(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】硫化検出センサおよび硫化検出センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/04 20060101AFI20230404BHJP
G01N 33/2045 20190101ALI20230404BHJP
G01N 27/12 20060101ALI20230404BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
G01N17/04
G01N33/2045 100
G01N27/12 B
G01N27/04 N
G01N27/04 E
(21)【出願番号】P 2019125523
(22)【出願日】2019-07-04
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 太郎
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-250611(JP,A)
【文献】特開平11-195505(JP,A)
【文献】特開2016-92127(JP,A)
【文献】特開2008-209390(JP,A)
【文献】特開2019-101342(JP,A)
【文献】特開平10-300699(JP,A)
【文献】特開2009-158721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00-17/04
G01N 33/2045
G01N 27/12
G01N 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の主面における両端部に形成された一対の表電極と、前記一対の表電極間に形成された発熱体および硫化検出導体と、前記硫化検出導体の一部を覆う保護膜と、を備え、
前記発熱体と前記硫化検出導体とは直列に接続されていることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の硫化検出センサにおいて、
前記発熱体は、前記硫化検出導体を挟んだ両側にそれぞれ形成されていることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の硫化検出センサにおいて、
前記発熱体は、前記硫化検出導体を包囲するように形成されていることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項4】
請求項1に記載の硫化検出センサにおいて、
前記硫化検出導体は、前記発熱体を挟んだ両側にそれぞれ形成されていることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項5】
請求項1に記載の硫化検出センサにおいて、
前記発熱体は前記絶縁基板の主面に形成された抵抗体であり、前記保護膜が、前記抵抗体を覆うガラスコート層と、該ガラスコート層を覆う樹脂コート層とで構成されていることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項6】
請求項5に記載の硫化検出センサにおいて、
前記抵抗体が前記硫化検出導体を挟んだ両側にそれぞれ形成されており、これら両抵抗体に抵抗値調整用のトリミング溝が形成されていることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項7】
請求項6に記載の硫化検出センサにおいて、
前記ガラスコート層が、前記樹脂コート層から突出して前記硫化検出導体の端部に重なる突出部を有していることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項8】
絶縁材料からなる大判基板の主面に所定間隔を存して一対の表電極を形成する工程と、
前記一対の表電極間に硫化検出導体を形成する工程と、
前記硫化検出導体の両端部と前記表電極を接続する一対の抵抗体を形成する工程と、
前記抵抗体の全体を覆うと共に前記硫化検出導体の端部側にはみ出る突出部を有するガラスコート層を形成する工程と、
前記突出部を除いて前記ガラスコート層を覆うように樹脂コート層を形成する工程と、
前記硫化検出導体の硫化検出部を覆うと共に前記突出部に重なる部分にマスキング樹脂層を形成する工程と、
