(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】コネクタ及びコネクタ組立体
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20230404BHJP
H01R 13/56 20060101ALI20230404BHJP
H01R 13/629 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H01R13/52 301E
H01R13/56
H01R13/629
(21)【出願番号】P 2019166977
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】591043064
【氏名又は名称】モレックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【氏名又は名称】青木 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】飯田 敬
(72)【発明者】
【氏名】畝本 雅之
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-123102(JP,A)
【文献】特開2018-26276(JP,A)
【文献】特開2006-344519(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0157797(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40-13/533
H01R13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)電線通過孔が形成された固定電線ガイド板と、端子収容孔とを含むコネクタ本体と、
(b)前記端子収容孔内に収容され、嵌合方向に延在する端子であって、嵌合方向後方に向けて延在するように電線が接続された端子と、
(c)電線通過孔が形成された電線用シールであって、前記端子収容孔と固定電線ガイド板との間に配設された電線用シールと、
(d)前記コネクタ本体の嵌合方向後端に取付けられるカバー部材であって、嵌合方向に直交する方向にスライドすることが可能に前記コネクタ本体に取付けられるカバー部材と、
(e)電線通過孔が形成された可動電線ガイド板であって、前記固定電線ガイド板の嵌合方向後方側において、嵌合方向に変位可能に配設された可動電線ガイド板とを備え、
(f)前記カバー部材に形成されたカムピンが前記可動電線ガイド板に形成されたカム溝と係合し、前記カバー部材がスライド方向前方に向けて変位すると、前記可動電線ガイド板が嵌合方向後方に向けて変位することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記可動電線ガイド板は、前記カム溝の少なくとも一部が形成されたカム溝形成片であって、嵌合方向前方に向けて突出するカム溝形成片を含み、前記固定電線ガイド板は、前記カム溝形成片を収容可能なカム溝形成片収容凹部を含む請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記固定電線ガイド板は、嵌合方向後前に向けて延出するガイド突起を含み、前記可動電線ガイド板は、嵌合方向に延在し、前記ガイド突起を収容するガイド溝を含む請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記固定電線ガイド板、電線用シール及び可動電線ガイド板の電線通過孔は、嵌合方向に延在し、前記電線は、前記可動電線ガイド板の電線通過孔の嵌合方向後方において、前記カバー部材のスライド方向前方に向けて屈曲し、該スライド方向前方に向けて取出される請求項1~3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記カバー部材は、前記コネクタ本体の嵌合方向後方側を覆う覆い面部と、スライド方向前端において開口する電線通過口とを含み、前記電線は前記電線通過口から導出される請求項1~4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記コネクタ本体は、嵌合方向後端に形成され、前記カバー部材のスライド方向に延在するスライドレール部を含み、該スライドレール部の少なくとも1箇所には係止凹部が形成され、前記カバー部材は、前記スライドレール部と係合するスライダ部を含み、該スライダ部の少なくとも1箇所には、前記係止凹部に係止される係止突起が形成されている請求項1~5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のコネクタと、該コネクタと嵌合する相手方コネクタとから成るコネクタ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ及びコネクタ組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等において使用される電線用コネクタでは、雨水、洗浄水等が内部に進入することを防止するために、コネクタ本体に接続されて電線の付け根部分を覆うようなカバーが取付けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【0004】
