(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】超音波プローブの位置ずれ量測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
A61B8/00
(21)【出願番号】P 2021554458
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2019043425
(87)【国際公開番号】W WO2021090390
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直史
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-198856(JP,A)
【文献】特開2017-159028(JP,A)
【文献】特開2002-238899(JP,A)
【文献】特開2012-55346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブを保持するためにアームの先端部に設けられた保持具を備えるロボットに用いられ、前記保持具に対する超音波プローブの位置ずれ量を測定する超音波プローブの位置ずれ量測定装置であって、
前記アームを駆動する駆動装置と、
前記アームの位置を検出する位置センサと、
前記アームの可動エリア内の予め定められた位置に設置された被当接部材と、
前記保持具に保持された超音波プローブが前記被当接部材に当接するように前記駆動装置を制御し、前記超音波プローブが前記被当接部材に当接したときに前記位置センサにより検出されるアームの位置と予め取得した基準位置とに基づいて前記保持具に対する前記超音波プローブの位置ずれ量を推定する制御装置と、
を備える超音波プローブの位置ずれ量測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波プローブの位置ずれ量測定装置であって、
前記制御装置は、前記超音波プローブのヘッド先端が前記被当接部材に当接するように前記駆動装置を制御する、
超音波プローブの位置ずれ量測定装置。
【請求項3】
超音波プローブを保持するためにアームの先端部に設けられた保持具を備えるロボットに用いられ、前記保持具に対する超音波プローブの位置ずれ量を測定する超音波プローブの位置ずれ量測定装置であって、
前記アームを駆動する駆動装置と、
前記アームの可動エリア内の対象物を撮像可能に設置されたカメラと、
前記保持具に保持された超音波プローブが前記カメラの視野に入るように前記駆動装置を制御すると共に前記超音波プローブが撮像されるように前記カメラを制御し、撮像により得られた画像と予め取得した基準画像とに基づいて前記保持具に対する前記超音波プローブの位置ずれ量を推定する制御装置と、
を備える超音波プローブの位置ずれ量測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波プローブの位置ずれ量測定装置であって、
前記制御装置は、前記保持具に保持された超音波プローブのヘッド先端が前記カメラの視野に入るように前記駆動装置を制御すると共に前記ヘッド先端が撮像されるように前記カメラを制御する、
超音波プローブの位置ずれ量測定装置。
【請求項5】
超音波プローブを保持するためにアームの先端部に設けられた保持具を備えるロボットに用いられ、前記保持具に対する超音波プローブの位置ずれ量を測定する超音波プローブの位置ずれ量測定装置であって、
前記アームを駆動する駆動装置と、
前記保持具に対する前記超音波プローブの位置ずれ量を推定する制御装置と、
を備える超音波プローブの位置ずれ量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、超音波プローブの位置ずれ量測定装置について開示する。
【背景技術】
【0002】
