(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】てんかんの治療におけるカンナビノイドの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/05 20060101AFI20230404BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20230404BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230404BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
A61K31/05 ZMD
A61P25/08
A61P37/06
A61K31/436
(21)【出願番号】P 2020529428
(86)(22)【出願日】2018-11-30
(86)【国際出願番号】 GB2018053483
(87)【国際公開番号】W WO2019106386
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-10-15
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】319016758
【氏名又は名称】ジーダブリュー・リサーチ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ガイ
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー・クナッパーツ
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02531282(GB,A)
【文献】国際公開第2016/176279(WO,A1)
【文献】XENOBIOTICA,1996,vol.26,no.3,p.275-284
【文献】Pharmacotherapy,1998,vol.18,no.6,p.1356-1359
【文献】Abstracts of the 18th Congress of the European Society for Organ Transplantation,2017,vol.30(Suppl.2),390-576,P220
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫抑制剤及び関連するマーカーの血中レベルが確実に有毒にならないようにするためにモニターすることを特徴とする
、免疫抑制剤を
併用して服用している患者における小児期発症てんかんの治療における使用のための
組成物であって、カンナビジオール(CBD)
を含み、前記免疫抑制剤はタクロリムスである組成物。
【請求項2】
CBDの用量を減少させる、請求項1に記載の
組成物。
【請求項3】
免疫抑制剤の用量を減少させる、請求項1に記載の
組成物。
【請求項4】
CBDは、少なくとも98%(w/w)のCBDを含む、高度に精製されたカンナビスの抽出物の形態である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項5】
CBDは合成化合物として存在する、請求項1に記載の
組成物。
【請求項6】
高度に精製された抽出物は0.15%未満のTHCを含む、請求項
4に記載の
組成物。
【請求項7】
抽出物はさらに最大1%のCBDVを含む、請求項
4に記載の
組成物。
【請求項8】
CBDの用量は50 mg/kg/day未満である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項9】
CBDの用量は20 mg/kg/dayより多い、請求項1から
8のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項10】
小児期発症てんかんは、レノックス・ガストー症候群、ミオクロニー欠神てんかん、結節性硬化症、ドラベ症候群、ドーゼ症候群、ジーボンス症候群、CDKL5、Dup15q、神経セロイドリポフスチン症(NCL)、及び脳異常である、請求項1から
9のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項11】
治療効果のある量のカンナビジオールを注意して患者に投与することを含む、それらを必要としている個人における小児期発症てんかんの治療方法
で使用するための、カンナビジオールを含む組成物であって、前記個人
