(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20230404BHJP
B62D 21/00 20060101ALI20230404BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20230404BHJP
B60L 50/64 20190101ALI20230404BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D21/00 B
H01M50/249
B60L50/64
(21)【出願番号】P 2020083479
(22)【出願日】2020-05-11
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋田 樹徳
(72)【発明者】
【氏名】島崎 修
(72)【発明者】
【氏名】末若 大輔
(72)【発明者】
【氏名】池田 聡
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-188899(JP,A)
【文献】特開2005-271878(JP,A)
【文献】米国特許第09937781(US,B1)
【文献】特開2018-187978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62D 21/00-21/20
H01M 50/249
B60L 50/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用モータを有する電動車両であって、
キャビン及びフロントボディを有するボディと、
前記フロントボディの下部に取り付けられており、前記フロントボディと共にサスペンションを支持するサブフレームと、
前記キャビンの下部に取り付けられており、前記走行用モータに電力を供給するバッテリユニットとを備え、
前記サブフレームは、前記電動車両の前後方向に延びるサイドレールを有し、前記サイドレールの後端部において前記ボディのレール取付部に固定されており、
前記バッテリユニットは、前記前後方向の前方へ突出するブラケットを有し、前記ブラケットにおいて前記ボディの前記レール取付部に固定されて
おり、
前記サブフレームの前記サイドレールの後端面の少なくとも一部は、前記バッテリユニットの前記ブラケットの前端面と、前記前後方向において対向しており、
前記サブフレームの前記サイドレールの前記後端面は、前記バッテリユニットの前記ブラケットの前記前端面に対して、少なくとも前記電動車両の上下方向において下側にオフセットされている、
電動車両。
【請求項2】
前記サブフレームの前記サイドレールの前記後端面は、前記バッテリユニットの前記ブラケットの前記前端面に対して、少なくとも前記電動車両の左右方向においてオフセットされている、請求項
1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記サブフレームの前記サイドレールの前記後端面は、前記バッテリユニットの前記ブラケットの前記前端面に対して、前記左右方向において外側にオフセットされている、請求項
2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記サブフレームの前記サイドレールの前記後端面のうち、前記バッテリユニットの前記ブラケットの前記前端面と前記前後方向において対向する面積は、当該後端面の全面積の1/2以下である、請求項
1から
3のいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項5】
走行用モータを有する電動車両であって、
キャビン及びフロントボディを有するボディと、
前記フロントボディの下部に取り付けられており、前記フロントボディと共にサスペンションを支持するサブフレームと、
前記キャビンの下部に取り付けられており、前記走行用モータに電力を供給するバッテリユニットとを備え、
前記サブフレームは、前記電動車両の前後方向に延びるサイドレールを有し、前記サイドレールの後端部において前記ボディのレール取付部に固定されており、
前記バッテリユニットは、前記前後方向の前方へ突出するブラケットを有し、前記ブラケットにおいて前記ボディの前記レール取付部に固定されており、
前記サブフレームの前記サイドレールの前記後端部は、前記サイドレールの他の部分よりも細い
、
電動車両。
【請求項6】
走行用モータを有する電動車両であって、
キャビン及びフロントボディを有するボディと、
前記フロントボディの下部に取り付けられており、前記フロントボディと共にサスペンションを支持するサブフレームと、
前記キャビンの下部に取り付けられており、前記走行用モータに電力を供給するバッテリユニットとを備え、
前記サブフレームは、前記電動車両の前後方向に延びるサイドレールを有し、前記サイドレールの後端部において前記ボディのレール取付部に固定されており、
前記バッテリユニットは、前記前後方向の前方へ突出するブラケットを有し、前記ブラケットにおいて前記ボディの前記レール取付部に固定されており、