従来より、超音波スキャンのための超音波トランスジューサ(超音波プローブ)を支持する支持アームが提案されている(例えば、特許文献1参照)。支持アームは、超音波トランスジューサと連結された第1の支持アーム(先端リンク)を含む複数のリンクと、各リンクに設けられた抵抗装置(ばね)とを備える。超音波トランスジューサは、抵抗装置の抵抗力により、抵抗装置なしで重力によりスキャン対象物に押し当てられる際の圧力よりも小さな圧力で押し当てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、超音波診断において、ロボットアームに超音波プローブを保持して当該ロボットアームを駆動することにより、人間の手によることなく、超音波プローブを診断対象物に押し当てるものを考えることができる。この場合、ロボットアームに対して超音波プローブに位置ずれが生じていると、ロボットアームを正確に位置決めしても、超音波プローブを適正な荷重で診断対象物に押し当てることができない。このため、超音波プローブの位置ずれ量を補正するために、事前に位置ずれ量を測定する必要がある。
【0005】
本開示は、アームの先端部に設けられ超音波プローブを保持する保持具を備えるロボットにおいて、簡易な構成により保持具に対する超音波プローブの位置ずれ量を測定することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の第1の超音波プローブの位置ずれ量測定装置は、
超音波プローブを保持するためにアームの先端部に設けられた保持具を備えるロボットに用いられ、前記保持具に対する超音波プローブの位置ずれ量を測定する超音波プローブの位置ずれ量測定装置であって、
前記アームを駆動する駆動装置と、
前記アームの位置を検出する位置センサと、
前記アームの可動エリア内の予め定められた位置に設置された被当接部材と、
前記保持具に保持された超音波プローブが前記被当接部材に当接するように前記駆動装置を制御し、前記超音波プローブが前記被当接部材に当接したときに前記位置センサにより検出されるアームの位置と予め取得した基準位置とに基づいて前記保持具に対する前記超音波プローブの位置ずれ量を推定する制御装置と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本開示の第1の超音波プローブの位置ずれ量測定装置によれば、被当接部材を備える簡易な構成により保持具に対する超音波プローブの位置ずれ量を測定することができる。
【0009】
本開示の第2の超音波プローブの位置ずれ量測定装置は、
超音波プローブを保持するためにアームの先端部に設けられた保持具を備えるロボットに用いられ、前記保持具に対する超音波プローブの位置ずれ量を測定する超音波プローブの位置ずれ量測定装置であって、
前記アームを駆動する駆動装置と、
前記アームの可動エリア内の対象物を撮像可能に設置されたカメラと、
前記保持具に保持された超音波プローブが前記カメラの視野に入るように前記駆動装置を制御すると共に前記超音波プローブが撮像されるように前記カメラを制御し、撮像により得られた画像と予め取得した基準画像とに基づいて前記保持具に対する前記超音波プローブの位置ずれ量を推定する制御装置と、
を備えることを要旨とする。
【0010】
この本開示の第2の超音波プローブの位置ずれ量測定装置によれば、カメラを備える簡易な構成により保持具に対する超音波プローブの位置ずれ量を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】保持具60の構成の概略を示す構成図である。
【
図4】ロボット20と制御装置70と超音波診断装置100との電気的な接続関係を示すブロック図である。
【
図5】ロボット20による超音波プローブ101の動作方向を示す説明図である。
【
図6】超音波プローブ101のZ軸方向における位置ずれを示す説明図である。
【
図7】ステーション110の設置例を示す説明図である。
【
図8】制御装置70により実行される位置ずれ量計測処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】超音波プローブ101をステーション110に突き当てて位置ずれ量Zdiffを測定する様子を示す説明図である。
【
図10】カメラ120の設置例を示す説明図である。
【
図11】位置ずれ量計測処理を示すフローチャートである。
【
図12】超音波プローブ101をカメラ120で撮像して得られた画像に基づいて位置ずれ量Zdiffを測定する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本開示を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、診断システム10の外観斜視図である。