前記マスキング樹脂層を形成した後に、前記樹脂コート層から露出する前記表電極上にスパッタにより内部電極を形成する工程と、
前記内部電極の表面に外部メッキ層を形成する工程と、
前記外部メッキ層を形成した後に、前記マスキング樹脂層を剥離して前記硫化検出部を外部に露出させる工程と、
を含み、
前記突出部上で前記マスキング樹脂層が前記樹脂コート層から離間していることを特徴とする硫化検出センサの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の硫化検出センサの製造方法において、
前記マスキング樹脂層は前記樹脂コート層の表面高さに対して低くなるように形成されていることを特徴とする硫化検出センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食環境の累積的な硫化量を検出するための硫化検出センサと、そのような硫化検出センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にチップ抵抗器等の電子部品の内部電極としては、比抵抗の低いAg(銀)系の電極材料が使用されているが、銀は硫化ガスに曝されると硫化銀となり、硫化銀は絶縁物であることから、電子部品が断線してしまうという不具合が発生してしまう。そこで近年では、AgにPd(パラジウム)やAu(金)を添加して硫化しにくい電極を形成したり、電極を硫化ガスが到達しにくい構造にする等の硫化対策が講じられている。
【0003】
しかし、このような硫化対策を電子部品に講じたとしても、当該電子部品が硫化ガス中に長期間曝された場合や高濃度の硫化ガスに曝された場合は、断線を完全に防ぐことが難しくなるため、未然に断線を検知して予期せぬタイミングでの故障発生を防止することが必要となる。
【0004】
そこで従来より、特許文献1に記載されているように、電子部品の累積的な硫化の度合いを検出して、電子部品が硫化断線する等して故障する前に危険性を検出可能とした硫化検出センサが提案されている。特許文献1に記載された硫化検出センサは、絶縁基板上にAgを主体とした硫化検出体を形成し、この硫化検出体を覆うように透明で硫化ガス透過性のある保護膜を形成すると共に、絶縁基板の両側端部に硫化検出体に接続する端面電極を形成した構成となっている。
【0005】
このように構成された硫化検出センサを他の電子部品と共に回路基板上に実装した後、該回路基板を硫化ガスを含む雰囲気で使用すると、硫化ガスが硫化検出センサの保護膜を透過して硫化検出体に接するため、硫化ガスの濃度と経過時間に応じて硫化検出体の色が変化していく。また、硫化が進むにつれて硫化検出体を構成する銀が硫化銀に変化することから、硫化検出センサの抵抗値が次第に上昇していき、最終的には断線する。これにより、硫化検出体の色の変化を保護膜を透して目視したり、硫化検出センサの上面に照射した光の硫化検出体からの反射光を検出したり、あるいは硫化検出体の抵抗値の変化を検出することにより、硫化の度合いを検出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、硫化ガスによる硫化検出体の色の変化は微妙であるため、作業員の目視によって硫化の度合いを正確に検出することは困難であり、硫化検出体からの反射光に基づいて硫化の度合いを検出するとしても、検出するための大掛かりな設備が別途必要になるという課題がある。また、硫化検出体は比抵抗の低いAgを主体とした導電体であるため、累積的な硫化量に伴う硫化検出体の抵抗値変化は微量であり、しかもAgは温度特性(TCR)が非常に悪く、温度による抵抗値変化が大きいため、硫化検出体の抵抗値変化に基づいて硫化の度合いを正確に検出することも困難となる。さらに、硫化検出センサは回路基板上の電子部品が硫化破断する前に検出しなくてはならないが、硫化検出センサと回路基板上の電子部品は同じ硫化ガス雰囲気中に曝されているため、硫化検出センサと電子部品の断線タイミングにばらつきが発生し易く、場合によっては電子部品の断線後に硫化検出センサが断線することもあり、この点からも硫化の度合いを正確に検出することが困難となる。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、第1の目的は、硫化の度合いを正確かつ容易に検出することができる硫化検出センサを提供することにあり、第2の目的は、そのような硫化検出センサの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の目的を達成するために、本発明の硫化検出センサは、直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の主面における両端部に形成された一対の表電極と、前記一対の表電極間に形成された発熱体および硫化検出導体と、前記硫化検出導体の一部を覆う保護膜と、を備え、前記発熱体と前記硫化検出導体とが直列に接続されていることを特徴としている。
