(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】複数の集電アレイを備える電極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/24 20060101AFI20230404BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20230404BHJP
H01M 4/72 20060101ALI20230404BHJP
H01M 4/74 20060101ALI20230404BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20230404BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20230404BHJP
H01M 10/30 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H01M4/24 H
H01M4/70 A
H01M4/72 A
H01M4/74 C
H01M4/80 C
H01M12/08 K
H01M10/30 Z
(21)【出願番号】P 2020512604
(86)(22)【出願日】2018-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2018073269
(87)【国際公開番号】W WO2019043076
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-06-14
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501455677
【氏名又は名称】サントル・ナシオナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シアンティフィーク
(73)【特許権者】
【識別番号】509265302
【氏名又は名称】アンスティテュ・ポリテクニック・ドゥ・グルノーブル
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】カルデラ ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】デュボー ラエティティア
(72)【発明者】
【氏名】シャトネ マリアン
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-237300(JP,A)
【文献】特開2013-214383(JP,A)
【文献】特開2015-141862(JP,A)
【文献】特開2002-198061(JP,A)
【文献】特開2002-015725(JP,A)
【文献】国際公開第01/097304(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 4/64- 4/84
H01M 10/00-10/39
H01M 12/00-12/08
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電式エネルギー貯蔵装置用電極であって、
第1の電極材料層MEである第1の外層、及び第2の電極材料層MEまたは集電層CCである第2の外層と、
これら第1および第2の外層間に挟まれた
2つ又はそれ以上の内層と、を含み、前記内層は、
1つ又はそれ以上の電極材料層ME及び
1つ又はそれ以上の多孔質集電層CCを含み、
前記第1及び第2の外層及び前記内層を形成する前記電極材料層ME及び集電層CCは、繰返しパターン-[CC-ME]-にしたがって交互に配置されている電極において、
前記電極が亜鉛系負極であることを特徴とする電極。
【請求項2】
厚さは50μm~4mmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記
1つ又はそれ以上の多孔質集電層CCの少なくとも一部又は各々は、グリッド、穿孔シート、フェルト、メッシュ、織物、又は発泡
体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電極。
【請求項4】
前記多孔質集電層CCは、同じであっても異なっていても、導電材料層であることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の電極。
【請求項5】
前記第2の外層が、多孔質集電層CCであり、
前記電極は:
[CC-ME]
n
の構造を有する連続層のアセンブリの形態であり、
式中、MEは
1つ又はそれ以上の電極材料層、CCは
1つ又はそれ以上の多孔質集電層、2≦n≦8であること
を特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の電極。
【請求項6】
前記
第2の外層は
第2の電極材料層MEであり、前記電極は、
ME-[CC-ME]
p-1
の構造を有する連続層のアセンブリの形態であり、
式中、MEは
1つ又はそれ以上の電極材料層、CCは
1つ又はそれ以上の多孔質集電層、
3≦p≦8であること
を特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の電極。
【請求項7】
前記電極材料層MEの各々は少なくとも1つの電極活物
質を含むことを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載の電極。
【請求項8】
前記電極材料層MEの各々はポリマバインダと導電剤
を含むことを特徴とする、請求項
7に記載の電極。
【請求項9】
前記電極は、前記電極と、対電極と、電解質と、を含む充電式エネルギー貯蔵装置の中に配置されることが意図され、前記
第1の外層MEは対電極の外層と対面することが意図され、前記電解質と直接接触することが意図されることを特徴とする、請求項1~
8の何れか1項に記載の電極。
【請求項10】
-少なくとも1つの正極と、
-少なくとも1つの負極と、
