(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】シフト駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 61/28 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
F16H61/28
(21)【出願番号】P 2021501069
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 CN2019079999
(87)【国際公開番号】W WO2019184964
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】201810295940.6
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520380244
【氏名又は名称】フィコサ インターナショナル (タイツァン) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】チェン・シェイン
(72)【発明者】
【氏名】ジメノ・グリーン・サンティアゴ
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205136570(CN,U)
【文献】特開2011-085238(JP,A)
【文献】特開2014-052250(JP,A)
【文献】特開2009-133340(JP,A)
【文献】特開昭58-054175(JP,A)
【文献】実開昭62-075632(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0224006(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構によって駆動可能であり、トランスミッションに接続されるための実行機構と、
前記実行機構と連動し、少なくとも一端が回復可能に変形できるラックであって、接続部材により前記実行機構に接続された接続部を含むラックと、
前記ラックと噛み合う誘導歯車が設けられた歯車ケースとを備え、前記歯車ケースは、前記ラックを収容するレール溝を有し、前記レール溝は、ストレートレール部と巻取り/解放部とを有し、前記ラックの回復可能に変形する端部は、前記巻取り/解放部に対して滑り込み又は滑り出ることができ、前記巻取り/解放部が前記ストレートレール部の長さ方向における延長線に投影する長さは、そのレールの長さよりも小さい、
ことを特徴とするシフト駆動装置。
【請求項2】
前記歯車ケースの前記ストレートレール部に位置する少なくとも一方側には、前記巻取り/解放部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシフト駆動装置。
【請求項3】
前記ストレートレール部は、前記誘導歯車の下方に位置し、前記巻取り/解放部は、前記ストレートレール部の少なくとも一端に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシフト駆動装置。
【請求項4】
前記ストレートレール部の両端は、それぞれ上向き及び下向きに湾曲して、前記ストレートレール部と同一の平面内に位置する2つの巻取り/解放部を形成することを特徴とする請求項3に記載のシフト駆動装置。
【請求項5】
前記接続部に剛性保持部が設けられており、前記接続部材は、前記剛性保持部から前記実行機構方向に延伸し、前記実行機構に設けられた接続穴内に挿入される突起であることを特徴とする請求項1に記載のシフト駆動装置。
【請求項6】
前記ストレートレール部の長さは、その内部のみにおいて前記接続部が前記実行機構につれて自在に滑ることができるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のシフト駆動装置。
【請求項7】
前記ラックは、少なくともその回復可能に変形する端部付近の側壁に長さ方向に沿って間隔をおいて配置された複数の切欠きが設けられることで、前記ラックの回復可能に変形する端部を、抵抗を低下させた状態で折り曲げて前記巻取り/解放部に入り込ませることを特徴とする請求項1又は5に記載のシフト駆動装置。
