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特許7256160エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、およびその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/10 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
C08G59/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020192138
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022080916
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2023-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠島 隆行
(72)【発明者】
【氏名】窪木 健一
(72)【発明者】
【氏名】鎗田 正人
(72)【発明者】
【氏名】中西 政隆
(72)【発明者】
【氏名】川野 裕介
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-260819(JP,A)
【文献】特開平1-215822(JP,A)
【文献】国際公開第2020/054601(WO,A1)
【文献】特開昭62-155241(JP,A)
【文献】特開昭62-155242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/10
CAPlus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(5)で表されるエポキシ樹脂であって、
下記式(2)~(4)で表されるエポキシ樹脂の総含有量が下記式(5)で表されるエポキシ樹脂中80面積%以下であるエポキシ樹脂。
【化1】
(式(1)中、nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<5である。)
【化2】
【請求項2】
前記式(5)においてn=1である成分が80面積%以下である請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、硬化剤を含有する請求項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定構造を有するエポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤と硬化させることにより、機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。エポキシ樹脂および硬化剤をマトリックス樹脂として強化繊維に含浸、硬化させた炭素繊維強化複合材料(CFRP)は、軽量化・高強度化といった特性を付与できることから、近年、航空機構造用部材、風車の羽根、自動車外板およびICトレイやノートパソコンの筐体(ハウジング)などのコンピュータ用途等に広く展開され、特に、その成型体の軽量且つ高強度という特性をいかして航空機用途のマトリックスレジンに使用されている。
【0003】
一般にCFRP等のマトリックスレジンに使用される樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等の材料が使用されており、航空機用途においては、グリシジルアミン型のエポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等の材料が使用されている。
【0004】
近年はCFRPに対する要求特性は厳しくなっており、航空宇宙用途や車両などの構造材料に適用する場合は、180℃以上の耐熱性が必要となっている(特許文献1)。グリシジルアミン系の材料は高い耐熱性を有するが、吸水率が高く、吸水後の特性悪化の課題がある。一方、一般的なグリシジルエーテル型エポキシ樹脂は吸水率が比較的低いもののその弾性率が低いという課題がある。そのため、高耐熱性と高弾性率、そして低吸水率を満たす材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2010/204173号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑み、その硬化物が高耐熱、高弾性率、低吸水率であるエポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明を完成させるに到った。すなわち本発明は以下の[1]~[8]に関する。
[1]
下記式(1)で表されるエポキシ樹脂であって、
下記式(2)~(4)で表されるエポキシ樹脂の総含有量が下記式(1)で表されるエポキシ樹脂中80面積%以下であるエポキシ樹脂。
【0008】
【化1】
【0009】
(式(1)中、nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<5である。)
【0010】
【化2】
【0011】
[2]
前記式(1)においてn=1である成分が80面積%以下である前項[1]に記載のエポキシ樹脂。
[3]
下記式(5)で表される前項[1]または[2]に記載のエポキシ樹脂。
【0012】
【化3】
【0013】
(式(1)中、nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<5である。)
[4]
前項[1]乃至[3]のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物。
[5]
さらに、硬化剤を含有する前項[4]に記載の硬化性樹脂組成物。
[6]
前項[4]又[5]に記載の硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物。
【発明の効果】
【0014】
本発明は特定構造を有するエポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物およびその硬化物に関するものであり、その硬化物は高耐熱性、高弾性率、低吸水性を有する。
