(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】衝撃改質剤および炭酸カルシウムを含む塩化ポリビニル組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20230404BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20230404BHJP
C08L 51/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C08L27/06
C08K3/26
C08L51/00
(21)【出願番号】P 2019568316
(86)(22)【出願日】2018-06-18
(86)【国際出願番号】 US2018038042
(87)【国際公開番号】W WO2018236735
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-08
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーラ、バーナード
(72)【発明者】
【氏名】アームストロング、デイビッド
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-363372(JP,A)
【文献】特開2007-302842(JP,A)
【文献】特表2015-512968(JP,A)
【文献】国際公開第2016/050698(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/06
C08K 3/26
C08L 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル組成物であって、
(a)K-63~K-70のK値を有するポリ塩化ビニルと、
(b)多段アクリル衝撃改質剤であって、
(i)前記多段
アクリル衝撃改質剤の総重量に基づいて、65~96重量%のコアポリマーであって、前記コアの総重量に基づいて、(A)95~99.9重量%の1種以上のアルキルアクリレートモノマー、ならびに(B)0.1~1.5重量%の1種以上の架橋性モノマー、グラフト結合性モノマー、およびそれらの組み合わせ、に由来する重合単位を含む、コアポリマーと、
(ii)前記多段
アクリル衝撃改質剤の総重量に基づいて、4~35重量%のシェルポリマーであって、前記シェルの総重量に基づいて、(A)95~100重量%の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、ならびに(B)0~1.5重量%の1種以上の連鎖移動剤、に由来する重合単位を含む、シェルポリマーと、を含む、多段アクリル衝撃改質剤と、
(c)(i)400~900nmのd
50粒径値、(ii)2.6μm未満のd
98粒径値、および(iii)2.0未満のd
50粒径値を有する粒子とd
20粒径値を有する粒子の比率(d
50/d
20)を有する粉砕炭酸カルシウムと、を含む、ポリ塩化ビニル組成物。
【請求項2】
(i)前記コアの1種以上のアルキルアクリレートモノマーが、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、およびイソオクチルアクリレート、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記コアの1種以上の架橋性モノマー、グラフト結合性モノマー、およびそれらの組み合わせが、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、アリル(ally)アクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
(ii)前記シェルの1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーが、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記1種以上の連鎖移動剤が、1-ドデカンチオール、t-ドデカンチオール、チオエタノール、ヘキサンチオール、メルカプトプロピオン酸、メチル-3-メルカプトプロピオネート、ブチル-3-メルカプトプロピオネート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(i)前記コアの1種以上のアクリル酸アルキルモノマーが、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記コアの1種以上の架橋性モノマー、グラフト結合性モノマー、およびそれらの組み合わせが、アリルメタクリレートであり、
(ii)前記シェルの1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーが、メチルメタクリレートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記衝撃改質剤(b)が、前記ポリ塩化
ビニル組成物の総重量に基づいて、1~8phrの量で存在し、前記粉砕炭酸カルシウム(c)が、前記ポリ塩化