【請求項8】
前記歯車ケースには、それとマッチングする歯車カバーが設けられており、前記歯車カバーには、前記接続部材が突き出る長尺開口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシフト駆動装置。
【請求項9】
前記駆動機構は、モータを含み、前記歯車ケースの前記誘導歯車に対応する位置には、磁界誘導素子が設けられており、前記磁界誘導素子及び前記モータが自動車の中央制御ユニットに信号により接続されることを特徴とする請求項1に記載のシフト駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本願は、2018年03月30日に出願した出願番号が201810295940.6で、発明の名称が「シフト駆動装置」である中国特許出願の優先権を主張する。その全ての内容は、引用により本願に取り込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、トランスミッションのシフトの技術分野に関し、特に、シフト駆動装置に関する。
【背景技術】
【0003】
本部分の説明は、本開示に関連する背景情報を提供するものに過ぎず、従来技術を構成していない。
【0004】
従来技術において、電子シフトドライバ(SBW,Shift By Wire)に適用する電子トランスミッションは、SBWから送信されたシフト信号を受信し、シフト操作を実行することができる。
【0005】
例えば、特許番号CN205136570Uの『自動車用の電子シフトドライバ』は、本出願人が提出した、前記説明と一致する既知の実施例である。当該既知の実施例において、モータは、中央制御ユニット(TCU,Transmission Control Unit)のシフト信号を受信した後、能動プーリが回転するように連動させ、能動プーリは、ベルト及び従動プーリによりスクリューを回転させるように駆動し、それにより、スクリューに嵌設されたスライダーを、軸方向に移動させ、スライダーに設けられたバンプは、ラックをレールを移動するように当接固定させ、さらに磁気歯車が回転するように動かせることができる。磁気歯車の回転により磁界変化が発生し、ホールセンサは、当該磁界変化をセンシングし、ギア識別情報を実現する。TCUは、当該ギア識別情報によりモータの回転数を調整し、スライダーに接続されたプッシャを所定の位置に移動させ、シフトを完成する。
【0006】
駐車用のPギアは、機械的装置により自動車の回転部分をロックする必要があるため、このような電子トランスミッションは、Pギアに切り替えられるときにSBWにより駆動外力を提供すればよく、R、N、Dギアは、SBWにより提供されたシフト信号を受信して実行することができる。
【0007】
つまり、本出願人が提供した既知の実施例を含む前記電子シフトドライバは、電子トランスミッションにPギアへの切替えを実行する駆動外力を提供することができるが、R、N、Dギアに切り替える外力を提供することができない。それにより、このような電子シフトドライバは、R、N、Dギア信号を受信可能な電子トランスミッションのみに適用されるが、その他の技術が既に成熟した自動トランスミッションに適用することができない。このため、電子シフトドライバの普及が制限され、技術的に改良せずに従来の構造のままで電子シフタと同じシフト機能を実現したい自動トランスミッションに適用できない。
【0008】
注意すべきこととして、以上の技術背景に対する紹介は、本発明の技術方案を明確且つ完全に説明し、本分野の技術者の理解を容易にするために述べたものに過ぎない。これらの方案が本発明の背景技術部分で述べられただけで、前記技術方案が本分野の技術者の公知のものであると考えてはならない。
【発明の概要】
【0009】
上記のように、既知の実施例におけるトランスミッションにPギアへの切替えを実行する外力を提供することのみに適する電子シフトドライブは、その突起するストロークが短く(一般的には、17mm程度)、従来の既知構造の自動トランスミッションにP、R、N、Dの全てのギアを含む切替え外力を提供するために、突起したストロークを大幅に延長させる必要がある。
【0010】
