(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-03
(45)【発行日】2023-04-11
(54)【発明の名称】高温ナノ複合塗料およびその製造方法、並びに小袋軟包装塗料
(51)【国際特許分類】
C09D 1/00 20060101AFI20230404BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230404BHJP
C09D 103/02 20060101ALI20230404BHJP
C09D 101/08 20060101ALI20230404BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20230404BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C09D1/00
C09D7/61
C09D103/02
C09D101/08
C09D5/02
F27D1/00 N
(21)【出願番号】P 2022524674
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 CN2021129495
(87)【国際公開番号】W WO2022100565
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】202011246887.4
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522040322
【氏名又は名称】山▲東▼▲魯▼▲陽▼▲節▼能材料股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】鹿 成洪
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼ 妹▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ ▲維▼金
(72)【発明者】
【氏名】岳 耀▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】任 ▲徳▼利
(72)【発明者】
【氏名】鹿 明
【審査官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-192472(JP,A)
【文献】特表2019-522698(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109054467(CN,A)
【文献】国際公開第2017/073115(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102898166(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00-10/00
C09D101/00-201/10
F27D1/00-1/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量比で、
耐高温性無機繊維 10%~50%、
強化フィラー 10%~20%、
高温膨張フィラー 5%~15%、
スケルトンフィラー 7%~30%、
ナノ粉末 3%~10%、
無機懸濁剤 0%~20%、
無機結合剤 10%~50%、
有機添加剤 3%~15%、
水 前記の全ての成分の総質量の10%~50%、
を含
むナノ複合塗料であって、
前記耐高温性無機繊維の長さは0.01~1mm
の範囲であり、
前記強化フィラーは、針状マイクロシリカ粉末とパイロフィライト粉末のうちの一種又は複数種から選ばれ、前記針状マイクロシリカ粉末のアスペクト比は、(15~20):1であり、前記パイロフィライト粉末の粒度は、200~300メッシュであり、
前記スケルトンフィラーは、ムライト粉末とジルコン粉末のうちの一種又は複数種から選ばれ、
前記高温膨張フィラーは、藍晶石粉末とシリマナイトのうちの一種又は複数種から選ばれ、
前記有機添加剤は、有機結合剤、防腐剤、及び凍結防止剤であり、前記有機結合剤は、デンプン、デキストリン、及びセルロースのうちの一種又は複数種から選ばれ、前記防腐剤はバイオサイドであり、前記凍結防止剤はエチレングリコールであり、
前記ナノ粉末は、ナノシリカとナノアルミナ粉末のうちの一種から選ばれ、前記ナノ粉末の粒度は、1~100nmであり、
前記無機懸濁剤はベントナイトであ
り、