【0010】
このように構成された硫化検出センサでは、硫化検出導体の周辺が発熱体で温められることにより、硫化検出導体の硫化反応が加速されるため、硫化検出センサと回路基板上の電子部品を同じ硫化ガス雰囲気中に曝した場合に、回路基板上の電子部品が硫化断線する前に硫化検出導体を確実に断線させることができ、硫化の度合いを正確かつ容易に検出することができる。
【0011】
上記構成の硫化検出センサにおいて、発熱体が硫化検出導体を挟んだ両側にそれぞれ形成されていると、硫化検出導体をムラなく均一に温めることができる。
【0012】
また、上記構成の硫化検出センサにおいて、発熱体が硫化検出導体を包囲するように形成されていると、硫化検出導体をより一層ムラなく均一に温めることができる。
【0013】
また、上記構成の硫化検出センサにおいて、硫化検出導体が発熱体を挟んだ両側にそれぞれ形成されていると、発熱体を介して直列に接続された2つの硫化検出導体が存在するため、硫化の度合いをより正確かつ容易に検出することができる。
【0014】
また、上記構成の硫化検出センサにおいて、発熱体が絶縁基板の主面に形成された抵抗体であり、保護膜が、抵抗体を覆うガラスコート層と、該ガラスコート層を覆う樹脂コート層とで構成されていると、硫化の度合いを検出可能な抵抗器として使用することができる。
【0015】
この場合において、抵抗体が硫化検出導体を挟んだ両側にそれぞれ形成されており、これら両抵抗体に抵抗値調整用のトリミング溝が形成されていると、両方の抵抗体にトリミング溝の形成によって狭められた幅狭部ができ、これら幅狭部に多くの熱が発生するため、硫化検出導体をムラなく均一に温めることができる。
【0016】
また、この場合において、ガラスコート層が、樹脂コート層から突出して硫化検出導体の端部に重なる突出部を有していると、抵抗体で発生する熱を硫化検出導体に効率良く伝えることができる。
【0017】
上記第2の目的を達成するために、本発明による硫化検出センサの製造方法は、絶縁材料からなる大判基板の主面に所定間隔を存して一対の表電極を形成する工程と、前記一対の表電極間に硫化検出導体を形成する工程と、前記硫化検出導体の両端部と前記表電極を接続する一対の抵抗体を形成する工程と、前記抵抗体の全体を覆うと共に前記硫化検出導体の端部側にはみ出る突出部を有するガラスコート層を形成する工程と、前記突出部を除いて前記ガラスコート層を覆うように樹脂コート層を形成する工程と、前記硫化検出導体の硫化検出部を覆うと共に前記突出部に重なる部分にマスキング樹脂層を形成する工程と、前記マスキング樹脂層を形成した後に、前記樹脂コート層から露出する前記表電極上にスパッタにより内部電極を形成する工程と、前記内部電極の表面に外部メッキ層を形成する工程と、前記外部メッキ層を形成した後に、前記マスキング樹脂層を剥離して前記硫化検出部を外部に露出させる工程と、を含み、前記突出部上で前記マスキング樹脂層が前記樹脂コート層から離間していることを特徴としている。
【0018】
このように硫化検出導体の硫化検出部をマスキング樹脂層で覆った状態でスパッタにより内部電極を形成した後、この内部電極の表面に電解メッキにより外部メッキ層を形成し、しかる後、マスキング樹脂層を剥離して硫化検出部を外部に露出させることにより、一対の表電極間に抵抗体と硫化検出導体を直列に接続した硫化検出センサが得られる。ここで、抵抗体を覆うガラスコート層に硫化検出導体の端部側にはみ出る突出部が形成されているため、この突出部上でマスキング樹脂層と樹脂コート層を容易に離間させることができ、後工程でマスキング樹脂層を容易に剥離することができる。
【0019】