電子シフトドライブに提供される限られた組立て空間により、従来の構造を基礎とし、レールの長さを延長することにより前記目的を実現するために、明らかに電子シフトドライブ全体の体積を増大させ、異なるトランスミッションに対して異なるレールの長さを設計する必要があるので、製品のモジュール化を実現することができない。
【0011】
前記従来技術の欠陥に基づいて、本発明の実施例は、従来の既知構造の自動トランスミッションに適用できることで、技術的に改良せずに同様に電子シフタと同じシフト機能を実現することができるシフト駆動装置を提供する。
【0012】
前記目的を実現するために、本発明は、以下の技術方案を提供する。
【0013】
駆動機構によって駆動可能であり、トランスミッションに接続されるための実行機構と、
前記実行機構と連動し、少なくとも一端が回復可能に変形できるラックであって、接続部材により前記実行機構に接続された接続部を含むラックと、
前記ラックと噛み合う誘導歯車が設けられた歯車ケースとを備え、前記歯車ケースは、前記ラックを収容するレール溝を有し、前記レール溝は、ストレートレール部と巻取り/解放部とを有し、前記ラックの回復可能に変形する端部は、前記巻取り/解放部に対して滑り込み又は滑り出ることができ、前記巻取り/解放部が前記ストレートレール部の長さ方向における延長線に投影する長さは、そのレールの長さよりも小さいシフト駆動装置。
【0014】
好ましくは、前記歯車ケースの前記ストレートレール部に位置する少なくとも一方側には、前記巻取り/解放部が設けられている。
【0015】
好ましくは、前記ストレートレール部は、前記誘導歯車の下方に位置し、前記巻取り/解放部は、前記ストレートレール部の少なくとも一端に設けられている。
【0016】
好ましくは、前記ストレートレール部の両端は、それぞれ上向き及び下向きに湾曲して、前記ストレートレール部と同一の平面内に位置する2つの巻取り/解放部を形成する。
【0017】
好ましくは、前記接続部に剛性保持部が設けられており、前記接続部材は、前記剛性保持部から前記実行機構方向に延伸し、前記実行機構に設けられた接続穴内に挿入される突起である。
【0018】
好ましくは、前記ストレートレール部の長さは、その内部のみにおいて前記接続部が前記実行機構につれて自在に滑ることができるように設定されている。
【0019】
好ましくは、前記ラックは、少なくともその回復可能に変形する端部付近の側壁に長さ方向に沿って間隔をおいて配置された複数の切欠きが設けられることで、前記ラックの回復可能に変形する端部を、抵抗を低下させた状態で折り曲げて前記巻取り/解放部に入り込ませる。
【0020】
好ましくは、前記歯車ケースには、それとマッチングする歯車カバーが設けられており、前記歯車カバーには、前記接続部材が突き出る長尺開口が設けられている。
【0021】
好ましくは、前記駆動機構は、モータを含み、前記歯車ケースの前記誘導歯車に対応する位置には、磁界誘導素子が設けられており、前記磁界誘導素子及び前記モータが自動車の中央制御ユニットに信号により接続される。
【0022】
本発明の実施例におけるシフト駆動装置は、歯車ケースに、ストレートレール部の長さ方向における延長線での投影の長さがそのレールの長さよりも小さい巻取り/解放部を設けることにより、レール溝中に収容されたラックの回復可能に変形できる端部は、巻取り/解放部に対して滑り込み又は滑り出ることができ、それにより、占有空間が同様である前提で、ラックのストロークを大幅に延長させ、シフト駆動装置が自動トランスミッションに適用する場合にラックが長いストロークを有するという要求を満たす。このように、本発明の実施例におけるシフト駆動装置を従来の既知構造の自動トランスミッションに運用することで、技術的に改良せずに同様に電子シフタと同じシフト機能を実現することができる。
【0023】
また、巻取り/解放部の湾曲程度である曲率を変更することにより、ストレートレール部を変更せずに、レール溝に異なる長さを与えることができ、それにより、異なるトランスミッションのレールの長さに対する変化需要を満たすことができ、それにより、本発明の実施例におけるシフト駆動装置に好ましい汎用性を与え、製品のモジュール化を実現しやすい。
【0024】
