孔質体20は、外周接合部分24aから隣接部分28にかけて、ダクト壁部10aに接合する前の状態において、一般部分26よりも薄く形成されている。また、実施例の多孔質体20は、4辺の開口縁に対応する外周接合部分24aに隣接する隣接部分28の全てが、ダクト壁部10aに接合する前の状態において、一般部分26よりも薄く形成されている。
【0016】
図5(a)に示すように、多孔質体20は、桟部22に接合される桟部接合部分24bに対して該開口部18の開口領域18a側に隣接する隣接部分28の少なくとも一部が、ダクト壁部10aに接合する前の状態において、一般部分26よりも薄く形成される。実施例の多孔質体20は、桟部接合部分24bから隣接部分28にかけて、ダクト壁部10aに接合する前の状態において、一般部分26よりも薄く形成されている。また、実施例の多孔質体20は、1条の桟部22に対応する桟部接合部分24bに隣接する隣接部分28の全てが、ダクト壁部10aに接合する前の状態において、一般部分26よりも薄く形成されている。
【0017】
実施例に係るダクト10は、所定形状に形成した多孔質体20をセットした成形型30においてダクト壁部10aを成形するインサート成形によって、第1分体14が得られる(図5および図6参照)。そして、別途型成形することで得られた第2分体16と、第1分体14とを組み付けることで、ダクト10を得ることができる。
【0018】
図5および図6に示すように、成形型30は、下型34と、この下型34と相対的に開閉可能に構成された上型32とから構成され、型閉じした際に、下型34と上型32との間にダクト壁部10a(第1分体14)の形状に合わせたキャビティ36が形成される。上型32には、開口部18の開口領域18aの形成位置に合わせて凹部38が設けられている。また、上型32には、開口部18の開口領域18aのうち、開口部18の開口縁に隣接する位置に対応して、下型34にセットされた多孔質体20を下型34との間で押さえ付けて圧縮可能な圧縮部40が設けられている。実施例では、圧縮部40が、開口部18の開口縁に対応する位置および桟部22に対応する位置に亘って設けられ、多孔質体20における接合部分24a,24bとなる位置も、圧縮部40によって下型34へ向けて押さえ付け可能に構成されている。下型34には、開口部18の開口領域18aに対応して、凸部42が設けられている。
【0019】
図5および図6に示すように、成形型30は、型閉じした際に、圧縮部40と凸部42との間に、多孔質体20においてダクト壁部10aに接合させる接合部分24a,24bに隣接する隣接部分28を挟んで、隣接部分28を圧縮した状態で挟持可能に構成されている。成形型30は、凹部38と凸部42との間が、多孔質体20において開口部18の開口領域18aの中央部に対応する一般部分26の板厚よりも小さく設定されている。成形型30は、型閉じした際に、凹部38と凸部42との間に、多孔質体20の一般部分26を圧縮した状態で挟持可能に構成されている。ここで、成形型30は、圧縮部40と凸部42とによる多孔質体20の隣接部分28の圧縮度合いが、凹部38と凸部42とによる多孔質体20の一般部分26の圧縮度合いよりも大きく設定されている。
【0020】
前述した成形型30を用いたダクト10(第1分体14)の製造方法は以下の通りである。開口部18の開口領域18aの中央部に対応する一般部分26の板厚と同じ板厚で形成された板状の多孔質体20を用意する。図5(a)に示すように、多孔質体20におけるダクト壁部10aに接合させる接合部分24a,24bに隣接する隣接部分28の少なくとも一部を、その板厚が、一般部分26の板厚よりも薄くなるように形成する。実施例では、多孔質体20における成形型30で挟持される隣接部分28の全体を、一般部分26よりも薄くなるように切断加工している。多孔質体20は、ダクト壁部10aにおける開口部18の開口縁に接合される外周接合部分24aおよび外周接合部分24aに隣接する隣接部分28に対応するように、外周縁部が薄く形成される。また、多孔質体20は、ダクト壁部10aにおける桟部22に接合される桟部接合部分24bおよび桟部接合部分24bに隣接する隣接部分28に対応するように薄く形成される。多孔質体20は、接合部分24a,24bから隣接部分28にかけて、一般部分26の板厚よりも薄くなるように形成される。多孔質体20は、接合部分24a,24bから隣接部分28側に向かうにつれて板厚が厚くなるように形成されており、接合部分24a,24bから隣接部分28にかけてダクト壁部10aと反対側が傾斜面となっている。ここで、多孔質体20には、該多孔質体20におけるダクト壁部10aと反対側を、一般部分26よりも凹むように形成して、一般部分26より薄い隣接部分28を設けている。
【0021】
一般部分26を凹部38に対応させると共に隣接部分28を圧縮部40に対応させて、多孔質体20を下型34に配置する。成形型30を型閉じすることで、隣接部分28を上型32の圧縮部40と下型34の凸部42との間に板厚方向に挟んで、隣接部分28を圧縮する(図5(b)参照)。このように、隣接部分28を成形型30で板厚方向に挟んで圧縮すると共に接合部分24a,24bをキャビティ36に臨ませた状態で、多孔質体20を成形型30に収める。この際、圧縮された隣接部分28が、一般部分26や接合部分24a,24bと比べて高密度になっている。
【0022】