そのため、本発明は電気電子部品用絶縁材料(高信頼性半導体封止材料など)及び積層板(プリント配線板、ビルドアップ基板など)やCFRPを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】合成例1のGPCチャートを示す。
図2】合成例1のH-NMRチャートを示す。
図3】合成例1のHPLCチャートを示す。
図4】実施例1のGPCチャートを示す。
図5】実施例1のH-NMRチャートを示す。
図6】実施例1のHPLCチャートを示す。
図7】参考例1のGPCチャートを示す。
図8】参考例1のH-NMRチャートを示す。
図9】参考例1のHPLCチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明のエポキシ樹脂は、前駆体として下記式(6)で表される芳香族アミン樹脂を用いることができる。
【0018】
【化4】
【0019】
(式(6)中、nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<5である。)
【0020】
式(6)で表される芳香族アミン樹脂は、下記式(7)で表されるときがより好ましい。式(6)においてアミノ基が結合していないベンゼン環に対する各イソプロピリデン結合の置換位置がオルソ位、もしくはパラ位のときと比べて結晶性が低下するからである。結晶性が低下することで溶剤安定性が増し、樹脂溶液の調整が容易となる。また、これから誘導される化合物についても結晶性が低減できる。このため組成物化後の保管中に結晶が析出することを抑制することもできる。
【0021】
【化5】
【0022】
(式(7)中、nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<5である。)
【0023】
前記式(6)または式(7)で表される芳香族アミン樹脂の製法は特に限定されない。例えば、特開昭61-000044号公報では、アニリンとm-ジソプロペニルベンゼンまたはm-ジ(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンとを、酸性触媒の存在下で180~250℃で反応させることにより前記式(4)におけるn=1体が主成分として得られるが、この中には1,3-ビス(p-アミノクミル)ベンゼン、1-(o-アミノクミル)-3-(p-アミノクミル)ベンゼン、1,3-ビス(o-アミノクミル)ベンゼンの3つの異性体が含まれている。さらに、副成分としてn=2~5体も生成されるが、特開昭61-000044号公報ではこれらを晶析により精製して純度98%の1,3-ビス(p-アミノクミル)ベンゼンを得ている。
本発明では、従来不要成分として除去されていた芳香族アミン樹脂中の異性体や高分子成分に着目し、これらを除去することなくエポキシ化することで高耐熱性・低吸水・高弾性率を発現する低粘度なエポキシ樹脂を開発するに至った。
すなわち、本発明のエポキシ樹脂の原料となるアミン樹脂は、晶析等の精製工程が不要であるため、短時間且つ安価に製造が可能であり、産業上の利用可能性を高めるものである。
【0024】
前記式(6)で表される芳香族アミン樹脂を合成する際に用いる酸性触媒は、塩酸、燐酸、硫酸、蟻酸、塩化亜鉛、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、活性白土、イオン交換樹脂等が挙げられる。これらは単独でも二種以上併用しても良い。触媒の使用量は、使用するアニリンに対して、0.1~50重量%、好ましくは1~30重量%であり、多すぎると反応溶液の粘度が高すぎて攪拌が困難になり、少なすぎると反応の進行が遅くなる。
【0025】
反応は必要によりトルエン、キシレンなどの有機溶剤を使用して行っても、無溶剤で行っても良い。例えば、アニリンと溶剤の混合溶液に酸性触媒を添加した後、触媒が水を含む場合は共沸により水を系内から除くことが好ましい。しかる後にジソプロペニルベンゼンまたはジ(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンを添加し、その後溶剤を系内から除きながら昇温して140~220℃、好ましくは160~200℃で、5~50時間、好ましくは5~30時間反応を行う。ジ(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンを使用した時には水が副生されるため、昇温時に溶剤と共沸させながら系内から除去する。反応終了後、アルカリ水溶液で酸性触媒を中和後、油層に非水溶性有機溶剤を加えて廃水が中性になるまで水洗を繰り返したのち、溶剤および過剰のアニリン誘導体を加熱減圧下において除去する。活性白土やイオン交換樹脂を用いた場合は、反応終了後に反応液を濾過して触媒を除去する。
また、反応温度や触媒の種類によってはジフェニルアミンが副生するため、高温・高真空下で、もしくは水蒸気蒸留等の手段を用いて、ジフェニルアミン誘導体を1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下まで除去する。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂は、下記式(1)で表されるものであり、下記式(2)~(4)で表されるエポキシ樹脂の総含有量が下記式(1)で表されるエポキシ樹脂中80面積%以下である。
【0027】
【化6】
【0028】
(式(1)中、nは繰り返し数であり、その平均値は1<n<5である。)
【0029】
【化7】
【0030】
式(1)において、nは1<n<5であることが好ましく、1<n<3であることがさらに好ましい。
【0031】
前記式(1)で表されるエポキシ樹脂中の前記式(2)~(4)で表されるエポキシ樹脂の総含有量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析、および高速液体クロマトグラフィー分析の2つを用いた分析方法により求めることができる。本発明では以下の条件で分析を行った。
【0032】
・GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析
カラム:SHODEX GPC KF-601(2本)、KF-602、KF-602.5、KF-603
流速:0.5ml/min.