以下の説明及び図面を参照し、本発明の特定の実施例を詳細に開示し、本発明の原理を採用可能な方式を明記する。理解すべきこととして、本発明の実施例の範囲は、それにより制限されていない。添付された特許請求の範囲の精神及び条項の範囲において、本発明の実施例は、多くの変更、修正及び同等のものを含む。
【0025】
1つの実施例に対して説明及び/又は示した特徴は、同一又は類似する方式で1つ又はより多くの他の実施例に使用され、他の実施例における特徴と組み合わせ、又は他の実施例における特徴を代替することができる。
【0026】
強調すべきこととして、用語「備える/含む」とは、本文に使用される場合に、特徴、全体、ステップ又はアセンブリの存在を意味するが、1つ又はより多くの他の特徴、全体、ステップ又はアセンブリの存在又は付加を排除しない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
ここで説明された図面は、目的を解釈するためのものに過ぎず、任意の方式で本発明に開示された範囲を制限することを意図しない。また、図における各要素の形状及び比例寸法などは、模式的なものに過ぎず、本発明に対する理解を助けるためのものであり、本発明の各部材の形状及び比例寸法を具体的に限定しない。本分野の技術者は、本発明の教示で、具体的な状況に応じて各種の可能な形状及び比例寸法を選択して本発明を実施することができる。図面において、
【
図1】本発明の実施例におけるシフト駆動装置の斜視図である。
【
図2】本発明の実施例におけるシフト駆動装置の断面図である。
【
図3】本発明の実施例におけるシフト駆動装置中の歯車ケース、歯車カバー、誘導歯車及びラックの斜視分解模式図である。
【
図4】本発明の実施例におけるシフト駆動装置中の歯車ケース、誘導歯車及びラックの組立て断面図である。
【
図5】
図5Aは、本発明の第1の好ましい実施例に係るストレートレール部と巻取り/解放部との接続模式図である。
図5Bは、本発明の第2の好ましい実施例に係るストレートレール部と巻取り/解放部との接続模式図である。
図5Cは、本発明の第3の好ましい実施例に係るストレートレール部と巻取り/解放部との接続模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本分野の技術者が本発明における技術方案をより良好に理解するために、以下、本発明の実施例における図面を参照して、本発明の実施例における技術方案を明確且つ完全に説明する。明らかに、説明された実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労力をせずに想到しうる全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属すべきである。
【0029】
説明すべきこととして、素子が、他の素子に「設けられる」と記載される場合、他の素子に直接に位置し、又は仲介する素子が存在してもよい。一素子が、他の素子に「接続される」と記載される場合、他の素子に直接接続され、又は同時に仲介する素子が存在してもよい。本文に使用される用語「垂直」、「平行」、「左」、「右」及び類似する記述は、目的を説明するためのものに過ぎず、唯一の実施例を表さない。
【0030】
特に断らない限り、本文に使用される全ての技術及び科学的用語は、本発明の属する技術分野における技術者が通常理解する意味と同じである。本文において、本発明の明細書に使用される用語は、具体的な実施例を説明するためのものに過ぎず、本発明を制限することを目的としない。本文に使用される用語「及び/又は」は、1つ又は複数の関連する挙げられた項目の任意及び全ての組合せを含む。
【0031】
図1~
図4に示すように、本発明の実施例は、駆動機構1によって駆動可能であり、トランスミッション(図示せず)に接続されるための実行機構6と、実行機構6と連動し、少なくとも一端が回復可能に変形できるラック3であって、接続部材301により実行機構6に接続された接続部を含むラック3と、ラック3と噛み合う誘導歯車4が設けられた歯車ケース5とを備え、歯車ケース5は、ラック3を収容するレール溝501を有し、レール溝501は、巻取り/解放部501aとストレートレール部501bとを有し、ラック3の回復可能に変形する端部は、巻取り/解放部501aに対して滑り込み又は滑り出ることができ、巻取り/解放部501aがストレートレール部501bの長さ方向における延長線に投影(