この場合において、マスキング樹脂層が樹脂コート層の表面高さに対して低くなるように形成されていると、大判基板を1次分割して得られる複数の短冊状基板を上下方向に重ね合わせた状態で、各短冊状基板の分割面側からスパッタして内部電極を形成する際に、マスキング樹脂層が上方に重ねた短冊状基板の裏面に張り付いてしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、硫化検出導体の周辺が発熱体で温められて硫化反応が加速されるため、硫化検出センサと回路基板上の電子部品を同じ硫化ガス雰囲気中に曝した場合に、回路基板上の電子部品が硫化断線する前に硫化検出導体を確実に断線させることができ、硫化の度合いを正確かつ容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態例に係る硫化検出センサの平面図である。
【
図3】該硫化検出センサの製造工程を示す平面図である。
【
図4】該硫化検出センサの製造工程を示す断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態例に係る硫化検出センサの平面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態例に係る硫化検出センサの平面図である。
【
図7】本発明の第4実施形態例に係る硫化検出センサの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明すると、
図1は本発明の第1実施形態例に係る硫化検出センサの平面図、
図2は
図1のII-II線に沿う断面図である。
【0023】
図1と
図2に示すように、第1実施形態例に係る硫化検出センサは、直方体形状の絶縁基板1と、絶縁基板1の表面の長手方向両端部に設けられた一対の表電極2と、これら表電極2に接続する一対の抵抗体3と、これら抵抗体3に直列に接続する硫化検出導体4と、硫化検出導体4の一部と各抵抗体3の全体を覆う保護膜5と、絶縁基板1の裏面の長手方向両端部に設けられ一対の裏電極6と、絶縁基板1の長手方向両端部に設けられた一対の端面電極7と、端面電極7の表面に設けられた外部電極8と、によって主として構成されている。
【0024】
絶縁基板1は、後述する大判基板を縦横の分割溝に沿って分割して多数個取りされたものであり、大判基板の主成分はアルミナを主成分とするセラミックス基板である。
【0025】
一対の表電極2は、銀を主成分とするAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これら両表電極2は所定間隔を存して対向するように絶縁基板1の長手方向両端部に形成されている。一対の裏電極6も銀を主成分とするAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これら裏電極6は絶縁基板1の表面側の表電極2と対応する位置に形成されている。
【0026】
一対の抵抗体3は、酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。これら抵抗体3の一端部は対応する表電極2に接続され、他端部は硫化検出導体4に接続されている。すなわち、一対の表電極2の間に、硫化検出導体4を介して2つの抵抗体3が直列に接続されている。抵抗体3は発熱体として機能するものであり、各抵抗体3には抵抗値調整用のトリミング溝3aが形成されている。
【0027】
硫化検出導体4は、銀を主成分とするAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、前述したように、硫化検出導体4の両端部は一対の抵抗体3に接続されている。硫化検出導体4の両端部は保護膜5によって覆われており、保護膜5から露出する部分の硫化検出導体4が硫化ガスを検出可能な硫化検出部4aとなっている。
【0028】
保護膜5はガラスコート層9と樹脂コート層10の2層構造からなり、そのうちガラスコート層9はガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものであり、樹脂コート層10はエポキシ系樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させたものである。ガラスコート層9は、樹脂コート層10から突出して硫化検出導体4の端部に重なる突出部9aを有しており、硫化検出導体4の硫化検出部4aは一対のガラスコート層9の突出部9a間に挟まれて外部に露出している。
【0029】
一対の端面電極7は、絶縁基板1の端面にNi/Crをスパッタしたものであり、これら端面電極7は対応する表電極2と裏電極6間を導通するように形成されている。
【0030】
