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特許7256092航空機内の関連し合うイベントを特定するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】航空機内の関連し合うイベントを特定するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B64D 45/00 20060101AFI20230404BHJP
   B64C 13/00 20060101ALI20230404BHJP
   B64F 5/40 20170101ALI20230404BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20230404BHJP
   G06F 11/34 20060101ALI20230404BHJP
   G06Q 10/00 20230101ALI20230404BHJP
【FI】
B64D45/00 A
B64C13/00 B
B64F5/40
G05B23/02 T
G06F11/34 152
G06Q10/00
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019145092
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2020073361
(43)【公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】16/057,490
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マーティン, チャールズ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ルー, ツァイ-チン
(72)【発明者】
【氏名】ワーゲン, アレックス
(72)【発明者】
【氏名】スローター, スティーヴ シー.
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー, アリス エー.
(72)【発明者】
【氏名】フォック, デリック エス.
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0239756(US,A1)
【文献】国際公開第2017/048640(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0159240(US,A1)
【文献】特表2010-514498(JP,A)
【文献】特開2003-247453(JP,A)
【文献】特開2014-210574(JP,A)
【文献】特開2012-176645(JP,A)
【文献】特開平04-293696(JP,A)
【文献】特開2017-151975(JP,A)
【文献】特開2018-008681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 45/00
B64C 13/00
B64F 5/40
G05B 23/02
G06F 11/34
G06Q 10/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機(100)内の関連し合うイベントを特定する方法(200)であって、
(202)前記航空機(100)上の少なくとも1つの電気バス(112)の電圧測定値を含むセンサデータを経時的に獲得することと、
(204)前記航空機(100)上の複数の航空機下位システム(108)によって経時的にシグナリングされた障害コードを含む障害コードデータを獲得することであって、前記障害コードの各障害コードは、前記複数の航空機下位システム(108)の各航空機下位システムと関連しており、エラーを検出すると、前記各航空機下位システムは前記障害コードを出力させられる、障害コードデータを獲得することと、
(206)電圧の閾値を計算することであって、前記電圧測定値が前記電圧の閾値を超えたときには、前記センサデータにおいて異常な電圧測定値が示される、電圧の閾値を計算することと、
(208)前記センサデータ及び前記障害コードデータからイベントの集合を生成することであって、前記イベントの集合の各イベントは、(i)前記センサデータが前記異常な電圧測定値を示す期間内又は又は(ii)前記複数の航空機下位システム(108)の特定の航空機下位システムと関連している障害コードがシグナリングされた期間内に発生する、イベントの集合を生成することと、
(210)前記イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算することであって、前記イベントの集合の間での前記統計的依存度の値は、前記イベントの集合が、時間的順序で発生するイベントの因果連鎖である尤度を示す、統計的依存度の値を計算することと、
(212)前記イベントの集合の間での統計的依存度の前記値が所定の閾値を超えたことに基づいて、一連の関係するイベントとして前記イベントの集合を表し前記一連の関係するイベントが発生した時間的順序をさらに表す一時的な前駆ネットワーク(128)を構築することと、
(214)前記センサデータ及び前記障害コードデータから離してメモリ(120)に格納された集計テーブル(126)において、前記一連の関係するイベントと、前記イベントの集合の間での統計的依存度の前記値と、にインデックス付けすることと、
(216)前記集計テーブル(126)と、前記一時的な前駆ネットワーク(128)の視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置(104)を制御すること
を含む、方法(200)。
【請求項2】
前記一連の関係するイベントは、第1のイベント及び第2のイベントを含み、
前記イベントの集合の間での前記統計的依存度の値を計算することは、(218)(i)前記イベントの集合におけるイベントの総数、(ii)前記一連の関係するイベントの過去の発生を通じて、前記第1のイベントが所定の閾値期間より長くあけて前記第2のイベントより先に起きた全回数、(iii)前記第1のイベントが発生した全回数、及び、(iv)前記第2のイベントが発生した全回数に基づいて、前記イベントの集合の間での前記統計的依存度の値を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記センサデータ及び前記障害コードデータから前記イベントの集合を生成する前に、
(220)前記航空機(100)の回転翼の回転速度が毎分あたりの回転数の閾値を超えた期間中に獲得された電圧測定値を、前記センサデータから削除することと、
(222)前記航空機(100)の前記回転翼の前記回転速度が毎分あたりの前記回転数の閾値を超えた期間中にシグナリングされた障害コードを、前記障害コードデータから削除すること
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記センサデータ及び前記障害コードデータから離して前記メモリ(120)に格納された前記集計テーブル(126)において、前記一連の関係するイベントと、前記イベントの集合の間での前記統計的依存度の値と、にインデックス付けすることは、(224)前記一連の関係するイベントが発生した間の前記航空機(100)及び他の航空機のフライトの総数、並びに、前記一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を示すために、前記集計テーブル(126)を更新することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記集計テーブル(126)と、前記一時的な前駆ネットワーク(128)の前記視覚的表現と、を前記グラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置(104)を制御することは、
(226)前記視覚的表現において、(i)前記一連の関係するイベントの各イベントをノードとして示し、(ii)前記一連の関係するイベントが発生した前記時間的順序を示すリンク(134)により接続された2つ以上のノード(130,132)として前記一連の関係するイベントを示すよう、前記表示装置(104)を制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記一連の関係するイベントは、前記センサデータが前記異常な電圧測定値を示す第1のイベント、及び、前記複数の航空機下位システム(108)の前記特定の航空機下位システムと関連している障害コードがシグナリングされた第2のイベントを含み、
前記集計テーブル(126)と、前記一時的な前駆ネットワーク(128)の前記視覚的表現と、を前記グラフィカルユーザインタフェースで表示するよう前記表示装置(104)を制御することは、(228)前記集計テーブル(126)において、(i)前記第1のイベントについては、前記少なくとも1つの電気バス(112)の、前記異常な電圧測定値が存在した電気バスの第1の識別子、(ii)前記第2のイベントについては、前記障害コードの第2の識別子、及び、前記特定の航空機下位システムの第3の識別子、並びに、(iii)前記第1のイベントと前記第2のイベントとの間の統計的依存度の値を前記グラフィカルユーザインタフェースで表示するよう、前記表示装置(104)を制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記集計テーブル(126)と、前記一時的な前駆ネットワーク(128)の前記視覚的表現と、を前記グラフィカルユーザインタフェースで表示するよう前記表示装置(104)を制御することは、(230)前記集計テーブル(126)において、前記複数の航空機下位システム(108)のうちの、前記異常な電圧測定値が関連している航空機下位システムの第4の識別子を前記グラフィカルユーザインタフェースで表示するよう前記表示装置(104)を制御することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記一連の関係するイベントは、少なくとも3つのイベントを含み、
前記集計テーブル(126)と、前記一時的な前駆ネットワーク(128)の前記視覚的表現と、を前記グラフィカルユーザインタフェースで表示するよう前記表示装置(104)を制御することは、(232)前記集計テーブル(126)において、(i)前記少なくとも3つのイベントの各イベントの各識別子、及び、(ii)前記少なくとも3つのイベントの間での前記統計的依存度の値を前記グラフィカルユーザインタフェースで表示するよう、前記表示装置(104)を制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記一連の関係するイベントは、第1のイベント及び第2のイベントを含み、前記方法は、
(234)前記一連の関係するイベントの過去の発生を通じた、前記第1のイベントと前記第2のイベントとの間の期間の平均値を計算することと、(236)前記一連の関係するイベントの過去の発生を通じた、前記第1のイベントと前記第2のイベントとの間の期間の標準偏差を計算すること
を更に含み、
前記集計テーブル(126)と、前記一時的な前駆ネットワーク(128)の前記視覚的表現と、を前記グラフィカルユーザインタフェースで表示するよう前記表示装置(104)を制御することは、(238)前記集計テーブル(126)において、(i)前記第1のイベントの識別子、(ii)前記第2のイベントの識別子、(iii)前記第1のイベントと前記第2のイベントとの間の統計的依存度の値、(iv)前記一連の関係するイベントの過去の発生を通した、前記第1のイベントと前記第2のイベントとの間の期間の前記平均値、及び、(v)前記一連の関係するイベントの過去の発生を通した、前記第1のイベントと前記第2のイベントとの間の期間の前記標準偏差を、前記グラフィカルユーザインタフェースで表示するよう前記表示装置(104)を制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(240)前記一連の関係するイベントが発生した間の前記航空機(100)及び他の航空機のフライトの総数、並びに、前記一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を決定するために、前記メモリ(120)に格納された参照データを参照することと、
(242)前記一連の関係するイベントが発生した間の前記航空機(100)及び前記他の航空機のフライトの前記総数、並びに、前記一連の関係するイベントが発生した航空機の前記総数を表示するよう前記表示装置(104)を制御すること
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(244)或る環境条件が存在したときに、前記一連の関係するイベントが発生した間の前記航空機(100)及び他の航空機のフライトの総数、並びに、前記或る環境条件が存在したときに、前記一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を決定するために、前記メモリ(120)に格納された参照データを参照することと、
(246)前記或る環境条件が存在したときに、前記一連の関係するイベントが発生した間の前記航空機(100)及び前記他の航空機のフライトの前記総数、並びに、前記或る環境条件が存在したときに、前記一連の関係するイベントが発生した航空機の前記総数を表示するよう、前記表示装置(104)を制御すること
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
非一時的のコンピュータ可読媒体(120)であって、計算装置(106)の1つ以上のプロセッサ(114)によって実行されたときに、前記計算装置に、
航空機(100)上の少なくとも1つの電気バス(112)の電圧測定値を含むセンサデータを経時的に獲得することと、
前記航空機(100)上の複数の航空機下位システム(108)によって経時的にシグナリングされた障害コードを含む障害コードデータを獲得することであって、前記障害コードの各障害コードは、前記複数の航空機下位システム(108)の各航空機下位システムと関連しており、エラーを検出すると、前記各航空機下位システムは前記障害コードを出力させられる、障害コードデータを獲得することと、
電圧の閾値を計算することであって、前記電圧測定値が前記電圧の閾値を超えたときには、前記センサデータにおいて異常な電圧測定値が示される、電圧の閾値を計算することと、
前記センサデータ及び前記障害コードデータからイベントの集合を生成することであって、前記イベントの集合の各イベントは、(i)前記センサデータが前記異常な電圧測定値を示す期間内又は(ii)前記複数の航空機下位システム(108)の特定の航空機下位システムと関連している障害コードがシグナリングされた期間内に発生する、イベントの集合を生成することと、