図3に示す下向きの投影)する長さは、そのレールの長さよりも小さいシフト駆動装置を提供する。
【0032】
本発明の実施例におけるシフト駆動装置は、歯車ケース5に、ストレートレール部501bの長さ方向における延長線での投影の長さがそのレールの長さよりも小さい巻取り/解放部501aを設けることにより、レール溝501中に収容されたラック3の回復可能に変形できる端部は、巻取り/解放部501aに対して滑り込み又は滑り出ることができ、それにより、占有空間が同様である前提で、ラック3のストロークを大幅に延長させ、シフト駆動装置が自動トランスミッションに適用する場合にラック3が長いストロークを有するという要求を満たす。このように、本発明の実施例におけるシフト駆動装置を従来の既知構造の自動トランスミッションに運用することで、技術的に改良せずに同様に電子シフタと同じシフト機能を実現することができる。
【0033】
また、巻取り/解放部501aの湾曲程度である曲率を変更することにより、ストレートレール部501bを変更せずに、レール溝501に異なる長さを与えることができ、それにより、異なるトランスミッションのレールの長さに対する変化需要を満たすことができ、それにより、本発明の実施例におけるシフト駆動装置に好ましい汎用性を与え、製品のモジュール化を実現しやすい。
【0034】
図1及び
図2に示すように、実行機構6は、スクリュー601を含んでもよい。スクリュー601の外にスライダー604が嵌設されており、スライダー604には、ユニバーサルジョイント構造によりプッシャ602が接続されており、プッシャ602の他端にはボールソケット603aを有するスパイラルケーシング603が接続されており、スパイラルケーシング603は、ボールソケット603aによりトランスミッションのシフトアームに接続される。
【0035】
駆動機構1は、スクリュー601を回転させるように駆動可能なモータ101を含んでもよい。具体的な駆動方式は、前文の既知の実施例の提供するベルト伝動であってもよく、詳細な内容は、引用として本発明に開示され、ここで重複して述べない。
【0036】
又は、歯車伝動の方式を採用してもよい。具体的には、モータ101の出力軸に能動歯車102が設けられており、スクリュー601の端部に従動歯車103が設けられており、能動歯車102は、従動歯車103と直接噛み合うように伝動接続を実現してもよく、アイドルギヤ104が従動歯車103と噛み合うことにより実現される間接的な伝動であってもよい。
【0037】
接続部材301は、スライダー604又はプッシャ602に接続されることにより、実行機構6との接続を実現することができる。具体的な接続方式として、スライダー604又はプッシャ602に接続部材とマッチングする接続穴が設けられており、接続部材301が当該接続穴内に挿入されることであってもよい。
【0038】
ラック3は、ほぼ扁平の筋状を呈し、少なくとも1つの回復可能に変形できる(即ち、弾性限界を超えない変形であって、元の形状に跳ね返すことができる)端部を有し、また、当該端部は、巻取り/解放部501aに対応して設けられることにより、少なくともラック3の当該端部が巻取り/解放部501aの曲率変化に適応してその中に入り込むことができる。
【0039】
好ましくは、ラック3は、全体として回復可能に変形するという性能を有することができる。このため、ラック3は、柔らかい弾性材料、例えば熱可塑性ポリウレタンエラストマーゴム(TPU,Thermoplastic polyurethanes)で製造されることで、ラック3は、任意の方向に変形することができ、ラック3は、巻取り/解放部501aに対して滑り込み又は滑り出るように、全体としてレール溝501の形状に適応して変形することができる。これにより、シフト駆動装置が自動トランスミッションに適用する場合にラック3が長いストロークを有するという要求を満たす。
【0040】
ラック3の回復可能に変形する端部は、巻取り/解放部501aに入り込むときに、径方向に湾曲して、ラック3の内側(
図3に示される上端)が圧縮される。当該圧縮により、ラック3は、径方向において外へ跳ね返す傾向にあり、それにより、巻取り/解放部501aの内壁に付勢力を印加し、このように、ラック3と巻取り/解放部501aの内壁との間の摩擦力を増大させるため、ラック3の滑りが阻害される。