ビニル組成物の総重量に基づいて、4~25phrの量で存在する、請求項1に
記載の組成物。
【請求項5】
前記衝撃改質剤(b)が、前記ポリ塩化
ビニル組成物の総重量に基づいて、4~6phrの量で存在し、前記粉砕炭酸カルシウム(c)が、前記ポリ塩化
ビニル組成物の総重量に基づいて、6~16phrの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリ塩化ビニルが、K-65~K-68のK値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のポリ塩化ビニル組成物を含む製品であって、前記製品が、窓用形材、パイプ、技術プロファイル、壁パネル、天井パネル、クラッディングパネル、またはワイヤ絶縁材からなる群から選択される、製品。
【請求項8】
(a)K-65~K-68のK値を有する、ポリ塩化ビニルと、
(b)多段アクリル衝撃改質剤であって、
(i)前記多段アクリル衝撃改質剤の総重量に基づいて、65~96重量%のコアポリマーであって、前記コアの総重量に基づいて、(A)95~99.9重量%の1種以上のアルキルアクリレートモノマー、ならびに(B)0.1~1.5重量%の1種以上の架橋性モノマー、グラフト結合性モノマー、およびそれらの組み合わせ、に由来する重合単位を含む、コアポリマーと、
(ii)前記多段アクリル衝撃改質剤の総重量に基づいて、4~35重量%のシェルポリマーであって、前記シェルの総重量に基づいて、(A)95~100重量%の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、ならびに(B)0~2重量%の1種以上の連鎖移動剤、に由来する重合単位を含む、シェルポリマーと、を含む、多段アクリル衝撃改質剤と、
(c)(i)400~900nmのd
50粒径値、(ii)2.6μm未満のd
98粒径値、および(iii)2.0未満のd
50粒径値を有する粒子とd
20粒径値を有する粒子の比率(d
50/d
20)を有する粉砕炭酸カルシウムと、を含む、ポリ塩化ビニル組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、衝撃改質剤および炭酸カルシウムを含むポリ塩化ビニルプロファイル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル衝撃改質剤および炭酸カルシウム充填剤は、窓用形材および技術プロファイルなどのポリ塩化ビニル(「PVC」)の最終用途の重要な構成要素である。このような構成要素は、PVC複合材料に必要な性能特性、例えば、ゲル化速度、加工レオロジー、光沢、色、および衝撃強度を提供する。業界で現在使用されている衝撃改質剤および炭酸カルシウム充填剤は、互いに拮抗し得るが、そのような特性のすべてにおいて十分に好ましい性能を示す単一配合物を達成することは困難である。
【0003】
様々な衝撃改質剤および炭酸カルシウムのグレードは、様々なPVC製品の業界で利用されている。例えば、WO2016/050698 A1は、アクリル衝撃改質剤および炭酸カルシウムを含む特定のPVC組成物を開示している。しかしながら、先行技術は、特定の炭酸カルシウムと衝撃改質剤との間の相乗効果を達成する本発明によるPVC配合物を開示していない。
【0004】
したがって、衝撃強度、加工レオロジー、ゲル化速度、光沢、および色の改善を提供するアクリル衝撃改質剤および炭酸カルシウムを含むPVC配合物を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様は、(a)K-63~K-70のK値を有するポリ塩化ビニルと、(b)衝撃改質剤と、(c)(i)400~900nmのd50粒径値、(ii)2.6μm未満のd98粒径値、および(iii)2.0未満のd50粒径値を有する粒子とd20粒径値を有する粒子の比率(d50/d20)を有する粉砕炭酸カルシウムと、を含む、ポリ塩化ビニル組成物を提供する。
【0006】
別の態様では、本発明は、(a)K-65~K-68のK値を有するポリ塩化ビニルと、(b)多段アクリル衝撃改質剤であって、(i)多段アクリル衝撃改質剤の総重量に基づいて、65~96重量%のコアポリマーであって、コアの総重量に基づいて、(A)95~99.9重量%の1種以上のアルキルアクリレートモノマー、ならびに(B)0.1~1.5重量%の1種以上の架橋性モノマー、グラフト結合性モノマー、およびそれらの組み合わせ、に由来する重合単位を含む、コアポリマーと、(ii)多段アクリル衝撃改質剤の総重量に基づいて、4~35重量%のシェルポリマーであって、シェルの総重量に基づいて、(A)95~100重量%の1種以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、ならびに(B)0~2重量%の1種以上の連鎖移動剤、に由来する重合単位を含む、シェルポリマーと、を含む、多段アクリル衝撃改質剤と、(c)(i)400~900nmのd50粒径値、(ii)2.6μm未満のd98粒径値、および(iii)2.0未満のd50粒径値を有する粒子とd20粒径値を有する粒子の比率(d50/d20)を有する粉砕炭酸カルシウムと、を含む、ポリ塩化ビニル組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明による例示的なPVCプロファイル組成物および比較PVCプロファイル組成物の衝撃強度プロファイルを示す。
