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特許7256169ポリオレフィン主鎖とポリオルガノシロキサンペンダント基とを有する、グラフトコポリマーを調製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】ポリオレフィン主鎖とポリオルガノシロキサンペンダント基とを有する、グラフトコポリマーを調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/442 20060101AFI20230404BHJP
   C08G 81/02 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C08G77/442
C08G81/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020500692
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 US2018042588
(87)【国際公開番号】W WO2019023008
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】62/536,635
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スワイヤー、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】キーン、ザッカリー
(72)【発明者】
【氏名】ホーストマン、ジョン
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-173806(JP,A)
【文献】特開平02-110105(JP,A)
【文献】特表2013-505332(JP,A)
【文献】特開平02-138309(JP,A)
【文献】特開2002-037947(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0127668(US,A1)
【文献】John B. Grande,Testing the functional tolerance of the Piers-Rubinsztajn reaction: a new strategy for functional silicones,The Royal Society of Chemistry,英国,2010年07月21日,Volume46 Number27,P4988-4990
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00 - 77/62
C08G 81/00 - 85/00
C08J 3/00 - 3/28
C09C 19/00 - 19/44
C08F 6/00 - 246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリマーを調製するための方法であって:
1)
A)式:
【化1】
[式中、Rは、各々独立して、炭素原子が1~18個の一価炭化水素基、又は炭素原子が1~18個の一価ハロゲン化炭化水素基から選択され、Rは、各々独立して、炭素原子が2~50個の二価炭化水素基であり、Rは、各々独立して、R又はORから選択され、R15は、各々独立して、H、炭素原子が1~18個の一価炭化水素基、又は炭素原子が1~18個の一価ハロゲン化炭化水素基であり、下付き文字m≧1、及び下付き文字n≧1である]の単位を含む、シラングラフト化ポリオレフィン;
B)式:
【化2】
[式中、Rは、Hであり、Rは、各々独立して、R及びRから選択され、Rは、各々独立して、炭素数が1~18個の一価炭化水素基、又は炭素原子が1~18個の一価ハロゲン化炭化水素基であり、下付き文字oは、5~500である]の、ポリオルガノシロキサン
C)(C)(CB;(CB;(C)BF;BF(C;B(C;BCl(C);BCl(C;B(C)(C;B(C(C);[C(mCF)]B;[C(pOCF)]B;(C)B(OH);(CBOH;(CBH;(C)BH;(C11)B(C;(C14)B(C);(CB(OC);又は(CB-CHCHSi(CH)から選択される、ルイス酸触媒;及び
D)溶媒;
を含む、出発原料を組み合わせる工程と、これにより、グラフトコポリマーを含む、反応生成物を調製する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
コポリマーを調製するための方法であって:
1)
A)式:
【化3】
[式中、Rは、各々独立して、炭素原子が1~18個の一価炭化水素基、又は炭素原子が1~18個の一価ハロゲン化炭化水素基から選択され、Rは、各々独立して、炭素原子が2~50個の二価炭化水素基であり、Rは、各々、R及びHから選択され、下付き文字m≧1、及び下付き文字n≧1である]の単位を含む、シラングラフト化ポリオレフィン;
B)式:
【化4】
[式中、Rは、OR又はOHから選択され、R10は、各々独立して、R及びRから選択され、Rは上で定義したとおりであり、下付き文字oは、5~500である]の、ポリオルガノシロキサン;
C)(C)(CB;(CB;(C)BF;BF(C;B(C;BCl(C);BCl(C;B(C)(C;B(C(C);[C(mCF)]B;[C(pOCF)]B;(C)B(OH);(CBOH;(CBH;(C)BH;(C11)B(C;(C14)B(C);(CB(OC);又は(CB-CHCHSi(CH)から選択される、ルイス酸触媒;及び
D)溶媒;
を含む、出発原料を組み合わせる工程、
を含む、方法。
【請求項3】
コポリマーを調製する方法であって:
1)
A)式:
【化5】
[式中、Rは、各々独立して、炭素原子が1~18個の一価炭化水素基、又は炭素原子が1~18個の一価ハロゲン化炭化水素基から選択され、Rは、各々独立して、炭素原子が2~50個の二価炭化水素基であり、Rは、各々、R及びHから選択され、下付き文字m≧1、及び下付き文字n≧1である]の単位を含む、シラングラフト化ポリオレフィン;
B)式:
【化6】
[式中、R21は、各々、エポキシ官能性有機基であり、R22は、各々独立して、R及びR21から選択され、Rは上で定義したとおりであり、下付き文字oは、5~500である]の、ポリオルガノシロキサン;
C)(C)(CB;(CB;(C)BF;BF(C;B(C;BCl(C);BCl(C;B(C)(C;B(C(C);[C(mCF)]B;[C(pOCF)]B;(C)B(OH);(CBOH;(CBH;(C)BH;(C11)B(C;(C14)B(C);(CB(OC);又は(CB-CHCHSi(CH)から選択される、ルイス酸触媒;及び
D)溶媒;
を含む、出発原料を組み合わせる工程、
を含む、方法。
【請求項4】
C)前記ルイス酸触媒が、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
