(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】構成部材を備えた固体層を薄くするための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230404BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20230404BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
B23K26/53
(21)【出願番号】P 2019531275
(86)(22)【出願日】2017-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2017082468
(87)【国際公開番号】W WO2018108938
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】102016014821.7
(32)【優先日】2016-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017010284.8
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511153080
【氏名又は名称】ジルテクトラ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【住所又は居所原語表記】Manfred-von-Ardenne-Ring 7,01099 Dresden,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ドレシャー, ヴォルフラム
(72)【発明者】
【氏名】スワボダ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】リスケ, ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ベイヤー, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】リヒター, ヤン
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0254232(US,A1)
【文献】特表2016-509364(JP,A)
【文献】国際公開第2016/055443(WO,A1)
【文献】特表2015-516672(JP,A)
【文献】国際公開第2012/108056(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの固体(1)から少なくとも1つの固体層(4)を分離するための方法であって、剥離面(8)を形成するために、レーザー光線によって前記固体(1)の内部に複数の改質部(9)を生成することと、
前記複数の改質部(9)を生成した後に、前記固体(1)の最初から露出していた表面(5)上にまたはこの表面の上方に、層および/または構成部材(150)を配置または生成することによって複合構造体を生成することとを有し、この場合露出した前記表面(5)が分離すべき前記固体層(4)の構成部分であり、
さらに、前記固体(1)内に応力を発生するために前記固体(1)に外力を加えることを有し、この場合外力は、応力が前記剥離面(8)に沿った亀裂が始まるような強さであり、
前記外力を加えることが、
前記応力が機械的に発生するように、ポリマー材料を含む受容層(140)を
冷却し、
前記層及び/または構成部材(150)上に、当てることと、
前記受容層(140)の前記ポリマー材料がガラス転移を終えて、前記機械的に発生した応力によって前記固体(1)内の亀裂が前記剥離面(8)に沿って広がって、前記亀裂が前記固体層(4)を、前記層および/または構成部材(150)と共に前記固体(1)から分離するように、前記受容層(140)を周囲温度よりも低い温度に冷却することと、を含む方法。
【請求項2】
前記受容層(140)が、-130°C~0°Cのガラス転移を有するポリマー材料を、または、中に充填材を有するポリマーマトリックスを形成するポリマーハイブリッド材料を、含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
霧化された窒素、窒素浴(178)、または、窒素噴霧により、前記受容層(140)を-130~-10°Cの温度に冷却する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複合構造体の露出した層または露出した前記構成部材(150)上に安定化層(142)を形成することをさらに含み、前記安定化層(142)が前記複合構造体の露出した前記層または露出した前記構成部材(150)の機械的な応力から生じる変形を制限する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記安定化層(142)がセラミックス材料および/またはポリマー材料を含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記安定化層(142)がインサイチュで生成されるかまたはフィルムとして提供される、および/または、前記安定化層(142)が前記露出した層または前記露出した構成部材(150)を包む、および/または、前記安定化層(142)が溶剤を塗布することによってまたは溶剤に浸漬することによって前記露出した層または前記露出した構成部材(150)から除去される、請求項
4に記載の方法。
【請求項7】
前記安定化層(142)がガラスウェハであるか、または、ガラスウェハが前記安定化層(142)上に配置されている、請求項
4に記載の方法。
【請求項8】
前記剥離面(8)の発生前に、70°Cと、前記固体(1)の溶融温度または蒸発温度との間の温度で実施される高温方法を使用して、前記固体(1)を処理することをさらに含み、
前記高温方法がエピタキシャル成長方法、ドープ方法またはプラズマを用いた方法であり、
前記高温方法によって、少なくとも1つの層(145)が前記固体(1)上に生成され、
生成された前記少なくとも1つの層(145)の前記レーザー光線のレーザー光波の屈折および/または吸収および/または反射の最大度合いが5%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記改質部(9)によって前記固体(1)内に圧縮応力が発生させられ、圧縮応力を発生する前記改質部(9)の少なくとも一部が、前記固体(1)から前記固体層(4)を分離する際に、前記固体層(4)に残る、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記固体(1)から前記固体層(4)を分離することによって露出する表面に、スパッタリングまたは電気化学的な被膜形成によって金属層(20)を生成すること、をさらに含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記金属層(20)が第1状態でおよび室温よりも高い温度で前記固体層(4)上に生成され、そして室温で第2状態にあり、この場合第1状態から第2状態への移行によって、前記金属層(20)が前記固体層(4)にあたり、前記固体層(4)に残る改質部(9)の部分の圧縮応力によって生じる変形を少なくとも部分的に補償する、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属層(20)が、室温よりも高い温度範囲で前記固体層(4)上に生成され、この場合温度範囲は、室温よりも少なくとも100°C高い最高温度、及び2000°Cであるかまたは固体材料の溶融温度または蒸発温度よりも低い温度である最高温度を有する、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の改質部(9)を生成することが、
複数のベース改質部を予め定めたプロセスパラメータを使用して生成することと、
臨界以下の亀裂を誘発するために誘発改質部を生成することと、を含み、誘発改質部を生成するための少なくとも1つのプロセスパラメータがベース改質部を生成するための少なくとも1つのプロセスパラメータとは異なっている、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記誘発改質部が、前記ベース改質部を生成する線の延在方向に対して傾斜したまたは離隔された方向に生成される、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
臨界以下の亀裂が、5~200μmだけ前記固体内で広がる、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
前記臨界以下の亀裂を形成した、複数の線を有する領域間の部分が、裂ける、請求項
13に記載の方法。
【請求項17】
前記固体材料がシリコンまたはSiCである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
電気的な要素を生成するための方法であって、
剥離面(8)を形成するためにレーザー光線によって固体(1)の内部に複数の改質部(9)を生成して、前記複数の改質部(9)によって前記固体(1)内に圧縮応力が発生させられるようにすることと、
前記固体(1)の最初から露出していた表面(5)上にまたはこの表面の上方に、層および/または構成部材(150)を配置または生成することによって複合構造体を生成することとを含み、露出した表面(5)が前記固体(1)から分離すべき固体層(4)の構成部分であり、
さらに、前記剥離面(8)に沿って前記固体(1)から前記固体層(4)を分離することを含み、圧縮応力を発生する前記複数の改質部(9)の少なくとも構成部分が前記固体層(4)上に残りかつ前記固体層(4)が前記固体(1)から分離されるのに必要な程度に多くの改質部(9)が生成され、または、前記固体(1)内に他の応力を発生させるために、外力が前記固体(1)に加えられ、前記外力は、前記他の応力が前記複数の改質部(9)によって形成された前記剥離面(8)に沿って亀裂の進行を生じるような強さであることにより、前記固体(1)から前記固体層(4)が分離され、
さらに、前記改質部の部分によって生じる圧縮応力を少なくとも部分的に補償するために、前記固体(1)からの前記固体層(4)の分離によって露出する表面に金属層(20)を生成することを含み、
前記外力を前記固体(1)に加えることが、
前記圧縮応力が機械的に発生するように、ポリマー材料を含む受容層(140)を
冷却し、
前記層及び/または構成部材(150)上に、当てることと、
前記受容層(140)の前記ポリマー材料がガラス転移を終えて、前記機械的に発生した応力によって前記固体(1)内の亀裂が前記剥離面(8)に沿って広がって、前記亀裂が前記固体層(4)を、前記層および/または構成部材(150)と共に前記固体(1)から分離するように、前記受容層(140)を周囲温度よりも低い温度に冷却することと、による、方法。
【請求項19】
前記電気的な要素が、ショットキーダイオード(200)および/またはトランジスタであり、この場合前記金属層がオーム接触部および/または熱排出のためのインターフェースを形成し、
平均して、前記固体層の分離によって露出された平らな表面側の1cm
2あたり、少なくとも4個の電気的な要素が生成される、請求項
18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に従い、少なくとも1個の固体から少なくとも1個の固体層を分離するための方法と、請求項15に従い、固体、特に半導体ウェハに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業の一連の構成要素は、薄くした固体層または基板を必要とする。しかし、薄くした基板が通常のプロセスでは取扱操作困難であり、従来の回転鋸プロセスによってウェハを特定の厚さまでしか作成することができないので、このような構成部材から薄い基板を製作するためによく用いられる作成形態は、プロセスの終了後の研削除去または背面薄肉化である。
【0003】
この場合、研削ステップと研磨ステップにおいて最後に、所望される最終的な基板厚さが余剰材料の除去によって作成される前に、従来のウェハの処理が終了する。この状況は2つの理由から不利である。一方で、貴重な材料の一部が研削ステップで失われ、他方では研削ステップ/研磨ステップが基板の損傷の可能性と、ウェハの価値のある産物の大部分を既に含む既に処理された構成部材の全損の可能性を秘めている。
【0004】
固体を薄くするための他の方法は、特許文献1に開示されている。この方法によれば、ポリマー層が固体上に取付けられる。そして、ポリマー層の温度調節によって、固体内に応力が発生させられ、この応力によって固体層が残りの固体から分離される。
【0005】
特許文献2には、固体とポリマーフィルムの間に付加的な犠牲層を使用することが記載されている。この犠牲層は、それが例えば適切な反応剤の添加によって化学的に分解または剥離することにより、分離ステップの後のポリマーフィルムの除去を改善する働きをする。しかし、この方法は長い時間がかかるという欠点がある。すなわち、ポリマー層の完全除去まで数時間かかることがある。これは工業的な利用を強く制限する。ポリマー層除去のプロセスを加速するために、適切な前処理によって、室温の場合にも作用する適切な引張り応力の形態の付加的な駆動力を加える方法がある。この方法は反応剤または溶剤の作用面を拡大することになり、分解または剥離および溶解を容易にする。
【0006】
さらに、熱膨張率または弾性係数に対して局所的に影響を及ぼすことができるようにするために、充填材をポリマー内に設けることが特許文献3によって知られている。このような充填材が分割すべき固体の表面におけるポリマーの付着をしばしば困難にし、それによってもはや十分な力の伝達ができないということが確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2014/177721A1号パンフレット
【文献】独国特許出願公開第102012001620A1号明細書
【文献】国際公開第2010/072675A2号パンフレット
【発明の概要】
【0008】
特に材料を維持し、ウェハ損失(いわゆる歩留り損失)を減少することにより、半導体基板の薄肉化を改善する。
【0009】
本発明に従い、請求項1に記載した、少なくとも1つの固体から少なくとも1つの固体層を分離するための方法は、好ましくは少なくとも、剥離面を形成するために、レーザー光線によって固体の内部に多数の改質部を生成するステップと、固体の最初に露出する表面上にまたはこの表面の上方に、層および/または構成部材を配置または生成することによって複合構造体を生成するステップとを有し、この場合露出する表面が分離すべき固体層の構成部分であり、さらに、固体内に応力を発生するために固体に外力を加えるステップを有し、この場合外力は、応力が剥離面に沿って亀裂を広げるような強さである。