前記イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算することであって、前記イベントの集合の間での前記統計的依存度の値は、前記イベントの集合が、時間的順序で発生するイベントの因果連鎖である尤度を示す、統計的依存度の値を計算することと、
前記イベントの集合の間での前記統計的依存度の値が所定の閾値を超えたことに基づいて、一連の関係するイベントとして前記イベントの集合を表し前記一連の関係するイベントが発生した前記時間的順序をさらに表す一時的な前駆ネットワーク(128)を構築することと、
前記センサデータ及び前記障害コードデータから離してメモリ(120)に格納された集計テーブル(126)において、前記一連の関係するイベントと、前記イベントの集合の間での前記統計的依存度の値と、にインデックス付けすることと、
前記集計テーブル(126)と、前記一時的な前駆ネットワーク(128)の視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置(104)を制御すること
を含む操作を実行させる命令(124)が格納された、非一時的のコンピュータ可読媒体(120)。
【請求項13】
前記操作は、
前記センサデータ及び前記障害コードデータから前記イベントの集合を生成する前に、
前記航空機(100)の回転翼の回転速度が毎分あたりの回転数の閾値を超えた期間中に獲得された電圧測定値を、前記センサデータから削除することと、
前記航空機(100)の前記回転翼の前記回転速度が毎分あたりの前記回転数の閾値を超えた期間中にシグナリングされた障害コードを、前記障害コードデータから削除すること
を更に含む、請求項12に記載の非一時的のコンピュータ可読媒体。
【請求項14】
前記集計テーブル(126)と、前記一時的な前駆ネットワーク(128)の前記視覚的表現と、を前記グラフィカルユーザインタフェースで表示するよう前記表示装置(104)を制御することは、
(226)前記視覚的表現において、(i)前記一連の関係するイベントの各イベントをノードとして示し、(ii)前記一連の関係するイベントが発生した前記時間的順序を示すリンクにより接続された2つ以上のノードとして、前記一連の関係するイベントを示すよう、前記表示装置(104)を制御することを含む、請求項12に記載の非一時的のコンピュータ可読媒体。
【請求項15】
システム(102)であって、
航空機(100)上の複数の航空機下位システム(108)と、
プロセッサ(114)、及び、メモリ(120)を有する障害診断計算装置(106)であって、前記メモリ(120)には、
前記航空機(100)上の少なくとも1つの電気バス(112)の電圧測定値を含むセンサデータを経時的に獲得することと、
前記複数の航空機下位システム(108)によって経時的にシグナリングされた障害コードを含む障害コードデータを獲得することであって、前記障害コードの各障害コードは、前記複数の航空機下位システム(108)の各航空機下位システムと関連しており、エラーを検出すると、前記各航空機下位システムは前記障害コードを出力させられる、障害コードデータを獲得することと、
電圧の閾値を計算することであって、前記電圧測定値が前記電圧の閾値を超えたときには、前記センサデータにおいて異常な電圧測定値が示される、電圧の閾値を計算することと、
前記センサデータ及び前記障害コードデータからイベントの集合を生成することであって、前記イベントの集合の各イベントは、(i)前記センサデータが前記異常な電圧測定値を示す期間内又は(ii)前記複数の航空機下位システム(108)の特定の航空機下位システムと関連している障害コードがシグナリングされた期間内に発生する、イベントの集合を生成することと、
前記イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算することであって、前記イベントの集合の間での前記統計的依存度の値は、前記イベントの集合が、時間的順序で発生するイベントの因果連鎖である尤度を示す、統計的依存度の値を計算することと、
前記イベントの集合の間での前記統計的依存度の値が所定の閾値を超えたことに基づいて、一連の関係するイベントとして前記イベントの集合を表し前記一連の関係するイベントが発生した前記時間的順序をさらに表す一時的な前駆ネットワーク(128)を構築することと、
前記センサデータ及び前記障害コードデータから離して前記メモリに格納された集計テーブル(126)において、前記一連の関係するイベントと、前記イベントの集合の間での前記統計的依存度の値と、にインデックス付けすることと、
前記集計テーブル(126)と、前記一時的な前駆ネットワーク(128)の視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置(104)を制御すること
を含む操作を実行するために、前記プロセッサによって実行可能な命令(124)が格納される、障害診断計算装置(106)と、
を備えるシステム(102)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、航空機内の関連し合うイベントを特定することに関し、特に、異常なセンサ信号、航空機の構成要素の故障といったイベントが如何に関係しうるかに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機は典型的に、航空機と関連しているデータを記録するよう構成された機器を備えている。上記データは、フライト制御下位システム、推進下位システム、又は衛星通信下位システムといった、航空機の様々な下位システムからのセンサ信号を含みうる。センサ信号が或る基準を満たすときには、航空機は、特定の航空機下位システムの故障といった潜在的な問題についてパイロット又は整備員にアラートを発するために、応答して障害メッセージを発しうる。この障害メッセージも同様に記録が可能である。
【0003】
既存の航空機では、異常なセンサ信号又は障害メッセージといったイベントが、1つの下位システムで発生したときには、他のイベントがその後に連鎖にして次々と起こる可能性があり、このことは、他の様々な下位システム中に広がりうる。上記のことが発生したときには、整備員にとってはその問題の根本的原因を特定することが困難となる可能性があり、ひいてはこの問題の解決策を特定することが困難となる可能性がある。
【0004】
既存の方法及びシステムは、予測的かつ診断的なモデルを構築しており、このモデルは、或る航空機の構成要素がいつその寿命に達して除去又は置換されることが必要となりうるのかを予測する土台として、障害メッセージ及び他のデータソースに注視する。しかしながら、上記の既存の方法及びシステムは、ハードウェア及びソフトウェアの問題、より具体的には、先に記載した複数の下位システムにわたって広がる問題の原因を予測するためには非効率的であり、不正確であり、及び/又は非効果的でありうる。結果的に、問題を解決するために、診断及び整備の手続きの間、本題とは無関係な努力を払う可能性がある。
【0005】
必要とされているものは、障害診断の精度及び効率を改善するためのシステム及び方法であり、上記システム及び方法によってさらには、障害を解決しこれに関連するコストを削減するために払われる努力の精度及び効率が改善されうる。
【発明の概要】
【0006】
一実施例において、航空機内の関連し合うイベントを特定する方法が記載される。本方法は、航空機上の少なくとも1つの電気バスの電圧測定値を含むセンサデータを経時的に獲得することと、航空機上の複数の航空機下位システムによって経時的にシグナリングされた障害コードを含む障害コードデータを獲得することであって、障害コードの各障害コードは、複数の航空機下位システムの各航空機下位システムと関連しており、エラーを検出すると、各航空機下位システムは障害コードを出力させられる、障害コードデータを獲得することと、電圧の閾値を計算することであって、電圧測定値が電圧の閾値を超えたときには、センサデータにおいて異常な電圧測定値が示される、電圧の閾値を計算することと、センサデータ及び障害コードデータからイベントの集合を生成することであって、イベントの集合の各イベントは、(i)センサデータが異常な電圧測定値を示す期間内又は(ii)複数の航空機下位システムの特定の航空機下位システムと関連している障害コードがシグナリングされた期間内に発生する、イベントの集合を生成することと、イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算することであって、イベントの集合の間での統計的依存度の値は、イベントの集合が、時間的順序で発生するイベントの因果連鎖である尤度を示す、統計的依存度の値を計算することと、イベントの集合の間での統計的依存度の値が所定の閾値を超えたことに基づいて、一連の関係するイベントとしてイベントの集合を表し一連の関係するイベントが発生した時間的順序をさらに表す一時的な前駆ネットワークを構築することと、センサデータ及び障害コードデータから離してメモリに格納された集計テーブルにおいて、一連の関係するイベントと、イベントの集合の間での統計的依存度の値と、にインデックス付けすることと、集計テーブルと、一時的な前駆ネットワークの視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御することを含む。
【0007】
他の実施例において、非一時的のコンピュータ可読媒体が記載される。非一時的のコンピュータ可読媒体には、計算装置の前記他の航空機によって実行されたときに、計算装置に
航空機上の少なくとも1つの電気バスの電圧測定値を含むセンサデータを経時的に獲得することと、
航空機上の複数の航空機下位システムによって経時的にシグナリングされた障害コードを含む障害コードデータを獲得することであって、障害コードの各障害コードは、複数の航空機下位システムの各航空機下位システムと関連しており、エラーを検出すると、各航空機下位システムは障害コードを出力させられる、障害コードデータを獲得することと、
電圧の閾値を計算することであって、電圧測定値が電圧の閾値を超えたときには、センサデータにおいて異常な電圧測定値が示される、電圧の閾値を計算することと、
センサデータ及び障害コードデータからイベントの集合を生成することであって、イベントの集合の各イベントは、(i)センサデータが異常な電圧測定値を示す期間内又は(ii)複数の航空機下位システムの特定の航空機下位システムと関連している障害コードがシグナリングされた期間内に発生する、イベントの集合を生成することと、
イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算することであって、イベントの集合の間での統計的依存度の値は、イベントの集合が、時間的順序で発生するイベントの因果連鎖である尤度を示す、統計的依存度の値を計算することと、
イベントの集合の間での統計的依存度の値が所定の閾値を超えたことに基づいて、一連の関係するイベントとしてイベントの集合を表し一連の関係するイベントが発生した時間的順序をさらに表す一時的な前駆ネットワークを構築することと、
センサデータ及び障害コードデータから離してメモリに格納された集計テーブルにおいて、一連の関係するイベントと、イベントの集合の間での統計的依存度の値と、にインデックス付けすることと、
集計テーブルと、一時的な前駆ネットワークの視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御すること
を含む操作を実行させる命令が格納されている。
【0008】
他の実施例において、システムが記載される。システムは、航空機上の複数の航空機下位システムを備える。システムは、プロセッサ及びメモリを有する障害診断計算装置であって、メモリには、
航空機上の少なくとも1つの電気バスの電圧測定値を含むセンサデータを経時的に獲得することと、
複数の航空機下位システムによって経時的にシグナリングされた障害コードを含む障害コードデータを獲得することであって、障害コードの各障害コードは、複数の航空機下位システムの各航空機下位システムと関連しており、エラーを検出すると、各航空機下位システムは障害コードを出力させられる、障害コードデータを獲得することと、
電圧の閾値を計算することであって、電圧測定値が電圧の閾値を超えたときには、センサデータにおいて異常な電圧測定値が示される、電圧の閾値を計算することと、
センサデータ及び障害コードデータからイベントの集合を生成することであって、イベントの集合の各イベントは、(i)センサデータが異常な電圧測定値を示す期間内又は(ii)複数の航空機下位システムの特定の航空機下位システムと関連している障害コードがシグナリングされた期間内に発生する、イベントの集合を生成することと、
イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算することであって、イベントの集合の間での統計的依存度の値は、イベントの集合が、時間的順序で発生するイベントの因果連鎖である尤度を示す、統計的依存度の値を計算することと、
イベントの集合の間での統計的依存度の値が所定の閾値を超えたことに基づいて、一連の関係するイベントとしてイベントの集合を表し一連の関係するイベントが発生した時間的順序をさらに表す一時的な前駆ネットワークを構築することと、
センサデータ及び障害コードデータから離してメモリに格納された集計テーブルにおいて、一連の関係するイベントと、イベントの集合の間での統計的依存度の値と、にインデックス付けすることと、
集計テーブルと、一時的な前駆ネットワークの視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御すること
を含む操作を実行するために、プロセッサによって実行可能な命令が格納される、障害診断計算装置を備える。
【0009】
これまで検討してきた特徴、機能、及び利点は、様々な実施例において独立して実現可能であるか、またはさらに別の実施例において組み合わせ可能である。実施例の更なる詳細は、下記の説明及び図面を参照することによって理解することができる。
【0010】
例示的な実施例の特徴と考えられる新規の特性は、添付の特許請求の範囲に明記される。しかし、例示的な実施例、並びに好適な使用モード、それらのさらなる目的及び説明は、添付の図面と併せて、本開示の例示的な実施例についての以下の詳細な説明を読むことによって、最もよく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】例示の実施形態に係る、例示の航空機のブロック図を示す。
図2】例示的な一実行形態に係る、例示の一時的な前駆ネットワークを示す。
図3】例示的な一実行形態に係る、航空機内の関連し合うイベントを特定するための例示の方法のフロー図を示す。
図4】例示の一実行形態に係る、図3の方法の計算機能を実行するための例示の方法のフロー図を示す。
図5】例示の一実行形態に係る、図3の方法と併用するための例示の方法を示すフロー図を示す。
図6】例示の一実行形態に係る、図3の方法のインデックス付け機能を実行するための例示の方法のフロー図を示す。
図7】例示の一実行形態に係る、図3の方法の制御機能を実行するための例示の方法のフロー図を示す。