C)前記ルイス酸触媒が、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
コポリマーを調製する方法であって:
1)
A)式:
【化7】

[式中、R15は、各々独立して、H、炭素原子が1~18個の一価炭化水素基、又は炭素原子が1~18個の一価ハロゲン化炭化水素基であり、Rは、各々独立して、炭素原子が2~50個の二価炭化水素基であり、Rは、各々独立して、R及びHから選択され、下付き文字m≧1、及び下付き文字n≧1である]の単位を含む、シラングラフト化ポリオレフィン;
B)式:
【化8】
[式中、R11は、炭素原子が2~18個の脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、Rは、各々独立して、炭素原子が1~18個の一価炭化水素基、又は炭素原子が1~18個の一価ハロゲン化炭化水素基であり、下付き文字oは、5~500である]の、ポリオルガノシロキサン;
(C)ヒドロシリル化反応触媒;及び
D)溶媒;
を含む、出発原料を組み合わせる工程、
を含む、方法。
【請求項7】
下付き文字oが、10~500である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
下付き文字mが、1~10であり、0.01mol%<m/(m+n)<10mol%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
下付き文字n及びmが、前記コポリマーを1,000~500,000の数平均分子量とする値である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
Rが、各々独立して、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
15が、各々、水素原子である、請求項1、6、及び7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記シラングラフト化ポリオレフィン及び前記コポリマーが、末端封鎖基を各末端に更に含み、末端封鎖基は、各々独立して、飽和一価炭化水素基、又は1つ以上の二重結合を有する不飽和一価炭化水素基であってもよい、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記末端封鎖基が、飽和一価炭化水素基、及び1つ以上の二重結合を有する不飽和一価炭化水素基から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程1)の前にメタロセン触媒反応によってシラン部分をポリオレフィン上にグラフト化する工程を含む方法によって、A)前記シラングラフト化ポリオレフィンを形成する工程、を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記コポリマーを反応生成物から回収する工程、を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記コポリマーを、ポリオレフィンとポリオルガノシロキサンとを含む組成物中の相溶化剤として使用する工程、を更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2017年7月25日に出願された米国特許仮出願第62/536635号の利益を主張するものである。米国特許仮出願第62/536635号は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリオレフィン主鎖(main chain(backbone))とポリオルガノシロキサンペンダント基とを有する、グラフトコポリマーを調製するための方法に関する。より具体的には、本明細書に記載される方法により、グラフトセグメントの数の制御、及びポリオレフィン主鎖を無傷に保つ能力がもたらされる。
【背景技術】
【0003】
ポリオレフィン主鎖とポリオルガノシロキサン基とを有する、グラフトコポリマーを調製するための方法が提案されてきたが、ラジカル重合(例えば、パーオキサイド、マレイン酸、又は無水物を用いるもの)を含む方法では、ポリオレフィン主鎖の分解をもたらす場合がある。ポリオレフィン主鎖の分解を伴わずに、及び/又はグラフト化セグメントの数の制御による、グラフトコポリマーを調製するための、より確固とした方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
ポリオレフィン主鎖とポリオルガノシロキサンペンダント基とを有する、グラフトコポリマーを調製するための方法は、様々な触媒を使用して行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0005】
ポリオレフィン主鎖とポリオルガノシロキサンペンダント基とを有する、グラフトコポリマーは、
1)
A)1分子当たり、少なくとも1つのケイ素結合反応性置換基を有するシラングラフト化ポリオレフィン、
B)1分子当たり、少なくとも1つのケイ素結合反応性置換基を有するポリオルガノシロキサン、
C)出発原料A)の反応性置換基と出発原料B)反応性置換基とを反応させるための触媒、及び
D)溶媒、
を含む、出発原料を組み合わせる工程と、
所望により、2)工程1)の後に残留反応性置換基を封止する工程と、所望により、3)工程1)、又は存在する場合には工程2)によって調製された反応生成物からグラフトコポリマーを回収する工程と、
を含む、方法によって調製される。この方法は、工程1)の前にメタロセン触媒反応によってシラン部分をポリオレフィン上にグラフト化する工程、を含む、方法によって、A)1分子当たり、少なくとも1つのケイ素結合反応性置換基を有するシラングラフト化ポリオレフィンを形成する工程、を所望により更に含んでもよく、及び/又は、この方法は、工程1)の前にヒドロシリル化触媒反応によって少なくとも1つの脂肪族不飽和炭化水素基を有する炭素原子が2~18個のアルコキシシランと、SiH官能性ポリオルガノシロキサンと、を反応させる工程、を含む、方法によって、B)1分子当たり、少なくとも1つのケイ素結合反応性置換基を有するポリオルガノシロキサンを形成する工程、を所望により更に含んでもよい。
【0006】