-電解質と、
を含む充電式エネルギー貯蔵装置において、
前記少なくとも1つの負極が請求項1~
9の何れか1項において定義される亜鉛系負極電極であり、そして、前記電解質が前記亜鉛系負極電極の前記多孔質集電層CCに直接接触しないことを特徴とする
充電式エネルギー貯蔵装置。
【請求項11】
前記電解質は
、前記
第1の外層を通じて請求項1~
9の何れか1項において定義される前記電極と直接接触することを特徴とする、請求項
10に記載の
充電式エネルギー貯蔵装置。
【請求項12】
アルカリ蓄電池の
中から選択されることを特徴とする、請求項
10又は
11に記載の
充電式エネルギー貯蔵装置。
【請求項13】
亜鉛/空気電池及び亜鉛/ニッケル電池から選択されるアルカリ蓄電池であることを特徴とする、請求項
10~
12の何れか1項に記載の
充電式エネルギー貯蔵装置。
【請求項14】
充電式エネルギー貯蔵装置のエネルギー密度を改善するための請求項1~
9の何れか1項において定義される電極の使用。
【請求項15】
アルカリ蓄電池における請求項
14に記載の電極の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電極材料層と複数の多孔質集電層を含み、前記電極材料及び集電層が特定の方法で配置される充電式エネルギー貯蔵装置と、前記電極を含む充電式エネルギー貯蔵装置のほか、前記電極の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は典型的に、ただし排他的でなく、エネルギー密度の増大が望ましく、しかしながらパワーを低減させないような充電式電気化学エネルギー貯蔵装置に適用される。
【0003】
電気化学蓄電池は、静止式及び携帯式の用途、例えば携帯電子機器、電気又は機械的装置等に欠かせないコンポーネントとなっている。これらはまた、電気自動車のほか、エネルギー貯蔵分野における使用についても広く研究されている。様々な技術と変形型がある(鉛-酸、ニッケル-カドミウム、ニッケル-金属-水素化物、リチウム、ナトリウム-硫黄、亜鉛-空気、亜鉛-ニッケル等)。
【0004】
80年代の終わりまで、市場では主に2つの技術が普及しており、これらは鉛蓄電池(自動車始動システム、電話交換用非常電源、質量と体積がさほど問題とならない産業又は民生応用等で使用)とニッケル-カドミウム蓄電池(携帯工具、おもちゃ、非常照明等で使用)である。鉛方式に見られる欠点(重さ、壊れやすさ、腐食性液体の使用)とニッケルカドミウム方式に見られる欠点(カドミウム毒性)は、より高容量で(放電時に放出される電気の量がより多い)、より環境にやさしく、より経済的で、亜鉛負極(例えば、亜鉛-空気バッテリ、亜鉛-ニッケルバッテリ)を含むもの等の多くの原材料を含む他のアルカリ蓄電池の開発を導いた。
【0005】
しかしながら、このようなシステムはまた、Li-イオンシステムとも競合する場合があり、これは主として、その短いサイクル寿命又は短いサイクル性能(すなわち、蓄電池が各充電時に同じエネルギーレベルを放出できる回数が少ない)による。特に、これらのシステムでは、主に亜鉛電極の形態変化に起因する無視できない容量損失や、さらには樹枝状又は粉末状の電析物の形成に起因する短絡も問題となる。特に、樹枝状の電析物は亜鉛を急速に成長させ、それがセパレータを穿孔し、反対の極性の2つの電極間の接触による短絡の原因となる。粉末状の電析については、これらはほとんどの場合、満足に動作するような電極の再構成をできなくする傾向があり、これは支持部への活物質の接着が不十分であるからである。さらに、充電中の陽極における酸化物、水素化物、及び亜塩酸塩の亜鉛への還元は、前記電極の形態変化により特徴付けられる。実際に、蓄電池の動作モードによれば、その形成中の不均一な亜鉛再分散現象による陽極の様々な形態変化が観察されている。樹枝状結晶の成長及び/又は不均一な亜鉛再分散に対処するために、幾つかの解決策が提案されており、例えば、特に亜鉛酸塩の可溶性を制限するための添加剤を、電解質又は陽極活物質の何れに組み込むかを問わず、添加すること、樹枝状結晶形成の低減化と粉末状電析物の回避を目的とした機械的方法の使用(電解質及び/又は亜鉛電極を分散形態で循環させる)、帯電パラメータ(強度、電圧等)の制御とパルス電流の使用、又は特に微孔性の樹脂状結晶の形成に対抗するセパレータ又は交換膜の使用が挙げられる。
【0006】
特に、欧州特許出願第0028879号明細書ではニッケル亜鉛電池が開示されており、その亜鉛電極は、導電グリッドの形態の集電器と、集電器の上に堆積され、亜鉛系活物質、天然セルロースファイバ又は、亜塩酸塩の可溶性を制限できる添加剤を含む電極材料と、を含む。
【0007】
しかしながら、これらの各種の技術はエネルギー密度の改善には不十分であることがわかった。
【0008】
それと平行して、米国特許出願第5993999号明細書では、集電層、陽極材料層、おそらくは吸収材層(多孔質ポリプロピレン)と集電層から選択される層、陽極材料層、及び集電層を連続して含む電極を含む電池が開示されている。しかしながら、この電極の構造は、電解質と直接接触する集電器外面上の樹枝状結晶又はその他の亜鉛電析物の形成につながることがあり、電析物は、電気化学的性能に不利な影響を与えることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点を補償すること及び、特に、エネルギー密度を高め、及び/又は良好なサイクル寿命を得ることのできる充電式エネルギー貯蔵装置用の電極であって、しかも前記装置のパワーを低下させない電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はそれゆえ、目的のために、2つの外層と、2つの外層間に挟まれた複数の内層と、を含み、前記内層及び外層は、複数の電極材料層ME及び複数の多孔質集電層CCを含み、前記電極材料層ME及び集電層CCは、特定のパターン-[CC-ME]-(又は-[ME-CC]-)にしたがって交互に配置され、電極の2つの外層のうち少なくとも1つは電極材料層MEであることを特徴とする充電式エネルギー貯蔵装置用電極を有する。