【
図2】本発明による例示的なPVCプロファイル組成物および比較PVCプロファイル組成物の衝撃強度プロファイルを示す。
【
図3】本発明による例示的なPVCプロファイル組成物および比較PVCプロファイル組成物の衝撃強度プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本発明者らは、驚くべきことに、ポリ塩化ビニル、衝撃改質剤、ならびに(i)400~900nmのd50粒径値、(ii)2.5μm未満のd98粒径値、および(iii)2.0未満のd50粒径値を有する粒子とd20粒径値を有する粒子の比率(d50/d20)を有する粉砕炭酸カルシウム、を含むポリ塩化ビニル(「PVC」)組成物が、衝撃強度、加工レオロジー、光沢、および色において著しい改善をもたらすことを見出した。
【0009】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、同一であろうと異なる種類であろうと、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。「ポリマー」という一般用語は、「ホモポリマー」、「コポリマー」、「ターポリマー」、および「樹脂」という用語を含む。本明細書で使用される場合、「に由来する重合単位」という用語は、重合法に従って合成されたポリマー分子を指し、ポリマー生成物が重合反応の出発材料である構成モノマー「に由来する重合単位」を含む。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートまたはメタクリレートまたはそれらの組み合わせのいずれかを指し、「(メタ)アクリル」という用語は、アクリルまたはメタクリルのいずれかまたはそれらの組み合わせを指す。本明細書で使用する場合、「置換された」という用語は、少なくとも1つの結合した化学基、例えば、アルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、他の官能基、およびそれらの組み合わせを有することを指す。本明細書で使用される場合、「第1のポリマー段階」という用語は、アクリルコポリマーの任意の段階を指す。それは、単段ポリマーの唯一の段階、または多段ポリマーにおいて経時的に第1、第2、第3、最終、もしくは任意の段階であり得る。本明細書で使用される場合、「第2のポリマー段階」という用語は、第1の段階ではないアクリルコポリマーの任意の他の段階を指す。それは、多段ポリマーにおいて経時的に、第1、第2、第3、最終、または任意の段階であり得る。
【0010】
本明細書で使用される場合、「phr」という用語は、100部当たりの樹脂またはポリマー固形分を意味する。本明細書で使用される場合、「分子量」または「重量平均分子量」または「Mw」という用語は、ASTM D5296-11(2011)に準拠し、テトラヒドロフラン(「THF」)を移動相および希釈剤として使用する、ポリスチレン較正標準に対するアクリルポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(「GPC」)によって測定されるポリマーの重量平均分子量を指す。本明細書で使用される場合、「粒子径」という用語は、Brookhaven BI-90 Particle Sizerを用いて測定されるエマルジョン(コ)ポリマー粒子の重量平均粒子径を意味する。
【0011】
本明細書で使用される場合、「ガラス転移温度」または「Tg」という用語は、ガラス質ポリマーがポリマー鎖のセグメント運動を受ける温度またはそれ以上の温度を指す。コポリマーのガラス転移温度は、Fox方程式(Bulletin of the American Physical Society,1(3)Page 123(1956))によって以下のように推定することができる。
1/Tg=w1/Tg(1)+w2/Tg(2)
コポリマーについては、w1およびw2は2つのコモノマーの重量分率を指し、Tg(1)およびTg(2)はモノマーから製造された2つの対応するホモポリマーのガラス転移温度を指す。3つ以上のモノマーを含むポリマーについては、追加の用語が加えられる(wn/Tg(n))。ホモポリマーのガラス転移温度は、例えば、“Polymer Handbook,”edited by J.Brandrup and E.H.Immergut,Interscience Publishersに見出すことができる。ポリマーのTgはまた、例えば、示差走査熱量測定(「DSC」)を含む様々な技術によっても測定することできる。本明細書で使用される場合、「計算されたTg」という語句は、Fox方程式によって計算されるガラス転移温度を意味するものとする。
【0012】