工程1)において、A)シラングラフト化ポリオレフィンは、飽和ポリオレフィン主鎖(所望により脂肪族不飽和末端封鎖基を有する)を有してもよい。シラングラフト化ポリオレフィン(及び所望により、工程1)で使用される全ての他の出発原料)は、(メタ)アクリレート官能基を含まなくてもよい。「(メタ)アクリレート官能基を含まない」とは、アクリレート若しくはメタクリレート官能基を含まないこと、又はアクリレート及び/若しくはメタクリレート官能基の量がIR分析により検出不可能であることを、意味する。A)を調製するために使用されるポリオレフィンは、ホモポリマーであっても、異なるモノマーのコポリマーであってもよい。出発原料A)を調製するために使用されるポリオレフィンは、例えば、ポリエチレン、ポリ(エチレン/オクテン)コポリマー、ポリプロピレン、又はポリスチレンであってもよい。あるいは、ポリオレフィンは、ポリエチレンであっても、ポリプロピレンであってもよい。あるいは、ポリオレフィンは、ポリエチレンであっても、ポリ(エチレン/オクテン)コポリマーであってもよい。出発原料C)触媒は、ルイス酸触媒であっても、ヒドロシリル化反応触媒であってもよい。ラジカル重合触媒(パーオキサイド、無水物、及びマレイン酸など)は、概ね、ポリオレフィンの分解を防止するために回避される。工程1)は、加熱及び/又は混合などの任意の都合のよい手段により行うことができる。加熱は、50℃~150℃、あるいは80℃~110℃の温度で行うことができる。混合は、任意の都合のよい手段によって、バッチ式装置又は連続式装置のいずれかで行うことができる。工程1)は、溶液中で行うことができ、すなわち、A)、B)、及びC)を含む、出発原料を、出発原料D)溶媒に溶解させてもよい。
【0007】
工程2)は、例えば、グラフトコポリマーが、OH、H、OR[式中、Rは、各々独立して、炭素原子が1~18個の一価炭化水素基、又は炭素原子が1~18個の一価ハロゲン化炭化水素基である]、及び/又はエポキシ官能性有機基などのケイ素結合置換基を有する、シロキサンペンダント基を有する場合に、行うことができる。コポリマー中のシロキサンペンダント基上のこれらの置換基が更に反応するのを防止するために、これらは、好適な封止剤で封止されていてもよい。封止剤は、OH、H、OR、又はエポキシ官能基と反応可能な1つの置換基を有する、シランであってもよい。封止剤は、式;RSiR14[式中、R14は、OH、H、OR、又はエポキシ官能基、例えばH又はヒドロカルビルオキシ(例えば、アルコキシ)のうちの1つ以上と反応可能な置換基である]を有してもよい。例えば、ポリオルガノシロキサンが2つ以上のケイ素結合OR基を有する場合、工程2)において、50℃~200℃、あるいは100℃~120℃の温度まで加熱しながら、オルガノヒドリドシラン封止剤を添加してもよい。オルガノヒドリドシランは、式;RSiH[式中、Rは、各々独立して、炭素原子が1~18個の一価炭化水素基、又は炭素原子が1~18個の一価ハロゲン化炭化水素基である]を有してもよい。Rに好適な一価炭化水素基としては、本明細書で定義したとおりの、アルキル、アルケニル、及びアリールが挙げられる。あるいは、Rは、各々独立して、メチル、ビニル、アリル、及びフェニルからなる群から独立して選択されてもよく、あるいは、Rは、各々独立して、メチル及びフェニルからなる群から独立して選択されてもよい。
Rは上記で定義したとおりである。あるいは、ポリオルガノシロキサンが2つ以上のケイ素結合OR基を有する場合、封止剤は、式;RSiOR[式中、Rは、上記で定義したとおりである]を有してもよい。
【0008】
工程3)は、溶媒抽出、沈殿及び濾過、又は所望により減圧下でのストリッピング及び/若しくは蒸留などの任意の都合のよい手段によって、行うことができる。
【0009】
上記の方法の一実施形態では、A)シラングラフト化ポリオレフィンは、式:
【化1】
の単位を含んでもよい。
【0010】
Rは、各々独立して、炭素原子が1~18個の一価炭化水素基、又は炭素原子が1~18個の一価ハロゲン化炭化水素基である。Rに好適な一価炭化水素基としては、本明細書で定義したとおりの、アルキル、アルケニル、及びアリールが挙げられる。あるいは、Rは、各々独立して、メチル、ビニル、アリル、及びフェニルからなる群から独立して選択されてもよく、あるいは、Rは、各々独立して、メチル及びフェニルからなる群から独立して選択されてもよい。
【0011】
は、各々独立して、R又はOR[式中、Rは、上記で定義したとおりである]から選択される。あるいは、Rは、各々独立して、Rについて上記で定義したとおり、炭素原子が1~18個の一価炭化水素基、又は炭素原子が1~18個の一価ハロゲン化炭化水素基である。
【0012】
は、各々独立して、炭素原子が2~50個の二価炭化水素基である。Rに好適な二価炭化水素基は、アルキレン基、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、又はオクチレン;アリーレン基、例えばフェニレン、又はアルキルアリーレン基、例えば:
【化2】
によって例示される。あるいは、Rは、各々、アルキレン基、例えばオクチレンである。
【0013】
15は、各々独立して、Rについて本明細書で記載のとおり、炭素原子が1~18個の一価炭化水素基、又は炭素原子が1~18個の一価ハロゲン化炭化水素基である。あるいは、R15は、各々、H、又は炭素原子が1~6個のアルキル基であってもよい。R15は、各々、Hであってもよい。
【0014】
下付き文字mは、少なくとも1である。下付き文字nは、少なくとも1である。あるいは、1≦m≦10、及び10≦n≦20,000である。あるいは、下付き文字m及びnは、数量m/(m/n)が0.01mol%≦m/(m/n)≦10mol%となるような値を有するような、値を有してもよい。あるいは、下付き文字m及びnは、コポリマーを1,000~500,000のMnとするのに十分な値を有してもよい。
【0015】
このシラングラフト化ポリオレフィンは、R12の末端封鎖基を各末端に更に含んでもよい。R12は、各々独立して、飽和一価炭化水素基、例えばアルキル基(例えば、メチル)、又は1つ以上の二重結合を有する不飽和一価炭化水素基(例えば、ビニル官能基、ビニリン官能基、又はビニリデン官能基を含む一価炭化水素基)であってもよい。
【0016】
このようなシラングラフト化ポリオレフィンは市販されており、例えば、DOW CHEMICAL COMPANY(Midland Michigan,U.S.A.)からSI-LINK(商標)DFDAとして市販されている、ケイ素結合メトキシ基でグラフト化されたポリエチレンである。例としては、SI-LINK(商標)DFDA6451NT、SI-LINK(商標)DFDA5480、SI-LINK(商標)DFDA5480NT、SI-LINK(商標)DFDA5451NT、及びこれらの組み合わせが挙げられる。このようなシラングラフト化ポリオレフィン及びそれらの調製のための方法の例は、例えば、米国特許出願公開第2010/0181092号及び同第2010/0209705号、並びに米国特許第8,426,519号に開示されている。
【0017】
この実施形態では、B)ポリオルガノシロキサンは、式:
【化3】