前記サブフレームの前記サイドレールの前記後端部は、前記ボディの前記レール取付部に対してボルトで固定されており、
前記サブフレームの前記サイドレールの前記後端部と、前記ボディとの間には、前記ボルトが通過する筒状のスペーサが設けられている
、
電動車両。
【請求項7】
前記ボディの前記レール取付部は、前記ボディのダッシュクロスメンバに設けられている、請求項1から
6のいずれか一項に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、走行用モータを有する電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、電動車両が開示されている。この電動車両は、キャビン及びフロントボディを有するボディと、フロントボディの下部に取り付けられており、フロントボディと共にサスペンションを支持するサブフレームと、キャビンの下部に取り付けられており、走行用モータに電力を供給するバッテリユニットとを備える。サブフレームは、電動車両の前後方向に延びるサイドレールを有し、サイドレールの後端部を含む複数個所において、ボディに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した電動車両では、サブフレームの後方に、バッテリユニットが配置されている。このような構成であると、電動車両が前面衝突したときに、後方へ移動するサブフレームが、バッテリユニットに損傷を与えるおそれがある。これを避けるためには、電動車両が前面衝突したときに、サブフレームとボディとの間の固定部分、特に、サイドレールの後端部とボディとの間の固定部分を破断させて、サイドレールの後端部をボディから離脱させることが望ましい。しかしながら、サイドレールの後端部とボディとの間の固定部分を、衝突時において確実に破断させるためには、その固定部分においてボディの耐力(塑性変形することなく耐え得る力)を高めることが必要となる。即ち、ボディの耐力が不十分であると、サイドレールの後端部とボディとの間の固定部分が破断することなく、ボディが塑性変形を起こしてしまう。ボディの耐力を高めるためには、ボディの構造を堅牢にすることが考えられるが、その一方でボディの重量を増大させてしまう。
【0005】
上記の実情を鑑みて、本明細書は、ボディの重量を増大させることなく、前面衝突時にバッテリユニットをサブフレームから保護し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術は、走行用モータを有する電動車両に具現化される。この電動車両は、キャビン及びフロントボディを有するボディと、フロントボディの下部に取り付けられており、フロントボディと共にサスペンションを支持するサブフレームと、キャビンの下部に取り付けられており、走行用モータに電力を供給するバッテリユニットとを備える。サブフレームは、電動車両の前後方向に延びるサイドレールを有し、サイドレールの後端部においてボディのレール取付部に固定されている。バッテリユニットは、前後方向の前方へ突出するブラケットを有し、ブラケットにおいてボディのレール取付部に固定されている。
【0007】
上記した電動車両では、サブフレームのサイドレールの後端部が、ボディに設けられたレール取付部に固定されており、そのレール取付部には、バッテリユニットに設けられたブラケットがさらに固定されている。このような構成によると、ボディのレール取付部が、バッテリユニットのブラケットによって支持されることで、ボディ自体の構造を変更することなく、ボディのレール取付部における耐力を実質的に高めることができる。これにより、電動車両が前面衝突したときに、サイドレールの後端部とボディのレール取付部との間の固定部分が破断し易くなり、サイドレールの後端部をボディからより確実に離脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】ボディ12の第1レール取付部50における、サブフレーム30の右サイドレール32の後端部32bと、バッテリユニット18の第1ブラケット52との位置関係を側面視で示す図。
【
図4】ボディ12の第1レール取付部50における、サブフレーム30の右サイドレール32の後端部32bと、バッテリユニット18の第1ブラケット52との位置関係を平面視で示す図。
【
図5】ボディ12の第2レール取付部56における、サブフレーム30の左サイドレール34の後端部34bと、バッテリユニット18の第2ブラケット58との位置関係を側面視で示す図。
【
図6】ボディ12の第2レール取付部56における、サブフレーム30の左サイドレール34の後端部34bと、バッテリユニット18の第2ブラケット58との位置関係を平面視で示す図。
【
図7】ボディ12の第1レール取付部50から離脱した右サイドレール32の後端部32bの挙動を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態において、サイドレールの後端面の少なくとも一部は、バッテリユニットのブラケットの前端面と、前後方向において対向していてもよい。このような構成によると、サイドレールの後端部とバッテリユニットのブラケットとの両者が、前後方向に沿って配列されたような位置関係となる。これにより、サイドレールからレール取付部に入力される衝突荷重のより多くを、バッテリユニットのブラケットによって受け止めることができる。レール取付部の耐力がさらに高まることとなり、電動車両の衝突時において、サイドレールの後端部をボディからより確実に離脱させることができる。