が免疫抑制剤を
併用して服用して
おり、前記免疫抑制剤はタクロリムスである、
組成物。
【請求項12】
前記注意はカンナビジオールの用量を減少させることを含む、請求項
11に記載の
組成物。
【請求項13】
前記注意は免疫抑制剤を減少させることを含む、請求項
11に記載の
組成物。
【請求項14】
前記注意は副作用に関して前記個人をモニタリングすることを含む、請求項
11に記載の
組成物。
【請求項15】
前記注意は副作用が見られた場合はカンナビジオールを中断することをさらに含む、請求項
14に記載の
組成物。
【請求項16】
前記注意は併用治療に由来する副作用を前記個人に助言することを含む、請求項
11に記載の
組成物。
【請求項17】
治療効果のある量のカンナビジオール(CBD)を患者に投与することを含む、それらを必要としている個人における小児期発症てんかんの治療方法で使用するための、カンナビジオールを含む組成物であって、前記個人が併用してタクロリムスを服用している、組成物。
【請求項18】
前記個人が併用してタクロリムスを1.0mg/日の用量で服用している、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
CBDは、少なくとも98%(w/w)のCBDを含む、高度に精製されたカンナビスの抽出物の形態である、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項20】
CBDは合成化合物として存在する、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項21】
高度に精製された抽出物は0.15%未満のTHCを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
抽出物はさらに最大1%のCBDVを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
CBDの用量は50 mg/kg/day未満である、請求項17から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
CBDの用量は20 mg/kg/dayより多い、請求項17から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
小児期発症てんかんは、レノックス・ガストー症候群、ミオクロニー欠神てんかん、結節性硬化症、ドラベ症候群、ドーゼ症候群、ジーボンス症候群、CDKL5、Dup15q、神経セロイドリポフスチン症(NCL)、及び脳異常である、請求項17から24のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在免疫抑制剤を服用している、小児期発症てんかんの患者の治療におけるカンナビジオール(CBD)の使用に関する。
【0002】
特に、免疫抑制剤はカルシニューリン阻害剤である。より具体的には、免疫抑制剤はタクロリムスである。
【0003】
CBDが免疫抑制剤と組合せて使用される場合、注意が必要である。例えば、CBD及び/又は免疫抑制剤いずれかの用量は、減らす必要がある可能性がある。さらに、患者は当該薬剤-薬剤相互作用の副作用に関してモニターされる必要がある可能性がある。
【0004】
好ましくは、使用されるCBDは、CBDが総抽出物(w/w)の98%より多く存在し、抽出物のその他の成分が特徴づけられるような、高度に精製されたカンナビスの抽出物の形態である。特に、カンナビノイドのテトラヒドロカンナビノール(THC)は、0.15%(w/w)以下のレベルまで実質的に除去され、CBDのプロピル類似体であるカンナビジバリン(CBDV)は1%までの量で存在している。代替手段として、CBDは合成的に産生されたCBDであってもよい。
【背景技術】
【0005】
てんかんは、世界中の人口のおよそ1%で発生し(Thurman et al., 2011)、そのうちの70%は入手可能な既存の抗てんかん薬(AED)で症状を十分に制御することができる。しかしながら、この患者群の30%は(Eadie et al., 2012)、入手可能なAEDでは発作の消失を得ることができず、そのため、難治性てんかん又は「治療抵抗性てんかん(TRE)」に患っていると呼ばれている。
【0006】
難治性又は治療抵抗性てんかんは2009年に国際抗てんかん連盟(ILAE)によって、「持続的な発作の消失を達成するための、二つの、耐容され、適切に選択され、使用されたAED治療計画(単独療法又は併用のいずれとしても)の適切な試みの失敗」と定義された(Kwan et al., 2009)。