[式中、Rは上記のとおりであり、Rは、H、OR、若しくはOH、又は式:-R-SiR(OR)(式中、下付き文字aは、0~2であり、下付き文字bは、1~3であり、数量(a+b)=3であり、Rは上記のとおりである)のシリル部分から選択され、Rは、各々独立して、R及びRから選択される]を有してもよい。下付き文字oは、5~500、あるいは10~500である。あるいは、下付き文字oは、15~400であってもよい。あるいは、下付き文字oは、20~300であってもよい。あるいは、下付き文字oは、25~200であってもよい。あるいは、下付き文字oは、50~150であってもよい。好適なポリオルガノシロキサンそれらの調製のための方法は、当該技術分野において公知である。Rが水素原子であるポリオルガノシロキサンを使用して、他の官能基を有するポリオルガノシロキサンを調製することができる。例えば、脂肪族不飽和炭化水素基を有するシランを、SiH官能性ポリオルガノシロキサンとヒドロシリル化触媒の存在下で反応させて、式:-R-SiR(OR)のシリル部分を有するポリオルガノシロキサンを調製することができる。例えば、アルコキシシランは、式:R13SiR(OR)[式中、R並びに下付き文字a及びbは上記のとおりであり、R13は、本明細書で定義したとおり、脂肪族不飽和一価炭化水素基、例えばアルケニル又はアルキニルである]を有してもよい。
【0018】
この実施形態では、C)触媒は、ルイス酸触媒であってもよい。ホウ素を含有するものなどのルイス酸触媒が好適である。例えば、ルイス酸触媒は、(C)(CB;(CB;(C)BF;BF(C;B(C;BCl(C);BCl(C;B(C)(C;B(C(C);[C(mCF)]B;[C(pOCF)]B;(C)B(OH);(CBOH;(CBH;(C)BH;(C11)B(C;(C14)B(C);(CB(OC);又は(CB-CHCHSi(CH)から選択されてもよい。あるいは、出発原料C)は、式;B(C、すなわちトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのPiers-Rubinsztajn反応触媒であってもよい。
【0019】
方法のこの実施形態により、式:
【化4】
[式中、R、R、R15、m、n、及びoは、上記のとおりである]の単位を含む、グラフトコポリマーが生成する。この実施形態では、Rは、各々独立して、R若しくはORであり、Rは、各々独立して、R、H、OR、若しくはOH、又は式:-R-SiR(OR)[式中、下付き文字a及び下付き文字bは上記のとおりである]のシリル部分である。炭化水素、ハロゲン化炭化水素、又はアルコールなど、副生成物の生成する場合がある。
【0020】
このグラフトコポリマーは、R12の末端封鎖基を各末端に更に含んでもよい。R12は、各々独立して、飽和一価炭化水素基、例えばアルキル基(例えば、メチル)、又は1つ以上の二重結合を有する不飽和一価炭化水素基(例えば、ビニル官能基、ビニリン官能基、又はビニリデン官能基を含む一価炭化水素基)であってもよい。
【0021】
上記の方法の代替的な実施形態では、A)シラングラフト化ポリオレフィンは、式:
【化5】
[式中、R15、R、並びに下付き文字m及び下付き文字nは上記のとおりであり、Rは、各々、R(上記のとおり)及びHから選択される]の単位を含むSiH官能性シラングラフト化ポリオレフィンであってもよい。このようなシラングラフト化ポリオレフィン及びそれらの調製のための方法の例は、例えば、米国特許第6,624,254号に開示されている。
【0022】
このシラングラフト化ポリオレフィンは、R12の末端封鎖基を各末端に更に含んでもよい。R12は、各々独立して、飽和一価炭化水素基、例えばアルキル基(例えば、メチル)、又は1つ以上の二重結合を有する不飽和一価炭化水素基(例えば、ビニル官能基、ビニリン官能基、又はビニリデン官能基を含む一価炭化水素基)であってもよい。
【0023】
この実施形態では、B)ポリオルガノシロキサンは、式:
【化6】
[式中、Rは上記のとおりであり、Rは、OR及びOHから選択され、R10は、各々独立して、R及びRから選択される]を有してもよい。好適なポリオルガノシロキサンそれらの調製のための方法は、当該技術分野において公知である。この実施形態では、C)触媒は、上記のとおり、ルイス酸触媒であってもよく、あるいはPiers-Rubinsztajn反応触媒であってもよい。
【0024】
方法のこの実施形態により、式:
【化7】
[式中、R、R、R15、m、n、及びoは、上記のとおりであり、R16は、各々独立して、R又はHであり、R17は、各々独立して、R、OR、又はOHである]の単位を含む、グラフトコポリマーが生成する。RがOHである場合には、水素などの副生成物の生成する場合がある。RがORである場合には、炭化水素などの副生成物の生成する場合がある。
【0025】
このグラフトコポリマーは、R12の末端封鎖基を各末端に更に含んでもよい。R12は、各々独立して、飽和一価炭化水素基、例えばアルキル基(例えば、メチル)、又は1つ以上の二重結合を有する不飽和一価炭化水素基(例えば、ビニル官能基、ビニリン官能基、又はビニリデン官能基を含む一価炭化水素基)であってもよい。
【0026】
上記の方法の代替的な実施形態では、A)シラングラフト化ポリオレフィンは、式:
【化8】
[式中、R15、R、R、並びに下付き文字m及びnは上記のとおりである]の単位を含む上記のSiH官能性シラングラフト化ポリオレフィンであってもよい。
【0027】
この実施形態では、B)ポリオルガノシロキサンは、式:
【化9】
[式中、Rは上記のとおりであり、R21は、エポキシ官能性有機基であり、R22は、各々独立して、R及びR21から選択される]を有してもよい。好適なエポキシ官能性有機基の例としては、グリシドキシアルキル基、例えばグリシドキシプロピルが挙げられる。好適なポリオルガノシロキサンそれらの調製のための方法は、当該技術分野において公知である。この実施形態では、C)触媒は、上記のとおり、ルイス酸触媒であってもよく、あるいはPiers-Rubinsztajn反応触媒であってもよい。
【0028】
方法のこの実施形態により、式:
【化10】
[式中、R、R、R15、m、n、及びoは上記のとおりであり、R23は、各々独立して、R(上記のとおり)及びHから選択され、R24は、各々独立して、上記のとおり、R、又はエポキシ官能性有機基であり、R25は、各々、二価有機基、例えば二価炭化水素基又は二価酸素化炭化水素基である]の単位を含む、グラフトコポリマーが生成する。R25に好適な二価炭化水素基の例は、Rについて上記したとおりである。好適な二価酸素化炭化水素基は、式:又は炭素原子が2~50個の酸素化炭化水素基、例えば、式:-(CR-O-(CR-[式中、Rは上記のとおりであり、下付き文字p≧1、下付き文字q≧1、及び数量(p+q)=2~50である]を有してもよい。
【0029】
このグラフトコポリマーは、R12の末端封鎖基を各末端に更に含んでもよい。R12は、各々独立して、飽和一価炭化水素基、例えばアルキル基(例えば、メチル)、又は1つ以上の二重結合を有する不飽和一価炭化水素基(例えば、ビニル官能基、ビニリン官能基、又はビニリデン官能基を含む一価炭化水素基)であってもよい。
【0030】
上記の方法の代替的な実施形態では、A)シラングラフト化ポリオレフィンは、式:
【化11】
[式中、R15、R、R、並びに下付き文字m及びnは上記のとおりである]の単位を含む上記のSiH官能性シラングラフト化ポリオレフィンであってもよい。この実施形態では、B)ポリオルガノシロキサンは、式:
【化12】