【0010】
上記した実施形態において、サブフレームのサイドレールの後端面は、バッテリユニットのブラケットの前端面に対して、少なくとも電動車両の上下方向においてオフセットされていてもよい。このような構成によると、電動車両の前面衝突時に、ボディのレール取付部から離脱したサイドレールの後端部を、バッテリユニットのブラケットに当接させることによって、バッテリユニットの上方又は下方へ逸らすことができる。
【0011】
上記した実施形態において、サブフレームのサイドレールの後端面は、バッテリユニットのブラケットの前端面に対して、電動車両の上下方向において下側にオフセットされていてもよい。このような構成によると、電動車両の前面衝突時に、ボディのレール取付部から離脱したサイドレールの後端部を、バッテリユニットのブラケットに当接させることによって、バッテリユニットの下方へ逸らすことができる。バッテリユニットの下方には、電動車両と路面との間のスペースが存在する。そのスペースへサイドレールの後端部が案内されることで、サイドレールの離脱に伴う二次的な損傷を回避することができる。
【0012】
上記に加え、又は代えて、サブフレームのサイドレールの後端面は、バッテリユニットのブラケットの前端面に対して、少なくとも電動車両の左右方向においてオフセットされていてもよい。このような構成によると、電動車両の前面衝突時に、ボディのレール取付部から離脱したサイドレールの後端部を、バッテリユニットのブラケットに当接させることによって、バッテリユニットの左方又は右方へ逸らすことができる。
【0013】
上記した実施形態において、サブフレームのサイドレールの後端面は、バッテリユニットのブラケットの前端面に対して、左右方向(即ち、電動車両の幅方向)において外側にオフセットされていてもよい。このような構成によると、電動車両の前面衝突時に、ボディのレール取付部から離脱したサイドレールの後端部を、バッテリユニットのブラケットに当接させることにより、電動車両の外側へ逸らすことができる。また、バッテリユニットに対して左右方向の外側には、例えばサイドシル(ロッカとも称される)といったボディの主要な骨格部材が存在している。従って、サブフレームのサイドレールの後端面が、バッテリユニットのブラケットの前端面に対して左右方向の外側にオフセットされていると、サイドレールの後端部からボディに入力された衝突荷重を、サイドシルといったボディの主要な骨格部材で受け止めることができる。
【0014】
本技術の一実施形態において、サブフレームのサイドレールの後端面のうち、バッテリユニットのブラケットの前端面と前後方向において対向する面積は、当該後端面の全面積の1/2以下であってよい。このような位置関係であると、後方に向けて(即ち、バッテリユニットに向けて)移動するサイドレールの後端部を、ブラケットと部分的に当接させることによって、バッテリユニットから有意に逸らすことができる。なお、他の実施形態として、後端面の上述した対向する面積は、後端面の全面積の1/4以下であってよく、あるいは1/8以下であってよい。
【0015】
本技術の一実施形態において、サブフレームのサイドレールの後端部は、サイドレールの他の部分よりも細くてもよい。このような構成によると、電動車両の前面衝突時にサイドレールの後端部が変形し易くなり、それによってボディのレール取付部が変形することを抑制することができる。これにより、サイドレールの後端部とボディのレール取付部との間の固定部分が破断し易くなり、サイドレールの後端部をボディからより確実に離脱させることができる。
【0016】
本技術の一実施形態において、サブフレームのサイドレールの後端部は、ボディのレール取付部に対して、ボルトで固定されていてもよい。この場合、サブフレームのサイドレールの後端部と、ボディのレール取付部との間には、ボルトが通過するスペーサ(例えば、少なくとも一つのカラー及び/又はワッシャ)が設けられていてもよい。このような構成によると、電動車両の前面衝突時に、サイドレールの後端部をボディのレール取付部に固定するボルトを、より確実に破断させることができる。
【0017】
本技術の一実施形態において、ボディのレール取付部は、ボディのダッシュクロスメンバに設けられていてもよい。この場合、レール取付部は、ダッシュクロスメンバと一体に設けられていてもよく、あるいは、ダッシュクロスメンバに例えば溶接等で取り付けられていてもよい。
【実施例】
【0018】
図面を参照して、実施例の電動車両10について説明する。
図1に示すように、電動車両10は、ボディ12と、複数の車輪14f、14rとを含む。ボディ12は、特に限定されないが、スチール材又はアルミニウム合金といった金属で構成されている。複数の車輪14f、14rは、ボディ12に対して回転可能に取り付けられている。複数の車輪14f、14rには、一対の前輪14fと、一対の後輪14rとが含まれる。なお、車輪14f、14rの数については、四つに限定されない。