本明細書で使用される場合、「d20」、「d50」、および「d98」粒径値という用語は、特定された値以下の直径を有する粒子が、それぞれ、凝集粒子の質量の20%、50%、および98%を占める、サイズを指す。したがって、d50値は、すべての粒子の50重量%が指定された粒径より小さい「重量中央値粒径」である。本明細書で使用される場合、「d50/d20」という用語は、d50粒径値を有する粒子とd20粒径値を有する粒子の比率を指す。d20、d50、およびd98値は、沈降法(すなわち、重量測定フィールドでの沈降挙動の分析)を利用する、例えば、Sedigraph(商標)III Plus(Micromeritics Instrument Corporationから入手可能)によるものを含む様々な技術によって決定することができる。
【0013】
本発明のPVC組成物は、ポリ塩化ビニル、衝撃改質剤、および粉砕炭酸カルシウムを含む。本発明の組成物のポリ塩化ビニルは、従来の懸濁重合、乳化重合、塊状重合、または開始剤の存在下での溶液重合によって得ることができる。特定の実施形態において、ポリ塩化ビニルは、PVCプロファイル組成物の総重量に基づいて、70~90重量%、好ましくは75~85重量%、より好ましくは77~83重量%の量で、PVCプロファイル組成物中に存在する。ISO 1628 2:1998に記載されるように、K値は、PVCの溶液粘度および分子量と相関する。好ましいK値の範囲は、K-63~K-70、好ましくはK-64~K-69、より好ましくはK-65~K-68である。
【0014】
本発明のPVC組成物は、衝撃改質剤を含む。特定の実施形態において、衝撃改質剤は、PVCプロファイル組成物の総重量に基づいて、1~8phr、好ましくは3~7phr、より好ましくは4~6phrの量で、PVCプロファイル組成物中に存在する。適切な衝撃改質剤には、例えば、メタクリレート-ブタジエン-スチレンコポリマー(「MBS」)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(「ABS」)、塩素化ポリエチレン(「CPE」)、アクリルグラフト塩素化ポリエチレン、アクリルグラフトPVC、およびアクリル衝撃改質剤(「AIM」)が含まれる。
【0015】
適切な多段アクリル衝撃改質剤には、例えば、コアポリマーおよびシェルポリマーを含むコアシェル形態を有するものが含まれる。特定の実施形態において、コアポリマーは、多段ポリマーの総重量に基づいて、65~96重量%、好ましくは85~96重量%、より好ましくは88~94重量%の量で、多段ポリマー中に存在する。特定の実施形態において、シェルポリマーは、多段アクリル衝撃改質剤の総重量に基づいて、4~35重量%、好ましくは5~15重量%、より好ましくは6~12重量%の量で、多段ポリマー中に存在する。特定の実施形態において、多段アクリル衝撃改質剤は、コアポリマーとシェルポリマーとの間に1つ以上の中間層ポリマーを含む。
【0016】
多段アクリル衝撃改質剤のコアは、1種以上のアルキルアクリレートモノマーに由来する重合単位を含む。アルキルアクリレートモノマーは、アルキル基が1~12個の炭素原子を有する直鎖および分岐アルキルアクリレートを含む。好適なアルキルアクリレートモノマーには、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、およびイソオクチルアクリレートが含まれる。特定の好ましい実施形態において、架橋性コアのアルキルアクリレートモノマーは、ブチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレートのうちの1種以上を含む。特定の実施形態において、アルキルアクリレートモノマーは、コアの総重量に基づいて、95~99.9重量%、好ましくは97~99.5重量%、より好ましくは98~99重量%の量で、コア中に存在する。
【0017】
多段ポリマーのコアは、1種以上の架橋性モノマー、グラフト結合性モノマー、およびそれらの組み合わせに由来する重合単位をさらに含む。好適な架橋性およびグラフト結合性モノマーとしては、例えば、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、アリル(ally)アクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルフタレート、およびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。特定の実施形態において、架橋性コアの架橋性モノマーおよびグラフト結合性モノマーは、アリルメタクリレートを含む。特定の実施形態において、架橋性モノマーおよびグラフト結合性モノマーは、コアの総重量に基づいて、0.1~1.5重量%、好ましくは0.2~1.0重量%、より好ましくは0.3~0.8重量%の量で、架橋性コア中に存在する。
【0018】
本発明の多段アクリル衝撃改質剤のシェルは、アルキル(メタ)アクリレートモノマーのうちの1種以上を含む。アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、アルキル基が1~12個の炭素原子を有する直鎖および分岐アルキル(メタ)アクリレートを含む。好適なアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、およびイソオクチルアクリレートが挙げられる。特定の好ましい実施形態において、シェルのアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、メチルメタクリレートを含む。特定の実施形態において、アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、シェルの総重量に基づいて、95~100重量%、好ましくは96~99重量%、より好ましくは97~98重量%の量で、シェル中に存在する。