[式中、R11は、炭素原子が2~18個の脂肪族不飽和一価炭化水素基である]を有する。R11は、本明細書で定義したとおり、アルケニル又はアルキニルであってもよい。好適なポリオルガノシロキサンそれらの調製のための方法は、当該技術分野において公知である。この実施形態では、出発原料C)は、ヒドロシリル化反応触媒である。ヒドロシリル化反応触媒としては、白金族金属触媒が挙げられ、これは当該技術分野において公知であり、市販されている。このようなヒドロシリル化触媒は、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウムから選択される金属であってもよい。あるいは、ヒドロシリル化触媒は、このような金属の化合物、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、塩化白金(II)、並びに、上記化合物と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体、又は、マトリックス若しくはコアシェル型構造でマイクロカプセル化された白金化合物であってもよい。白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体としては、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されていてもよい。あるいは、ヒドロシリル化触媒は、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を含んでもよい。例示的なヒドロシリル化触媒は、米国特許第3,159,601号、同第3,220,972号、同第3,296,291号、同第3,419,593号、同第3,516,946号、同第3,814,730号、同第3,989,668号、同第4,784,879号、同第5,036,117号、及び同第5,175,325号、並びに欧州特許第0347895(B)号に記載されている。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒及びその調製方法は、米国特許第4,766,176号及び同第5,017,654号に例示されているとおり、当該技術分野において公知である。
【0031】
方法のこの実施形態により、式:
【化13】
[式中、R15、R、R、m、n、及びoは上記のとおりであり、R20は、炭素原子が2~50個の二価炭化水素基であり、R18は、各々独立して、R又はHであり、R19は、各々独立して、R又はR11である]の単位を含む、グラフトコポリマーを含む反応生成物を生成する。
【0032】
このグラフトコポリマーは、R12の末端封鎖基を各末端に更に含んでもよい。R12は、各々独立して、飽和一価炭化水素基、例えばアルキル基(例えば、メチル)、又は1つ以上の二重結合を有する不飽和一価炭化水素基(例えば、ビニル官能基、ビニリン官能基、又はビニリデン官能基を含む一価炭化水素基)であってもよい。
【0033】
上記の方法の各実施形態の出発原料D)は、溶媒である。好適な溶媒としては、炭化水素溶媒及び/又はアルコールが挙げられる。好適な炭化水素溶媒としては、アルカン、例えばヘキサン及び/若しくはヘプタン;芳香族溶媒、例えばベンゼン、トルエン及び/若しくはキシレン;並びに/又はシクロアルカン、例えばシクロヘキサンが挙げられる。好適なアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、及び/又はブタノールが挙げられる。溶媒の量は、出発原料A)及びB)を相溶化するのに十分であり、工程1)において使用される出発原料の光学的に透明な溶液を作製するのに十分であり得る。溶媒の正確な量は、出発原料A)及びB)の選択をはじめとする様々な要因に依存するが、溶媒の量は、工程1)において組み合わされた全ての出発原料の合計重量に基づいて、少なくとも80%、あるいは80%~95%であってもよい。
【0034】
上記の方法の各実施形態では、生成したグラフトコポリマー中の単位は、コポリマー中にランダムに分布していてもよい。あるいは、コポリマーは、上に示した単位がブロック中に配置された、ブロックコポリマーであってもよい。
【0035】
理論に束縛されるものではないが、本明細書で記載される方法によると、工程1)の開始前に添加された出発原料A)の量に基づいて、出発原料A)の<5%、及び/又は工程1)の開始前に添加された出発原料B)の量に基づいて、出発原料B)の<5%が、工程1)の後に未反応で残るという効果をもたらすことができると考えられる。更に、本方法によって調製されたグラフトコポリマーは、結晶化温度をDSCによって測定したとき、出発原料A)として使用されるシラングラフト化ポリオレフィンの結晶化温度よりも少なくとも20℃低い結晶化温度を有することができる。
【実施例
【0036】
これらの実施例は、本発明を例示することを目的とするものであり、請求項に記載の本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。
【0037】
参考例1では、以下の出発原料を使用し、アルコキシ官能性ポリジメチルシロキサンを調製した。一方の末端で式;Si(CHHの基、及び他方の末端でSi(CHが末端の、DP=16、FW=76.74g/molSi、及び1260g/molSiHのポリジメチルシロキサンは、GelestからMCR-H11として市販されていたものである。Mw=132.23g/mol、及びbp=106℃のビニルメチルジメトキシシランは、Dow Corning Corporation製であり、これを蒸留した。トルエンは、Fischer ScientificからのACSグレードとした。Karstedt’s触媒(トルエン中1480ppmのPt金属を有する)は市販されていたものである。
【0038】
250mLの1ツ口丸底フラスコに、以下の:MCR-H11(25.00g、0.3258molのSi、0.01984molのSiH)、トルエン(75.00g)、及びビニルメチルジメトキシシラン(目標:2.89g、0.0219mol)を入れた。フラスコの内容物を、窒素ブランケット下に保った。水冷凝縮器を取り付けた。磁気撹拌棒を、混合のために使用した。フラスコの内容物を40℃まで加熱し、Karstedt’s触媒(0.084g)をフラスコに添加した。(このPt触媒の量は、添加されたMCR-H11の量に基づいて5ppmに達するものであった。加熱を、40℃で30分間続けた。得られた生成物をIRにより分析したところ、いくらかの未反応のSiHが示された。温度を75℃まで上昇させた後、この温度で30分間保持した。サンプルをIRにより分析したところ、残っている検出可能なSiHはないことが示された。生成物を、ロータリーエバポレーターにて35℃及び3mmHgで真空ストリッピングした。得られた生成物は、室温で透明な低粘度流体であった。この生成物を29SiNMRにより分析したところ、モノ(SiMe(OMe))末端ポリジメチルシロキサンが見出され、算出されたFW=79.88g/molSi、及びNMRデータから算出されたDP=17であった。このモノ(SiMe(OMe))末端ポリジメチルシロキサンを、実施例1における成分b1)に選定する。