【0010】
剥離面を形成するための改質部は特に好ましくは複合構造体を生成する前に生成される。
【0011】
それによって、本発明では、構成要素の処理の前に、固体または基板内でレーザー改質層の生成が行われる。このレーザー改質層は後の薄肉化面または剥離面を定める。その後、層の形成または生成および/または構成部分の作成のための他の処理(リソグラフィ等)が行われる。
【0012】
固体層と共に複合構造体を形成する層および/または構成部分は好ましくは、リソグラフィ、特に例えば金属化合物による被膜形成、塗布、露光(例えばフォトマスクを介してのスキャン)、フォトレジストの発生(特に、70°C以下、特に50°C以下または30°C以下または周囲温度以下または20°C以下または5°C以下または0°C以下のような低い温度で)、構造体のエッチングによってもたらされる。回路、特に完成した回路の生成のために、これらのプロセス、特にリソグラフィプロセスの個々、複数またはすべてを複数回、特に10回以上または10回未満または20回以上または20回未満または40回以上または40回未満または80回以上または80回未満繰り返すことができる。
【0013】
固体層を分離した後で残る固体は好ましくは、分離された固体層の厚さよりも大きな厚さ、特に何倍もの厚さを有する。固体材料は好ましくは半導体材料であるかまたは半導体材料を有する。
【0014】
この場合、分離すべき固体層の表面の「上または上方」とは、改質部を生成するためのレーザー処理の前に高温ステップが行われる場合、高温方法によって生成された表面の被覆形成を行うことができることであると理解することもできる。この表面には、他の層または他の複数の層および/または構成部材が複合構造体を生成するために配置または生成される。複合構造体は定義に従ってレーザー処理の後で初めて生成され、場合によってはレーザー処理の前に存在する多層構造体は、本特許出願の範囲内では複合構造体とは呼ばないで、多層構造体と呼ぶ。
【0015】
この場合、薄肉化は、好ましくはウェハである固体の厚さを低減することを意味する。この厚さの低減は、構造部材を備えた固体、特にウェハの慣用の作成方法の場合にすり減らされる、例えば切削除去、研削または研磨除去される材料部分だけ行われる。
【0016】
本発明ではさらに、残りの改質部構成部分の圧縮応力によって生じた固体層の変形を、少なくとも部分的におよび好ましくは大部分および特に好ましくは完全に相殺するために、あるいは圧縮応力を少なくとも部分的におよび好ましくは大部分または完全に相殺するために、固体から固体層を分離することによって露出する表面に、金属層を生成することができ、および/または好ましくはスパッタリングまたは電気化学的な被膜形成によって、金属層を生成することができる。
【0017】
他の有利な実施形は従属請求項の対象であり、次にこの実施形について説明する。
【0018】
本発明に係る、付加的にまたは代替的に、固体から分離される少なくとも1つの固体層を提供するための方法は、好ましくは少なくとも、剥離面を形成するために、レーザー光線によって固体の内部に多数の改質部を生成するステップを有し、この場合改質部によって固体内に圧縮応力が発生し、さらに改質部によって形成された剥離面に沿って残りの固体と固体層を分けることにより、固体層を分離するステップを有し、この場合圧縮応力を発生する改質部の少なくとも構成部分が固体層上に残り、この場合固体層が改質部に基づいて固体から剥離されるほど多くの改質部が生成され、この場合固体内に他の応力を発生するために、外力が固体に加えられ、この場合外力は、応力が改質部によって形成された剥離面に沿って亀裂の広がりを生じるような強さであり、さらに、残りの改質部構成部分の圧縮応力によって生じる固体層の変形を少なくとも部分的におよび好ましくは大部分および特に好ましくは完全に相殺するために、あるいは圧縮応力を少なくとも部分的におよび好ましくは大部分または完全に相殺するために、固体からの固体層の分離によって露出する表面に、材料層、特に金属層を生成するステップを有する。
【0019】
この解決策は、固体層の切削加工を行わずに、きわめて平らな固体層を提供することができるので有利である。これは特に固体材料SiCの場合に重要である。というのは、この固体材料の作成が非常に高価であり、従って材料損失をできるだけ回避すべきであるからである。さらに、SiCが非常に硬いので、きわめて高価な研削工具を使用しなければならない。この研削工具はSiCの高い硬度に基づいて早く摩耗する。この解決策はさらに有意義である。というのは、提供された固体層が既に、電気的な接触部を形成するためおよび/または熱排出用インターフェースを形成するための材料層、特に金属層を装備しているからである。同様に好ましくは、最初に露出する固体の表面上にまたはこの表面の上方に層および/または構成部材を配置または生成することによって、複合構造体の生成が行われる。この場合、露出する表面は分離すべき固体層の構成部分である。好ましくは、複合構造体の生成前に、剥離面を形成するための改質部が生成される。さらに、固体内に応力を発生するために外力を固体に加えることができる。この場合、外力は、応力が剥離面に沿って亀裂を広げるような強さである。
【0020】
本発明に係る、付加的にまたは代替的に、電気的な要素を生成するための方法は、好ましくは、少なくとも、剥離面を形成するためにレーザー光線によって固体の内部に多数の改質部を生成するステップを有し、この場合改質部によって固体内に圧縮応力が発生させられ、さらに、固体の最初に露出する表面上にまたはこの表面の上方に層および/または構成部材を配置または生成することによって複合構造体を生成するステップを有し、この場合露出する表面が分離すべき固体層の構成部分であり、さらに、改質部によって形成された剥離面に沿って残りの固体と固体層を分けることにより、固体層を分離するステップを有し、この場合圧縮応力を発生する改質部の少なくとも構成部分が固体層上に残り、この場合固体層が改質部に基づいて固体から剥離されるほど多くの改質部が生成され、この場合固体内に他の応力を発生するために、外力が固体に加えられ、この場合外力は、応力が改質部によって形成された剥離面に沿って亀裂の広がりを生じるような強さであり、分離された固体層内に好ましくは固体層を変形するための圧縮応力が存在し、この場合この圧縮応力が固体層内に残る改質部の構成部分によって発生させられ、さらに、残りの改質部構成部分によって生じる固体層の変形を少なくとも部分的に相殺するためにあるいは改質部構成部分によって発生した圧縮応力を相殺するために、固体からの固体層の分離によって露出する表面に材料層、特に金属層を生成するステップを有する。同様に好ましくは、最初に露出する固体の表面上にまたはこの表面の上方に層および/または構成部材を配置または生成することによって複合構造体の生成が行われる。この場合、露出する表面は分離すべき固体層の構成部分である。剥離面を形成するための改質部が好ましくは複合構造体の生成の前に生成される。さらに、固体内に応力を発生するために外力を固体に加えることができる。この場合、外力は、応力が剥離面に沿って亀裂の広がりを生じるような強さである。
【0021】
分離の結果露出する固体層の表面は、本発明の有利な実施形に従って、第1表面部分を有し、この第1表面部分は1以下、特に0.9以下または0.7以下または0.5以下、特に0.01~0.4のRa値(平均粗さ)を有する。さらに、固体層の露出表面は好ましくは第2表面部分を有し、この第2表面部分は1以上、特に1~5のRa値(平均粗さ)を有する。その際、第1表面部分の割合は好ましくは第2表面部分の割合よりも大きい。この場合、第2表面部分は、第1表面部分と第2表面部分によって形成された全体面積の少なくとも1%または少なくとも2%または少なくとも5%または少なくとも10%または1~49%または1~40%または1~30%または1~20%を形成する。この解決策は、例えば研削またはラッピングのような他の表面調整なしに、固体層自体が部分によって1~5のRa値を有し、さらに加工可能であるので有利である。
【0022】
材料層、特に金属層は、本発明の他の有利な実施形に従って、第1状態(Aggregatzustand)でおよび室温よりも高い温度で固体層上に生成され、そして室温で第2状態にあり、この場合第1状態から第2状態への移行によって、金属層が、残りの改質部分の圧縮応力によって生じる固体層の変形または圧縮応力を少なくとも部分的に、好ましくは完全に取り除く。代替的に、金属層は室温よりも高い温度範囲で固体層上に生成され、この場合温度範囲が室温よりも少なくとも100°Cまたは150°Cまたは200°Cまたは250°Cまたは300°Cまたは350°Cまたは400°Cだけ高く、特に好ましくは最高で2000°C以下であるかまたは固体材料の溶融温度または蒸発温度よりも低く、この場合金属層を室温に冷却することによって、残りの改質部分の圧縮応力によって生じる固体層の変形が少なくとも部分的に、好ましくは完全に取り除かれるかあるいは固体層の圧縮応力が取り除かれる。それにより、金属層の冷却および/または硬化によって、力、特に引張り力が発生する。この引張り力は好ましくは、圧縮応力によって生じた変形に対してネガティブに固体層を変形するかまたは圧縮応力を相殺する。圧縮応力は好ましくはボウ(Bow)と呼ばれる変形を生じる。この場合好ましくは20°Cが室温として定められる。この場合、室温は、好ましくは0~100°Cまたは20~200°Cであるプロセスルーム内の温度であってもよい。
【0023】
金属層は、本発明の他の有利な実施形では、スパッタリングまたは電気化学的な被膜形成によって生成される。好ましくは、例えばチタン、チタン-タングステン、ニッケル、白金、TaSi2および/または金のような、改質構成部分を有するSiC固体層で知られているスパッタリング材料または電気化学的被膜形成のための使用可能な材料が使用される。その際、金属層の厚さは好ましくは、固体層の厚さ、固体層の材料、固体層の面積、改質部の数および種類のようなパラメータによって決定される。
【0024】
固体は、本発明の他の有利な実施形では、シリコンカーバイド(SiC)からなっているかまたはシリコンカーバイド(SiC)を備えている。この場合、固体層は好ましくは200μm以下の厚さで、特に150μm以下の厚さでまたは125μm以下の厚さでまたは100μm以下の厚さでまたは90μm以下の厚さでまたは75μm以下の厚さで、固体から分離される。この解決策は、ここで提案された方法によってSiCをきわめて良好に使いこなすことができ、それによって電気的な要素を生成する際に材料損失がきわめて少なく、処理装置の摩耗がきわめて小さいので有利である。
【0025】
電気的な要素は、本発明の他の有利な実施形では、垂直な構成要素、特にショットキーダイオードおよび/または金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)であり、この場合金属層が電気接触部、特にオーム接触部を形成しおよび/または熱排出のためのインターフェースを形成している。この実施形は、垂直な構成要素が本発明によって比較的に少ない材料損失および摩耗損失(例えばSiCの使用によって)で、従って容易に生成可能であるので有利である。これは、エネルギ効率がよく低価格の電気的な構成部品を生成することを可能にする。
【0026】
電気的な要素は、本発明の他の有利な実施形では、水平な構成要素、特に高電子移動度トランジスタ(HEMT)であり、この場合金属層が好ましくは熱排出のためのインターフェースを形成している。この実施形は、この構成部品が小型、軽量および低コストで製作可能であるので有利である。
【0027】
本発明の他の有利な実施形では、固体層の平らな表面側のcm2あたり、平均して、多数の電気的な要素、特に少なくとも4個または少なくとも9個または少なくとも36個または少なくとも100個の電気的な要素が生成され、この場合電気的な要素がその生成後好ましくはダイシングによって互いに分離される。この実施形は、電気的な要素が迅速にかつきわめてやさしく互いに分離可能であるので有利である。個々の電気的な要素が四角形、特に正方形の底面を有していると有利である。電気的な要素は好ましくは0.1~5mmの外側エッジを有する。
【0028】
本発明の有利な実施形では、外力を加えるために、受容層が複合構造体の露出表面に配置され、受容層がポリマー材料を有し、受容層が固体内に応力を特に機械的に発生するために熱負荷され、この熱負荷が周囲温度の下方の温度に受容層を冷却することであり、この場合受容層のポリマー材料が部分的なまたは完全な結晶化および/またはガラス転移を行うように、冷却が実施され、応力によって、亀裂が固体内で剥離面に沿って広がり、この亀裂が最初の固体層を固体から分離するかあるいは超音波による固体の付勢によって外力が固体に加えられ、この場合固体が好ましくは液体を充填した容器内に配置されている。超音波は20~100kHzの周波数範囲でまたは100kHzから1MHzまでの周波数範囲を有する高周波音範囲で使用可能である。この周波数に基づいて、液状媒体内の固体に、例えば崩壊するキャビテーションバブルのような続発現象によってキャビテーション過程を生じると有利である。液状媒体内で、特に相境界範囲内で、ダイナミックに形成されるキャビテーションバブルの破裂および変形とマイクロジェットの形成がナノ秒範囲で生じることになる。場所毎のエネルギ放出は、ガスのきわめて迅速な圧縮による小さな空間での断熱的な加熱の形で行われる。この場合、5000ケルビン以下の極端な温度と、500バール以下の圧力が発生する。この圧力は、そうしないと発生しない新しい物理的反応を、境界層の範囲内で可能にする。きわめて大きなこの圧力差は、外側へのバブルフロントの反動(破裂する衝撃波)から生じる。この場合、この範囲での反応速度が非常に高められることになる。本発明に従い、場所毎にCNC制御して超音波ピークを供給する(ソノトロード)ときわめて有利である。この超音波ピークは亀裂誘発および/または亀裂形成の影響を適切にもたらすことができる。亀裂誘発および/または亀裂形成のために、場所毎の圧力付勢を適切に利用することができる。
【0029】
均一なおよび/または場所毎の実施形が有利である。というのは特に受容層を使用する場合、きわめて正確に力を加えることができ、それによって亀裂の誘発および/または亀裂の形成を生じることできるからである。
【0030】
固体は、本発明の他の有利な実施形では、剥離面の発生前に少なくとも1つの高温方法で処理され、この高温方法は70°Cと、固体の材料の溶融温度または蒸発温度との間の温度で実施される。
【0031】
それによって、部分的に処理されたウェハにおいてレーザーステップを実施することは、他の可能性を示し、これは本発明に従い、高温ステップの後でかつ残りのプロセスの前にきわめて有利に実施される。この解決策は、レーザー方法によって損傷し得る構造体がまだすべては形成されていないので有利である。
【0032】