図8】例示の一実行形態に係る、図3の方法の制御機能を実行するための他の例示の方法のフロー図を示す。
図9】例示の一実行形態に係る、図3の方法の制御機能を実行するための他の例示の方法のフロー図を示す。
図10】例示の一実行形態に係る、図3の方法の制御機能を実行するための他の例示の方法のフロー図を示す。
図11】例示の一実行形態に係る、図3の方法と併用するための他の例示の方法のフロー図を示し、図3の方法の制御機能を実行するための他の例示の方法のフロー図も示す。
図12】例示の一実行形態に係る、図3の方法と併用するための他の例示の方法のフロー図を示す。
図13】例示の一実行形態に係る、図3の方法と併用するための他の例示の方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本書ではこれより、添付図面を参照しつつ開示されている例についてより網羅的に説明するが、添付図面に示しているのは開示されている例の一部であって、全てではない。実際には、いくつかの異なる例が記載されていてよく、これらの例は、本明細書に明記されている例に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施例が記載されているのは、本開示内容が包括的で完全であるように、且つ本開示の範囲が当業者に十分に伝わるようにするためである。
【0013】
実施例の範囲において、関連し合うイベントを特定するための方法及びシステムを説明する。より具体的には、例示の方法及びシステムは、電気バス、航空機下位システムといった複数の異なる航空機の構成要素にわたって発生するイベント間での、統計的に有意義な関連性を決定することを含む。
【0014】
本開示では、センサ信号がそれについて獲得可能な航空機下位システムと、上記センサ信号を運ぶ電気バスとは、航空機の別々の構成要素と見做されうる。というのは、所与の電気バスは複数の異なる下位システムからのセンサ信号を運ぶことが可能であるため、想定によっては、電気バス上で検出された所与のセンサ信号が、どの航空機下位システムと関連しているのかが直ぐには分からないこともあるからである。
【0015】
航空機上のデータ記録装置は、航空機のフライト中に記録されるデータといった、データを経時的に記録するよう構成される。記録されるデータは、特に、センサデータ及び障害コードデータを含みうる。センサデータは、航空機上のセンサにより決定された電圧測定値又は他の測定値の形を取りうる。センサによりいったん獲得されると、センサデータは、航空機の1つ以上の電気バスで、データ記録装置といった航空機上の他のシステムへと伝送されうる。その一方、障害コードデータは、幾つかある選択肢のうち、フライト制御下位システム、表示下位システム、環境制御下位システム、推進制御下位システム、通信下位システム、統合圧縮空気下位システム、及び/又は、統合ヘルメット表示及び照準システム(IHADSS:Integrated Helmet and Display Sight System)下位システムといった、航空機上の様々な航空機下位システムにより経時的にシグナリングされている障害コードを含む。具体的には、航空機下位システムがエラーを検出したときには、航空機下位システムは、特定の障害コードを示す信号を出力する。実施例の範囲において、障害コードは、一連の数字及び/又は文字の形(例えば、「3456」)を取りうる。追加的又は代替的に、信号は、「抽気圧障害」(Bleed Air Pressure Fault)又は「フライト管理マルチプレクサ故障」(Flight Management Multiplexer Failure)といった、文字による障害コードの記述を表すデータを含みうる。
【0016】
本明細書に記載される方法及びシステムは、航空機内で発生するイベントを生成してイベント間の関連性を特定するために、複数のソースからの記録されたデータ(即ち、センサデータ及び障害コードデータ)を利用することを含みうる。「イベント」は、総称的に、センサデータからのセンサ信号が、異常を示す基準を満し(例えば、閾値より大きな正又は負の、電圧の上昇)又は(ii)障害コードがシグナリングされた期間を指す。本開示においては、異常なセンサ信号は主に異常な電圧測定値の文脈において記載されるが、他の実行形態では、イベントを特定するための土台として、他の測定値が利用されうる。例えば、センサデータが、特定の閾値を超える電流又はパワーの測定値を示したときには、この測定値は異常であると見做されうる。
【0017】
本明細書で記載される方法及びシステムは、或るイベント基準が満たされていること(例えば、異常なセンサ信号及び/又はシグナリングされた障害コード)を検出すること、及び、航空機に関して発生しているイベントの集合を生成することを含みうる。上記の検討に従って、1つ以上のイベントの発生は、航空機上の複数の構成要素にわたるイベントの因果連鎖をトリガしうる。例えば、信号処理下位システム内のマルチプレクサによるエラーは、フライト制御下位システムによるエラーを引き起こす可能性があり、このエラーが今度は、フライト管理下位システム内のマルチプレクサによるエラーを引き起こす可能性がある。データ記録は、各エラーを示す障害コードを記録することが可能であるが、どのエラーが他のエラーを引き起こしたのかを見分けること、又は、さらに、これらのエラーがそもそも関係し合っているのかを判定することは困難である可能性がある。極めて多数の(例えば、数十又は数百もの)エラーが、航空機の1回のフライト中に、航空機の複数の異なるフライトの間に、及び/又は、他の航空機のフライトの間に発生したときには、この問題は事態が悪化しうる。
【0018】
従って、本明細書で記載される方法及びシステムは、イベントの集合間の統計的依存度の値を計算することも含みうる。上記値は、イベントの集合が、時間的順序で発生するイベントの因果連鎖、又は時間的順序で発生する「一連の」イベントである尤度を示す。換言すれば、上記値は、イベントの集合が、偶然の一致のため又は根本的な依存関係に起因して発生しているのかどうかを示す。イベントの、関連し合う(例えば、統計的に依存する)対又はより大きな群が、関係して発生する一連のイベントと、イベントが発生する時間的順序と、を表す一時的な前駆ネットワークを構築するために利用される。加えて、センサデータ、障害コードデータ、及び、データ記録装置により記録される他のデータから離して、メモリに格納された集計テーブルにおいて、関連し合うイベントの対又はより大きな群と、それらの統計的依存度を表す値と、にインデックス付けされる。その後、集計テーブルと一時的な前駆ネットワークとの双方が、グラフィカルユーザインタフェースで表示される。従って、本方法及び本システムは、イベント間の関連性(又は、イベント間に関連性が無いこと)を効率良く正確に示し、このことは、航空機上での問題を見抜くアクション可能な洞察として機能する。
【0019】
先に検討したやり方で、本方法及び本システムは、記録されたセンサデータ及び障害コードデータを動的に獲得し、このデータから、航空機に関して発生した重要なイベントを特定し、このようにして、航空機の問題の診断及び解決において考慮されるデータ量を削減することを促進することが可能である。加えて、本明細書で記載される方法及びシステムは、イベント間の統計的依存度を計算し(従って、一連の関係するイベントの潜在的原因を絞り込み)、センサデータ及び障害コードデータが格納されているところから離れた集計テーブルにおいて、一連の関係するイベントと、その統計的依存度の表示と、にインデックス付けすることを促進することが可能である。さらに、本明細書で記載される方法及びシステムは、一連の関係するイベントを、一時的な前駆ネットワークの形態による、簡素化されたさらに有用なやり方で表示することを促進することが可能である。一時的な前駆ネットワーク及び集計テーブルによって、一連のイベントから結果的に生じる航空機の問題を効率良く診断して解決するために利用可能な有益な情報の迅速な検索、並びに、効率の良い格納/表示が可能となる。追加的な記録されたデータが解析され追加的な一連のイベントが特定されるため、一時的な前駆ネットワーク及び集計テーブルが動的に更新されうる。
【0020】
例示の方法及びシステムは、イベント間の関連性を特定する際の更なる精度及び効率を提供するために、他の有益な情報にインデックス付けすること及び他の有益な計算を行うことを含みうる。一実施例において、本方法及び本システムは、関係し合うイベントの発生の一貫性を示すデータ、例えば、一連の関係するイベントが、よりバラバラに孤立して発生する一連の関係するイベントとは反対に、航空機の複数の異なるフライトにわたって及び/又は他の航空機にわたって兆候を示しているかどうかを示すデータを計算してインデックス付けすることが可能である。他の実施例も同様に可能である。
【0021】
本開示の実行形態によって、コンピュータネットワーク、及び、計算システムに特有の、例えば、航空機の安全で効率の良い稼働を促進するために組み込まれた航空機上の計算システムと特有の技術的改良が提供される。
【0022】
複数のソースに由来する大量の複雑なデータの管理及び利用、並びに、それに伴う非効率性といった、計算システムに固有の技術的な問題が、完全又は部分的に本開示の実行形態によって解決されうる。例えば、本開示の実行形態によって、航空機下位システムに関する問題の原因を絞り込むためにデータを解析するのに費やされる時間が短縮され、これにより今度は、このような問題を解決するのに費やされる時間が短縮されうる。従って、本開示の実行形態によって、このような問題を診断して解決するためのより非効率な方法及びシステムを実現するコスト及び複雑性が低減されうる。他の実施例として、本開示の実行形態によって、診断情報の精度及び信頼性が向上する。
【0023】
従って、本開示の実行形態によって、航空機上の障害診断システム又は他のシステムが航空機上の関連し合うイベントを特定し、格納し、及び提示するというやり方で、新規で効率の良い改良が導入され、さらには、問題を診断して解決するために関連し合うイベントが利用されるというやり方で、新規で効率の良い改良が促進されうる。本開示の実行形態は、航空機の構成要素によるエラーを正常には示していないかもしれない大量の情報を圧縮して当該情報を用いた計算を行うことが可能であり、従って、上記情報が、航空機上の障害の因果関係及び他の異常を特定するために解釈可能なものとされる。
【0024】
ここで図面を参照すると、図1は、例示の実行形態に係る、例示の航空機100のブロック図を示している。航空機100は、システム102を含む。実施例の範囲において、システム102は、表示装置104と通信するよう構成可能であり、従って、システム102は、表示装置104と通信するものとして示されている。
【0025】
表示装置104は、タッチスクリーン、コンピュータモニタ、又は、グラフィカルユーザインタフェースといった視覚情報が提供可能な他の構成要素を有する計算装置の形態をとりうる。計算装置は、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ディスクトップコンピュータ、スマートフォン、又は、システム102がそれとの通信インタフェースを有する他の種類のコンピュータであってよい。上記インタフェース、システム102(又はその構成要素)は、表示装置104に命令を伝送することが可能であり、この命令は、表示装置104によって受信されると、当該命令が特定する情報を表示装置104に表示させる。例えば、システム102は、本開示に記載の集計テーブル及び/又は一時的な前駆ネットワークを表すデータを含む命令を、表示装置104に提供することによって、上記集計テーブル及び/又は一時的な前駆ネットワークを表示のためにグラフィカルユーザインタフェースで提供するよう、表示装置104を制御することが可能である。表示装置104は、ユーザ(例えば、航空機100のための整備員又は航空機100のパイロット)からの入力を受信するよう構成され及び/又はキーボード、マウス等といった、ユーザへの出力を提供するよう構成された他の装置も含みうる。
【0026】
図1では、表示装置104は、航空機100から離して示されている。追加的又は代替的に、幾つかの実行形態において、表示装置104は、航空機100のコックピットに位置する計算装置といった、航空機100上に位置する表示装置でありうる。
【0027】
さらに、システム102は、障害診断計算装置106を含むものとして示されている。障害診断計算装置106は、プログラムロジック部により構成されており、このプログラムロジック部によって、障害診断計算装置106は、航空機100内で発生するイベントを特定すること及びイベント間の関連性を特定することといった本開示に記載の機能を実行するために、記録されたデータを利用することが可能となる。他の種類の計算装置が、同様に構成可能であり、障害診断計算装置106に加えて又は障害診断計算装置106の代わりに、1つ以上の機能を実行するために利用されうるであろう。このような計算装置は、航空機100に搭載されうるであろうし、又は、航空機100から遠く離れて位置するが、航空機100と通信できる状態にあるであろう。
【0028】
システム102は、複数の航空機下位システム108、及びデータ記録装置110を含むものとしても示されており、これらのそれぞれが、通信バス112によって障害診断計算装置106と通信可能に接続されているものとして示されている。従って、障害診断計算装置106は、通信バス112を介してデータ記録装置110及び/又は航空機下位システム108から通報を受信し、通信バス112を介してデータ記録装置110及び/又は航空機下位システム108へと通報を送信することが可能である。
【0029】
先に検討したように、航空機下位システム108は、様々な下位システムを含むことが可能であり、下位システムのそれぞれは、或る特定の機能、例えば、幾つかある可能性のうち、高度、速度、(例えば、航空機100の内部及び外部の)温度、気圧、燃料レベル、及び方位の監視、様々な計算装置、センサ、又はそれらの構成要素が所望のように動作しているかについての監視、及び/又は、方向舵、エルロン等の航空機100の物理的構成要素の制御を実行するよう構成されうる。例示の航空機下位システムは、幾つかある可能性のうち、フライト制御下位システム、ディスプレイ下位システム、及び、環境制御下位システムを含む。例示の航空機下位システムはそれ自体がそれぞれ、下位システムの機能を実行するために必要なセンサ、計算装置、及び/又は他のハードウェアを含みうる。
【0030】
データ記録装置110は、1つ以上のプロセッサ、メモリ、航空機100の他の構成要素への通報を送信/航空機100の他の構成要素からの通報を受信するための通信インタフェースを有する計算装置の形態を取りうる。データ記録装置110のメモリは、データ記録装置110が記録されたデータをそこに格納する1つ以上のデータベースを含みうる。データ記録装置110は、複数の種類のデータを同じデータベースに格納することが可能であり、又は、複数の異なる種類のデータをそれぞれ、その種類のデータのための専用の各データベースに格納することが可能である。