図において、811は、合成樹脂によって一体的に形成されたコネクタハウジングであり、電線891の末端に接続された端子851を収容するための端子収容孔813が複数形成されている。そして、コネクタハウジング811の後方(図における上方)には、マットシール831と、リヤシールカバー821とを収容するシール収容部815が形成されている。前記マットシール831は、弾性を有するシール材から成る厚板状の部材であり、前記端子収容孔813に対応する位置にそれぞれ形成された複数の電線挿通孔833を有する。また、前記リヤシールカバー821は、合成樹脂から成る厚板状の部材であり、前記端子収容孔813及び電線挿通孔833に対応する位置にそれぞれ形成された複数の電線貫通孔823を有する。複数本の電線891は、各々が前記電線挿通孔833及び電線貫通孔823を通過し、末端に接続された端子851が端子収容孔813内に収容されることによって、コネクタハウジング811に接続される。
【0005】
また、該コネクタハウジング811の後面(図における上面)には、電線カバー841が取付けられる。該電線カバー841は、リヤシールカバー821の電線貫通孔823から導出された電線891を所定の電線取出し方向(図における左斜め上方向)に曲げて収容するように構成されている。
【0006】
このように、コネクタハウジング811の後面に電線カバー841が取付けられるとともに、シール収容部815内にマットシール831及びリヤシールカバー821が収容されているので、水密性を確保することができ、端子収容孔813内に後方から水が浸入することを確実に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来のコネクタにおいては、コネクタハウジング811の後面に電線カバー841が取付けられて電線891が電線取出し方向に曲げられた場合、特に、電線取出し方向の反対側(図における右側)の電線貫通孔823から導出された電線891の屈曲の度合いが大きくなり、当該屈曲によって、マットシール831の電線挿通孔833が電線取出し方向に向いた荷重を受けて変形するので、防水性が低下してしまう。前記屈曲の箇所は、リヤシールカバー821の電線貫通孔823の後端(図における上端)であるが、前記屈曲の箇所からマットシール831までの距離が短いほど、前記荷重による電線挿通孔833の変形が大きくなる。
【0009】
ここでは、前記従来のコネクタの問題点を解決して、小型低背でありながら、高い防水性を維持することができ、信頼性の高いコネクタ及びコネクタ組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために、コネクタにおいては、電線通過孔が形成された固定電線ガイド板と、端子収容孔とを含むコネクタ本体と、前記端子収容孔内に収容され、嵌合方向に延在する端子であって、嵌合方向後方に向けて延在するように電線が接続された端子と、電線通過孔が形成された電線用シールであって、前記端子収容孔と固定電線ガイド板との間に配設された電線用シールと、前記コネクタ本体の嵌合方向後端に取付けられるカバー部材であって、嵌合方向に直交する方向にスライドすることが可能に前記コネクタ本体に取付けられるカバー部材と、電線通過孔が形成された可動電線ガイド板であって、前記固定電線ガイド板の嵌合方向後方側において、嵌合方向に変位可能に配設された可動電線ガイド板とを備え、前記カバー部材に形成されたカムピンが前記可動電線ガイド板に形成されたカム溝と係合し、前記カバー部材がスライド方向前方に向けて変位すると、前記可動電線ガイド板が嵌合方向後方に向けて変位する。
【0011】
他のコネクタにおいては、さらに、前記可動電線ガイド板は、前記カム溝の少なくとも一部が形成されたカム溝形成片であって、嵌合方向前方に向けて突出するカム溝形成片を含み、前記固定電線ガイド板は、前記カム溝形成片を収容可能なカム溝形成片収容凹部を含む。
【0012】
更に他のコネクタにおいては、さらに、前記固定電線ガイド板は、嵌合方向後前に向けて延出するガイド突起を含み、前記可動電線ガイド板は、嵌合方向に延在し、前記ガイド突起を収容するガイド溝を含む。
【0013】
更に他のコネクタにおいては、さらに、前記固定電線ガイド板、電線用シール及び可動電線ガイド板の電線通過孔は、嵌合方向に延在し、前記電線は、前記可動電線ガイド板の電線通過孔の嵌合方向後方において、前記カバー部材のスライド方向前方に向けて屈曲し、該スライド方向前方に向けて取出される。
【0014】
更に他のコネクタにおいては、さらに、前記カバー部材は、前記コネクタ本体の嵌合方向後方側を覆う覆い面部と、スライド方向前端において開口する電線通過口とを含み、前記電線は前記電線通過口から導出される。
【0015】
更に他のコネクタにおいては、さらに、前記コネクタ本体は、嵌合方向後端に形成され、前記カバー部材のスライド方向に延在するスライドレール部を含み、該スライドレール部の少なくとも1箇所には係止凹部が形成され、前記カバー部材は、前記スライドレール部と係合するスライダ部を含み、該スライダ部の少なくとも1箇所には、前記係止凹部に係止される係止突起が形成されている。
【0016】
コネクタ組立体においては、本開示のコネクタと、該コネクタと嵌合する相手方コネクタとから成る。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、小型低背でありながら、高い防水性を維持することができ、信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施の形態におけるコネクタ及び相手方コネクタの分解図である。
【
図2】本実施の形態におけるコネクタのアウターハウジングとストレインリリーフとの関係を示す斜視図である。
【
図3】コネクタと相手方コネクタとの嵌合が完了した状態の側面図である。
【
図4】
図3の断面図であって、(a)は
図3におけるA-A矢視断面図、(b)は(a)におけるB部拡大図である。
【