【0039】
実施例1では、以下の出発原料を使用し、グラフトコポリマーを作製した。出発原料a1)は、SiH官能性ポリエチレン-オクテンコポリマーであり、3.2重量%のオクテニルジメチルシランがポリエチレン-オクテン上にグラフト化されており、Mn=17,170;Mw=40,860;Tg(-60.9℃);Tm(86.5℃)、及びSiH当量重量=5.325g/molSiHを有していた。出発原料d1)は、Fischer Scientificから入手可能なトルエンであり、ACSグレードとした。出発原料c1)は、式;B(CのPiers-Rubinsztajn反応触媒であり、これはMw=511.98であり、トルエン中5重量%で供給した。末端封止剤のトリメチルメトキシシランも使用し、これはMw=104.22及びbp=57~58℃であった。
【0040】
グラフトコポリマーを、以下のとおり調製した。100mLの丸底フラスコに、6.0gの出発原料a1)及び34.0gのトルエンを入れた。これにより、15%のNVC溶液が得られた。フラスコに磁気撹拌棒を備え付け、窒素ブランケットを適用した。フラスコをアルミニウムブロックにブロック温度=85℃でさらすことによって、フラスコ内の混合物を加熱した。
【0041】
出発原料a1)をトルエンに溶解した後、1.26gの量の出発原料b1)(0.000905molのSiMe(OMe)官能基に相当)を、フラスコに添加した。合計0.036gの出発原料c1)を、フラスコに添加した。1分後、少量の発泡が生じ、ガス生成を明確に示す可能性が高かった。フラスコ内の溶液を、85℃で1時間加熱した。次いで、末端封止剤のトリメチルメトキシシラン(0.23g、0.0022mol)をフラスコに添加し、加熱を85℃で20分間続けた。フラスコの内容物をIR分析により分析したところ、残っている未反応のSiHが示された。追加のトリメチルメトキシシラン(0.23g、0.0022mol)を、フラスコに添加した。内容物を、60℃で1時間加熱した。サンプルをIRにより分析したところ、なお残っているSiHが示された。追加のc1)触媒(別の0.036g)をフラスコに添加し、フラスコの内容物が500ppmのB(Cを含有するようにした。加熱を60℃で1時間続け、IR分析によると、残っているSiHはないことが示された。反応混合物をTeflonフィルム上に注ぎ、室温で終夜乾燥させた。得られた生成物は不透明なエラストマーフィルムであり、強度は良好であった。
【0042】
実施例2では、以下の出発原料を使用し、b2)モノSiH末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)をa2)メトキシ(SiOMe)グラフト化低密度ポリエチレンと反応させることによって、グラフトコポリマーを調製した。以下の出発原料を使用した。出発原料a2)は、ケイ素結合メトキシ基でグラフト化された低密度ポリエチレンであり、これは、DOW CHEMICAL COMPANY(Midland Michigan,U.S.A.)からSI-LINK-DFDA-5451NTとして市販されており、算出されたMn=20,000g/molを有し、1.5%~2.0%のビニルトリメトキシシランが組み込まれていた。出発原料b2)は、DP=16を有するポリジメチルシロキサンであり、これはモノSiH末端であり、FW=76.74g/molSiを有し、1260g/molSiHを含有し、GelestからMCR-H11として市販されていたものである。出発原料c2)は、B(Cであり、トルエン中5重量%で供給した。出発原料d2)は、Fisher Scientificから市販されていた、ACSグレードのトルエンとした。末端封止剤のトリエチルシランは、Mw=116.28、bp=107~108℃を有し、Acros Organicsから市販されていたものである。
【0043】
グラフトコポリマーを以下のとおり調製した:250mLの広口ホウケイ酸ガラス瓶に、a2)上記のケイ素結合メトキシ基でグラフト化された低密度ポリエチレン20.0g、b2)上記のポリジメチルシロキサン2.55g、及びd2)トルエン90.21gを入れ、20%のNVC溶液を調製した。瓶に、ガラス撹拌軸に取り付けられたTeflon撹拌パドルを備え付けた。窒素パージを適用した。瓶内の溶液を、油浴を用いて110℃の油温度で加熱した。a2)低密度ポリエチレンの全てが溶解すると、溶液は透明になった。
【0044】
0.11gの量のc2)触媒(固形分(すなわち、a2)ポリエチレン及びb2)ポリジメチルシロキサンの合計量)に基づいて、250ppmのB(Cに相当する)を、瓶に添加した。添加しての数秒以内に、瓶の内容物により泡が形成され、これはガス形成(メタン)を示すものである。加熱を、110℃で30分間続けた。
【0045】
次いで、0.94gの量のトリエチルシランを、瓶に添加した。b)ポリジメチルシロキサンを組み込んだ後で、トリエチルシランを添加し、式;(Si-O-SiEt)の基に立体的に到達可能な任意の残留SiOMe基を末端封止することにより、得られたグラフトコポリマーを安定化させた。加熱を、110℃で1時間続けた。
【0046】
瓶の内容物を、ドラフト内で、まだ熱いうちにTeflonシート上に注いだ。瓶の内容物から形成されたホットプレスフィルムのIR分析によると、検出可能なSiHはないことが示された。ホットプレスフィルムは、平滑で、可撓性があり、強靭性があり、半透明であった。
【0047】
この実施例3では、b3)モノエポキシ末端シロキサンをa3)SiHグラフト化ポリオレフィンと反応させること、を含む方法によって、グラフトコポリマーを調製した。以下の出発原料を使用した。出発原料a3)は、ケイ素結合水素原子を有するポリエチレン-オクテンコポリマーであり、これを3.2%のシランモノマー、ODMSで調製した。ポリエチレン-オクテンコポリマーは、Mn=17,170;Mw=40,860;Tg(-60.9℃);Tm(86.5℃);及びSiH当量重量=5.325g/molSiHを有していた。出発原料d3)を、溶媒精製システムにより精製したトルエンとした。出発原料b3)は、モノ(2,3-エポキシ)プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサンであり、これはGelestからMCR-E21として市販されており、Mw=5000g/molを有していた。出発原料c3)触媒は、B(Cであり、トルエン中10mg/mLであった。出発原料d3’)は、Fisherから市販されていた、HPLCグレードのメタノールとした。
【0048】
グラフトコポリマーを、以下のとおり調製した。グローブボックス内で、2ドラムバイアルに、出発原料a3)SiHグラフト化ポリオレフィン50mg、b3)エポキシ末端PDMS47mg、トルエン1mL、及びTeflon撹拌棒を入れた。100℃の加熱ブロックを使用して、この反応混合物を、半透明になるまで加熱した。5μLの量の10mg/Lのトルエン溶液にて出発原料c3)を添加し、100℃での加熱を、18時間続けた。次いで、バイアルをグローブボックスから取り出し、グラフトコポリマーを急速撹拌しているメタノールに沈殿させ、濾過により単離し、高真空(100mTorr)で終夜乾燥させた。