【0019】
電動車両10は、走行用モータ16と、バッテリユニット18と、電力制御ユニット20(PCU20)と、電子制御ユニット22(ECU22)とをさらに備える。走行用モータ16は、複数の車輪14f、14rの少なくとも一つ(例えば、一対の後輪14r)を駆動する。バッテリユニット18は、PCU20を介して走行用モータ16に接続されており、走行用モータ16へ電力を供給する。バッテリユニット18は、複数の二次電池セルを内蔵しており、外部の電力によって繰り返し充電可能に構成されている。PCU20は、DC-DCコンバータ及び/又はインバータを内蔵しており、バッテリユニット18と走行用モータ16との間で伝達される電力を制御する。ECU22は、プロセッサを有しており、例えばユーザの操作に応じてPCU20へ制御指令を与える。なお、電動車両10は、バッテリユニット18に加えて、燃料電池ユニットや太陽電池パネルといった他の電源を備えてもよい。また、電動車両10は、走行用モータ16に加えて、エンジンといった他の原動機をさらに備えてもよい。
【0020】
ここで、図面における方向FRは、電動車両10の前後方向における前方を示し、方向RRは電動車両10の前後方向における後方を示す。また、方向LHは電動車両10の左右方向(あるいは幅方向)における左方を示し、方向RHは電動車両10の左右方向における右方を示す。そして、方向UPは電動車両10の上下方向における上方を示し、方向DWは電動車両10の上下方向における下方を示す。なお、本明細書では、電動車両10の前後方向、電動車両10の左右方向、電動車両10の上下方向を、それぞれ単に前後方向、左右方向、上下方向と称することがある。
【0021】
図1に示すように、ボディ12は、概して、フロントボディ12fと、キャビン12cと、リアボディ12rとを有する。フロントボディ12fは、キャビン12cの前方に位置しており、リアボディ12rは、キャビン12cの後方に位置している。フロントボディ12fの下部には、サブフレーム30が取り付けられている。サブフレーム30は、フロントボディ12fと共に、前輪14fのサスペンション24を支持している。サブフレーム30は、特に限定されないが、スチール材又はアルミニウム合金といった金属で構成されている。一方、キャビン12cの下部には、前述したバッテリユニット18が取り付けられている。
【0022】
図2に示すように、サブフレーム30は、概して枠状の形状を有しており、一対の右サイドレール32及び左サイドレール34と、それらの間を延びるフロントクロスメンバ36及びリアクロスメンバ38とを備える。右サイドレール32と左サイドレール34は、左右方向において互いに対称な形状を有しており、それぞれ車両の前後方向に沿って延びている。二つのサイドレール32、34の前端部32a、34aには、図示省略するが、クラッシュボックスを介してバンパリインフォースメントが取り付けられる。なお、二つのサイドレール32、34の具体的な形状や構造については、特に限定されない。
【0023】
サブフレーム30は、右サイドレール32の前端部32a及び後端部32bと、左サイドレール34の前端部34a及び後端部34bとを含む、複数の固定箇所においてボディ12に固定される。特に限定されないが、サブフレーム30には、複数のボルト42が設けられており、それらのボルト42を用いることによって、サブフレーム30はボディ12に固定される。また、サブフレーム30には、各々のボルト42に対してカラー44が設けられている。カラー44は、筒状のスペーサの一例であって、ボルト42はカラー44を通過して延びている。サブフレーム30がボディ12に取り付けられたときに、カラー44は、サブフレーム30とボディ12との間に位置する。ここで、これらのカラー44は、サブフレーム30と一体に形成されていてもよいし、サブフレーム30とは別の部材で構成されてもよい。
【0024】
図3、
図4に示すように、サブフレーム30の右サイドレール32の後端部32bは、ボディ12に設けられた第1レール取付部50に固定されている。この第1レール取付部50には、バッテリユニット18に設けられた第1ブラケット52がさらに固定されている。第1ブラケット52は、バッテリユニット18から前方に延びており、例えばボルト54によって第1レール取付部50に固定されている。このように、ボディ12の第1レール取付部50には、右サイドレール32の後端部32bだけでなく、バッテリユニット18の第1ブラケット52も固定されている。
【0025】
右サイドレール32の後端部32bは、バッテリユニット18の第1ブラケット52に近接しているが、第1ブラケット52に対して上下方向及び左右方向にオフセットされている。詳しくは、右サイドレール32の後端面32cは、バッテリユニット18の第1ブラケット52の前端面52aに対して、上下方向の下側にオフセットされている。また、右サイドレール32の後端面32cは、バッテリユニット18の第1ブラケット52の前端面52aに対して、左右方向の右側(即ち、外側)にオフセットされている。これにより、右サイドレール32の後端面32cの一部のみが、バッテリユニット18の第1ブラケット52の前端面52aに対して、前後方向で対向するように構成されている。