図5】本実施の形態におけるコネクタのワイヤカバーをスライドさせる前の状態を示す二面図であって、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【
図6】本実施の形態におけるコネクタのワイヤカバーをスライドさせる前の状態を示す断面図であって、(a)は
図5(a)におけるC-C矢視断面図、(b)は
図5(a)におけるD-D矢視断面図である。
【
図7】本実施の形態におけるコネクタのワイヤカバーをスライドさせた後の状態を示す二面図であて、(a)は側面図、(b)は
図5(a)におけるC-C矢視断面と同位置の断面図である。
【
図8】本実施の形態におけるコネクタのワイヤカバーをスライドさせた後の状態を示す断面図であって、(a)は
図5(a)におけるD-D矢視断面と同位置の断面図、(b)は(a)におけるE部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は本実施の形態におけるコネクタ及び相手方コネクタの分解図、
図2は本実施の形態におけるコネクタのアウターハウジングとストレインリリーフとの関係を示す斜視図、
図3はコネクタと相手方コネクタとの嵌合が完了した状態の側面図、
図4は
図3の断面図である。なお、
図4において、(a)は
図3におけるA-A矢視断面図、(b)は(a)におけるB部拡大図である。
【0021】
図において、1は本実施の形態におけるコネクタであって、コネクタ組立体(コネクタアセンブリ)の一方としてのコネクタである。該コネクタ1は、いわゆる電線コネクタであり、複数本の電線91の束であるワイヤの先端に接続され、コネクタ組立体の他方としての相手方コネクタ101と互いに嵌合される。また、該相手方コネクタ101は、例えば、電気機器、電子機器等を収納する筐体の側壁であるパネル部材に取付けられ、前記筐体の内側に配設された電気機器、電子機器等のプリント回路基板等の基板に接続される基板側コネクタである。なお、前記電気機器、電子機器等は、例えば、電車等の鉄道用車両、トラック、乗用車等の道路用車両等の制御装置等に使用されるものであるが、いかなる用途に使用されるものであってもよいし、いかなる種類のものであってもよい。
【0022】
また、本実施の形態において、コネクタ1及び相手方コネクタ101の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、前記コネクタ1及び相手方コネクタ101の各部が図に示される姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。なお、本実施の形態においては、前記コネクタ1及び相手方コネクタ101の各部が、コネクタ1が相手方コネクタ101と嵌合する嵌合方向が上下方向となり、嵌合方向前方が下方であり、嵌合方向後方が上方となるような姿勢である場合について説明する。
【0023】
そして、前記コネクタ1は、
図1に示されるように、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成された第1コネクタ本体としてのアウターハウジング11と、該アウターハウジング11内に収容される合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成された第2コネクタ本体としてのインナーハウジング15と、該インナーハウジング15における嵌合方向前方側である下側(Z軸負方向側)に接続される合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成された第3コネクタ本体としてのフロントカバー18と、前記アウターハウジング11における嵌合方向後端である上端(Z軸正方向端)に、嵌合方向に直交する方向にスライドすることが可能に取付けられる合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成されたカバー部材としてのワイヤカバー41とを備える。なお、アウターハウジング11と、インナーハウジング15と、フロントカバー18とを統合的に説明する場合には、コネクタ本体であるハウジングとして説明する。
【0024】
さらに、前記コネクタ1は、前記アウターハウジング11とワイヤカバー41との間に介在する可動電線ガイド板としてのストレインリリーフ21と、前記アウターハウジング11とインナーハウジング15との間に介在する電線用シールとしてのマットシール31及びハウジング用シールとしてのリングシール38と、前記インナーハウジング15に取付けられる端子保持部材としてのリテーナ28と、前記アウターハウジング11に取付けられる嵌合レバー81とを備える。
【0025】
なお、本実施の形態における電線91は、電力ラインに接続される電力線91Aと信号ラインに接続される信号線91Bとを含んでいる。また、電線91の先端に接続された導電性の金属から成る端子51は、電力線91Aに接続された電力端子51Aと、信号線91Bに接続された信号端子51Bとを含んでいる。電力線91Aと信号線91Bとを統合的に説明する場合、及び、電力端子51Aと信号端子51Bとを統合的に説明する場合には、それぞれ、電線91及び端子51として説明する。
図1に示されるように、電線91は、嵌合方向後方に向けて延在するように端子51に接続されている。
【0026】
前記アウターハウジング11は、
図2に示されるように、上側の端面である上面11aから下方に凹入するように形成された上側凹部11dと、X軸及びY軸方向に延在し、上側凹部11dの底面を塞ぐように形成された固定電線ガイド板としての隔壁12とを含んでいる。該隔壁12には、電力線91A及び信号線91Bが挿通される電力線通過孔13A及び信号線通過孔13Bが複数形成されている。なお、前記電力線通過孔13Aと信号線通過孔13Bとを統合的に説明する場合には、電線通過孔13として説明する。該電線通過孔13は、隔壁12を、その上面12aから図示されない下面まで、上下に貫通する貫通孔である。