【0031】
先に検討したように、データ記録装置110は、航空機100の至る所に位置する様々なセンサ又は航空機100上の1つ以上の他の計算装置といった、多様なソースからデータを獲得して格納するよう構成される。データ記録装置110が記録するデータは、幾つかある可能性のうち、センサデータ及び障害コードデータを含みうる。本開示では、「センサデータ」は、航空機100の至る所にあるセンサによって獲得される電圧、電流、パワーといった様々な種類の測定値を含みうる。実施例の範囲において、このような測定値は、特定のセンサ又は航空機下位システムと直接的に関連している可能性があり、測定値がそれと関連している特定のセンサ又は航空機下位システムを特定する情報を含みうる。他の実施例の範囲において、航空機100上の電気バスに沿って位置するセンサから測定値が獲得されたときなど、測定値の原因を推定することがより困難であることもある。例えば、電気バスは、航空機100のコンデンシングユニット、航空機100の空気圧システム、及び航空機100のジェットエンジンの圧縮機に関係した信号を運びうる。電気バスに沿った或る位置に位置するセンサが、その位置で電圧の急上昇を測定したときには、その急上昇は、コンデンシングユニット、空気圧システム、又は圧縮機の1つ以上に起因する可能性があるが、電圧測定値である測定値自体は、そのようなものとして示さないであろう。航空機100内の複数の電気バスと、このような各電気バス上で測定値を獲得するよう構成された少なくとも1つのセンサと、が存在しうる。航空機100の電気バスからのセンサ信号が、予期される信号とは違っている可能性があるという想定が存在するが、この違いの発信元は未知であり、センサデータによっては示されない可能性がある。
【0032】
先に言及した障害コードデータは、航空機下位システム108により経時的にシグナリングされている障害コードを含む。各障害コードは、航空機下位システム108の各航空機下位システムと関連している。各航空機下位システム(又はより具体的には、各航空機下位システムと関連しているセンサ)がエラーを検出したときには、各航空機下位システムは、障害コード信号を出力する。実施例の範囲において、エラーは、所定の範囲から外れるセンサ信号であるが、エラーは他の形態を取りうる。特定のエラーは、特定の障害コードに対応している。航空機下位システムによっては、故障しうる複数の構成要素、又はエラーが発生する複数の経路を有しうる。従って、複数の障害コードが、1つの航空機下位システムと関連している可能性があるであろう。
【0033】
データ記録装置110は、様々な航空機下位システム108から直接的に、シグナリングされた障害コードを受信することが可能であり、又は、中間装置から、シグナリングされた障害コードを受信することが可能である。例えば、航空機100は、中間装置を含むことが可能であり、所定の範囲から外れたセンサ信号を検出すると、航空機100は、通信バス112を介してデータ記録装置110へと対応する障害コードをシグナリングするよう中間装置をトリガし、センサ信号が所定の範囲から外れる限りは、障害コードがシグナリングされる。データ記録装置110が障害コードを受信すると、データ記録装置110はその後、この障害コードに対応する障害コードデータを格納することが可能であり、例えば、障害コードが初めてシグナリングされた開始時間、障害コードのシグナリングが停止された終了時間を格納することが可能である。
【0034】
上記障害コードの各障害コードは、複数の航空機下位システムの各航空機下位システムと関連しており、エラーを検出すると、各航空機下位システムは障害コードを出力させられる。
【0035】
データ記録装置110は、他のデータも同様に記録しうる。例えば、障害コードがシグナリングされたときには、データ記録装置110は、「テール番号」(tail number)、即ち、障害コードが関連している航空機100の識別子を示すデータを格納することが可能である。航空機100の識別子は、他の航空機に対して航空機100を一意に特定することが可能である。
【0036】
データ記録装置110は、航空機100のフライト中に、及び/又は、航空機100が飛行中でない(例えば、格納庫にある)ときにデータを記録するよう構成されうる。例えば、航空機100への予備電源が入っているときには、これにより、データ記録装置110は、データの記録を開始するようトリガされ、航空機100への予備電源が切られたときには、これにより、データ記録装置110は、データの記録を止めるようトリガされる。簡潔に言うと、予備電源が入っている期間と、予備電源が切られている期間と、の間に経過する期間が、本開示においては、航空機100がその期間に空中に存在していなくても、航空機100の「フライト」と称される。しかしながら、他の例による、フライトを記述する開始時間及び終了時間も同様に可能であると理解されたい。幾つかの実行形態において、データ記録装置110は、1のフライトからの記録されたデータを、1つのファイル(例えば、区切られたテキストファイル)として格納し、かつ、他のフライトからの記録されたデータを、他の別のファイルで格納するよう構成されうる。
【0037】
幾つかの実行形態において、障害診断計算装置106は、データ記録装置110により実行される機能の幾つか又は全てを実行するよう構成されうる。このことを促進するために、例えば、データ記録装置110は、図1に示される別体の構成要素とは対照的に、障害診断計算装置106の構成要素でありうるであろう。
【0038】
図1に戻って参照すると、障害診断計算装置106は、それぞれが通信バス122に接続された、1つ以上のプロセッサ114、通信インタフェース116、出力インタフェース118、及びデータ記憶装置120を含むものとして示されている。障害診断計算装置106は、障害診断計算装置106内の通信、及び障害診断計算装置106と他の装置(図示せず)との間の通信を可能にするハードウェアも更に含みうる。ハードウェアは、例えば、送信機、受信機、及びアンテナを含みうる。
【0039】
通信インタフェース116は、無線インタフェース及び/又は1つ以上の有線インタフェースであってよく、1つ以上のネットワーク又は1つ以上の遠隔装置への短距離通信と長距離通信との双方を可能とする。かかる無線インタフェースは、Bluetooth、Wi-Fi(例えば、IEEE(institute of electrical and electronic engineers:米国電気電子学会)802.11プロトコル)、ロングタームエボリューション(LTE:Long-Term Evolution)、移動体通信、近距離無線通信(NFC:near-field communication)、及び/又は他の無線通信プロトコルといった、1つ以上の無線通信プロトコルのもとで、通信を提供しうる。上記有線インタフェースには、イーサネットインタフェース、ユニバーサルシリアルバス(USB:Universal Serial Bus)インタフェース、又は例えばケーブル、ツイストペア線、同軸ケーブル、光リンク、光ファイバーリンク、又は有線ネットワークへの他の物理的接続を介して通信する同様のインタフェースが含まれうる。ゆえに、通信インタフェース116は、1つ以上の装置から入力データを受信するよう構成されてよく、他の装置に出力データを送信するよう更に構成されうる。
【0040】
出力インタフェース118は、障害診断計算装置106からデータ記録装置110への出力情報といった情報を出力する。例えば、出力インタフェース118は、障害診断計算装置106にセンサデータ又は障害コードデータを提供せよとのデータ記録装置110のための要求を出力することが可能である。従って、出力インタフェース118は、通信インタフェース116と類似していることがあり、無線インタフェース(送信機など)、又は有線インタフェースでもありうる。
【0041】
データ記憶装置120は、1つ以上のプロセッサ114により読取可能又はアクセス可能な1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体といったメモリを含んでよく、又は当該メモリの形を取っていてよい。コンピュータ可読記憶媒体は、光メモリ、磁気メモリ、有機メモリ、若しくは他のメモリ、又はディスク記憶装置といった、全体的に又は部分的に1つ以上のプロセッサ114に組み込み可能な揮発性及び/又は非揮発性の記憶構成要素を含みうる。データ記憶装置120は、非一時的のコンピュータ可読媒体と見なされる。幾つかの実施例では、データ記憶装置120は、単一の物理的装置(例:1つの光学メモリ、磁気メモリ、有機メモリ、若しくは他のメモリ、又はディスク記憶ユニット)を用いて実現可能であるが、他の実施例では、データ記憶装置120は、2つ以上の物理的装置を用いて実現されうる。
【0042】
したがって、データ記憶装置120は、非一時的のコンピュータ可読記憶媒体であり、実行可能な命令124がそこに格納されている。実行可能な命令124は、コンピュータが実行可能なコードを含む。加えて、データ記憶装置120は、一連の関係するイベント及び統計的依存度の値をそこに配置することが可能な集計テーブル126も格納する。データ記憶装置120は、一時的な前駆ネットワークも格納する。データ記憶装置120は、イベントの集合といったイベントも(そのイベントの集合が、一連の関係するイベントであると判定されるか否かに関係なく)格納することが可能であり、さらに、データ記録装置110により記録されたセンサデータ及び/又は障害コードデータのコピーを格納することが可能である。他データも同様に、データ記憶装置120に格納することが可能であり、その例を以下でさらに詳細に記載する。
【0043】
プロセッサ114は、汎用プロセッサ又は特殊用途プロセッサ(例えば、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路等)であってよい。プロセッサ114は、実行可能な命令124(例えば、コンピュータ可読プログラム命令)を実行するよう構成可能であり、この実行可能な命令124は、データ記憶装置120に格納されており、本明細書に記載の障害診断計算装置106の機能を提供するために実行可能である。例えば、実行可能な命令124は、実行されると障害診断計算装置106に本明細書に記載の1つ以上の機能を実行させるソフトウェアアプリケーションを定義しうる。
【0044】
一実施例の範囲において、稼働中に、実行可能な命令124が障害診断計算装置106のプロセッサ114により実行されたときには、プロセッサ114は、航空機上の少なくとも1つの電気バスの電圧測定値を含むセンサデータを経時的に獲得することと、航空機上の複数の航空機下位システムによって経時的にシグナリングされた障害コードを含む障害コードデータを獲得することであって、障害コードの各障害コードは、複数の航空機下位システムの各航空機下位システムと関連しており、エラーを検出すると、各航空機下位システムは障害コードを出力させられる、障害コードデータを獲得することと、電圧の閾値を計算することであって、電圧測定値が電圧の閾値を超えたときには、センサデータにおいて異常な電圧測定値が示される、電圧の閾値を計算することと、センサデータ及び障害コードデータからイベントの集合を生成することであって、イベントの集合の各イベントは、(i)センサデータが異常な電圧測定値を示す期間内又は(ii)複数の航空機下位システムの特定の航空機下位システムと関連している障害コードがシグナリングされた期間内に発生する、イベントの集合を生成することと、イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算することであって、イベントの集合の間での統計的依存度の値は、イベントの集合が、時間的順序で発生するイベントの因果連鎖である尤度を示す、統計的依存度の値を計算することと、イベントの集合の間での統計的依存度の値が所定の閾値を超えたことに基づいて、一連の関係するイベントとしてイベントの集合を表し、一連の関係するイベントが発生した時間的順序をさらに表す一時的な前駆ネットワークを構築することと、センサデータ及び障害コードデータから離してメモリに格納された集計テーブルにおいて、一連の関係するイベントと、イベントの集合の間での統計的依存度の値と、にインデックス付けすることと、集計テーブルと、一時的な前駆ネットワークの視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御することを含む機能を実行させられる。
【0045】
ここで、より詳細な例示の操作を説明する。幾つかの操作が特定の順序で実行されると説明してきたが、このような操作は、別の順序でも実行されうると理解されたい。
【0046】
本明細書で記載される実施例の範囲において、障害診断計算装置106は、経時的に獲得されたセンサデータ及び障害コードデータを獲得することが可能である。この段階で、又は、センサデータ及び障害コードデータを獲得する前の或るときに、ユーザは、一時的な前駆ネットワークを構築するため、及びイベントの集合の間での統計的依存度の値を計算するために利用可能な時間の閾値を選択して、障害診断計算装置106に入力することが可能である。時間の閾値は、2つの特定されたイベントの間に経過する最大時間を表し、ここで、この2つのイベントは、やはり関連しているものとして合理的に考えられうる。大きな時間の閾値(例えば、1時間以上)は、より多くの一連のイベントを生むことで、一時的な前駆ネットワークの複雑性を増しうるが、上記イベントの幾つかは、因果的に関係したイベントを正確には表していないこともある。従って、例えば1時間未満、又は1秒若しくは10分といった短さのあまり大き過ぎない時間の閾値が望ましい。幾つかの実行形態において、時間の閾値は、障害コード及び/又は電圧測定値が記録/サンプリングされる速度に基づいて、又は他の要因に基づいて決定されうる。
【0047】
データ記録装置110により記録される大量のセンサデータ及び/又は障害コードデータが存在しうるが、このデータの全てが、航空機100内の関連し合うイベントを特定するという目的のために有用であるわけではない可能性がある。追加的又は代替的に、余剰の量又はそうでなければ望まれぬ量のデータを用いて、関連し合うイベントを特定することは、計算的にはあまり効率的ではない可能性がある。少なくともこれらの理由により、幾つかの実行形態において、障害診断計算装置106がセンサデータ及び障害コードデータからイベントの集合を生成する前の或る時点に、例えば、障害診断計算装置106がセンサデータ及び障害コードデータを獲得した後で、障害診断計算装置106は、獲得されたセンサデータ及び障害コードデータをフィルタに掛けることが可能である。
【0048】