【0026】
図5、
図6に示すように、サブフレーム30の左サイドレール34の後端部34bは、ボディ12に設けられた第2レール取付部56に固定されている。この第2レール取付部56にも、バッテリユニット18に設けられた第2ブラケット58がさらに固定されている。第2ブラケット58は、第1ブラケット52と同様にバッテリユニット18から前方に延びており、例えばボルト60によって第2レール取付部56に固定されている。このように、ボディ12の第2レール取付部56には、左サイドレール34の後端部34bだけでなく、バッテリユニット18の第2ブラケット58も固定されている。
【0027】
左サイドレール34の後端部34bもまた、バッテリユニット18の第2ブラケット58に近接しているが、第2ブラケット58に対して上下方向及び左右方向にオフセットされている。詳しくは、左サイドレール34の後端面34cは、バッテリユニット18の第2ブラケット58の前端面58aに対して、上下方向の下側にオフセットされている。また、左サイドレール34の後端面34cは、バッテリユニット18の第2ブラケット58の前端面58aに対して、左右方向の左側(即ち、外側)にオフセットされている。これにより、左サイドレール34の後端面34cの一部のみが、バッテリユニット18の第2ブラケット58の前端面58aに対して、前後方向で対向するように構成されている。
【0028】
本実施例の電動車両10では、サブフレーム30の後方に、バッテリユニット18が配置されている。このような構成であると、電動車両10が前面衝突したときに、後方へ移動するサブフレーム30が、バッテリユニット18に損傷を与えるおそれがある。これを避けるためには、電動車両10が前面衝突したときに、サイドレール32、34の後端部32b、34bと、ボディ12のレール取付部50、56との間の固定部分を破断させて、サイドレール32、34の後端部32b、34bをボディ12から離脱させることが望ましい。しかしながら、レール取付部50、56の耐力(塑性変形することなく耐え得る力)が不十分であると、サイドレール32、34の後端部32b、34bとレール取付部50、56との間の固定部分が破断することなく、ボディ12が塑性変形を起こしてしまう。
【0029】
上記に関して、本実施例の電動車両10では、サブフレーム30のサイドレール32、34の後端部32b、34bが、ボディ12に設けられたレール取付部50、56に固定されており、そのレール取付部50、56には、バッテリユニット18に設けられたブラケット52、58がさらに固定されている。このような構成によると、ボディ12のレール取付部50、56が、バッテリユニット18のブラケット52、58によって支持されることで、ボディ12のレール取付部50、56における耐力を実質的に高めることができる。これにより、
図7に示すように、電動車両10が前面衝突したときに、サイドレール32、34の後端部32b、34bと、ボディ12のレール取付部50、56との間の固定部分(例えば、レール取付部50、56におけるボルト42の固定箇所)が破断し易くなり、サイドレール32、34の後端部32b、34bをボディ12からより確実に離脱させることができる。ボディ12のレール取付部50、56を堅牢に構成する必要がないので、ボディ12の重量を増大させることなく、前面衝突時において、バッテリユニット18をサブフレーム30から効果的に保護することができる。
【0030】
特に限定されないが、サイドレール32、34の後端面32c、34cの少なくとも一部は、バッテリユニット18のブラケット52、58の前端面52a、58aと、前後方向において対向している。このような構成によると、サイドレール32、34の後端部32c、34cとバッテリユニット18のブラケット52、58との両者が、前後方向に沿って配列されたような位置関係となる。これにより、サイドレール32、34からレール取付部50、56に入力される衝突荷重のより多くを、バッテリユニット18のブラケット52、58によって受け止めることができる。レール取付部50、56の実質的な耐力がさらに高まることとなり、電動車両10の衝突時において、サイドレール32、34の後端部32b、34bをボディ12からより確実に離脱させることができる。
【0031】
本実施例の電動車両10では、前述したように、サブフレーム30のサイドレール32、34の後端面32c、34cが、バッテリユニット18のブラケット52、58の前端面52a、58aに対して、上下方向の下側にオフセットされている。このような構成によると、ボディ12のレール取付部50、56から離脱したサイドレール32、34の後端部32b、34bを、バッテリユニット18のブラケット52、58に当接させることによって、バッテリユニット18の下方へ逸らすことができる。バッテリユニット18の下方には、電動車両10と路面との間のスペースが存在する。そのスペースへサイドレール32、34の後端部32b、34bが案内されることで、サイドレール32、34の離脱に伴う二次的な損傷を回避することができる。但し、他の実施形態として、サイドレール32、34の後端面32c、34cは、ブラケット52、58の前端面52a、58aに対して、上下方向の上側にオフセットされていてもよい。