【0027】
そして、前記上側凹部11d内には、前記ストレインリリーフ21の少なくとも下端を含む一部が収容される。前記ストレインリリーフ21は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成された厚板状の部材であり、平面視における形状は、前記上側凹部11dとともに、概略、X軸を長軸とする長円ないし楕円形である。また、前記ストレインリリーフ21には、電力線91A及び信号線91Bが挿通される電力線通過孔23A及び信号線通過孔23Bが複数形成されている。なお、前記電力線通過孔23Aと信号線通過孔23Bとを統合的に説明する場合には、電線通過孔23として説明する。該電線通過孔23は、ストレインリリーフ21を、その上面21aから下面21bまで、上下に貫通する貫通孔であり、その配置は、隔壁12に形成された電線通過孔13の配置と同様である。
【0028】
また、前記ストレインリリーフ21の側面21cの複数箇所(図に示される例においては、4箇所)には、上面21aから下面21bまで上下に貫通するガイド溝としての上下ガイド溝22が形成されている。該上下ガイド溝22の各々は、隔壁12の上面12aから、上側凹部11dの内周面に沿って、上方に向けて突出するガイド突起としての上下ガイド突起12dの各々を、上下方向にスライド可能に収容する。
【0029】
さらに、前記ストレインリリーフ21の側面21cにおける長手方向(X軸方向)に延在する平坦面には、カム溝として斜めに延在する傾斜溝24が形成されている。図に示される例において、傾斜溝24は、幅方向(Y軸方向)の両側に2つずつ形成されているが、その数は任意に設定することができる。各傾斜溝24は、ストレインリリーフ21の上面21aにおいて開口する入口部24aと、長手方向前方(X軸正方向)に進む程下方(Z軸負方向)に直線的に下降するように傾斜した本体部24bと、該本体部24bの下端における平坦で傾斜していない終端部24cとを含んでいる。また、各傾斜溝24は、終端部24cの近傍部分が下面21bよりも下方に位置する程度に下方に延出している。そこで、ストレインリリーフ21は、各傾斜溝24の少なくとも一部、具体的には、各傾斜溝24の終端部24c及びその近傍の周囲を囲むように形成されたカム溝形成片としての下方突出片25を有する。各下方突出片25は、側面21cの一部が下面21bから下方に向けて突出するような形状を有する。そして、前記下方突出片25の各々は、隔壁12の上面12aから下方に凹入するカム溝形成片収容凹部としての突出片収容凹部12c内に収容可能となっている。
【0030】
前記アウターハウジング11の上面11aには、ワイヤカバー41と係合するために、上方に突出するカバー係合部14が形成されている。該カバー係合部14は、長手方向(ワイヤカバー41のスライド方向)に延在する一対の直線部14aと、各直線部14aの一端を連結する曲線部14bとを含んでいる。そして、各直線部14aには、長手方向から観て、概略L字状であって長手方向に直線的延在するスライドレール部14cが形成されている。なお、該スライドレール部14cの前後方向中央付近には、開放部14dが形成されている。さらに、スライドレール部14cの側面の少なくとも1箇所には、アウターハウジング11の側面11cに開放するように係止凹部14eが形成されている。
【0031】
また、前記アウターハウジング11の側面11cにおける長手方向(X軸方向)に延在する平坦面には、嵌合レバー81を取付けるために、断面が円形の突出軸であるレバー回動軸75が形成されている。また、前記側面11cにおける前後端のいずれか一端には、嵌合レバー81を所定の姿勢で係止するための係止片76と、該係止片76の両側を覆うような一対の保護板部77が形成されている。前記係止片76は、その上端が前記側面11cに一体的に接続されたカンチレバー状の弾性変形可能部材であり、自由端であるその下端には係止突起76aが形成されている。
【0032】
さらに、前記アウターハウジング11における隔壁12の下側には、下面11bから上方に凹入するような下側凹部11eが形成されている。該下側凹部11e内には、リテーナ28が取付けられたインナーハウジング15、マットシール31、リングシール38及びフロントカバー18が収容されるとともに、相手方コネクタ101の嵌合側端、すなわち、上端とその近傍部分が挿入される。そして、前記アウターハウジング11の側面11cにおける長手方向に延在する平坦面の下端近傍には、下面11bに開放する切欠き部11fが形成されている。該切欠き部11fには、前記相手方コネクタ101のハウジングであって合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成された相手方コネクタ本体としての相手方ハウジング111の側面に、突出軸として一体的に形成されたロックピン181が進入する。
【0033】
前記ワイヤカバー41は、内部が空洞のドーム状の部材であって、湾曲して閉じた覆い面部としての上面41aと、内側が開放された略U字状の下面41bと、前記上面41aと下面41bとを結ぶ側壁41cとを有し、アウターハウジング11の上端部に長手方向(X軸方向)にスライド可能に取付けられる。なお、前記ワイヤカバー41における後端側は側壁41cによって閉じられているが、前端側は、側壁41cによって閉じられておらず、電線91が通過する電線通過口41eとなっている。そして、該電線通過口41eの上方には、上面41aからスライド方向前方に延在する庇部41dが存在する。また、前記上面41aは、前後方向に延在する水平部41a1と、該水平部41a1のスライド方向後端(X軸負方向端)から斜め下方に向けて傾斜する傾斜部41a2とを含んでいる。