図2は、診断システム10の側面図である。
図3は、保持具60の構成の概略を示す構成図である。
図4は、ロボット20と制御装置70と超音波診断装置100との電気的な接続関係を示すブロック図である。なお、
図1中、左右方向がX軸であり、前後方向がY軸方向であり、上下方向がZ軸方向である。
【0013】
診断システム10は、ロボット20に超音波プローブ101を保持し、超音波プローブ101が被験者の皮膚に押し当てられるようにロボット20を駆動することにより超音波診断を行なうものである。診断システム10は、
図1,
図2に示すように、ロボット20と、ロボット20を制御する制御装置70(
図4参照)と、超音波診断装置100(
図4参照)とを備える。
【0014】
ロボット20は、第1アーム21と、第2アーム22と、ベース25と、基台29と、第1アーム駆動装置35と、第2アーム駆動装置36と、姿勢保持装置37と、昇降装置40と、回転3軸機構50と、保持具60とを備える。なお、第1アーム21と第2アーム22と回転3軸機構50とは、単にアームと呼ぶ場合がある。
【0015】
第1アーム21の基端部は、上下方向(Z軸方向)に延在する第1関節軸31を介してベース25に連結されている。第1アーム駆動装置35は、モータ35aと、エンコーダ35bとを備える。モータ35aの回転軸は、図示しない減速機を介して第1関節軸31に接続されている。第1アーム駆動装置35は、モータ35aにより第1関節軸31を回転駆動することにより、第1関節軸31を支点に第1アーム21を水平面(XY平面)に沿って回動(旋回)させる。エンコーダ35bは、モータ35aの回転軸に取り付けられ、モータ35aの回転変位量を検出するロータリエンコーダとして構成される。
【0016】
第2アーム22の基端部は、上下方向に延在する第2関節軸32を介して第1アーム21の先端部に連結されている。第2アーム駆動装置36は、モータ36aと、エンコーダ36bとを備える。モータ36aの回転軸は、図示しない減速機を介して第2関節軸32に接続されている。第2アーム駆動装置36は、モータ36aにより第2関節軸32を回転駆動することにより、第2関節軸32を支点に第2アーム22を水平面に沿って回動(旋回)させる。エンコーダ36bは、モータ36aの回転軸に取り付けられ、モータ36aの回転変位量を検出するロータリエンコーダとして構成される。
【0017】
ベース25は、基台29上に設置された昇降装置40により、基台29に対して昇降可能に設けられている。昇降装置40は、
図1,
図2に示すように、ベース25に固定されたスライダ41と、基台29に固定されると共に上下方向に延出してスライダ41の移動をガイドするガイド部材42と、上下方向に延出すると共にスライダ41に固定されたボールねじナット(図示せず)に螺合されるボールねじ軸43(昇降軸)と、ボールねじ軸43を回転駆動するモータ44と、エンコーダ45(
図4参照)とを備える。昇降装置40は、モータ44によりボールねじ軸43を回転駆動することにより、スライダ41に固定されたベース25をガイド部材42に沿って上下に移動させる。エンコーダ45は、スライダ41(ベース25)の上下方向における位置(昇降位置)を検出するリニアエンコーダとして構成される。
【0018】
回転3軸機構50は、上下方向に延在する姿勢保持用軸33を介して第2アーム22の先端部に連結されている。回転3軸機構50は、互いに直交する第1回転軸51,第2回転軸52および第3回転軸53を備える。第1回転軸51は、姿勢保持用軸33に対して直交姿勢で支持されている。第2回転軸52は、第1回転軸51に対して直交姿勢で支持されている。第3回転軸53は、第2回転軸52に対して直交姿勢で支持される。また、第3回転軸53には、保持具60が取り付けられている。本実施形態では、保持具60は、第3回転軸53から径方向に離間した位置に固定されている。保持具60に保持された超音波プローブ101は、第3回転軸53の回転により、第3回転軸53を中心とした円弧状の軌跡をもって移動する。なお、保持具60は、超音波プローブ101が第3回転軸53と同軸上に位置するように取り付けられてもよい。
【0019】
本実施形態のロボット20は、