前記耐高温性無機繊維は、高アルミナ繊維、ジルコニウム含有繊維、及びアルミナ結晶繊維のうちの一種又は複数種から選ばれることを特徴とす
るナノ複合塗料。
【請求項2】
前記無機結合剤は、アルミゾル、リン酸二水素アルミニウム、及びシリカゾルのうちの一種又は複数種から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の
ナノ複合塗料。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載
のナノ複合塗料の製造方法であって、
耐高温性無機繊維、無機結合剤、及び水を混合し、繊維分散液を得る工程S1と、
前記繊維分散液と高温膨張フィラー、強化フィラー及びスケルトンフィラーとを混合し、スラリーを得る工程S2と、
前記スラリーとナノ粉末、無機懸濁剤、及び有機添加剤とを混合し、塗料を得る工程S3とを含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項4】
塗料は、請求項1
又は2に記載
のナノ複合塗
料である、ことを特徴とする小袋軟包装塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[相互参照]
本願は、発明の名称が「高温ナノ複合塗料およびその製造方法、並びに小袋軟包装塗料」である、2020年11月10日に中国特許庁へ提出された中国特許出願202011246887.4に基づく優先権を主張し、その全内容は、全体として援用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、高温炉用塗料の分野に関し、特に、高温ナノ複合塗料およびその製造方法、並びに小袋軟包装塗料に関する。
【背景技術】
【0003】
石油化学産業のエチレン分解炉、特にその底部3メートルは、使用温度が高く、底部燃焼、側面燃焼、上部燃焼、気流の洗掘、及び雰囲気の影響を受けるため、炉内ライニングの強度に対する要求が非常に高いため、この部分は、レンガ壁構造がよく使用されている。レンガ壁構造は、気流の洗掘と雰囲気の侵食に耐えることができるが、その熱伝導率が高く、熱衝撃が弱いため、炉の外壁が高温になり、壊れ、落下しやすいである。
【0004】
中国で環境保護への要求がますます高まるにつれて、多くの高温窯メーカーは、エネルギー効率を改善し、窯の耐用年数を延ばすために、レンガの壁やキャスタブル材構造の代わりに、徐々に全繊維炉内ライニングを採用し、炉内の様々な過酷な環境による繊維炉内ライニングへの侵食に耐えるようにする。保温性が良好であり、耐ヒートショック性の繊維モジュールは、環境雰囲気の影響で粉砕しやすく、気流の洗掘に耐えられいため、風速の高い高温窯には適用できなく、繊維炉内ライニングの表面に高強度、良好な透過性、炉内ライニングしっかりと結合し強力な高温の熱保護塗料層をスプレーすることで保護することが必要である。さらに、高温熱保護塗料を繊維炉内ライニングによりしっかりと接着させて落下させないために、高温熱保護塗料を繊維炉内ライニングに根付かせて定着し、乾燥させ、高温で焼いた後に塗料を繊維炉内ライニングの表面にしっかりと定着する必要がある。また、炉内ライニングの損傷による割れや隙間の一部を補修する必要もある。これらの工事の部位は比較的小さく、一定の深さを有し、通常の塗装工法で施工する場合は、一定の深さまで塗料を十分に注入することはできず、施工効果を達成できなく、グルーガンを使って施工しなければならないことになる。しかし、耐火断熱材業界で使用されている高温塗料は、一般的にすべてプラスチック製桶または鉄製桶に包装され、桶包装塗料を開けるのが面倒で無駄になりやすく、お客様の使用には非常に不便である。また、グルーガンを使用して施工する場合、現場での手作業による充填が必要であり、時間と手間がかかり、現場の衛生状態を維持することができず、非常に不便である。小袋軟包装を使用すると、これらの問題は解決される。
【0005】
従来の耐高温性塗料は、エチレン分解炉で使用される場合、高温機械的性質が不十分であり、分解炉の強力な気体の洗掘力に耐えることができず、全繊維炉内ライニングを炉内の過酷な環境から保護するという目的を達成することができない。また、耐高温性のある材料は、无机耐高温性の無機粉末フィラー又は繊維を使用することが多く、塗料の繊細感がないため、一定時間放置されると、小袋軟包装中の塗料が沈殿して液体の層が分離して、グルーガンで施工する場合、液体がすぐに出て、乾燥した長い繊維と粒状の粉末だけが残り、グルーガンで絞り出すのは困難になる。
図1に示すように、