実施例の範囲において、障害診断計算装置106は、所定の期間中に獲得され又はフライトの手続きの一部の間(例えば、飛行前、飛行中、離陸中、着陸中)に獲得された、センサデータ及び/又は障害コードデータの部分を削除することが可能である。例えば、航空機が飛行前の始動手続きに従事しているときには、このような手続きは、誤った障害コード及び/又は電圧の急上昇が発生するようトリガする可能性があり、従って、所定の期間は、航空機が飛行前の始動手続きに従事することが予期される期間でありうる。他の実施例の範囲において、障害診断計算装置106は、所定の大きさのセンサデータ及び/又は障害コードデータの部分を削除することが可能である。例えば、障害コードデータは表の形態を取ることが可能であり、表では、各列は、同じ期間(例えば、0.16秒)に対応しており、障害コードがその期間の間有効であったか(例えば、値1)又は無効であったか(例えば、値0)を示す値を含みうる。このような中で、障害診断計算装置106は、航空機が飛行前の始動手続きに従事している期間又は他の期間と対応することが予期される所定量の列(例えば、百列)といった、所定量の列を表から削除することが可能である。センサデータも、同様に構成された表でも表わすことが可能であり、例えば、この表では、所与の列の値は、当該列により定義される期間に存在する平均電圧測定値である。
【0049】
以下の表1は、例示の障害コードデータの表を示しており(ここでは、ステータスについて1=有効、0=無効)、以下の表2は、例示のセンサデータの表を示している(ここでは、右の列の値は単位がボルト(V)である)。
【0050】
さらに、他の実施例の範囲において、航空機のフライトの幾つかの部分の間に記録されたデータは、幾つかの想定において、他のデータより有用であり、又はそうでなければより望まれている。このような中で、幾つかの実行形態において、障害診断計算装置106は、航空機の回転翼の回転速度が毎分あたりの閾値の回転数を超えた期間中に獲得された電圧測定値を、センサデータから削除することが可能である。追加的又は代替的には、障害診断計算装置106は、航空機の回転翼の回転速度が毎分あたりの回転数の閾値を超えた期間中にシグナリングされた障害コードを、障害コードデータから削除することが可能である。例えば、毎分あたりの回転数の閾値は、毎分あたり50~110の範囲からから選択された値でありうる。航空機100の回転翼の回転速度に付加的と見做され、又は当該回転速度と代替的と見做される基準及び関連する閾値をフィルタに掛ける他の例も同様に可能である。例えば、1つのこのような基準は、航空機100の着陸装置に関係しうる。例えば、着陸装置の位置に関連する値が存在しうる。ここでは、着陸装置が下りてこない場合は、上記値は0である。このような中で、障害診断計算装置106は、着陸装置の値が0だったときに獲得/シグナリングされたデータの部分を削除することが可能である。他の実施例も同様に可能である。幾つかの想定において、航空機100のフライトに関係する閾値を選択することが有用でありうる。というのは、航空機100が飛行中でないときについての任意データを削除することが望ましい可能性があるからであるが、他の想定では、飛行中に獲得されなかったデータも同様に考慮されうるであろう。
【0051】
センサデータを獲得した後で、障害診断計算装置106は、電圧の閾値を計算することが可能であり、電圧測定値が電圧の閾値を超えたときには、センサデータにおいて異常な電圧測定値が示される。実施例の範囲において、電圧の閾値を計算するために、障害診断計算装置106は、航空機100に関して経時的に獲得された電圧測定値について平均値及び標準偏差を計算することが可能である。具体的には、平均値及び標準偏差は、過去の数日、数週間にわたって、又は航空機の最初のフライト以降といった、選択された期間からの電圧測定値を用いて計算されうる。電圧の閾値は、平均値から離れた複数の標準偏差でありうる。ここで、複数の標準偏差から外れる電圧測定値は異常であると見做されうる。例えば、電圧測定値が、平均値から外れた1つ以上の標準偏差である場合には、異常と見做される。他の実施例も同様に可能である。他の実施例において、電圧の閾値は、複数の標準偏差というよりは、実際の電圧の値(例えば、5ボルト)でありうる。
【0052】
これらの考え方に沿って、障害診断計算装置106は、障害診断計算装置106がセンサデータからより容易にイベントを特定しうるようにデータを符号化するための1つのやり方として、平均値及び標準偏差を利用することが可能である。例えば、(例えば、表の各列の各値について)所定の間隔で電圧測定値が取る各値P(i)について、障害診断計算装置106は、符号化されたセンサ値φ(P(i))を、以下の式1に従って計算することが可能であり、但し、μは、航空機100(即ち、航空機100のテール番号)についての平均値であり、σは、航空機100についての標準偏差である。
【0053】
【0054】
式1を用いて、平均値が、上記所定の間隔での値から減算され、その結果が標準偏差により除算されて、上記の値が、平均値から外れた幾つの正又は負の偏差であるかが分かる。所与の得られた少数が切り捨てられて、偏差の数字が整数値に変えられる。表2で式1を用いると、例えば表3が得られるであろう。表3の符号化されたセンサ値は、ボルトでは表されていない。
【0055】
その後、符号化されたセンサ値が電圧の閾値と比較されうる。例えば、電圧の閾値が零であるときには、符号化されたセンサ値が1つ以上存在するはずであり、異常と見做される。幾つかの実行形態では、障害診断計算装置106は、電圧の閾値を計算しないかもしれず、むしろ1で設定されるであろう。
【0056】
その後、障害診断計算装置106は、センサデータ及び障害コードデータからイベントの集合を生成する。先に言及したように、イベントの集合の各イベントは、(i)センサデータが異常な電圧測定値を示す期間内又は(ii)複数の航空機下位システムの特定の航空機下位システムと関連している障害コードがシグナリングされた期間内に発生しているイベントである。例えば、表3に関して、障害診断計算装置106は、符号化されたセンサ値が1である期間についてイベントを生成することが可能である。さらに表1に関して、例えば、障害診断計算装置106は、所与の障害コードが有効であった任意の期間についてイベントを生成することが可能である。
【0057】
生成された各イベントについて、障害診断計算装置106は、飛行が開始されたときに関して又は別の時点に関して、開始時間及び終了時間など開始時間及び終了時間によってイベントにラベル付けすることが可能である。さらに、障害診断計算装置106が生成した各イベントは、値の形を取ることが可能であり、その値が発生していた期間と関連している。異常な電圧測定値を含むイベントについて、値は、先に記載したように、その期間中の符号化されたセンサ値の形をとりうる。障害コードを含むイベントについて、値は、上記期間中にシグナリングされた障害コードの形を取りうる。
【0058】
さらに、障害診断計算装置106は、航空機100上の各航空機下位システムに対して障害コードを関連付ける参照データを、データ記憶装置120に格納し、又は遠隔のデータ記憶装置から上記参照データにアクセスすることが可能であり、さらに、参照データを参照して、障害コードを含む各イベントについて、障害コードが関連している航空機下位システムを決定して、適切な航空機下位システムによりイベントにラベル付けすることが可能である。このことは、一時的な前駆ネットワーク及び集計テーブル126の構築及び表示の助けとなりうる。というのは一方又は双方が、イベントごとのラベルを含んでいる可能性があるからであり、従ってユーザには、イベントが関連している航空機下位システムが分かる。
【0059】
その後、障害診断計算装置106は、イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算する。(情報理論において称されるように、「相互情報量」(mutual information)の形態による)統計的依存度の値は、イベントの集合が、時間的順序で発生するイベントの因果連鎖である尤度を示している。換言すれば、統計的依存度の値は、イベント間の関連性の強度を示している。統計的依存度の値を、一時的な前駆ネットワークを構築して、イベント間の因果関係を示すため、例えば、どの障害コードが先行していて他の障害コードを潜在的に引き起こしたか、及び/又は、どの障害コードが先行していて異常な電圧測定値を潜在的に引き起こしたかを示すために利用することが可能である。従って、このことによって、どの航空機下位システム同士が相互に作用し又はそうでなければ、影響し合っているのかを示すことが可能である。
【0060】
実施例の範囲において、k個のイベント間の統計的依存度の値M(A1,A2,…,Ak)を、式2によって表すことが可能であり、但し、A1、A2、…、Akは、それぞれ別個のイベントであり、mは、航空機100の全フライトにわたって航空機100に関して発生したイベントの総数であり、N(A1,A2,…,Ak)は、イベントA1が所定の閾値期間(例えば、先に検討した時間の閾値)より長くあけてイベントA2の開始時間より先行する開始時間を有し、かつイベントA2が後続のイベント(、…イベントAk)の開始時間より先行する開始時間を有する全回数であり、N(A1)は、イベントA1が発生した全回数であり、N(A2)は、イベントA2が発生した全回数、等である。
【0061】
【0062】
例えば、統計的依存度の値が、イベントの対の間、即ち第1のイベントと第2のイベント(kは2に等しい)との間で計算された場合には、式3を利用することが可能であり、但し、第1のイベントはAとして表され、Bは、(A2の代わりに)第2のイベントを表すために利用される。
【0063】
【0064】
その後、障害診断計算装置106は、イベントの集合についての統計的依存度の値を所定の閾値と比較し、その比較によって、イベントの集合が、時間的順序で発生するイベントの因果連鎖である尤度が示される。例えば、閾値1より小さいM(A,B)は、イベントAがイベントBより先に起きる可能性は非常に低いこと、かつ、2つのイベントが関連し合っていない可能性が非常に高いことを示しうる。従って、このことは、互いに所定の期間内に発生した2つのイベントが、統計的に有意であるというよりは偶然であることを示しうる。その一方で、1より大きなM(A,B)は、2つのイベントが関連し合っている尤度がより高いことを示しうるが、値によっては、尤度が強くないこともある。例えば、1~10の間の値は関連性がより弱いこともあるが、10よりも大きい(又は、10,000といった遥かに大きい)値は、より強い関連性を示していることもある。
【0065】
その後、障害診断計算装置106は、所定の閾値(例えば、1)に対する統計的依存度の値の比較を、一時的な前駆ネットワークを構築するための土台として利用する。障害診断計算装置106が、イベントの集合の間での統計的依存度の値が所定の閾値より低いと判定したときには、イベントの集合は、一時的な前駆ネットワークに追加されない可能性がある。その一方で、障害診断計算装置106が、イベントの集合の間での統計的依存度の値が所定の閾値を超えると判定したときには、イベントの集合は、一時的な前駆ネットワークに追加され、時間的順序で発生した一連の関係するイベントとして表される。統計的依存度の値は、イベントが関係し合っている尤度に関しているため、一時的な前駆ネットワークが表す時間的順序は、確認された時間的順序ではなく、むしろ、そのように起きた可能性がある時間的順序、従って、関連し合うイベントの原因を診断するために使用されるほど重要な時間的順序でありうる。整備員、航空機100の操縦士といったユーザは、一時的な前駆ネットワークの情報が、偶然の非因果的な連鎖というよりは、イベントの因果連鎖を示していると更に強い確信を持つことが出来る。
【0066】
実施例の範囲において、イベントの集合が、一連の関係するイベントとして、接続されたノードの形態により一時的な前駆ネットワークに追加されうる。例えば、一連の関係するイベントの各イベントは別個のノードとして表すことが可能であり、一連の関係するイベントが発生した時間的順序を示すリンクによって接続することが可能である。一時的な前駆ネットワークは、どの航空機下位システムが互いに相互作用しているかを示すための可視化ツールとして利用することが可能である。加えて、幾つかの想定において、一時的な前駆ネットワークは、障害診断を支援するために利用することが可能であろう。
【0067】
図2は、例示的な一実行形態に係る、例示の一時的な前駆ネットワーク128を示している。図2に示す一時的な前駆ネットワーク128は、関係するイベントの対のみ含んでいるが、他の実行形態では、一時的な前駆ネットワークは、2つ以上の関係するイベントの連鎖を示しうる。一連の関係するイベントとして表される例示のイベントの集合は、ノード130及びノード132を含み、このノード130及びノード132は、矢印134によって接続されており、矢印134は、ノード130により示されるイベントが、ノード132により表されるイベントを引き起こした可能性が統計的に高いことを示している。実施例の範囲において、表示される矢印の太さ、色、又は特徴を、所与のイベントの集合についての統計的依存度の値に従って変えることが可能である。例えば、矢印は、統計的依存度の値がより大きいときにはより太くなり、又は、統計的依存度の値がより小さいときにはより細くなりうる。
【0068】
幾つかの実行形態において、2つ以上のイベントの間での統計的依存度の値が、一時的な前駆ネットワーク128に含まれうる。さらに、一時的な前駆ネットワーク128には下位システムの表136も示されており、幾つかの実行形態において、この表136は、一時的な前駆ネットワークの一部として含まれうる。下位システムの表136は、航空機下位システム及び/又は電気バスのリストを含むことが可能であり、航空機下位システム又は電気バスごとに、航空機100での幾つのイベントが、その航空機下位システム又はその電気バスと関連しているかについての表示(例えば、図示するように百分率)を含むことが可能である。一時的な前駆ネットワーク128は、他の情報も同様に含みうる。
【0069】
一時的な前駆ネットワークの構築前、構築中又は構築後の或る時点において、障害診断計算装置106は、集計テーブル126において、センサデータ及び障害コードデータが格納されたデータベース及び/又は表から離して、一連の関係するイベントと、イベントの集合の間の統計的依存度の値と、の双方にインデックス付けする。その後、障害診断計算装置106は、集計テーブル126と、図2に示す視覚的表現といった一時的な前駆ネットワーク128の視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう、表示装置104を制御する。
【0070】
一時的な前駆ネットワーク128と集計テーブル126との双方によって、整備員、航空機100の操縦士、又は他のユーザに、イベントの潜在的な因果連鎖を調査して自信を持って推定するための異なるやり方が提供される。一時的な前駆ネットワーク128は、例えば、他のイベントに至らしめた可能性が統計的に高いイベントを視覚的に示すとともに、どの航空機下位システムが、他の航空機下位システムより多くのイベントを経験しているのかを視覚的に示す。一時的な前駆ネットワーク128を用いて、ユーザは、複数の異なる航空機下位システム間及び/又は複数の異なる電気バス間でのイベントを追跡することが可能である。一例として、フライト制御下位システムの障害コードがシグナリングされた数秒後に、2つの他の下位システムにおける障害コードがシグナリングされることがある。しかしながら、これらの2つの連続する障害コードの一方のみが、フライト制御下位システムの障害コードに統計的に依存していることもあり、一時的な前駆ネットワーク128は、その因果連鎖を示すことが可能であり、これにより、ユーザは、2つの連続する障害コードの他方がフライト制御下位システムの障害コードにより引き起されている可能性を、自信をもって消去することが可能である。他の実施例も同様に可能である。