図5に示すように、第1アーム駆動装置35と第2アーム駆動装置36と昇降装置40とによるX軸方向,Y軸方向およびZ軸方向の3方向の並進運動と、回転3軸機構50によるX軸回り(ピッチング),Y軸回り(ローリング)およびZ軸回り(ヨーイング)の3方向の回転運動との組み合わせにより、超音波プローブ101を任意の姿勢で任意の位置へ移動させることができる。
【0020】
姿勢保持装置37は、第1アーム21および第2アーム22の姿勢によらず回転3軸機構50の姿勢(第1回転軸51の向き)を一定の向きに保持するものである。姿勢保持装置37は、モータ37aと、エンコーダ37bとを備える。モータ37aの回転軸は、図示しない減速機を介して姿勢保持用軸33に接続されている。姿勢保持装置37は、第1回転軸51の軸方向が常時、左右方向(X軸方向)となるように第1関節軸31の回転角度と第2関節軸32の回転角度とに基づいて姿勢保持用軸33の目標回転角度を設定し、姿勢保持用軸33が目標回転角度となるようにモータ37aを駆動制御する。これにより、3方向の並進運動の制御と3方向の回転運動の制御とをそれぞれ独立して行なうことが可能となり、制御が容易となる。
【0021】
保持具60は、市販の超音波プローブ101を保持可能なものである。保持具60は、
図3に示すように、平板状の本体61と、ガイド部62と、固定部65とを備える。ガイド部62は、本体61から所定の間隔を隔てて立設する2つの柱状部材である。2つの柱状部材の間隔は、超音波プローブ101の幅よりも狭く、超音波プローブ101の基端部と超音波診断装置100(
図4参照)とをつなぐケーブル102の外径よりも広い。固定部65は、超音波プローブ101の幅よりも広い間隔で本体61から立設する2つの側壁部66と、一方の側壁部66にヒンジ67を介して開閉可能に連結された蓋68と、他方の側壁部66に設けられ蓋68を閉鎖状態でロックするロック部材69とを有する。保持具60への超音波プローブ101の保持は、蓋68を開放した状態で超音波プローブ101の基端部がガイド部62に突き当たるように超音波プローブ101をセットした後、蓋68を閉じてロック部材69により蓋68をロックすることにより行なうことができる。
【0022】
制御装置70は、
図4に示すように、CPU71を中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU71の他に、ROM72やRAM73、入出力ポート(図示せず)を備える。制御装置70には、各エンコーダ35b,36b,37b,45,55b,56b,57bからの検出信号が入力ポートを介して入力されている。また、制御装置70からは、各モータ35a,36a,37a,44,55a,56a,57aへの駆動信号が出力ポートを介して出力されている。
【0023】
こうして構成された本実施形態の診断システム10では、制御装置70のCPU71は、超音波診断装置100を用いた超音波診断に際して、まず、超音波プローブ101を保持するアームの目標位置および目標姿勢を決定する。続いて、CPU71は、アームを目標姿勢で目標位置へ移動させるための第1関節軸31の目標回転角度と第2関節軸32の目標回転角度と姿勢保持用軸33の目標回転角度とベース25の目標昇降位置と第1回転軸51の目標回転角度と第2回転軸52の目標回転角度と第3回転軸53の目標回転角度とをそれぞれ設定する。そして、CPU71は、エンコーダ35b,36b,37b,45,55b,56b,57bにより検出される回転角度あるいは昇降位置が対応する目標回転角度あるいは目標昇降位置と一致するように対応するモータを制御する。
【0024】
ここで、制御装置70は、超音波診断に際して、アーム(保持具60)に保持された超音波プローブ101が被験者の皮膚に押し当てられるようにアームの目標位置および目標姿勢を設定してアームを移動させる。この場合、超音波プローブ101が保持具60の正常な位置に保持されていれば、制御装置70は、ロボット20を適切に位置決めすることで、超音波プローブ101を被験者に適切な荷重で押し当てることが可能である。しかし、超音波プローブ101が正常な位置よりもZ軸方向(上下方向)にZdiffだけずれた異常な位置で保持されていると、
図6に示すように、ロボット20を位置決めしても、超音波プローブ101は、Z軸方向にZdiffだけずれた位置で被験者に押し当てられ、正常な診断を行なうことが困難となる。そこで、本実施形態では、位置ずれ量測定装置により超音波プローブ101の位置ずれ量を予め求めておき、超音波診断の際にロボット20を位置ずれ量だけ逆方向にオフセットすることにより超音波プローブ101の位置ずれを修正するものとした。