この場合、レーザー方法のパラメータは、固体内の応力ができるかぎり最小限に抑えられるように最適化可能である。これは例えばレーザーを固体にやさしく多数回照射することによって、より大きな線間隔によっておよびすべての通過の際に小さくなるエネルギによって達成される。
【0033】
レーザープロセスは好ましくは基板の結晶学的配向に依存して実施される。すなわち、レーザー改質部は特に有利にはできるだけ、処理の途中で生じる微小亀裂がリソグラフィを妨害せず、また改質面上に過剰に開口せず、そして分離亀裂を誘発した後で基板損失を生じ得るように形成される。この場合例えばSiCでは、第2切断で線がそれに対して90°の方向に亀裂を最終的に誘発して分離面を定める前に、亀裂面を定めるために、第1線を好ましい亀裂方向に対して平行に形成することができる。
【0034】
剥離面の生成前に高温ステップを実施することはきわめて有利である。なぜなら、70°C以上の温度の明確な上昇が、ドープ原子、金属不純物と合金の原子または他の結晶構造エラーの変動性を高めるからである。剥離面が高温ステップの前に生成されるかまたは部分的に生成されると、例えばそれによって発生した微小亀裂は固体内または分離すべき固体層内にさらに延在するかまたは入り込む。それによって、多くの材料を切除しなければならず、それに伴い大きな損失が発生する。
【0035】
少なくとも1つの高温方法は、本発明の他の有利な実施形では、エピタキシャル成長方法、ドープ方法またはプラズマを用いた方法である。高温方法とは、70°C以上の温度で実施されるすべての方法、特に材料堆積方法であると理解される。発生する温度は好ましくは2000°C未満であるかまたは固体材料の溶融温度または蒸発温度未満である。高温方法によって好ましくは、固体材料からなる多層構造体と、生成または配置された1つまたは少なくとも1つの層が形成される。
【0036】
本発明の他の有利な実施形では、高温方法によって、少なくとも1つの層が固体上に生成され、少なくとも1つの生成された層が予め定めたパラメータを有し、少なくとも1つの予め定めたパラメータがレーザー光波の屈折および/または吸収および/または反射および/またはレーザー光波の光電効果による荷電体発生の最大度合いを定め、屈折および/または吸収および/または反射および/または光電効果による荷電体発生の度合いが5%以下、好ましくは1%以下、特に好ましくは0.1%以下である。この実施形は、回路のすべての金属要素とレーザー光の相互作用が阻止されるので有利である。金属層または金属構成部材とレーザー光またはレーザー光線との間の相互作用の結果、金属層および/または構成部材は特に導電接続部を損傷し得る。
【0037】
さらに、この実施形によって、他の問題が解決される。すなわち、レーザー面を入れる際、金属構造体または構成部材(例えばレーザー侵入方向において20nmよりも大きな縦方向寸法または長さ)が既に基板上に配置または生成されているときに、例えば透過が理想的ではないので、レーザープロセスが構造体での戻り反射によってまたは構造体自体によって妨害されるという問題が解決される。好ましくは金属改質部の生成のために、マルチ光子プロセスが使用されるので、必要な高い強度と、同時にできるだけ妨害されない波先を可能にするためには、材料内の焦点は非常に正確、特に理想的でなければならない。それによって、この利点は、最終的な構造体、特に層および/または構成部材の処理または生成の前のレーザー処理にプラスとなる。
【0038】
改質部は、本発明の他の有利な実施形では、好ましくは多光子励起、特に二光子励起によって生成される。
【0039】
先ず最初に、多数のベース改質部が少なくとも部分的に均一に延在する、特に湾曲した線に沿って、特に均一に延在する区間において生成されると有利である。このベース改質部は好ましくは、有利なプロセスパラメータによってまたは有利なプロセスパラメータに依存して生成される。予め定めたプロセスパラメータは好ましくは少なくともパルス時間、パルスエネルギ、線内のパルス間隔、線の相互の間隔、深さおよび/または開口数を含んでいる。このプロセスパラメータの少なくとも1つの値と、好ましくはこのプロセスパラメータの複数の値またはすべての値あるいはこのプロセスパラメータの2つよりも多い値は好ましくは、固体の結晶格子安定性に依存して定められる。その際、値は、結晶格子がそれぞれのベース改質部の周りで無傷のままであるように、すなわち亀裂が20μm以下または10μm以下または5μm以下または1μm以下に入るように選定されていると特に有利である。
【0040】
本発明の他の有利な実施形では、臨界以下の亀裂を誘発するために誘発改質部が生成され、この場合誘発改質部を生成するための少なくとも1つのプロセスパラメータがベース改質部を生成するための少なくとも1つのプロセスパラメータとは異なっており、好ましくは複数のプロセスパラメータが互いに異なっている。それに加えてまたは代替的に、誘発改質部が、ベース改質部を生成する線の延在方向に対して傾斜したまたは離隔された方向に生成され、この場合臨界以下の亀裂が5mm以下または4mm以下または3mm以下または2mm以下または1mm以下または0.5mm以下だけ広がっていると有利である。この場合、傾斜配向は例えば0~90°の角度に相当し、好ましくは85~90°の角度、特に好ましくは90°の角度に相当する。
【0041】
臨界強度(すなわち出力/面積)を超えるときに引き起こされる閾値プロセスが問題である。すなわち、閾値強度を達成するために、短いパルスはエネルギ/パルスをあまり必要とせず、高い開口数はエネルギを小さな点に集中する、すなわち低いエネルギを必要とする。
【0042】
大きな深さは大部分が吸収損失を意味する。従って、エネルギを再び次のように適合させなければならない。すなわち、例えばSiCの場合、NA=0.4、180μm深さ、3nsパルス長、パルスエネルギ約7μJであるが、350μm深さのときは9μJとなるように適合させなければならない。
【0043】
一般的に、硬い材料(サファイア、酸化アルミニウムセラミックス、SiC、GaN)は線内により大きなパルスオーバーラップ、すなわち小さなパルス間隔(≦1μm)を必要とし、そのために線間隔は傾向から見て大きく(例えば>5μm)選定される。一方、GaAs、Siのような軟らかい材料はより大きなパルス間隔(>1μm)を必要とし、そのために小さな線間隔(<5μm)を必要とする。
【0044】
fsパルスを有するSiCの実例:約800nJのパルスエネルギ、50nmおよびそれよりも大きく200nm以下のパルス間隔、次のような線実例:1μm間隔を有する30本の線、そして20μmの隙間、そして再び30本の線、そして96μmの隙間そして前から交叉して30本の線、20μmの隙間、そして30本の線(線の間の間隔は常に1μm)、そして300μmの隙間、そして再び30/20/30個の線ブロック。深さ180μm、(単位面積抵抗によって特徴づけられた、>21mOhmcm)SiCのドープ度合い、パルス長400fs、開口数0.65。
【0045】
固体材料は有利な実施形ではシリコンである。この場合、開口数は0.5~0.8、特に約0.65であり、入射深さは150~1500μm、特に約300μmであり、パルス間隔は1~5μm、特に約2μmであり、線間隔は1~5μm、特に約2μmであり、パルス時間は50~400ns、特に約300nsであり、パルスエネルギは3~30μJ、特に約10μJである。
【0046】
固体材料は有利な実施形ではSiCである。この場合、開口数は0.4~0.8、特に約0.4であり、入射深さは50~500μm、特に約180μmであり、パルス間隔は0.1~3μm、特に約1μmであり、線間隔は10~100μm、特に約75μmであり、パルス時間は100fs~10ns、特に約3nsであり、パルスエネルギは0.5~30μJ、特に約7μJである。
【0047】
実例酸化アルミニウムセラミックス:パルス間隔500nm、線間隔10μm、パルス時間3ns、パルスエネルギ22μJ、NA=0.4。
【0048】
実例サファイア:3倍描かれた、0°、45°、90°の線、この線はそれぞれ1.5μmの線間隔、パルス間隔300nm、第1通過部のパルスエネルギ350nJ、第2通過部300nJ、第3通過部250nJ、NA0.65、パルス時間250fs。
【0049】
一般的に、表面粗さはパルスが短くなるにつれて低下し、フェムト秒パルスはナノ秒パルス(3μm以上)よりも良好な表面(3μm以下の粗さ)を生じることできる。その代わり、プロセスは高価で長い時間がかかる。ピコ秒パルスは中間である。短いパルスの利点は、相転位が無熱で行われる、すなわちレーザーパルスと結晶格子の間の結合が行われることである。それによって、少ない振動(フォノン)を励起する、すなわちプロセス全体が低温で経過する。そのためには、より大きな範囲を非結晶化(相転位)しなければならない。それによって、亀裂を引き起こす臨界応力が増大する。
【0050】
本発明の他の有利な実施形では、5~200μm、特に10~100μmまたは10~50μmまたは10~30μmまたは20~100μmまたは20~50μmまたは20~30μmの臨界以下の亀裂が固体内で広がる。この実施形は、小さな亀裂の広がりが必要とする後加工コストが少ないという利点がある。臨機以下の亀裂は結晶格子境界に沿って広がり、固体の結晶格子が分離面に対して特に0~6°の角度で傾斜しているので、断面が鋸歯状の表面を生じる。亀裂が広ければ広いほど、この鋸歯状表面の谷と尖端の間の間隔が大きくなる。それによって、80nmよりも小さな表面粗さまたは50nmよりも小さな表面粗さまたは20~50nmの表面粗さを生成すべきときには、ますます多くの材料を除去しなければならない。従って、臨界以下の亀裂の広がりは本発明の他の実施の形態では、レーザー光線の入射方向に対して、90°の角度とは異なる傾斜した方向に延び、特に亀裂広がり方向は好ましくは入射方向に対して93~95°、特に94°だけ傾斜している。
【0051】
本発明の他の有利な実施形では、例えばガラス転移または超音波処理によって発生する応力のためまたは外力を加えた結果、臨界以下の亀裂が広がる、複数の線の範囲の間の区間に亀裂が入る。この実施形は、その前に生じた固体内部の事前損傷に基づいて、特に臨界以下の亀裂に基づいて、必要な応力が非常に小さくて済むという利点がある。さらに、亀裂が非常に正確に形成される。
【0052】
受容層は本発明の他の有利な実施形に従って、固体の表面に配置または生成される。この固体の表面は、複合構造体を形成するために層および/または構成部材を配置した固体の表面とは反対の側にある。
【0053】
亀裂を誘発する前に、好ましくは他の層および/または構成要素を配置していない固体の側に、特にポリマーフィルムの形をした方法に係る受容層が取付けられる。
【0054】
本発明の他の有利な実施形に係る受容層は質量的に少なくとも大部分がおよび好ましくは全部がポリマー材料からなっている。この場合、ポリマー材料のガラス転移は-130~0°C、特に-85~-10°Cまたは-80~-20°Cまたは-65~-40°Cまたは-60~-50°Cで行われる。
【0055】
本発明の他の有利な実施形では、受容層のポリマー材料がポリマーマトリックスを形成するポリマーハイブリッド材料からなっているかまたはこのようなポリマーハイブリッド材料を備えている。この場合、ポリマーマトリックス内には充填材が設けられ、ポリマーマトリックスは好ましくはポリジメチルシロキサンマトリックスであり、ポリマーハイブリッド材料におけるポリマーマトリックスの質量割合は好ましくは80~99%、特に90~99%である。
【0056】
従って、本発明では、スプリッティング方法で使用するためにポリマーハイブリッド材料が提示される。このスプリッティング方法では、固体出発材料から少なくとも2つの固体部分が生成される。本発明に係るポリマーハイブリッド材料は、ポリマーマトリックスとその中に埋め込まれた少なくとも1つの第1充填材を含んでいる。以下において充填材が話題になるときには、同様に複数の充填材を含むことができる。例えば充填材は、いろいろな材料の混合物、例えば金属酸化物、金属粒子および無機の繊維の混合物を含むことができる。
【0057】
ポリマーマトリックスとして、すべてのポリマーまたはいろいろなポリマーの混合物を使用することができる。このポリマーマトリックスによって、固体出発材料の分割のために必要な応力を発生することができる。例えばポリマーマトリックスは好ましくはエラストマーマトリックスとして、好ましくはポリジオルガノルシロキサンマトリックス、特に好ましくはポリジメチルシロキサンマトリックスとして形成可能である。このようなポリマー材料はマトリックス材料として充填材と組み合わせて簡単に使用することができる。というのは、変更可能な網目状結合度合いに基づいて特性をフレキシブルに調節することができ、その都度の充填材および分割すべき固体出発材料に適合させることができるからである。変形実施形では、ポリマーハイブリッド材料におけるポリマーマトリックスの質量割合は80~99%、好ましくは90~99%である。
【0058】
第1充填材は有機または無機の自然の物でもよいし、または化学的元素および化合物または物質混合物、例えば合金からなっていてもよい。
【0059】
第1充填材は、分割後固体部分からポリマーハイブリッド材料を剥離する間、反応物、イニシエータ、触媒またはプロモータとして作用するように構成され、それによって第1充填材なしのポリマー材料と比較して、分割後ポリマーハイブリッド材料が固体部分から迅速に剥離されることになる。
【0060】
その際、第1充填材の具体的な化学的組成および形成とその質量割合は特に、剥離されるポリマーマトリックスの具体的な材料、そのために使用される溶剤および使用される反応物に左右される。さらに、固体出発材料の材料と、分割すべき固体出発材料の寸法は重要ではない。
【0061】
ポリマーマトリックス内における第1充填材の具体的な割合は、充填材の材料とその作用に大きく左右される。一方では、ポリマーマトリックスは充填材にもかかわらず応力発生のその課題を考慮しなければならない。他方では、第1充填材の割合は、ポリマー除去の得ようする影響を達成するために十分な大きさでなければならない。専門家は、濃度に依存して実施される簡単な試験の範囲内で、第1充填材のその都度最適な質量割合を決定することができる。
【0062】
例えばポリマー内の無機の網状組織の形をした発熱性珪酸のような他の充填材が付加的に、機械的な特性を改善するために寄与することができる。網状組織の形をしたこの強い相互作用のほかに、あまり強くない相互作用も、流体動力学的な増幅によって改善のために寄与することができる。ここでは例えば、粘性の適切な上昇を挙げることができる。この粘性はスプリッティング方法において改善された加工を可能にし、従って製作誤差の改善に寄与する。さらに、この相互作用によって、補強を増大した構造的な配向変更に関する内部の自由度が困難になる。
【0063】
これは、ポリマーハイブリッド材料内での使用ポリマーのガラス転移温度の所望な低下をもたらすことになる。これは、スプリッティング方法において低い温度の利点を可能にする。本発明では、第1充填材がポリマーハイブリッド材料内で固体部分からのポリマーハイブリッド材料の剥離を加速するために使用される。この固体部分は、固体出発材料を少なくとも2つの固体部分に分割するスプリッティング方法を用いた分割によって得られる。