【0032】
本実施例の電動車両10では、前述したように、サブフレーム30のサイドレール32、34の後端面32c、34cが、バッテリユニット18のブラケット52、58の前端面52a、58aに対して、左右方向の外側にオフセットされている。このような構成によると、ボディ12のレール取付部50、56から離脱したサイドレール32、34の後端部32b、34bを、バッテリユニット18のブラケット52、58に当接させることにより、電動車両10の外側へ逸らすことができる。また、バッテリユニット18に対して左右方向の外側には、例えばサイドシル(ロッカとも称される)といったボディ12の主要な骨格部材が存在している。従って、サイドレール32、34の後端面32c、34cが、ブラケット52、58の前端面52a、58aに対して左右方向の外側にオフセットされていると、サイドレール32、34の後端部32b、34bからボディ12に入力された衝突荷重を、サイドシルといったボディ12の主要な骨格部材で受け止めることができる。但し、他の実施形態として、サイドレール32、34の後端面32c、34cは、ブラケット52、58の前端面52a、58aに対して、左右方向の内側にオフセットされていてもよい。
【0033】
特に限定されないが、サブフレーム30のサイドレール32、34の後端面32c、34cのうち、バッテリユニット18のブラケット52、58の前端面52a、58aと前後方向において対向する面積は、当該後端面32c、34cの全面積の1/2以下であってよい。このような位置関係であると、後方に向けて(即ち、バッテリユニット18に向けて)移動するサイドレール32、34の後端部32b、34bを、ブラケット52、58と部分的に当接させることによって、バッテリユニット18から有意に逸らすことができる。なお、後端面32c、34cの上述した対向する面積は、後端面32c、34cの全面積の1/4以下であってよく、あるいは1/8以下であってもよい。
【0034】
図3、
図5に示すように、サブフレーム30のサイドレール32、34の後端部32b、34bは、サイドレール32、34の他の部分よりも細くてもよい。このような構成によると、電動車両10の前面衝突時にサイドレール32、34の後端部32b、34bが変形し易くなり、それによってボディ12のレール取付部50、56が変形することを抑制することができる。これにより、サイドレール32、34の後端部32b、34bとボディ12のレール取付部50、56との間の固定部分(即ち、ボルト42)が破断し易くなり、サイドレール32、34の後端部32b、34bをボディ12からより確実に離脱させることができる。
【0035】
本実施例の電動車両10では、特に限定されないが、サブフレーム30のサイドレール32、34の後端部32b、34bが、ボディ12のレール取付部50、56に対して、ボルト42で固定されている。そして、サイドレール32、34の後端部32b、34bと、ボディ12のレール取付部50、56との間には、ボルト42が通過するカラー44が設けられている。このような構成によると、電動車両10の前面衝突によってサブフレーム30が後方へ移動したときに、レール取付部50、56においてボルト42が固定されている箇所に、比較的に大きな力が局所的に作用し得る。これにより、サイドレール32、34の後端部32b、34bと、ボディ12のレール取付部50、56との間の固定部分(特に、レール取付部50、56におけるボルト42の固定箇所)を、より確実に破断させることができる。
【0036】
本実施例の電動車両10では、特に限定されないが、ボディ12のレール取付部50、56は、ボディ12のダッシュクロスメンバ62に設けられている。ここで、ダッシュクロスメンバ62は、ボディ12の骨格を構成する部材(部分)の一つであり、キャビン12cとフロントボディ12fとを区分するダッシュパネル(図示省略)に沿って、左右方向に延びている。レール取付部50、56は、ダッシュクロスメンバ62と一体に設けられていてもよいし、ダッシュクロスメンバ62に例えば溶接等で取り付けられていてもよい。但し、他の実施形態として、レール取付部50、56は、ボディ12のダッシュクロスメンバ62とは異なる部分に設けられていてもよい。
【0037】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書、又は、図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書又は図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0038】
10:電動車両
12:ボディ
12c:キャビン
12f:フロントボディ
16:走行用モータ
18:バッテリユニット
20:電力制御ユニット(PCU)
22:電子制御ユニット(ECU)
24:サスペンション
30:サブフレーム
32、34:サイドレール
42:ボルト
44:カラー
50、56:レール取付部
52、58:ブラケット
62:ダッシュクロスメンバ