(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】電動車
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20230404BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20230404BHJP
【FI】
B60L15/20 Z
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2019174151
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓磨
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-250583(JP,A)
【文献】特開2016-088297(JP,A)
【文献】特開2000-310296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
B60K 6/20- 6/547
B60W 10/00-20/50
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性のボディメンバと、
サスペンションメンバと、ショックアブソーバロッドと、を備えるフロントサスペンション装置と、
前記サスペンションメンバに配置される駆動用モータと、
前記ショックアブソーバロッドの上端と前記ボディメンバとを電気的に接続するアース線と、
前記駆動用モータによって車輪を駆動させるためのドライブシャフトと、を備え、
前記ショックアブソーバロッドの上端と前記ボディメンバとは、前記アース線のみによって電気的に接続されており、
前記駆動用モータが駆動している状況では、前記駆動用モータから前記ドライブシャフトと前記ショックアブソーバロッドと前記アース線とを介して前記ボディメンバにラジオノイズが伝搬される、電動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、駆動用モータを備える電動車に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動用モータを備える電動車には、電動用モータ等の電気機器からラジオノイズが発生する。特許文献1に、電動車の駆動用モータである回転電機から発生するラジオノイズを除去するためのアース機構を有する電動車が開示されている。アース機構は、回転電機のロータシャフトに押し当てられるブラシを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブラシは、回転するロータシャフトに押し当てられることによって摩耗する。また、ブラシとロータシャフトが接触した状態でロータが回転することによって、音声ノイズが発生する。
【0005】
本明細書は、摺動による経年劣化及び音声ノイズの発生を抑制しつつ、電気機器からのラジオノイズを除去する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する電動車は、導電性のボディメンバと、サスペンションメンバと、ショックアブソーバロッドと、を備えるフロントサスペンション装置と、前記サスペンションメンバに配置される駆動用モータと、前記ショックアブソーバロッドの上端と前記ボディメンバとを電気的に接続するアース線と、を備える。
【0007】
この構成では、電動モータ等の電気機器から発生するラジオノイズを、ショックアブソーバロッドからアース線を介して、ボディメンバに伝搬させることができる。この結果、ラジオノイズは、ボディメンバを伝搬して、車両外部に放出される。これにより、ラジオノイズを除去することができる。アース線は、ショックアブソーバロッドの上端及びボディメンバに連結されているため、部材間の摺動が発生しない。このため、摺動による経年劣化、ノイズの発生を抑制しつつ、ラジオノイズを除去することができる。
【0008】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】フロントサスペンション装置と駆動用モータの正面図である。
【
図3】ショックアブソーバロッドの上端付近を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び
図2に示すように、電動車10は、一対の前側車輪12の間に、駆動用モータ16と、PCU(Power Control Unitの略)14と、フロントサスペンション装置20と、を備える。駆動用モータ16と、PCU(Power Control Unitの略)14と、フロントサスペンション装置20とは、電動車10の一対の車輪12の間に位置する、図示省略したコンパートメントルームに配置されている。
【0011】
フロントサスペンション装置20は、サスペンションメンバ22と、一対のショックアブソーバ24と、一対のコイルスプリング26と、を備える。サスペンションメンバ22は、電動車10の前後方向に垂直な車幅方向に延びている。サスペンションメンバ22は、電動車10の前側の一対の車輪12のそれぞれに対して、ロアアーム42等を介して取り付けられている。
【0012】
サスペンションメンバ22の上方には、一対のショックアブソーバ24が配置されている。一対のショックアブソーバ24のそれぞれは、ナックル40を介して、車輪12に取り付けられている。ショックアブソーバ24は、ナックル40に取り付けられている位置から上方に向かって配置されている。
【0013】
ショックアブソーバ24は、ショックアブソーバロッド28と、アウタシェル29と、を備える。アウタシェル29は、電動車10の高さ方向に延びる円筒形状を有する。ショックアブソーバロッド28は、アウタシェル29に収容されている。ショックアブソーバロッド28は、アウタシェル29の上端からの突出量が変化するように、アウタシェル29に対して高さ方向に移動可能に配置されている。なお、ショックアブソーバロッド28は、ショックアブソーバロッド28の移動に合わせて伸縮するカバー27によって覆われている。
【0014】
ショックアブソーバ24は、上端において、ボディメンバ30のサスペンションタワー32に、ボルトを介して締結されている。なお、ボディメンバ30は、サスペンションタワー32と、フロントサイドメンバ34と、を含む電動車10の車両の骨格部分である。ボディメンバ30は、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の導電性を有する金属材料で作製されている。ショックアブソーバ24の外周には、コイルスプリング26が配置されている。
【0015】
図3に示すように、ショックアブソーバロッド28は、その上端において、アース線50を介して、サスペンションタワー32に電気的に連結されている。アース線50は、ショックアブソーバロッド28の上端とサスペンションタワー32とのそれぞれに、はんだを用いて結合されている。なお、アース線50は、ショックアブソーバロッド28の上端とサスペンションタワー32との少なくとも一方に、ボルト又はナット、クリップ、キャップ等、その他の結合手段によって結合されていてもよい。
【0016】
図2に示すように、サスペンションメンバ22には、駆動用モータ16と、PCU14と、が載置されている。電動車10は、駆動用モータ16がドライブシャフト17を介して車輪12を駆動させることによって走行する。駆動用モータ16には、図示省略した電動車10のバッテリから電力が供給される。PCU14は、バッテリの直流電力を交流電力に変換するインバータを備える。インバータは、複数のスイッチング素子を備える。
【0017】
バッテリからPCU14を介して駆動用モータ16に電力が供給され、駆動用モータ16が回転駆動している状況では、PCU14及び駆動用モータ16の電気機器から、ラジオノイズが発生する。ラジオノイズは、駆動用モータ16からドライブシャフト17を介してフロントサスペンション装置20に伝搬する。電動車10では、フロントサスペンション装置20のショックアブソーバロッド28が、上端において、アース線50を介してボディメンバ30に電気的に結合されている。この構成によれば、フロントサスペンション装置20に伝搬されたラジオノイズが、ショックアブソーバロッド28及びアース線50を介して、ボディメンバ30に伝搬する。ボディメンバ30は、接地されている。この結果、ラジオノイズを、ボディメンバ30から電動車10の外部に伝搬させることができる。
【0018】
アース線50は、ショックアブソーバロッド28とボディメンバ30とのそれぞれに固定されている。このため、アース線50が、ショックアブソーバロッド28又はボディメンバ30との摩耗によって劣化することを防止することができる。また、アース線50がショックアブソーバロッド28又はボディメンバ30との摺動や衝突によって、音声ノイズが発生することを防止することができる。
【0019】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0020】
10:電動車、12:前側車輪、16:駆動用モータ、20:フロントサスペンション装置、22:サスペンションメンバ、24:ショックアブソーバ、26:コイルスプリング、27:カバー、28:ショックアブソーバロッド、29:アウタシェル、30:ボディメンバ、32:サスペンションタワー、34:フロントサイドメンバ、40:ナックル、42:ロアアーム、50:アース線