【0011】
外層の一方が多孔質集電層CCである場合、後者は、電池の構成/組立により、電解質と直接接触しない。
【0012】
したがって、電極内に分散された複数の多孔質集電層を使用し、電極の2つの外層の少なくとも一方が電極材料層MEとすることにより、集電用の複数のアレイが作られ、前記電極のエネルギー密度を改善しながら、充電中の樹脂状結晶の形成による短絡を回避できる。特に、内部電界が改善され、したがって、電極内のよりよい電流分散と、より均一な亜鉛再分散が可能となる。さらに、電極の可逆性が改善される。
【0013】
さらに、本出願の発明者らは、驚くべきことに、上述のような電極構造は、電極材料の活物質の導電性が低く(すなわち、<10-1 Scm-1)、及び/又は装置内の電極の厚さが限定要因(例えば、静止用)ではない場合に特に適していることを発見した。それはまた、物質の輸送と電解質内の電荷が限定的ではない装置(例えば、スーパーキャパシタ)に適している。
【0014】
特に、電極は、電極と、対電極と、電解質と、を含む充電式エネルギー貯蔵装置内に配置されることが意図され、電極材料の外層MEは、対電極の外層と対面することが意図され、電解質と直接接触することが意図される。
【0015】
本発明のある実施形態によれば、電極の厚さは約50μm~4mm、好ましくは約500μm~2mmであってよい。
【0016】
多孔質集電層CCの少なくとも一部又は各々は、グリッド、穿孔シート、フェルト、メッシュ、織物、発泡体、好ましくは連続気泡発泡体の形態であってよい。
【0017】
電極の多孔質集電層CCの各々は、好ましくはグリッドの形態である。したがって、これによって最適な活性電極堆体積が得られるとともに、最小限の重量が保証される。
【0018】
多孔質集電層CCは好ましくは、良好な導電性(すなわち、>102 Scm-1)を有する材料の中から選択される。したがって、好ましい実施形態によれば、多孔性集電層CCは、同じであっても異なっていても、導電性材料層である。
【0019】
多孔質集電層CCは、(導電性カーボンフェルトタイプの)非金属多孔質層から、又は金属多孔質層から選択されてよい。
【0020】
多孔質集電層CCは、同じであっても異なっていても、これらが金属層であれば、特に金属導電材料層、例えばアルミニウム、銅、ニッケル、及びそれらの混合物の1つから選択される金属Mをさらに含むカーボン織物である。
【0021】
異なる多孔質集電層CCの例として、電極は金属M1を含む(又はそれからなる)多孔質集電層CC1及び金属M1’を含む(又はそれからなる)多孔質集電層CC1’を含んでいてよく、M1とM1’はMと異なり、またMと同じ定義を有する。
【0022】
多孔質集電層CCの厚さは同じでも違ってもよい。
【0023】
多孔質集電層CCの表面全体が、金属保護層で被覆されてよい。
【0024】
特に、金属保護層は、同じであっても異なっていても、鉛、銀、錫、及びそれらの混合物の1つから選択される金属M’を含む(又はそれからなる)。
【0025】
金属保護層により、特に装置の電解質が塩基性水溶液電解質である場合に、多孔質集電層CCを腐食の可能性から保護することができる。
【0026】
本発明によれば、「外層」とは、電極の内層を構成しない層、特に2つの多孔質集電層CC間に挟まれた電極材料層MEも、2つの電極材料層ME間に挟まれた多孔質集電層CCも構成しない層を意味する。
【0027】
電極の、電極材料層MEである外層は好ましくは、装置の電解質と接触することが意図される。
【0028】
電解質と考えられるのは、イオン変位による電流の通過を可能にするあらゆる液体又は固体物質である。
【0029】
多孔質集電層CCは、電極を外部回路と確実に電気接続させるためのものである。
【0030】
本発明の第一の変形型によれば、電極は電極材料層MEである1つの外層と、多孔質集電層CCである1つの外層を含む。
【0031】
第一の変形型によれば、装置の組み立て後、電極の、多孔質集電層CCからなる外層は電解質と直接接触せず、電極材料外層MEは電解質と接触する。
【0032】
この第一の変形型によれば、電極は以下の構造:
[CC-ME]n
を有する連続層のアセンブリの形態であってよく、
式中、MEは電極材料層、CCは多孔質集電層、2≦n≦8、好ましくは2≦n≦4である。
【0033】
その結果、電極は多孔質集電外層CC、電極材料外層ME、及び前記外層間に挟まれた2n-2個の内層を含み、前記内層及び外層はn個の電極材料層ME及びn個の多孔質集電層CCを含み、前記電極材料層ME及び集電層CCは、繰返しパターン-[CC-ME]-(又は-[ME-CC]-)により交互に配置される。
【0034】
多孔質集電層が異なる金属M1及びM1’を含む(又はそれからなる)場合、電極は以下の構造を有する連続層のアセンブリの形態であってよい:
*[CC1-ME-CC1’-ME]n1、
1≦n1≦4、好ましくは1≦n1≦2、MEは電極材料層、CC1は金属M1を含む(又はそれからなる)多孔質集電層、及びCC1’は金属M1’を含む(又はそれからなる)集電内層、又は、
*{[CC1-ME]n2-[CC1’-ME]n3}u、
1≦n2≦7、1≦n3≦7、1≦u≦2、MEは電極材料層、CC1は金属M1を含む(又はそれからなる)多孔質集電層、及びCC1’は金属M1’を含む(又はそれからなる)多孔質集電層、又は
*{[CC1-ME]n4-[CC1’-ME]n5-[CC1-ME]n6}v、
1≦n4≦6、1≦n5≦6、1≦n6≦6、1≦v≦2、MEは電極材料層、CC1は金属M1を含む(又はそれからなる)多孔質集電層、及びCC1’は金属M1’を含む(又はそれからなる)多孔質集電層。
【0035】
M1は好ましくはM1’より導電性が高い。例えば、M1は銅であり、M1’はニッケルである。
【0036】
多孔質集電層は異なる金属M1及びM1’を含み(又はそれらからなり)、電極は、多孔質集電層CC1と多孔質集電層CC1’が電極内でランダムに配置される連続層のアセンブリの形態であってよい(電極材料層ME及び集電層(CC1’又はCC1)は繰返しパターン-[CC-ME]-(又は-[ME-CC]-)により交互に配置され、CC=CC1’又はCC1であると理解されたい)。