図1は、一定時間放置した後の従来の耐高温性塗料のスラリー状況を示す概略図である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情に鑑みて、本発明は、高温ナノ複合塗料およびその製造方法、並びに小袋軟包装塗料を提供することを目的とする。本発明で提供される高温ナノ複合塗料は、強度が高く、良好な透過性を有し、炉内ライニングとよりしっかりと結合し、塗料が均一かつ安定であり、繊細で滑らかであり、長期間放置されても沈殿しなく、また、繊維長と粉末材の粒子サイズのグラデーションを制御することにより、高温機械的特性を向上させ、高温の収縮を低減し、炉内ライニングへの結合堅牢性を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、質量比で
耐高温性無機繊維 10%~50%、
強化フィラー 10%~20%、
高温膨張フィラー 5%~15%、
スケルトンフィラー 7%~30%、
ナノ粉末 3%~10%、
無機懸濁剤 0%~20%、
無機結合剤 10%~50%、
有機添加剤 3%~15%の、及び
水 前記の全ての成分の総質量の10%~50%
を含む高温ナノ複合塗料であって、前記耐高温性無機繊維の長さは0.01~1mmである高温ナノ複合塗料を提供する。
【0008】
好ましくは、前記ナノ粉末は、ナノシリカ及びナノアルミナ粉末のうちの一種又は複数種から選ばれる。
【0009】
好ましくは、前記耐高温性無機繊維は、高アルミナ繊維、ジルコニウム含有繊維、及びアルミナ結晶繊維のうちの一種又は複数種から選ばれる。
【0010】
好ましくは、前記強化フィラーは、針状マイクロシリカ粉末とパイロフィライト粉末のうちの一種又は複数種から選ばれる。
【0011】
好ましくは、前記高温膨張フィラーは、藍晶石粉末とシリマナイトのうちの一種又は複数種から選ばれる。
【0012】
好ましくは、前記スケルトンフィラーは、アルミナ粉末、ムライト粉末、ジルコン粉末、及びコランダム粉末のうちの一種又は複数種から選ばれる。
【0013】
好ましくは、前記無機懸濁剤はベントナイトであり、
前記無機結合剤は、アルミゾル、リン酸二水素アルミニウム、及びシリカゾルのうちの一種又は複数種から選ばれる。
【0014】
好ましくは、前記有機添加剤は、有機結合剤、防腐剤、及び凍結防止剤のうちの一種又は複数種から選ばれる。
【0015】
さらに、本発明は、上記の技術案に記載の高温ナノ複合塗料の製造方法であって、
耐高温性無機繊維、無機結合剤、及び水を混合し、繊維分散液を得る工程S1と、
前記繊維分散液と高温膨張フィラー、強化フィラー及びスケルトンフィラーとを混合し、スラリーを得る工程S2と、
前記スラリーとナノ粉末、無機懸濁剤及び有機添加剤とを混合し、塗料を得る工程S3とを含む製造方法を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、上記の技術案に記載の高温ナノ複合塗料、又は、上記の技術案に記載の製造方法により製造された高温ナノ複合塗料である小袋軟包装塗料を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、繊維を前処理して繊維長を制御し、高温強化フィラー、高温膨張フィラー、ナノ粉末、無機懸濁剤、及び他の添加剤を導入する、高温ナノ複合塗料を提供する。これらの改善により得られた高温ナノ複合構造塗料は、次の特性がある。(1)高温下で、超高強度と緻密性を有し、収縮が少なく、高温下で割れが発生しなく、石油化学産業用分解炉の強力な気流の洗掘及び雰囲気の侵食に耐えることができる;(2)ナノ粉末の導入により、塗料の粒度階調がより豊富になり、繊維炉内ライニングの表面にスプレーする時の透過性が強くなり、それによって繊維炉内ライニングとの結合がより強力である目的を達成する;(3)繊維長と粉末材の粒度のグラデーションを制御し、無機懸濁剤及びその他の添加剤を導入することで、塗料が均一かつ安定な状況であり、繊細で滑らかにし、絞ると練り歯磨きのようなスラリー流動状態になることができ、放置中に沈殿・成層化しなく、小包装の梱包方式を実現することができ、繊維モジュールに穴を開けて底部に定着して発根させる際に逆ハンマー形状を形成することができる;(4)塗料は透過性が良好であり、スプレーされた後に炉内ライニングとの結合性が良好であり、特殊な定着と発根性能を有することにより塗料と炉内ライニングとの結合を二重に堅牢にさせ、気流の洗掘を効果的に抵抗し、炉内ライニングの耐用年数を延ばす。
【0018】