【0034】
そして、前記ワイヤカバー41の側壁41cの内面における下面41b近傍には、内方に向けて突出するカムピンとしてのボス43が形成されている。該ボス43は、前記ストレインリリーフ21の傾斜溝24にスライド可能に嵌合される部材であり、図に示される例において、両側の側壁41cの内面に2つずつ形成されているが、その数及び位置は、傾斜溝24に対応するように、任意に設定することができる。
【0035】
また、前記ワイヤカバー41の側壁41cの外面における下面41b近傍には、外方に向けて突出するスライダ部42が形成されている。該スライダ部42は、前記アウターハウジング11のスライドレール部14cにスライド可能に係合する部材であり、図に示される例において、両側の側壁41cの外面に2つずつ形成されているが、その数及び位置は、スライドレール部14cに対応するように、任意に設定することができる。各スライダ部42は、左右方向から観て、概略L字状の形状を有し、スライド方向に直線的に延在する直進部42aと、該直進部42aの後端から上方に延出する停止部42bとを含んでいる。また、スライダ部42の少なくとも1箇所、図に示される例においては、スライド方向後方に位置するスライダ部42の直進部42aの外側面には、外方に向けて突出する係止突起42cが形成されている。該係止突起42cは、アウターハウジング11の係止凹部14eに係止される部材であり、
図4(b)に示されるように、その後端は直進部42aの外側面に対してほぼ直交する垂直面となっているが、その前端は直進部42aの外側面に対して傾斜する傾斜面となっている。さらに、
図4(a)に示されるように、係止突起42c近傍における直進部42aの内部には空洞42dが形成され、これにより、係止突起42c近傍における直進部42aの外側面は、柔軟に弾性変形可能となっている。したがって、係止突起42cは、アウターハウジング11の幅方向(Y軸方向)に柔軟に弾性変位可能である。
【0036】
前記インナーハウジング15は、本体部15dと、該本体部15dの上端に接続された拡大部15cとを含み、前記本体部15dの下端面がインナーハウジング15の下面15bとなり、前記拡大部15cの上端面がインナーハウジング15の上面15aとなっている。そして、前記拡大部15cには、後述されるシール収容凹部16が形成されている。該シール収容凹部16は、前記上面15aから下方に凹入する凹部であって、その内部にマットシール31が収容される。前記インナーハウジング15は、アウターハウジング11の下側凹部11e内に下方から相対的に上昇するように変位して収容され、その上面15aがアウターハウジング11における隔壁12の下面に当接又は近接した状態となる。それにより、シール収容凹部16内に収容されたマットシール31は、その上面が前記隔壁12の下面に当接した状態となる。
【0037】
前記マットシール31は、例えば、シリコーンゴム等の柔軟性を有する樹脂等のシール材によって一体的に成形された厚板状の部材であり、平面視における形状は、前記ストレインリリーフ21と同様に、概略、X軸を長軸とする長円ないし楕円形である。また、前記マットシール31には、電力線91A及び信号線91Bが挿通される電力線通過孔33A及び信号線通過孔33Bが複数形成されている。なお、前記電力線通過孔33Aと信号線通過孔33Bとを統合的に説明する場合には、電線通過孔33として説明する。該電線通過孔33は、マットシール31を、その上面から下面まで、上下に貫通する貫通孔であり、その配置は、隔壁12に形成された電線通過孔13の配置と同様である。
【0038】
また、前記インナーハウジング15には、電力線91Aの先端に接続された電力端子51A及び信号線91Bの先端に接続された信号端子51Bが収容される電力端子収容孔17A及び信号端子収容孔17Bが複数形成されている。なお、前記電力端子収容孔17Aと信号端子収容孔17Bとを統合的に説明する場合には、端子収容孔17として説明する。該端子収容孔17は、シール収容凹部16の底面から下面15bまでインナーハウジング15を上下に貫通する貫通孔であり、その配置は、マットシール31に形成された電線通過孔33の配置と同様である。
【0039】
なお、前記本体部15dには、長手方向(X軸方向)に延在する細長いリテーナ収容凹部15eが形成されている。該リテーナ収容凹部15eは、リテーナ28が収容される凹部であって、上下方向(Z軸方向)に延在する各端子収容孔17の一部を横断するように形成されている。前記リテーナ28は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成された部材であり、長手方向(X軸方向)に延在する細長い棒状の本体部28aと、該本体部28aからインナーハウジング15の幅方向(Y軸方向)に延出する複数本の係合部28bとを有する。前記リテーナ収容凹部15eに収容されたリテーナ28をインナーハウジング15の幅方向手前側(Y軸正方向)に位置ずれさせ、前記リテーナ28の本体部28aをインナーハウジング15の本体部15dの外面から突出させた状態で各端子収容孔17内に対応する端子51が収容され、その後、前記リテーナ28を、インナーハウジング15の幅方向奥側(Y軸負方向)に戻し、リテーナ収容凹部15e内に完全に収容された状態にすると、各係合部28bが対応する端子51と係合し、該端子51の上下方向の変位を阻止する。これにより、端子51の端子収容孔17からの抜けが防止される。
【0040】