接合部分24a,24bが臨む成形型30のキャビティ36に、溶融状態にある合成樹脂Rを、圧力をかけながら供給する。そして、圧縮された隣接部分28によって合成樹脂Rを封止しつつ、キャビティ36において開口部18を有するダクト壁部10aを成形する(図6(a)参照)。ここで、多孔質体20においてキャビティ36に臨むように配置された接合部分24a,24bが、溶融して高温である合成樹脂Rに接触することで溶融する。このとき、溶融した合成樹脂Rが接合部分24a,24bから多孔質体20に含浸しようとするが、接合部分24a,24bに隣接する隣接部分28が圧縮されて高密度になっているので、合成樹脂Rが隣接部分28を越えて含浸することを防止することができる。溶融した合成樹脂Rを冷却・固化することで、ダクト壁部10aが成形され、多孔質体20の接合部分24aとダクト壁部10aとが接合し、多孔質体20が開口部18の開口領域18aを塞いだ状態でダクト壁部10aに一体的に固定される。
【0023】
成形型30を型開きして、多孔質体20が一体化された第1分体14を取り出す(図6(b)参照)。多孔質体20は、成形型30で圧縮されていた隣接部分28および一般部分26が自身の弾性により復元する。一方、多孔質体20は、接合部分24a,24bがダクト壁部10aと一体化して、元(接合前)の板厚よりも薄くなる。
【0024】
ダクト10は、インサート成形により多孔質体20とダクト壁部10aとを一体化する際に、多孔質体20におけるダクト壁部10aとの接合部分24a,24bに隣接する隣接部分28を圧縮して合成樹脂Rの含浸を封止している。従って、多孔質体20の隣接部分28を予め薄く形成しておくと、隣接部分28が圧縮状態から復元するときの変化量を小さくすることができる。このように、圧縮した隣接部分28が復元するときの変化量を小さくすることで、隣接部分28が復元時にダクト壁部10a側へ膨らんでしまうことを抑えることができる。従って、得られるダクト10は、開口部18を塞ぐようにダクト壁部10aの外面に接合された多孔質体20が、開口部18から空気流通路12に入り込んでしまうことを回避できる。そして、ダクト10は、開口部18が多孔質体20で塞がれた部位においても空気流通路12の断面積を適切に確保でき、空気を円滑に流通させることができる。
【0025】
多孔質体20は、開口部18の開口縁に接合させる外周接合部分24aに隣接する隣接部分28だけでなく、開口部18に架け渡して形成される桟部22に接合させる桟部接合部分24bに隣接する隣接部分28についても、ダクト壁部10aに接合する前の状態において一般部分26よりも薄く形成されている。このようにすることで、多孔質体20の復元がダクト壁部10a(空気流通路12)側へ向かわないように制御することができる。従って、ダクト10は、開口部18が多孔質体20で塞がれた部位においても空気流通路12の断面積を適切に確保でき、空気を円滑に流通させることができる。
【0026】
多孔質体20は、ダクト壁部10aに接合する前の状態において、ダクト壁部10aと反対側を一般部分26よりも凹むように形成して、一般部分26よりも薄い隣接部分28を設けている。ダクト壁部10aに接合した多孔質体20は、一般部分26が接合部分24a,24bよりもダクト壁部10aと反対側へ張り出すように形成される。このようにすることで、多孔質体20の復元がダクト壁部10a(空気流通路12)側へ向かわないように制御することができる。従って、ダクト10は、開口部18が多孔質体20で塞がれた部位においても空気流通路12の断面積を適切に確保でき、空気を円滑に流通させることができる。
【0027】
多孔質体20は、ダクト壁部10aに接合する前の状態において、接合部分24a,24bおよび隣接部分28の両方を一般部分26よりも薄くする構成であると、隣接部分28の薄肉化加工を行い易い。特に、図5(a)に示すように、接合部分24a,24bから隣接部分28に向かうにつれて板厚が増す構成であると、多孔質体20の薄肉化加工を行い易い。
【0028】
(変更例)
前述した構成に限らず、例えば、以下のように変更してもよい。
【0029】
(1)実施例では、多孔質体の外周縁部を斜めにカットすることで、外周接合部分に対応する隣接部分を薄肉化し、多孔質体をV字状にカットすることで、桟部接合部分に対応する隣接部分を薄肉化したが、これに限らない。例えば、図7(a)に示すように、多孔質体20をダクト壁部10a側の面に沿って切り欠いたように形成することで、接合部分24a,24bおよび隣接部分28を薄肉化する構成であってもよい。なお、図7の変更例では、接合部分24a,24bおよび隣接部分28を、多孔質体20におけるダクト壁部10a側となる面に沿って切り欠いたように形成している。
【0030】
(2)実施例では、多孔質体においてダクト壁部に接合される接合部分に隣接する隣接部分全体を薄肉化したが、これに限らず、多孔質体の一縁部だけを薄肉化する、あるいは桟部接合部分に隣接する隣接部分を薄肉化しないなど、隣接部分の一部だけを薄肉化してもよい。
(3)実施例では、複数の分体を組み合わせてダクトを構成したが、これに限らず、成形型においてダクト全体を一度に成形してもよい。
(4)本発明は、バッテリを冷却する空気を案内する冷却ダクトや、エンジン等に空気を案内する吸気ダクトなど、様々なダクトに適用可能である。
(5)実施例では、多孔質体の接合部分および隣接部分の薄肉化を切断により行ったが、プレス成形によって多孔質体の接合部分および隣接部分を薄肉化してもよい。
(6)実施例では、上下型開きの成形型を使用したが、左右に型開きする成形型を用いてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 ダクト,10a ダクト壁部,12 空気流通路,18 開口部,
18a 開口領域,20 多孔質体,22 桟部,24a 外周接合部分(接合部分),
24b 桟部接合部分(接合部分),26 一般部分,28 隣接部分,30 成形型,
36 キャビティ,R 合成樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7