実験結果は、本発明で提供される高温ナノ複合塗料は、6~12ヶ月放置されても沈殿しなく、均一なペースト状を維持し、焼成後の圧縮強度≧3MPa、焼成後の曲げ強度≧2MPa、加熱線収縮率(1300℃×24h)≦2%であることを示した。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、既存の耐高温性塗料の安定性試験図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例1~2で得られた塗料の安定性試験図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例1の塗料の糊付けの構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、質量比で
耐高温性無機繊維 10%~50%、
強化フィラー 10%~20%、
高温膨張フィラー 5%~15%、
スケルトンフィラー 7%~30%、
ナノ粉末 3%~10%、
無機懸濁剤 0%~20%、
無機結合剤 10%~50%、
有機添加剤 3%~15%、及び
水 前記の全ての成分の総質量の10%~50%
を含む高温ナノ複合塗料であって、前記耐高温性無機繊維の長さは0.01~1mmである高温ナノ複合塗料を提供する。
【0021】
本発明では、繊維を前処理して繊維を特定の長さに制御すると同時に、高温強化フィラー及び高温膨張フィラーを導入することにより、高温下で超高強度を有するとともに、高温下の収縮による割れも発生しない。分解炉の強力な気体の侵食力に耐え、全繊維炉内ライニングを炉内の過酷な環境の侵食から保護するという目的を果たす。ナノ粉末を導入して、塗料の粒度のグラデーションがより豊富になり、繊維炉内ライニングの表面にスプレーする際の透過性が強くなることにより、繊維炉内ライニングとのより強力な結合の目的を達成した。繊維長と粉末材の粒度のグラデーションを制御するとともに、無機懸濁剤及び他の添加剤を導入することで、塗料が均一かつ安定な状況であり、練り歯磨きのようなスラリー状態になり、放置中に沈殿・成層化しなく、小包装の梱包方式を実現することができ、工事操作に便利になる。また、炉内ライニングとの結合性が良好であり、炉内ライニングから脱落しないため、炉内ライニングの耐用年数が延ばされる。
【0022】
本発明では、前記耐高温性無機繊維の原料は、高アルミナ繊維、ジルコニウム含有繊維、及びアルミナ結晶繊維のうちの一種又は複数種であることが好ましい。前記アルミナ結晶繊維は、72アルミナ結晶繊維、80アルミナ結晶繊維、及び95アルミナ結晶繊維のうちの一種又は複数種であることが好ましい。
【0023】
本発明では、前記耐高温性無機繊維は、二次加工繊維である。本発明では、加工処理により繊維長を制御する。本発明では、得られる耐高温性無機の長さは0.01~1mmである。前記耐高温性無機繊維の直径は、1~6umであることが好ましい。
【0024】
本発明では、塗料における前記耐高温性無機繊維の質量百分率は10%~50%であり、好ましくは、15%~30%である。本発明のいくつかの実施形態においては、前記質量比は15%、20%、25%、又は30%である。
【0025】
本発明では、前記強化フィラーは、耐高温強化フィラーであり、針状マイクロシリカ粉末とパイロフィライト粉末のうちの一種又は複数種であることが好ましい。前記針状マイクロシリカ粉末のアスペクト比は、(15~20):1であることが好ましい。前記パイロフィライト粉末の粒度は、200~300メッシュであることが好ましい。本発明では、前記高温強化フィラーの由来は特に制限がなく、一般の市販品であればよい。
【0026】
本発明では、塗料における前記強化フィラーの質量百分率は10%~20%である。本発明のいくつかの実施形態においては、前記質量比は10%、13%、15%、又は20%である。
【0027】
本発明では、前記高温膨張フィラーは、藍晶石粉末とシリマナイトのうちの一種又は複数種であることが好ましい。本発明では、前記高温膨張フィラーの由来は特に制限がなく、一般の市販品であればよい。本発明では、前記高温膨張フィラーは、塗料における質量百分率が5%~15%である。本発明のいくつかの実施形態においては、前記質量比は5%、8%又は12%である。
【0028】
本発明では、前記スケルトンフィラーは、耐高温スケルトンフィラーであり、アルミナ粉末、ムライト粉末、ジルコン粉末、及びコランダム粉末のうちの一種又は複数種から選ばれることが好ましい。本発明では、前記スケルトンフィラーの粒度は、300~1000メッシュであることが好ましい。本発明では、前記スケルトンフィラーの由来は特に制限がなく、一般の市販品であればよい。
【0029】