さらに、前記本体部15dの外周には、リングシール38が嵌付けられる。該リングシール38は、例えば、シリコーンゴム等の柔軟性を有する樹脂等のシール材によって一体的に成形された環状の部材であり、本体部15dの外周における拡大部15cとの境界部分に取付けられる。
【0041】
前記フロントカバー18は、その上面18aから下方に凹入する図示されない凹部を含み、該凹部の内部に前記インナーハウジング15の本体部15dが、上方から相対的に下降するように変位して収容される。また、前記凹部の底壁18cの下面がフロントカバー18の下面18bとなっている。そして、前記底壁18cには、相手方コネクタ101の相手方ハウジング111内に取付けられた図示されない相手方電力端子及び相手方信号端子が挿通される相手方電力端子通過孔19A及び相手方信号端子通過孔19Bが複数形成されている。なお、前記相手方電力端子通過孔19Aと相手方信号端子通過孔19Bとを統合的に説明する場合には、相手方端子通過孔19として説明する。該相手方端子通過孔19は、底壁18cを、その上面から下面18bまで、上下に貫通する貫通孔であり、その配置は、インナーハウジング15の本体部15dに形成された端子収容孔17の配置と同様である。
【0042】
前記嵌合レバー81は、例えば、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成された部材であるが、金属板に打抜き、曲げ等の加工を施して形成された部材であってもよい。前記嵌合レバー81は、上下方向から観て、概略U字状又はアーチ状の形状を有し、アーチの両脚に相当するような一対の板状の腕部82と、該腕部82の一端同士を接続するアーチの頂部に相当するような接続部83とを含んでいる。各腕部82には、回動孔85と、ロック凹部86とが形成されている。前記回動孔85には、アウターハウジング11のレバー回動軸75が挿入され、これにより、嵌合レバー81は、前記レバー回動軸75を中心に回動可能にアウターハウジング11に取付けられる。また、前記ロック凹部86は、
図1において、腕部82の下端に位置する入口部86aと、回動孔85に近接して位置するロック部86bとを含み、コネクタ1が相手方コネクタ101と嵌合する際には、前記入口部86aから相手方ハウジング111の側面に形成されたロックピン181がロック凹部86内に進入し、嵌合レバー81が回動されて、
図3に示されるような姿勢になると、前記ロックピン181が相対的に前記ロック部86bにまで移動する。これにより、コネクタ1と相手方コネクタ101とは嵌合した状態でロックされる。
【0043】
また、前記接続部83の内面には、アウターハウジング11の係止突起76aに係止可能なレバー係止突起83aが形成され、前記接続部83の外面には、オペレータが手指で嵌合レバー81を操作しやすいようにするための、操作突起84が形成されている。前記レバー係止突起83aは、嵌合レバー81が回動されて、
図3に示されるような姿勢になると、アウターハウジング11に形成された係止片76の自由端に形成された係止突起76aに係止される。このように、レバー係止突起83aが係止突起76aに係止されている状態では、嵌合レバー81は、
図3に示されるような姿勢において姿勢変化不能となり、コネクタ1と相手方コネクタ101との嵌合状態はロック解除不能となる。
【0044】
次に、前記構成のコネクタ1において、ワイヤカバー41をスライドさせる動作について説明する。
【0045】
図5は本実施の形態におけるコネクタのワイヤカバーをスライドさせる前の状態を示す二面図、
図6は本実施の形態におけるコネクタのワイヤカバーをスライドさせる前の状態を示す断面図、
図7は本実施の形態におけるコネクタのワイヤカバーをスライドさせた後の状態を示す二面図、
図8は本実施の形態におけるコネクタのワイヤカバーをスライドさせた後の状態を示す断面図である。なお、
図5において、(a)は上面図、(b)は側面図であり、
図6において、(a)は
図5(a)におけるC-C矢視断面図、(b)は
図5(a)におけるD-D矢視断面図であり、
図7において、(a)は側面図、(b)は
図5(a)におけるC-C矢視断面と同位置の断面図であり、
図8において、(a)は
図5(a)におけるD-D矢視断面と同位置の断面図、(b)は(a)におけるE部拡大図である。
【0046】
本実施の形態においては、コネクタ1に複数本の電線91の束であるワイヤの先端が接続された後、ワイヤカバー41がアウターハウジング11の上端に取付けられる。
図5及び6に示されるように、コネクタ1に複数本の電線91の束であるワイヤの先端が接続された状態では、各電線91の先端に接続された端子51は、インナーハウジング15の各端子収容孔17内に収容され、かつ、リテーナ28と係合し、各端子51の後端に接続された電線91は、マットシール31に形成された各電線通過孔33、アウターハウジング11の隔壁12に形成された各電線通過孔13、及び、ストレインリリーフ21に形成された各電線通過孔23を通過し、該電線通過孔23から導出した後、所定の電線取出し方向(
図6(a)における左方向)に曲げてコネクタ1から取出される。
【0047】
なお、
図5~8においては、都合により、電線91の一部の描画が省略されていることに留意されたい。
【0048】
この状態において、リテーナ28が取付けられたインナーハウジング15は、アウターハウジング11の下側凹部11e内に収容されてアウターハウジング11に接続され、その上面15aがアウターハウジング11における隔壁12の下面に当接又は近接している。また、マットシール31は、インナーハウジング15の拡大部15cに形成されたシール収容凹部16内に収容され、その下面がシール収容凹部16の底面に当接し、その上面が隔壁12の下面に当接している。さらに、ストレインリリーフ21は、アウターハウジング11の上側凹部11d内に収容され、その下面21bが隔壁12の上面12aに当接又は近接している。なお、ストレインリリーフ21の下方突出片25は、突出片収容凹部12c内に収容され、ストレインリリーフ21の上下ガイド溝22には上下ガイド突起12dが嵌合している。