【0041】
このため、
図3に示すように、ラック3は、少なくともその回復可能に変形する端部付近の側壁に長さ方向に沿って間隔をおいて配置された複数の切欠き302が設けられており、これら複数の切欠き302は、ラック3が巻取り/解放部501aに入り込むときに径方向に変形する空間を提供し、ラック3の内側への圧縮を低減させ、さらに回避することができ、それにより、ラック3と巻取り/解放部501aの内壁との間の摩擦力を低下させ、ラック3の回復可能に変形する端部が抵抗を低下させた状態で折り曲げられて巻取り/解放部501aに入り込むことを保証し、ラック3がスムーズに滑ることができることを確保する。
【0042】
歯車ケース5は、ストレートレール部501bに位置する少なくとも一方側に巻取り/解放部501aを設けてもよく、即ち、巻取り/解放部501aが少なくとも1つである。具体的には、ストレートレール部501bは、誘導歯車4の下方に位置し、巻取り/解放部501aは、ストレートレール部501bの少なくとも一端に設けられている。そして、巻取り/解放部501aは、好ましくはストレートレール部501bとスムーズに連通し、ラック3が両者の接続箇所で阻止されて滑りにくい状況を低減させる。
【0043】
さらに、巻取り/解放部501aは、好ましくは2つであり、当該2つの巻取り/解放部501aは、具体的にはストレートレール部501bの両端がそれぞれ上向き及び下向きに湾曲されてなるものであってもよく、このように、歯車ケース5の空間寸法を十分に利用して、ラック3のストロークをできるだけ増大させることができる。
【0044】
2つの巻取り/解放部501a及びストレートレール部501bは、好ましくは同一の平面内に位置することで、ラック3は、捻らないように巻取り/解放部501aに対して滑り込み又は滑り出ることができ、ラック3の滑りのスムーズさを維持する。
【0045】
また、2つの巻取り/解放部501aとストレートレール部501bとを同一の平面内に位置させることにより、歯車ケース5の鉛直方向における空間を十分に利用でき、ストレートレール部501bに垂直な方向における空間寸法を増加させずに構造のコンパクトさを確保するとともに、寸法構造設計を最適化し、歯車ケース5の構造の小型化を可能にする。
【0046】
ストレートレール部501bは、水平面(当該水平面は、本発明の実施例におけるシフト駆動装置を実際に使用する場合を基準とし、本文では、当該水平面は、紙面に垂直な面である)に垂直な投影面での投影が直線プロファイルであり、巻取り/解放部501aとスムーズに繋がる。
【0047】
具体的には、
図5Aに示すように、巻取り/解放部501aは(ストレートレール部501bと同一の平面内に位置するため)、上記の投影面での投影が円弧プロファイルであり、ストレートレール部501bと巻取り/解放部501aとは、接続箇所で接するように接続されている。
【0048】
又は、
図5Bに示すように、巻取り/解放部501aは、上記の投影面での投影が円弧プロファイル及び直線プロファイルであり、円弧プロファイルは、ストレートレール部501b及び直線プロファイルに接する。
【0049】
又は、
図5Cに示すように、巻取り/解放部501aは、上記の投影面での投影が2つの円弧プロファイルであり、中間に位置する円弧プロファイルは、ストレートレール部501b及び他の円弧プロファイルに接する。
【0050】
もちろん、上記は、模式的な実施例に過ぎず、実際にその他の実施可能な方式を含んでもよく、本発明は、ここで例を挙げない。
【0051】
さらに、
図5A~5Cを参照し、巻取り/解放部501aとストレートレール部501bとは同一の平面に位置するため、巻取り/解放部501aは、ストレートレール部501bの長さ方向における延長線へ線投影を行うことができる。すると、巻取り/解放部501aがストレートレール部501bの長さ方向における延長線に投影する長さ(
図5A~5Cにおける点線の長さ)をL’とし、そのレールの長さ(実際には、その周囲長)をLとし、L’<Lである。
【0052】