【0007】
誕生して数年の間にてんかんを発症した個人は、しばしば治療が困難であり、そのため、しばしば治療抵抗性と呼ばれる。小児期に頻繁な発作を起こした子供は、認知、行動、及び運動遅延を起こし得る神経損傷がしばしば残る。
【0008】
小児期発症てんかんは、100,000人あたり約700人の有病率である、子供及び若年成人において、比較的一般的な神経疾患である。これは、人口あたりのてんかん患者の成人の数の2倍である。
【0009】
小児又は若年成人が発作を呈した場合、通常、原因を調べるために調査が行われる。小児てんかんは、多くの異なった症候群及び遺伝子変異によって引き起こされ得り、そのため、これらの子供の診断にある程度の時間がかかることがある。
【0010】
てんかんの主な症状は、繰り返される発作である。患者が患っているてんかんの種類又はてんかん症候群を確定するために、患者が経験している発作の種類の調査が行われる。臨床的観察及び脳波検査(EEG)テストが行われ、発作の種類が、下記に記載のILAE分類に従って、分類される。
【0011】
ILAEによって提案された発作の種類の国際分類は1981年に採用され、修正された提案は2010年にILAEによって発表されたが、1981年の分類とまだ取り代えられてない。修正された専門用語に関する2010年の提案は、部分性の専門用語を焦点性に置き換えるための提案された変更を含む。加えて、用語「単純部分発作」は用語「意識/反応性が減損していない焦点発作」に置き換えられ、用語「複雑部分発作」は用語「意識/反応性が減損した焦点発作」に置き換えられた。
【0012】
発作が両側性に分散されたネットワーク内で生じ、急速に当該ネットワークを巻き込む、全般発作は、強直間代(大発作)発作、欠神(小発作)発作、間代発作、強直発作、脱力発作、及びミオクロニー発作の六つのサブタイプに分けられる。
【0013】
発作が片脳半球だけに限定されたネットワーク内で生じる、焦点(部分)発作も、サブカテゴリーに分けられる。ここでは、発作は、前兆、運動、自律神経、及び意識/反応性を含む、発作の1つ又は複数の特徴に従って特徴付けられる。発作が局所的な発作として始まり、急速に進展して両側のネットワーク内に分散した場合、この発作は両側痙攣発作として知られるものであり、当該用語は二次性全般発作(焦点発作から進展した全般発作であり、もはや局所性を残していない全般発作)を置き換えるために提案された用語である。
【0014】
てんかん症候群は、しばしば多くの異なった発作の種類を呈し、患者が患っている発作の種類を同定することは、重要である。なぜならば、標準のAEDの多くが、ある特定の発作の種類/サブタイプを治療することを目的とされており、又はある特定の発作の種類/サブタイプに対してしか効果的でないからである。
【0015】
そのような小児てんかん症候群の一つが、レノックス・ガストー症候群(LGS)である。LGSはてんかんの深刻な形態であり、発作は通常4歳前に始まる。発作の種類は、患者の間で多様であるが、強直発作(身体の硬直、眼の上向き偏位、瞳孔の散大、及び異常な呼吸パターン)、脱力発作(突然の転倒を引きおこす、筋緊張及び意識の短時間の消失)、非定型欠神発作(凝視発作(staring spells))、並びにミオクロニー発作(突然の筋肉の痙攣)を含む。頻繁な発作の期間に、短く、比較的発作のない期間が混ざっている可能性もある。
【0016】
LGSにおける発作は、しばしば「失立発作」と言われる。そのような失立発作は、転倒、怪我、椅子にぐったりと崩れ落ちる、又は自身の頭を地面に打つことをもたらす又はもたらしたかもしれない、身体全体、胴体、又は頭を巻き込んだ発作(attack)又は発作(spell)(脱力発作、強直発作、若しくは強直間代発作)と定義される。
【0017】
LGSの患者のほとんどが、発育遅延及び行動障害を伴う、ある程度の知的機能障害又は情報処理障害を経験している。
【0018】
LGSは、脳形成異常、周産期仮死、重度の頭部損傷、中枢神経系感染症、及び遺伝性変性又は代謝疾患によって引き起こされ得る。30-35%の場合において、原因が見出すことができない。
【0019】
LGSの患者における失立発作の治療を含む、失立発作に対する第一選択治療は、通常、多くの場合ルフィナミド又はラモトリギンと組合せたバルプロ酸ナトリウムのような広域AEDを含む。その他の考えられるAEDは、フェルバメート、クロバザム及びトピラマートを含む。
【0020】