【0071】
さらに、集計テーブル126によって、閾値ー高い統計的依存度を有するイベントの簡潔な要約が提供される。集計テーブル126を用いて、ユーザは、関心があるイベントの連鎖を迅速に検索して特定するために、及び統計的に依存しているとして示されているが実際には因果関係にない可能性があるイベントの連鎖を自信を持って消去するために、集計テーブル126を通じて調査して運航することが可能である。どのイベントの連鎖が実際に根本的原因がある因果連鎖なのかをユーザが見分ける能力は、障害診断計算装置106が集計テーブル126において追加的な測定値にインデックス付けすることでさらに支援することが可能であり、その例が、以下でより詳細に検討される。
【0072】
インデックス付けするというアクションは、一連の関係するイベント及び統計的依存度の値を、集計テーブル126の行及び列に整理することを含みうる。さらに、集計テーブル126がいったん作成されると、障害診断計算装置106は、データ記憶装置120内に集計テーブル126を保持することが可能であり、インデックス付けするというアクションは、新たに識別された一連のイベント及び対応する統計的依存度の値を各列に追加するために、集計テーブル126を更新することを含みうる。幾つかの想定において、一連のイベントは複数回発生しうるが、様々な形に変わりうる。例えば、1つの想定では、イベントAが発生し、続いてイベントBが5秒後に発生する可能性があるが、後の或る時間では(例えば、航空機100の次のフライトの間)、イベントBが、イベントAが発生してから30秒後に発生する可能性があり、このことは、この2つのイベント間の統計的依存度の値に影響を与えうる。この状況において、インデックス付けするというアクションは、集計テーブル126に既存の一連のイベントの統計的依存度の値を更新することを含みうる。他の実施例も同様に可能である。
【0073】
一連の関係するイベントを、識別子を用いて集計テーブル126に表すことが可能である。例えば、イベントがセンサの異常な測定値である場合には、障害診断計算装置106は、その異常な測定値を獲得した電気バス及び/又はセンサの識別子を集計テーブル126に含めることが可能である。障害診断計算装置106が、問題の電気バスに繋がる1つ以上の航空機下位システムをデータ記憶装置120に格納している場合には、障害診断計算装置106は、この1つ以上の航空機下位システムの識別子も同様に含めることが可能である。さらに、幾つかの実行形態において、障害診断計算装置106は、電圧の測定値が、平均値を下回り又は上回る幾つの標準偏差であったのかを集計テーブル126に含めることが可能である。
【0074】
他の実施例として、イベントが、シグナリングされた障害コードである場合には、障害診断計算装置106は、障害コードの識別子、及び/又は、その障害コードが関連している航空機下位システムの識別子を、集計テーブル126に含めることが可能である。先に言及したように、障害診断計算装置106は、どの航空機下位システムに障害コードが対応しているのかを判定するために、参照データを参照することが可能である。
【0075】
幾つかの実行形態において、障害診断計算装置106は、統計的依存度の値といった1つ以上の要因に基づいて、一連の関係するイベントに順位を付けることが可能である。例えば、第1の一連の関係するイベントが、第2の一連の関係するイベントよりも高い統計的依存度の値を有する場合には、第1の一連の関係するイベントには、第2の一連の関係するイベントより高い順位が付けられうる。集計テーブル126は、数字(例えば1,2,3等)又は他のテキストなどの、上記順位付けの表示を含むことが可能であり、又は、最高順位の一連の関係するイベントを集計テーブル126の最初の列に含め、より順位が低い一連の関係するイベントを、より低い列に含めることが可能である。他の実施例も同様に可能である。
【0076】
幾つかの実行形態において、ユーザは、集計テーブル126の或る列を選択することが可能であり、このことによって、障害診断計算装置106は、選択された列が対応する一連の関係するイベントと関連している補足的情報を表示するようトリガされる。例えば、障害診断計算装置106は、一時的な前駆ネットワーク128を表示して、一時的な前駆ネットワーク128において選択された一連の関係するイベントに対応するノードにハイライトを付け又はそうでなければ当該ノードを目立たせるようトリガされうる。追加的又は代替的には、障害診断計算装置106は、一連の関係するイベントに含まれる航空機下位システム及び/又は電気バスについての追加的な情報、例えば、航空機下位システム及び/又は電気バスが航空機100内のどこに存在するのかについての視覚的な表示(例えば、図又はマップ)、及び/又は、他の情報を取り出して表示するようトリガされうるであろう。他の実施例も同様に可能である。
【0077】
障害診断計算装置106は、一連の関係するイベントが発生した間の航空機100及び他の航空機(即ち、他のテール番号)のフライトの総数(例えば、表4及び表5に示すような「フライトの#」)、及び/又は、一連の関係するイベントが発生した航空機の総数(例えば、表4及び表5に示すような「テールの#」)といった、集計テーブル126の他の有用な情報にもインデックス付けして表示することが可能である。従って、インデックス付けするというアクションは、上記の2つの総数を示す新しい列を含めるため又は上記2種類の総数に対応する既存の行に上記の2つの総数を追加するために、集計テーブル126を更新することも含みうる。このことを促進させるために、障害診断計算装置106は、一連の関係するイベントが発生した間の航空機及び他の航空機のフライトの総数、並びに、一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を決定するために、データ記憶装置120に格納された参照データを参照し、その後で、上記の数を含めるために集計テーブル126を更新することが可能である。上記の情報及び他の情報が、表4の例により示される。
【0078】
障害診断計算装置106はさらに、集計テーブル126において、或る環境条件(例えば、強風、氷、雷雨)が存在したときの、一連の関係するイベントが発生した間の航空機100及び他の航空機のフライトの総数、及び/又は、上記の環境条件が存在したときの、一連の関係するイベントが発生した航空機の総数にインデックス付けして表示することが可能である。上記の情報が、表5の例により示される。
【0079】
先に検討したやり方及び他のやり方で、集計テーブル126を最新に保つことが可能であり、整備員又はパイロットといったユーザに対して、一連の関係するイベントの発生の一貫性を示すことが可能である。換言すれば、関連するイベントが、閾値のレベルで統計的に依存している可能性が高く、複数のテール番号と、各テール番号のフライトとにわたって出現している場合には、このことは、関連するイベントが、航空機100の下層のハードウェア/ソフトウェアに固有のものである可能性があり、テール特有又は環境特有のイベントではないことを、整備員、航空機の操縦士、又は他のユーザに対して示しうる。その一方で、上記関連するイベントは、テール特有又は環境特有のものであって、下層のハードウェア/ソフトウェアの設計に固有のものでない可能性があり、そのケースでは、関連するイベントが発生した個別テール番号の数が少ない可能性がある。ユーザがイベント間の因果関係を推定するのを支援するための他の重要な統計は、一連の関係するイベントにおいて任意の2つの連続するイベントの間に経過した期間(又は「タイムラグ」(time lag))である。この統計は、有利に、一連のイベントの発生を予測する能力を特徴付ける。
【0080】
このことを促進するために、一連のイベントのうち2つのイベントがあるとすると、障害診断計算装置106は、一連の関係するイベントの過去の発生を通した、第1のイベントと第2のイベントとの間の期間の平均(即ち、平均値)を計算し、集計テーブル126に格納し、及び集計テーブル126で表示することが可能である。障害診断計算装置106はさらに、一連の関係するイベントの過去の発生を通した、第1のイベントと第2のイベントとの間の期間の標準偏差を計算し、集計テーブル126に格納し、及び集計テーブル126で表示することが可能である。ここで、平均値と標準偏差との比較によって、上記2つのイベントの予測可能性に関して有益な洞察を得ることが可能である。
【0081】
3つのイベントA,B,及びCが存在する例を考察する。障害診断計算装置106は、(i)イベントA及びイベントBの過去の発生を通した、イベントAの開始時間とイベントBの開始時間との間のタイムラグの平均値μ及び標準偏差σ、(ii)イベントB及びイベントCの過去の発生を通した、イベントBの開始時間とイベントCの開始時間との間のタイムラグの平均値μ及び標準偏差σを計算することが可能である。所与のイベント対についての標準偏差が、例えば、平均値よりも3倍以上大きい場合には、このことは、上記イベントの間のタイムラグにおける大きな偏差量を示し、従って、上記イベントが航空機100に固有のものではないことを示している。その一方で、標準偏差が遥かに小さい(例えば、平均値の3分の1の大きさ)場合には、このことは、上記イベント間のタイムラグにおける偏差が遥かにより小さいこと、従って、2つのイベントの一方が他方のイベントを引き起こす可能性があるという予測可能性を示しうる。しかしながら、平均値と標準偏差との双方が非常に小さい(例えば、平均値が3、標準偏差が6)状況においては、平均値との偏差があまり顕著ではない可能性があり、むしろ航空機100に固有であると考えられる。表6は、3つのイベントのうちの2つの異なる連鎖についての、例示の平均値及び標準偏差を含んでいる。
【0082】
先行する実施例及び他の可能な実施例において、診断及び障害の解決のために、イベントの関連性に優先度を付けて活用することが可能である。
【0083】
幾つかの実行形態において、例えば、或るイベントの集合があるとすると、障害診断計算装置106は、イベント間の因果関係の尤度を詳述する追加的な情報を得るために、追加的な計算を行うことが可能である。例えば、3つのイベントの集合を検討する。A、B、及びCが存在し、ここで、AはBより前の時間に発生し、BはCより前の時間に発生した。このようなイベントの集合があるとすると、基本的な因果的可能性が3つ存在しうる。即ち、(i)AがBを引き起こし、BがCを引き起こした、(ii)AがBを引き起こし、AがCを引き起こした、及び、(iii)AがBを引き起こし、BがCを引き起こし、さらにAがCを引き起こした。これら3つの可能性のそれぞれについて、障害診断計算装置106は、追加的な統計的依存度の値を獲得するために、上記の対ごとに統計的依存度の値を加算して上記対の数で除算することが可能である。例えば、第1の可能性については、追加的な統計的依存度の値は、(M(A,B)+M(B,C))/2と等しい。第2の可能性については、追加的な統計的依存度の値は、(M(A,B)+M(A,C))/2と等しい。第3の可能性については、追加的な統計的依存度の値は、(M(A,B)+M(A,C)+M(B,C))/3と等しい。その後、障害診断計算装置106は、3つの追加的な統計的依存度の値のうちのどの値が最も高いのかを判定して、集計テーブル126に格納すること及び/又は上記3つの値のうちで最も高い値を表示することが可能である。3つの値のうちで最も高い値は、最も起こりうる因果的な可能性と考えられ、これにより、イベントの集合の中で根本的原因を特定する際の更なる支援が提供されうる。4つ以上のイベントといったより長いイベントの連鎖が存在する例など、他の例も同様に可能である。
【0084】
図3は、例示的な一実行形態に係る、航空機内の関連し合うイベントを特定する方法200のフロー図を示している。図3に示す方法200は、図1に示す航空機100、又は航空機100の構成要素により利用されうる例示の方法を提示している。さらに、システム102又は障害診断計算装置106といった、装置又はシステムは、図3に提示される論理的機能を実行するために利用され又は上記論理的機能を実行するよう構成されうる。場合によっては、装置及び/又はシステムの構成要素は、上記論理的機能を実行するよう構成されうる。従って、このような実行を可能とするために、構成要素は、(ハードウェア及び/又はソフトウェアにより)実際に構成及び構築されている。他の実施例では、装置及び/又はシステムの構成要素は、例えば特定のやり方で操作されるときなどに、上記論理的機能を実行するために適合されるように、上記論理的機能の実行が可能であるように、又は上記論理的機能の実行に適するように構成されてよい。方法200は、ブロック202~216のうちの1つ以上で示すように、1つ以上の工程、機能、又は動作を含んでもよい。上記のブロックは、行われる順序で示されているが、これらのブロックはまた、並行して実行されてもよく、及び/又は、本明細書に記載の順序とは異なる順序で実行されてもよい。更に、所望の実現に基づいて、様々なブロックを組み合わせてブロックの数を減らしたり、分割してブロックを追加したり、取り除いたりしてもよい。
【0085】
本明細書で開示されるこのプロセス及び方法、並びに他のプロセス及び方法について、フロー図にはこれらの実施例の可能な一実現の機能性及び工程が示されていることを理解されたい。これに関して、各ブロック又は各ブロックの一部は、プロセスにおいて特定の論理的機能又はステップを実行するためのプロセッサによって実行可能な1つ以上の命令を含む、プログラムコードのモジュール、セグメント、又は一部分を表しうる。プログラムコードは、例えば、ディスクドライブ又はハードドライブを含む記憶装置等の、任意の種類のコンピュータ可読媒体又はデータ記憶装置に格納されうる。更に、プログラムコードは、コンピュータ可読媒体で機械可読形式に符号化され、又は、他の非一時的の媒体又は製品で符号化されうる。コンピュータ可読媒体は、例えば、レジスタメモリ、プロセッサキャッシュ、及びランダムアクセスメモリ(RAM:Random Access Memory)のようなデータを短期間記憶するコンピュータ可読媒体などの、非一時的のコンピュータ可読媒体又はメモリを含みうる。コンピュータ可読媒体は、例えば、読み出し専用メモリ(ROM)、光学又は磁気ディスク、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)のような二次的又は永続的な長期的記憶装置等の非一時的の媒体も更に含んでもよい。コンピュータ可読媒体は、任意の他の揮発性又は非揮発性の記憶システムであってもよい。コンピュータ可読媒体は、例えば、有形のコンピュータ可読記憶媒体とみなされうる。