【0025】
本実施形態の超音波プローブの位置ずれ量測定装置は、ロボット20と、制御装置70と、ステーション110とが該当する。
図7は、ステーション110の設置例を示す説明図である。図示するように、ステーション110は、アームの可動エリア内の予め定められた位置に設置されている。位置ずれ量測定装置は、ロボット20を駆動してアーム(保持具60)に保持された超音波プローブ101をステーション110に突き当て、超音波プローブ101が停止したときのアーム先端の位置を各エンコーダ35b,36b,37b,45,55b,56b,57bにより検出することにより、超音波プローブ101の位置ずれ量を測定する。以下、位置ずれ量測定装置の制御装置70により実行される位置ずれ量測定処理の詳細について更に説明する。
【0026】
図8は、制御装置70により実行される位置ずれ量計測処理の一例を示すフローチャートである。位置ずれ量計測処理では、制御装置70のCPU71は、まず、位置ずれ量の測定対象方向を設定する(ステップS100)。上述したように、本実施形態のロボット20は、X軸方向,Y軸方向およびZ軸方向の3方向の並進運動と、X軸回り(ピッチング),Y軸回り(ローリング)およびZ軸回り(ヨーイング)の3方向の回転運動とが可能である。したがって、ステップS100の処理では、これら6つの方向のいずれかが設定される。本実施形態では、超音波プローブ101は、超音波診断の際にアームに保持されて被験者の皮膚に対して下向きに押し当てられるため、測定対象方向としてZ軸方向(上下方向)が設定される。続いて、CPU71は、対応するモータを制御してステーション110に対して超音波プローブ101の先端(ヘッド)が突き当たるように超音波プローブ101をステーション110に向かって測定対象方向に移動させる(ステップS110)。なお、ステーション110には、超音波プローブ101の先端が突き当てられるのが望ましいが、突き当て可能な部位であれば、如何なる部位が突き当てられてもよい。そして、CPU71は、超音波プローブ101がステーション110に突き当たって停止したか否かを判定する(ステップS120)。この処理は、例えば、対応するモータに印加される電流を検出し、検出した電流に基づいてモータのロック状態を判定することにより行なうことができる。
【0027】
CPU71は、超音波プローブ101が停止したと判定すると、エンコーダ35b,36b,37b,45,55b,56b,57bにより検出される回転角度あるいは昇降位置を入力し(ステップS130)、順運動学によりアーム先端の位置(アーム位置P)を算出する(ステップS140)。次に、CPU71は、基準アーム位置PsetをROM72から読み出す(ステップS150)。ここで、基準アーム位置Psetは、保持具60に正常に保持された超音波プローブ101をステーション110に突き当てたときの測定対象方向におけるアーム先端の位置であり、予め実験または計算により導出されてROM72に記憶されている。そして、CPU71は、算出したアーム位置Pと基準アーム位置Psetとの差分により位置ずれ量Pdiffを算出する(ステップS160)。
【0028】
CPU71は、こうして測定対象方向における位置ずれ量Pdiffを算出すると、他に位置ずれ量を計測すべき方向があるか否かを判定する(ステップS170)。CPU71は、他に位置ずれ量を計測すべき方向があると判定すると、ステップS100に戻って、次の測定対象方向を設定して処理を繰り返す。一方、CPU71は、他に位置ずれ量を計測すべき方向がないと判定すると、これで位置ずれ量計測処理を終了する。
【0029】
図9は、超音波プローブ101をステーション110に突き当ててZ軸方向の位置ずれ量Zdiffを測定する様子を示す説明図である。保持具60の正常な位置に保持された超音波プローブ101と異常な位置に保持された超音波プローブ101とがステーション110の同じ位置に突き当てられたとき、
図9に示すように、アーム先端の位置にずれが生じる。このアーム先端の位置ずれ量は、保持具60に対する超音波プローブ101の位置ずれ量(Zdiff)に応じたものとなるため、アーム位置と基準アーム位置とを比較することで超音波プローブ101の位置ずれ量(Zdiff)を算出することができる。