カラム温度:40℃
使用溶剤:THF(テトラヒドロフラン)
検出器:RI(示差屈折検出器)
【0033】
・HPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析
カラム:Inertsil ODS-2
流速:1.0ml/min.
カラム温度:40℃
使用溶剤:アセトニトリル・10mmоl/Lのリン酸水溶液
検出器:フォトダイオードアレイ(274nm)
【0034】
具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析により、前記式(1)で表されるエポキシ樹脂中のn=1成分の含有量(α)を求め、高速液体クロマトグラフィー分析によりn=1成分中に含まれる前記式(2)~(4)で表されるエポキシ樹脂の含有量(β2~β4)を求めることができる。そのため、たとえば、αとβ2の積は前記式(1)で表されるエポキシ樹脂中に含まれる前記式(2)で表されるエポキシ樹脂の含有量となる。
【0035】
本発明のエポキシ樹脂は、前記式(1)で表されるエポキシ樹脂中の前記式(2)~(4)で表されるエポキシ樹脂の総含有量が80面積%以下であることが好ましく、70面積%であることがさらに好ましく、60面積%以下であることが最も好ましい。80面積%以下であると配向性および分子量分布制御がなされるため、同時に発現困難な特性である高耐熱性、低吸水性、高弾性率を併せもったエポキシ樹脂を得ることができることからである。また、下限値は0面積%でも構わないが、20面積%以上であることが好ましく、40面積%以上であることがさらに好ましい。
【0036】
また、本発明のエポキシ樹脂は前記式(1)においてn=1である成分が80面積%以下であることが好ましく、70面積%であることがさらに好ましく、65面積%以下であることが最も好ましい。80面積%以下であると分子の剛直性がより高くなるため、高い弾性率や低吸水性を発現しやすくなることからである。また、下限値は0面積%でも構わないが、20面積%以上であることが好ましく、40面積%以上であることがさらに好ましい。
【0037】
前記式(1)で表されるエポキシ樹脂は下記式(5)で表されるときがより好ましい。各イソプロピリデン構造や架橋点同士がより隣接することで、その立体障害に起因して分子の剛直性が向上し、高い弾性率と低吸水性を発現しやすくなるためである。
【0038】
【化8】
【0039】
式(5)中、nの値および好ましい範囲は、式(1)と同様である。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂の製法は特に限定されないが、たとえば前記式(6)で表される芳香族アミン樹脂とエピハロヒドリンを溶剤、触媒の存在下に付加もしくは閉環反応させることで得ることができる。エピハロヒドリンの使用量はアミン化合物のアミノ基1モルに対し通常3.0~20.0モル、好ましくは3.5~10.0モルである。
【0041】
エポキシ化反応において使用できるアルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ金属水酸化物は固形物であっても、その水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、更に分液して水を除去し、エピハロヒドリンを反応系内に連続的に戻す方法でもよい。アルカリ金属水酸化物の使用量はアミン化合物のアミノ基1モルに対して通常0.9~2.5モルであり、好ましくは0.95~1.5モルである。アルカリ金属水酸化物の使用量が少ないと反応が十分に進行しない。一方で、アミン化合物のアミノ基1モルに対して2.5モルを超えるアルカリ金属水酸化物の過剰使用は不必要な廃棄物の副生を招く。
【0042】
上記反応を促進するためにテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加しても良い。4級アンモニウム塩の使用量としてはアミン化合物のアミノ基1モルに対し通常0.1~15gであり、好ましくは0.2~10gである。使用量が少なすぎると十分な反応促進効果が得られず、使用量が多すぎるとエポキシ樹脂中に残存する4級アンモニウム塩量が増えてしまうため、電気信頼性を悪化させる原因ともなり得る。
【0043】
エポキシ化反応の際、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが反応進行上好ましい。アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの使用量に対し通常2~50重量%、好ましくは4~20重量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの使用量に対し通常5~100重量%、好ましくは10~80重量%である。反応温度は通常30~90℃であり、好ましくは35~80℃である。反応時間は通常0.5~100時間であり、好ましくは1~30時間である。
反応終了後、反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収したエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行い、閉環を確実なものにすることもできる。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はグリシジル化に使用したアミン化合物のアミノ基1モルに対して通常0.01~0.3モル、好ましくは0.05~0.2モルである。反応温度は通常50~120℃、反応時間は通常0.5~24時間である。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下溶剤を留去することにより本発明のエポキシ樹脂が得られる。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂は通常は常温で液状~固体の樹脂状であり、その軟化点は100℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは80℃以下である。軟化点が100℃より高い場合、粘度が高く、プリプレグ作成時に繊維含侵性が低下する。また、そのエポキシ当量は142~1000g/eqであることが好ましく、さらに好ましくは150~500g/eq、特に好ましくは170~450g/eq、最も好ましくは180~400g/eqである。