【0064】
第1充填材はポリマーマトリックス内に次のように分配可能である。すなわち、第1充填材の質量割合が、スプリッティング方法の間固体出発材料に連結されているポリマーハイブリッド材料の外側の、すなわち下側の境界面から出発して、下側の境界面に対して平行に配置されたポリマーハイブリッド材料の他の境界面の方へ低下するように分配可能である。これは、固体出発材料または部分の近くの充填材の質量割合が、ポリマーハイブリッド材料の残りの範囲よりも大きいことを意味する。第1充填材のこの分配は、分割後のポリマーハイブリッド材料のきわめて効果的な除去を可能にする。というのは、第1充填材が固体部分に対する境界面の近くにあり、そこでその作用を発揮することができるからである。同時に、ポリマーハイブリッド材料の残りの範囲は第1充填材の割当量をあまり有していないかまたは全く有していない。従って、ポリマーの機能が受ける影響がわずかである。
【0065】
実施形では、ポリマーハイブリッド材料は層状に形成されている。この場合、固体出発材料寄りの層だけが第1充填材を有し一方、残りのポリマーハイブリッド材料は第1充填材を有していない。
【0066】
さらに、下側の境界面に接するポリマーハイブリッド材料の下側範囲は、第1充填材を有していない。それによって、次のような範囲順序が生じる。固体出発材料に隣接して先ず最初に、第1充填材のない範囲があり、それに続いて高い割合の第1充填材を有する範囲があり、その後第1充填材の割合の低いかまたは第1充填材のない範囲が続いている。
【0067】
これらの範囲と次に説明するすべての範囲は、層の形に形成可能である。すなわち、範囲は、ポリマーハイブリッド材料を取付けた固体出発材料の境界面に対して主として平行に延在し、少なくともこの境界面の範囲内に縦方向寸法および横方向寸法を有する。
【0068】
充填材のない下側範囲は特に、第1充填材が固体出発材料上のポリマーハイブリッド材料の付着を悪化させる場合のために設けることができる。これを回避するために先ず最初に、第1充填材のない範囲が配置され、この範囲に続いて高い割合の第1充填材を有する範囲が設けられ、それによって第1充填材はその機能を発揮することができる。第1充填材のない下側層は例えば10~500μm、例えば100μmの厚さを有することができる。
【0069】
さらに、ポリマーハイブリッド材料の上側境界面に直接接するポリマーハイブリッド材料の上側範囲は第1充填材を備えていなくてもよい。その際、上側境界面とは、下側境界面や固体出発材料とは反対の側で、ポリマーハイブリッド材料を周囲に対して画成する境界面であると理解される。下側と上側の境界面は、互いに平行には配置可能である。
【0070】
第1充填材のないこのような上側範囲は特に、第1充填材が周囲とポリマーハイブリッド材料の間の熱伝達に不利な影響を及ぼすとき、例えばポリマーハイブリッド材料の冷却が滞るときに設けることができる。
【0071】
第1充填材は、ガス状生成物を放出しながら反応剤、好ましくは酸化剤と反応することができる材料を含んでいるかまたはこの材料からなっている。
【0072】
それによって、ポリマーマトリックス内に窪みを発生することができる。この窪みは、ポリマーマトリックスと場合によっては設けられる犠牲層に対する反応物と溶剤の迅速なアクセスを可能にし、さらに遊離体と溶解した成分の迅速な搬出を生じる。
【0073】
ガス状反応生成物の発生によって、ポリマーハイブリッド材料の除去をさらに補助する付加的な駆動力を加えることができる。
【0074】
付加的な窪みの形成およびガス状反応生成物の発生は、ポリマー除去を加速し、それによってスプリッティング方法の全収量を増大させるために寄与する。第1充填材の割合を変更することにより、固体部分とポリマーハイブリッド材料の間または犠牲層とポリマーハイブリッド材料の間の境界範囲内の窪み密度に適切に影響を及ぼすことができる。
【0075】
第1充填材は金属、特にアルミニウム、鉄、亜鉛および/または銅を含んでいるかまたは金属、特に上述の金属からなっている。
【0076】
上述の材料に関して、「からなっている」は、例えば充填材の作成およびポリマーマトリックス上での充填材の分布または取付けのために役立つ技術的に規定された不純物または技術的に規定された添加剤を含むことができる。
【0077】
金属充填材は、ガス状産物を放出しながら、例えば塩酸、硝酸、クエン酸、蟻酸またはスルファミン酸のような酸化剤と反応することができ、それによってポリマーハイブリッド材料から除去可能である。
【0078】
例えばアルミニウムは、次の式に従って、溶媒された金属イオンと水素を形成しながら、濃縮された塩酸と反応する。
6HCl+2Al+12H2O→2[AlCl3
*6H2O]+3H2
【0079】
類似の方法で、充填材としての亜鉛の反応が、濃縮された塩酸との反応によって、付加的な窪みを形成することになる:Zn+2HCl→ZnCl2+H2。上記の例では、水素の発生によって、付加的な駆動力が加えられる。この駆動力はポリマーハイブリッド材料の除去をさらに補助する。さらに、第1充填材は、例えばそれがポリマーマトリックスのポリマーよりも高い熱伝導性を有することにより、ポリマーハイブリッド材料内の熱伝導性を改善することができる。これは例えば、第1充填材が金属を含む場合に、ポリマーハイブリッド材料内の改善された熱伝導性に他の利点がある場合である。それによって、改善された熱伝導性により、固体出発材料の分割のために冷却によって発生させられる応力を、効果的に、すなわち迅速にかつ冷却剤の少ない消費で発生することができる。これはスプリッティング方法の全収量を高めることができる。
【0080】
さらに、ポリマーハイブリッド材料内に第2充填材を設けることできる。この第2充填材は、第2充填材なしのポリマーハイブリッド材料と比較して、固体出発材料上におけるポリマーハイブリッド材料の付着作用を高める。付着作用が充填材なしのポリマー材料と比較して高められると有利である。
【0081】
第2充填材は例えば、プラズマによって活性化可能な充填材である。プラズマ活性化によって、新しい種類の表面が生じる。この表面は、固体出発材料の表面との強い相互作用を生じ、結果的にポリマーハイブリッド材料の付着作用を改善するように作ることができる。
【0082】
その際、プラズマ処理によって得ることできる表面の種類は主として、プラズマプロセスの処理法に依存する。例えばプラズマ処理中に、窒素、酸素、シランまたは塩化シランのようなガスを添加することができる。それによって例えば、固体出発材料の表面と強く相互作用可能な対極的な基が発生する。
【0083】
第2充填材は、その質量割合が下側の境界面の方へ増大するように、ポリマーマトリックス内に分配可能である。ポリマーハイブリッド材料は例えば、下側境界面に接する範囲にのみ第2充填材を含むことができる。この範囲は上述の定義に従って層として形成可能である。
【0084】
これは、好ましくはポリマーハイブリッド材料と固体出発材料の間の境界面の近くに、第2充填材を配置することを可能にする。それによって、付着作用が改善され、それに伴い分割すべき固体出発材料への大きな力伝達が可能になる。第2充填材は例えばコアシェルポリマー粒子を含んでいてもよい。
【0085】
その際、特にコアシェル粒子の表面、すなわちシェルが例えば低温プラズマによって強く活性化可能であるように、粒子のポリマー組成がポリマーハイブリッド材料のポリマーマトリックスと相違していると有利である。
【0086】
そのための例は、アクリル酸塩シェルを有するポリシロキサンコアを含んでいるかまたはエポキシドシェルを有するナノスケールの珪酸塩コアを含んでいるかまたはエポキシドシェルを有するゴム粒子コアを含んでいるかまたはエポキシドシェルを有するニトリルゴム粒子コアを含んでいるコアシェル粒子である。第2充填材は低温プラズマ、例えば常温プラズマによって活性化可能である。プラズマは例えば誘電バリヤ放電(DBE)によって発生可能である。この場合、電子密度は1014~1016m-3の範囲内で発生可能である。DBEによって発生した「常温の」非平衡プラズマ(プラズマ容積)の平均温度は周囲圧力の場合約300±40Kである。DBEによって発生した非熱プラズマの平均温度は周囲圧力の場合約70°Cである。
【0087】
DBE処理の場合、表面には、例えば一桁または二桁のキロボルト範囲の振幅を有する単極パルスまたは双極パルスが小数のマイクロ秒から数十のナノ秒までのパルス時間供給される。この場合、放電室内の金属電極とそれに伴い金属不純物または電極摩耗は予想されない。
【0088】
さらに、高い効率が有利である。というのは、荷電体を電極に発生する必要がないからである。
【0089】
誘電性表面は低い温度で改質可能および化学的に活性化可能である。表面改質は例えば、イオンボンバードメントによる表面種類の相互作用および反応によって達成可能である。
【0090】
さらに、例えば所定の化学的な基本を表面に発生するために、プラズマ処理時に、例えば窒素、酸素、水素、シランまたは塩化シラン、例えばE=F、Cl、Br、I、O、Hおよびx=0~10、z=0~10のSixHyEz:SiH4、Si(EtO)4またはMe3SiOSiMe3のような適切なプロセスガスを供給することができる。第2充填材はさらに、コロナ処理、火炎処理、フッ素処理、オゾン処理、UV処理またはエキサイマ照射によって活性化可能である。このような活性化によって、例えば第2充填材の表面に極性の基が生成される。この基は固体出発材料の表面と相互作用することができ、付着作用を改善する。ポリマーハイブリッド材料は、第1充填材を有するポリマーハイブリッド材料または第1および第2充填材を有するポリマーハイブリッド材料と比べて、さらに第3充填材を含むことができる。この第3充填材はポリマーマトリックのポリマーと比べて、より高い熱伝導性および/またはより高い弾性係数を有する。
【0091】
ポリマーの弾性係数は例えば低温条件で下側の一桁のギガパスカル範囲(約1~3GPa)であり一方、例えば金属充填材は二桁から三桁のギガパスカル範囲の弾性係数を有する。充填材割合が高い場合、浸出する充填材網が可能である。これは固体出発材料内に「力を込めること」を改善することができる。
【0092】
浸出はそれぞれの充填材の容積充填度合いによって影響を受ける(例えば横縦比に応じて0.1容積%、1.30~10容積%)。加える力が増大するにつれて、ポリマー構造体の粘弾性層構造を取り替えることができ、複数の浸出パスが有効になる。この場合、熱伝達を改善することができる。というのは、固体出発材料の表面と充填材の接触が改善されるからである。
【0093】
ポリマーハイブリッド材料の機械的な安定性は、低い温度でも迅速に達成される。総体的に、例えばポリマーハイブリッド材料の破壊応力や破壊ひずみのような構造体特性プロファイルの標準偏差が小さくなり、それによってスプリッティング方法の全体収量が高められる。場所毎の特性プロファイル変化(ポリマーハイブリッド材料と固体内の応力ピーク)は小さい。これは、スプリッティング方法の全体収量を増大させ、生成された固体部分の品質を改善することになる。
【0094】
第3充填材は周囲とポリマーハイブリッド材料の間の熱伝達を改善し、ポリマーハイブリッド材料内への迅速な熱導入を生じることになる。それによって、ポリマーハイブリッド材料を迅速に冷却することができ、そしてスプリッティング方法を迅速かつ効果的に実施することができる。
【0095】
弾性係数を高めることにより、固体出発材料の分割のために大きな応力を発生することができるので、きわめて大きな応力を必要とする固体出発材料も分割することができる。
【0096】
第3充填材はさらに、熱膨張率に影響を及ぼす働きもする。その際の目的は、分割のために必要な付加的な応力を発生することができるようにするために、ポリマーハイブリッド材料の熱膨張率と分割すべき固体出発材料の熱膨張率の間の差をできるだけ大きくすることである。第3充填材は好ましくは、高い熱膨張率、すなわちポリマーマトリックスの熱膨張率よりも高い熱膨張率を有する。第3充填材の熱膨張率は例えば300ppm/Kよりも大きい。
【0097】
第3充填材は、特に周囲との境界面において迅速な熱伝達を可能にするために、第3充填材の質量割合が上側境界面の方へ増大するように、ポリマーマトリックス内に分配可能である。
【0098】
第3充填材は金属、特にアルミニウム、鉄、亜鉛および/または銅を含んでいるかまたはこれらの金属の1つからなっている。金属は一般的に熱伝導率が高い。
【0099】
上記の充填材(第1、第2、第3充填材)は粒子の形態でポリマーマトリックス内に分配されている。この場合、粒子の大きさは、粒子の少なくとも1つの寸法に関してμm範囲およびnm範囲である。充填材粒子は球状の形のほかに、他の形、例えば小さな棒状または円板状の形をしていてもよい。
【0100】
充填材粒子はあらゆる粒子大きさ分布、例えば単一形式、二形式、狭い、特に単一分散または広い分布を有することができる。充填材はポリマーマトリックスに、例えばポリマー網内への埋め込みによって物理的におよび化学的に結合可能である。さらに、上記の充填材の1つまたは複数は、上述の機能と相容れる場合、無機または有機の繊維、例えば炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維またはアラミド繊維を含んでいるかまたはこれらの繊維からなっている。上記の繊維を含んでいるかまたは上記の繊維からなっている他の充填材を、任意に追加することができる。
【0101】
繊維は一般的に強い異方性特性を有する。ポリマーハイブリッド材料内での充填材の方向に依存する位置決めにより、固体出発材料の分割のために必要な応力に対して、影響を適切に及ぼすことができる。これはスプリッティング方法の全体収量を高めるために寄与する。付加的な利点は、有機または無機の充填材が強い異方性構造を有する充填材として使用される場合に、それによってポリマーハイブリッド材料内で機械的特性の改善が達成されることにある。
【0102】
上記の充填材はさらに、コアシェル粒子を含んでいてもよいし、コアシェル粒子からなっていてもよい。それに加えてまたは代替的に、コアシェル粒子を含むかまたはコアシェル粒子からなる他の充填材を、ポリマーハイブリッド材料内に設けることができる。
【0103】
コアシェルポリマー粒子の使用は、活性化の改善のほかに、エネルギ吸収メカニズムの新しい形成を可能にする。このエネルギ吸収メカニズムは総体的に、スプリッティング方法の使用時にポリマーハイブリッド材料の衝撃耐性増大および破壊耐性増大、特に低温衝撃耐性増大をもたらし、それによって同様にスプリッティング方法の全体収量の増大に寄与することができる。例えば、ポリマーハイブリッド材料からなるフィルムの機械的な破壊が小さな確率で発生し得るので、フィルムの再使用の可能性が高まる。
【0104】
例えば、コアシェルポリマー粒子に基づく亀裂広がりの阻止により、スプリッティング方法においてフィルムの破壊が防止され、それによって再使用の道を開くことができる。