カルバメザピン(carbamezapine)、ガバペンチン、オクスカルバゼピン、プレガバリン、チアガビン、又は/及びビガバトリンのようなAEDは、失立発作において禁忌である。
【0021】
作用のメカニズムによって定義される一般的なAEDを以下の表に記載した。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
本発明は、小児期発症てんかんに関する非盲検の臨床試験の延長部分の間に、免疫抑制剤であるタクロリムスを服用していた患者からの驚くべきデータを記述する。
【0026】
特筆すべきことに、患者がCBDを服用していた期間に、患者の血中尿素窒素(BUN)及び血清クレアチンレベルが有意に増加した。そのような相互作用は予想外であり、従ってこれらの薬剤の組合せにおける使用は患者の緊密なモニタリングと共にされるべきである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0027】
【文献】Thurman et al., 2011
【文献】Eadie et al., 2012
【文献】Kwan et al., 2009
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の第一の態様に従って、免疫抑制剤及び関連するマーカーの血中レベルが確実に有毒にならないようにするためにモニターすることを特徴とする、現在免疫抑制剤を服用している患者における小児期発症てんかんの治療における使用のためのカンナビジオール(CBD)が提供される。
【0029】
好ましくは、CBDの用量を減少させる。代替方法としては、免疫抑制剤の用量を減少させてもよい。
【0030】
好ましくは、免疫抑制剤はタクロリムスである。
【0031】
好ましくは、CBDは、0.15%未満のTHC及び最大1%のCBDVを含む、少なくとも98%(w/w)のCBDを含む、高度に精製されたカンナビスの抽出物の形態である。代替物としては、CBDは合成化合物として存在する。
【0032】
好ましくは、CBDの用量は50 mg/kg/day未満である。より好ましくはCBDの用量は20 mg/kg/dayより多い。
【0033】
好ましくは、小児期発症てんかんは、レノックス・ガストー症候群、ミオクロニー欠神てんかん、結節性硬化症、ドラベ症候群、ドーゼ症候群、ジーボンス症候群、CDKL5、Dup15q、神経セロイドリポフスチン症(NCL)、及び脳異常である。
【0034】
本発明の第二の態様に従って、治療効果のある量のカンナビジオールを注意して患者に投与することを含む、それらを必要としている個人における小児期発症てんかんの治療方法であって、当該個人が現在免疫抑制剤を服用している、方法を提供する。
【0035】
好ましくは、上記注意はカンナビジオールの用量を減少させることを含む。代替方法としては、上記注意は免疫抑制剤の用量を減少させることを含む。
【0036】
好ましくは、免疫抑制剤はタクロリムスである。
【0037】
好ましくは、上記注意は副作用に関して上記個人をモニタリングすることを含む。
【0038】
より好ましくは、上記注意は副作用が見られた場合はカンナビジオールを中断することをさらに含む。
【0039】
さらにより好ましくは、上記注意は上記併用治療に由来する副作用を上記個人に助言することを含む。
【0040】
好ましくは、個人はヒトである。
【0041】
[定義]
本発明を説明するために使用された、いくつかの用語の定義を以下に列挙する。
【0042】
本願で述べられたカンナビノイドを、それらの標準的な略語と共に以下に一覧にした。
【0043】
【0044】
上記の表は網羅されてはなく、単に、参考までに本願で確認されるカンナビノイドを詳しく列挙したに過ぎない。これまでに60を超える異なるカンナビノイドが確認されており、これらのカンナビノイドは以下のように異なるグループに分けることができる:ファイトカンナビノイド、エンドカンナビノイド、及び(新しいカンナビノイド、又は合成されたファイトカンナビノイド若しくはエンドカンナビノイドであってもよい)合成カンナビノイド。
【0045】
「ファイトカンナビノイド」は、天然に由来し、カンナビス植物において見出される、カンナビノイドである。ファイトカンナビノイドは、植物から単離して、高度に精製された抽出物を生産することができ、又は合成的に再生産することができる。
【0046】
「高度に精製されたカンナビノイド抽出物」は、カンナビス植物から抽出され、高度に精製されたカンナビノイドが純度98%(w/w)以上となるように、カンナビノイドと共に抽出された非カンナビノイド成分及びその他のカンナビノイド成分が実質的に除かれた程度にまで、精製された、カンナビノイドと定義される。