本発明では、塗料における前記スケルトンフィラーの質量百分率は7%~30%である。本発明のいくつかの実施形態においては、前記質量比は7%、10%又は15%である。
【0030】
本発明では、前記ナノ粉末は、ナノシリカとナノアルミナ粉末のうちの一種又は複数種であることが好ましい。本発明では、前記ナノ粉末の粒度は、1~100nmであることが好ましい。本発明では、前記ナノ粉末の由来には特に制限がなく、一般の市販品であればよい。
【0031】
本発明では、塗料における前記ナノ粉末の質量百分率は3%~10%である。本発明のいくつかの実施形態においては、前記質量比は3%、5%又は8%である。
【0032】
本発明では、前記無機懸濁剤は、ベントナイトであることが好ましい。本発明では、、塗料における前記無機懸濁剤の質量百分率は0%~20%である。本発明のいくつかの実施形態においては、前記質量比は0%又は5%である。
【0033】
本発明では、前記無機結合剤は、アルミゾル、リン酸二水素アルミニウム、及びシリカゾルのうちの一種又は複数種であることが好ましい。本発明では、塗料における前記無機結合剤の質量百分率は10%~50%である。本発明のいくつかの実施形態においては、前記質量比は25%、37%、40%、又は41%である。
【0034】
本発明では、前記有機添加剤は、有機結合剤、防腐剤、及び凍結防止剤のうちの一種又は複数種であることが好ましく、有機結合剤、防腐剤、及び凍結防止剤であることがより好ましい。前記有機結合剤は、デンプン、デキストリン、及びセルロースのうちの一種又は複数種であることが好ましい。前記防腐剤は、バイオサイド(Biocide)であることが好ましい。前記凍結防止剤は、エチレングリコールであることが好ましい。
【0035】
本発明では、塗料における前記有機添加剤の質量百分率は3%~15%である。本発明のいくつかの実施形態においては、前記質量比は3%又は5%である。
【0036】
本発明では、上記の耐高温性無機繊維、強化フィラー、高温膨張フィラー、スケルトンフィラー、ナノ粉末、無機懸濁剤、無機結合剤、及び有機添加剤の総質量は、100%であることが好ましい。上記の成分の以外、塗料体系は水をさらに含む。本発明では、前記水の用量は、水を除いた上記の全ての成分の総用量の10%~50%である。本発明のいくつかの実施形態においては、前記水の用量は、15%、25%、30%、又は35%である。
【0037】
本発明で提供される高温ナノ複合塗料は、繊維長と分散方を制御し、特定の強化フィラーと高温膨張フィラーを導入することにより、高温下で超高強度を有するとともに高温下で収縮による割れは発生しない。同時に、一定のスケルトンフィラーとナノ構造の材料を導入し、上記の材料の間の相乗作用により、塗料状態が均一で安定し、放置中に沈殿・成層しない。高温での使用中、炉内ライニングとしっかりと結合し、高温での収縮が少なく、超高強度のハードシェルバリアを有する。また、高温焼成後の収縮は少なく、割れもなく、炉内ライニングとしっかりと結合し、高温焼成後の強度が大きく、底部燃焼、側面燃焼、上部燃焼の気流の洗掘と气氛侵食を効果的に抵抗する機能がある。これにより、繊維モジュールが外部環境の侵食により、粉末化して脆くなるのを防ぐ。さらに、高温運転時の炉の熱損失を遮断し、炉内ライニングの耐用年数を延ばし、炉外壁の温度を下げ、省エネ・消費削減の目的を達成する。本発明で提供される高温ナノ複合塗料は、エチレン分解炉の全繊維構造の専用塗料として使用することができ、超高強度、繊維炉内ライニングとの結合性が強く、及び特殊的な定着状態を有し、工事の便利性を実現する。特に、レンガ壁構造の代わりにエチレン分解炉全繊維構造を適用する場合、繊維を保護する重要な役割を果たし、粉末化して脆くなることがなく、ことにより、繊維炉内ライニングの耐用年数を延ばし、炉外壁の温度を低下させるという最終の目的を達する。
【0038】
さらに、本発明は、上記の技術案に記載の高温ナノ複合塗料の製造方法であって、
耐高温性無機繊維、無機結合剤、及び水を混合し、繊維分散液を得る工程S1と、
前記繊維分散液と高温膨張フィラー、強化フィラー及びスケルトンフィラーとを混合し、スラリーを得る工程S2と、
前記スラリーとナノ粉末、無機懸濁剤及び有機添加剤とを混合し、塗料を得る工程S3とを含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0039】
ステップS1においては、前記混合は撹拌混合であることが好ましく、前記撹拌の時間は10~30分であることが好ましい。前記ステップS2においては、前記混合は撹拌混合であることが好ましく、前記撹拌の時間は3~5分であることが好ましい。前記ステップS3においては、原料の混合順序は、先にスラリーにナノ粉末を加えて3~5分間撹拌混合し、次に無機懸濁剤を加えて5~10分間撹拌混合し、最後に有機添加剤を加えて10~20分間撹拌混合し、塗料を得る。