【0019】
特定の実施形態において、本発明の多段アクリル衝撃改質剤のシェルは、1種以上の連鎖移動剤に由来する重合単位をさらに含む。好適な連鎖移動剤としては、例えば、1-ドデカンチオール、t-ドデカンチオール、チオエタノール、ヘキサンチオール、メルカプトプロピオン酸、メチル-3-メルカプトプロピオネート、ブチル-3-メルカプトプロピオネートが挙げられる。特定の実施形態において、連鎖移動剤は、シェルの総重量に基づいて、0~1.5重量%、好ましくは0.05~1重量%、より好ましくは0.1~0.5重量%の量で、シェル中に存在する。
【0020】
特定の実施形態において、多段アクリル衝撃改質剤は、コアとシェルの間に1つ以上の中間層をさらに含み、これらのそれぞれは、独立して、コアおよびシェルポリマー全体について上記のモノマー組成物に由来する重合単位を含む。多段アクリル衝撃改質剤は、例えば、1、2、3、4、または5つの中間層を含むことができる。特定の実施形態において、1つ以上の中間層は、Tgが第1の中間層全体の幅にわたって最小から最大まで遷移するように、サブ層間に組成勾配を含む。特定の実施形態において、計算されたTgは、-50℃、-40℃、-30℃、-25℃、-15℃、または0℃の下限から70℃、55℃、35℃、または15℃の上限まで遷移する。理論に縛られることを望むものではないが、組成勾配は、第1の中間層を調製するために使用される乳化重合プロセス中のモノマーの適切な選択ならびに添加の方法およびタイミングによって達成されると考えられる。モノマーを一度にすべてではなく、段階的に乳化重合反応器(または反応容器)に添加し、1つの層を隣接する層に相互貫入させて第1の中間層にわたってTg勾配を生じさせる間に、多段重合プロセスを使用することができる。
【0021】
特定の実施形態において、多段アクリル衝撃改質剤は、Brookhaven BI-90 Particle Sizerによって測定される、100~500nm、好ましくは100~300nm、より好ましくは120~220nm、さらにより好ましくは150~200nm、の範囲の粒径を有する。
【0022】
本発明のポリマー組成物に含まれるポリマーを調製するのに適した重合技術には、例えば、米国特許第6,710,161号に開示されているような乳化重合および溶液重合が含まれ、好ましくは乳化重合が含まれる。水性乳化重合プロセスは、典型的には、水性反応媒体中に少なくとも1つのモノマーならびに種々の合成アジュバント、例えばフリーラジカル源、緩衝剤、および還元剤を含む水性反応混合物中で行われる。特定の実施形態において、分子量を制限するために連鎖移動剤を使用することができる。水性反応媒体は、水性反応混合物の連続流体相であり、水性反応媒体の重量に基づいて、50重量%を超える水、および場合により1つ以上の水混和性溶媒を含有する。好適な水混和性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、エチレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、およびジアセトンアルコールが挙げられる。特定の実施形態において、水性反応媒体は、水性反応媒体の重量に基づいて、90重量%を超える水、好ましくは95重量%を超える水、より好ましくは98重量%を超える水を含有する。
【0023】
本発明のPVC組成物は、炭酸カルシウムを含む。好適な炭酸カルシウムには、例えば、粉砕された天然炭酸カルシウム(沈殿炭酸カルシウムとは区別される「GCC」)が含まれる。特定の実施形態において、粉砕炭酸カルシウムは、400~900nm、好ましくは400~800nm、より好ましくは400~700nmのd50粒径値を有する。特定の実施形態において、粉砕炭酸カルシウムは、2.6μm未満、好ましくは2.5μm未満、より好ましくは2.4μm未満のd98粒径値を有する。特定の実施形態において、粉砕炭酸カルシウムは、2.0~1.3、好ましくは1.8~1.4、より好ましくは1.7~1.5のd50粒径値を有する粒子とd20粒径値を有する粒子の比率(d50/d20)を有する。特定の実施形態において、粉砕炭酸カルシウムは、PVCプロファイル組成物の総重量に基づいて、4~25phr、好ましくは5~20phr、より好ましくは6~18phrの量で、PVCプロファイル組成物中に存在する。
【0024】
本発明のPVCプロファイル組成物は、PVC加工の技術分野で知られている乾式混合または配合方法によって容易に調製される。例えば、本発明のポリ塩化ビニル、アクリル衝撃改質剤、および粉砕炭酸カルシウムは、高速ホット/コールドミキサー、および/またはコニーダー押出機を使用してブレンドおよび処理することができる。
【0025】
特定の実施形態において、本発明のPVCプロファイル組成物は、TiO2をさらに含む。TiO2の好適なグレードには、例えば、ルチルグレードのTiO2が含まれる。特定の実施形態において、TiO2は、PVCプロファイル組成物の総重量に基づいて、3~10phr、好ましくは3.5~8phr、より好ましくは4~6phrの量で、PVCプロファイル組成物中に存在する。