【0086】
加えて、図3の各ブロック又は各ブロックの一部、及び本明細書で開示される他のプロセス及び方法における各ブロック又は各ブロックの一部は、プロセスで特定の論理的機能を実施するために配線されている回路を表しうる。代替的な実行形態が、本開示の実施例の範囲内に含まれ、ここでは、当業者が理解しうるように、機能が、関連する機能性に応じて、図示又は説明されている順序とは違う順序で実行されうる(実質的に同時に、又は逆順で実行されることを含む)。
【0087】
ブロック202において、方法200は、航空機上の少なくとも1つの電気バスの電圧測定値を含むセンサデータを経時的に獲得することを含む。
ブロック204において、方法200は、航空機上の複数の航空機下位システムによって経時的にシグナリングされた障害コードを含む障害コードデータを獲得することであって、障害コードの各障害コードは、複数の航空機下位システムの各航空機下位システムと関連しており、エラーを検出すると、各航空機下位システムは障害コードを出力させられる、障害コードデータを獲得することを含む。
【0088】
ブロック206において、方法200は、電圧の閾値を計算することであって、電圧測定値が電圧の閾値を超えたときには、センサデータにおいて異常な電圧測定値が示される、電圧の閾値を計算することを含む。
【0089】
図4は、例示の一実行形態に係る、ブロック206に示すような計算を実行するための例示の方法のフロー図を示している。具体的には、図4の例示の方法は、ブロック206に示す計算を実行するためのものであり、ここでは、一連の関係するイベントは、第1のイベント及び第2のイベントを含む。ブロック218において、機能は、(i)イベントの集合におけるイベントの総数、(ii)一連の関係するイベントの過去の発生を通じて、第1のイベントが所定の閾値期間より長くあけて第2のイベントより先に起きた全回数、(iii)第1のイベントが発生した全回数、及び(iv)第2のイベントが発生した全回数に基づいて、イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算することを含む。
【0090】
図3を参照すると、ブロック208において、方法200は、センサデータ及び障害コードデータからイベントの集合を生成することであって、イベントの集合の各イベントは、(i)センサデータが異常な電圧測定値を示す期間内又は(ii)複数の航空機下位システムの特定の航空機下位システムと関連している障害コードがシグナリングされた期間内に発生する、イベントの集合を生成することを含む。
【0091】
幾つかの実行形態において、幾つかの機能は、センサデータ及び障害コードデータからイベントの集合が生成される前に実施されうる。図5は、例示的な実施形態に係る、方法200と併用される例示の方法のフロー図を示している。機能は、センサデータ及び障害コードデータからイベントの集合を生成する前に、ブロック220及び222で示すように、航空機の回転翼の回転速度が毎分あたりの回転数の閾値を超えた期間中に獲得された電圧測定値を、センサデータから削除することと、航空機の回転翼の回転速度が毎分あたりの回転数の閾値を超えた期間中にシグナリングされた障害コードを、障害コードデータから削除することを含む。
【0092】
図3を参照すると、ブロック210において、方法200は、イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算することであって、イベントの集合の間での統計的依存度の値は、イベントの集合が、時間的順序で発生するイベントの因果連鎖である尤度を示す、統計的依存度の値を計算することを含む。
ブロック212において、方法200は、イベントの集合の間での統計的依存度の値が所定の閾値を超えたことに基づいて、一時的な前駆ネットワークを構築することを含み、一時的な前駆ネットワークは、一連の関係するイベントとしてイベントの集合を表し、一連の関係するイベントが発生した時間的順序をさらに表す。
【0093】
ブロック214において、方法200は、センサデータ及び障害コードデータから離してメモリに格納された集計テーブルにおいて、一連の関係するイベントと、イベントの集合の間での統計的依存度の値と、にインデックス付けすることを含む。
【0094】
図6は、例示の一実行形態に係る、ブロック214に示すインデックス付けを実施するための例示の方法のフロー図を示している。ブロック224において、機能は、一連の関係するイベントが発生した間の航空機及び他の航空機のフライトの総数、並びに、一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を示すために、集計テーブルを更新することを含む。
【0095】
図3を参照すると、ブロック216において、方法200は、集計テーブルと、一時的な前駆ネットワークの視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御することを含む。
【0096】
図7は、例示の一実行形態に係る、ブロック216に示す制御を実施するための例示の方法のフロー図を示している。ブロック226において、機能は、視覚的表現において、(i)一連の関係するイベントの各イベントをノードとして示し、(ii)一連の関係するイベントが発生した時間的順序を示すリンクにより接続された2つ以上のノードとして一連の関係するイベントを示すよう、表示装置を制御することを含む。
【0097】
図8は、例示の一実行形態に係る、ブロック216に示す制御を実行するための例示の他の方法のフロー図を示している。具体的には、図8の例示の方法は、ブロック216に示す制御を実施するためのものであり、ここでは、一連の関係するイベントは、センサデータが異常な電圧測定値を示す第1のイベントと、複数の航空機下位システムの特定の航空機下位システムと関連している障害コードがシグナリングされた第2のイベントと、を含む。ブロック228において、機能は、集計テーブルにおいて、(i)第1のイベントについては、少なくとも1つの電気バスのうちの、異常な電圧測定値が存在した電気バスの第1の識別子、(ii)第2のイベントについては、障害コードの第2の識別子、及び、特定の航空機下位システムの第3の識別子、並びに、(iii)第1のイベントと第2のイベントとの間の統計的依存度の値をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう、表示装置を制御することを含む。
【0098】
図9は、例示の一実行形態に係る、ブロック216に示す制御を実行するための例示の他の方法のフロー図を示している。ブロック230において、機能は、集計テーブルにおいて、複数の航空機下位システムのうちの、異常な電圧測定値が関連している航空機下位システムの第4の識別子を、グラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御することを含む。
【0099】
図10は、例示の一実行形態に係る、ブロック216に示す制御を実行するための例示の他の方法のフロー図を示している。具体的には、図10の例示の方法は、ブロック216に示す制御を実施するためのものであり、ここでは、一連の関係するイベントが少なくとも3つのイベントを含む。ブロック232において、機能は、集計テーブルにおいて、(i)少なくとも3つのイベントの各イベントの各識別子、及び、(ii)少なくとも3つのイベントの間での統計的依存度の値をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう、表示装置を制御することを含む。
【0100】
図11は、例示の実行形態に係る、方法200と併用される他の例示の方法のフロー図を示している。具体的には、図11の例示の方法は、方法200と併用するためのものであり、ここでは、一連の関係するイベントは、第1のイベント及び第2のイベントを含む。ブロック234において、機能は、一連の関係するイベントの過去の発生を通した、第1のイベントと第2のイベントとの間の期間の平均値を計算することを含む。そして、ブロック236において、機能は、一連の関係するイベントの過去の発生を通した、第1のイベントと第2のイベントとの間の期間の標準偏差を計算することを含む。
【0101】
さらに、図11は、例示の一実行形態に係る、ブロック216に示す制御を実施するための他の例示の方法のフロー図を示している。ブロック238において、機能は、集計テーブルにおいて、(i)第1のイベントの識別子、(ii)第2のイベントの識別子、(iii)第1のイベントと第2のイベントとの間の統計的依存度の値、(iv)一連の関係するイベントの過去の発生を通した、第1のイベントと第2のイベントとの間の期間の平均値、及び、(v)一連の関係するイベントの過去の発生を通した、第1のイベントと第2のイベントとの間の期間の標準偏差を、グラフィカルユーザインタフェースで表示するよう、表示装置を制御することを含む。
【0102】
図12は、例示の実行形態に係る、方法200と併用される他の例示の方法のフロー図を示している。ブロック240において、機能は、一連の関係するイベントが発生した間の航空機及び他の航空機のフライトの総数、並びに、一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を決定するために、メモリに格納された参照データを参照することを含む。さらに、ブロック242において、機能は、一連の関係するイベントが発生した間の航空機及び他の航空機のフライトの総数、並びに、一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を表示するよう表示装置を制御することを含む。
【0103】
図13は、例示の一実行形態に係る、方法200と併用される別の例示的な方法のフロー図を示している。ブロック244において、機能は、或る環境条件が存在したときに、一連の関係するイベントが発生した間の航空機及び他の航空機のフライトの総数、並びに、或る環境条件が存在したときに、一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を決定するために、メモリに格納された参照データを参照することを含む。さらに、ブロック246において、機能は、或る環境条件が存在したときに、一連の関係するイベントが発生した間の航空機及び他の航空機のフライトの総数、並びに、或る環境条件が存在したときに、一連の関係するイベントが発生した航空機のフライトの総数を表示するよう、表示装置を制御することを含む。
【0104】
本明細書で使用されている「実質的に(substantially)」又は「約(about)」という語は、記載されている特性、パラメータ、又は値が厳密に実現される必要はないが、特性によって得られることになっている効果を無効にしない量の、許容誤差、測定エラー、測定精度限界値、及び、当業者には既知のその他の要因などを含む偏差又は変動が発生しうることを、意味している。
【0105】
本明細書で開示されているシステム、装置、及び方法の種々の実施例は、多様な構成要素、特徴及び機能を含む。本明細書で開示されるシステム、装置、及び方法の様々な実施例は、本明細書で開示されるシステム、装置、及び方法の他の実施例のうちの任意のものの、任意の構成要素、特徴及び機能を、任意の組み合わせにおいて、又は任意の部分的組み合わせにおいて含む可能性があり、かつ、かかる可能性は全て本開示の範囲に含まれると意図されていることを理解されたい。
【0106】
さらに、本開示は、以下の条項に係る実施形態を含む。
【0107】
条項1.航空機内の関連し合うイベントを特定する方法であって、
航空機上の少なくとも1つの電気バスの電圧測定値を含むセンサデータを経時的に獲得することと、
航空機上の複数の航空機下位システムによって経時的にシグナリングされた障害コードを含む障害コードデータを獲得することであって、障害コードの各障害コードは、複数の航空機下位システムの各航空機下位システムと関連しており、エラーを検出すると、各航空機下位システムは障害コードを出力させられる、障害コードデータを獲得することと、
電圧の閾値を計算することであって、電圧測定値が電圧の閾値を超えたときには、センサデータにおいて異常な電圧測定値が示される、電圧の閾値を計算することと、
センサデータ及び障害コードデータからイベントの集合を生成することであって、イベントの集合の各イベントは、(i)センサデータが異常な電圧測定値を示す期間内又は(ii)複数の航空機下位システムの特定の航空機下位システムと関連している障害コードがシグナリングされた期間内に発生する、イベントの集合を生成することと、
イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算することであって、イベントの集合の間での統計的依存度の値は、イベントの集合が、時間的順序で発生するイベントの因果連鎖である尤度を示す、統計的依存度の値を計算することと、
イベントの集合の間での統計的依存度の値が所定の閾値を超えたことに基づいて、一連の関係するイベントとしてイベントの集合を表し一連の関係するイベントが発生した時間的順序をさらに表す一時的な前駆ネットワークを構築することと、
センサデータ及び障害コードデータから離してメモリに格納された集計テーブルにおいて、一連の関係するイベントと、イベントの集合の間での統計的依存度の値と、にインデックス付けすることと、
集計テーブルと、一時的な前駆ネットワークの視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースに表示するよう表示装置を制御すること
を含む、方法。
【0108】
条項2.一連の関係するイベントは、第1のイベント及び第2のイベントを含み、
イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算することは、(i)イベントの集合におけるイベントの総数、(ii)一連の関係するイベントの過去の発生を通じて、第1のイベントが所定の閾値期間より長くあけて第2のイベントより先に起きた全回数、(iii)第1のイベントが発生した全回数、及び、(iv)第2のイベントが発生した全回数に基づいて、イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算することを含む、条項1に記載の方法。
【0109】
条項3.センサデータ及び障害コードデータからイベントの集合を生成する前に、
航空機の回転翼の回転速度が毎分あたりの回転数の閾値を超えた期間中に獲得された電圧測定値を、センサデータから削除することと、
航空機の回転翼の回転速度が、毎分あたりの回転数の閾値を超えた期間中にシグナリングされた障害コードを、障害コードデータから削除すること
をさらに含む、条項1に記載の方法。
【0110】
条項4.センサデータ及び障害コードデータから離してメモリに格納された集計テーブルにおいて、一連の関係するイベントと、イベントの集合の間での統計的依存度の値と、にインデックス付けすることは、一連の関係するイベントが発生した間の航空機及び他の航空機のフライトの総数、並びに、一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を示すために、集計テーブルを更新することを含む、条項1に記載の方法。