【0040】
さらに、本発明は、小袋軟包装塗料を提供する。前記塗料は、上記の技術案に記載の高温ナノ複合塗料、又は、上記の技術案に記載の製造方法により製造された高温ナノ複合塗料である。即ち、塗料は、プラスチック製の桶で大型包装されることに加えて、塗料を小袋軟包装することもでき、小袋の塗料を形成して、特殊的な部位の工事に便利である。
【0041】
さらに、本発明は、塗料を小型フレキシブル包装袋に入れて密封し、小袋軟包装塗料を得ることを含む、上記の技術案に記載の小袋軟包装塗料の包装方法を提供する。ここで、前記塗料は、上記の技術案に記載の高温ナノ複合塗料、又は、上記の技術案に記載の製造方法により製造された高温ナノ複合塗料である。
【0042】
本発明で提供される高温ナノ複合塗料は、以下の有益な効果を奏する。
1.高温焼成後、強度が高く、収縮が少なく、割れがなく、全繊維炉内ライニングの外層に硬くて緻密な殻層を形成し、エチレン分解炉内の過酷な環境に効果的に耐え、外面にスプレーした塗料を、落下しないように繊維炉内ライニングにしっかりと定着することができる。
2.塗料は、均一で安定であり、ペースト状になり、使用期間内に放置すると液体が沈殿して分離することがなく、大きなプラスチック製の桶で包装することができるだけではなく、小袋軟包装の要求を満たし、軟質小袋包装体にすることもでき、工事に便利である。
3.塗料は、均一でペースト状であり、本発明成分の配合によりペーストはきめ細かく、良好な透過性を有し、大きな面積でスプレーすることにより繊維炉内ライニングとの結合が堅牢になり、グルーガンで炉内ライニング内部へ糊付けする過程中に、穴開けの炉内ライニングの底部で自動的に逆さまのハンマー形状になり、このような定着構造を形成することにより、塗料と炉内ライニングとの結合がより堅牢になり、二重固定の効果が得られる。
【0043】
実験結果は、本発明で提供される高温ナノ複合塗料は以下の技術的な指標に到達することを示した。
化学成分:SiO2 20~60%、
Al2O3 30~80%、
ZrO2 5~20.0%、
Fe2O3<0.3%。
常温乾燥後のかさ密度:650~850 Kg/m3
焼成後の圧縮強度:≧3MPa
焼成後の曲げ強度:≧2MPa
加熱線収縮率:1300℃×24h≦2%
放置時間:6~12ヶ月間に沈殿しなかった。
【0044】
以下、本発明をさらに理解するために、本発明に係る好適な実施形態について、実施例を参照しながら説明するが、以下の記載は、本発明の特徴およびメリットをさらに説明するためのものであり、本発明の請求範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例では、使用される原料のサイズが上記の各原料のサイズパラメータの範囲にある。
【実施例】
【0045】
実施例1
1.1 塗料の処方
耐高温性無機繊維 15%、
高温強化フィラー-針状マイクロシリカ粉末 10%、
高温膨張フィラー-藍晶石粉末 12%、
高温スケルトンフィラー-アルミナ粉 10%、
ナノ粉末-ナノシリカ 5%、
無機結合剤-アルミゾル 40%、
有機添加剤-セルロース粉末2%、バイオサイド0.7%、エチレングリコール0.3% 3%、
無機懸濁剤-ベントナイト 5%、
水 前記の全ての成分の総質量の15%。
ここで、耐高温性無機繊維の原料繊維は高アルミナ繊維であり、短繊維に加工された繊維は、長さが0.01~1mm、直径が1~5umであった。
【0046】
1.2 調製
耐高温性無機繊維を秤量し、ミキサーに加え、無機結合剤と水を量り、加え、20分間撹拌して、繊維を十分に湿らせて分散させた。次に、高温膨張フィラー、強化フィラー、スケルトンフィラーを順に加え、添加終了後、5分間撹拌して完全に分散させた。次に、ナノ粉末を添加し、5分間撹拌した。無機懸濁剤を加え、10分間撹拌して完全に膨張させ、懸濁効果を発揮した。最後に、有機添加剤を加え、20分間撹拌し、塗料を得た。
実施例2
【0047】
1.1 塗料の処方
耐高温性無機繊維 20%、
高温強化フィラー-パイロフィライト粉末 13%、
高温膨張フィラー-シリマナイト 5%、
高温スケルトンフィラー-ムライト粉末 15%、
ナノ粉末-ナノアルミナ粉末 3%、
無機結合剤-シリカゾル 41%、
有機添加剤-デンプン粉末2%、バイオサイド0.7%、エチレングリコール0.3% 3%、
水 前記の全ての成分の総質量の25%。