【0030】
ここで、実施形態の主要な要素と請求の範囲に記載した本開示の主要な要素との対応関係について説明する。即ち、本実施形態の超音波プローブ101が本開示の超音波プローブに相当し、第1アーム駆動装置35,第2アーム駆動装置36,姿勢保持装置37,昇降装置40および回転3軸機構50が駆動装置に相当し、エンコーダ35b,36b,37b,45,55b,56b,57bが位置センサに相当し、ステーション110が非当接部材に相当し、制御装置70が制御装置に相当する。
【0031】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0032】
例えば、上述した実施形態では、制御装置70は、保持具60に保持された超音波プローブ101をステーション110に突き当てたときに位置センサ(エンコーダ)により検出されるアーム位置Pと予め取得した基準アーム位置Psetとの差分により超音波プローブ101の位置ずれ量Pdiffを求めるものとした。しかし、制御装置70は、保持具60に保持された超音波プローブ101を予め定められた位置に設置されたカメラ120で撮像し、得られた画像と予め取得した基準画像とに基づいて超音波プローブ101の位置ずれ量Pdiffを求めてもよい。
図10は、カメラ120の設置例を示す説明図である。図示するように、カメラ120は、その光軸が超音波プローブ101の位置ずれ量の測定対象方向(例えば、Z軸方向)に直交するように設置されている。
【0033】
この実施形態に係る位置ずれ量計測処理は、
図11に示すフローチャートを実行することにより行われる。
図11に示す位置ずれ量計測処理では、制御装置70のCPU71は、まず、位置ずれ量の測定対象方向を設定する(ステップS200)。測定対象方向については前述した。続いて、CPU71は、対応するモータを制御して超音波プローブ101の先端(ヘッド)がカメラ120の撮像位置に来るように超音波プローブ101を移動させる(ステップS210)。そして、CPU71は、超音波プローブ101の先端(ヘッド)が撮像されるようカメラ120を制御する(ステップS220)。ステップS220の処理では、カメラ120の視野を考慮し、超音波プローブ101の先端(ヘッド)が撮像されることが望ましいが、超音波プローブ101の全体が撮像されてもよいし、他の部位が撮像されてもよい。CPU71は、超音波プローブ101を撮像すると、基準画像をROM72から読み出す(ステップS230)。ここで、基準画像は、保持具60に正常に保持された超音波プローブ101をステップS210と同一の撮像位置でカメラ120により撮像して得られたものであり、予め撮像されてROM72に記憶されている。そして、CPU71は、ステップS220で撮像して得られた撮像画像とステップS230で読み出した基準画像とを比較することにより測定対象方向における超音波プローブ101の位置ずれ量Pdiffを算出する(ステップS240)。保持具60の正常な位置に保持された超音波プローブ101と異常な位置に保持された超音波プローブ101とを同じ撮像位置で撮像した場合、
図12に示すように、それぞれの撮像画像内において超音波プローブ101の像にずれが生じる。この超音波プローブ101の像のずれは、正常な位置と異常な位置との間の位置ずれ量に応じたものになるため、撮像画像と基準画像とを比較することで超音波プローブ101の位置ずれ量を算出することができる。CPU71は、測定対象方向における位置ずれ量Pdiffを算出すると、他に位置ずれ量を計測すべき方向があるか否かを判定する(ステップS250)。CPU71は、他に位置ずれ量を計測すべき方向があると判定すると、ステップS200に戻って、次の測定対象方向を設定して処理を繰り返す。一方、CPU71は、他に位置ずれ量を計測すべき方向がないと判定すると、これで位置ずれ量計測処理を終了する。
【0034】
上述した実施形態では、診断システム10は、3方向の並進運動と3方向の回転運動とが可能な7軸の多関節ロボットとして構成されるものとした。しかし、軸の数はいくつであっても構わない。また、診断システム10は、いわゆる垂直多関節ロボットや水平多関節ロボットなどにより構成されてもよい。
【0035】