【0026】
本発明のポリマー組成物はまた、例えば、熱安定剤、可塑剤、酸化防止剤、UV吸収剤および光安定剤、染料、顔料、難燃剤、ならびに熱、老化、または光もしくは風化への曝露によって引き起こされる変色または劣化を防止、低減、または被覆するための他の添加剤を含む他の任意の成分を含有することもできる。このような成分によって提供される所望の特性を達成するのに有効な任意の成分量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0027】
上記のように、本発明のPVCプロファイル組成物は、例えば、窓用形材、パイプ、技術プロファイル、壁パネル、天井パネル、クラッディングパネル、またはワイヤ絶縁材での使用を含む最終用途を有する。本発明のPVCプロファイル組成物は、押出、カレンダリング、または射出成形によってフィルムおよび/またはシートに加工することができる。
【0028】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例において詳細に説明する。
【実施例】
【0029】
実施例1
例示および比較の粉砕炭酸カルシウムの粒径の特徴
本発明によるPVCプロファイル組成物に使用するための例示的な粉砕炭酸カルシウムおよび比較PVCプロファイル組成物に使用するための比較炭酸カルシウムは、表1に列挙されるような粒径の特性を有する。
【表1】
【0030】
実施例2
例示的なPVCプロファイル組成物の調製
本発明による例示的なPVCプロファイル組成物は、表2に列挙された成分を含有する。
【表2】
【0031】
実施例3
比較PVCプロファイル組成物の調製
比較PVCプロファイル組成物は、表3に列挙された成分を含有する。
【表3】
【0032】
実施例4
例示的なPVCプロファイル組成物の衝撃強度の特徴
実施例2で調製した本発明のPVCプロファイル組成物の単一Vノッチ-シャルピー衝撃強度(ISO179-1/1eCに従って測定)を、表4に示すように評価した。
【表4】
【0033】
実施例5
比較PVCプロファイル組成物の衝撃強度の特徴
実施例3で調製した比較のPVCプロファイル組成物の単一Vノッチ-シャルピー衝撃強度(ISO179-1/1eCに従って測定)を、表5に示すように評価した。
【表5】
【0034】
実施例6
例示および比較PVCプロファイル組成物の衝撃強度プロファイル比較
図1は、実施例5で決定した比較例C1、C2、およびC3と比較した、実施例4で決定した本発明の実施例E7、E4、およびE13の衝撃強度プロファイルを示す。データは、本発明に従って調製したPVCプロファイル組成物が衝撃強度の予想外の増加をもたらすことを実証している。
【0035】
図2は、実施例5で決定した比較例C4およびC5と比較した、実施例4で決定した本発明の実施例E1およびE2の衝撃強度プロファイルを示す。データは、本発明に従って調製したPVCプロファイル組成物が衝撃強度の予想外の増加をもたらすことを実証している。
【0036】
図3は、実施例5で決定した比較例C4およびC6と比較した、実施例4で決定した本発明の実施例E2およびE6の衝撃強度プロファイルを示す。データは、本発明に従って調製したPVCプロファイル組成物が衝撃強度の予想外の増加をもたらすことを実証している。
【0037】
実施例7
本発明および比較PVCプロファイル組成物の押出の特徴
本発明および比較PVCプロファイル組成物の押出の特徴は、表6に示された押出条件を使用して、長方形プロファイルダイを備えた円錐形二軸スクリュー押出機を使用して実施された。
【表6】
【0038】
実施例2で調製した本発明のPVCプロファイル組成物の押出の特徴を、表7に示すように評価した。
【表7】
【0039】
実施例3で調製した比較PVCプロファイル組成物の押出の特徴を、表8に示すように評価した。
【表8】
【0040】
押出データは、本発明のPVCプロファイル組成物の押出の特徴が、比較PVCプロファイル組成物で調製したものと少なくとも同等に優れていることを実証している。組成物中の衝撃改質剤およびGCCの添加レベルが増加すると、押出機のトルクおよび溶融圧力の両方が増加する。
【0041】
実施例9
本発明および比較PVCプロファイル組成物の光沢および色の特徴
本発明および比較PVCプロファイル組成物の光沢および色の特徴は、BYK Spectro-Guide、モデル6834を使用して、ISO 7724規格に従って押出プロファイルの表面で測定された。
【0042】
実施例2で調製した本発明のPVCプロファイル組成物の光沢および色の特徴は、表9に示すように評価された。
【表9】
【0043】
実施例3で調製した比較PVCプロファイル組成物の光沢および色の特徴は、表10に示すように評価された。
【表10】
【0044】
データは、本発明に従って調製したPVCプロファイル組成物が、比較PVCプロファイル組成物と比較した場合、押出プロファイルの光沢に関して予想外の向上をもたらすことを実証している。比較PVCプロファイル組成物と比較して、本発明のPVCプロファイル組成物のより良好な色の一貫性は、本発明による組成物により、より広い押出機加工窓が達成されることを示す。