【0045】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、式(1)で表されるエポキシ樹脂は単独、または他のエポキシ樹脂と併用して使用することができる。併用する場合、式(1)で表されるエポキシ樹脂が全エポキシ樹脂中に占める割合は10~98重量%であることが好ましく、より好ましくは20~95重量%、さらに好ましくは30~95重量%である。添加量を10%以上とすることで弾性率向上や低吸水性を発現することができる。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂と併用されうる他のエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビスフェノールAD等)もしくはフェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等)との重縮合物;前記フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物;前記フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物;前記フェノール類と芳香族ジメタノール類(ベンゼンジメタノール、ビフェニルジメタノール等)との重縮合物;前記フェノール類と芳香族ジクロロメチル類(α,α’-ジクロロキシレン、ビスクロロメチルビフェニル等)との重縮合物;前記フェノール類と芳香族ビスアルコキシメチル類(ビスメトキシメチルベンゼン、ビスメトキシメチルビフェニル、ビスフェノキシメチルビフェニル等)との重縮合物;前記ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物またはアルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられるが、通常用いられるエポキシ樹脂であればこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0047】
本発明のエポキシ樹脂組成物において使用しうる硬化剤としては、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物などが挙げられる。使用できる硬化剤の具体例としては、例えばo-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、2,2’-ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’,5,5’-テトラメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’,5,5’-テトラエチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’,5,5’-テトライソプロピルジフェニルメタン、4,4’-メチレンビス(N-メチルアニリン)、ビス(アミノフェニル)フルオレン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-(1,3-フェニレンジソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’-(1,4-フェニレンジソプロピリデン)ビスアニリン、ナフタレンジアミン、ベンジジン、ジメチルベンジジン、国際公開第2017/170551号合成例1および合成例2に記載の芳香族アミン化合物等の芳香族アミン化合物、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、ノルボルナンジアミン、エチレンジアミン、プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマージアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン等が挙げられるが、これに限定されず、組成物に付与したい特性に応じ好適に用いることができる。ポットライフを確保するためには芳香族アミンを使用することが好ましく、即硬化性を付与したい場合には脂肪族アミンを使用することが好ましい。2官能成分を主成分として含有するアミン系化合物を硬化剤として用いることで、硬化反応時、直線性の高いネットワークを構築することができ、特に優れた強靭性を発現することができる。また、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミド系化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系化合物;ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビスフェノールAD等)もしくはフェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等)との重縮合物、または前記フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物、または前記フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物、または前記フェノール類と芳香族ジメタノール類(ベンゼンジメタノール、ビフェニルジメタノール等)との重縮合物、または前記フェノール類と芳香族ジクロロメチル類(α,α’-ジクロロキシレン、ビスクロロメチルビフェニル等)との重縮合物、または前記フェノール類と芳香族ビスアルコキシメチル類(ビスメトキシメチルベンゼン、ビスメトキシメチルビフェニル、ビスフェノキシメチルビフェニル等)との重縮合物、または前記ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物、及びこれらの変性物等のフェノール系化合物;イミダゾール、トリフルオロボラン-アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられるがこれらに限定されることはない。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.5~1.5当量が好ましく、0.6~1.2当量が特に好ましい。0.5~1.5当量とすることで良好な硬化物性を得ることができる。
【0049】
上記硬化剤を用いて硬化反応を行う際には硬化促進剤を併用しても差し支えない。使用できる硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフトエ酸、サリチル酸等のカルボン系酸化合物などが挙げられる。アミン系化合物とエポキシ樹脂の硬化反応を促進する観点からサリチル酸等のカルボン酸系化合物が好ましい。硬化促進剤は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.01~15重量部が必要に応じ用いられる。
【0050】