【0047】
「合成カンナビノイド」は、カンナビノイド又はカンナビノイド様の構造を有する化合物であり、植物からよりもむしろ、化学的な手段を使用して製造される。
【0048】
ファイトカンナビノイドは、カンナビノイドを抽出するために使用された方法によって、中性形態(脱炭酸形態)又はカルボン酸形態のいずれかとして、得ることができる。例えば、上記カルボン酸形態を加熱すると、カルボン酸形態のほとんどを脱炭酸して中性形態になることが知られている。
【0049】
「治療抵抗性てんかん」(TRE)又は「難治性てんかん」は、2009年のILAEガイダンスの通り、一つ又は複数のAEDの試みによって十分に制御されないてんかんと定義される。
【0050】
「小児てんかん」は、小児期にてんかんを起こし得る、多くの異なる症候群、及び遺伝子変異を指す。いくつかのこれらの例は以下の通りである:ドラベ症候群、ミオクロニー欠神てんかん、レノックス・ガストー症候群、原因不明の全般てんかん、CDKL5変異、アイカルディ症候群、結節性硬化症、両側性多少脳回、Dup15q、SNAP25、及び熱性感染症関連てんかん症候群(FIRES)、良性ローランドてんかん、若年ミオクロニーてんかん、点頭てんかん(ウェスト症候群)、及びランドウ・クレフナー症候群。多くの異なる小児てんかんが存在するので、上記の一覧は網羅されてはない。
【0051】
本発明の実施形態は、以下に添付の図を参照にしてさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】
図1は、研究期間中のタクロリムス(Tac)及びカンナビジオール(CBD)の日用量を示す。
【
図2】
図2は、タクロリムスの用量で標準化したトラフ濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
高度に精製されたCBD抽出物の調製
既知で一定の組成を有する高度に精製された(>98% w/w)カンナビジオール抽出物の生産が、以下の実施例で使用されたことを、以下に説明する。
【0054】
まとめると、使用された原薬は、CBDを多量に含むchemotypeであるCannabis sativa Lの液体二酸化炭素抽出物であり、それはCBDを生成するために、溶媒結晶化法によってさらに精製された。結晶化工程は、特にその他のカンナビノイド及び植物成分を除去して、98%より高いCBDを生成する。CBDは高度に精製されるが、合成ではなくカンナビス植物から生産されるので、CBDと共に生産及び抽出されるその他のカンナビノイドが少量存在する。これらのカンナビノイドの詳細、及び薬品中に存在するそれらの分量は、以下の表5に記載の通りである。
【0055】
【実施例】
【0056】
実施例1:カンナビジオール(CBD)及び免疫抑制剤の間の薬剤-薬剤相互作用
患者は、間質性腎炎のために免疫抑制剤であるタクロリムスを受けている、難治性てんかんの33歳の女性であった。
【0057】
患者は、小児期発症てんかんを治療するためのCBDの使用に関する臨床試験に入る前に、1年間、1日2回、5 mgの用量でタクロリムスを受けていて、容態が安定していた。当該研究に入る時点での、患者のタクロリムスの血中レベルは、3.9から8.4ng/mLの間であった。患者はまた、基準血清クレアチンレベルの1.16mg/dLを有していた。
【0058】
患者は初め、試験のごま油プラセボ治療群に無作為に割り付けられ、この段階の間にタクロリムス又は血清クレアチンのレベルに変化はなかった。
【0059】
しかしながら、患者が研究の非盲検段階に入り、CBDを受け始めると、2.4mg/dLの血清クレアチンレベルと共にタクロリムスの有毒性の兆候を示した。
【0060】
図1に記載されているように、タクロリムスの用量は、CBDを受けている間、何度も減少させた。最終的には、1日2回、0.5 mgの用量(10倍の減少)に達した。この用量で、タクロリムスの濃度を、
図2に示されるように標準化した。
【0061】
そのような発見は、マリファナの合法化の増加に伴う、移植コミュニティーにとっての重大な関心事を明らかにする。この薬剤-薬剤相互作用は、治療の経過にわたって正しくモニターされていない固形臓器移植のレシピエントに影響を及ぼし得る。
【0062】
[結論]
タクロリムスのような免疫抑制剤を服用している患者は、有毒性が生じないように、CBDを用いた治療の経過にわたって、注意深くモニターされるべきである。