【0105】
この場合、含まれるエラストマー粒子は塑性変形し、中空室を形成する。それによって、他の付加的なエネルギを吸収することができる。同様に、マトリックスの剪断流によって、付加的なエネルギ吸収が補償可能である。これは全体的に、機械的な特性を改善する。コアシェル粒子は、一般的に1つの材料からなる球状のコアが第2材料からなるシェルによって取り囲まれていることによって優れている。シェルはコアを完全に覆っているかまたは光線を透過可能である。材料は、例えば金属のような無機の材料あるいは例えばポリマーのような有機の材料である。例えば2つの異なる金属を互いに組み合わせることができる。しかし、ポリマーからなるコアを、金属または第2ポリマーからなるシェルによって取り囲んでもよい。
【0106】
コアシェル粒子は、第1と第2の材料の特性の組合せを可能にする。例えば品質がよく低価格のポリマーコアを介して、充填材粒子の大きさと密度を決定することができ一方、金属シェルが上述のように反応することできる。さらに、コアシェル粒子の単一分散の粒子寸法分布に基づいて、コアシェル粒子の特性を予め正確に定めることができかつ調節することができる。
【0107】
さらに、1つまたは複数の充填材(第1、第2および/または第3充填材)は、工業用カーボン(カーボンブラック)、グラファイト、破砕された炭素繊維(裁断されたカーボンファイバ)、炭素ナノ繊維(カーボンナノファイバ)の形をした炭素、好ましくは例えば多壁状炭素ナノ小管(マルチウォールドカーボンナノチューブ、MWCNT)および単壁状炭素ナノ小管(シングルウォールドカーボンナノチューブ、SWCNT)のような炭素ナノ小管(カーボンナノチューブ、CNT)の形をした炭素を含んでいるかまたはこの炭素からなっている。炭素ナノ小管は、異なる数の円筒から構成された円筒状のグラファイト層である。
【0108】
この小管が1個の円筒だけからなっていると、この小管はシングルウォールドカーボンナノチューブ(SWCNT)と呼ばれる。2個以上の円筒が存在すると、ダブルウォールドカーボンナノチューブ(DWCNT)またはマルチウォールドカーボンナノチューブ(MWCNT)が生じる。この円筒は好ましくは互いに同心的に組合せられている。
【0109】
若干の変形実施形に従って、第3充填材はMWCNTを含んでいるかまたはこのMWCNTからなっている。というのは、このMWCNTがきわめて高い熱伝導率(>3000W*(m*K)-1)を有し、同時に5~60GPaの範囲内のきわめて高い亀裂強度を有するからである。その際、高い機械的安定性は充填材の高い亀裂値、外部弾性およびきわめて良好な耐久性から明らかである。
【0110】
その根拠は、隣接する3つの炭素原子に対するπ結合としての非極限化されたp周回軌道に連結されるハイブリッド化された強いσ-C-C結合である。この場合、90度まで曲げることできる。
【0111】
SWCNTによって、さらに高い特性値が達成可能である(弾性係数:410~4150GPa、グラファイトは1000GPa、SWCNT:熱伝導率約6000W*(m*K)-1)。勿論、MWCNTと比較して出力/コスト比が悪いことが明らかである。MWCNTの円筒直径は1~100nm、好ましくは5~50nmの範囲で、長さは500~1000μmである。
【0112】
他の変形実施形に従って、第3充填材はMWCNTを含み、同時に第2および/または第1充填材は工業用カーボンを含んでいるかまたは工業用カーボンからなっている。というのは同様に、(例えば200W*(m*K)-1までの)熱伝導率の改善が達成可能であるからである。工業用カーボンの使用が0.4GPa未満の非常に小さな亀裂強度を有するので、両充填材または他の充填材からなる組合せが可能であり、かつスプリッティング方法の全体のスプリット収量の改善と、スプリッティング方法の全体コストの改善をもたらす。
【0113】
この場合、カーボン粒子(ブラックカーボン)の平均直径は、5~500nmの範囲、好ましくは20~200nmの範囲、特に好ましくは40~100nmの範囲内にある。
【0114】
さらに、充填材は珪酸、例えば発熱性珪酸を含んでいるかまたはこの珪酸からなっている。これに加えてまたは代替的に、珪酸を含んでいるかまたはこの珪酸からなっている他の充填材をポリマーハイブリッド材料内に設けることができる。
【0115】
発熱性珪酸は三次元網を形成することができ、それによって機械的安定性を改善するために寄与する。それによって、このような充填材はポリマーハイブリッド材料の機械的特性を適切に調節するために役立つ。上記の1つまたは複数の充填材(第1、第2、第3充填材)は、それに書き添えた機能と相容れる場合には、同じ材料からなっていてもよい。例えば第1充填材と第3充填材はアルミニウムを含んでいるかまたはこのアルミニウムからなっている。アルミニウムは上述のように、窪みを発生するためおよびそれによって固体部分からのポリマーハイブリッド材料の剥離を加速するめに、そして熱伝導率を高めるために使用可能である。このような実施形は製作プロセスを簡単にする。というのは、すべての機能を満足するためには、1つまたは2つの充填材を添加するだけで十分であるからである。
【0116】
第1と第2と場合によっては第3の充填材は、異なる材料からなっていてもよい。それによって、所望な機能に対する充填材の個々の、ひいては良好な適合が可能になる。
【0117】
本発明に係るフィルムは上述のようにポリマーハイブリッド材料を含んでいる。このフィルムの厚さは例えば0.5~5mmである。
【0118】
少なくともこの表面に、本発明に係るポリマーハイブリッド材料または本発明に係るフィルムが取付けられるので、相応する結合構造が生じる。取付けられたポリマーハイブリッド材料または取付けられたフィルムは以下において受容層と呼ぶ。このような受容層の厚さは例えば0.5~5mm、特に1~3mmである。ポリマーハイブリッド材料またはフィルムは、露出する複数の表面、特に互いに平行に配置された表面に任意に取り付けることができる。
【0119】
熱負荷は好ましくは周囲温度以下、好ましくは10°C以下、特に好ましくは0°C以下、さらに好ましくは-10°C以下または-40°C以下までの受容層の冷却である。
【0120】
受容層の冷却は好ましくは、受容層の少なくとも一部がガラス転移を行うかまたは部分的なまたは完全な結晶化を行うように実施される。この場合冷却は、例えば液体窒素によって生じることができる-130°Cまでの冷却である。この実施形は、受容層が温度変化に依存して収縮し、および/またはガラス転移をこうむり、その際発生する力が固体出発材料に伝達され、それによって機械的応力を固体内に発生可能であるので有利である。この応力は、亀裂を誘発しおよび/または亀裂を広げることになる。この場合、亀裂は先ず最初は固体層を分離するために第1剥離面に沿って広がる。
【0121】
他のステップにおいて、ポリマーハイブリッド材料またはフィルムが、例えば化学的反応、物理的剥離過程および/または機械的切除によって、固体部分から除去される。
【0122】
固体部分からのポリマーハイブリッド材料の剥離過程は、例えば20~30°Cの範囲の普通の周囲温度で、好ましくは30~95°C、例えば50~90°Cのより高い温度範囲であるいは1~19°Cの下側の温度範囲で行われる。
【0123】
例えばポリマーハイブリッド材料と固体の間で犠牲層を使用する場合、高められた温度範囲は、反応速度の上昇に基づいて、化学的な剥離反応の短縮を可能にする。犠牲層を使用する場合は、剥離は水溶液内で行われ、この水溶液はpH値が2~6であると有利である。異なる変形実施形では、剥離過程は例えば適切な無極の溶剤からなる溶液による処理の形で行うことができる。この場合、1~50°Cの範囲の普通の周囲温度が好ましく、20~40°Cの普通の周囲温度が特に好ましい。
【0124】
この場合、フィルムに対して温度の作用をせずに剥離すると特に有利である。この場合、例えばトルオール、nペンタン、nヘキサンのような脂肪族および芳香族の炭化水素が有利に使用可能であり、しかし例えば四塩化炭素のようなハロゲン化された溶剤も使用可能である。この場合、付加的な力が剥離すべきポリマーハイブリッド材料内におよび固体部分に対する境界面内に加えられる。というのは、溶剤処理によって、ポリマーハイブリッド材料の非常に強い可逆的な膨潤が発生し、それによって剥離が全体的に容易になるからである。
【0125】
他の変形実施形では、犠牲層の上述の剥離メカニズムおよび適切な無極溶剤による処理との組合せが行われ、同様にフィルムに対する温度作用は行われない。
【0126】
露出する層または発生した複合構造体の露出する構成部分上に、露出する層または露出する構成部分の変形を制限するための安定化層を配置または生成することができる。この場合、変形は受容層によって加えられる機械的な応力によって生じる。それによって、構成部分を有する側が保護および保持されるので有利である(例えば基板または固体の曲がりと薄暗い空間条件に対して)。これは溶解可能なポリマー(有機物)または保持層を介して行われる。この実施形は、それによって例えば小さなメムス構造体(Memsstruktur)との相互作用が制限されるので有利である。構成部分を備えたウェハの表面状態は普通は規則的ではない。これは、強すぎるかまたは急な運動の際に、領域盛り上がりと局所的な表面損傷をもたらし得る。それによって、この実施形は、固体層とその上に配置および/または生成された層および/または構成部分を、特に機械的な損傷または破壊に対して良好に保護する解決策である。
【0127】
方法は好ましくは同様にまた代替的に、次の個々のまたは複数のステップを含むことができる。少なくとも1つの固体層を分離するために固体を用意するステップ。この場合、固体は平らな第1表面部分と平らな第2表面部分を有する。この場合、平らな第1表面部分は好ましくは平らな第2表面部分に対してほぼ平行にまたはぴったり平行に配向されている。
【0128】
亀裂誘発個所を定めるために固体の内部構造に少なくとも1つの放射源、特にレーザーによって欠陥を生成するステップ。この亀裂誘発個所に基づいて、固体層が固体から分離される。
【0129】
亀裂形成案内を定めるために、少なくとも1つのレーザーのレーザー光線によって固体の内部構造に欠陥または改質部を生成するステップ。この亀裂形成案内に沿って、固体層が固体から分離される。この場合、レーザー光線は平らな第2面部分を経て固体に侵入する。
【0130】
本発明の他の有利な実施形では、安定化層が水溶性のセラミックス、特に検出剤のフォルタフィックス(Fortafix)および/または異なるおよび/または適合した鎖長を有する可溶性ポリマー、特にポリ(エチレングリコール)(PEG)からなっているかまたは備えている。フォルタフィックスは、接着剤として使用するための単一成分または二成分のセラミックセメント、腐食や化学的作用に対して保護するための釉薬、成形製作のためのまたは絶縁のための、加熱線を固定するための浸漬物質としての、例えば金属またはセラミックスグリップ内でカッターナイフを使用するための鋳造物質である。ポリマー(PEG)は水と、一連の有機溶剤に溶ける。ヘキサン、ジエチルエーテルおよび第3ブチルメチルエーテル、すなわち他の有機溶剤には溶けない。これにより、保護層を取り付ける前に、表面構造体/構成部材にPEGを充填することができる。安定化層は好ましくはその位置で生成されるかまたはフィルムとして用意される。付加的にまたは代替的に、安定化層が鋳込まれるかまたは層および/または露出する構造部材に液状材料が供給される。この液状材料は硬化または固化によって初めて安定化層になる。安定化層は付加的にまたは代替的に、溶剤を塗布することによってまたは溶剤内に浸漬することによって、層からまたは露出する構造部材から除去される。それによって、安定化層はセラミック材料を備えているかまたはそれからなり、および/またはポリマー材料を備えているかまたはそれからなっている。
【0131】
本発明の他の有利な実施形では、改質部が少なくとも1つの行、列または線に沿って順々に生成される。この場合、一行、一列また一線に沿って生成された改質部は好ましくは間隔Xをおいておよび高さHで生成され、それによって連続する2つの改質部の間で広がる亀裂、特に結晶化方向に広がる亀裂が、両改質部を互いに連結する。この亀裂の亀裂広がり方向は剥離面に対して角度Wをなしている。この角度Wは好ましくは0~6°、特に約4°である。亀裂は好ましくは第1改質部の中心の下方の範囲から、第2改質部の中心の上方の範囲へ広がっている。従って、この場合の重要な関係は、改質部の大きさが改質部の間隔と角度Wに依存して変更可能であるかまたは変更しなければならないことである。
【0132】
本発明の他の有利な実施形では、最初のステップにおいて、改質部が線に沿ってそして好ましくは等間隔で生成される。さらに、この最初のステップで生成された線を多数生成することが考えられる。この第1線が亀裂広がり方向に対して平行に生成されるときわめて有利であり、好ましくは特に同じ平面内で直線状にまたは円弧状に生成される。この第1線の生成後、好ましくは亜臨界の亀裂を誘発および/または促進するために、第2線が生成されると有利である。この第2線は同様に、好ましくは直線状に生成される。第2線が第1線に対して傾いていて、特に直交していると有利である。第2線は好ましくは第1線と同じ平面内に延在しているかまたは特に好ましくは第1線が延在する平面に対し平行な平面内内に延在している。続いて好ましくは、亜臨界の亀裂を連結するために、第3線が生成される。
【0133】
本発明の他の有利な実施形では、受容層を-130~-10°Cの温度、特に-80~-50°Cの温度に冷却するための冷却装置が設けられている。この冷却装置は好ましくは液体窒素を霧化するための霧化手段、特に少なくとも1本の穴あき導管または1本の穴あき導管を備え、冷却作用が霧化された液体窒素によって発生させられるときわめて有利である。代替的に、冷却装置は窒素浴を備え、この場合受容層が窒素浴内にある液体窒素に対して離隔して位置決めされる。代替的に、冷却装置は液体窒素または霧状窒素を好ましくは均一に提供する噴霧手段を備え、この噴霧手段は好ましくは受容層の上方および/または側方に配置されている。この実施形は、液体窒素が物体を明確に冷却するために非常に適しているので有利である。この実施形はさらに、-80°C以下または-90°C以下の低温プロセスと比べて、非常にエネルギ効率的なプロセスが提供されるので有利である。
【0134】
冷却装置は好ましくは、窒素浴と、窒素浴内に蓄えられた液体窒素に対する、受容層の位置の間隔を明確に調節するための位置決め装置を備えている。この場合、窒素浴と位置決め装置は好ましくは、周囲に対して少なくとも部分的におよび好ましくは完全に画成された空間内に配置されている。
【0135】
本発明の他の有利な実施形では、1個または複数の温度測定装置が設けられている。この温度測定装置によって温度が測定され、この場合検出された温度は好ましくは温度制御のための窒素弁の位置または窒素弁を通る流量を制御するために用いられる。
【0136】