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これら無機充填剤は、用途によりその使用量は異なるが、例えば半導体の封止剤用途に使用する場合はエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性、耐湿性、力学的性質、難燃性などの面からエポキシ樹脂組成物中で20重量%以上占める割合で使用するのが好ましく、より好ましくは30重量%以上であり、特にリードフレームとの線膨張率を向上させるために70~95重量%を占める割合で使用することがさらに好ましい。
【0051】
本発明のエポキシ樹脂組成物には成形時の金型との離型を良くするために離型剤を配合することができる。離型剤としては従来公知のものいずれも使用できるが、例えばカルナバワックス、モンタンワックスなどのエステル系ワックス、ステアリン酸、パルチミン酸などの脂肪酸およびこれらの金属塩、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレンなどのポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上併用しても良い。これら離型剤の配合量は全有機成分に対して0.5~3重量%が好ましい。これより少なすぎると金型からの離型が悪く、多すぎるとリードフレームなどとの接着が悪くなる。
【0052】
本発明のエポキシ樹脂組成物には無機充填剤と樹脂成分との接着性を高めるためにカップリング剤を配合することができる。カップリング剤としては従来公知のものをいずれも使用できるが、例えばビニルアルコキシシラン、エポキアルコキシシラン、スチリルアルコキシシラン、メタクリロキシアルコキシシラン、アクリロキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、イソシアナートアルコキシシランなどの各種アルコキシシラン化合物、アルコキシチタン化合物、アルミニウムキレート類などが挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上併用しても良い。カップリング剤の添加方法は、カップリング剤であらかじめ無機充填剤表面を処理した後、樹脂と混練しても良いし、樹脂にカップリング剤を混合してから無機充填剤を混練しても良い。
【0053】
更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて公知の添加剤を配合することが出来る。用いうる添加剤の具体例としては、ポリブタジエン及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂、マレイミド系化合物、シアネートエステル系化合物、シリコーンゲル、シリコーンオイル、並びにカーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤などが挙げられる。
【0054】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば、エポキシ樹脂と硬化剤、並びに必要により硬化促進剤、無機充填剤、離型剤、シランカップリング剤及び添加剤とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合することより本発明のエポキシ樹脂組成物を得て、これを溶融注型法あるいはトランスファー成型法やインジェクション成型法、圧縮成型法などによって成型し、更に80~200℃で2~10時間に加熱することにより硬化物を得ることができる。
【0055】
また本発明のエポキシ樹脂組成物は必要に応じて溶剤を含んでいてもよい。溶剤を含むエポキシ樹脂組成物(エポキシ樹脂ワニス)はガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの繊維状物質(基材)に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物とすることができる。このエポキシ樹脂組成物の溶剤含量は、内割りで通常10~70重量%、好ましくは15~70重量%程度である。溶剤としては例えばγ-ブチロラクトン類、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤;テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、好ましくは低級(炭素数1~3)アルキレングリコールのモノ又はジ低級(炭素数1~3)アルキルエーテル;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、好ましくは2つのアルキル基が同一でも異なってもよいジ低級(炭素数1~3)アルキルケトン;トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤等が挙げられる。これらは単独であっても、また2以上の混合溶媒であってもよい。
【0056】
また、剥離フィルム上に前記エポキシ樹脂ワニスを塗布し加熱下で溶剤を除去、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤(本発明のシート)を得ることができる。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することができる。
【0057】
本発明で得られる硬化物は各種用途に使用できる。詳しくはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される一般の用途が挙げられ、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止剤の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
【0058】
接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
【0059】
封止剤としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSI用などのポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TABなど用のといったポッティング封止、フリップチップ用のアンダーフィル、QFP、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)などを挙げることができる。
【実施例
【0060】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また実施例において、エポキシ当量はJIS K-7236、軟化点はJIS K-7234に準じた方法で測定した。
【0061】
・GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析
カラム:SHODEX GPC KF-601(2本)、KF-602、KF-602.5、KF-603
流速:0.5ml/min.