【0037】
本発明の第二の変形型によれば、電極のうちのもう一方の外層は電極材料層MEである。したがって、電極は、電極材料層MEである2つの外層を含む。
【0038】
この第二の変形型によれば、電極は多孔質集電外層を持たない。換言すれば、電極の多孔質集電層はすべて内層である。
【0039】
この第二の態様によれば、電極以下の構造:
ME-[CC-ME]p-1
を有する連続層のアセンブリの形態であってよく、
式中、MEは電極材料層、CCは多孔質集電層、2≦p≦8、好ましくは2≦p≦3である。
【0040】
この例において、電極のうち、電極材料層MEからなる他方の外層は、装置の組み立て後、電解質と直接接触しない。
【0041】
その結果、電極は2つの電極材料外層MEと、前記外層間に挟まれた2p-3個の内層とを含み、前記内層及び外層は、p個の電極材料層MEとp-1個の多孔質集電層CCとを含み、前記電極材料層ME及び集電層CCは繰返しパターン-[CC-ME]-(又は-[ME-CC]-)により交互に配置される。
【0042】
多孔質集電層が異なる金属M1及びM1’を含む(又はそれらからなる)場合、電極は、以下の構造を有する連続層のアセンブリの形態であってよい:
*ME-[CC1-ME-CC1’-ME]p1、
1≦p1≦4、好ましくは1≦p1≦2、MEは電極材料層、CC1は金属M1を含む(又はそれからなる)多孔質集電層、及びCC1’は金属M1’を含む(又はそれからなる)多孔質集電層、又は、
*ME-{[CC1-ME]p2-[CC1’-ME]p3}q、
1≦p2≦7、1≦p3≦7、1≦q≦4、MEは電極材料層、CC1は金属M1を含む(又はそれからなる)多孔質集電層、及びCC1’は金属M1’を含む(又はそれからなる)多孔質集電層、又は
*ME-{[CC1-ME]p4-[CC1’-ME]p5-[CC1-ME]p6}r、
1≦p4≦6、1≦p5≦6、1≦p6≦6、1≦r≦3、MEは電極材料層、CC1は金属M1を含む(又はそれからなる)多孔質集電層、及びCC1’は金属M1’を含む(又はそれからなる)多孔質集電層。
【0043】
M1は好ましくはM1’より導電性が高い。例えば、M1は銅であり、M1’はニッケルである。
【0044】
多孔質集電層は異なる金属M1及びM1’を含み(又はそれらからなり)、電極は、多孔質集電層CC1と多孔質集電層CC1’が電極内でランダムに配置される連続層のアセンブリの形態であってよい(電極材料層ME及び集電層(CC1’又はCC1)は繰返しパターン-[CC-ME]-(又は-[ME-CC]-)により交互に配置され、CC=CC1’又はCC1であると理解されたい)。
【0045】
電極は、正極又は負極であってよい。
【0046】
電極材料層MEの各々は、少なくとも1つの電極活物質と、おそらくはポリマバインダと、おそらくは導電剤と、を含む。
【0047】
電極が正極であれば、活物質は正の電極活物質であり、電極が負極であれば、活物質は負の電極活物質である。
【0048】
電極材料層MEは好ましくは、特にこれらが同じ組成である場合、同じ電極活物質を含む。
【0049】
本発明の特定の好ましい実施形態によれば、電極は亜鉛系の負極である。この実施形態によれば、電極材料層MEの活物質は好ましくは、カルシウムジンケート又は酸化亜鉛と水酸化カルシウムの混合物又は亜鉛と水酸化カルシウムの混合物から選択される。
【0050】
本発明のある実施形態によれば、電極材料層MEの各々の厚さは約20μm~2mm、好ましくは約50μm~500μmである。
【0051】
電極材料層MEの厚さは同じでも違ってもよく、好ましくは同じである。
【0052】
本発明による電極は、電極材料層を少なくとも1つの正又は負の電極活物質、少なくとも1つの溶剤、おそらくは少なくとも1つのポリマバインダ、及びおそらくは導電剤を含むインク又はペーストとして多孔質集電層CC上に塗布するための何れの種類の方法によっても容易に製造されるかもしれない。このような方法の中では、特にコーティング、浸漬、スプレー、プリント等が挙げられ得る。
【0053】
電極は特に、複数の電極材料層ME及び複数の内側の多孔質集電層CCを含む。特に、電解質と接触させることが意図される外層は、電極材料層MEである。ある例によれば、集電層のうちの何れも電解質と接触しない。
【0054】
電極は、電極、特に電極に関して逆の電荷の対電極、及び電解質を含む充電式エネルギー貯蔵装置の中に配置されることが意図される。電極の、電極材料層MEである外層は、対電極の外層と対面することが意図される。特に、電極の電極材料外層MEは電解質と直接接触することが意図される。
【0055】
本発明は、第二の目的のために、
-少なくとも1つの正極と、
-少なくとも1つの負極と、
-電解質と、
を含む充電式エネルギー貯蔵装置を有し、
前記装置は、正極又は負極の少なくとも一方は、本発明の第一の目的による電極であることを特徴とする。
【0056】
本発明の好ましい実施形態によれば、電解質は、本発明の第一の目的において定義されたように、前記電極の電極材料層MEである外層を通じて電解質と直接接触する。
【0057】
特に、装置の電解質は、本発明の第一の目的による電極の多孔質集電層CCと直接接触しない。したがって、これによって樹脂状結晶の形成を回避するか、又は少なくとも低減させ、装置内の短絡を回避することができる。実際に、多孔質集電層は導電性が高く、それが電解質と直接接触すると、最初の充電から電解質の不飽和につながり、電極の厚さが増大するため、1又は2サイクル後から樹脂状結晶の形成、セパレータの穿孔、及びおそらくは短絡を引き起こし得る。
【0058】
装置は、電極の2つの外層のうちの他方と、特に電極と外部回路との電気接続を確実にするための外層と直接接触する少なくとも1つのガラス状炭素素子をさらに含んでいてよい。その結果、電極と外部回路との電気接続は前記素子を通じて行われる。したがって、これによって、特に電極の2つの外層のうちの前記他方が多孔質集電層CCであるときに、電極の2つの外層のうちの前記他方と装置内の電解質との間の接触の可能性を回避できる。