【0049】
そして、ワイヤカバー41がアウターハウジング11の上端に取付けられる。具体的には、アウターハウジング11の上方からワイヤカバー41が相対的に下降させられ、該ワイヤカバー41において、前方に位置するスライダ部42がスライドレール部14cの開放部14d内に進入し、後方に位置するスライダ部42の直進部42aの前端がスライドレール部14cの後端に対向する。また、ワイヤカバー41の側壁41cの内面に形成されたボス43が、
図6(a)に示されるように、ストレインリリーフ21の傾斜溝24における入口部24a内に上方から進入する。これにより、
図5及び6に示されるように、ワイヤカバー41は、アウターハウジング11の前端寄り部分の上方が開放されるような開位置に位置する。
【0050】
なお、ワイヤカバー41が開位置にあるとき、嵌合レバー81は、
図5(b)に示されるように、操作突起84がアウターハウジング11の上端より下方に位置するような姿勢に保持される。
【0051】
続いて、オペレータが手指によって、ワイヤカバー41を、アウターハウジング11の前方(X軸正方向)に向けてスライドさせる。すると、スライダ部42の直進部42aがスライドレール部14cに嵌合した状態でスライドする。したがって、ワイヤカバー41は、アウターハウジング11に対して上下方向に変位することなく、アウターハウジング11の前方に向けてスライドする。この際、ワイヤカバー41のボス43が傾斜溝24における直線的に傾斜した本体部24bと係合した状態で前方に向けて変位する一方で、ストレインリリーフ21は、上下ガイド溝22に上下ガイド突起12dが嵌合しているために、上下方向にのみ変位可能で、前方に向けては変位不能となっているから、傾斜した本体部24bがボス43に対して相対的にスライドすることによって、上方に変位する。
【0052】
そして、ワイヤカバー41が最も前方寄りの位置である閉位置に到達すると、
図7及び8に示されるように、アウターハウジング11の上方のほぼ全体がワイヤカバー41によって覆われる。したがって、雨水、洗浄水等の水分がアウターハウジング11内に進入することがかなりの程度防止される。また、電線91は、上から下に向って、ストレインリリーフ21の電線通過孔23を通過し、隔壁12の電線通過孔13を通過し、さらに、マットシール31の電線通過孔33を通過した後、インナーハウジング15の端子収容孔17内の端子51に接続されているので、仮に、アウターハウジング11内に水分が進入しても、該水分が端子収容孔17内の端子51にまで到達することは、確実に防止される。特に、マットシール31は、柔軟性を有するシール材から成り、
図8(b)に示されるように、その電線通過孔33の内面には、中心向けて突出する突起33aが形成され、該突起33aが電線91の外周に対して押付けられて変形するようになっていて、しかも、外径よりも小さく形成されているので、防水性が極めて高く、水分が端子収容孔17内の端子51にまで到達することを極めて効果的に防止することができる。
【0053】
また、ワイヤカバー41が閉位置に到達すると、
図7(b)に示されるように、ワイヤカバー41のボス43は、傾斜溝24における最下端に位置する終端部24cに到達する。そのため、ストレインリリーフ21は、アウターハウジング11に対して最も高い位置にまで上昇し、その下面21bは隔壁12の上面12aから大きく離間する。また、
図8(a)に示されるように、ストレインリリーフ21の上面21aは、マットシール31の上面から、更に大きく離間する。
【0054】
この状態では、アウターハウジング11の上方がワイヤカバー41の上面41aによって覆われているので、ストレインリリーフ21の電線通過孔23から導出して前記電線取出し方向に取出される電線91は、電線通過孔23の上端であるストレインリリーフ21の上面21aにおいて、大きく屈曲させられる。このような屈曲によって、マットシール31の電線通過孔33が前記電線取出し方向に向いた荷重を受けて変形するので、マットシール31の防水性が低下する可能性もあるが、本実施の形態においては、電線91の屈曲箇所であるストレインリリーフ21の上面21aからマットシール31までの距離が長いので、電線91の屈曲に起因する電線通過孔33の変形がほとんどなく、したがって、マットシール31の防水性が低下することは、ほとんどない。
【0055】
また、電線91の屈曲が大きくてもマットシール31の防水性が低下しないので、ワイヤカバー41の高さ(下面41bから上面41aまでの距離)を低くすることができ、コネクタ1を小型低背化することができる。さらに、ストレインリリーフ21の上面21aからマットシール31までの距離が長いので、電線91が振動を受けても、振動がマットシール31の防水性に影響を及ぼすことがなく、また、端子51までの距離も長いので、振動を受けても接点の接触信頼性が高い。
【0056】
なお、ワイヤカバー41が閉位置にあると、嵌合レバー81を、
図7(a)に示されるように、操作突起84がアウターハウジング11の上端より上方に位置するような姿勢にすることもできる。このような姿勢であると、腕部82に形成されたロック凹部86の入口部86aが下方を向き、相手方ハウジング111の側面に形成されたロックピン181をロック凹部86内に進入させることができるので、コネクタ1を相手方コネクタ101と嵌合させることが可能となる。