さらに、均一な温度調節のために、チャンバ内部の換気装置を使用することができる。この換気装置は強制的な対流を発生し、それによって温度勾配を小さくする。
【0137】
図示していない他の冷却方法は、温度調節された冷却体による接触冷却である。閉じた回路内で冷媒がこの冷却体を通って流れ、冷却体は固体に接触する。
【0138】
温度測定は好ましくは、固体で、特に受容層でおよび/または固体下面で行われ、固体下面は好ましくはチャンバ底に対して離隔して配置され、この場合固体を位置決めするために位置決め装置が設けられている。この位置決め装置によって好ましくは、チャンバ底に対する固体の間隔または液体窒素に対する受容層の間隔が、特に温度に依存して変更可能である。
【0139】
さらに好ましくは、窒素と位置決め装置を収容するためのチャンバが設けられている。このチャンバは好ましくは閉鎖可能であり、および/または周囲に対して断熱されている。
【0140】
本明細書では、固体出発材料とは好ましくは、単結晶、多結晶または非結晶の材料であると理解される。強い異方性の原子結合力を有するため、強い異方性の構造を有する単結晶が適している。固体出発材料は好ましくは元素の周期律の主族3、4、5の一つおよび/または副族12からなる金属または金属組合せ、特に例えば酸化亜鉛またはテルル化カドミウムのような、第3、4、5主族と副族12の元素からなる組合せを備えている。
【0141】
半導体出発材料はシリコンカーバイドのほかに例えば、シリコン、ガリウム砒素GaAs、窒化ガリウムGaN、シリコンカーバイドSiC、リン化インジウムInP、酸化亜鉛ZnO、窒化アルミニウムAlN、ゲルマニウム、酸化ガリスム(III)Ga2O3、酸化アルミニウムAl2O3(サファイア)、リン化ガリウムGaP、インジウム砒素InAs、窒化インジウムInN、アルミニウム砒素AlAsまたはダイヤモンドからなっている。
【0142】
固体または工作物(例えばウェハ)は好ましくは、例えばSiC、Si、SiGe、Ge、GaAs、InP、GaN、Al2O3(サファイア)、AlNのような、元素の周期律の主族3、4、5の五つからなる材料または材料組合せを備えている。固体が周期律の第4、第3および第5族の元素の組合せを備えていると特に有利である。その際、考えられる材料または材料組合せは、例えばガリウム砒素、シリコン、シリコンカーバイド等である。さらに、固体はセラミックス(例えばAl2O3-酸化アルミニウム)を備えていてもよいし、セラミックスからなっていてもよい。その際、好ましいセラミックスは一般的には例えば灰チタン石セラミックス(例えばPb、O、Ti/Zrを含むセラミックスのような)であり、特殊な場合には鉛-マグネシウム-ニオブ酸塩、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、イトリウム-アルミニウム-ガーネット、特に固体レーザー使用のためのイトリウム-アルミニウム-ガーネット結晶、例えばニオブ酸リチウム、ガリウムオルトリン、石英、窒化カルシウム等のようなSAW(弾性表面波)セラミックスである。それによって、固体は好ましくは、半導体材料またはセラミック材料を備えているかまたは固体は特に好ましくは少なくとも1つの半導体材料またはセラミック材料からなっている。固体は好ましくはインゴットまたはウェハである。固体がレーザー光線を少なくとも部分的に透過する材料であると特に有利である。従って、固体は透明な材料を備えていてもよいし、例えばサファイアのような透明な材料から部分的に構成または製作されていてもよい。固体材料として単独でまたは他の材料と組み合わせて考慮の対象となる他の材料は、例えば「ワイドバンドギャップ」材料、InAlSb、高温超伝導体、特に希土類銅酸化物(例えばYBa2Cu3O7)である。追加的にまたは代替的に、固体はフォトマスクでもよい。この場合、本ケースでは、フォトマスク材料として、出願日に知られているすべてのフォトマスク材料が有利に使用され、そしてその組合せがきわめて有利に使用される。固体はさらに、追加的にまたは代替的に、シリコンカーバイド(SiC)を備えているかまたはそれからなっている。
【0143】
改質部はシリコンカーバイドからシリコンと炭素への相転位である。
【0144】
本発明に係るレーザー照射は好ましくは、エネルギ供給の、物質特有の場所毎の積み重ねを生じる。それによって、固体の所定の温度調節が、所定の1つの場所または所定の複数の場所で所定の時間生じる。具体的な使用では、固体はシリコンカーバイドからなっている。それにより好ましくは、例えば2830+/-40°Cの温度への、強く局所的に制限された固体の温度調節が行われる。この温度調節から、新しい物質または相、特に結晶相および/または非結晶相が生じる。この場合、生じる相は好ましくは、はるかに小さな強度を生じるSi(シリコン)相およびDLC(ダイヤモンドに似たカーボン)相である。この強度低減された層によって、剥離範囲または剥離面が生じる。
【0145】
さらに、上述の方法に従って製作され、内部に少なくとも1つの剥離面を有する固体による。この場合、剥離面はレーザー光線によって発生する改質部によって形成される。固体はさらに、高温処理方法によって生じる範囲を有する。
【0146】
他の有利な実施形では、層および/または構成部分が範囲内に配置されているかまたは生成されている。代替的に、層および/または構成部分を、分離すべき固体層の表面に配置または生成することができる。固体は好ましくは、1000μm以下、特に800μm以下または700μm以下または600μm以下または500μm以下または400μm以下または300μm以下または200μm以下または100μm以下または80μm以下または50μm以下の厚さまたは平均厚さを有する。
【0147】
従って、本発明の対象は、予備処理/改質されたこのようなウェハ上における構成要素の作成と、構成部材基板としての改質されたウェハである。
【0148】
本発明は付加的にまたは代替的に、多要素構造体に関する。本発明に係る多要素構造体は好ましくは特許権利書に記載された方法によって生成され、特に好ましくは少なくとも1つの固体層を備えている。その際、固体層は好ましくは50%以上(質量で)、特に75%以上(質量で)または90%以上(質量で)または95%以上(質量で)または98%以上(質量で)または99%以上(質量で)SiCからなっている。固体層は第1表面の範囲内に、圧縮応力を発生する改質部または改質部構成部分を備えている。この場合、改質部は非結晶化された(相転位した)固体層の構成部分である。この場合、改質部は第2表面よりも第1表面の近くに離隔配置されているかまたはこの第1表面を一緒に形成している。この場合、第2表面は第1表面に対して平行またはほぼ平行に形成されている。この場合、第1表面は平らまたはほぼ平らであり、および/またはこの場合第2表面は平らまたはほぼ平らである。さらに、本発明に係る多要素構造体は同様に、固体相の第1表面に生成された金属層を備えている。さらに、特に水平なまたは垂直な構成要素として使用可能な電気的な要素を形成するために、1つまたは複数の他の層および/または1つまたは複数の他の構成部材を第2表面に配置することができる。
【0149】
複合構造体の生成は好ましくは、最初に露出する固体の表面上にまたはその上方に、層および/または構成部材を配置または生成することによって行われる。この場合、露出表面は分離すべき固体層の構成部分である。剥離面を形成するための改質部は好ましくは、複合構造体の生成の前に生成される。らに、固体内に応力を発生するために、固体に外力が加えられる。この場合、外力は、応力が剥離面に沿って亀裂を広げるような強さである。
【0150】
改質部は好ましくは、第2表面から200μm以下、特に150μm以下または110μm以下または100μm以下または75μm以下または50μm以下離隔されている。
【0151】
表面が完全に滑らかで完全に平らな表面に接する際に表面のすべての平方センチメートルの少なくとも1つの構成部分が完全に滑らかで完全に平らな表面に接触するとき、本発明では表面はほぼ平らであると見なされる。
【0152】
表面が完全に滑らかで完全に平らな表面に接する際に表面のすべての平方センチメートル、特に平方ミリメートルの少なくとも複数の、特に少なくとも2、3、4また5つの構成部分が完全に滑らかで完全に平らな表面に接触するとき、本発明では表面は平らであると見なされる。
【0153】
さらに、2016年12月7日にドイツ特許商標庁に申請した特許出願DE102016123679.9の対象は、参照によって、内容全体が本特許権利書の対象となる。
【0154】
本発明の他の効果、目的および特徴は、本発明に係る分離方法を例示的に示す添付図の次の記載に基づいて説明される。本発明に係る方法において有利に使用され、および/または複数の図において機能が少なくともほぼ一致している部品または要素は、同じ参照符号で表すことができ、すべての図においてこの部品または要素に番号を付ける必要はなく、またこの部品または要素を説明する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【
図2a】本発明によって提供され得るような固体構造体の図式例を示す。
【
図2b】本発明によって提供され得るような固体構造体の図式例を示す。
【
図3a】本発明に係る固体構造体または本発明に係る方法で中間製品として生成可能な固体構造体の他の図式的な例を示す。
【
図3b】本発明に係る固体構造体または本発明に係る方法で中間製品として生成可能な固体構造体の他の図式的な例を示す。
【
図3c】本発明に係る固体構造体または本発明に係る方法で中間製品として生成可能な固体構造体の他の図式的な例を示す。
【
図3d】本発明に係る固体構造体または本発明に係る方法で中間製品として生成可能な固体構造体の他の図式的な例を示す。
【
図3e】本発明に係る固体構造体または本発明に係る方法で中間製品として生成可能な固体構造体の他の図式的な例を示す。
【
図3f】本発明に係る固体構造体または本発明に係る方法で中間製品として生成可能な固体構造体の他の図式的な例を示す。
【
図3g】本発明に係る固体構造体または本発明に係る方法で中間製品として生成可能な固体構造体の他の図式的な例を示す。
【
図3h】本発明に係る固体構造体または本発明に係る方法で中間製品として生成可能な固体構造体の他の図式的な例を示す。
【
図3i】本発明に係る固体構造体または本発明に係る方法で中間製品として生成可能な固体構造体の他の図式的な例を示す。
【
図4】改質部によって形成された2本の線を概略的に示す。
【
図5a】本発明に係る方法で冷却のために有利に使用可能である冷却装置を示す。
【
図5b】本発明に係る方法で冷却のために有利に使用可能である他の冷却装置を示す。
【
図5c】本発明に係る方法で冷却のために有利に使用可能である他の冷却装置を示す。
【
図5d】本発明に係る方法で冷却のために有利に使用可能である他の冷却装置を示す。
【
図6b】改質部の間の亀裂広がりの他の図式例を示す。
【
図6c】改質部の間の亀裂広がりの他の図式例を示す。
【
図7】異なる機能を生じるための、異なる方向に向けられた改質部線を示す。
【
図10a】エッジから固体の内部に延びる凹部の生成を示し、この場合凹部は好ましくは改質部9によって定められた剥離面に沿って延びている。
【
図10b】エッジから固体の内部に延びる凹部の生成を示し、この場合凹部は好ましくは改質部9によって定められた剥離面に沿って延びている。
【発明を実施するための形態】
【0156】
【0157】
図1bでは、用意した固体1が工具支持体(チャック)3に結合、接着または溶着またはボルト止めまたは締付け固定されている。この場合、工具支持体が冷却機能を有すると有利であり、それによって冷却装置3になると有利である。固体1が縦方向においてその下面で冷却装置3に固定、特に接着されると有利である。この下面が縦方向において表面5の反対側にあると有利である。改質部9を生成するために、レーザービームが、分離すべき固体層の一部である表面5を経て、冷却装置3の方へ固体1内に導入される。さらに、表面5の高温処理、特に固体表面5上にエピタキシャル材料配置を行うときわめて有利である。それによって、1つの他の層145または複数の他の層145が生じる。少なくとも1つの高温方法がエピタキシャル成長方法、ドープ方法またはプラズマ使用下の方法であると有利である。この場合、高温方法によって、特にエピタキシャル成長方法の場合には、少なくとも1つの層145が固体1上に生成される。生成した少なくとも1つの層145は予め定めたパラメータを有する。少なくとも1つの予め定めたパラメータはレーザー光波の屈折および/または吸収および/または反射の最大度合いを定める。屈折および/または吸収および/または反射の度合いは5%以下、好ましくは1%以下、特に好ましくは0.1%以下である。生成した1つの層145または生成した他の層145が金属を含んでいないと有利である。
【0158】
図1cはレーザービームによる改質部9の生成を概略的に示す。その際、レーザービームが前もって高温方法によって生成した層145を経て固体1内に侵入すると有利である。しかし、その代わりに、レーザービームを、固体1の露出表面、すなわち他の層145を成層していない固体1の表面を経て、特に下側から固体1に侵入させることも考えられる。この場合、固体1が側方でまたは外側端部で(幅方向および/または深さ方向に)保持されると有利である。
【0159】
図1dは改質部9の生成後の固体1の概略的な断面図である。この例では、改質部9の4つのブロックが見える。このブロックは4つの亀裂部分25、27、28、29になる。改質部9を有するこのブロックに隣接して、参照符号41、42、43、44、45はそれぞれ、改質部9のない領域またはブロックが改質部9を生成する領域よりも少ない改質部9を生成する領域を示す。
【0160】
図1eは、受容層、特にポリマー材料を有する構成部材(図示せず)を配置または生成する状態を示す。この構成部材は、表面5上の他の層または表面5に前もってエピタキシャル的に生成した他の層に配置されている。受容層は好ましくはフィルムとして生成され、その生成後に表面5に結合、特に接着または貼り付けられる。しかし同様に、液状ポリマーの膜を表面5に形成し、続いて硬化させることによって、受容層を形成することもできる。
【0161】
改質部を生成するステップと、受容層を取付けるステップの間において、他の層150および/または構成部材150を、表面5上にあるいはその前に実施された高温方法の過程で既に生成した他の層145上に配置または生成すると有利である。
【0162】
図1fは受容層の温度調節を概略的に示す。受容層が周囲温度よりも低い温度に、特に20°C以下または1°C以下または0°C以下または-10°C以下または-50°C以下または-60°C以下の温度に温度調節、特に冷却されると有利である。受容層140の材料は冷却の結果、ガラス転移またはおよび結晶化をこうむる。受容層の温度調節が液体窒素を用いて、特に窒素ミストを用いて行われると有利である。温度調節に基づいて、特にガラス転移に基づいて、受容層が収縮し、それによって固体1内に機械的応力が生成する。この機械的応力に基づいて、亀裂部分25、27、28、29を接続する亀裂が発生し、この亀裂によって固体部分12が固体1から分離される。