一対の外部電極8はバリヤー層と外部接続層の2層構造からなり、そのうちバリヤー層は電解メッキによって形成されたNiメッキ層であり、外部接続層は電解メッキによって形成されたSnメッキ層である。これら外部電極8により、端面電極7と該端面電極7から露出する裏電極6の表面が被覆されている。
【0031】
次に、この硫化検出センサの製造工程について、
図3と
図4を用いて説明する。なお、
図3(a)~(j)はこの製造工程で用いられる大判基板を表面的に見た平面図、
図4(a)~(j)は
図3(a)~(j)の長手方向中央部に沿った1チップ相当分の断面図をそれぞれ示している。
【0032】
まず、絶縁基板1が多数個取りされる大判基板を準備する。この大判基板には予め1次分割溝と2次分割溝が格子状に設けられており、両分割溝によって区切られたマス目の1つ1つが1個分のチップ領域となる。
図3と
図4には1個分のチップ領域に相当する大判基板11Aが代表して示されているが、実際は多数個分のチップ領域に相当する大判基板に対して以下に説明する各工程が一括して行われる。
【0033】
すなわち、
図3(a)と
図4(a)に示すように、この大判基板11Aの表面にAg系ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、所定間隔を存して対向する一対の表電極2を形成する。なお、これと同時あるいは前後して、大判基板11Aの裏面にAg系ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、表電極2に対応する位置に一対の裏電極6を形成する。
【0034】
次に、
図3(b)と
図4(b)に示すように、大判基板11Aの表面にAgを主成分とするAg系ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、一対の表電極2の間に硫化検出導体4を形成する。なお、一対の表電極2と硫化検出導体4は同時に形成するようにしても良く、その場合、後に形成する2つの抵抗体3の長さを容易に同じにすることができるため、2つの抵抗体3の抵抗値を揃え易くなる。
【0035】
次に、酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成することにより、
図3(c)と
図4(c)に示すように、両端部が硫化検出導体4と各表電極2に接続する2つの抵抗体3を形成する。
【0036】
次に、
図3(d)と
図4(d)に示すように、各抵抗体3を覆う領域にガラスペーストをスクリーン印刷した後、このガラスペーストを乾燥・焼成して一対のガラスコート層9を形成する。これらガラスコート層9は、抵抗体3の全体を覆うと共に硫化検出導体4の端部側にはみ出しおり、各ガラスコート層9で挟まれた部分の硫化検出導体4が硫化検出部4aとなる。
【0037】
次に、
図3(e)と
図4(e)に示すように、各ガラスコート層9の上から抵抗体3にトリミング溝3aを形成して抵抗値調整する。ここで、一対の抵抗体3に形成されるトリミング溝3aは逆向きのスリット形状になっており、図示の例では、左側の抵抗体3に対して下辺側から上方に向かって逆L字状のトリミング溝3aが形成され、右側の抵抗体3に対して上辺側から下方に向かってL字状のトリミング溝3aが形成されている。このように、硫化検出導体4の両側に接続された一対の抵抗体3に対して、抵抗値調整用のトリミング溝3aがそれぞれ反対側の側面から形成されることにより、発熱箇所となる幅狭部(符号S参照)が各抵抗体3の反対側の側面近傍に形成される。なお、トリミング溝3aの形状はL字状(Lカット)に限定されず、直線的に延びるI字状(ストレートカット)等でも良い。
【0038】
次に、各ガラスコート層9の上からエポキシ系樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化することにより、
図3(f)と
図4(f)に示すように、ガラスコート層9の大部分を覆う一対の樹脂コート層10を形成する。これにより、硫化検出導体4の一部と各抵抗体3の全体を覆う2層構造の保護膜5が形成される。ただし、硫化検出導体4の端部側にはみ出しているガラスコート層9の端部は樹脂コート層10によって覆われておらず、ガラスコート層9の樹脂コート層10から突出する部分が突出部9aとなる。
【0039】
次に、可溶性のマスキング液をスクリーン印刷して乾燥することにより、
図3(g)と