以上説明したように、本開示の第1の超音波プローブの位置ずれ量測定装置は、超音波プローブを保持するためにアームの先端部に設けられた保持具を備えるロボットに用いられ、前記保持具に対する超音波プローブの位置ずれ量を測定する超音波プローブの位置ずれ量測定装置であって、前記アームを駆動する駆動装置と、前記アームの位置を検出する位置センサと、前記アームの可動エリア内の予め定められた位置に設置された被当接部材と、前記保持具に保持された超音波プローブが前記被当接部材に当接するように前記駆動装置を制御し、前記超音波プローブが前記被当接部材に当接したときに前記位置センサにより検出されるアームの位置と予め取得した基準位置とに基づいて前記保持具に対する前記超音波プローブの位置ずれ量を推定する制御装置と、を備えることを要旨とする。
【0036】
この本開示の第1の超音波プローブの位置ずれ量測定装置によれば、被当接部材を備える簡易な構成により保持具に対する超音波プローブの位置ずれ量を測定することができる。
【0037】
こうした本開示の第1の超音波プローブの位置ずれ量測定装置において、前記制御装置は、前記超音波プローブのヘッド先端が前記被当接部材に当接するように前記駆動装置を制御するものとしてもよい。
【0038】
本開示の第2の超音波プローブの位置ずれ量測定装置は、超音波プローブを保持するためにアームの先端部に設けられた保持具を備えるロボットに用いられ、前記保持具に対する超音波プローブの位置ずれ量を測定する超音波プローブの位置ずれ量測定装置であって、前記アームを駆動する駆動装置と、前記アームの可動エリア内の対象物を撮像可能に設置されたカメラと、前記保持具に保持された超音波プローブが前記カメラの視野に入るように前記駆動装置を制御すると共に前記超音波プローブが撮像されるように前記カメラを制御し、撮像により得られた画像と予め取得した基準画像とに基づいて前記保持具に対する前記超音波プローブの位置ずれ量を推定する制御装置と、を備えることを要旨とする。
【0039】
この本開示の第2の超音波プローブの位置ずれ量測定装置によれば、カメラを備える簡易な構成により保持具に対する超音波プローブの位置ずれ量を測定することができる。
【0040】
こうした本開示の第2の超音波プローブの位置ずれ量測定装置において、前記制御装置は、前記保持具に保持された超音波プローブのヘッド先端が前記カメラの視野に入るように前記駆動装置を制御すると共に前記ヘッド先端が撮像されるように前記カメラを制御するものとしてもよい。
【0041】
なお、本開示の超音波プローブの位置ずれ量測定装置は、以下の構成を採用してもよい。すなわち、第3の超音波プローブの位置ずれ量測定装置は、超音波プローブを保持するためにアームの先端部に設けられた保持具を備えるロボットに用いられ、前記保持具に対する超音波プローブの位置ずれ量を測定する超音波プローブの位置ずれ量測定装置であって、前記アームを駆動する駆動装置と、前記保持具に対する前記超音波プローブの位置ずれ量を推定する制御装置と、を備えることを要旨とする。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示は、超音波プローブの位置ずれ量測定装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 診断システム、20 ロボット、21 第1アーム、22 第2アーム、25 ベース、26 基台、31 第1関節軸、32 第2関節軸、33 第3関節軸、35 第1アーム駆動装置、35a モータ、35b エンコーダ、36 第2アーム駆動装置、36a モータ、36b エンコーダ、37 姿勢保持装置、37a モータ、37b エンコーダ、40 昇降装置、41 スライダ、42 ガイド部材、43 ボールねじ軸、44 モータ、45 エンコーダ、50 回転3軸機構、51 第1回転軸、52 第2回転軸、53 第3回転軸、55 第1回転装置、55a モータ、55b エンコーダ、56 第2回転装置、56a モータ、56b エンコーダ、57 第3回転装置、57a モータ、57b エンコーダ、60 保持具、61 本体、62 ガイド部、65 固定部、66 側壁部、67 ヒンジ、68 蓋、69 ロック部材、70 制御装置、71 CPU、72 ROM、73 RAM、100 超音波診断装置、101 超音波プローブ、110 ステーション、120 カメラ。