【0049】
H NMRスペクトルにより分析した結果によると、出発原料b3)にてエポキシド部分に関連するピークの完全な消費が示された。予備的GPCの結果により、23キロダルトンのMnが得られ、これは、a3)からのポリオレフィン鎖1つ当たり、b3)からのポリジメチルシロキサンが1つであることと整合するものであったが、使用したGPC条件下では、出発原料b3)は1900g/molのMwを示した。したがって、GPCの結果は、定量的官能化と整合し得る。
【0050】
この実施例4では、b4)ビニルペンタメチルジシロキサンをa4)SiHグラフト化ポリオレフィンと反応させること、を含む、方法によって、グラフトコポリマーを調製した。以下の出発原料を使用した。出発原料a4)は、3.2%のシランモノマー(ODMS)で調製されたSiH官能性ポリエチレン-オクテンコポリマーであり;Mn=17,170;Mw=40,860;Tg(-60.9℃);Tm(86.5℃);及びSiH当量重量=5.325g/molSiHを有していた。トルエンを、溶媒精製システムにより精製した。出発原料b4)は、ビニルペンタメチルジシロキサンであり、Gelestから入手可能であった。出発原料c4)は、Karstedt’s触媒であり、キシレン中2%で供給され、Mw=174g/molを有していた。メタノールはHPLCグレードとし、これはFisherから入手可能であった。
【0051】
グラフトコポリマーを、以下のとおり調製した。グローブボックス内で、2ドラムバイアルに、上記のa4)SiHグラフト化ポリオレフィン50mg、b4)ペンタメチルジシロキサン4.9mg、トルエン1mL、及びTeflon撹拌棒を入れた。100℃の加熱ブロックを使用して、この反応混合物を、反応混合物が半透明になるまで加熱した。次いで、出発原料c4)Karstedt’s触媒(0.2重量%トルエン溶液10μL)をバイアルに添加し、加熱を100℃で2.5時間続けた。次いで、バイアルをグローブボックスから取り出し、グラフトコポリマーを急速に撹拌しているメタノールに沈殿させた。次いで、グラフトコポリマーを濾過により単離し、高真空(100mTorr)で終夜乾燥させた。
【0052】
H NMRにより分析した結果によると、Si-Hのピーク(4ppm)の、合計脂肪族プロトン(合計2448)に対する積分により、96%の変換が示され、並びにSi-Meピークの積分により、鎖1つ当たり2.8のジシロキサン単位が示された。GPCによると、20,505g/molまでのMの定性的増加が示された。
【0053】
この実施例5では、100mLの丸底フラスコ(磁気撹拌棒入り)に、DPが94でビニル含有量が0.660mmolのモノビニル末端ポリジメチルシロキサン4.46g、ペンダントSiH官能基を有しSiHが0.660mmolの量のポリ(エチレン-オクテン)コポリマー0.5g、及びトルエン28.11gを入れた。アルミニウムブロックを使用して、得られた混合物を105℃の温度で加熱した。924ppmのPtを含有する触媒溶液(0.054gの溶液)を、添加した。これは、混合物中の固形分に基づいて10ppmのPtに達するものであった。混合物を、105℃で合計37時間加熱した。SiHの大部分は、最初の12時間以内に消費された。120℃の油浴温度及び1~2mmHgの圧力でロータリーエバポレーターを使用して、得られた生成物をストリッピングした。溶媒の大部分を除去した後、フラスコをロータリーエバポレーター上に30分間かけておいた。得られた生成物は、120℃では高粘度の液体であり、非常に軽度のヘイズのみがあった。この生成物は、室温ではゲル状であり、軽度のヘイズがあった。
【0054】
液体窒素冷却システムを有する、TA Instruments Q2000示差走査熱量計を使用し、結晶化温度(Tcryst)を測定した。10mgのサンプルを、TA Instrumentsの穴開きアルミニウムパン(開放ヘリウム環境)内に導入し、不活性環境を作った。インジウムを、熱流及び温度の較正標準として使用した。パージガスとしてヘリウムを使用(25mL/分)し、サンプルを、250℃から20℃/分で-170℃まで冷却した。冷却時の発熱のピークから、Tcrystを得た。
【0055】
ペンダントSiH官能基を有する出発原料ポリ(エチレン-オクテン)コポリマー(SiHペンダントポリエチレン)及び得られるグラフトコポリマー(PE-グラフト-PDMSコポリマー)についての結果を、以下の表1に示す。
【表1】
表1
【0056】
これらの結果により、この実施例5においてポリオルガノシロキサン側鎖を導入すると、ポリオレフィンの結晶化温度の大幅な低下(30℃超)が確認される。
【0057】
産業上の利用可能性
本明細書に記載のグラフトコポリマーによると、例えば、オレフィンからの、半結晶性、耐溶媒性、強靭性(例えば、歪み硬化)、溶融加工性/強度、及び/又は低コストの付加;シロキサンによる、環境及び熱安定性、透過性、柔らかいタッチ、極性の官能性、及び/又は低温能力の付加という、複数の効果をもたらすことができる。本明細書に記載のグラフトコポリマーを調製するための方法は、成分の量を各々独立して変化させながら、ポリオレフィン及びポリオルガノシロキサン成分の両方の長さを一定に保つことが可能という(ポリオルガノシロキサン主鎖とポリオレフィンペンダント基とを有する、グラフトコポリマーより有利な)利点を有することができる。理論に束縛されるものではないが、これにより、様々な用途におけるグラフトコポリマーの機械的特性及び得られた性能のより良好な制御が可能になると考えられる。更に、複数の接続点(ABAポリマー構造における2つとは対照的)を有するグラフトコポリマー又は櫛型コポリマーによってもまた、より良好な荷重分布、向上した機械的強度をもたらすことができる。理論に束縛されるものではないが、接続点(すなわち、ポリオレフィン主鎖に結合するシロキサンペンダント基)は、機械的強化部位のように機能すると考えられる。半結晶性硬質ブロックが主鎖を構成し、シロキサン軟質ブロックがペンダントであるグラフトコポリマーも、層状形態に容易にパッキングすることができ、これによりバリア特性及び光学用途が対象となる。
【0058】
本明細書に記載のグラフトコポリマーの構造(主鎖が剛性の半結晶性ポリオレフィンであり、ペンダント基がポリシロキサン可撓性グラフトであるものにより、以下の用途の利点のうちの1つ以上をもたらすことができる。硬質ブロックが典型的には少量成分である、熱可塑性エラストマーは、十分に認められているABA構造を最も厳密に再現するため、主鎖硬質ブロック構造を介して最も効果的に生成される。これらの物質は強化シリコーンエラストマーとして有用なことがあり、その場合、半結晶性ポリオレフィン相が強化部としての役割を果たす。また、ポリオルガノシロキサンペンダント基の表面活性、及びそれら自体が空気界面で存在する容易性は、グラフトコポリマーがポリオレフィンホモポリマーへの添加剤として添加されるとき、摩擦係数を低下させるのに有益であると予想される。更に、本明細書に記載のグラフトコポリマーを調製するための方法によると、ラジカル反応を使用すると起こる場合がある、ポリオレフィン主鎖の分解を回避し、ポリオレフィンポリポリオルガノシロキサンコポリマーを調製することができる。