【0059】
装置は特に、アルカリ蓄電池、リチウムイオン電池、鉛電池、ニッケル金属水素化物又はNi-MH電池、及びスーパーコンデンサから選択されてよい。
【0060】
従来、装置の種類に応じて、電解質は液体、ゲル、又は固体であってよい。
【0061】
本発明の好ましい実施形態によれば、装置は亜鉛/空気電池及び亜鉛/ニッケル電池、好ましくは亜鉛/ニッケル電池から選択されたアルカリ蓄電池である。
【0062】
アルカリ蓄電池は、
-少なくとも1つの正極と、
-少なくとも1つの負極と、
-液体電解質と、
-1つ又は複数の多孔質セパレータと、
を含む充電式エネルギー貯蔵装置であると定義される。
【0063】
アルカリ蓄電池が亜鉛/ニッケル電池である場合、装置の負極は、本発明の第一の目的において定義された亜鉛系電極である。
【0064】
この実施形態において、正極は、特に活物質として酸化ニッケル(III)(NiOOH)、水酸化ニッケル(II)(Ni(OH)2)、又はそれらの混合物の1つを含むニッケル系電極であってよい。
【0065】
多孔質セパレータは、非導電性多孔質材料、一般にポリオレフィン系ポリマ材料(例えば、ポリエチレン)又はファイバ(例えば、グラスファイバ又はウッドファイバ、セルロースファイバ)であってよい。
【0066】
本発明の第一の目的による電極は、外部回路との電気接続を確実にするためのエッジ(上側、下側、又は円形)を含んでいてよい。これらのエッジはすると、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の絶縁材料で被覆されてよい。したがって、これによって、装置内で、電極のうち電解質と接触させることが意図されない部分を絶縁することができる。
【0067】
本発明による装置は、当業者の間で知られている何れの技術によっても容易に組み立てられるかもしれない。
【0068】
本発明は、第三の目的のために、充電式エネルギー貯蔵装置のエネルギー密度を改善するための本発明の第一の目的による電極の使用を有する。
【0069】
本発明は、第四の目的のために、アルカリ蓄電池における本発明の第一の目的による電極の使用を有する。
【0070】
アルカリ蓄電池は、本発明の第二の目的において、正極又は負極の少なくとも一方が本発明の第一の目的による電極であることを特徴とする充電式エネルギー貯蔵装置であると定義されたものである。
【0071】
本発明は、以下の例により説明されるが、それらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図12】各図は、本発明の電極を説明するための図である。
【実施例】
【0073】
これらの実施例の中で使用される原材料を以下に挙げる:
-ポリビニルアルコール、Fluka、モル質量Mw=72000、
-窒化チタン、EASYL、純度99%、
-PKcellブランドNi-Zn電池の分解により回収された酸化ニッケルの正極)、
-電池グレードの水酸化ニッケル(II)(Ni(OH)2)、
-水酸化カリウム(KOH)、Alfa Aesar、純度85%、
-水酸化リチウム(LiOH)、Normapur、純度96%、
-酸化亜鉛(ZnO)、a.m.p.e.r.e.industrie、純度99.9%、
-カルシウムジンケート、EASYL、純度99%、
-ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ROTH、Seal Tape Grade L、
-不織布ポリオレフィン系セパレータ、Viledon、Freudenberg、FS 2203-10、
-ポリプロピレン膜、Celgard(登録商標)3401、
-円形銅発泡体の形態の多孔質集電層、GoodFellow、CU003804、(厚さ800μmまで低減)、
-円形銅グリッドの形態の多孔質集電層、Alfa Aesar、銅線径56μm、ref.46603、
-PKcell-ブランドNi-Zn電池の分解から回収されたニッケル発泡体からなる多孔質集電層。
【0074】
特に別段のことわりがないかぎり、すべての材料は製造業者から受け取った状態で使用された。
【0075】
実施例1:本発明によらない電極E-Aと本発明による2つの電極E-1及びE-2との製作
活物質としてカルシウムジンケート900mg、導電性添加剤として酸化ビスマス42mg及び窒化チタン144mg、ポリマバインダとしてポリビニルアルコール66mg、及び水1.90mlを含む電極材料インクを調製した。
【0076】
カルシウムジンケートは、国際公開第2016/156749 A1号パンフレットに記載されているハイドロ-マイクロメカニカル法により合成された。カルシウムジンケート粒子の粒度分布は、LASER粒度分布測定器(湿式プロセス)による測定で、d50=10±2μmとした。
【0077】
その後、このインクを円形の銅発泡体からなる厚さ800μmの多孔質集電層の主要面のうちの1つに塗布して、円形電極E-Aを形成した。次に、得られた円形電極E-Aを約50℃の炉内で乾燥させ、PTFEリング内にセットし、約0.5mmの厚さまで圧縮した。PTFEリングは電極の円形エッジを保護するとともに、常に中央の電解質、すなわち電極接触面を残した。
【0078】
円形電極E-Aは、集電層CCと、集電層CCの上に堆積された電極材料層MEとを含んでいた。これはしたがって、以下の構造を有する連続層のアセンブリの形態であった:
[CC-ME]。
【0079】
活物質としてカルシウムジンケート450mg、導電性添加剤として酸化ビスマス21mg及び窒化チタン72mg、ポリマバインダとしてポリビニルアルコール33mg、及び水1.90mlを含む電極材料インクを調製した。
【0080】
次に、上述のように調製したインクを使用した第一の堆積物を、円形の銅グリッドからなる厚さ100μmの第一の多孔質集電層CCに適用した。
【0081】