又は、巻取り/解放部501aは、ストレートレール部501bで定義された投影面へ面投影を行うこともできる。具体的には、ストレートレール部501bの上下面、又は、本発明の実施例におけるシフト駆動装置を実際に使用するときの水平面は、いずれも当該投影面とすることができる。巻取り/解放部501aの当該投影面での投影の長さは、同様にそのレールの長さよりも小さいという要求を満たす。
【0053】
本実施例において、接続部は、ラック3自身の構造の一部であり、ラック3の中間付近の部分であってもよく、又はラック3と接続部材301とが接続される部分を接続部に定義してもよい。
【0054】
又は、ストレートレール部501bの長さは、その中においてのみ接続部が実行機構6につれて自在に滑ることができるように設計されている。したがって、ラック3がストレートレール部501bのみにおいて移動し、巻取り/解放部501aに入り込まない部分を接続部に定義することもできる。
【0055】
前記説明のとおりに、接続部は、接続部材301により実行機構6に接続され、実行機構6は、接続部材301により接続部を移動させるため、ラック3をレール溝501において移動させる。
【0056】
通常、電子シフタの機能を実現するために、機械的部件の間の伝動に対する要求が高く、連動部件の間の伝動が同期を維持すること、即ち剛性伝動を必要とする。そうしなければ、最終的な測定誤差を引き起こし、シフトミスを引き起こしやすい。
【0057】
具体的には、本発明において、シフト信号がモータ101の回転をトリガするときに、モータ101の速度が高く、実行機構6を静止から非常に高い速度で移動するように駆動し、非常に大きい加速度を生じる。実行機構6は、同様に当該加速度を付勢力に変換して接続部材301に印加し、接続部材301は、さらに付勢力をラック3に印加する。それにより、接続部材301及びラック3は、巨大な付勢力を受け、接続部材301は、変形する可能性がある。同様に、ラック3が柔らかい弾性材料で製造されるため、ラック3の接続部材301に対応する部分は、径方向に湾曲変形し、又は堆積する可能性もある。このように、ラック3と実行機構6との間の伝動比率に影響を与え、プッシャ602の軸方向移動とラック3が誘導歯車4を動かす回転とが同期しないことを引き起こし、最終的に磁界誘導素子の測定誤差を引き起こす。
【0058】
したがって、前記状況をできるだけ回避するために、接続部材301は、剛性保持部7によりラック3の接続部に接続されることができる。剛性保持部7は、好ましくはラック3に被覆接合され(被覆部分が接続部である)、両者の間の接続強度を大きくし、その厚度がラック3の厚度よりも大きくなることで、好適な剛性を持たせる。
【0059】
接続部材301は、好ましくは剛性保持部7と一体的に成形され、その具体的な形成形態として、剛性保持部7から実行機構6方向に延伸し、実行機構6に設けられた接続穴内に挿入される突起であってもよい。このように、接続部材301及び剛性保持部7は、同じで、ラック3よりも大きい厚度を有することで、肉厚部を形成し、それがラック3と実行機構6とに同期伝動を形成させることができる剛性を有することを確保する。
【0060】
接続部材301が実行機構6により高速で駆動される場合、剛性保持部7で覆われた接続部及び接続部に隣接するラック部は、湾曲変形又は堆積せずに、測定が優れた精度を有することを確保する。
【0061】
また、測定の正確性を確保するために、ラック3が巻取り/解放部501aに対してスムーズに滑り込み又は滑り出ることができることを要求する。前文から明らかなように、本発明において、ラック3の巻取り/解放部501aに対応する端部が堆積し閉塞しないようにその中にスムーズに入り込むことができる方式は、ラック3が柔らかい弾性材料で製造されることで優れた変形性能を有することである。
【0062】
しかしながら、ラック3は、優れた変形性能を有する分、接続部材301との接続部位が実行機構6により高速で駆動されるときに十分な剛性を提供できないことを引き起こす。
【0063】
つまり、測定の正確性の目的を達成するために、ラック3が優れた変形性能を有するとともに、その接続部に対応する部位が優れた剛性を有するという2つの完全に逆でありさらには矛盾する性能を要求する。
【0064】
したがって、如何にラック3の接続部材301に対応する部位が優れた剛性を維持する場合、ラック3の他の部分、特に端部に優れた変形能力を与えるかは、2つの互いに矛盾する技術的難題である。