【0163】
図2aは、表面5よりも改質部から離れた固体の表面に、受容層140が配置されている実施の形態を示す。この固体の表面は表面5に対して平行または好ましくはほぼ平行または完全に平行である。表面が(
図1b~
図1fと同様な)他の層145を備えていると有利である。他の層145または露出した表面5上に、構成部材150または他の材料層150が配置されていると有利である。他の層150または構成部材150の露出表面に、安定化層および/または保護層142が配置または生成されると有利である。この場合、構成部材150は例えば鋳造可能であり、特にポリマー材料および/またはセラミック材料で鋳造可能である。さらに、安定化層および/または保護層142上に、安定化装置、特に、例えばガラスウェハのような他のウェハを結合、特に接着または配置することが考えられる。その際、安定化層および/または保護層142あるいは安定化層および/または保護層142および安定化装置により、構成部材150または他の材料層150は分割時または分割後に実質的に変形しないかまたは変形しない。分割時に、受容層140によって発生する力によって変形が生じ、そして分割後、残る改質部、特に物質転移によって変形が生じ得る。改質部は物質転移時に、押圧力を生成する。この押圧力により、安定化層または安定化装置なしに、分離された固体層の湾曲(BOW)が生じる。それによって、安定化層142は付加的にまたは代替的にガラスウェハとして形成可能であるかまたは安定化層142上に付加的にまたは代替的にガラスウェハを配置することができる。
【0164】
分離された固体層と、この固体層上に配置された安定化層および/または保護層142と、場合によってはその上に配置された安定化装置とからなるユニットは、応力除去のためにさらに処理されると有利である。安定化層142または安定化装置が保持装置を形成するときわめて有利である。この保持装置によって、分離された固体層が材料除去処理のために、材料除去装置、特に研削装置および/または研磨装置に対して固定可能である。分離された固体層に残る改質部分が材料除去装置によって除去、特に切削除去される。
【0165】
本発明において、固体層が残りの固体部分よりも常に薄いと有利である。しかし、受容層を後の固体層の表面に配置または生成しないで、残りの固体部分の表面に配置または生成することも考えられる。固体材料がシリコンである場合、分離された固体層が残りの固体に対して、残りの固体の高さの40%以下の高さ、特に残りの固体の高さの30%以下または20%以下の高さを有すると有利である。シリコンの場合、改質部生成のためのパラメータが予め定められると有利であり、開口数が0.5~0.8、特に約0.65であると有利であり、入射深さが150~1000μm、特に約300μmであり、パルス間隔が1~5μm、特に約2μmであり、線間隔が1~5μm、特に約2μmであり、パルス時間が50~400ns、特に約300nsであり、そしてパルスエネルギが3~30μJ、特に約10μJである。
【0166】
材料がSiCであると、分離された固体層は残りの固体に対して、残りの固体の高さの50%以下の高さ、特に残りの固体の高さの45%以下または40%以下または35%以下または30%以下または25%以下の高さを有すると有利である。SiCの場合、改質部生成のためのパラメータが予め定められると有利であり、数値的な開口が0.4~0.8、特に約0.4であると有利であり、入射深さが50~500μm、特に約180μmであると有利であり、パルス間隔が0.1~3μm、特に約1μmであると有利であり、ライン間隔が10~100μm、特に約75μmであると有利であり、パルス時間が1fs~10ns、特に約3nsであると有利であり、そしてパルスエネルギが0.5~30μJ、特に約7μJであると有利である。
【0167】
図2bにおいて、
図1b~
図1fの他の層145が示されていなくても、この他の層を同様に生成することができる。従って、他の材料層または構成部材150が他の層145または固体の露出した表面に生成または配置されると有利である。
【0168】
図2bはさらに、残りの固体の表面に受容層が配置可能であり、かつ構成部材または他の材料層150上に他の受容層146が配置可能であることを示している。この場合、構成部材は付加的に結晶化層142を備えることができ、それによって他の受容層146が安定化層およびまたは保護層142上に配置または生成されると有利である。他の受容層146がフィルムとして用意されると有利であり、同様に少なくとも一部がポリマー材料からなっていると有利である。他の受容層146が受容層140または142と同じ材料を有するときわめて有利である。この実施の形態は、亀裂を生成するために2つの側から固体内に応力を加えることができるので有利である。
【0169】
図3a~
図3iは、他の材料層または構成部材150の生成後、亀裂を導入形成するために設けられるいろいろな構造を示している。
【0170】
図3a~
図3iは、亀裂形成応力および/または亀裂誘発応力を加えるために有利であるようないろいろな固体構造体176を示している。
【0171】
この場合、
図3aは組織または構成部材150を有する処理された固体1を示している。
【0172】
図3aに示した固体1と異なり、
図3bに示した固体1の場合は、受容層140が構成部材側に、特に構成部材150または他の材料層150上に配置または生成されている。この場合、受容層140が分離すべき固体層上に配置されていると有利である。この場合、受容層140はスプリットフィルムとも呼ばれ、それによって組織側に積層されると有利である。後続のステップにおいて、構造体全体の冷却が行われ、それによってスプリットまたは亀裂誘発および/または亀裂形成が生じる。
【0173】
図3bの図示と異なり、
図3cでは、固体の下面にまたは固体の露出表面に、保持層/接合されたウェハが配置されている。保持層は工具支持体またはチャックでもよい。後続のステップにおいて、構造体全体の冷却が行われ、それによってスプリットまたは亀裂誘発および/または亀裂形成が生じる。
【0174】
図3dは
図3bと異なり、固体が両側に受容層140、146を備えている構造を示している。その際、他の受容層146は、後で残る残留固体の表面に配置されている。この場合、他の受容層146と固体1の間に、接着促進層148および/または犠牲層149および/または保護層142を配置または生成することができる。両受容層140、146が積層されていると有利である。後続のステップにおいて、構造体全体が冷却され、それによってスプリットまたは亀裂誘発および/または亀裂形成が生じる。
【0175】
図3eは、
図3dに示した構造体と比べて、接着促進層148および/または犠牲層149および/または保護層142が他の受容層146と固体1の間に配置または生成されていない構造体を示している。後続のステップにおいて、構造体全体が冷却され、それによってスプリットまたは亀裂誘発および/または亀裂形成が生じる。
【0176】
図3fは、
図3dに示した構造体とは逆に形成された構造体を示している。すなわち、この構造体では、接着促進層148および/または犠牲層149および/または保護層142が他の受容層146と固体1の間に配置または生成されていないで、受容層140と固体1の間、従って分離すべき固体層上に生成または配置されている。この場合、構成部材150または組織上には、例えばスピンコーティングによって、1つまたは複数の層を生成することができる。そして後続のステップとして、構造体全体が冷却され、それによってスプリットまたは亀裂誘発および/または亀裂形成が生じる。
【0177】
図3gは、
図3dと
図3fの構造体の組合せ物に相当する構造体を示している。固体の両側にスプリットフィルムが貼り付けられていると有利であり、同様に両側において保護層および/または接着促進層および/または犠牲層をスプリットフィルムの下に設けることができ、さらに構造体上には例えばスピンコーティングが可能である。そして後続のステップとして、構造体全体が冷却され、それによってスプリットまたは亀裂誘発および/または亀裂形成が生じる。
【0178】
図3hは、
図3bに示した構造体に類似する構造体を示している。この場合、受容層は分離すべき固体層の表面に配置または積層されていないで、分離後に残る残留固体の片側に配置または積層されている。そして分離は冷却の結果、インゴットの分離に類似してあるいはインゴットプロセスのように行われる。
【0179】
図3iは、
図3cに示した構造体に類似する構造体を示している。この場合、次に言及する層または装置の1つまたは複数が固体の構成部材側にまたは構成部材150上または上方に配置または生成される。この層または装置が少なくとも1つまたは1つの接着促進層148および/または少なくとも1つまた1つの犠牲層149および/または少なくとも1つまたは1つの保護層142および/または少なくとも1つまたは1つの安定化装置3、特に工具支持体またはチャックまたは他のウェハであると有利である。そして後続のステップとして、構造体全体が冷却され、それによってスプリットまたは亀裂誘発および/または亀裂形成が生じる。
【0180】
【0181】
矢印170、172はレーザー送り方向を示し、黒色の円はレーザーショットまたは改質部9を示す。このレーザーショットまたは改質部はここでは材料内のその損傷作用と重なっていない。この場合、レーザーが逆方向に向いて、第2(下側)の方向に改質部9を描く前に、レーザーが先ず最初に一方向に移動して改質部9を生成すると有利である。
【0182】
図5a~
図5dはいろいろな冷却装置174を示す。この冷却装置174内で処理される固体構造体176は、
図1a~
図3iに図示および説明した、1つまたは複数の受容層140、146を備えた固体1のいろいろな特色または形状から生じる。ここに示した冷却装置174はすべて、冷却のために、出発冷媒として液化ガス178を使用する。この出発冷媒は実施の形態に応じて、霧状にされるかまたは蒸発させられる。出発冷媒が液体窒素であると有利である。例えばペルティエ素子を用いた代替的な冷却方法が同様に考えられ、可能である。
【0183】
その際、冷却装置174が受容層140、146を、-130°Cと-10°Cの間の温度に、特に-80°Cと-50°Cの間の温度に冷却すると有利である。
【0184】
図5aでは、冷却装置174が窒素浴を備えている。この場合、受容層が窒素浴内に置かれた液体窒素に対して離隔され、特に調節可能な位置決め装置180によって液体窒素に対して調節される。それによって、固体構造体が位置決め装置上にまたは窒素浴の上方のホルダ上に配置されるので有利である。従って、チャンバの高さにわたって温度勾配が生じ、固体構造体の温度が出発冷媒の充填高さによって調節可能であるかあるいは固体構造体176の位置(チャンバの底に対する間隔)によって調節可能である。
【0185】
図5b~
図5dの実施の形態に従い、冷却装置が液体窒素を霧化するための霧化手段、特に少なくとも1本または1本の穴あき導管を備え、冷却作用が霧化されたまたは蒸発した窒素によって生じると有利である。
【0186】
図5bに従い、噴霧または霧化のための均質の噴霧器/霧化器が用意されると有利である。噴霧または霧化が固体構造体176の上方で行われると有利である。さらに、温度コントロールのための温度測定が行われると有利である。この温度コントロールは、弁、特に窒素弁の制御のための出力データを出力する。温度測定が基板または固体1または受容層140で行われると有利である。
【0187】
基板または固体1または固体構造体176が、チャンバの底への窒素降下を回避するために、チャンバの底の上方に置かれていると有利である。
【0188】
図5cに従い、穴あき導管が均質な噴霧器として使用されると有利である。さらに、温度コントロールのための温度測定が行われると有利である。この温度コントロールは、弁、特に窒素弁の制御のための出力データを出力する。温度測定が基板または固体1または受容層140で行われると有利である。
【0189】
基板または固体1または固体構造体176が、チャンバの底への窒素降下を回避するために、チャンバの底の上方に置かれていると有利である。
【0190】
図5dは、複数の側またはすべての側を冷却するための均質な噴霧器/霧化器182を備えた冷却装置176を示している。さらに、温度コントロールのための温度測定が行われると有利である。この温度コントロールは、弁、特に窒素弁の制御のための出力データを出力する。温度測定が基板または固体1または受容層140で行われると有利である。
【0191】
基板または固体1または固体構造体176が、チャンバの底への窒素降下を回避するために、チャンバの底の上方に置かれていると有利である。
【0192】
断熱によって温度勾配をできるだけ小さくするために、冷却装置174のチャンバ184が閉鎖されていると有利である。
【0193】
図6は、結晶格子配向と改質部生成の間の良好な関係のための3つの例を示す。この方法は特に、SiCからなる固体またはSiCを有する固体から、固体層を分離するために重要である。この関係によって、本発明に係る他の方法が生じる。本発明に係る他の方法は好ましくは少なくとも1個の固体1から少なくとも1つの固体層4を分離する働き、特にインゴットからウェハを分離する働きまたはウェアを薄くする働きをする。その際、本発明に係る他の方法は好ましくは少なくとも、剥離面8を形成するために固体1の内部にレーザー光線によって多数の改質部9を生成するステップと、固体1内に応力を発生するために固体1に外力を加えるためのステップを有する。この場合、外力は、応力が剥離面8に沿って亀裂を広げるような大きさである。
【0194】
本発明に従い、改質部は少なくとも1つの行、列または線に沿って順々に生成される。この場合、一行、一列また一線に沿って生成された改質部9は好ましくは間隔Xをおいておよび高さHで生成され、それによって連続する2つの改質部の間で広がる亀裂、特に結晶化方向に広がる亀裂が、両改質部を互いに連結する。この亀裂の亀裂広がり方向は剥離面に対して角度Wをなしている。この場合、角度Wは好ましくは0~6°、特に約4°である。亀裂は好ましくは第1改質部の中心の下方の範囲から、第2改質部の中心の上方の範囲へ広がる。従って、この場合の重要な関係は、改質部の大きさが改質部の間隔と角度Wに依存して変更可能であるかまたは変更しなければならないことである。
【0195】
この方法はさらに、先ず最初に露出する固体1の表面5にまたはこの表面の上方に、層および/または構成部材150を配置または生成することによって、複合構造体を生成するためのステップを有していてもよい。この場合、露出する表面5は好ましくは分離すべき固体層4の構成部分である。剥離面8を形成するための改質部が複合構造体を生成する前に生成されると特に有利である。
【0196】
外力を加えるために、例えば、上述の方法に類似して、受容層140を複合構造体または固体の露出表面5に配置することができる。