上述のように調製したインクを使用した第二の堆積物を、堆積物より大きい直径を有する円形の銅グリッドからなる厚さ100μmの第二の多孔質集電層CCに適用した。各々が電極材料インクで被覆された2つの多孔質集電層CCを約50℃の炉内で乾燥させ、第一の電極材料層MEが第二の集電層CCと接触するように組み立てて、円形電極E-1を形成した。
図1によれば、堆積物より大きい直径を有し、第二の堆積物で使用された集電器CC 1’が第一の堆積物のために使用された第一の集電器CC 1の上に折り返されて、これら2つが接触することがわかる。次に、得られた円形電極3 E-1をPTFEリング2の中にセットして、厚さ約0.5mmになるまで圧縮した。PTFEリング2は、電極の円形エッジを保護するとともに、常に中央の電解質、すなわち電極接触面4を残した。
【0082】
円形電極E-1は、第一の多孔質集電層CC 1、第一の電極材料層ME 5、第一の多孔質集電層CC 1に接続された第二の多孔質集電層CC 1’、及び第二の電極材料層ME 5’を連続して含む。第二の電極材料層ME 5’は電解質と接触することが意図され、第一の多孔質集電層1は、電極3と外部回路(図示せず)との電気接続を確実にすることが意図される。電極3はしたがって、以下の構造を有する連続層のアセンブリの形態であった:
[CC-ME]2。
【0083】
活物質としてカルシウムジンケート300mg、導電性添加剤として酸化ビスマス14mg及び窒化チタン48mg、ポリマバインダとしてポリビニルアルコール22mg、及び水1.90mlを含む電極材料インクを調製した。
【0084】
カルシウムジンケートは、前述の方法により合成した。
【0085】
次に、上述のように調製したインクを使用した第一の堆積物を、円形の銅グリッドからなる厚さ100μmの第一の多孔質集電層CCに適用した。
【0086】
上述のように調製したインクを使用した第二の堆積物を、堆積物より大きい直径を有する円形の銅グリッドからなる厚さ100μmの第二の多孔質集電層CCに適用した。
【0087】
上述のように調製したインクを使用した第二の堆積物を、堆積物より大きい直径を有する円形の銅グリッドからなる厚さ100μmの第三の多孔質集電層CCに適用した。各々が電極材料インクで被覆された3つの多孔質集電層CCを約50℃の炉内で乾燥させ、第一の電極材料層MEが第二の多孔質集電層CCと、また第二の電極材料層MEが第三の多孔質集電層CCと接触するように組み立てて、電極E-2を形成した。
図2によれば、堆積物1’、1’’より大きい直径を有する集電器CCが第一の堆積物のために使用された第一の集電器CC 1の上に折り返されて、これら3つが接触することがわかる。次に、得られた電極3 E-2をPTFEリング2の中にセットして、厚さ約0.5mmになるまで圧縮した。PTFEリング2は、電極の円形エッジを保護するとともに、常に中央の電解質、すなわち電極接触面4を残した。
【0088】
円形電極E-2 3は、第一の多孔質集電層CC 1、第一の電極材料層ME 5、第二の多孔質集電層CC 1’、第二の電極材料層ME 5’、第三の多孔質集電層CC 1’’、及び第三の電極材料層ME 5’’を連続して含み、第三の電極材料層5’’’は電解質と接触することが意図され、第一の多孔質集電層1は、電極3と外部回路(図示せず)との電気接続を確実にすることが意図される。電極3はしたがって、以下の構造を有する連続層のアセンブリの形態であった:
[CC-ME]3。
【0089】
3つの亜鉛/ニッケルアルカリ蓄電池を、以下を組み立てることにより製造した:
-亜鉛系負極E-A、E-1、又はE-2のうちの1つ、
-ニッケル発泡体からなる多孔質集電層の上に堆積されたNiOOH及びNi(OH)2を含む電極材料層を含む、市販のPKcell-ブランドのNi-Zn電池から回収されたニッケル系正極、
-負極と正極との間に挟まれたポリオレフィン系不織布セパレータ及びポリプロピレン膜、セパレータは負極に面し、膜は正極に面する。
-KOH 7MとLiOH 10g/lを含む水溶液を含む電解質、前記水溶液はZnO飽和状態である。
【0090】
図3.a.は、上述のように調製された亜鉛系負極E-A(
図3.a.)、E-1(
図3.b.)、及びE-2(
図3.c.)を示す。
【0091】
図3.b.は、上述のように製造された蓄電池6を示しており、亜鉛系負極3、ニッケル系正極7、負極3と正極7との間に挟まれたポリオレフィン系不織布セパレータ8及びポリプロピレン膜9(セパレータ8は負極3に面し、膜9は正極7に面する)、並びに電解質10を含む。
【0092】
この蓄電池はまた、その両端に2つのガラス状炭素層11、11’も含み、それによって多孔質集電外層と直接電気接触できるほか、気体は透過させるが、液体電解質12は透過させないことによってガッシングの場合の過剰圧力を回避する安全なシステムが得られる。
【0093】
そのPTFEリング2が設けられた電極3を外側集電器に組み付けることにより、負極の多孔質集電外層と電解質との直接接触を回避できる。
【0094】
その後、C/3(すなわち3時間充電、3時間放電、電流1.33mA)、充電終止電圧1.93V、及び放電終止電圧1.40Vで定電流充放電試験(定電流)を行い、すなわち、理論上の容量の40%に対応する実用容量4mAhとした。試験は、Origalys CompanyがOGF500の商品名で販売するポテンショスタット-ガルバノスタットにより室温で行った。C/3でのサイクル前に、C/10での充電とC/5での放電を3サイクル行った。
【0095】
図4.a.、
図5.a.、及び
図6.a.は、蓄電池が負極として電極E-A(
図4.a.)、電極E-1(
図5.a.)、又は電極E-2(
図6.a.)を含む場合の4サイクル後(すなわち、C/3での3形成サイクル+1サイクル後)(実線の曲線)、10サイクル後(破線の曲線)、及び20サイクル後(点線の曲線)の時間(単位:分、min)に応じた蓄電池の電圧(単位:ボルト、V)の曲線を示す。
【0096】
図4.b.、
図5.b.、及び
図6.b.は、蓄電池が負極として電極E-A(
図4.b.)、電極E-1(
図5.b.)、又は電極E-2(
図6.b.)を含む場合のサイクル数に応じた蓄電池の実用容量(単位:ミリアンペア時、mAh)の変化を示す。
【0097】