【0065】
本発明は、柔らかい弾性材料で製造されたラック3の接続部に、剛性保持部7を設けるとともに、ラック3に設けられた切欠き302を組み合わせることにより、前記互いに矛盾する技術的難題を好適に解決することができる。
【0066】
柔らかい弾性材料で製造されたラック3には、その上に設けられた切欠き302を組み合わせることにより、少なくともその端部に優れた変形性能を与え、それを、抵抗を低下させた状態で折り曲げて巻取り/解放部501aにスムーズに入り込ませることができる。ラック3の接続部は、剛性保持部7により接続部材301に接続され、ラック3の接続部に対応する部分に優れた剛性を与えて、実行機構6との同期伝動を実現することができる。
【0067】
さらに、ストレートレール部501の長さは、剛性保持部7がストレートレール部501bのみにおいて滑るように位置規制されるように設定されており、即ち、剛性保持部7は、レール溝501のストレートレール部501bのみにおいて直線運動し、レール溝501の巻取り/解放部501a内に入り込まない。このように、接続部材301及び剛性保持部7は、ラック3がストレートレール部501bにおいて滑る過程において径方向に変形して湾曲しないことが確保される。
【0068】
図3に示すように、歯車ケース5には、それとマッチングする歯車カバー8を設けることができる。同様に、歯車カバー8にもレール溝501と同じ溝構造が設けられており、2つの溝は、歯車ケース5及び歯車カバー8が接合された後にラック3を収容する内部空間を形成し、ラック3の滑りを位置規制する。
【0069】
さらに、歯車カバー8には、接続部材301が突き出るための、レール溝501のストレートレール部501bに対応する長尺開口801がさらに設けられており、接続部材301は、長尺開口801を通って、実行機構6との接続を実現する。
【0070】
本発明の実施例におけるシフト駆動装置の具体的な動作原理は、以下のとおりである。歯車ケース5の誘導歯車4に対応する位置には、TCUと信号により接続された磁界誘導素子(例えば、ホールセンサであってもよい)が設けられている。モータ101は、それと信号により接続されたTCUが使用者のトリガー操作に基づいて生成したシフト信号を受信してから回転し、駆動スクリュー601を回転させるように駆動し、スクリュー601の外に嵌設されてそれと噛み合うスライダー604は、軸方向に移動し、スライダー604は、プッシャ602を移動させ、それにより、スライダー604又はプッシャ602の接続穴に挿設された接続部材301を移動させ、接続部材301は、ラック3をレール溝501において滑らせ、さらにラック3は、噛み合うことにより誘導歯車4を動かして回転させる。誘導歯車4の回転により、磁界変化を発生させ、磁界誘導素子は、当該磁界変化をセンシングすると、ギア識別情報を実現する。TCUは、当該ギア識別情報によりモータ101の回転数を調整し、又は回転を停止させ、スライダー604に接続されたプッシャ602を所定の位置に移動させ、シフトを実現する。
【0071】
本発明の実施例におけるシフト駆動装置は、ラック3のストロークを延長させたため、Pギア信号を受信してから実行機構6によりトランスミッションにシフト駆動力を印加することができるだけでなく、R、N、Dギア信号を受信してからトランスミッションにシフト駆動力を印加することもできるようになり、それにより、R、N、Dギア信号を受信しないトランスミッションは、電子シフトを実現することを可能にする。
【0072】
理解すべきこととして、以上の説明は、図示し説明するためのものであり、制限するためのものではない。前記説明を閲覧することにより、提供された例以外の多くの実施例及び多くの応用は、本分野の技術者にとっては、明らかである。したがって、本教示の範囲は、前記説明を参照して決定すべきではなく、前記特許請求の範囲及びこれらの特許請求の範囲の所有する等価物の全ての範囲を参照して決定すべきである。全面の目的で、特許出願及び公報の開示を含む全ての文章及び参照は、いずれも参照により本文に取り込まれる。前記特許請求の範囲においてここで開示された主題の任意の方面を省略することは、当該本体内容を放棄するためではなく、出願人が当該主題を開示された発明の主題の一部として考慮すると理解すべきではない。