【0057】
このように、本実施の形態において、コネクタ1は、電線通過孔13が形成された隔壁12と、端子収容孔17とを含むハウジング(アウターハウジング11、インナーハウジング15及びフロントカバー18)と、端子収容孔17内に収容され、嵌合方向に延在する端子51であって、嵌合方向後方に向けて延在するように電線91が接続された端子51と、電線通過孔33が形成されたマットシール31であって、端子収容孔17と隔壁12との間に配設されたマットシール31と、ハウジングの嵌合方向後端に取付けられるワイヤカバー41であって、嵌合方向に直交する方向にスライドすることが可能にハウジングに取付けられ、電線91をスライド方向前方に向けて取出すワイヤカバー41と、電線通過孔23が形成されたストレインリリーフ21であって、隔壁12の嵌合方向後方側において、嵌合方向に変位可能に配設されたストレインリリーフ21とを備え、ワイヤカバー41に形成されたボス43がストレインリリーフ21に形成された傾斜溝24と係合し、ワイヤカバー41がスライド方向前方に向けて変位すると、ストレインリリーフ21が嵌合方向後方に向けて変位する。
【0058】
これにより、ストレインリリーフ21とマットシール31との距離が長くなるので、ストレインリリーフ21の電線通過孔23から導出した電線91が屈曲させられても、マットシール31の防水性が低下することがない。したがって、小型低背でありながら、高い防水性を維持することができ、コネクタ1の信頼性が向上する。
【0059】
また、ストレインリリーフ21は、傾斜溝24の少なくとも一部が形成された下方突出片25であって、嵌合方向前方に向けて突出する下方突出片25を含み、隔壁12は、下方突出片25を収容可能な突出片収容凹部12cを含んでいる。これにより、傾斜溝24の嵌合方向に関する長さを長くすることができ、ストレインリリーフ21の隔壁12及びマットシール31に対する変位量を大きくすることができる。
【0060】
さらに、隔壁12は、嵌合方向後前に向けて延出する上下ガイド突起12dを含み、ストレインリリーフ21は、嵌合方向に延在し、上下ガイド突起12dを収容する上下ガイド溝22を含んでいる。したがって、ストレインリリーフ21は、嵌合方向後方に向けてスムーズに変位することができる。さらに、隔壁12、マットシール31及びストレインリリーフ21の電線通過孔13、33、23は、嵌合方向に延在し、電線91は、ストレインリリーフ21の電線通過孔23の嵌合方向後方において、ワイヤカバー41のスライド方向前方に向けて屈曲する。さらに、ワイヤカバー41は、ハウジングの嵌合方向後方側を覆う上面41aと、スライド方向前端において開口する電線通過口41eとを含み、電線91は電線通過口41eから導出される。さらに、ハウジングは、嵌合方向後端に形成され、ワイヤカバー41のスライド方向に延在するスライドレール部14cを含み、スライドレール部14cの少なくとも1箇所には係止凹部14eが形成され、ワイヤカバー41は、スライドレール部14cと係合するスライダ部42を含み、スライダ部42の少なくとも1箇所には、係止凹部14eに係止される係止突起42cが形成されている。
【0061】
なお、本明細書の開示は、好適で例示的な実施の形態に関する特徴を述べたものである。ここに添付された特許請求の範囲内及びその趣旨内における種々の他の実施の形態、修正及び変形は、当業者であれば、本明細書の開示を総覧することにより、当然に考え付くことである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示は、コネクタ及びコネクタ組立体に適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 コネクタ
11 アウターハウジング
11a、12a、15a、18a、21a、41a 上面
11b、15b、18b、21b、41b 下面
11c、21c 側面
11d 上側凹部
11e 下側凹部
11f 切欠き部
12 隔壁
12c 突出片収容凹部
12d 上下ガイド突起
13、23、33 電線通過孔
13A、23A、33A 電力線通過孔
13B、23B、33B 信号線通過孔
14 カバー係合部
14a 直線部
14b 曲線部
14c スライドレール部
14d 開放部
14e 係止凹部
15 インナーハウジング
15c 拡大部
15d、24b、28a 本体部
15e リテーナ収容凹部
16 シール収容凹部
17、813 端子収容孔
17A 電力端子収容孔
17B 信号端子収容孔
18 フロントカバー
18c 底壁
19 相手方端子通過孔
19A 相手方電力端子通過孔
19B 相手方信号端子通過孔
21 ストレインリリーフ
22 上下ガイド溝
24 傾斜溝
24a、86a 入口部
24c 終端部
25 下方突出片
28 リテーナ
28b 係合部
31、831 マットシール
33a 突起
38 リングシール
41 ワイヤカバー
41a1 水平部
41a2 傾斜部
41c 側壁
41d 庇部
41e 電線通過口
42 スライダ部
42a 直進部
42b 停止部
42c、76a 係止突起
42d 空洞
43 ボス
51、851 端子
51A 電力端子
51B 信号端子
75 レバー回動軸
76 係止片
77 保護板部
81 嵌合レバー
82 腕部
83 接続部
83a レバー係止突起
84 操作突起
85 回動孔
86 ロック凹部
86b ロック部
91、891 電線
91A 電力線
91B 信号線
101 相手方コネクタ
111 相手方ハウジング
181 ロックピン
811 コネクタハウジング
815 シール収容部
821 リヤシールカバー
823 電線貫通孔
833 電線挿通孔
841 電線カバー