【0111】
条項5.集計テーブルと、一時的な前駆ネットワークの視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御することは、視覚的表現において、(i)一連の関係するイベントの各イベントをノードとして示し、(ii)一連の関係するイベントが発生した時間的順序を示すリンクにより接続された2つ以上のノードとして一連の関係するイベントを示すよう、表示装置を制御することを含む、条項1に記載の方法。
【0112】
条項6.一連の関係するイベントは、センサデータが異常な電圧測定値を示す第1のイベント、及び、複数の航空機下位システムの特定の航空機下位システムと関連している障害コードがシグナリングされた第2のイベントを含み、
集計テーブルと、一時的な前駆ネットワークの視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御することは、集計テーブルにおいて、(i)第1のイベントについては、少なくとも1つの電気バスのうちの、異常な電圧測定値が存在した電気バスの第1の識別子、(ii)第2のイベントについては、障害コードの第2の識別子、及び、特定の航空機下位システムの第3の識別子、並びに、(iii)第1のイベントと第2のイベントとの間の統計的依存度の値をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう、表示装置を制御することを含む、条項1に記載の方法。
【0113】
条項7.集計テーブルと、一時的な前駆ネットワークの視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御することは、集計テーブルにおいて、複数の航空機下位システムのうちの、異常な電圧測定値が関連している航空機下位システムの第4の識別子をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう、表示装置を制御することを含む、条項6に記載の方法。
【0114】
条項8.一連の関係するイベントは、少なくとも3つのイベントを含み、
集計テーブルと、一時的な前駆ネットワークの視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御することは、集計テーブルにおいて、(i)少なくとも3つのイベントの各イベントの各識別子、及び、(ii)少なくとも3つのイベントの間での統計的依存度の値をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう、表示装置を制御することを含む、条項1に記載の方法。
【0115】
条項9.一連の関係するイベントは、第1のイベント及び第2のイベントを含み、方法は、
一連の関係するイベントの過去の発生を通した、第1のイベントと第2のイベントとの間の期間の平均値を計算することと、
一連の関係するイベントの過去の発生を通した、第1のイベントと第2のイベントとの間の期間の標準偏差を計算すること
を更に含み、
集計テーブルと、一時的な前駆ネットワークの視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御することは、集計テーブルにおいて、(i)第1のイベントの識別子、(ii)第2のイベントの識別子、(iii)第1のイベントと第2のイベントとの間の統計的依存度の値、(iv)一連の関係するイベントの過去の発生を通じた、第1のイベントと第2のイベントとの間の期間の平均値、及び、(v)一連の関係するイベントの過去の発生を通じた、第1のイベントと第2のイベントとの間の期間の標準偏差を、グラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御することを含む、条項1に記載の方法。
【0116】
条項10.一連の関係するイベントが発生した間の航空機及び他の航空機のフライトの総数、並びに、一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を決定するために、メモリに格納された参照データを参照することと、
一連の関係するイベントが発生した間の航空機及び他の航空機のフライトの総数、並びに、一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を表示するよう表示装置を制御することを更に含む、条項1に記載の方法。
【0117】
条項11.或る環境条件が存在したときに、一連の関係するイベントが発生した間の航空機及び他の航空機のフライトの総数、並びに、或る環境条件が存在したときに、一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を決定するために、メモリに格納された参照データを参照することと、
或る環境条件が存在したときに、一連の関係するイベントが発生した間の航空機及び他の航空機のフライトの総数、並びに、或る環境条件が存在したときに、一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を表示するよう、表示装置を制御することを更に含む、条項1に記載の方法。
【0118】
条項12.非一時的のコンピュータ可読媒体であって、計算装置の1つ以上のプロセッサによって実行されたときに、計算装置に
航空機上の少なくとも1つの電気バスの電圧測定値を含むセンサデータを経時的に獲得することと、
航空機上の複数の航空機下位システムによって経時的にシグナリングされた障害コードを含む障害コードデータを獲得することであって、障害コードの各障害コードは、複数の航空機下位システムの各航空機下位システムと関連しており、エラーを検出すると、各航空機下位システムは障害コードを出力させられる、障害コードデータを獲得することと、
電圧の閾値を計算することであって、電圧測定値が電圧の閾値を超えたときには、センサデータにおいて異常な電圧測定値が示される、電圧の閾値を計算することと、
センサデータ及び障害コードデータからイベントの集合を生成することであって、イベントの集合の各イベントは、(i)センサデータが異常な電圧測定値を示す期間内又は(ii)複数の航空機下位システムの特定の航空機下位システムと関連している障害コードがシグナリングされた期間内に発生する、イベントの集合を生成することと、
イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算することであって、イベントの集合の間での統計的依存度の値は、イベントの集合が、時間的順序で発生するイベントの因果連鎖である尤度を示す、統計的依存度の値を計算することと、
イベントの集合の間での統計的依存度の値が所定の閾値を超えたことに基づいて、一連の関係するイベントとしてイベントの集合を表し一連の関係するイベントが発生した時間的順序をさらに表す一時的な前駆ネットワークを構築することと、
センサデータ及び障害コードデータから離してメモリに格納された集計テーブルにおいて、一連の関係するイベントと、イベントの集合の間での統計的依存度の値と、にインデックス付けすることと、
集計テーブルと、一時的な前駆ネットワークの視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御すること
を含む操作を実行させる命令が格納された、非一時的のコンピュータ可読媒体。
【0119】
条項13.操作は、センサデータ及び障害コードデータからイベントの集合を生成する前に、
航空機の回転翼の回転速度が毎分あたりの回転数の閾値を超えた期間中に獲得された電圧測定値を、センサデータから削除することと、
航空機の回転翼の回転速度が毎分あたりの回転数の閾値を超えた期間中にシグナリングされた障害コードを、障害コードデータから削除すること
を更に含む、条項12に記載の非一時的のコンピュータ可読媒体。
【0120】
条項14.一連の関係するイベントは、第1のイベント及び第2のイベントを含み、
イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算することは、(i)イベントの集合におけるイベントの総数、(ii)一連の関係するイベントの過去の発生を通じて、第1のイベントが所定の閾値期間より長くあけて第2のイベントより先に起きた全回数、(iii)第1のイベントが発生した全回数、及び、(iv)第2のイベントが発生した全回数に基づいて、イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算することを含む、条項12に記載の非一時的のコンピュータ可読媒体。
【0121】
条項15.センサデータ及び障害コードデータから離してメモリに格納された集計テーブルにおいて、一連の関係するイベントと、イベントの集合の間での統計的依存度の値と、にインデックス付けすることは、一連の関係するイベントが発生した間の航空機及び他の航空機のフライトの総数、並びに、一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を示すために、集計テーブルを更新することを含む、条項12に記載の非一時的のコンピュータ可読媒体。
【0122】
条項16.集計テーブルと、一時的な前駆ネットワークの視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御することは、
視覚的表現において、(i)一連の関係するイベントの各イベントをノードとして示し、(ii)一連の関係するイベントが発生した時間的順序を示すリンクにより接続された2つ以上のノードとして一連の関係するイベントを示すよう、表示装置を制御することを含む、条項12に記載の非一時的のコンピュータ可読媒体。
【0123】
条項17.システムであって、
航空機上の複数の航空機下位システムと、
プロセッサ、及び、メモリを有する障害診断計算装置であって、メモリには、
航空機上の少なくとも1つの電気バスの電圧測定値を含むセンサデータを経時的に獲得することと、
複数の航空機下位システムによって経時的にシグナリングされた障害コードを含む障害コードデータを獲得することであって、障害コードの各障害コードは、複数の航空機下位システムの各航空機下位システムと関連しており、エラーを検出すると、各航空機下位システムは障害コードを出力させられる、障害コードデータを獲得することと、
電圧の閾値を計算することであって、電圧測定値が電圧の閾値を超えたときには、センサデータにおいて異常な電圧測定値が示される、電圧の閾値を計算することと、
センサデータ及び障害コードデータからイベントの集合を生成することであって、イベントの集合の各イベントは、(i)センサデータが異常な電圧測定値を示す期間内又は(ii)複数の航空機下位システムの特定の航空機下位システムと関連している障害コードがシグナリングされた期間内に発生する、イベントの集合を生成することと、
イベントの集合の間での統計的依存度の値を計算することであって、イベントの集合の間での統計的依存度の値は、イベントの集合が、時間的順序で発生するイベントの因果連鎖である尤度を示す、統計的依存度の値を計算することと、
イベントの集合の間での統計的依存度の値が所定の閾値を超えたことに基づいて、一連の関係するイベントとしてイベントの集合を表し一連の関係するイベントが発生した時間的順序をさらに表す一時的な前駆ネットワークを構築することと、
センサデータ及び障害コードデータから離してメモリに格納された集計テーブルにおいて、一連の関係するイベントと、イベントの集合の間での統計的依存度の値と、にインデックス付けすることと、
集計テーブルと、一時的な前駆ネットワークの視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御すること
を含む操作を実行するために、プロセッサによって実行可能な命令が格納された、障害診断計算装置と、
を備えるシステム。
【0124】
条項18.一連の関係するイベントは、第1のイベント及び第2のイベントを含み、操作は、
一連の関係するイベントの過去の発生を通じた、第1のイベントと第2のイベントとの間の期間の平均値を計算することと、
一連の関係するイベントの過去の発生を通じた、第1のイベントと第2のイベントとの間の期間の標準偏差を計算すること
を更に含み、
集計テーブルと、一時的な前駆ネットワークの視覚的表現と、をグラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御することは、集計テーブルにおいて、(i)第1のイベントの識別子、(ii)第2のイベントの識別子、(iii)第1のイベントと第2のイベントとの間の統計的依存度の値、(iv)一連の関係するイベントの過去の発生を通じた、第1のイベントと第2のイベントとの間の期間の平均値、及び、(v)一連の関係するイベントの過去の発生を通じた、第1のイベントと第2のイベントとの間の期間の標準偏差を、グラフィカルユーザインタフェースで表示するよう表示装置を制御することを含む、条項17に記載のシステム。
【0125】
条項19.操作は、
一連の関係するイベントが発生した間の航空機及び他の航空機のフライトの総数、並びに、一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を決定するために、メモリに格納された参照データを参照することと、
一連の関係するイベントが発生した間の航空機及び他の航空機のフライトの総数、並びに、一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を表示するよう、表示装置を制御すること
を更に含む、条項17に記載のシステム。
【0126】
条項20.操作は、
或る環境条件が存在したときに、一連の関係するイベントが発生した間の航空機及び他の航空機のフライトの総数、並びに、或る環境条件が存在したときに、一連の関係するイベントが発生した航空機の総数を決定するために、メモリに格納された参照データを参照することと、
或る環境条件が存在したときに、一連の関係するイベントが発生した間の航空機及び他の航空機のフライトの総数、並びに、或る環境条件が存在したときに、一連の関係するイベントが発生した航空機のフライトの総数を表示するよう、表示装置を制御すること
を更に含む、条項17に記載のシステム。
【0127】
種々の有利な構成の説明は、例示及び説明を目的として提示されており、網羅的であること、または開示された形態の実施例に限定されることを意図するものではない。当業者には、多くの修正形態及び変形形態が自明であろう。更に、種々の有利な実施例は、他の有利な実施例と比べて異なる利点を説明しうる。選択された一又は複数の実施例は、実施例の原理と実際的な用途を最もよく説明するため、及び、様々な実施例の開示内容と、検討される特定の用途に適した様々な修正例とを当業者が理解できるようにするために、選択及び記述されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13