カラム温度:40℃
使用溶剤:THF(テトラヒドロフラン)
検出器:RI(示差屈折検出器)
【0062】
・HPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析
カラム:Inertsil ODS-2
流速:1.0ml/min.
カラム温度:40℃
使用溶剤:アセトニトリル・10mmоl/Lのリン酸水溶液
検出器:フォトダイオードアレイ(274nm)
【0063】
[合成例1]
温度計、冷却管、分留管、撹拌機を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、アニリン559部、α,α,α’,α’-テトラメチルベンゼンジメタノール291部(富士フィルム和光純薬株式会社製)、トルエン360部を加え、35%塩酸水溶液63部を加え、攪拌を開始した。脱水により生成する水をトルエンとともに抜き出しながら内温を160℃まで昇温し、15時間反応させた。室温まで放冷し、抜き出したトルエンおよび水を系内へ戻し、30%水酸化ナトリウム水溶液88部添加し、中和を施した。その後、廃液が中性になるまで有機層を水洗後濃縮し、芳香族アミン樹脂(A1)を458部得た。芳香族アミン樹脂(A1)のアミン当量は185g/eq、軟化点は58.7℃であった。GPC分析(RI)により、n=1体は61面積%であり、HPLC分析によるn=1体中の4,4’-(1,3-フェニレンジソプロピリデン)ビスアニリンは16.7面積%であるため、芳香族アミン樹脂中の4,4’-(1,3-フェニレンジソプロピリデン)ビスアニリンは、10.2面積%であった。得られたアミン樹脂(A1)のGPCチャートを図1に示し、H-NMRチャート(重クロロホルム)を図2に示し、HPLCチャートを図3に示す。H-NMRチャートの3.05-3.65ppmにアミノ基由来のシグナルが観測された。
【0064】
[実施例1]
温度計、冷却管、分留管、撹拌機を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、実施例1で得られた芳香族アミン樹脂(A1)186部、エピクロルヒドリン555部、メタノール55部、水5.5部を加え、77℃で8時間反応させた。内温を65℃まで冷却し、水酸化ナトリウム81部を90分かけて分割添加した。65℃で3時間反応を継続し、水500部を加え、有機層中の塩化ナトリウムを除去後、120℃で減圧濃縮した。MIBK300部、30%水酸化ナトリウム水溶液40部を加え70℃で6時間反応を継続した。排水が中性となるまで有機層を洗浄後、120℃で減圧濃縮し、半固形エポキシ樹脂(EP1)を235部得た。エポキシ当量は209.7g/eq.であった。得られたエポキシ樹脂(EP1)のGPCチャートを図4に示し、H-NMRチャート(重クロロホルム)を図5に示し、HPLCチャートを図6に示す。H-NMRチャートの2.50-3.80ppmにエポキシ基由来のシグナルが観測された。GPC分析(RI)により、n=1体は61面積%であり、HPLC分析(測定波長:274nm)によるn=1体中の2,2’-(1,3-フェニレンジソプロピリデン)ビス(ジグリシジルアニリン)は31.2面積%、2,4’-(1,3-フェニレンジソプロピリデン)ビス(ジグリシジルアニリン)は32.3面積%、4,4’-(1,3-フェニレンジソプロピリデン)ビス(ジグリシジルアニリン)は33.0面積%であった。以上より、EP1中に含まれる2,2’-(1,3-フェニレンジソプロピリデン)ビス(ジグリシジルアニリン)(式(2)で表されるエポキシ樹脂のうち各イソプロピリデン結合がメタ位に置換したもの)は19.0面積%、2,4’-(1,3-フェニレンジソプロピリデン)ビス(ジグリシジルアニリン)(式(3)で表されるエポキシ樹脂のうち各イソプロピリデン結合がメタ位に置換したもの)は19.7面積%、4,4’-(1,3-フェニレンジソプロピリデン)ビス(ジグリシジルアニリン)(式(4)で表されるエポキシ樹脂のうち各イソプロピリデン結合がメタ位に置換したもの)は20.1面積%であった。