本発明によらない負極E-Aが使用された場合、10サイクル目で過電圧が見られ、それによって電池は充電100min未満で、また20サイクル目では充電50min未満で終止電圧に到達することがわかる(
図4.a.)。その結果、実用容量が最初のサイクルから右に急激に低下することにもなる(
図4.b.)。この電極E-Aの最初の50サイクルの平均実用容量は1.27mAhであり、これは初期実用容量4mAhのわずか32%である。
【0098】
図5.a.において、電気化学性能は改善されている。したがって、2つの多孔質集電層を使用する本発明による負極E-1により、10サイクル目及び20サイクル目の過電圧はより顕著でない。実用容量のよりなだらかな低下も見られる(
図5.b.)。この電極E-1の最初の50サイクルの平均実用容量は2.3mAhであり、これは初期実用容量4mAhの58%である。
【0099】
電気化学性能は、多孔質集電層の数が増えるとさらに改善される。したがって、3つの多孔質集電層を使用する本発明による負極E-3により、10サイクル目及び20サイクル目の過電圧は低い(
図6.a.)。実用容量の非常に小さい低下も見られる(
図6.a.)。実際、この電極E-3の最初の50サイクルの平均実用容量は3.68mAhであり、これは初期実用容量4mAhの92%である。
【0100】
電極E-A、E-1、及びE-2のサイクル試験後の走査型電子顕微鏡検査による形態分析から、電極の内側の複数の集電アレイの使用が連続的サイクル中の電極内でのその形成中の均一な亜鉛再分散に有利に働くと言うことができる。
【0101】
実施例2:本発明によらない電極E-Bの製作
活物質としてカルシウムジンケート450mg、導電性添加剤として酸化ビスマス21mg及び窒化チタン72mg、ポリマバインダとしてポリビニルアルコール33mg、及び水1.90mlを含む電極材料インクを調製した。
【0102】
カルシウムジンケートは、前述の方法で合成した。
【0103】
その後、上述のように調製したインクを使用した第一の堆積物を円形の銅グリッドからなる厚さ100μmの第一の多孔質集電層CCに適用した。
【0104】
上述のように調製したインクを使用した第二の堆積物を、堆積物より大きい直径を有する円形の銅グリッドからなる厚さ100μmの第二の多孔質集電層CCに適用した。各々が電極材料インクで被覆された2つの多孔質集電層CCを約50℃の炉内で乾燥させ、第一の電極材料層MEが第二の集電層CCと接触するように組み立てた。第二の電極材料層MEより大きい直径を有する第三の多孔質集電層CCを第二の電極材料層MEに適用して、円形電極E-Bを形成した。添付の
図7によれば、堆積物1’、1’’より大きい直径を有する集電器CCが第一の集電器CC 1の上に折り返されて、これら3つが接触することがわかる。次に、得られた円形電極3 E-BをPTFEリング2の中にセットして、厚さ約0.5mmになるまで圧縮した。PTFEリング2は、電極3の円形エッジを保護するとともに、常に中央の面4を電解質と接触した状態としたままにした。この場合、多孔質集電層CCは電解質と直接接触する。
【0105】
円形電極E-Bは、第一の多孔質集電層CC 1、第一の電極材料層ME 5、第一の多孔質集電層CC 1に接続された第二の多孔質集電層CC 1’、第二の電極材料層ME 5’、及び第一の多孔質集電層CC 1に接続された第三の多孔質集電層CC 1’’を連続して含む。第三の多孔質集電層CC 1’’は電解質と接触することが意図され、第一の多孔質集電層1は、電極3と外部回路との電気接続を確実にすることが意図される。電極3はしたがって、以下の構造を有する連続層のアセンブリの形態であった:
[CC-ME]2-CC。
【0106】
次に、以下を組み立てることによって亜鉛/ニッケルアルカリ蓄電池を製造した。
-亜鉛系負極E-B、
-ニッケル発泡体からなる多孔質集電層の上に堆積されたNiOOH及びNi(OH)2を含む電極材料層を含む、市販のPKcell-ブランドのNi-Zn電池から回収された市販の正極、
-負極と正極との間に挟まれたポリオレフィン系不織布セパレータ及びポリプロピレン膜、セパレータは負極に面し、膜は正極に面する。
-KOH 7MとLiOH 10g/lを含む水溶液を含む電解質、前記水溶液はZnO飽和状態である。
【0107】
その後、このようにして得られた負極3 E-Bを添付の
図3.d.に示されるものと同じアセンブリによる蓄電池に入れた。
【0108】
C/3(すなわち3時間充電、3時間放電、電流1.3mA)、充電終止電圧1.93V、及び放電終止電圧1.40Vで定電流充放電試験(定電流)を行い、理論上の容量の40%に対応する実用容量4mAhとした。試験は、Origalys CompanyがOGF500の商品名で販売するポテンショスタット-ガルバノスタットにより室温で行った。C/3でのサイクル前に、C/10での充電とC/5での放電を3サイクル行った。
【0109】
図8.a.は、蓄電池が負極として電極E-Bを含む場合の4サイクル後(実線の曲線)、10サイクル後(破線の曲線)、及び20サイクル後(点線の曲線)の時間(単位:分、min)に応じた蓄電池の電圧(単位:ボルト、V)の曲線を示す。最初の20サイクルの蓄電器電圧曲線には過電圧が見られず、これは、同じ数の多孔質集電層CCを有する電極E-2のそれと同様の結果である。
【0110】
図8.b.は、蓄電池が負極として電極E-Bを含む場合のサイクル数に応じた蓄電池の実用容量(単位:ミリアンペア時、mAh)の変化を示す。
【0111】
本発明によらない負極E-Bが使用された場合、35サイクル目から容量の激減が見られることがわかる。
【0112】
最初の50サイクルのこの電極E-Aの平均実用容量は2.88mAhであり、これは初期実用容量4mAhの72%にすぎない。
【0113】
20サイクル目まで測定した蓄電池電圧曲線だけでは、本発明によらない電極E-Bの性能損失を説明していないが、サイクリング後の電極E-Bの走査型電子顕微鏡による形態分析から、内側の複数の集電アレイの使用が連続的サイクル中の電極内でのその形成中の均一な亜鉛再分散に有利に働くが、電解質と直接接触する多孔質集電外層CCは良好な電気化学性能にとって有害であり、表面上に水酸化カルシウムの抵抗層が形成されることにつながると言うことができる。