図4(g)に示すように、硫化検出導体4の硫化検出部4aを覆ってガラスコート層9の突出部9aに重なるマスキング樹脂層12を形成する。ここで、後工程で剥離(除去)されるマスキング樹脂層12は、樹脂コート層10に接触しないように形成する必要があるが、ガラスコート層9を硫化検出導体4の端部側に延ばした突出部9aが形成されているため、硫化検出導体4の硫化検出部4aをマスキング樹脂層12にて確実に覆うことができ、さらに、この突出部9a上でマスキング樹脂層12と樹脂コート層10を容易に離間させることができる。また、マスキング樹脂層12は、樹脂コート層10の表面高さに対して低くなるように形成されている。
【0040】
次に、大判基板11Aを一次分割溝に沿って短冊状基板11Bに1次分割した後、短冊状基板11Bの分割面にNi/Crをスパッタすることにより、
図3(h)と
図4(h)に示すように、短冊状基板11Bの両端部に表電極2と裏電極6間を接続する端面電極7を形成する。このスパッタは上下方向に積み重ねた複数の短冊状基板11Bに対して行われるが、その際、マスキング樹脂層12を樹脂コート層10の表面高さに対して低くなるように形成することで、マスキング樹脂層12よりも樹脂コート層10が上方に突出しているため、任意の短冊状基板11Bに形成された一対の樹脂コート層10が上段側に重ねられた短冊状基板11Bの下面に当接した状態となる。これにより、スバッタ膜を樹脂コート層10(保護膜5)でブロックしてマスキング樹脂層12に到達しないようにすることができると共に、上下に重ねられた短冊状基板11Bどうしがマスキング樹脂層12の粘着力で張り付いてしまうことを防止できる。
【0041】
次に、短冊状基板11Bを二次分割溝に沿って複数のチップ状基板11Cに2次分割した後、これらチップ状基板11Cに対して電解メッキを施してNi-Snメッキ層を形成することにより、
図3(i)と
図4(i)に示すように、端面電極7と該端面電極7から露出する裏電極6の表面を覆う外部電極8を形成する。
【0042】
次に、チップ状基板11Cを樹脂コート層10が溶解せず、マスキング樹脂層12だけが溶解する溶液に浸漬することにより、
図3(j)と
図4(j)に示すように、マスキング樹脂層12を剥離(除去)する。その際、樹脂コート層10とマスキング樹脂層12とはガラスコート層9の突出部9a上で離間しているため、マスキング樹脂層12を容易に剥離することができる。これにより、一対の保護膜5間に硫化検出導体4の硫化検出部4aが露出し、
図1,2に示す硫化検出センサが完成する。
【0043】
以上説明したように、第1実施形態例に係る硫化検出センサでは、一対の表電極2間に抵抗体3と硫化検出導体4を直列に接続した構成となっており、抵抗体3の発熱によって硫化検出導体4の硫化反応が加速されるため、硫化検出センサと回路基板上の電子部品を同じ硫化ガス雰囲気中に曝した場合に、回路基板上の電子部品が硫化断線する前に硫化検出導体を確実に断線させることができ、硫化の度合いを正確かつ容易に検出することができる。
【0044】
また、第1実施形態例に係る硫化検出センサでは、硫化検出導体4を挟んだ両側に抵抗体3が接続されているため、硫化検出導体4を両側に配置された抵抗体3の発熱によって均一に温めることができる。しかも、硫化検出導体4の両側に接続された一対の抵抗体3に対して、抵抗値調整用のトリミング溝3aがそれぞれ反対側の側面から形成されているため、発熱箇所となる幅狭部Sが各抵抗体3の反対側の側面近傍に形成され、硫化検出導体4をムラなく均一に温めることができる。
【0045】
また、第1実施形態例に係る硫化検出センサでは、保護膜5がガラスコート層9と樹脂コート層10の2層構造からなり、そのガラスコート層9が、樹脂コート層10から突出して硫化検出導体4の端部に重なる突出部9aを有しているため、抵抗体3で発生する熱を突出部9aを介して硫化検出導体4の硫化検出部4aに効率良く伝えることができる。
【0046】
また、第1実施形態例に係る硫化検出センサの製造方法では、硫化検出導体4の硫化検出部4aをマスキング樹脂層12で覆った状態でスパッタにより端面電極(内部電極)7を形成した後、この端面電極7の表面に電解メッキにより外部電極8を形成し、しかる後、マスキング樹脂層12を剥離して硫化検出部4aを外部に露出させることにより、一対の表電極2間に抵抗体3と硫化検出導体4を直列に接続した硫化検出センサが得られる。ここで、保護膜5を構成する下層側のガラスコート層9に、上層側の樹脂コート層10から突出して硫化検出導体4の端部側に延びる突出部9aが形成されているため、硫化検出導体4の硫化検出部4aをマスキング樹脂層12にて確実に覆うことができ、さらに、この突出部9a上でマスキング樹脂層12と樹脂コート層10を容易に離間させることができ、後工程でマスキング樹脂層12を容易に剥離することができる。