【0197】
3つの
図6a~
図6cは、レーザーによって非結晶化/相転位された損傷ゾーン/改質ゾーンの大きさが、亀裂の鋸歯パターンの高さに対してどのような影響を及ぼすかを明らかにする。一般的に、亀裂は結晶面に沿って、すなわち結晶の個々の原子の間を延びている。改質されたゾーンで、はっきりしたこの結晶面はもはや存在しない。すなわち、結晶面が中断している。
【0198】
損傷ゾーンは、好ましくはできるだけ多い開口数によって、光線方向に縮小可能であり、また焦点平面内において横方向にも縮小可能である。閾値強度だけを達成すればよいので、ここでは小さなパルスエネルギで十分である。
【0199】
損傷ゾーンが小さく適切に形成されていると、レーザー改質部を密にすることができる。これは鋸歯を短くし、全体として改質された面の小さな高さ寸法を生じる(最初の図)。
【0200】
これに対して、損傷ゾーンが大きく形成されると(より高いエネルギおよび/またはより少ない開口数
図6b)、非結晶化されたゾーンの高い圧力によって、より大きな微小亀裂を誘発する。この微小亀裂の取り込み(すなわち、制御して停止すること)は、より大きな間隔のより大きな寸法の損傷ゾーンによって可能である。
【0201】
最後に
図6cは次のような危険を示している。すなわち、損傷ゾーンが十分な大きさでないとき、広すぎる連続亀裂がレーザー改質部によって誘発されるときに、一方では亀裂が広すぎるように連続し、すなわち亀裂によって発生した高さ差が所望されるよりも大きく、他方では亀裂が他の損傷ゾーンの下方を通って移動し、非結晶化材料によって停止されるという危険を示している。これは再び材料損失をもたらす。というのは、最終製品のためにまたは新たなレーザー加工のために、亀裂の入ったすべての材料層を除去しなければならないからである。
【0202】
図7は、本発明に係る他の方法の概略的なスナップショットを示す。この他の方法は、少なくとも1個の固体1から少なくとも1つの固体層4を分離する働き、特にインゴットからウェハを分離する働きまたはウェアを薄くする働きをする。その際、本発明に係る他の方法は好ましくは少なくとも、剥離面8を形成するために固体1の内部にレーザー光線によって多数の改質部9を生成するステップと、固体1内に応力を発生するために固体1に外力を加えるためのステップを有する。この場合、外力は、応力が剥離面8に沿って亀裂を広げるような大きさである。
【0203】
本発明に従い、最初のステップにおいて、改質部が線103に沿ってそして好ましくは等間隔で生成される。さらに、この最初のステップで生成された線を多数生成することが考えられる。この第1線が亀裂広がり方向に対して平行に生成されるときわめて有利であり、好ましくは特に同じ平面内で直線状にまたは円弧状に生成される。この第1線の生成後、好ましくは亜臨界の亀裂を誘発および/または促進するために、第2線105が生成されると有利である。この第2線は同様に、好ましくは直線状に生成される。第2線が第1線に対して傾いていて、特に直交していると有利である。第2線は好ましくは第1線と同じ平面内に延在しているかまたは特に好ましくは第1線が延在する平面に対し平行な平面内内に延在している。続いて好ましくは、亜臨界の亀裂を連結するために、第3線が生成される。
【0204】
この方法は特に、SiCからなるかまたはSiCを含む固体から固体層を分離するために重要である。
【0205】
さらに、少なくとも1つの行または列または線に沿って改質部を順々に生成することができる。この場合、1行または1列または1本の線に沿って生成される改質部9は好ましくは間隔Xをおいて及び高さHを有するように生成される。それによって、連続する2つの改質部の間で広がる亀裂、特に結晶格子方向に広がる亀裂は、両改質部を互いに連結する。この亀裂の広がり方向は剥離面に対して角度Wをなしている。この場合、角度Wは好ましくは0~6°、特に約4°である。亀裂が第1改質部の中心の下方の範囲から、第2改質部の中心の上方の範囲へ広がっていると有利である。従って、この場合の重要な関係は、改質部の大きさが改質部の間隔と角度Wに依存して変更可能であるかまたは変更しなければならないことである。
【0206】
この方法はさらに、最初に露出する固体1の表面5にまたはこの表面の上方に、層および/または構成部材150を配置または生成することによって、複合構造を生成するためのステップを有していてもよい。この場合、露出する表面5は好ましくは分離すべき固体層4の構成部分である。剥離面8を形成するための改質部が複合構造体を生成する前に生成されると特に有利である。
【0207】
外力を加えるために、例えば、上述の方法に類似して、受容層140を複合構造体または固体の露出表面5に配置することができる。
【0208】
それによって、本発明に係る他のレーザー方法では好ましくは、縦線が亀裂を引き起こす前に、好ましくは亀裂剥離のための平面を先ず最初に定めるために(亀裂初期設定)、亀裂広がり方向に対して平行な線(好ましくは横線と呼ばれる)がSiC(他の材料でもよい)上に発生させられる。この場合、亀裂を完全に誘発するために、最後の切断が第2切断の縦方向線の間に線をセットする前に、亀裂が最初に横方向に、そして縦方向に初期設定される。これは、より短い亀裂延在距離を可能にする。これは最終的な表面粗さを最小限に抑える。(鋸歯を有する)横線と、(鋸歯の波形チャンバ上の)亀裂剥離線のための例を示す図。
【0209】
図8はショットキーダイオード200を例示する。このダイオード200は好ましくは固体層4を有する。この固体層はさらに、レーザー光線によって改質された部分、特に改質部9を有する。この場合、改質部9は固体層4の第1表面の近くに生成されている。その際、固体層4のこの第1表面には好ましくは、金属層20が特にスパッタリングまたは化学的被膜形成によって生成されている。固体層4は第1表面の反対側に第2表面を有する。この第2表面には、特にエピタキシャル成長方法によって、他の層145が生成されている。その際、固体層4は好ましくは高ドープされたSiCからなっているかまたは高ドープされたSiCを有し、生成された層145は好ましくは低ドープされたSiCからなっているかまたは低ドープされたSiCを有する。この場合、低ドープは高ドープよりも弱いドープを意味する。それによって、生成された層145は好ましくは、単位容積あたり、固体層4よりも低いドープを有する。参照符号150はショットキー接触部を示す。
【0210】
図9はMOSFET250の構造を例示する。このMOSFET250は好ましくは固体層4を有する。この固体層はさらに、レーザー光線によって改質された部分、特に改質部9を有する。この場合、改質部9は固体層4の第1表面の近くに生成されている。その際、固体層4のこの第1表面には好ましくは、金属層20が特にスパッタリングまたは化学的被膜形成によって生成されている。その際、金属層20は好ましくは端子259を介してドレイン(ハイ)を形成する。固体層4は第1表面の反対側に第2表面を有する。この第2表面には、他の層、特にn型SiCが形成、特に生成または配置されている。参照符号256は他の材料または要素、特にp型SiCを示す。参照符号254はn+を象徴している。参照符号255は好ましくは、特に電流を案内するための1つまたは複数のチャンネルを示す。参照符号253で示した層は好ましくはSiO2からなっているかまたはSiO2を備えている。参照符号251は源(ロー)を示し、参照符号252はゲートを示す。
【0211】
それによって、本発明は、少なくとも1つの固体層4を提供するための方法に関することができる。この場合、固体層4は固体1から分離される。その際、本発明に係る方法は好ましくは次のステップを有する。
【0212】
剥離面8を形成するために固体1の内部にレーザー光線によって多数の改質部9を生成するステップを有する。この場合、改質部9によって固体1内に圧縮応力が発生する。さらに、改質部9によって形成された剥離面8に沿って残りの固体1と固体層4を分けることにより、固体層4を分離するステップを有する。この場合、圧縮応力を発生する改質部の少なくとも構成部分が固体層4に残り、改質部9に基づいて固体層4が固体1から剥離するほど多くの改質部9が生成されるかあるいは他の応力を固体1内に発生するために外力が固体1に加えられ、この外力は、応力が改質部によって形成される剥離面8に沿って亀裂の広がりを生じるような強さである。さらに、残りの改質部構成部分の圧縮応力によって生じた固体層4の変形を、少なくとも部分的におよび好ましくは大部分および特に好ましくは完全に補償するために、あるいは圧縮応力を少なくとも部分的におよび好ましくは大部分および特に好ましくは完全に補償するために、固体1から固体層4を分離することによって露出する表面に金属層を生成するステップを有する。
【0213】
その代わりに、本発明は電気的な構成要素を生成するための方法に関する。この方法は好ましくは、剥離面8を形成するためにレーザー光線によって固体1の内部に多数の改質部9を生成するステップを有する。この場合、改質部9によって圧縮応力が固体1内に発生する。さらに、固体1の最初に露出する表面5上にまたはこの表面の上方に層および/または構成部材150を配置または生成することによって複合構造体を生成するステップを有する。この場合、露出する表面5は分離すべき固体層4の構成部分である。さらに、改質部9によって形成された剥離面8に沿って残りの固体1と固体層4を分けることにより、固体層4を分離するステップを有する。この場合、圧縮応力を発生する改質部9の少なくとも構成部分が固体層4に残り、改質部9に基づいて固体層4が固体1から剥離するほど多くの改質部9が生成されるかあるいは他の応力を固体1内に発生するために外力が固体1に加えられ、この外力は、応力が改質部によって形成される剥離面8に沿って亀裂の広がりを生じるような強さである。さらに、改質部構成部分によって生じた圧縮応力を少なくとも部分的に相殺するために、固体1から固体層4を分離することによって露出する表面に金属層20を生成するステップを有する。
【0214】
図10aは所定の輪郭を有する研削工具22を示す図である。研削工具に関連して平らな部分、真っ直ぐな部分または湾曲した部分を話題にするとき、これは図示した輪郭の部分であると理解される。勿論、研削工具22は例えば回転研削工具として形成可能であり、それによって周方向において輪郭に接続する部分は周方向に好ましくは曲げられて延在している。
図10aに最初に示された研削工具22は、湾曲した主研削面32を有する第1加工部分24と、湾曲した副研削面34を有する第2加工部分26を備えている。この場合、主研削面32の半径は副研削面34の半径よりも大きく、好ましくは主研削面32の半径は副研削面34の半径の少なくとも2倍、3倍、4倍または5倍である。
【0215】
従って、本発明では、ドナー基板1または固体から少なくとも1つの固体層4、特に固体ディスクを分離するための方法が付加的にまたは代替的に提供される。その際、この方法は好ましくは次のステップを有する。
【0216】
ドナー基板1を用意するステップと、レーザー光線によってドナー基板1の内部に改質部9を生成するステップを有する。この場合、改質部9によって剥離範囲が設定され、この剥離範囲に沿ってドナー基板1か固体層が分離される。さらに、特に周方向の凹部を生成するために、ドナー基板1の周方向に延びる表面から出発してドナー基板1の中心(Z)の方へドナー基板1の材料を切除するステップを有する。この場合、材料切除によって剥離範囲8または剥離面が露出する。さらに、ドナー基板1から固体層4を分離するステップを有する。この場合、ドナー基板は剥離範囲において改質部によって弱体化される。この弱体化は、固体層4が材料除去の結果ドナー基板1から剥離されるかまたは材料除去の後で所定数の改質部9が生成されるように行われる。この改質部の所定数はドナー基板1が剥離範囲において弱体化されるような数であり、この弱体化によって固体層4がドナー基板1から剥離されるかまたは応力発生層140または受容層が周方向の表面に対して傾斜するように配向された、ドナー基板1の特に平らな表面に生成または配置され、そして応力発生層140の熱負荷によって機械的な応力がドナー基板1内に発生させられる。この場合、機械的な応力によって、固体層4を分離するための亀裂が発生し、この亀裂は材料切除によって露出したドナー基板の表面から出発して、改質部9に沿って広がる。この場合、材料切除の前または材料切除の後で改質部9を部分的にまたは完全に生成することができる。それによって、凹部6は好ましくは中心Zの方へ凹部端部18の方まで狭くなる。凹部は好ましくはくさび状に延在している。この場合、凹部端部18は好ましくは、亀裂が形成される平面または改質部9が生成される平面内にぴったり位置する。さらに、最初に露出している固体1の表面5にまたはこの表面の上方に、層および/または構成部材150を配置または生成することにより、複合構造体を生成することができる。この場合、露出する表面5は分離すべき固体層4の構成部分である。その際、剥離面8を形成するための改質部9は好ましくは複合構造体の生成前に生成される。
【0217】
複合構造体を生成した後で、固体1内に応力を発生するために固体1に外力が加えられる。この場合、外力は、応力が剥離面8に沿って亀裂を広げるような強さである。
【0218】
図10bは、特に結晶格子の非結晶部分である、
図10aに示した改質部9のエッチング処理を示す。従って、好ましくは固体1の非結晶の構成部分のエッチング処理が行われ一方、固体の結晶の構成部分はエッチング処理によって変更されないかまたは実質的に変更されない。それによって好ましくは、結晶-非結晶の範囲で選択的にエッチング方法を調節可能であるという効果が利用される。参照符号19は、固体層4が改質部9のエッチング処理によって残りの固体から分離されている範囲を示す。この解決策は、機械的な亀裂穴がエッチングまたは食刻によって結晶内に深く形成されるので有利である。これは正確に定められた亀裂始端部を形成する。凹部または切欠きが固体の内部に細く延びていればいるほどおよび深く延びていればいるほど、固体層の分離の結果露出する表面の質は良くなる。その際、エッチングパラメータは好ましくは、非結晶ではない部分、特に場合によっては研磨された表面5および/または改質されていないエッジ7がエッチングされないように選定される。それによって、本発明に係る方法、特に
図10aに関連して説明した方法に、少なくとも部分的に設定した改質部9の剥離範囲をエッチング処理またはエッチング除去するステップを付け加えることができる。固体1は、特に複合構造体を生成する前は、好ましくはSiCからなっているかまたはSiCを有し、固体は好ましくは少なくとも95%(質量で)または少なくとも99%(質量で)または少なくとも99.99%(質量で)のSiCを有する。
【0219】
さらに指摘すると、この特許権利書によって開示されたすべての方法において、固体のエッジの材料除去に、特に後続のエッチングステップを付け加ることができる。
【符号の説明】
【0220】
1 固体
4 固体層
5 表面
8 剥離面
9 改質部
150 構成部材