【0114】
実施例3:本発明による電極E-3の製作
活物質としてカルシウムジンケート300mg、導電性添加剤として酸化ビスマス14mg及び窒化チタン48mg、ポリマバインダとしてポリビニルアルコール22mg、及び水1.90mlを含む電極材料インクを調製した。
【0115】
カルシウムジンケートは、前述の方法で合成した。
【0116】
添付の
図9によれば、上述のように調製したインクを使用した第一の堆積物5を、堆積物より大きい直径を有する円形の銅グリッドからなる厚さ100μmの第一の多孔質集電層CC 1に適用した。
【0117】
上述のように調製したインクを使用した第二の堆積物5’を非接着面13に適用し、それを多孔質集電層CCが一切ない状態で使用するようにした。
【0118】
上述のように調製したインクを使用した第三の堆積物5’’を、
図9に示されるように、上側延長部13を含む円形の銅グリッドからなる厚さ100μmの第三の多孔質集電層CC 1’’に適用した。
【0119】
上述のように調製したインクを使用する第四の堆積物5’’’を非接着性支持部に適用した。
【0120】
各々が電極材料インク5、5’、及び5’’で被覆された3つの多孔質集電層CC 1、1’’、及び1’’’、並びに電極材料インク5’で被覆された非接着面14を約50℃の炉内で乾燥させ、第一の堆積物5の第一の多孔質集電層CC 1が、集電器を持たない電極材料層ME 5’と接触するように組み立て、後者は第三の堆積物の多孔質集電層CC 1’’と接触し、第三の堆積物の電極材料層ME 5’’は第四の堆積物5’’’の多孔質集電層1’’’と接触するようにして、円形電極3 E-3を形成した。堆積物より大きい直径を有する集電器CC 1’’、1’’’が第一の集電器CC 1の上に折り返されて、これら3つの集電器CC 1、1’’、及び1’’’が接触していることがわかる。添付の
図10に示されるように、得られた円形電極3 E-3を2つのPTFEリング2にセットして、厚さ800μmになるまで圧縮した。2つのPTFEリング2は電極3の円形エッジを保護するとともに、常に中央の電解質-すなわち電極接触面4、4’を残した。
【0121】
添付の
図10によれば、円形電極3 E-3は、第一の電極材料層ME 5、第二の多孔質集電層CC 1’’に接続された第一の多孔質集電層CC 1、第二の電極材料層ME 5’、電極3と外部回路との電気接続を確実にするための上側延長部13が設けられた第二の多孔質集電層CC 1’’、第三の電極材料層ME 5’’、第二の多孔質集電層CC 1’’に接続された第三の多孔質集電層CC 1’’’、第四の電極材料層ME 5’’’を連続して含む。第一の電極材料層ME 5のほか第四の電極材料層ME 5’’’は、電解質と接触することが意図される。電極3はしたがって、以下の構造を有する連続層のアセンブリの形態であった:
ME-[CC-ME]
3。
【0122】
次に、
図11による亜鉛/ニッケルアルカリ蓄電池6を、以下を組み立てることによって製造した:
-亜鉛系負極3 E-3、
-ニッケル発泡体からなる多孔質集電層の上に堆積されたNiOOH及びNi(OH)
2を含む電極材料層を含む、市販のPKcell-ブランドのNi-Zn電池から回収された2つのニッケル系正極7、7’、
-正極7、7’と負極3との間に挟まれた2つのポリオレフィン系不織布セパレータ8、8’及び2つのポリプロピレン膜9、9’、セパレータ8、8’は負極3に面し、膜9、9’は正極7、7’に面する。
-KOH 7MとLiOH 10g/lを含む水溶液を含む電解質、前記水溶液はZnO飽和状態である。
【0123】
図11は、上述のように製造された蓄電池6を示し、亜鉛系負極3、2つのニッケル系正極7、7’、負極3と正極7、7’との間に挟まれた2つのポリオレフィン系不織布セパレータ8、8’及び2つのポリプロピレン膜9、9’を含み、セパレータ8、8’は負極3に面し、膜9、9’は正極7、7’に面する。
【0124】
蓄電池はまた、その両端において、ガラス状炭素ロッド16、16’が設けられた2つのポリクロロトリフルオロエチレンチップ(Kel-F(登録商標))15、15’も含み、これによって2つのニッケル系正極7、7’との直接電気接触が可能となる。
【0125】
負極3は、集電器の延長部13によって外部集電器に接続される。
【0126】
C/3(すなわち3時間充電、3時間放電、電流1.3mA)、充電終止電圧1.93V、及び放電終止電圧1.40Vで定電流充放電試験(定電流)を行い、すなわち理論上の容量の40%に対応する実用容量4mAhとした。試験は、Origalys CompanyがOGF500の商品名で販売するポテンショスタット-ガルバノスタットにより室温で行った。C/3でのサイクル前に、C/10での充電とC/5での放電を3サイクル行った。
【0127】
図12.a.は、蓄電池が負極として電極E-3を含む場合の4サイクル後(実線の曲線)、10サイクル後(破線の曲線)、及び20サイクル後(点線の曲線)の時間(単位:分、min)に応じた蓄電池の電圧(単位:ボルト、V)の曲線を示す。
【0128】
図12.b.は、蓄電池が負極として電極E-3を含む場合のサイクル数に応じた蓄電池の実用容量(単位:ミリアンペア時、mAh)の曲線を示す。
【0129】
本発明による負極E-3が使用された場合、蓄電池電圧曲線には4サイクル目、10サイクル目、及び20サイクル目において過電圧が見られないことがわかるかもしれない。
【0130】
本発明による負極E-3が使用された場合、実用容量は実行された50サイクルにわたり一定に保たれることがわかるかもしれない。
【0131】
最初の50サイクルのこの電極E-3の実用実用容量は3.70mAhであり、これは初期実用容量4mAhの93%にあたる。
【0132】
電極E-3のサイクリング後の走査型電子顕微鏡検査による形態分析から、内側の複数の集電アレイの使用が連続的サイクル中の電極内でのその形成中の均一な亜鉛再分散に有利に働くと言うことができる。