【0047】
また、第1実施形態例に係る硫化検出センサの製造方法では、マスキング樹脂層12が樹脂コート層10の表面高さに対して低くなるように形成されているため、大判基板11Aを一次分割して得られる複数の短冊状基板11Bを上下方向に重ね合わせた状態で、各短冊状基板11Bの分割面側からスパッタして端面電極7を形成する際に、マスキング樹脂層12が上方に重ねた短冊状基板11Bの裏面に張り付いてしまうことを防止できる。
【0048】
図5は本発明の第2実施形態例に係る硫化検出センサの平面図であり、この第2実施形態例に係る硫化検出センサは、一対の表電極2間に1つの抵抗体30と1つの硫化検出導体4が直列に接続されていると共に、この抵抗体30がミアンダ形状(蛇行形状)に形成されている。抵抗体30の全部と硫化検出導体4の一部は保護膜5によって覆われており、保護膜5から露出する部分の硫化検出導体4は硫化検出部4aとなっている。
【0049】
図5に示すように、発熱体である抵抗体30が硫化検出導体4の一方側にだけ接続されている場合でも、抵抗体30の発熱によって硫化検出導体4の硫化反応が加速されるため、回路基板上の電子部品が硫化断線する前に硫化検出導体4を確実に断線させることができる。また、抵抗体30がミアンダ形状に形成されているため、抵抗体30が発熱し易くなって硫化検出導体4の硫化反応を加速させることができる。
【0050】
図6は本発明の第3実施形態例に係る硫化検出センサの平面図であり、この第3実施形態例に係る硫化検出センサは、一方(図示左側)の表電極2と硫化検出導体4間に接続された抵抗体31が、硫化検出導体4の下方に延在する折返部31aを有するミアンダ形状に形成されていると共に、他方(図示右側)の表電極2と硫化検出導体4間に接続された抵抗体32が、硫化検出導体4の上方に延在する折返部32aを有するミアンダ形状に形成されている。これら抵抗体31,32の全部と硫化検出導体4の一部は保護膜5によって覆われており、保護膜5から露出する部分の硫化検出導体4は硫化検出部4aとなっている。
【0051】
図6に示すように、一対の抵抗体31,32が硫化検出導体4の全周を包囲するように形成されていると、硫化検出導体4がより一層ムラなく均一に温められるため、硫化検出導体4の硫化反応が加速されやすくなる。
【0052】
図7は本発明の第4実施形態例に係る硫化検出センサの平面図であり、この第4実施形態例に係る硫化検出センサは、一対の表電極2間に抵抗体33を介して2つの硫化検出導体4が直列に接続されており、抵抗体33はミアンダ形状に形成されている。抵抗体33の全部と各硫化検出導体41,42の一部は保護膜5によって覆われており、保護膜5から露出する部分の硫化検出導体41,42は硫化検出部41a,42aとなっている。
【0053】
図7に示すように、2つの硫化検出導体41,42が抵抗体33を挟んだ両側に形成されていると、抵抗体33を介して直列に接続された2つの硫化検出導体41,42が存在するため、硫化の度合いをより正確かつ容易に検出することができる。
【0054】
なお、上記各実施形態例に係る硫化検出センサでは、硫化検出導体に外部に露出する硫化検出部を形成し、この硫化検出部に硫化ガスが直接接触するように構成されているが、硫化ガス透過性のある保護膜によって硫化検出体を覆うように構成しても良い。その場合、硫化ガス透過性のある保護膜は水分も透過してしまい、硫化検出導体に抵抗値変化やマイグレーションなどの悪影響を及ぼす虞があるが、本発明の硫化検出センサでは、発熱体によって保護膜を透過した水分を蒸発させることができるため、硫化検出導体への悪影響をなくすことができる。
【符号の説明】
【0055】
1 絶縁基板
2 表電極
3 抵抗体(発熱体)
4 硫化検出導体
4a 硫化検出部
5 保護膜
6 裏電極
7 端面電極(内部電極)
8 外部電極(外部メッキ層)
9 ガラスコート層
9a 突出部
10 樹脂コート層
11A 大判基板
11B 短冊状基板
11C チップ状基板
12 マスキング樹脂層
30,31,32,33 抵抗体(発熱体)
31a,32a 折返部
41,42 硫化検出導体
41a,42a 硫化検出部