【0065】
[参考例1]
温度計、冷却管、分留管、撹拌機を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、4,4’-(1,3-フェニレンジソプロピリデン)ビスアニリン(東京化成社製)150部、エピクロルヒドリン483部、メタノール17部、水5部を加え、80℃で3時間反応させた。内温を65℃まで冷却し、水酸化ナトリウム70.3部を90分かけて分割添加した。65℃で3時間反応を継続し、水400部を加え、有機層中の塩化ナトリウムを除去後、120℃で減圧濃縮した。MIBK300部、30%水酸化ナトリウム水溶液40部を加え70℃で20時間反応を継続した。排水が中性となるまで有機層を洗浄後、120℃で減圧濃縮し、液状エポキシ樹脂(EP2)を213部得た。エポキシ当量は160.3g/eq.であった。得られたエポキシ樹脂(EP2)のGPCチャートを図7に示し、H-NMRチャート(重クロロホルム)を図8に示し、HPLCチャートを図9に示す。H-NMRチャートの2.50-3.80ppmにエポキシ基由来のシグナルが観測された。GPC分析(RI)により、n=1体は90.2%であり、HPLC分析(測定波長:274nm)によるn=1体中の4,4’-(1,3-フェニレンジソプロピリデン)ビス(ジグリシジルアニリン)は100面積%であった。以上より、EP2中に含まれる4,4’-(1,3-フェニレンジソプロピリデン)ビス(ジグリシジルアニリン)(式(4)で表されるエポキシ樹脂のうち各イソプロピリデン結合がメタ位に置換したもの)は90.2面積%であった。
【0066】
[実施例2、比較例1、2]
実施例1、参考例1で得られたエポキシ樹脂(EP1、EP2)、およびエポキシ樹脂(EP3;RE-304S、日本化薬社製))、および硬化剤として4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)(東京化成社製、略語:MDEA)を使用し、表1の割合(重量部)で配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、更に脱型後、160℃で2時間、180℃で6時間の条件で硬化し、評価用試験片を得た。
【0067】
<硬化物性物性測定>
評価用試験片を下記条件で測定した結果を表1に示す。
【0068】
<ガラス転移温度>
JIS K-7244に準拠して測定した。tanδのピークトップ温度をTgとした。
・動的粘弾性測定器:TA-instruments、DMA-2980
・サンプルサイズ:20mm×5mm×1mm
・昇温速度:10℃/分
【0069】
<曲げ強度、曲げ弾性>
JIS K-6911に準拠して測定した。
・テンシロン:RTG-1310(A&D Company,Limited社製)
・測定温度:室温
【0070】
<吸水率>
直径5cm×厚み4mmの円盤状の試験片を100℃浸水条件下、24時間保持後の質量変化より算出した。
【0071】
【表1】
【0072】
表1の結果より、実施例2は高耐熱性、高曲げ強度、高弾性率、低吸水性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のエポキシ樹脂は、電気電子部品用絶縁材料(高信頼性半導体封止材料など)及び積層板(プリント配線板、BGA用基板、ビルドアップ基板など)、接着剤(導電性接着剤など)やCFRPを始めとする各種複合材料用、塗料等の用途に有用であり、特に、高弾性率を強く要求されるCFRPを始めとする各種複合材料用途において有用である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9