【0059】
理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載のグラフトコポリマーを、熱可塑性エラストマーとして、又はポリオレフィン及びポリオルガノシロキサンの両方を含有する組成物中の相溶化剤として、未希釈で使用することができると考えられる。
【0060】
用語の定義及び用法
発明の概要及び要約書は、参照により本明細書に組み込まれる。全ての量、比及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。冠詞「a」、「an」、及び「the」は、それぞれ明細書の文脈によって特に指示されない限り、1つ以上を指す。範囲の開示は、その範囲自体及び範囲内に包含される任意のもの、並びに端点を含む。例えば、2.0~4.0の範囲の開示は、2.0~4.0の範囲だけでなく、2.1、2.3、3.4、3.5、及び4.0も個別に含み、並びに範囲内に包含される任意の他の数も含む。更に、例えば、2.0~4.0の範囲の開示は、例えば、2.1~3.5、2.3~3.4、2.6~3.7、及び3.8~4.0の部分集合、並びにその範囲内に包含される任意の他の部分集合も含む。同様に、マーカッシュ群の開示は、その群全体を含み、そこに包含される任意の個別の要素及び部分集合も含む。例えば、マーカッシュ群「水素原子、アルキル基、アルケニル基、及びアリール基」の開示は、その要素である個々のアルキル、部分集合であるアルキル及びアリール、並びに任意の他の個々の要素及びその中に包含される部分集合を包含する。
【0061】
「アルキル」は、環式又は直鎖状、分枝状又は非分枝状の、飽和一価炭化水素基を指す。アルキルは、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、並びにヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル、並びに環式又は分枝状の炭素原子が6個以上の飽和一価炭化水素基によって例示されるが、これらに限定されない。アルキル基は、少なくとも1個の炭素原子を有する。あるいは、アルキル基は、1~12個の炭素原子、あるいは1~10個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子、あるいは1~2個の炭素原子、あるいは1個の炭素原子を有してもよい。
【0062】
「アルケニル」は、一価炭化水素基が二重結合を有する、分枝状又は非分枝状の不飽和一価炭化水素基を意味する。アルケニル基としては、ビニル、エテニル、アリル、及びヘキセニル、並びにこれらの分枝状異性体が挙げられる。アルケニル基は少なくとも2個の炭素原子を有する。あるいは、アルケニル基は、2~12個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子、あるいは2~4個の炭素原子、あるいは2個の炭素原子を有してもよい。
【0063】
「アルキニル」は、一価炭化水素基が三重結合を有する、分枝状又は非分枝状の不飽和一価炭化水素基を意味する。アルキニル基としては、エチニル及びプロピニルが挙げられる。アルキニル基は、少なくとも2個の炭素原子を有する。あるいは、アルキニル基は、2~12個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子、あるいは2~4個の炭素原子、あるいは2個の炭素原子を有してもよい。
【0064】
「アリール」は、アレーンから、環炭素原子から水素原子を除くことにより誘導された炭化水素基を意味するものであり、所望によりペンダント炭化水素基を有してもよい。アリールは、フェニル、ナフチル、ベンジル、トリル、キシリル、フェニルエチル、フェニルプロピル、及びフェニルブチルによって例示されるが、これらに限定されない。アリール基は、少なくとも5個の炭素原子を有する。単環式アリール基は、5~12個の炭素原子、あるいは6~9個の炭素原子、あるいは6~8個の炭素原子を有してもよい。多環式アリール基は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~12個の炭素原子を有してもよい。
【0065】
「炭素環」及び「炭素環式」は、炭化水素環を指す。炭素環は、単環式でも多環式でもよく、例えば、2環式又は2個を超える環を有するものでもよい。2環式炭素環は、縮合環、橋かけ環又はスピロ多環式環でもよい。炭素環は、少なくとも3個の炭素原子を有する。単環式炭素環は、3~9個の炭素原子、あるいは4~7個の炭素原子、あるいは5~6個の炭素原子を有してもよい。多環式炭素環は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有してもよい。炭素環は、飽和(例えば、シクロペンタン又はシクロヘキサン)であっても、部分不飽和(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、又はノルボルナジエン)であっても、完全不飽和(例えば、シクロペンタジエン又はシクロヘプタトリエン)であってもよい。
【0066】
「シクロアルキル」は、炭素環を含む飽和炭化水素基を指す。シクロアルキル基は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びメチルシクロヘキシルによって例示される。シクロアルキル基は、少なくとも3個の炭素原子を有する。単環式シクロアルキル基は、3~9個の炭素原子、あるいは4~7個の炭素原子、あるいは5~6個の炭素原子を有してもよい。多環式シクロアルキル基は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有してもよい。
【0067】
「ハロゲン化炭化水素」は、炭素原子に結合した1つ以上の水素原子が式としてハロゲン原子で置換されている炭化水素を意味する。ハロゲン化炭化水素基としては、ハロアルキル基、ハロゲン化炭素環式基、及びハロアルケニル基が挙げられる。ハロアルキル基としては、フッ素化アルキル基、例えば、トリフルオロメチル(CF)、フルオロメチル、トリフルオロエチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル、及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル、並びに塩素化アルキル基、例えば、クロロメチル、3-クロロプロピル、2,2-ジクロロシクロプロピル、2,3-ジクロロシクロペンチルが挙げられる。ハロアルケニル基としては、クロロアリル基が挙げられる。
【0068】
本明細書で使用される略語は、以下の表2にて定義される。
【表2】
表2-略語