ここで、耐高温性無機繊維の原料繊維はジルコニウム含有繊維であり、短繊維に加工された繊維は、長さが0.01~1mm、直径が2~6umであった。
1.2 調製:実施例1と同様にした。
実施例3
【0048】
1.1 塗料の処方
耐高温性無機繊維 25%、
高温強化フィラー-針状マイクロシリカ粉末 15%、
高温膨張フィラー-藍晶石粉末 8%、
高温スケルトンフィラー-ジルコン粉末 7%、
ナノ粉末-ナノアルミナ粉末 5%、
無機結合剤-液体リン酸二水素アルミニウム 37%、
有機添加剤-デキストリン粉末2%、バイオサイド0.7%、エチレングリコール0.3% 3%、
水 前記の全ての成分の総質量の30%。
ここで、耐高温性無機繊維の原料繊維は72アルミナ結晶繊維であり、短繊維に加工された繊維は、長さが0.01~1mm、直径が3~6umであった。
1.2 調製:実施例1と同様にした。
実施例4
【0049】
1.1 塗料の処方
耐高温性無機繊維 30%、
高温強化フィラー-パイロフィライト粉末 20%、
高温膨張フィラー-シリマナイト 5%、
高温スケルトンフィラー-コランダム粉末 7%、
ナノ粉末-ナノアルミナ粉末 8%、
無機結合剤-アルミゾル 25%、
有機添加剤-セルロース粉末3.5%、バイオサイド1%、エチレングリコール0.5% 5%、
水 前記の全ての成分の総質量の35%。
ここで、耐高温性無機繊維の原料繊維は95アルミナ結晶繊維であり、短繊維に加工された繊維は、長さが0.01~1mm、直径が3~6umであった。
1.2 調製:実施例1と同様にした。
実施例5
【0050】
(1)実施例1~2で得られた塗料を小袋軟包装に入れ、室温下で10ヶ月間放置した後、塗料の状態を観察した。また、従来の耐高温性塗料(モデル:1600高温熱保護塗料、山東魯陽節能材料股フン有限公司により提供)を対照として上記の試験を実施した。
【0051】
結果をそれぞれ
図2および
図1に示す。
図2は本発明の実施例1~2で得られた塗料の安定性試験図である。
図1は、従来の耐高温性塗料の安定性試験図である。それから、長期間放置した後、従来の塗料は、沈殿し分離し、糊付けすることができなくなり、本発明の塗料は、依然として均一できめ細かいペースト状態を示し、沈殿及び液体分離の現象が起こらなかったことがわかった。他の実施例で得られた塗料についても、同じ試験を行い、その效果は
図2と類似し、優れた均一性と安定性も達成した。
【0052】
(2)実施例1で得られた塗料をグルーガンに入れて炉内ライニングに糊付けし、塗料によって形成される構造を
図3に示す。
図3は、本発明の実施例1の塗料の糊付けの構造概略図であり、ここで、左側は、モジュールで発根させて塗料を塗布した後の概略図であり、右側は、モジュールを取り外した後の塗料形状の概略図である。モジュールにおいて塗料を発根させて塗布し、乾燥後、1300℃の高温炉内で焼成し、その後、モジュールを取り外し、発根とスプレー塗料を露出させた。塗料の特有的なペースト状の均一な状態により、塗料が底部で発根してメイスのようなバチの形を自然に形成して、発根をより強くする。塗料が穴開き炉の底に逆さまのハンマー形状構造を自動的に形成して、炉内ライニングによりしっかりと結合していることが分かった。さらに、繊維モジュールから分離した後、繊維が塗料表面に付着していることも分かった。これは、本発明で提供される塗料が繊維炉内ライニングとの結合性が良好であることが確認された。
【0053】
(3)実施例1~4で得られた塗料について性能試験を行い、結果を表1に示す。
ここで、常温乾燥後のかさ密度の測定は、YB/T5200に従い行った。焼成後の強度試験の焼成条件は1300℃×3hであった。塗料を長さ160mm×幅40mm×厚さ40mmの試験ブロックに成形し、YB/T5202標準に従い性能試験を行った。
【0054】
【0055】
上記の試験結果から、本発明で提供される塗料は、優れた均一安定性を有し、長期間放置されても沈殿・分離しなく、同時に、糊付けされた場合は逆さまのハンマー状の構造を形成することができ、炉内ライニングへの結合堅牢性を改善し、また、高温焼成後の強度が高く、収縮が少なく、過酷な環境に耐えることができることが分かった。
【0056】
上記の実施例の説明は、本発明の方法及び要旨を理解するために用いられたもので過ぎない。それらの実施例の様々な修正は、当業者にとって自明なものである。本明細書で定義される一般原理は、本発明の思想、および範囲から逸脱することなく、他の実施例で実現することもできる。従って、本発明は、本明細書に示されるそれらの実施例に限られていることではなく、本明細書に開示される原理および新規の特徴に対応する最も広い範囲と一致する。